LIGHTHOUSE Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/lighthouse/ Fri, 15 Sep 2023 00:16:21 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png LIGHTHOUSE Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/lighthouse/ 32 32 佐久間宣行が考える40代以降のクリエイティブと自身の未来 「40歳までにいろんなものを吸収しまくってきたからこそ今がある」 『LIGHTHOUSE』インタビュー後編 https://tokion.jp/2023/09/15/interview-nobuyuki-sakuma-lighthouse-vol2/ Fri, 15 Sep 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=207849 Netflixシリーズ『LIGHTHOUSE』の企画・演出とプロデューサーを務める佐久間宣行インタビュー。「中年の危機」をテーマに、佐久間自身のキャリアと未来に迫る

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佐久間宣行
1975年、福島県いわき市生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『ピラメキーノ』『ウレロ☆シリーズ』『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』『キングちゃん』などを手掛ける。元テレビ東京社員。2019年4月からラジオ『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティを担当。YouTubeチャンネル『佐久間宣行のNOBROCK TV』も人気。Netflix『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』、『LIGHTHOUSE』〜悩める2人、6ヶ月の対話〜を手掛け、2023年10月10日から『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』のシーズン2も配信。著書に『佐久間宣行のずるい仕事術 僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた』(ダイヤモンド社)などがある。
Twitter:@nobrock
Instagram:@nobrock2

漫才師の若林正恭(オードリー)と音楽家の星野源が、それぞれの苦悩や問題意識について互いに語り合う、Netflixシリーズ『LIGHTHOUSE』が配信された。企画・演出とプロデューサーを務めるのは佐久間宣行。Netflixでは『トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~』に続く2作目となる。インタビュー後編では、番組でも話題に上がった「中年の危機」をテーマに、佐久間自身のキャリアと未来に迫る。

退社したのはセルフケアの観点が大きかった

——『LIGHTHOUSE』では、いわゆる「中年の危機」的なことがたびたび話題に上がっていましたが、佐久間さん自身はどうですか。

佐久間宣行(以下、佐久間):そもそも僕が2年前に会社を辞めたのは、これ以上会社にいると、どうしたって社内政治とも向き合わなきゃいけない年齢だったからで。うまくできたかもしれないし、できなかったかもしれないし、それはやってみないとわからないけど、そこに時間を取られるのはきついな、メンタルはやられるだろうなっていうのはわかったから。それだけが理由ではないですけど、理由の1つではありますね。セルフケアの観点がやっぱり大きかったと思います。

——メンタルではなく、体力的な不安を感じたりもないですか。

佐久間:これは本当に申し訳ないけれど、僕はないんですよ。すこぶる元気です(笑)。

——「もうやりきった」「飽きた」みたいなこともない?

佐久間:うーん……ないですね。というか、『LIGHTHOUSE』で話していた2人の苦悩は、漫才にしても音楽にしても、ゼロから作る表現じゃないですか。自分の中から作品を生み出し続けるのは、想像を絶する苦しさだと思います。

その点、僕の場合は、あの人にはどんな企画が合うだろうとか、あの人にこんなことをやってほしいとか、企画を考えるにしても、基本は誰かをサポートするような役回り。ゼロから作品を生み出すのとは全く違う。なので、作家の人達が言う「やりきった」とかは、今のところないですね。前に秋元康さんが、「自分の中から出てくるものだけで歌詞を書いていたら、30代で何も生まれなくなってた」って言ったんです。秋元さんの作詞は、自分のための表現ではなく、目の前にいるグループのメンバーに向けて書いてるから。

——条件や制限がある中での番組作りも、苦ではないですか。

佐久間:むしろ、左脳で考えなきゃいけない条件や制限があるほうが、僕はアイデア浮かびますね。好きなように自由にどうぞって言われると、何作ったらいいかわからない。よく人から「佐久間さんは理詰めで作ってますよね」とか言われますけど、僕は入り口から途中まではバチバチに理詰めで考えて、最後は適当に遊びを入れるんです。そういうバランスが自分には合ってるんでしょうね。

