海外アニメーション映画の現在地 Archives - TOKION https://tokion.jp/series/海外アニメーション映画の現在地/ Fri, 19 Jan 2024 07:30:15 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 海外アニメーション映画の現在地 Archives - TOKION https://tokion.jp/series/海外アニメーション映画の現在地/ 32 32 注目のスペイン人映画監督、パブロ・ベルヘルが『ロボット・ドリームズ』でアニメーション映画に初挑戦 ジブリや手塚治虫からの影響を語る https://tokion.jp/2024/01/22/interview-pablo-berger/ Mon, 22 Jan 2024 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=222092 今秋、日本での公開が予定されているアニメーション映画『ロボット・ドリームズ』のパブロ・ベルヘルに今作に込めた思いを聞く。

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パブロ・ベルヘル(Pablo Berger)
1963年12月2日、スペインのバスク地方ビルバオ生まれ。アレックス・デ・ラ・イグレシア、ラモン・バレアと共に手掛けた短編映画『Mama』(1988/未)で監督デビューを果たし、高い評価を得る。その後、ニューヨーク大学にて映画学の芸術修士号を取得。長編デビュー作『Torremolinos 73』(2003/未)は、2003年マラーガ映画祭で初上映され、最優秀作品賞、監督賞、主演男優賞、女優賞を受賞したほか、同年スペイン国内の興行収入ランキングで1位となる大ヒットを記録。2012年、監督・脚本・製作を務めた『ブランカニエベス』では第85回アカデミー賞外国語映画賞にスペイン代表作として出品。1998年に日本のロックバンドSOPHIAの「黒いブーツ~oh my friend~」のMVも手掛けている。

近年、アニメーションが大きな盛り上がりを見せているスペイン。昨年10月にはスペインのアニメ作品を紹介するイベント『ドキドキ・アニメーションÑ』が東京で開催され、そこで上映されたのが『ロボット・ドリームズ』だ。1980年代のNYに暮らす孤独な犬、ドッグは、友達が欲しくて通信販売でロボットを購入。2人は仲良く暮らし始めるが、思いがけない出来事が2人の仲を引き裂くことになる。サラ・バロンのグラフィック・ノベルを映画化したのは、白雪姫の物語をモチーフにした実写映画『ブランカニエベス』(2012年)で注目を集めたパブロ・ベルヘル(Pablo Berger)。

今回、パブロは初めてアニメーションに挑戦したという。グラフィック・ノベルやアニメをこよなく愛し、根っからのシネフィルだというパブロに『ドキドキ・アニメーションÑ』にあわせて来日したタイミングで話を聞いた。

※本作は日本では今秋公開予定

——原作との出会いについて教えてください。どんなところに惹かれて映画化を考えたのでしょう。

パブロ・ベルヘル(以下、パブロ):原作を手にしたのは2010だった。私はグラフィック・ノベルのコレクターで、中でもセリフがない作品を集めているんだ。この原作を初めて読んだ時、楽しいだけではなく、オリジナル性もあるし、シュールなところもあって、ラストで涙してしまった、グラフィック・ノベルにそこまで感動させられるのは珍しいことで、それが自分の心の中にずっと心に残っていて。『ブランカニエベス』、『Abracadabra』(2017年/日本未公開)という長編を2作作った後、久しぶりにコーヒーを飲みながら原作を読んだら、以前よりも、ぐっときた。自分の人生から遠く離れてしまった、あるいは亡くなってしまった友人や家族に思いを馳せた時に心に響くものがあって、これを映画にしたいと思ったんだ。でも、初めてのアニメーション作品なので、自分にとっては大きな挑戦だったよ。

——セリフがないグラフィック・ノベルがお好きだそうですが、『ブランカニエベス』も今作もセリフがありません。サイレント映画に惹かれるところがあるのでしょうか。

パブロ:自分にとって映画はとてもユニークなもので、ビジュアルで物語が語られるところが面白いと思っているんだ。『ブランカニエベス』はサイレント映画へのオマージュだったけれど、あの作品と同じように観客と繋がれるものはないかと考える中で思いついたのが『ロボット・ドリームズ』だった。サウンドデザインはかなり複雑にやったから、まったくの無音(サイレント)というわけではなく、ジャック・タチや私が一番影響を受けたチャップリンに近いのかもしれない。世の中がトーキー時代にはなっても、チャップリンはまだ無声映画を作っていたんだ。例えば『街の灯』(1931年)のようなね。

