「フミト ガンリュウ」デザイナー丸龍文人 Archives - TOKION https://tokion.jp/series/「フミト-ガンリュウ」デザイナー丸龍文人/ Tue, 06 Jul 2021 09:14:01 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 「フミト ガンリュウ」デザイナー丸龍文人 Archives - TOKION https://tokion.jp/series/「フミト-ガンリュウ」デザイナー丸龍文人/ 32 32 「フミト ガンリュウ」デザイナー丸龍文人 vol.2――社会と創作を結ぶ原点を探る https://tokion.jp/2021/07/07/designer-fumito-ganryu-vol2/ Wed, 07 Jul 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=38239 コレクションの背景を知ることで明らかになった、社会からファッションをデザインする丸龍文人の姿勢。彼の原点を辿たどっていく。

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2010年代後半に吹き荒れるストリート旋風に先んじて、ストリートを取り込んだモードスタイルを世界に発表してきた丸龍文人。しかし、彼は2018年に「フミト ガンリュウ」を設立したのち、自身の才能がストリートだけに収まるものではないことを証明する。ロングインタビューで語られた丸龍の生の言葉を可能な限り多く届けるべく、全3回にわたってお送りしたい。

前回Vol.1で明らかになった、社会からファッションをデザインしていく丸龍の姿勢。いったい彼はどのようにして、そのクリエイティブな姿勢と思考を育んできたのだろうか。その原点を探るため、vol.2では彼の故郷である福岡時代から始まり、「フミト ガンリュウ」として再始動する時にまで至る。そして、話は現代のラグジュアリーストリートにもおよぶ。丸龍のファッションの目覚めからストリート、作る服への思いまで。その声に耳をかたむけてほしい。

幼少時のイマジネーション

――前回は2021SSコレクションについて伺い、丸龍さんの思考がどのように育まれてきたのか、その原点はどこにあるのか、とても気になりました。福岡県のご出身ということですが、ファッションに興味を持ち始めたのはいつ頃からでしょうか?

丸龍文人(以下、丸龍):明確な意思で選んで着るというのを意識したのはスケートブランドの服でした。それは今でも鮮明に覚えています。当時、地元でもある福岡県に住んでいたのですが、兄のセンスが良くて、どこで服を買っているのか聞いたら、福岡市内にある有名な店で。でも、いきなりその店に行くにはちょっと勇気が持てなくて。こっそり兄の服を拝借して店へ行くと、店長さんに「君、中学生なのにそれ持ってるの? すごいね」 と言われて、いろいろ教えてくれたりと良くしてくれて。当時、僕自身がスケーターでもあったので、それがファッションに興味を持ち始めたきっかけの1つ、といえるのかもしれないですね。

――当時からファッションに関わる仕事をしたいと?

丸龍:より遡ると、他にもきっかけといえるものがあって。幼少期にいわゆるマンガというのか……、ストーリー展開のあるデザイン画みたいなものを描いていたんです。今振り返ると、まだ10歳にも満たない少年が、随分と重たいテーマの物語を描いていたな、と(笑)。

――どんなストーリーを描いていたのですか?

丸龍:当時はミレニアムを迎える前だったので、世紀末以降の世界を自分なりに想像して描いたのですが、そこでは思いがけない出来事が多発したことによって、地球が滅亡の危機にあるという設定で。

――幼い時にそんなストーリーを!?

丸龍:そうなんですよ(笑)。その世界では人類が滅びかけていて、上空を幾重にも覆い尽くしたスモッグと海洋汚染によって、本来の空や海の色を知らない。ただ、昔の空は美しかったとか、海はきれいだったといったことを昔話のように聞かされているだけで、青という色を知らない、イメージすることができないというストーリーでした。

――それはおもしろいですね。

丸龍:いくらなんでもそんな短期間にひとびとの記憶が失われるものなのか、ということであったり、青いものなどもすべて消滅してしまったのかという、数々の矛盾や詰めの甘さはあるんですけどね(笑)。青を取り戻すための物語なんです。話の内容や結末こそ違いますが、そこで描いていたものは、しばらくあとに観た『タンクガール』 という映画の登場人物が着ていた服装や世界観に通じるものでした。頭にはゴーグル、服装自体はミリタリーっぽくもあり、パンクスっぽくもある。当時、なぜ自分の描いた物語でそういう服装を描いたのか、うまく説明できませんが、いわゆるレジスタンス然とした装いをさせていました。物語の一部は今でも残っていて、見返すと気恥ずかしいですが(笑)、発見もあります。

