もりたみどり Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/もりたみどり/ Mon, 10 Apr 2023 09:45:55 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png もりたみどり Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/もりたみどり/ 32 32 みんなの今年のベストアルバム・EPは? 「TOKION」執筆陣・ゆかりのクリエイターが選ぶ「2021年発表の私的ベストミュージック」  https://tokion.jp/2021/12/30/the-best-music-2021/ Thu, 30 Dec 2021 10:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=86537 今年、発売されたアルバム・EPの中から、「TOKION」執筆陣・ゆかりのあるクリエイターが心に残ったベスト作品を選出する。

The post みんなの今年のベストアルバム・EPは? 「TOKION」執筆陣・ゆかりのクリエイターが選ぶ「2021年発表の私的ベストミュージック」  appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>

新型コロナウイルス感染症が完全収束に至ることのないまま、2021年が終わろうとしている。前年から続き、私たちが生きる社会はその在りようを変化させることを余儀なくされ、そこには少なくない傷や痛み、喪失が随伴した。音楽シーンにおいても例外ではなく、各地の音楽文化を育んできたライブハウス・クラブのクローズや、新しい音楽との出会いや交歓の場としても当該産業・コミュニティを支え盛り上げてきたフェス・イベントの中止・延期など、哀惜の念をもって思い返さざるを得ない出来事があった。しかし、それでも音楽が鳴り止むことは無く、この一年も、たくさんの素晴らしい音楽が紡ぎあげられ、無数のスピーカーやヘッドホンから流れ出し、その場の空気を、私たちの心を、ふるわせた。

そんな2021年に生まれた数多の作品群から、「TOKION」執筆陣・ゆかりのクリエイターの方々に、ベストアルバム・EPを選出してもらった。ジャンルもさまざまなそのサウンドに、その詞に、深く耳を傾けてみれば、2021年という時の音が聴こえてくるはずだ。それは、来たる2022年の行く末を指し示す導きの音としても、鳴り響くことになるだろう。

花冷え。『乙女改革』
選者:阿刀“DA”大志

花冷え。『乙女改革』収録曲 「我甘党」

2021年は完全に“花冷え。”の年だった。花冷え。は、東京出身の4人組女性ラウドロックバンド……と公式では謳われているものの、彼女達の音楽はそこにまったく留まっていない。40代以上ならSuper Junky Monkeyやヌンチャクの姿が透けて見え、それ以下の世代はマキシマム ザ ホルモンとの共通点を見出すのではないだろうか。実際、花冷え。はホルモンから強い影響を受け、女子校の軽音楽部で結成されたバンドである。

花冷え。の何が特徴的かというと、前述したように、型にはまらないサウンドがまず挙げられる。ホルモンやメタルコアをベースにし、かなり自由な発想でサウンドを構築しているのだ。それもそのはず、結成した頃から彼女たちは『誰もやっていないようなことをやりたい』という信念の下に活動しており、そういった意味で花冷え。はホルモンのサウンド以上に彼らの精神性から大きな影響を受けていると言えるかもしれない。

そして、いかつい音やボーカルのユキナによる強烈なシャウトとは不釣り合いなビジュアルのよさも注目を集めている。最初、自分は彼女たちのアー写を先に見てから曲を聴いたのだが、音を聴くまではアイドルだと思いこんでいたぐらいだ。

現在、一番再生回数が多いMVは『我甘党』で約20万回。まだまだこれからという数字だが、その割に海外YouTuberを中心とするリアクション動画の数がめちゃくちゃ多い。先日YouTubeで配信されたオンラインライヴでは英語圏と思われるアカウントから400ドル(約45,000円)ものスパチャが飛ぶなど、国内よりも海外での熱がすさまじいことになっている。