『ロボット・ドリームズ』ではそういう感じを少し意識した。映画はビジュアルでストーリーテリングをするもの、ということを改めて思い出すきっかけになるような作品にしたくてね。映画は頭で考えるものではなく、肌で感じるもの。映画を観ている時は音楽や絵画に触れる時と同じように五感で感じて、後でじっくりと作品について考えてほしいんだ。

——音楽といえば、本作は劇中でアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「セプテンバー」が印象的に使われています。物語にぴったりの歌詞ですね。

パブロ:劇中に何度も登場する「セプテンバー」はロボットとドッグの関係を表す2人のテーマ曲みたいなものだ。原作は月ごとに展開していって、ロボットが海辺で動けなくなるのが9月。そこに何か曲を使いたいと思って、パッと頭に浮かんだのが「セプテンバー」だった。プロデューサーに相談したら、使用料が高いんじゃないかって冷や汗をかいていたけど(笑)、なんとかクリアすることができた。そこで改めて歌詞を見て、「Do You Remember?」という最初の一節で驚いた。というのも、この映画は記憶についての作品で「覚えてる?」というのが映画のテーマそのものなんだ。しかも、次の歌詞が「The 21st Night of September?(9月21日の夜のことを?)」なんだけど、なんとその日は娘の誕生日なんだよ。

——すごい偶然ですね! 

パブロ:私は人生のマジックというものを信じている。そのマジックが進むべき道を教えてくれることがあって、「セプテンバー」がまさにそうだった。驚きのあまり頭が爆発しそうだったよ(笑)。

実写の経験をアニメに生かす

——マジックに導かれて初めてアニメを制作したわけですが、セリフがなくても感情が伝わってくる目の動き、雪が落ちた時の重さなど、繊細なアニメーション表現に引き込まれました。演出面で意識したことはありましたか?

パブロ:どんな形で実写の経験をアニメに生かせるかを考えたら、すぐに答えが出た。「演技だ!」ってね。私は役者との仕事が大好きで、真実に迫るような演技を求めてきた。アニメの場合、「この感情を伝えなければ!」みたいな大げさな表現をしがちだけど、それは絶対したくなかった。実写の作品のような演技を本作のキャラクターにもしてほしかったから、抑制が効いた、目で語るような表現を大事にしたんだ。そのためには素晴らしいコラボレーターが必要で、ブノワ・フェロウモンがアニメーションのディレクターとして参加してくれたのが大きかった。彼は『ベルヴィル・ランデブー』(2002年)や『ブレンダンとケルズの秘密』(2009年)に関わっている素晴らしいアニメーターで、彼が声をかけてヨーロッパの優れたアニメーター達が集まってくれた。そして、キャラクターに重みが感じられる、空間の中で存在しているような感覚が出せる昔ながらのアニメーションを目指したんだ。

——本作のリアルな演技は、高畑勲や宮崎駿の作品に通じるところがありますね。

パブロ:今回はジブリの作品から大きなインスピレーションを受けている。高畑さん、宮崎さんの作品は、アニメーションの監督が直面する問題の答えを全部持っていると思う。なかでも、キャラクターの演技が素晴らしくて、抑制が効いていて正直。真実に迫るものがあって、それが僕が求めているものだったんだ。日本以外のアニメーションで影響を受けたのはシルヴァン・ショメだね。彼等のスピリットがこの作品には宿っている。

——この映画は、さまざまな形で実写映画にオマージュが捧げられていますね。『クレイマー・クレイマー』(1979年)、『マンハッタン』(1979年)、『オズの魔法使』(1939年)、『シャイニング』(1980年)、『サイコ』(1960年)など、挙げればきりがありません。

パブロ:この作品はシネフィルのための『ウォーリーをさがせ!』といえるかもしれない(笑)。僕は映画作家である前にシネフで、映画を作るのはすごく疲れてしまうから、本当は観ている方が好きなんだ。映画においてストーリーはケーキだと思う。その上にこういったオマージュや遊びを通じてホイップクリームや苺を足していく作業が楽しいんだ。

——ジャック・タチと親交が深かったピエール・エテックスの映画『ヨーヨー』(1965年)のポスターがドッグの部屋に貼ってありましたね。大好きな作品です

パブロ:あの『ヨーヨー』を見つけてくれたとは嬉しいね! タチは知られているけど、エテックスのことはあまり知られていないからね。『ヨーヨー』とこの映画は似ているんだ。『ヨーヨー』も孤独な主人公が、ある種の冒険に出る話だった。『ヨーヨー』のポスターを使うことを思いついた時は、「セプテンバー」が降ってきた時と同じぐらい、「これだ!」と思った。それでポスターを使わせてもらうために、亡くなったピエールの奥さんに連絡を取って使用許諾をもらったんだ。奥さんが『ブランカニエベス』を気に入ってくれていたこともあって使えることになった。パリでこの作品をプレミア上映する際には、奥さんを招待する予定だよ。