――子どもの時から社会的視点の創作をしていたのは驚きました。

丸龍:幼少期からそういったことに強い関心があって。ストーリー展開があるものを数多く描いてたのですが、中学を卒業する頃には、よりデザイン画に近いものを意識して描くようになって、授業中よく怒られたりしましたね。

――(笑)。洋服と絵を描くのが好きな少年だったわけですね。では当時は洋服と絵ならば、どちらが好きだったのですか?

丸龍:今でもたまに絵は描いているくらいなので、絵を描くことのほうが好きだったと思います。あと、音楽も同じくらい好きでしたよ。

――どんな音楽が好きでしたか?

丸龍:今でも覚えているのは、小学生の時に科学番組を観る授業が定期的にあって。当時アインシュタインに憧れていたこともあり、その授業と番組をすごく楽しみにしていました。

――そういえば、前回もアインシュタインが大好きだと話していました。

丸龍:科学全般が好きだったんです。実験番組のBGMは、今でいうエレクトロというか、アンビエントのような音楽が流れていて、そういったニュアンスの音が好きでした。

――そんな音楽を好きだと言うのは、当時珍しかったのでは?

丸龍:中高など進学するたび「好きな音楽は何?」と聞かれると、「科学番組のバックに流れている音楽あるじゃん、ああいうの」と答えていました。それでよくお前、変わってるねと言われてましたよ(笑)。音楽や絵画など、ファインアート全般を含めたあらゆるクリエティブなものにも興味がありました。

――いろんな経験を経て、ファッションの道へと進んだのですね。

丸龍:服作りに関しては真摯な姿勢で取り組み続けたいと思っていますが、服以外のメディアに関しても、ファッションデザイナーの視点で取り組むことができればと考えています。

原点であるストリートについて、今思うこと

――丸龍さんはスケートボードに乗っていたりと、原点の1つにストリートがあると感じましたが、国立新美術館で開催されたショーで配布された用紙の1行目に、このような文章が書かれていました。「辟易するほど命題として示されてきた『モード』と『ストリート』の図式は、果たして相反する指標なのか」。このモードとストリートの図式を、具体的にどう捉えているのですか?

丸龍:本来モードとストリートは、発生源に違いはあるものの密接な相対関係にあり、言葉の先にある現象を俯瞰で捉えれば、結果的に同義語とも言えるのであって。それが時代とともにマインドにフォーカスされ、スタンスの違いが浮き彫りとなっていくことで、ある種分断されていたものを、数々のブランドが確たるマインドを伴った上で融合させる、そういったクリエイションによって新たなムーブメントが次々と生み出されていたように感じています。でも昨今のラグジュアリーにおいて目の当たりにするのは、あくまでテクスチャーというか……、表面的要素をコントラストとしてただ利用しているようにしか思えなくて。もちろん、国内外において強いマインドを感じるブランドや人物はいますが、今世界を席巻しているラグジュラリーのストリートに関しては、そういったスピリットが感じられず、ストリートテイストだと思っていて、グッとこない。芯のない見せかけのコントラストには背反のベクトルが感じられないし、何より、そもそもの意味に対する問いでもあるんです。

――ラグジュアリーのストリートがグッとこない要因はどこにあるのでしょうか?

丸龍:カテゴライズを前提に考えるのであれば、ストリートマインドの根幹にあるもの、それは反骨の精神なんだと思っています。ラグジュアリーでは当然それが希薄になってしまうのは節理であり、しかたのないことだと思います。好んでいる方を決して否定するつもりはありませんが、僕はあくまでテイストではなくマインドを感じたいので。

――ではラグジュアリー以外で、丸龍さんから見てストリートマインドを感じる海外のブランドはありますか?