先日、何らかのレコーディングが終わったという報告がインスタグラムであったばかり。2022年の動きにも期待ができそうだ。

阿刀“DA”大志

阿刀“DA”大志
1975年東京都生まれ。米テネシー州で4年半の大学生活を送っていた頃、北米ツアーにやってきたHi-STANDARDのメンバーと出会ったことが縁で、1999年にPIZZA OF DEATH RECORDSに入社。現在はフリーランスとして、BRAHMAN、OAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)、the LOW-ATUSのPRや、音楽ライターとして活動中。 2月2日には、OAUの最新作『New Spring Harvest』がリリースされます。
Twitter:@DA_chang

Kabanagu『泳ぐ真似』
選者:imdkm

例えば「3作選んで」と言われたらひどく悩んだだろうが、ただ1つだけ挙げろというのなら悩む必要はほとんどなかった。歪み、ばらばらになる寸前のように響きながら、あっという間に通り過ぎてしまう7曲。エレクトロニック・ミュージックを軸にロックの意匠を折衷したサウンドの語彙やスタイルは、ここ数年大きなムーブメントとなっているhyperpopとの共振も感じさせる。キャッチーなメロディが惜しげもなくカオスの中へと放り込まれていくのに圧倒されつつ、ディストピア的な(あるいは荒涼としたポストアポカリプティックな)情景と乾いた内省を湛えた言葉の断片に耳を傾ける。言葉もサウンドも最も詩的な「グラニュー」、カタルシスの寸前に至りながらぎりぎりで抑制するかのような「冥界」、アルバムごと消尽するかのようにたたみかけるラストの「いいだけ」。どこをとっても鋭く輝いている。

imdkm(イミヂクモ)

imdkm(イミヂクモ)
ライター、批評家。ティーンエイジャーのころからビートメイクやDIYな映像制作に親しみ、Maltine Recordsなどゼロ年代のネットレーベルカルチャーにいっちょかみする。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。単著に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。
https://imdkm.com
Twitter: @imdkmdotcom

宇多田ヒカル『One Last Kiss』
選者:絶対に終電を逃さない女

宇多田ヒカル『One Last Kiss』

『エヴァンゲリオン』シリーズがついに完結した2021年、私はようやくエヴァを観始めた。しかも『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開された半年後から。宇多田ヒカルによる主題歌はどれもリリース当時より愛聴してきたが、エヴァの作品世界と重ねて聴くことによって、やはりそれまでとは異なる情景が浮かんできた。漠然と思春期の少年をイメージしていただけだった「Beautiful World」が、テレビ版から『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』まではシンジに重なり、シン・エヴァを観た後では、ユイとの再会というたった1つの切実な願いを叶えるためにゲンドウが思い描いた「美しい世界」のことなのではないかと思えるし、「桜流し」はミサトの歌のようにも聴こえる。『破』のラストシーンから「Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-」のイントロへの自然かつ印象的な入り方は、作品全体を一気にまとめ上げる力を感じた。もっと早く観ればよかったと後悔してもいるが、観る前と観た後で、EP『One Last Kiss』を2度楽しめたという点では貴重な体験だったのかもしれない。

絶対に終電を逃さない女

絶対に終電を逃さない女
1995年生まれ。早稲田大学文学部在学中からライターとしての活動を開始し、卒業後はフリーで主にエッセイやコラムを執筆している。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて、東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』連載中。今年挑戦したいことは、作詞、雑誌連載、ドラマなどの脚本、良い睡眠。
Twitter:@YPFiGtH
note:@syudengirl

DADA『Yours』
選者:つやちゃん

DADA『Yours』収録曲 「High School Dropout」

今年国内において最もブレイクしたラッパーであろうDADAは、ソロ1stアルバムである『Yours』で、KOHHが泳ぎ進んできたヒップホップの海、その水面を、滴る液体で再びゆらゆらと揺らしてみせた。

