アーティストのカネコタカナオが個展「Fragment」を東京・代官山の「アートフロントギャラリー」で開催する。会期は5月20日から6月12日まで。
カネコタカナオがアートフロントギャラリーでは展示するのは2017年以来5年ぶりで、近年テストを繰り返し取り組んできたコミックのコラージュを用いた層構造の作品群を発表。本展覧会では、7点の最新作を含む約10点の作品を展示する。
カネコタカナオは、情報過多の現代においてその反乱が生み出すモンスターや、フェイクニュースや匿名の誹謗中傷など昨今問題になるネット上のノイズを可視化するような絵画作品で知られている。
従来のイラストレーションと比較した際に、近作において非常に顕著な特徴は、その色彩とキャラクターの持つ属性が引き起こす既視感にある。一見レトロに見える色彩は、過去作のモノクロームの流れを汲みながら昨今の1970~80年代のデザインやキャラクターイメージのリバイバルを感じさせる。その下に時折見えるコミックスのカラフルな色はこれと対照的でインパクトがあり見る者の心を躍らせる。非常によく考えられ構築された画面となっている。
また、作家は、世界中に流布するイメージには、それぞれ属性がありその要素を抜き出すことで見たことがあるという状態を作ることができるという。これは昨今のSNS(特にInstagramなど)によるイメージの拡散による利点と問題の両方を想起させる。情報自体は本来ニュートラルで無害なものだが、一方で悪用されれば我々の日常に簡単に入り込み、アイデアを誘導できるツールとして、人々を操作してしまうかもしれない。彼が描くモンスター達は、一見コミカルなキャラクターですがよく見ると体が一部欠けており、ありえないところから手が生えているなど、異形の姿。これらは現代における情報の在り方の形象化ということができるかもしれない。