丸龍:日本と比較すると少ないように感じます。

ファッションから離れることで見えてきたビジョン

――高校を卒業してから文化ファッション大学院大学に入学するまで空白の期間がありますが、高校卒業後はどうされていたんですか?

丸龍:重複してしまいますが、絵画や音楽、そして服と、やりたいことが多過ぎて煮詰まっている時期に、ベルギーのアントワープに行きたい学校が見つかって。当時まだ日本人の卒業生がいなかったこともあり、そこへ留学しようと考え、アルバイトをしながら語学も学びましたが、最終的には多くのデザイナーを輩出している文化服装学院に入学しようと決心しました。

――文化ファッション大学院大学を卒業後、「コム デ ギャルソン」に入社されていますが、在学中から入社を目指していたのですか?

丸龍:もし入社するのであれば「コム デ ギャルソン」しかないと思っていました。

――では「コム デ ギャルソン」退社後、ご自身のブランド「フミト ガンリュウ」を立ち上げるまでの期間はどう過ごされていたのですか?

丸龍:ファッションだけではなく、21世紀のこの先、社会がどこへ向かおうとしているのか、そういったことを考えていました。ファション産業は2番目に環境を破壊しているといわれています。エネルギー産業や自動車産業においては、もはや環境への配慮や取り組みが大前提です。それらの産業は取り沙汰されるタイミングも早かったため、問題解決や改善に取りかかるのも自ずと早くから行われていて、そういった取り組みに目を向けていました。その時間を経てファッション業界に戻ってこられたのは、社会と向き合う姿勢をこれまで以上に育むためにも有益な期間だったと、今にして思えばそう感じています。
(Vol.3に続く)

丸龍文人
文化ファッション大学院大学卒業後、「コム デ ギャルソン」を経て2018年に「フミト ガンリュウ」を設立。象徴だったストリートスタイルは、スポーツ、テーラードと多様性を含むスタイルの境界を超えたスタイルへと更新され、そのコレクションはデイリーウェアとしてのリアリティを備えながらも社会を批評的に切り取るデザイン性も披露する。
Instagram:@fumitoganryu

Photography Shinpo Kimura

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「フミト ガンリュウ」デザイナー丸龍文人 vol.1――コロナ禍から生み出される境界を超えた服 https://tokion.jp/2021/07/01/designer-fumito-ganryu-vol1/ Thu, 01 Jul 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=38237 今、世界は脅威によって激変した。「フミト ガンリュウ」のデザイナー、丸龍文人は社会を鋭く見つめ、未来への答えを探る。

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2010年代後半に吹き荒れるストリート旋風に先んじて、ストリートを取り込んだモードスタイルを世界に発表してきた丸龍文人。しかし、彼は2018年に「フミト ガンリュウ」を設立したのち、自身の才能がストリートだけに収まるものではないことを証明する。

とりわけ新しい側面を強く実感したのは、2019AWコレクションである。パリ・メンズ・ファッション・ウイークで発表されたショーは、ストリートの側面が強かったそれまでのスタイルからは一線を画すテーラードスタイルがコレクションを構成する。現代モードストリートの代名詞ビッグシルエットを吸収し、しかしスタイルはカジュアルに振れるのではなく、メンズウェアの伝統であるクラシックにキングサイズを取り込んだそのデザインは、時代の王様ストリートへのカウンターとも呼べるレベルに表現され、まるでストリートを用いてストリートを否定するかのようだった。

自らのスタイルを更新し続ける丸龍文人。今回のロングインタビューで語られる丸龍の生の言葉を可能な限り多く届けるべく、全3回にわたってお送りしたい。vol.1は、現在デリバリーされている2021SSコレクションの背景を訊いていく。

社会問題をクリエーションと結ぶ

――2021SSコレクションは「フミト ガンリュウ」デビュー以来、もっともカジュアルなデザインでルームウェアのようでした。内と外が曖昧化されて、どちらでも着ることができるいわば「ニュールームウェア」と呼びたくなるコレクションに感じられました。これは新型コロナウィルスによって激変した生活の影響があったのでしょうか?