偉大な先人によって確立された飾らないリリック、不安定な軌道を描くフロウ、エモラップ特有の陰鬱さは、DADAによって正しく継承され、一段と低いその声とともに底なしの海へ下降していく。2019年、KOHHが「ひとつ」で「泣いている地球/俺らはその一部/みんなでひとつ/喜びの水」とライムした“水”は、「俺は雨を感じれる側の人間だ」(「Void」)とホラー・タッチなラップで伝えられ、「2人で浴びるシャワー/ビショビショになった俺の指とベッド」(「DOWN」)と火照った肌や湿った声とともに描写された。

バイラルヒットにつながった「High School Dropout」もまた、「俺の首に垂らしてくれwater」という、液体を描写するパンチラインから始まる。首から下降し垂れるそのwaterは、透き通り滴るジュエリーのような煌めきを放ちながら、続いて「弟2人にミルクあげた」という素朴でまっすぐなリリックによってある日のDADAの幼き日常の記憶をも蘇らせる。

液体――しとしとと滴る体液、じめっとした水気――に、私たちの生きる営みそのものが宿っていることを、若きラッパーは教えてくれる。

つやちゃん

つやちゃん
文筆家。様々なカルチャーにまつわる論考を執筆。22年1月、単著『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』を上梓。
Twiter:@shadow0918
note:@shadow0918

Helm『Axis』
選者:伏見瞬

Helm『Axis』

当然ながら、僕たちの住む場所は地獄だ。コロナがあってもなくても地獄だ。古今も東西も問わず、大量の録音作品をスマートフォンのささいな操作だけで聴ける現状も地獄だ。昔に戻りたいという話ではもちろんない。僕たちはずっと、自らが暮らしている場所が以前から地獄であることを認識せずに生活してきたに過ぎない。相反するはずの飽和と貧困が重なり、寒く狭い部屋に閉じ込められたまま満たされていく地獄。生理を無視されたまま生かされる地獄。今僕は、地獄を生きることの歓びがどこにあるのか、考え続けながら動いている。

Helmの録音物は、常に先の地獄を知っている。それは、すでにそこにあったから。2015年のアルバムが”Olympic Mess”と名付けられたのは、2021年の予言でもなんでもない。僕たちは当時から「オリンピックの最低さ」を生きていた。ひしめき重なる電子ノイズが、理不尽な地獄を生きていた。

“Axis”と名付けられたHelmの新音源は、泥で泥を洗う僕たちの毎日から蠢き顔を出す。ロンドンで(パートタイムジョブを週4でこなしながら)15年のキャリアを重ねたHelmのサウンドは、ドラムンベースやアフロビーツのような新しい流れを無視しているが、Helmの音には未来と今が映っている。別に、このインダストリアルな電子音楽が普遍的だとは言わない。しかし、僕たちの地獄が続く限り、Helmの音は僕たちの“普遍”だ。表題曲”Axis”の、象の叫び声のようなループに、機械的軋みがいくつも衝突しては消えていく美しさ。そこに希望などない。そんなものは最初から要らない。地獄がもたらす歓び、それだけを僕たちは掴んでいる。お前には、絶対に渡さない。

伏見瞬

伏見瞬
東京生まれ。批評家/ライター。音楽をはじめ、表現文化全般に関する執筆を行いながら、旅行誌を擬態する批評誌『LOCUST』の編集長を務める。11月に『LOCUST』最新号vol.4が発売予定。主な執筆記事に「スピッツはなぜ「誰からも愛される」のか 〜「分裂」と「絶望」の表現者」(現代ビジネス)、「The 1975『Notes On A Conditional Form』に潜む〈エモ=アンビエント〉というコンセプト」(Mikiki)など。12月に単著『スピッツ論 「分裂」するポップ・ミュージック』(イースト・プレス)を上梓。
Twitter: @shunnnn002

