東日本大震災から10年の節目に振り返る 特別企画「震災と未来」展レポート

日本科学未来館で特別企画「『震災と未来』展 -東日本大震災10年-」が3月28日まで開催中だ。同展は東日本大震災から10年にあたる今年、「震災の記憶」「その後の人々が生んだ絆」「未来への課題」の3つをテーマに掲げ、震災の教訓を未来へ伝える展示だ。

2011年3月11日の東日本大震災では多くの尊い命が失われ、地域社会にも大きな傷跡を残した。それから10年。日本国内各地の傷跡は今でも完全に癒えることはなく、大きな自然災害も頻発している。さらには首都直下地震などの発生も懸念される中、新型コロナウイルスのパンデミックによる、対策は困難を極めている。同展は、常に災害と直面するリスクと課題を抱えている今、3つの展示ゾーンを通じて、過去の「記録」を見つめなおすことで「記憶」とし、未来に必要な防災や減災を改めて考えるきっかけになるような構成だ。

ZONE1 ~東日本大震災をNHKのアーカイヴで振り返る~

地震発生から72時間内に放送されたNHKのニュースのダイジェスト映像やプロジェクションによる災害の体感、原発事故の記録や避難所の再現展示などから震災発生当時の状況を追体験します。「東日本大震災復興支援『失われた街』模型復元プロジェクト」の取り組みも紹介する。

「地震発生から72時間」

地震発生から72時間のNHKのニュース映像を時間とともに紹介する。発生直後の歪んだ映像や防波堤が決壊する瞬間、住民が避難する様子までを紹介し、東日本大震災がどのように起こったのかを見つめ直す。

東日本大震災復興支援「失われた街」模型復元プロジェクト

東日本大震災では多くの街や集落が失われた。このプロジェクトは全国の建築学を学ぶ学生が協力して、被災前の街を縮尺1/500の模型で復元する取り組みだ。東日本大震災の被害を受けた各地でワークショップを行い、参加した住民の思い出の場所に「記憶の旗」を立ててもらい模型は完成した。ある道には「夜は街灯がなくて真っ暗」といった震災前の記憶から、ある丘陵には「ここまで自宅が流された」と書かれていて、震災時の被害状況も明確に記されている。震災前の記憶をもとに作られた模型の「失われた街」は思い出が詰まった「記憶の街」へと生まれ変わる。

福島第一原子力発電所 事故の記録と影響

震災によって甚大な被害をもたらした、東京電力福島第一原子力発電所の事故について、NHKスペシャルの番組映像や避難者の証言などを交えて、当時の状況と原発事故の影響を紐解く。原子力発電所の仕組みを細かく説明した模型も展示されている。明治大学の勝田忠広が監修した。

こころフォト~忘れない~

東日本大震災で亡くなった方たちの思い出の写真と家族からのメッセージを集めた「こころフォト」。1人ひとりの命の尊さと残された人達が、どう生きようとしているかを、最新のデジタル技術を取り入れた展示を行う。

他にも、避難所生活を再現したブースでは、妊婦や自閉症の子ども、聴覚障害者の夫婦ら実生活での問題点を、実際の避難者の声とともに紹介している。

ZONE2 ~あの日 そして明日へ…復興10年のあゆみ~

震災後の10年におよぶ復興のあゆみをNHKのニュース映像とともに、「復興タイムトンネル」や国内外のスポーツ選手やアーティストなど、さまざまなサポートや復興にまつわる物語が詰まった作品展示とともに紹介する。

復興タイムトンネル(2011~2020年)

この10年間の世界情勢に合わせて、10年の復興の歩みを巨大クリーンで振り返る。三陸鉄道の復旧や被災地の人々の生活再建の営みに焦点をあて、国内外からのサポートなどをゆかりの品々を通じて紹介している。

レディー・ガガのティーカップ

レディー・ガガが復興支援チャリティーの一環としてネットオークションにティーカップを出品。ティーカップはその後、亡くなった落札者の遺族により「震災の記憶を風化させないよう活用してほしい」との想いから、宮城県に寄贈された。カップにはガガの直筆サインと「日本の為に祈りを。」というメッセージが記され、キスマークが残されている。

NHK復興支援ソング「花は咲く」や「SEIMEI」の演技で着用した衣装などを展示します。

その他、東北楽天イーグルスが球団設立9年目の2013年に球団初のパ・リーグ、日本シリーズ優勝を果たした当時の星野仙一監督が着用していたユニフォームや田中将大選手の着用ユニフォームなどを展示する。2011年にドイツで開催されたFIFA女子ワールドカップで優勝したなでしこジャパンの優勝トロフィーやNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の台本なども展示している。

ZONE3 ~あなたと未来を考える~

東日本大震災の教訓を生かし、毎年のように国内各地で頻発する自然災害やそれに伴う複合災害に備え、我々の未来を考える。災害時に迫られる様々な「選択」を体験する仮想空間や、飛沫感染防止用のテントなど、災害への備えとなる展示も行っている。

防災クロスロードその時、どうする?

仮想空間の中で災害時に迫られるさまざまな「選択」を体験することで、防災について自分の事として考えていきます。京都大学防災研究所の矢守克也が監修した。※「クロスロード」はチーム・クロスロードの著作物で登録商標。

ニューノーマル時代における感染症、災害対策

新たな複合災害に備え、新たな避難所の形を紹介する。新型コロナウイルス感染症の拡大防止に役立つ飛沫感染防止用のテントなども展示している。

震災から10年、現在は昨年から続く新型コロナウイルスのパンデミックにより、医療にとどまらず社会経済の危機の最中にある。未だ快方の糸口は見えないが、NHKがこれまで記録・蓄積してきた映像や資料、国内外からのさまざまな支援にまつわるストーリーをもった品々の展示を通じ、復興への取り組みと課題が浮彫にすることで、今後の災害に対する備えをともに考えたい。

■「震災と未来」展 -東日本大震災10年
会期:2021年3月6~28日
会場:日本科学未来館
住所:東京都江東区青海2-3-6
時間:10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)※最新情報は展覧会公式サイトにて要確認
休館日: 3月16日
観覧料:無料(事前予約制)
URL:https://www.nhk.or.jp/event/art2020/

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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