丸龍文人(以下、丸龍):僕自身にとってもリアルさを感じるものにしたいので、今回に限らずあらゆる情勢やムードは前提です。世の中いろんなデザインの方向性があると思うので、違ったベクトルを決して否定するつもりはありませんが、あくまでも「こういった服が必要となるのではないか?」という、常に提案のスタンスであることを大切にしています。そうした中で単純に外に着ていくだけの服を自分はほしいと思わないだろうなと予測した上で取り組みました。

――コロナ禍によって室内で暮らす時間が増え、外に着ていくことだけが目的の服ではひとびとの生活にはマッチしない時代が訪れたように感じます。

丸龍:外出をするにしても、コンフォートな、いわゆる部屋着感がミックスされた、そういった意味でのハイブリッドなラインナップにしたいと考えました。コレクション制作がスタートした時点で、デリバリーのタイミングとムードの波長がフィックスするようなテーマにしたかったんです。

――なるほど。でもルームウェアにはとどまらないデザイン性が、2021SSコレクションの「フミト ガンリュウ」には感じられます。

丸龍:単なるルームウェアを作るべきではないというのはもちろんあって。ずっと室内で過ごす状況が未来永劫続くのかというと、それはそれで現実的ではないと思っています。もちろんシリアスに思い続ける人もいるでしょう。でも生きていく上でこもり続けるわけにはいかないのであって。情勢が落ち着いたら、抑圧からの反動で思いきり外に出て羽を伸ばしたいと考えている人も多くいると思います。なので、外着としての表情を持つルームウェアであり、外出の際はルームウェアのような心地よさを備えた服という、インドア、アウトドアどちらに転んでも説明のつくもの作り、一過性ではなく普遍的に着られるものしたかったので“FREE ACCESS”というテーマにしたんですよね。

――アイテムについて具体的にお伺いしたいのですが、2021SSコレクションではトラックスーツが印象的でした。今までの「フミト ガンリュウ」のコレクションでは見たことがなくて……。

丸龍:攻めてますかね、ある意味。

――攻めていると思います。なぜトラックスーツを取り入れようと思ったのですか?

丸龍:トラックスーツって、日本では部屋着として好む人もいるじゃないですか。それを海外の人達にも提案したかったんです。あとはいわゆる真逆に近い、フィジカルスポーツでも着ますよね。そういったコンタクトスポーツといったものにもリーチできるという、本当に究極の逆の方向性を1つの服として無理なく説明できるアイテムだと思ったので、トラックスーツでセットアップを作りたかったんです。

――その象徴が、このトラックスーツだったんですね。

丸龍:ただ、普通のジャージー素材ではなく特殊なストレッチボンディングを使っていて、とても上質な手触りになっています。細かな付属物に関しても、極力ライトなものをセレクトしていますが、いわゆるチープに見えないものを選択、採用しています。

――触ってみるとけっこう膨らみもあって、おもしろい素材です。

丸龍:ずっと触っていたくなるような手触りですよね。脇は特殊なベンチレーション仕様になっていて、ファスナーを引き上げるとマチのように開放されます。スポーツ時においては通気性と可動域を確保し、ファッションとしてはシルエットを変化させる意味合いとなり、快適な部屋着として、また外着として、さまざまなシーンで着られる拡張的デザインになっています。

――トラックパンツがサルエルのフォルムになっているのも珍しいですし、1つのアイテムに複数の見え方や着方が隠れているように思えるのですが。

丸龍:サルエルパンツというのは股上が極端に深いため、それによってクリアランスが確保され、リラックスした開放感が得られます。その特徴的な構造はデザインであり、同時に快適性を生み出すことにつながっているんです。デザインそのものが機能やソリューションとなっていること。複数の指針を同時に表す理にかなったデザインとは何か、それを模索し提案するというのは僕が好むアプローチです。

是々非々であること、社会を追うこと

――モッズコートのディテールを取り入れたシャツは、ルック写真ではわからなかったのですが、着用すると袖のフォルムがとても興味深かったです。実際に試着してみると、昔のオートクチュールのドレス的な立体感のあるデザインだなと感じました。

丸龍:そのように受け取っていただけるのも嬉しいですね。

――メンズウェアにはないレディースウェア的な不思議なフォルムだと感じました。男女の性別の境界を曖昧にしたいという考えがあるのでしょうか?