Muqataa 『Kamil Manqus كَامِل مَنْقوص』
選者:もりたみどり、エリン・マクレディ「WAIFU」オーガナイザー

Muqata’a 『Kamil Manqus كَامِل مَنْقوص』収録曲 「Simya」

エリンと私は一緒に政治寄りなアートコレクティブをやっているのですが、このMuqataaの音楽作りは音楽という枠に留まらずとても現代美術的で、私達の活動と似た所があるので2人でこのアルバムを選ぶことにしました。彼はパレスチナの出身であり、街で聞こえる音、例えばパレスチナからイスラエルに入るチェックポイントの門の開く音やモスクから流れる音などをフィールドリコーディングしたり、アラブの伝統音楽など昔の音源からサンプリングをしたり、とても政治的かつコラージュのようなアートセンスで、アルバムの中での変化が非常におもしろく、アバンギャルドで音的にはクラブ音楽が好きな方も、実験音楽が好きな方も聴き飽きないアルバムです。エリンが今年最もよく聴いていたアルバムでもありますが、実は私は若い頃、青年海外協力隊でヨルダンに住みパレスチナキャンプでもボランティアをしていた経験もあり、パレスチナのアーティストをサポートしたい気持ちも含めここでご紹介いたします。

もりたみどり

もりたみどり
奈良県生まれ。アーティスト・イベントオーガナイザー。クラブができ始めた1990年頃から繊維素材を使ったアーティストとして活動し、クラブなどのデコレー ションを関西中心に手掛ける。1994年から約2年間、青年海外協力隊員としてヨルダンの大学でテキスタイルを指導する傍らパレスチナキャンプなどでボランティア活動を行う。2000年にエリンと結婚、3人の息子がおり最近は若手クリエイターの育成にも力を注いでいる(長男は都内でDJ、アーティストして活躍中)。母となったあとはとりわけ社会問 題に関心を持ち、ここ数年は特に韓日問題など戦後の日本のあり方についての作品を韓国で発表し続けている。

エリン・マクレディ

エリン・マクレディ
米国オハイオ州生まれ、テキサス州オースティン育ち。テキサス大学大学院修了。 青山学院大学 英米文学科教授・ファッションモデル。言語学者。専門は形式意味論、言語哲学。 オレゴン大学在学中に日本のパンクバンド「BOREDOMS」に魅せられ1994年に早稲田大学への留学を果たす。卒業後 再来日し現妻、みどりと出会い、互いのクラブ好きから意気投合し結婚。大学院修了後、大阪大学の研究員を経て現職 へ。 妻みどりとは「WAIFU」と「SLICK」のイベントの他にみどりとパートナーの3人でアートコレクティブ「MOM」と して現代美術の制作発表も行っている。

The post みんなの今年のベストアルバム・EPは? 「TOKION」執筆陣・ゆかりのクリエイターが選ぶ「2021年発表の私的ベストミュージック」  appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>
属性にとらわれず安全に楽しめることを目指すフェミニズムのためのクラブカルチャーを生み出す 「WAIFU」とは https://tokion.jp/2021/08/11/what-is-waifu/ Wed, 11 Aug 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=42318 新宿二丁目で起きた事件をきっかけにスタートしたパーティー「WAIFU」。チームの一員エリン・マクレディともりたみどりが「WAIFU」の活動を振り返る。

The post 属性にとらわれず安全に楽しめることを目指すフェミニズムのためのクラブカルチャーを生み出す 「WAIFU」とは appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>
新宿二丁目で起きたある事件をきっかけに、オーガナイザーが集まりスタートしたパーティー「WAIFU」。人種差別 やトランスジェンダー差別、同性愛差別、セクシュアルハラスメントを禁止するポリシーを掲示し、それに賛同する人 だけが入場できるシステムによって、セーファースペースを確保しながら、アンダーグラウンドなクラブカルチャーを体 感できる国内では唯一無二のパーティーだ。4月10日にはSUPER DOMMUNEで配信イベントを開催し、トランスカル チャーの歴史とクラブカルチャーとのつながり、クラブにおける障がい者のアクセシビリティについてなどさまざまな マイノリティーに焦点を当てたトークの内容が話題となった。