スペインのアニメ事情

——お花畑でダンスするシーンを、ハリウッド・ミュージカルみたいにバークレー・ショット(映画監督のバスビー・バークレーが、ミュージカル映画でよく使用していた俯瞰のショット)で捉えた映像も素敵ですね。

パブロ:僕も大好きなシーンだ。最近知ったんだけど、『オズの魔法使』のミュージカル・パートを担当したチームにバスビー・バークレーがいたらしい。あと、この作品には手塚治虫へのオマージュもある。彼は『鉄腕アトム』など商業的な作品で知られているけれど、実験的な作品も制作していて、僕はそういう作品が大好きなんだ。

——手塚は実験アニメを数多く自主制作しましたが、そういう作品もご覧になっているんですね。今回、原作を脚色する際には、どんなことを大切にしましたか?

パブロ:原作をそのまま映画化したら30分で終わってしまっただろう。原作にはドッグに関する描写も少ないしね。だから、原作のシンプルなストーリーに肉付けをしていった。そして、物語の舞台になるニューヨークを細かく描きこんで、映画の3人目の主人公といえるくらい存在感を与えた。原作では背景はすごくシンプルに描かれているんだ。緻密な背景とシンプルなキャラクターというバランスはジブリを参考にしている。あと、映画ではロボットが見る夢の数を増やした。だから、原作と違うところは多いけど、原作のテーマと魂は同じで物語の綴り方が違うだけ。原作者のサラ・バロンも映画を気に入ってくれているよ。

——アニメの特色を生かした見事な脚色だったと思います。最後に現在のスペインのアニメ事情について教えてください。

パブロ:いまスペインはアニメーション黄金時代で、かつてないほど盛り上がっている。スペインの大きな映画祭、サンセバスチャン映画祭のコンペにアニメ作品が入るようになったんだ。僕の大好きな監督、アルベルト・バスケスの新作『ユニコーン・ウォーズ』も素晴らしい。今週末、インスティトゥト・セルバンテス東京というスペインの映画機関が、スペインのアニメのイベントをやることになっていて、そこで『ユニコーン・ウォーズ』や『ロボット・ドリームズ』が上映される予定なんだ。

——エンタメ系の作品よりも、作家性の強い作品が増えているのでしょうか?

ベルヘル:完全に作家系だね。監督は脚本も手掛けていて、パーソナルな作品を作っている。アメリカでは3Dが主流だけど、日本とヨーロッパでは1秒間に24コマを書く伝統なアニメを今も作り続けている。そうした手描きアニメがずっと続いてほしいと思っているよ。

Photography Masashi Ura

■『ロボット・ドリームズ』2024年秋公開予定

■『ロボット・ドリームズ』
2024年秋公開予定

2012年『ブランカニエベス』でスペインのゴヤ賞で最多10部門を受賞したほか、数々の受賞歴のあるパブロ・ベルヘル監督が手掛ける初の長編アニメーション映画。サラ・バロンのグラフィック・ノベルを映画化した。ニューヨーク・マンハッタンに暮らすドッグとロボットの友情を描く、かわいくてちょっと切ない、心温まるストーリー。

監督・脚本・製作:パブロ・ベルヘル『ブランカニエベス』
原作:サラ・バロン『Robot Dreams』
アニメーション監督:ブノワ・フェロウモン『ベルヴィル・ランデブー』『ブレンダンとケルズの秘密』
2023年|スペイン・フランス|101分(予定)
© 2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL

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細田守監督も称賛する注目のブラジル人アニメ監督、アレ・アブレウが語る新作『ペルリンプスと秘密の森』に込めた色彩と音楽へのこだわり、そしてブラジル文化への想い https://tokion.jp/2023/11/28/interview-ale-abreu/ Tue, 28 Nov 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=217423 ブラジル人アニメ監督、アレ・アブレウが語る新作『ペルリンプスと秘密の森』について。

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アレ・アブレウ(Alê Abreu)