丸龍:時代とともに少しずつ変わっていくのかもしれませんし、エシカルな観点からも是正されるべきことは数多くあると思っていますが、“らしさ”と言った、いわゆる個性に関してはなくならないほうが健全なのではないかと思っています。常に何事に対しても是々非々(ぜぜひひ=立場にとらわれず良いことは良い、悪いことは悪いこととして判断するという意)というか、例えばすごくラギッドな「ザ・男」みたいなもの、すごくフェミニンな「ザ・レディース」みたいなもの、そういった極端なベクトルは見ていてとても刺激になりますが、僕自身はそれらを踏まえた上で、なるべく性別にとらわれないもの作りを行っていきたいと考えています。

――お話を伺っていると、消費者視点の意識を強く持っているように感じましたが、常に意識していることなのでしょうか?

丸龍:ドラスティックに聞こえるかもしれませんが、需要がないものを作るなら趣味でいいと思っているので、やはりニーズを見込んだ上でどういった提案をするかが大切だと思っています。ですが、決して「これがほしいでしょ?」といった迎合のスタンスではなく、「こういうものはどうですか?」と少し未来のニーズやマインドを予測した上で、それを形にし着地させることを念頭に取り組むようにしています。総じて服は暮らしに必須なものであり、ファッションはその気持ちへ作用する力が備わったものだと考えています。

――ファッションはクリエイティブでもありますがビジネスでもあって、ひとびとが「ほしい、着たい」と思う服を提案しなければ、ブランドにファンはついてきません。

丸龍:どれほど塾考を重ねたところで、最終的にはやってみなければわからないこともありますが、ビジネスの着地が狙えた上で、その範疇において最大限のクリエイションをするというのが、僕の考えるプロフェッショナなファッションデザイナーだと考えています。リアルさを度外視するなら僕はメディアをファッションと切り分けて考えたいです。

――ニーズを捉えるために普段心掛けていること、実践していることは何かありますか?

丸龍:服作りを研究、学ぶことはもちろんですけど、同時にファッション以外のことに目を向けています。仕事中は基本的にさまざまなニュースであったり、社会の動向や関心のあることに対してリテラシーの高い人が上げている動画、信憑性のある有識者同士のディベートを流していて、スピードラーニングみたいに倍速で聴きながらデザインをしたり、文献を読んで思考していたりします。アイデアは唸って考えてひらめく時もあるのですが、ひらめき出したら怒涛のように出てくるので、基本的には社会の動向に目を向け思案することに時間の多くを割いています。

――仕事中にニュースなどをずっと流しているというデザイナーには、初めて会いました。ニュースで知った社会の動向が染み込んで、自然にデザインとして出てくる感覚なのでしょうか?

丸龍:いえ、自然に出てくる感覚はないですよ。そこから予測をするんです。予測することは思いをはせることであり、それがクリエイションの一環でもあるので。幼少期からアインシュタインが好きなのですが、彼の有名な言葉で誤った表現だと思うものがあるんです。それは、“Information is not knowledge”「情報は知識ではない」というもの。僕は情報は知識だと思っています。彼の言葉を正確に言い換えるならば、“Information is not intelligence”「情報は知性ではない」です。情報によって蓄積、更新される知識は非常に重要で、知識があることによってのみ本当にリアルな知性の着地を狙えます。「情報は知識だ。だが、知性ではない」というTシャツをいつか作りたいですね(笑)。ただ言い間違えたということであれば、なんだか揚げ足を取っているようで申し訳ないですが。

――勉強になります(笑)。 

丸龍:好きがゆえに(笑)。そういう好きがゆえに、掘っていくと「違うのではないか?」と気付くこともあります。

――2021SSコレクションのルックは、サンプルをイギリスのウィルトシャーに送り、スタイリストのトム・ギネスが着用しています。なぜ日本でモデルを起用してルックを撮影するのではなく、今回のようなルック撮影を行ったのでしょうか?

丸龍:トム・ギネスは弊社のCMO中村(中村聖哉、「Seiya Nakamura 2.24」CEO兼「フミト ガンリュウ」CMO)に紹介されたスタイリストなのですが、彼のスタイリングを見てみると抜け感があってとても良いなと感じました。トム・ギネスにはパリのデジタルファッションウィークで発表した、次のシーズンの2021AWコレクションのスタイリングも依頼しています。

――トム・ギネスのどんなところに魅力を感じたのでしょうか?

