佐藤康気 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/佐藤康気/ Sat, 19 Feb 2022 00:40:15 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 佐藤康気 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/佐藤康気/ 32 32 ニューヨーク拠点の写真家、佐藤康気が表現する写真表現の根底にあるもの https://tokion.jp/2022/02/19/interview-photographer-koki-sato/ Sat, 19 Feb 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=96878 パンデミックの渦中、佐藤康気がニューヨークの自宅を起点に制作した写真集『NOSTALGIA』での写真表現を巡って。

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ニューヨークを拠点に活動を続けている写真家、佐藤康気。これまでにも幾度かの展示を東京でも行ってきた経緯があり、去る2021年12月に、渋谷の「THE PLUG」で写真集『NOSTALGIA』のローンチと展示を行った。事前に大々的な告知があったわけでもないのに、実に多くの人がエキシビションに足を運び、最終日前には用意してきた写真集がソールドアウトするほどの盛況ぶりだった。

その佐藤康気の写真と言えば、人物ポートレートが多く、私自身、そういった印象を強く抱いていたのだが、本展示では風景を映し出した写真が展示され、写真集にも(人影や人物を連想させるカットはあるが)ポートレートは収められていない。
本作は、NYがパンデミックの混乱にある渦中で制作をスタートさせたものだが、そこにはどんな思いが込められているのか。ひいては、佐藤康気が写真表現のルーツに感じているのは、どのようなことなのかを尋ねた。

パンデミックの渦中で挑んだ風景写真作品の制作

ーーニューヨークを拠点に活動されている佐藤康気さんですが、まずは渋谷で開催されたフォトエキシビション「NOSTALGIA」の話からお伺いしたいと思います。

佐藤康気(以下、佐藤):今回展示した作品は風景写真のみなんです。人物のポートレートが1点もないというのは初めての試みですね。展示を開催したきっかけは、写真集『NOSTALGIA』の制作が大きく関係しているんですよ。

ーー写真集を作ることになった経緯について教えてください。

佐藤:本作はParadigm Publishing(ニューヨークを拠点にするパブリッシングレーベル)と一緒に制作しました。このレーベルを主宰するセオフィロス(・コンスタンティノウ)とは知人のフォトグラファーを介して4、5年前に知り合って仲良くなり、いつか一緒に本を作ろうって話をずっとしていたんですね。そんなある日、彼が拠点をニューヨークから移すことになって、ニューヨークにいる間に僕の本を形にしたいと言ってくれたことで制作が実際にスタートしました。それが2020年の、まさにパンデミックの真っただ中のことでした。実際の制作期間は2021年まで続き、入稿のギリギリまで撮影を続けていました。

ーー佐藤さんの作品ではポートレートが多い印象なのですが、『NOSTALGIA』で風景をメインにしたのは、どういった理由があるんですか?

佐藤:セオフィロスが僕の写真を見た時に「ポートレートもいいけど、風景写真のほうが引かれるんだよね」って話をしてくれたんです。彼の視点から見ると、日本人である自分が捉えるニューヨークの景色、そこに映し出される色使いや構図、街中のディテールにおもしろさを感じてくれたんだと思います。彼が、そう感じてくれたことがすごく嬉しかったので、風景写真だけで作品を構成しようと考えるようになって……。「パンデミックになって人に会えなくなったから」ということは必然的にあったんですけれども、それだけが理由で被写体が変わったわけではないんですよ。もともと僕が撮影していた風景写真に、セオフィロスが魅力を見出してくれたことが、きっかけなんです。

ーー実際に風景を撮影していく過程で、自分の中に芽生えたことや、感じたことを教えていただけますか?

佐藤:2020年の前半は、人に会えずに家の中にいながら制作を続けなくてはいけない状態でした。当然、モチベーションも下がってしまいがちになるんですが、制作に向かう気持ちを高め続けながら撮影しなければならなかったわけですよね。それは、やはり孤独な戦いでした。これは写真家だけではなく、創作を行う人であれば全員が同じ状況だったと思うんですけど。

ーーそうですよね。誰もがパンデミックによる環境の変化に対応しなくてはいけない状況でした。

佐藤:その孤独や葛藤がある中で、何よりも原動力になったのは将来に対する希望だったと思うんです。特に去年は精神的にも、生活的にも極限の状態まで追い詰められていたんですが、こんなことで負けてたまるかっていう気持ちが、写真を撮る大きな原動力になっていたと思います。

ーータイトルでもある『NOSTALGIA』は、そのまま和訳すると“過去を懐かしむ心”といった意味になりますが、その思いは込められているんですか?