米国で性別変更をしたエリン・マクレディと「婦婦」関係であるもりたみどりは「WAIFU」運営チームの一員であり、 現在は不定期開催の過激な野外レイブパーティー「SLICK」も主催している。根っからのクラバーである彼女達に今までの活動を語ってもらった。

マイノリティー差別をきっかけにスタートした「WAIFU」

――WAIFUのイベントが始まるきっかけになった事件について教えてください。

エリン・マクレディ(以下、エリン):新宿二丁目(以下、二丁目)のあるクラブで友人のドラ・ディアマント(パリのクィア・シーンでアイコン的存在だったDJ)がゲストDJとして出演するパーティーに遊びにおいでよと誘われて、出掛けたんだけど、エントランスで入場を止められてしまって。女性を示す「F」って記載されているパスポートを提示したけれど、インカムで確認したセキュリティーが別の人を呼んで「トランスの方はお断りしています、そういうポリシーなので」の一点張りで。そのもめてるところにドラがやってきて「何やってるの? 入れてあげてよ」って説得して くれたけれど、オーナーとも話がつかなくて。結局、出番の直前だったけれど、彼女はレコードバッグを会場内に取り に戻って「もう出演しないから、さよなら」って帰っちゃった。オーナーは私達に向かって一方的に怒り叫んでいて。次の日の朝にその事件の経緯を伝えたら、みどりも怒りでスーパーサイヤ人みたいだった(笑)。

もりたみどり(以下、みどり):国が発行する身分証明で女性と証明されてるのに。トランスの人々の居場所や出掛けられるパーティーがないことに疑問を抱いたし、こんなクソみたいなポリシーを持つパーティーじゃなくて、自分達でイベントをやろうって動き出した。もともとパーティーを手伝ったりしていたから、知り合いに掛け合って。ゴールデンウィーク前だったから会場はほぼ埋まってて、条件付きだったけれど「青山 蜂」なら開催できるってなって。いざ開催したら、集客も想像以上で、それだけニーズがあったんだと思いう。「青山 蜂」からもレギュラーでやりましょうって話をもらって、風営法に対して(「青山 蜂」は2018年「客を深夜に踊らせた」という理由で風営法で摘発された)何かアクションを起こしたいという気持ちもあった。

――二丁目以外の場所を選んだんですね。

みどり:私みたいにそもそも二丁目に行く必要がない人も、LGBTQ当事者で二丁目に行く人達の中でも、二丁目カルチャー的なディーヴァ系のポップミュージック中心のノリや空間、どこの店に入っても同じ音楽が流れてるあの感じが 苦手なクラバーもたくさんいるし、そういう人をターゲットにしたパーティーやカルチャーを渋谷エリアで作っていきたいねって。私は彼女(エリン)がカミングアウトするまで全然知らなかったけれど、二丁目がLGBTQみんなにとって居心地が良い場所ではなく、ほとんどがゲイのための店で、レズビアンのための店は数%ほど、そのどちらもシスジェンダー中心で、トランスジェンダーやその他のセクシュアルマイノリティー当事者が安心して遊べる場所は実はものすごく少ないなど、パワーバランスが存在するので、そういうものに制限されない場所が理想だった。

エリン:二丁目ではシスジェンダーのゲイがマジョリティ、クィアの中でもトランスジェンダーやノンバイナリー、Aセクシュアルなど数の少ないクィアが特に仲間外れにされている。この事件もマイノリティー差別が要因。クラブには音楽好きが良い音を求めて集まるもの、出会いが一番の目的になってるもの、この2種類が存在していて。ベルリンは音楽に特化したクラブが大半で、ストレートとかクィアとか関係なく、シーンがすごく盛り上がってる。実際、 性自認や性的指向を物理的に判断することはできないはずだから。