企画は40代前半のうちに思いついておこう

——番組の中では、これからの未来をどのくらい見据えているかも話題になっていました。

佐久間:僕は根がネガティブなので、40歳になった時にはもう、5年後には自分のセンスはバラエティでは通用しないなと思ってましたよ。だからこそ、企画は40代前半のうちに思いついておこうって。今のところまだズレないでやれているのは、40歳前後までに、映画でも舞台でも漫画でも本でも、とにかくいろんなものを吸収しまくってきたからだと思います。どんなに忙しい30代の時も、40代になっても、映画館や小劇場に通ったり、本を読んだりすることだけは絶対に続けてきた。……と言いながら、根がネガティブなので、50代はさすがに通用しないだろうなとは思ってますけどね(笑)。

——通用しない50代になったらどうするんですか。

佐久間:センスだけでは作れないようなストーリー性のあるものとか、バラエティのジャンルではなくても、お笑いの知見があるからこそ作れるようなものを、今のうちから見つけておこうと思ってます。

——思いっきり見据えてますね。

佐久間:音楽家も漫才師も基本はライブカルチャーなので、目の前にいるお客さんと一緒に年齢を重ねていくことができるんですよ。でもテレビはメディアなので、常に若い人をターゲットにしないといけない。少なくとも今は、ある程度の可処分所得がある若者や、現役でバリバリ働いている世代に向かって作らないと、メディアはビジネスにはならないです。この先、引退した高齢層がめちゃくちゃお金を使うようになったら、ビジネスの構造がガラッと変わるかもしれないですけど。

——テレビの視聴率競争は、むしろ高齢層を狙っているのでは?

佐久間:それは3年くらい前までの話ですね。高齢層に向けたゲーム理論で作っていたら、情報番組だらけになった。それでテレビは延命したんですけど、いまやテレビCMよりも、ネット広告のほうが正確にターゲティングできて、スポンサーもそっちに流れています。テレビであっても、ファミリー層や若い層の数字を取らないと、スポットCMが入らないのが現状です。

若くして人前に出る決断をした人達は、大きな川を渡った特殊な人達ですよ

——マーケティング的な思考と、バラエティ的な「おもしろい」を考えることは、佐久間さんの中でどういうバランスなのでしょうか。

佐久間:どんなにくだらない企画を考えるにしても、まず実現させるための仕組みを知らないと、本当に好きなことはできない、という感じですね。仕組みを理解した上で、ビジネスとして成立させる橋をちゃんと作ってから、ここから先は好きにさせてください、っていう。そうしないと再現性が生まれないんですよ。思いの丈をぶつけて一発勝負をしても、1回で終わっちゃう。たとえ1回で終わるにしても、何を勝負したのか自分でわかってないと、上を説得することもできないじゃないですか。そのためには、言語化するって大事だなと思います。

——そういう思考の持ち主だと、例えばオードリーの春日さんのような、天然成分の多い人に対する憧れがあったりしますか。

佐久間:どうだろうなぁ。僕も今でこそ人前に出る仕事もしていますけど、そもそも10代や20代で人前に出ることを選択した人は、全員天然だと思ってますね。ボケとかツッコミとか関係なく、とにかく人前に出る決断をした人達は、一般の人では渡れない大きな川を渡った特殊な人達ですよ。だからこそ、かっこいいし、心から尊敬します。

——今では佐久間さんもその川を渡った人、という認識でいいですか。

佐久間:ある意味では多少そうかもしれないけど、僕の場合は40歳を過ぎてから、ですからね。もう自意識とか言ってる年齢じゃなくなってからのことなので、大きな川を渡ってはいないですよ。今でも基本的には、役割が明確で、自分がやったほうがいいなと思う場合は出役もやりますけど、「とりあえず出てほしい」みたいなオファーは全部断ってますから。     