佐藤:今現在、昔のことを懐かしく思っている気持ちを表現したわけではなく、未来の自分が過去を振り返った時に抱く感情として、『NOSTALGIA』というタイトルを付けています。これから先、ポジティブな気持ちを絶やさずに写真を撮り続けながら、活動を積み重ねていくことの1つとして、今回の作品があるという感覚ですね。未来から見た今の自分の気持ちというのは、きっとすごく懐かしくもあるでしょうし、どんな時代であっても、写真を撮り続けていかなくては、先々に過去を振り返ることもできないじゃないですか。ある意味、自分の決意めいたものを落とし込んだタイトルでもあります。

光をテーマに新たなアプローチを表現した作品

ーー展示されていた作品の中で、写真の内容について、いくつか解説してもらってもいいですか?

佐藤:このマンハッタンの光景を写した写真は、本作のキーにもなっている作品です。これはコロナ禍になった時に、この環境で何を作っていくかを自分なりに考えていて、ふと家の屋上に上がってみようと思ったのがきっかけなんですよ。ちょうど日が落ちていくタイミングで撮影した1枚なんですが、精神的にもすごく助けられたというか……。あたりまえのことなんですけど、毎日変わらず日が昇って落ちていくんだなって根源的なことを感じたんです。これを撮った時に、もしかしたら毎日記録してもおもしろいんじゃないかと思って、毎日日が沈むタイミングで屋上から撮影することをルーティンにしました。

ーーそこから、ずっとマンハッタンを撮影し続けたんですか?

佐藤:そうですね。ただ、2週間ぐらい続けて、これのコンセプトは何だったのか? って悩んじゃったんですよ。それで、妻に「毎日撮ってるけど意味があるのかな」って相談をしたら「きっと撮り続けたらいつか発表する機会があるかもしれないし、私達家族の希望だと思って撮り続けたらいいよ」ってことを言ってくれて。そう言ってくれる人が自分の周りにいるのであれば続けていこうって思えました。救われたという意味で、この写真はすごく思い入れが強いですね。これを撮ってから、必ずしも特別な状況でなくても、自分が表現したいものを撮れるんじゃないか、むしろ写真表現としては、もっと幅広いことに挑戦できるんじゃないかって考えるきっかけにもなりました。

ーー他の作品について、印象的なもの作品を挙げるとすると、どの写真ですか?

佐藤:挙げるのであれば、この雨が降って水滴がついている窓ガラスの写真ですかね。これもマンハッタンの写真と同様に、定点観測的な撮影手法を用いたもので、今回の展示においては水のシリーズと、夕日シリーズがあるような感覚です。共通するのは光がテーマにあるということ。この2シリーズは、コロナ禍において、コンセプトを持たせた上で写真を撮るというアプローチで始めたことなので、自分の中でも印象に残っています。

ーーではここからは、佐藤さんが写真を撮り始めるに至った経緯について教えてください。

佐藤:元をたどると、東京工芸大学で写真を専攻していたんです。写真の道を志したのは、今となっては気恥ずかしいんですが、高校生の頃に観た映画『シティ・オブ・ゴッド』がきっかけで……。

ーー映画『シティ・オブ・ゴッド』は、主人公の役どころがフォトグラファーですよね。

佐藤:そうです。そこに憧れめいたものがあったんですよね。将来的にクリエイティブな仕事をやりたいと考えていたこともあって、その手段を写真にしたらおもしろそうだと思ったんです。

ーーニューヨークに拠点を移されたのは?

佐藤:20歳の時に、ニューヨークに住んでいた従兄弟を訪ねて行ったんですけど、JFKからマンハッタンに入って47丁目のブロードウェイ辺りでタクシーを降りた時に、街を見渡して衝撃を受けたんですよね。あの感動は今でも忘れられないんですけど、その瞬間に、ここ(NY)に住みたいって感じたんです。実際にニューヨークに渡ったのは2009年になります。

ーーそして現在もNY拠点で生活や創作をされているわけですが、今後もずっとニューヨークで活動されていくんですか?