アレ・アブレウ(Alê Abreu)
1971年3月6日、サンパウロ生まれ。13歳の時にサンパウロ市内にあるMuseum of Image and Sound(MiS)のアニメーション教室に通い始める。1990年代、アブレウは2本の短編アニメーションを制作し、イラストや広告など多くのプロジェクトに携わった後、初の長編映画『Garoto Cósmico(宇宙の少年)』を制作。2016年に『父を探して』公開。2016年アカデミー賞長編アニメ賞に南米の長編アニメ作品として初ノミネートされた。

近年、注目を集めるイベロアメリカ(欧州および中南米のスペイン語・ポルトガル語圏諸国から構成される地域)のアニメ。そんな中で注目を集める監督の1人が、ブラジル出身のアレ・アブレウだ。長編2作目の『父を探して』(2016年)がアカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされたアブレウは、音楽と色彩に満ちあふれたイマジネーション豊かな作品を生み出してきた。最新作『ペルリンプスと秘密の森』は、クラエとブルーオという2人のエージェントが、巨人達から森を救うために「ペルリンプス」を探すという物語。そこには自然破壊や分断された世界に対する批判と、子どもの純粋な心が持つ力や可能性が描かれており、細田守監督も「まばゆい色彩に何度も目を奪われる。2人の主人公の愛くるしさと、今そこにある待ったなしの問題とが、葛藤する。その先に、子ども達へのやさしさがあふれている」と称賛のコメント寄せる。

今回、来日中のアブレウに会ってみると、彼自身が子どものような無邪気で活気に満ちていた。お土産のブラジルのお菓子を頂きながら、映画について話を聞いた。

華やかな色使い

——『ペルリンプスと秘密の森』は前作『父を探して』に比べると作風が変化しましたね。とても色彩豊かで、柔らかくて立体的なタッチになりました。美術やキャラクターのデザインについて、何か意識していたことはありますか。

アレ・アブレウ(以下、アブレウ):『父を探して』と『ペルリンプスと秘密の森』は、ある意味、対照的な作品と言えるかもしれません。『父を探して』は白をベースにしているのに対して、『ペルリンプスと秘密の森』はカラフル。『父を探して』にセリフはありませんが、『ペルリンプスと秘密の森』はセリフがたくさんある。この違いは私のスタイルが変わったというより、物語が求めているスタイルが違うので変化したんです。

——では、今回の色使いに関して何か意識していたことはありますか?

アブレウ:この映画は色彩が1つのキャラクターになっています。まず、森のキャラクターを表す色彩。そして、子どもの世界も色彩によって表しています。映画の冒頭にカマドドリのジョアンが「この世界に強い光が入ってきた」と語りますが、その光が色彩を、子ども達の世界を生み出すのです。

——『父を探して』も白をベースにしながら色鮮やかでした。監督にとって色は世界観を生み出す上で重要な要素なのでしょうか。

アブレウ:色彩はものすごく重要な要素ですが、色の重要性や使い方について言葉で説明するのは難しいんです。色に関しては理論立てて使用しているわけではなく、自分のイメージがおもむくままに使っています。感覚的に使う、というのが私のやり方です。色を何かの象徴として使うことがありますが、私にとって色は音に近いもの。いろんな色を組み合わせてハーモニーを生み出していくことに惹かれるんです。

——画家のパウル・クレーも色は音楽的だと言っていますね。

アブレウ:そう、クレーもどんな作品になるかわからないまま色を加えていく。だからこそ作品に画家の内面そのものが反映されるんです。

——日本のアニメーションは色の使い方に対しては臆病というか慎重なので、 監督の作品を見ると世界はこんなに色にあふれているのかと驚かされます。

アブレウ:私は作品を作り始めると、その世界に深く潜り込んでいくことを大切にしています。今回は子どもの世界に潜り込んでいたので、子ども達の恐れを知らない大胆な色使いになりました。

——2人の子ども達のキャラクターデザインもとてもユニークでした。それぞれが動物の格好をしていて奇妙なメイクをしている。どこかプリミティヴな雰囲気も漂っていますが、彼等のキャラクターデザインはどういうふうに思いついたのでしょう。

アブレウ:最初に思いついたのがクラエのイメージでした。森の中の湖のような場所にオオカミの格好をした男の子がいる。顔にメイクをしているけど崩れかけていて、その子はどこかに行こうとしているんです。その子はどこに行こうとしているのか、その森はどんなところなのか。そうやっていろいろ考え始めたことで物語が生まれていきました。

——ブラジルの子ども達は自分でメイクをして遊んだりするのでしょうか?