――イベント名を「WIFE」だと勘違いしていました。つづりは「WAIFU」なんですね。

みどり:新しいパーティーをやろうって盛り上がった時に、いろんな国籍やバックグラウンドのメンバーが集まって英語だけどローマ字つづりで、両方の文化で通じるワードとして「WAIFU」があがって。「WAIFU」ってハッシュタグで SNSや画像検索してみたらわかると思うんだけど、巨大な胸をもつ女性の萌え絵みたいな、キャラクターがたくさん出てくる。

エリン:アニメや二次元のカルチャーでは自分のお気に入りのキャラクターを「俺の嫁」と言う様に女性を自分の所有 物の様な意味合いで「ワイフ」って呼んだりする文化がある。

――ポルノ要素が強い、過激なイラストが出てきますね。良い意味では使われていない印象です。

みどり:クィアって言葉もかつて蔑称として使われていた言葉を当事者があえて肯定的な文脈で使い返すことでリクレイムしてきたという動きがあったので、それを踏まえて同じように立ち上げメンバーの1人がこの名前を提案した。「WAIFU」はアジア人女性を客体化し、所有物として扱うと言った暴力的な意味じゃない。いつか「WAIFU」で検索したら今とは対照的な強い女性のイメージがたくさん出てくるようになったらおもしろいな、ということで。同時に、私達2人は「婦婦」として同性婚が日本の法律で認められるように活動を続けていて、さまざまな意味を重ねて「WAIFU」にしようって。

エリン:昔のフライヤーや告知画像を振り返ると「WIFE」になってる。

みどり:あれって実はスペルミスで(笑)。1回目のフライヤーには白人女性のヌード写真を素材として使ったことで、 議論を呼んだりもした。


――マイノリティーの世界も複雑ですね。

みどり:こういうのが重なり、大変! とはなったけど、その時々に寄せられたさまざまな意見を聞いて運営メンバーで話し合いながら勉強し、少しずつアップデートしていけたらと思ってる。なので「WAIFU」に関してはフェミニズ ムやLGBTQを理解している人で運営を固めていきたいなと。このロゴもフライヤーも一貫してsuper-KIKIちゃんがデザインしてくれた。彼女は「feministD.I.Yクラフター」という肩書で活動していて。今後、 #WAIFUで検索した際に、強い女性像が表示され、「WAIFU」がアンダーグラウンドカルチャーの中でフェミニズムを象徴する言葉になれば嬉しい。

――クィアについての理解度はなかなか深まらない印象ですね。

エリン:最近読書会を主催することになって、ダナ・ハラウェイの作品を課題本にしようと思った。でも、彼女の本の翻訳版は難しい漢字やカタカナの専門用語がずらりと並んでいて、すごく難解で。これを課題本にしてしまうと誰も来ないんじゃないかって(笑)。

みどり:私はストレートだからこそ、「WAIFU」運営チームの中にいる意味があるなと。「え? それ何? どういうこと? 」って疑問に思ったり、シスストレート目線でいられるから。「WAIFU」にしてもLGBTQにしても社会に定着させていきたい思いはすごく大きい。

エリン:アカデミックに理解している人にしか開かれていないし、バックグラウンドがない人は意見することもできない。マイノリティー内で階級や人種の差別などあるのが現状。ベルリンのパーティーとかはそこらへんの意識が高い。

共通する2人の人生のゴール

――「WAIFU」をスタートして、2人の関係性に変化はありましたか?