佐藤:最初の頃は、こんなにも長くニューヨーク生活を送るとは考えていなかったんですよね。僕は東京生まれなので、当時は東京を拠点にニューヨークに行っているという感覚だったんです。それが、ニューヨークにいる時間が長くなって、生活の基盤ができあがっていくにつれ逆転していき、最近ではニューヨークから東京に来ているという感覚になってきたと感じています。自分の制作活動は1人ですべてが完結できるわけではなくて、自分の性格を理解して活動をサポートしてくれる人がいるおかげで、今こうしてやっていけているので、信頼できる仲間がいる限りは、もっといろいろなことを彼らと一緒にやっていきたいし、いられる限りはニューヨークを拠点に活動していきたいという気持ちです。

ルーツにあるのは街自体が持つ絶対的な魅力

ーーなるほど。では、今回の展示「NOSTALGIA」から少し離れますが、佐藤さんの写真のスタイルや、原点にあるものについて教えてください。2015年にはニューヨークのダンスクルー、We Live Thisを撮影した展示を現地で行われていますよね。

佐藤:そうですね。高校時代にダンスを始めて、そこからヒップホップやハウスといった音楽やカルチャーを知るようになっていったので、シンプルに憧れや好きなものを撮影する延長線上に、地下鉄で踊るWe Live Thisがいたという感じです。僕のルーツにあるのは、「都会」を舞台にすることで、それがその街にいるという1つの意味なんだと考えているんです。東京にしろニューヨークにしろ、街自体にすごく魅力を感じていて、そこで出会う人達や風景とセッションしたい気持ちは、常にありますね。

ーー展示を終えて、次に表現してみたいことや作りたいものはありますか?

佐藤:本作での風景写真は、評価していただけた方も多くいらっしゃったので、今後も続けていきたいことの1つになりました。人物を撮影することは、常に自分にパワーを与えてくれるので、今まで通り変わらずに撮り続けていくと思います。
実は今、ブロンクスにいるスケートクルーのドキュメントを撮りためているんですよ。もう2年間ほど続けていることなんですが、かなり写真がたまってきたので、写真集なのかZINEなのかわからないですけど、これも形にしたいと思っています。
将来の自分の目標としては、より作品のクオリティを上げていきたいと考えていて。具体的に言うと、フレーミングとプリンティングの技術をもっともっと上げていきたいと考えています。撮影することは、どれだけ自分が動いて撮りためていくかということだと思うんですが、それをアウトプットするときの過程にもこだわっていきたいということですね。

ーー写真以外で自分を表現したいとは考えないですか?

佐藤:今のところはないですね。僕は1枚で表現できるというところに、写真の魅力を感じているんです。例えば映像であれば、前後のつながりの連続性があって成立していますよね。でも、写真は観た人が前後の物語を自由に想像したり感じたりすることができるものだと思うんです。そこにロマンを感じているからこそ、写真表現をもっと突き詰めていきたいと考えています。

佐藤康気
2009年よりニューヨークを拠点に活動を続けている写真家。2016年に写真集『99¢ CITY』、2019年に『fragile』を発表。2021年11月には、ニューヨークの「MAST BOOKS」にて写真集『NOSTALGIA』のローンチと写真展示を行う。その後東京では、「THE PLUG」にて、同作品のローンチと展示を行った。
Instagram:@kokisa10
https://paradigmpublishing.co/products/nostalgia-koki-sato

Photography Yuta Kato

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今年は何をした? 「TOKION」スタッフによる2021年に買った・観た・読んだ・聴いた“ベストワン” https://tokion.jp/2021/12/30/tokion-the-best-one-2021/ Thu, 30 Dec 2021 11:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=87639 「TOKION」スタッフが2021年を振り返って、思い出に残る買い物、音楽、展覧会、イベント、本など、それぞれの“ベストワン”を紹介。

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2021年も残すところ、あと1日。思い返すと今年もコロナウイルスが完全に終息することはなく、誰にとっても苦しい年だったのではないだろうか。不確実かつ過酷な状況は、もう少し続くことになりそうだが、その一方で、年間を通して素晴らしい作品やイベントなどが数多く届けられたのも、また事実。そこで、年末特別企画として「TOKION」スタッフが2021年を振り返って、思い出に残る音楽、展覧会、イベント、本、ビューティなど、それぞれの“ベストワン”をお届けする。

クリスチャン・マークレー
「Found in Odawara」

11月27、28日に行われたクリスチャン・マークレーによるサウンドパフォーマンス「Found in Odawara」の初日に参加しました。パフォーマンスが披露された場所は、現代美術作家の杉本博司さんが手掛けた江之浦測候所というこれ以上ない舞台。以前、札幌国際芸術祭で観て以来のパフォーマンスは、マークレーにとって初となる屋外での開催となりました。江之浦測候所を歩き回り、日用品やガラクタを使った即興演奏に鳥の鳴き声や葉が揺れる音、電車が通過する音、自分の呼吸音、来場者の足音が重なり、加えて木々の匂いから相模湾を望む風景にいたるまで、すべてがマークレーによってコラージュされた世界の中に自分だけが存在しているような感覚さえ覚えた、崇高さに満ちた体験でした。2022年は今年以上に、自由な人の往来と屋外のイベントが開催されることを切に願います。
(エディトリアル ディレクター 芦澤純)