——これから先、だいぶ遅れて大きな川を渡る可能性はないですか。

佐久間:もう47歳ですからね、50歳過ぎたらあり得るかもしれない(笑)。でもそれは「俺も人前に出たい」とかではなく、50歳にもなって周りの評判とか気にしてんじゃねえよ、っていうフェーズになってからですね。せっかく呼ばれたなら黙って行けよ、っていう(笑)。

Photography Mikako Kozai(L MANAGEMENT)

■Netflixシリーズ『LIGHTHOUSE』〜悩める2人、6ヶ月の対話〜
日本を代表するトップクリエイターとして活躍する星野源と若林正恭が、月に1度、2人だけでガチトーク。悩み多き時代に、誰しもが共感する“悩み”をテーマに6ヶ月連続で収録したトークバラエティ番組。灯台の意味を持つ“LIGHTHOUSE”(ライトハウス)というユニット名を与えられ、悩み多き時代に、元気と笑いを届ける。
出演:星野源・若林正恭(オードリー)
ディレクター:上野雅敬
企画演出・プロデューサー:佐久間宣行
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix)
プロデューサー:碓氷容子、有田武史
制作プロダクション:ディ・コンプレックス
製作:Netflix
話数:全6話
配信:Netflixにて世界独占配信中
https://www.netflix.com/jp/title/81641728

■星野源 EP『LIGHTHOUSE』
星野源が『LIGHTHOUSE』のために書き下ろした、6つの新曲を収録したEPが配信リリース。各話をイメージして制作、ライブ収録したエンディング5曲にメインテーマ曲「Mad Hope」ショートVer.を加えた全6曲を収録。
https://www.hoshinogen.com/news/detail/?id=33

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佐久間宣行が語る若林正恭と星野源 「2人が抱えている苦悩は、日本社会全体の問題です」 『LIGHTHOUSE』インタビュー前編 https://tokion.jp/2023/09/13/interview-nobuyuki-sakuma-lighthouse-vol1/ Wed, 13 Sep 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=207707 Netflixシリーズ『LIGHTHOUSE』の企画・演出とプロデューサーを務める佐久間宣行インタビュー。前編では若林正恭と星野源について。

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佐久間宣行
1975年、福島県いわき市生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『ピラメキーノ』『ウレロ☆シリーズ』『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』『キングちゃん』などを手掛ける。元テレビ東京社員。2019年4月からラジオ『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティを担当。YouTubeチャンネル『佐久間宣行のNOBROCK TV』も人気。Netflix『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』、『LIGHTHOUSE』〜悩める2人、6ヶ月の対話〜を手掛け、2023年10月10日から『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』のシーズン2も配信。著書に『佐久間宣行のずるい仕事術 僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた』(ダイヤモンド社)などがある。
Twitter:@nobrock
Instagram:@nobrock2

漫才師の若林正恭(オードリー)と音楽家の星野源が、それぞれの苦悩や問題意識について互いに語り合う、Netflixシリーズ『LIGHTHOUSE』が8月22日から配信された。企画・演出とプロデューサーを務めるのは佐久間宣行。Netflixでは『トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~』に続く2作目となる。インタビュー前編では、日本のエンターテインメントを牽引する2人の間で、一体どんな対話が交わされたのか、佐久間の目から見た深部を探る。

——今回『LIGHTHOUSE』の企画は、どのように立ち上がったのですか。

佐久間宣行(以下、佐久間):僕が担当する番組で、最初に若林くんと星野さんに共演してもらったのは、テレビ東京の『あちこちオードリー』(2021年6月30日放送)で、その時のトークの内容がすごくよかったんです。オンエアの反応を見ても、視聴者に深く響いていることが伝わってきた。それでなんとなく、2人がじっくり語り合うような企画を温めていて、Netflixから『トークサバイバー』以外の企画もやりませんか、という話をいただいたタイミングと合致したという感じですね。

