映画監督ウォン・カーウァイ × アーティスト舘鼻則孝 映画『花様年華』の香りにまつわるコラボ作品を制作

香港の映画監督ウォン・カーウァイとアーティスト舘鼻則孝(たてはな・のりたか)によるコラボレーションが実現。公開20周年を記念し映画『花様年華』の香りにまつわる世界観を舘鼻が作品化。作品は、世界的オークションハウスのサザビーズが、10月10日に香港で開催するオークション「Happy Together|WKW x Jet Tone Films 30th Anniversary」に出品される。

ウォン・カーウァイの代表作『花様年華』の香りにまつわる世界観を表現した本作は、舘鼻の作風に惚れ込んだウォン・カーウァイからの依頼によって始まった。

本作『In the Mood for Love』では、ウォン・カーウァイの発想を元に舘鼻が考案したさまざまな素材や工芸技法を用いて作品化。日本の漆芸技法に焦点が当てられた本作は、香りを内包する器物としての機能だけでなく、作品性の高い美術工芸品ともいえる。日本産の桜材を支持体として、鮑貝や白蝶貝、純金粉によって表層が加飾されており、仕上げとなる上塗りとして、漆が用いられている。伝統的な朱色と黒色の漆で仕上げられた作品群は、2種の基調色と素材の組み合わせにより20種類のユニークピースとして仕上げられている。

舘鼻は、「ウォン・カーウァイ監督作品『花様年華』の時代背景を象徴するような衣装や壁紙などの意匠から多くのインスピレーションを受け、撮影監督であるクリストファー・ドイルの描く艶やかな色彩空間まで、多くの要素に魅了された。その中でも、香りにまつわる本作『In the Mood for Love』のフォルムは、スー・リージェンの着る1960年代香港のチーパオの高い『衿』から着想を得ている。詰衿をまとい守られた女性の秘密を本作の着想の源に、内に秘められた香りを通して本作の主題でもある『秘密の共有』を目に見えない感覚として暗喩し表現している」とコメントする。

鮑貝を用いた伝統技法の螺鈿細工で仕上げられた本作は、朱漆を基調とした10作品の内の代表作品に位置付けられている。石川県金沢市で職人の手仕事によって10以上の工程を経て仕上げられている本作は、桜材に漆を下塗りすることから始まる。次に、一様に揃った鮑貝を矢柄状に敷き詰め下地を作り、唐花文様を漆によって描き仕上げる。作品タイトルが刻まれるレーベルは、純金粉を漆によって定着させる蒔絵という伝統技法によって表現。また、背面のウォン・カーウァイの「王」という漢字のシグネチャーにも同様に蒔絵が用いられている。

黒漆を基調とした10作品の中でも、純金粉を用いた蒔絵という伝統技法によって文様が表現された本作は、代表作品に位置付けられている。漆を用いて定着された純金粉を下地として、黒漆によって文様が描かれている。蒔絵は、日本の漆工の中でも代表的な技法であり、古くは平安時代よりさまざまな手法が考案され、現代まで継承され続けている。

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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