佐久間宣行が考える40代以降のクリエイティブと自身の未来 「40歳までにいろんなものを吸収しまくってきたからこそ今がある」 『LIGHTHOUSE』インタビュー後編

佐久間宣行
1975年、福島県いわき市生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『ピラメキーノ』『ウレロ☆シリーズ』『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』『キングちゃん』などを手掛ける。元テレビ東京社員。2019年4月からラジオ『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティを担当。YouTubeチャンネル『佐久間宣行のNOBROCK TV』も人気。Netflix『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』、『LIGHTHOUSE』〜悩める2人、6ヶ月の対話〜を手掛け、2023年10月10日から『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』のシーズン2も配信。著書に『佐久間宣行のずるい仕事術 僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた』(ダイヤモンド社)などがある。
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漫才師の若林正恭(オードリー)と音楽家の星野源が、それぞれの苦悩や問題意識について互いに語り合う、Netflixシリーズ『LIGHTHOUSE』が配信された。企画・演出とプロデューサーを務めるのは佐久間宣行。Netflixでは『トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~』に続く2作目となる。インタビュー後編では、番組でも話題に上がった「中年の危機」をテーマに、佐久間自身のキャリアと未来に迫る。

退社したのはセルフケアの観点が大きかった

——『LIGHTHOUSE』では、いわゆる「中年の危機」的なことがたびたび話題に上がっていましたが、佐久間さん自身はどうですか。

佐久間宣行(以下、佐久間):そもそも僕が2年前に会社を辞めたのは、これ以上会社にいると、どうしたって社内政治とも向き合わなきゃいけない年齢だったからで。うまくできたかもしれないし、できなかったかもしれないし、それはやってみないとわからないけど、そこに時間を取られるのはきついな、メンタルはやられるだろうなっていうのはわかったから。それだけが理由ではないですけど、理由の1つではありますね。セルフケアの観点がやっぱり大きかったと思います。

——メンタルではなく、体力的な不安を感じたりもないですか。

佐久間:これは本当に申し訳ないけれど、僕はないんですよ。すこぶる元気です(笑)。

——「もうやりきった」「飽きた」みたいなこともない?

佐久間:うーん……ないですね。というか、『LIGHTHOUSE』で話していた2人の苦悩は、漫才にしても音楽にしても、ゼロから作る表現じゃないですか。自分の中から作品を生み出し続けるのは、想像を絶する苦しさだと思います。

その点、僕の場合は、あの人にはどんな企画が合うだろうとか、あの人にこんなことをやってほしいとか、企画を考えるにしても、基本は誰かをサポートするような役回り。ゼロから作品を生み出すのとは全く違う。なので、作家の人達が言う「やりきった」とかは、今のところないですね。前に秋元康さんが、「自分の中から出てくるものだけで歌詞を書いていたら、30代で何も生まれなくなってた」って言ったんです。秋元さんの作詞は、自分のための表現ではなく、目の前にいるグループのメンバーに向けて書いてるから。

——条件や制限がある中での番組作りも、苦ではないですか。

佐久間:むしろ、左脳で考えなきゃいけない条件や制限があるほうが、僕はアイデア浮かびますね。好きなように自由にどうぞって言われると、何作ったらいいかわからない。よく人から「佐久間さんは理詰めで作ってますよね」とか言われますけど、僕は入り口から途中まではバチバチに理詰めで考えて、最後は適当に遊びを入れるんです。そういうバランスが自分には合ってるんでしょうね。

企画は40代前半のうちに思いついておこう

——番組の中では、これからの未来をどのくらい見据えているかも話題になっていました。

佐久間:僕は根がネガティブなので、40歳になった時にはもう、5年後には自分のセンスはバラエティでは通用しないなと思ってましたよ。だからこそ、企画は40代前半のうちに思いついておこうって。今のところまだズレないでやれているのは、40歳前後までに、映画でも舞台でも漫画でも本でも、とにかくいろんなものを吸収しまくってきたからだと思います。どんなに忙しい30代の時も、40代になっても、映画館や小劇場に通ったり、本を読んだりすることだけは絶対に続けてきた。……と言いながら、根がネガティブなので、50代はさすがに通用しないだろうなとは思ってますけどね(笑)。

——通用しない50代になったらどうするんですか。

佐久間:センスだけでは作れないようなストーリー性のあるものとか、バラエティのジャンルではなくても、お笑いの知見があるからこそ作れるようなものを、今のうちから見つけておこうと思ってます。

——思いっきり見据えてますね。

佐久間:音楽家も漫才師も基本はライブカルチャーなので、目の前にいるお客さんと一緒に年齢を重ねていくことができるんですよ。でもテレビはメディアなので、常に若い人をターゲットにしないといけない。少なくとも今は、ある程度の可処分所得がある若者や、現役でバリバリ働いている世代に向かって作らないと、メディアはビジネスにはならないです。この先、引退した高齢層がめちゃくちゃお金を使うようになったら、ビジネスの構造がガラッと変わるかもしれないですけど。

——テレビの視聴率競争は、むしろ高齢層を狙っているのでは?