アブレウ:そんなことはないです。ただ、自分が思いついたイメージがそうだったというだけで。もしかしたら、動物の格好をしていたのはカーニバルに参加していて、そこを抜け出してきたのかもしれない。でも、そう考えたのは後付けで、そういう設定というわけではありません。

音楽のイメージ

——監督の作品は全編に音楽が満ちあふれて、映像と溶け合ってシンフォニーを奏でています。本作の音楽に関しては、どんなイメージを持たれていましたか。

アブレウ:自分にとって映画の音楽というのは、言葉では表せない部分、スピリットを表現してくれるものです。今回のサントラはアンドレ・ホソイとオ・グリーヴォに依頼しました。それぞれに役割が区別されていて、オ・グリーヴォは森の風の音だったり雨だったり、そういう自然音を音楽として感じられるようにサウンドデザインをしてもらいました。アンドレには、子ども達のエネルギーを表現する音楽を作ってもらったんです。彼はボディ・パーカッションのグループ、バルバトゥッキスの中心人物で、私とは幼馴染なんです。

——どんな音楽にしたいのか、頭の中にイメージはありました?

アブレウ:アンドレには曲作りの参考になるものとして、サイケデリック・ロックを薦めました。テーム・インパラとか。自分がヴィジュアルを考える時も、サイケデリック・ロックのイメージがあったので、色彩と音楽で子どものパワーを表現できると思ったんです。

——この映画では音楽は添え物ではなく、1つの空間を生み出していますね。

アブレウ:まさにその通りです。作品をよく観ていただいてありがとうございます。音楽をバックにあるものとして捉えている監督や作品が多い中で、自分は作品を作り上げえる上で重要な要素として捉えているんです。

ブラジルでアニメーション映画の分野を確立したい

——『父を探しても』も本作も、子どもの眼差しで世界を発見してく物語だったと思います。あなたにとって「子ども」とはどういう存在ですか。

アブレウ:この映画を作っている間、自分はずっと子どもに戻っていました。子どもというのは、信じる力を持ち、世界がもっと素敵になるという強い希望を持つ者です。子どもが持っているその力は、大人になってからでも、大きな光、希望の光として人間の中に宿っています。そして、人が闇の中にいる時、困難に立ち向かう時に、その光が導いてくれるんです。

——監督は13歳の頃にアニメの教室に通うようになって、本格的にアニメの道を志したそうですね。何かきっかけのようなものがあったのでしょうか。

アブレウ:子どもの頃からアニメーション大好きで、自分でアニメーション映画を作りたいと思っていたんです。ブラジルのアニメやディズニーも観ましたが、日本のアニメに強く惹かれました。手塚治虫の『リボンの騎士』をよく覚えています。今も日本のアニメは私にとっては先生みたいな存在で、宮崎駿や高畑勲などさまざまなマエストロが作った映画を観て、いろんなことを学んでいます。そして、18歳の時、ルネ・ラルー監督の『時の支配者』や『ファンタスティック・プラネット』をサンパウロのシネクラブで観て「こんな作品を作りたい!」と思ったんです。観客と対話できるような作品を作りたいと。

——監督の作品を拝見すると、ブラジルの文化や自分達のルーツを再発見しようとしているように思えます。

アブレウ:ブラジルだけではなく、南米全体を視野に入れて考えています。『父を探して』は、『Canto Latino』というラテンアメリカの音楽を題材にしたドキュメンタリーを準備している過程で思いついたアイデアから生まれました。ブラジルの文化はいろんなものが混ざり合っている。とても豊かな背景を持っていて、それが自然に私の作品に表れてくるのではないでしょうか。

——ブラジルの現在のアニメの状況はいかがですか?

アブレウ:前の政権が文化に理解がなかったので、長い間、ひどい状況が続いていました。昔はブラジルで公開される映画の15%が国内で制作された作品でしたが、今はわずか1%にすぎません。新しい政権になってから、衰えてしまった文化芸術の分野を回復しようと頑張っているところです。日本には及ばないにしても、ブラジルでアニメーション映画の分野を確立するために、これからも努力していきたいと思っています。

Photography Yohei Kichiraku

『ペルリンプスと秘密の森』

『ペルリンプスと秘密の森』
12月1日から全国順次公開
脚本・編集・監督:アレ・アブレウ
音楽:アンドレ・ホソイ / オ・グリーヴォ
2022年 ブラジル / 原題:Perlimps / スコープサイズ / 80分 / 日本語字幕 星加久実 
後援:駐日ブラジル大使館 
配給:チャイルド・フィルム/ニューディア― (c) Buriti Filmes, 2022
https://child-film.com/perlimps/

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