佐藤康気、ジョナサン・レンチュラーの写真集

写真集は手には取るけども、雑誌と違ってなかなか食指が動かずな自分でしたが、今年は思わず購入したのがこの3冊です。左から、ニューヨークを拠点に活動中の写真家、佐藤康気の『Nostalgia』、こちらもニュークヨークベースに活動中の写真家、ジョナサン・レンチュラーの『Remembering the Future』『Be There Soon』。佐藤さんの写真集は「今、この瞬間に隠された美学を探し求める旅」と、コロナ禍のニューヨークで撮影された写真が収められていて、なにげない風景なのですが、しばらく見つめていたくなる奥深さがあります。ジョナサンの写真集は、ZINEのフォーマットで、ニューヨークの「ラブパーク」で撮影された写真がシルバーとゴールドのメタリックペーパーに印刷されていて、それだけでも一見の価値はあります。そして収録されているスケーターのポートレートは、まるで映画のワンシーンのような雰囲気があって引き込まれました。2人ともに近々記事が公開されますので、ぜひとも読んでみてください。来年もいろんな写真集に手を伸ばしていこうと思います。
(エディター 相沢修一)

松本大洋
『東京ヒゴロ』

松本大洋さんの待望の新作『東京ヒゴロ』。松本さんが「漫画」の世界を描くという注目度の高い1冊。本作は漫画編集者の塩澤和夫が主人公で、物語は30年勤めた大手出版社を退職するところから始まります。物語も最初こそは中年の悲哀を感じさせるものの、新たに理想の漫画雑誌を作るために、好きな漫画家に声をかけていくという展開は、決して派手ではないですが、ある種の冒険もののようなおもしろさがあり、読んでいてワクワクします。登場人物も1人ひとり魅力的に描かれており、さすが松本大洋さんといった感じで、読後はあたたかい気持ちになります。まだ1巻が刊行されたばかりなので、今後の展開への期待を込めて。
(エディター 高山敦)

キング・クリムゾン
「MUSIC IS OUR FRIEND JAPAN 2021」

昨年に続きコロナが猛威を振るった2021年。この状況下で観覧したライヴには、1つひとつ思い入れがあるものの、中でもキング・クリムゾンは別格でした。今回はコロナ禍以降、初の海外ミュージシャンによる単独来日。そして、バンドにとっても最後の日本ツアーということで、2日分のチケットを購入。ツアー開始から数日後には海外からの入国者を規制する報道が出るなど、まさに奇跡的なスケジュールで開催されました。

ステージ前方に設置されたトリプルドラムという嘘みたいな編成では、3人がそれぞれ違ったビートを同時に刻んだり、1つのパートをかわるがわる演奏したりしますが、そのさまはまるでサーカス。少しでもタイミングがズレたら手やバーを握り損ねてしまう空中ブランコのような、バランスを崩したら落ちてしまう綱渡りのような緊張感が、曲全体に迫力とエンターテインメント性をもたらします。この緊張感は彼らのライヴでしか体験できないため、願わくばもう一度観たいものです。
(エディター 等々力稜)

英国RAF(ロイヤルエアフォース)MK4ジャケット

ファッションアイテムは、生来的にある種のあざとさを含み持つもの。「どう見えるか」を考え尽くされたデザインは、その高い自意識ゆえに美を体現するのではないでしょうか。その意味で、コロナ禍でSNSを見る時間が増え、ネット上に溢れる「あざとさ」や「自意識」に食傷気味だった時期に、ミリタリーウェアを手にしたのも必然かもしれません。機能性に振り切った合理的なデザインのリアルなミリタリーウェアは、あざとさとは無縁です。だからこそ、「用の美」にも通じる魅力が、幾多のデザイナーに影響を与えてきたのかもしれません。

そんな訳で、今年一番の買い物は、英国RAF(ロイヤルエアフォース)MK4ジャケット。多くのデザイナーにサンプリングされてきた名作MK3の後継であるMK4は、生地がゴアテックスにアップデートされ、より高い機能とクールさを備えています。来年はこれを着て安心して出かけられる日常が戻ることを願いつつ。
(翻訳 佐藤慎一郎)