——当初から「2人がじっくり語り合う」というコンセプトだったんですね。

佐久間:最初の企画書は「星野源と若林正恭のONE YEAR」という仮タイトルでした。2人が月に1回集まって話をして、それを1年間続けて、一気に配信するっていう。1年間という期間を設けることで、2023年という時代も見えてくるなと思ったんですよね。ただ、現実的なことを考えると、月に1回でも毎月2人のスケジュールを合わせるのは大変だし、Netflix は翻訳とかの作業でテレビより時間も手間もかかるし、1年間は長すぎるんじゃないかと思って、期間は半年になりました。でもそうなると、タイトルが「星野源と若林正恭の半年」になっちゃう。さすがにそれはダサすぎるので『LIGHTHOUSE』に変えました。

——『LIGHTHOUSE』というタイトルについては、本編の中で「悩める人々を照らす灯台」そして「灯台下暗し」と解説がされていました。

佐久間:タイトルを思いついたきっかけは、レイ・ブラッドベリの短編に灯台が出てきて、英語だとLIGHTHOUSEっていうんだ、というのを覚えていたのが1つ。もう1つは、企画書を書き上げたタイミングで観たマームとジプシーの公演のタイトルが『Light house』だったんです。そこから、A24製作の映画『ライトハウス』のことも思い出したりして、誰かのことを照らす灯台でありながら、自分達の足元は真っ暗っていう、これは2人のユニット名にぴったりだなと。

光も闇も、ファンの人達が思っているより何十倍も深い

——佐久間さんから見て、若林さんと星野さんは、それぞれどんな人ですか?

佐久間:2人ともルックスや表情は優しい感じだし、繊細で気遣いのできる人であることは間違いないんですけど、奥の奥は芯が強いファイターですよね。『LIGHTHOUSE』をやる前から想像はしていましたけど、もう想像以上でした。だからその分、光も闇も、ファンの人達が思っているより何十倍も深い。本当にあの2人は生きるの大変だろうなって思います。

——番組で語られる2人の苦悩は、星野さんは音楽業界のことだとしても、若林さんの悩みはテレビ業界のことなので、佐久間さんにも直結しますよね。

佐久間:若林くんが抱えている悩みは、いわゆるバラエティ番組だけの問題じゃないと思うんですよね。星野さんの抱える問題も、音楽業界だけの話じゃない。あの2人の悩みの根源は、どこまで行っても競争を続けなければならない現状と、その競争に勝った人達がルールを作っていることにあるわけです。要は、日本社会全体の問題なんですよ。この日本で働いて、生きている人達全員が抱えている問題。現代の資本主義の中で、人間らしさを保ちながら競争に勝ち続けることはできるのか? そこに2人とも悩んでいるわけです。

——番組内の企画「1行日記」で、若林さんは「強くなければ次のステージに行けないけど、強くなると人に寄り添えなくなる」と書いてました。

佐久間:強さもそうだし、嫌な上司とも飲みに行かないといけないとか、いろんなことですよね。僕の勝手な憶測ですが、若林くんはそういうのが嫌で芸人になったのに、結局テレビや芸人の世界も一般社会と同じなのかよ、っていうのがショックだったと思うんです。芸人の世界はもっとロマンチシズムで成り立っていると思っていたのに、実際は日本社会の縮図でしかなかった。資本主義である以上、どの世界にもその影は落ちてくるんですよ。

——若林さんと星野さんともに、40代にもなると、率いているチームがあったりとか、背負うものが自分だけではなくなってきますし。

佐久間:それはあの2人も切実に感じているかもしれません。どの業界でもそうだと思いますが、テレビ業界では、1つ番組が終わると、関わっているスタッフ全員の仕事が一気になくなります。若手の頃はあんまりわかってなかったけど、MCだったり総合演出だったり、チームを率いる立場になると、その責任がどんどん重くなっていくことに気付いちゃうんです。

星野源ならオードリー若林の苦悩を受け止めてくれる

——番組のコンセプトでもある、対話を通じて悩みや抱えている問題をオープンにすることについては、どう考えていますか。

佐久間:若林くんに関しては、日本語ラップが好きでずっと聴いてきた人なので、自分の考えをストレートに表現した上で、芸に昇華させるスキルがあるんですよね。それは『LIGHTHOUSE』に限らず、ラジオの『オードリーのオールナイトニッポン』で自分の素直な気持ちを吐露するのも同じ。今はヒップホップが世界的にトレンドの中心になっているし、とにかく「俺はこう思う」っていうのを発信する時代の流れもあるのかもしれない。