エリン:パーティーをスタートした頃と、私の性別移行の時期が重なっているから、その変化を端的に説明するのは難しい。

みどり:それまでは私達2人や家族間の問題だったけど、「WAIFU」をきっかけに社会的な活動をシェアするようになって。

――急激な変化ですよね。

みどり:すごく変わった。「WAIFU」のようにパーティーで差別禁止のステイトメントを掲げることが日本のクィア・ シーンやクラブ・シーンで先駆けみたいになって。最近は若い子達もステイトメントを掲げてイベントをやるようになってくれた。

エリン:トランスジェンダーとしてカミングアウトして、メディアなどにも出て、意見を求められるようになって。その当時のことを振り返ると、間違っていたこともある。それって全く悪いことではないんだけど、日々自分の考え方は変 化している。

みどり:家族の新しい形をテーマにインタビューされることが最近ぐっと増えた。私達はもともと恋愛関係にあったけど、今は一切ない。彼女は彼女で恋人がいて、私は私で恋人がいたりいなかったり。当初の予定では、1月から彼女の恋人も来日して一緒に住むって話になってたんだけど、このコロナでビザ待ちでまだ実現できてない。

エリン:もう1年会えてなくて、すごく疲弊してる。

みどり:何がどう作用して、どんな変化を生んだのかってことはわからないけれど、関係性はすごく変わったと思う。 悪いほうには全く変わってないけど。出会った時と今の関係は全く別物だけど、結局のところ人生におけるゴールはお 互い共通してる。人権を持って幸せに生きたい、そのために何かできることをしたい。これって多分私達だけでなく、みんなに共通しているゴールなんじゃないかな?

――パーティーを運営していて大変だったことは?

みどり:昨年の12月に渋谷のCONTACTでオールナイトのカウントダウンイベントを開催したの。無観客じゃなくて、お客さんを入れるイベントだったから「この時期に何をやってるんだ!」って、「WAIFU」のお客さんの中でもバッシングする人が出てきて。私達は対権力を重要視していて、コロナへの国の対策には不信感や抵抗感がある。なんで夜8時まで? 酒類の提供をやめる理由は?

――納得できない部分が大きいですよね。

みどり:それに加えて、私達は若い世代の人々をすごい大切に思う気持ちも開催の動機だった。10代、20代の1年は貴重だし、コロナだからただひたすらじっとしていましょうって、そんなのメンタルがやられてしまう。今でも日本の若年層の死因の一番は自殺で、コロナや病死はわずか。若い子達のサポートをしたいっていう意味でも、強行突破してイベントを開催した。開催前もあともいろんな意見があったけれど、賛否両論だよね。何が正しいかなんてすぐにわかるはずがないから、自分達で判断するしかない。

エリン:企画を進めた10〜11月頃は少しコロナもおさまっていたから、大丈夫かなって。そこから年末にかけて感染者数が急増して、キャンセルしたほうがいいんじゃないかって話もチーム内で浮上したけれど、DJにもすでに出演をオファーしてるし、私達にはキャンセルする資金なんてなかった。

みどり:資金がないっていうのもあったけど、本当に多くの出演者がギャラの問題以上に、この状況の中で開催することに意味を感じてくれていたし、やっぱりやりたい気持ちが強かった。クラブ側からキャンセルを打診されたら、中止したかもしれないけれど、クラブ側が人を入れたいのであれば、そこにあるカルチャーをサポートしたい気持ちが強かったから。それからいろいろあって、パーティーやイベントをしばらく休んでいたけれど、がんで亡くなったドラの命日に「SUPER DOMMUNE」で追悼イベントを開催した。

アクセシビリティが保証され、アンダーグラウンドな唯一無二の「DOMMUNE」とタッグを組む

みどり:車椅子ユーザーでジャーナリスト兼ファッションライターの徳永啓太君や全盲で「NPO NEW VISION」を設立した松村智也君をトークゲストとして呼び、アクセシビリティとクラブについて語ってもらって。日本でバリアフリーでイベントをやれるのってCONTACTくらいしかない。アンダーグラウンドであればあるほど、設備などが整っていないのが現状で。そういう話をDOMMUNEでテーマにしたら、「パルコって最高じゃんって。エレベーターもあるし、そういう方々が不自由なく使えるユニバーサルトイレもある。パルコでパーティーやればいいんじゃない」って展開になって。 DOMMUNEの宇川直宏さんも「この場所にそんなメリットがあるなんて!」って驚いてたし、後日別のイベントでもこのことに触れて、宇川さんが「身体障害者手帳の提示でDOMMUNEの入場を無料にします」って宣言してくれた。コロナがおさまるまでは難しいけれど、屋上でパーティーもできるし、今後はアクセシビリティも保証されていて、アンダーグラウンドなDOMMUNEと手を組んで新たなプラットフォームを築いていけたらいいな。