岡﨑乾二郎
『感覚のエデン』

10月に亜紀書房より刊行された、造形作家・批評家である岡﨑乾二郎さんの批評選集第1弾。英詩人ジョン・キーツが提唱した「ネガティヴ・ケイパビリティ」の概念の基軸に芸術作品の時の隔たりを超える力について論じた「聴こえない旋律」、旧約聖書におけるアダムとイヴのエピソードを緒に無数の方向への運動=「星座」としての音楽、絵画の在りようを説く「感覚のエデン」、その思考や制作プロセスに深く分け入り異能の米ダンサー・コレオグラファーを紐解く「トリシャ・ブラウン――思考というモーション」など、さまざまな場所で発表された批評やインタヴューなど29編のテキストを収録しています。「意味」や「本質」、「今ここ」にとらわれてしまいがちな中、そこからの隔たり・断絶において開かれる可能性、新しい公共性の在りようなどを鮮やかかつ精緻に描き出す本書は、私達に新しい視座を、「星座」を認識する力を、もたらしてくれます。そして、そこで見出された「星座」が放つ輝きは、困難な時代の前途を照らす光となるのかもしれません。岡崎さんご自身のドローイングが配された色鮮やかで触感性あふれる表紙、見返しも素晴らしく、造形作品としても強い存在感を放つ1冊です。
(コントリビューティング エディター 藤川貴弘)

浅井万貴子の土器

野焼きで土器のオブジェをつくっている浅井万貴子さんの作品。元々は真っ黒でした。ピエール・スーラージュの作品を思わせるような黒の中のテクスチャー感、立体感に一目惚れして購入したのですが、さっそく飾ったその晩に震度5の地震がありまして、朝起きると倒れて2つに割れてしまっていました。展示会にご本人が在廊されていましたので、思い切って相談すると、なんと焼き直して修復してくださると。その後メールのやりとりでは、野焼きの様子の写真なども送ってくださり、少し姿は変わりましたが、製作に立ち会えたような、思い出深い作品になりました。禍転じて福と為す。
(デジタル ディレクター 櫻井雅弘)

MIHO MIYAKAWAデザインのネイルチップ

緊急事態宣言発令中、ネイリストのMIHO MIYAKAWAさんが、ミニバッグとオリジナルネイルチップのセットをリリース。「TOKION」でもインタビューを敢行したNOT WONKのカラフルなネイルが目を引く『dimen』のジャケットでもおなじみのMIHO MIYAKAWAさん。今回はライアン・マッギンレーのアシスタントも務めた気鋭の写真家、チャド・ムーアの作品のイメージでネイルチップをオーダーしました。被写体の女性の顔のパーツや、昼から夜に移りかわろうとしている曖昧な空の色をグラデーションで表現し、耳元で光るイヤリングはシルバーカラーでぷっくりとワンポイントに。そして、私のイニシャルがオールドイングリッシュフォントで中指のデザインに落とし込まれました。沈んだ気持ちの中でも大好きなアーティストの作品を指先にまとえ、元気をいただける素敵な企画でした。
(デジタル プロダクト マネージャー 稲葉礼子)

「国産家庭環境音楽2021」

2021年、推定600枚程度のレコードを購入した中で、マイベストなレコードをピックアップしました。さすがに1枚は難しいのでテーマを決めて複数枚を選出。題して「国産家庭環境音楽2021」。

年明けから緊急事態宣言、昨年以上に在宅時間も増えレコードを再生できる時間が大幅に増えたのはうれしかったものの、我が家はリビングの片隅に数千枚のレコード棚があり、受験を控えた娘と妻が同じリビングにあるテーブルで勉強をしています。必然的に音量は控えめに冷蔵庫や室外機、ペットである亀の水槽のモーター音等と良い塩梅で混じるドローンミュージックや家庭環境に配慮した、サティの家具の音楽等、耳触りの良い環境音楽的なレコードを多く再生しました。そして、今年はかつてなく多くの新譜のレコードを購入し、海外の作品でも素晴らしいものはたくさんあったのですが、深く印象に残り愛聴したのは日本の音楽。文字数の都合で個々の説明は割愛しますが、Phew、置大石、畠山地平は素晴らしいライヴも観ることができました。

旧譜では、惜しくも今年亡くなられたYOSHI WADAのオリジナル盤を2枚入手。先日山梨で行われたトリビュートライヴに参加できなかったのが、今年唯一の心残り。元来、上記のジャンルからは外れるかもしれない新生TORSO、瀧見憲司氏のCLUE-LWAVE、笹久保伸(&サム・ゲンデル)も自分にとって最高の環境音楽で何度も繰り返し聴きました。しかし、振り返ると決して我が家の家庭環境には配慮していないレコードが多くあることに気付きます。来年はもっと家庭環境に配慮した音楽生活を送ろうと思います。
(パブリッシング ディレクター 櫻井啓裕)

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