丸龍:情勢や動向など、根幹にある重いテーマをどれだけライトに簡潔に見せるか。“FREE ACCESS”というキャッチーな言葉に託しているのであれば、 トム・ギネスはそこに親和性を持って軽やかな表現をしてくれる、ふさわしい人ではないかと感じました。

選択肢の多さが、人のマインドを豊かにする

「FUMITO GANRYU」 2021SS Visual&Sound installation

――ルックと同時に発表された映像がすごく不思議でした。画面に映し出されているのは、トム・ギネスが服をラックに掛けたり、モノを収納したりという普通の行為ですけど、複数のモニターで分割して映しています。これがとてもシュールで、当たり前で日常的な行為が不思議な行為に感じられます。

丸龍:映像に関してもCMOの中村との打ち合わせで、ビジュアル表現や方向性が決まりました。世界で初めてのデジタルファッションウィークというタイミングでもあったので、実験的アプローチにしたいということは中村と一致していて、普通に歩かせてはもったいないと。もちろんデジタルにおいてのランウェイ形式を否定するつもりはありませんが、僕はそれをやりたくなかった。デジタルにおける表現で、フィジカルと変わらないアプローチをすることに、拭い去れない違和感を感じたんです。

――ショー形式での発表を実施しなかったことで、何か新しい気付きがありましたか?

丸龍:ランウェイショーの合理性を改めて感じました。デジタルファッションウィークとなってフィジカルのショーから離れることで、変わらない理由、あり続ける理由というのを作り手として再認識しました。もちろん今後、デジタルがゆえの合理的な表現やドラマチックな演出を模索、提案できればと思っていますが、情報や思いを「伝える」ということにおいて、フィジカルのショーは非常に合理的だと言えます。人が歩いてくる、それによって布がどう動くか、着ている人の雰囲気でこの服は快適かどうか、気持ちが上がるのかどうか、服としての完成度はどうなのか、リアルなものなのか、そういったことが小手先では決してごまかすことができない場所、それがフィジカルの舞台なんだと思います。

――ショーを観ていると感じてきます。やはり服は人が着てこそ、その本当の価値と魅力がわかるのだと。

丸龍:服が単なる物体であれば静止画でもいいのかもしれませんが、服は人が着て成り立つものであり、置物ではありません。演出においても音楽を使うことはもちろん、無音で表現したいならそこには無音のメッセージもあるわけで、会場選び、モデル選び、ヘアメイク、トータルわずか10分前後の時間で見せることができる。ランウェイは決して浮世離れした空間ではなく、合理的な表現の舞台だということを、そこから離れることによって再認識しました。

――やはりコレクションはショー形式の発表が一番に思えてきます。デジタルの発表に可能性はないのでしょうか?

丸龍:決してそんなことはないと思っています。フィジカルとデジタル、選択肢が増えたことはいいことです。

――世界中でひとびとの暮らしに制限がかかりましたが、逆にファッション界ではデジタルによって新しい選択肢が生まれてきたということですね。

丸龍:パンデミックの状況下、なぜこれほどのフラストレーションを感じるのか。人それぞれさまざまな理由があると思いますが、その1つは大幅な制限であったり、いろんな願望はあるけれど選択肢が奪われていくこと。これができない、これしかない、こうせざるを得ない、そういった抑圧が解放されることなく蓄積を続けていくからだと思います。そこに選択肢という養分があれば、マインドの豊かさを損なわないはずなんです。
(Vol.2に続く)

丸龍文人
文化ファッション大学院大学卒業後、「コム デ ギャルソン」を経て2018年に「フミト ガンリュウ」を設立。象徴だったストリートスタイルは、スポーツ、テーラードと多様性を含むスタイルの境界を超えたスタイルへと更新され、そのコレクションはデイリーウェアとしてのリアリティを備えながらも社会を批評的に切り取るデザイン性も披露する。
Instagram:@fumitoganryu

Photography Shinpo Kimura

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