エリン:クィアの人達は孤立しやすい傾向にあるけど、痛みを知っている分優しいので、モラルなどを気にして行動できないのは違うかなって。自分達で今の状況を把握して、1人ひとりが責任持って行動してもらうしかない。

――2人がそれぞれ思い描いている未来はありますか?

みどり:毎日のことで精一杯だから先のことを具体的には意識してないけれど、1年に何回かイベントを開催できればいいな。マイノリティーの人達も来れる、条件の良い場所で、アンダーグラウンドの素晴らしい出演者がたくさんのや つ。配信だけじゃなく実際のイベントができればと。

エリン:遠い将来のことは考えてないけど、出張「WAIFU」は実現したい。

みどり:関西には「SLUT WALK OSAKA(リンク)」というイベントがあって、一緒に何かできたらって話をしていて。

エリン:私は来年仕事で1年ベルリンに移住する予定で、ドイツのクィアのフェスとも関係を持たせられたらいいな。今は「WAIFU」以外にも「SLICK」という野外レイブパーティーもスタートさせたから、それぞれの特性を生かし、すみ 分けしながら継続していきたい。「WAIFU」はスローガンを掲げ、制約があることでセーフティーネットになっていて、クィアでソフト。「SLICK」はベルリンのパーティーを意識してクィアでハード。そこでやろうとしてるパフォーマンスは「WAIFU」ではできないの。それを見てトラウマを思い出す危険性が潜んでいるから。「SLICK」は無法地帯。

みどり:「WAIFU」は元から意識を持っている人の集まりで、「SLICK」は意識が低くても、パーティーに来場してもらうことで意識を持ってもらうことに意義がある。「WAIFU」はセーフティーになり過ぎちゃってる側面もあるけれど、そういう場所があることがとても大事。 私達には「SLICK」「WAIFU」どちらも必要で、継続していくためにこれからも試行錯誤していきたい。

エリン・マクレディ
米国オハイオ州生まれ、テキサス州オースティン育ち。テキサス大学大学院修了。 青山学院大学 英米文学科教授・ファッションモデル。言語学者。専門は形式意味論、言語哲学。 オレゴン大学在学中に日本のパンクバンド「BOREDOMS」に魅せられ1994年に早稲田大学への留学を果たす。卒業後 再来日し現妻、みどりと出会い、互いのクラブ好きから意気投合し結婚。大学院修了後、大阪大学の研究員を経て現職 へ。 妻みどりとは「WAIFU」と「SLICK」のイベントの他にみどりとパートナーの3人でアートコレクティブ「MOM」と して現代美術の制作発表も行っている。

もりたみどり
奈良県生まれ。アーティスト・イベントオーガナイザー。クラブができ始めた1990年頃から繊維素材を使ったアーティストとして活動し、クラブなどのデコレー ションを関西中心に手掛ける。1994年から約2年間、青年海外協力隊員としてヨルダンの大学でテキスタイルを指導する傍らパレスチナキャンプなどでボランティア活動を行う。2000年にエリンと結婚、3人の息子がおり最近は若手クリエイターの育成にも力を注いでいる(長男は都内でDJ、アーティストして活躍中)。母となったあとはとりわけ社会問 題に関心を持ち、ここ数年は特に韓日問題など戦後の日本のあり方についての作品を韓国で発表し続けている。

Photography Shimpei Nishioka
Cooperation NEWSANDO

The post 属性にとらわれず安全に楽しめることを目指すフェミニズムのためのクラブカルチャーを生み出す 「WAIFU」とは appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>