佐久間:それは3年くらい前までの話ですね。高齢層に向けたゲーム理論で作っていたら、情報番組だらけになった。それでテレビは延命したんですけど、いまやテレビCMよりも、ネット広告のほうが正確にターゲティングできて、スポンサーもそっちに流れています。テレビであっても、ファミリー層や若い層の数字を取らないと、スポットCMが入らないのが現状です。

若くして人前に出る決断をした人達は、大きな川を渡った特殊な人達ですよ

——マーケティング的な思考と、バラエティ的な「おもしろい」を考えることは、佐久間さんの中でどういうバランスなのでしょうか。

佐久間:どんなにくだらない企画を考えるにしても、まず実現させるための仕組みを知らないと、本当に好きなことはできない、という感じですね。仕組みを理解した上で、ビジネスとして成立させる橋をちゃんと作ってから、ここから先は好きにさせてください、っていう。そうしないと再現性が生まれないんですよ。思いの丈をぶつけて一発勝負をしても、1回で終わっちゃう。たとえ1回で終わるにしても、何を勝負したのか自分でわかってないと、上を説得することもできないじゃないですか。そのためには、言語化するって大事だなと思います。

——そういう思考の持ち主だと、例えばオードリーの春日さんのような、天然成分の多い人に対する憧れがあったりしますか。

佐久間:どうだろうなぁ。僕も今でこそ人前に出る仕事もしていますけど、そもそも10代や20代で人前に出ることを選択した人は、全員天然だと思ってますね。ボケとかツッコミとか関係なく、とにかく人前に出る決断をした人達は、一般の人では渡れない大きな川を渡った特殊な人達ですよ。だからこそ、かっこいいし、心から尊敬します。

——今では佐久間さんもその川を渡った人、という認識でいいですか。

佐久間:ある意味では多少そうかもしれないけど、僕の場合は40歳を過ぎてから、ですからね。もう自意識とか言ってる年齢じゃなくなってからのことなので、大きな川を渡ってはいないですよ。今でも基本的には、役割が明確で、自分がやったほうがいいなと思う場合は出役もやりますけど、「とりあえず出てほしい」みたいなオファーは全部断ってますから。     

——これから先、だいぶ遅れて大きな川を渡る可能性はないですか。

佐久間:もう47歳ですからね、50歳過ぎたらあり得るかもしれない(笑)。でもそれは「俺も人前に出たい」とかではなく、50歳にもなって周りの評判とか気にしてんじゃねえよ、っていうフェーズになってからですね。せっかく呼ばれたなら黙って行けよ、っていう(笑)。

Photography Mikako Kozai(L MANAGEMENT)

■Netflixシリーズ『LIGHTHOUSE』〜悩める2人、6ヶ月の対話〜
日本を代表するトップクリエイターとして活躍する星野源と若林正恭が、月に1度、2人だけでガチトーク。悩み多き時代に、誰しもが共感する“悩み”をテーマに6ヶ月連続で収録したトークバラエティ番組。灯台の意味を持つ“LIGHTHOUSE”(ライトハウス)というユニット名を与えられ、悩み多き時代に、元気と笑いを届ける。
出演:星野源・若林正恭(オードリー)
ディレクター:上野雅敬
企画演出・プロデューサー:佐久間宣行
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix)
プロデューサー:碓氷容子、有田武史
制作プロダクション:ディ・コンプレックス
製作:Netflix
話数:全6話
配信:Netflixにて世界独占配信中
https://www.netflix.com/jp/title/81641728

■星野源 EP『LIGHTHOUSE』
星野源が『LIGHTHOUSE』のために書き下ろした、6つの新曲を収録したEPが配信リリース。各話をイメージして制作、ライブ収録したエンディング5曲にメインテーマ曲「Mad Hope」ショートVer.を加えた全6曲を収録。
https://www.hoshinogen.com/news/detail/?id=33

author:

おぐらりゅうじ

1980年生まれ。編集など。雑誌「TV Bros.」編集部を経て、フリーランスの編集者・ライター・構成作家。映画『みうらじゅん&いとうせいこう ザ・スライドショーがやって来る!』構成・監督、テレビ東京『「ゴッドタン」完全読本』企画監修ほか。速水健朗との時事対談ポッドキャスト番組『すべてのニュースは賞味期限切れである』配信中。 https://linktr.ee/kigengire Twitter: @oguraryuji

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