——星野さんについては、そんな若林さんが相手なら話してくれる、と。

佐久間:星野さんは、収録が始まる前まではすごく不安がっていました。「僕は若林さんと違って、話すことのプロではないので」って。でも僕としては、星野さんなら大丈夫だって確信してたんですよね。楽曲の歌詞を読んでも、これまでの発言を聞いていても、あれだけ人の痛みがわかる人ですから、若林さんの悩みを受け止めて、何かしらの処方をしてくれるだろうと。

——星野さん自身も、さまざまなフェーズを経ての現在、ですからね。

佐久間:そうなんですよ。アーティスト星野源がすごいのは、どんどんフェーズが変わっていくこと。弾き語りのアルバムを出した時期もあるし、ファンクやソウルを取り入れて日本のポップスを更新させようとしていた時期もあり、そこから前衛的な音楽もどんどん取り入れながら、メジャーシーンと接続させる役割を担うようにもなって。ミュージシャンに限らず、芸人でも、長く活動している大御所の人達って、基本は芸風がはっきりしていて、長く同じ芸風を貫いたことで支持されるパターンが多い。だけど、星野源はどんどん作風を変えるでしょう。これは非常に困難な道ですよ。しかもそれで人気は上がり続けていくって、尋常じゃないです。

——オードリーというコンビにも、当然いろいろな変遷がありました。

佐久間:特殊なコンビですからね、悩んだ時期は長かったでしょう。いつだって春日くんは春日くんでしかないので、それで助かっている部分もありながら、若林くんは相方をどう活かすかっていうのを、他のコンビ以上に考えていたはず。どうしたら自分が本気でおもしろいと思っていることが世の中に伝わるのか、ずっと考え続けて、長い内省から生まれたのが、あのズレ漫才だと思います。内省の時期が短くて、もっと若いうちに売れていたら、春日くんの「トゥース」だけで消費されて、今のようなポジションにはなっていないと思います。本人としては相当つらかったとは思いますが、若林くんの長い内省期があったからこそ、消費され尽くさないで、ここまで残ってこられたと思うんですよね。

成功体験ではなく、悩みを、しかもリアルタイムで開示する試み

——まだ何者でもない10代や20代ではなく、40代の、しかも大成功を収めている2人が苦悩を語る、というのも新鮮でした。

佐久間:若い人が夢や悩みを語り合ったり、あるいは、大きな失敗をした人が教訓として失敗談を語るコンテンツはたくさんありましたけど、ある意味すごく成功している人が、その成功体験ではなく、悩みを、しかもリアルタイムで開示したことは新しい試みだったと思います。

——成功してからも人生は続くし、悩みは尽きないんだなと。

佐久間:対話からヒントを得て、星野さんと若林くんが番組のために共作してくれた曲「Orange」の歌詞に「クリアしたあとのRPG」というフレーズがあって、ほんとその先の人生のほうがずっと長いんですよね。

——演出としては、どんなことを意識しましたか。

佐久間:収録を終えた感触として、撮れ高としては抜群だったのですが、編集の演出次第では2人のファンムービーみたいになってしまうので、それを避けるようにしました。トークの部分に関しては、あえてバラエティっぽいテロップを入れて、『あちこちオードリー』や『佐久間宣行のNOBROCK TV』が好きな層にも見てもらえるように。SNS用に一部を切り出された時に、ちょっとでも身近に感じてもらいたかったので。

——あのテロップは、確かにNetflix らしからぬ書体でした。

佐久間:地上波のバラエティとかYouTubeの書体だったでしょ。確定する前に、何パターンか作って検証したんですよ。その中の1つは、2人でコメントの色分けもしていない、映画の字幕みたいな真っ白のパターンでした。それらをNetflixの担当者にも見てもらって、最終的に合意の上で今の形になりました。

——逆にNetflixだからこその演出もありますか。

佐久間:有料コンテンツだからこそのリッチさを追求したのは、星野さんが歌い、バンドも演奏する、曲のパートですね。なので、曲の歌唱パートだけは僕ではなく、泰永優子さんという、サカナクションのMVなんかを撮っている方にディレクターをお願いしました。

——そういったリッチな画作りは、地上波ではできないものなんでしょうか。

佐久間:歌番組なら可能でしょうけど、バラエティでは難しいですね。予算の問題もあるし、何より毎分の視聴率が落ちていきます。

——画面が暗いトーンになるからですか?

佐久間:トーンもありますし、それ以外にも。今のテレビって、常に謎かけをした状態をキープして、答えを出さずに引っ張ってる番組が多いじゃないですか。「果たして1位は!?」がずっと続いているような。あれはゲーム理論に基づいた、視聴率が落ちない1つの手法なんです。

——テロップやワイプで常に画面がにぎやかなのも、視聴率が下がらないため?

佐久間:にぎやかな画面の時代は終わりつつありますね。それよりは、続きが気になるランキングとか、ゲストは誰かとか、常に音が鳴っているゲームをやるとか、そういう方向になってきています。その引っ張りが途切れた途端、視聴者は離脱する。

——なんてシビアな……。もはや内容とかの問題ではない。

佐久間:地上波のテレビはもちろん修羅の世界ですが、はっきり言ってYouTubeはもっともっと修羅です。僕も自分のチャンネルを持っているので、スタッフといつも「修羅だね〜」って言いながらやってますよ。

——そんな修羅の世界で戦うことに、快感があるんですか。

佐久間:快感というか、僕はYouTubeに関しては、お金儲けのためにはやってないんです。お金のことだけを考えたら、企画ものはやらずにトークだけにして、カメラの台数も減らして、いくらでもやり方はあるんですけど、それはやってません。

僕にとってのYouTubeチャンネルは、ひとつは企画の実験場としての役割。初期投資して、どんどん濃い企画を生み出すための実験の場です。そしてもうひとつは、役割というかモチベーションとして、もはや地上波のテレビだけでは届かない層に向けて、「佐久間っていうやつが作る番組おもしろいな」と思ってもらうためです。

もしYouTubeでも数字や結果を求めていたら、確実にメンタルやられますから。あの世界で生き残るには、あっちゃん(中田敦彦)とかカジサック(梶原雄太)みたいに、YouTubeで結果を出すんだって腹くくった人間じゃないと無理ですね。少なくとも人気を確立するまでは、他のメディアには出ないで、そこの住人にならないとダメだと思います。

後編へ続く

Photography Mikako Kozai(L MANAGEMENT)

■Netflixシリーズ『LIGHTHOUSE』〜悩める2人、6ヶ月の対話〜
日本を代表するトップクリエイターとして活躍する星野源と若林正恭が、月に1度、2人だけでガチトーク。悩み多き時代に、誰しもが共感する“悩み”をテーマに6ヶ月連続で収録したトークバラエティ番組。灯台の意味を持つ“LIGHTHOUSE”(ライトハウス)というユニット名を与えられ、悩み多き時代に、元気と笑いを届ける。
出演:星野源・若林正恭(オードリー)
ディレクター:上野雅敬
企画演出・プロデューサー:佐久間宣行
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix)
プロデューサー:碓氷容子、有田武史
制作プロダクション:ディ・コンプレックス
製作:Netflix
話数:全6話
配信:Netflixにて世界独占配信中
https://www.netflix.com/jp/title/81641728

■星野源 EP『LIGHTHOUSE』
星野源が『LIGHTHOUSE』のために書き下ろした、6つの新曲を収録したEPが配信リリース。各話をイメージして制作、ライブ収録したエンディング5曲にメインテーマ曲「Mad Hope」ショートVer.を加えた全6曲を収録。
https://www.hoshinogen.com/news/detail/?id=33

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