テイ・トウワ Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/テイ・トウワ/ Fri, 08 Sep 2023 02:05:39 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png テイ・トウワ Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/テイ・トウワ/ 32 32 テイ・トウワが更新し続ける“フューチャー・リスニング” 同時リリース2作から浮かび上がる、その本質と現在地 https://tokion.jp/2023/09/08/towa-tei-touch/ Fri, 08 Sep 2023 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=207100 9月6日に多彩なゲストを迎えた『TOUCH』と初のインスト・ソロ『ZOUNDTRACKS』というアルバム2作を同時リリースしたテイ・トウワ。両作の制作背景から“フューチャー・リスニング”の現在地に迫る。

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9月6日に、細野晴臣や高橋幸宏、清水靖晃、Cornelius、高木完ら豪華多彩なゲストを迎えた『TOUCH』と、キャリア初のインスト・ソロ『ZOUNDTRACKS』という2枚のアルバムを同時リリースしたテイ・トウワ。『TOUCH』は偏執的なまでのレコード愛から生まれた2021年作『LP』の続編として位置付けられ、テイ・トウワならではのエクレクティックで洗練されたポップネスと絶妙なサンプリング・コラージュ感覚が光る仕上がりに。一方、『ZOUNDTRACKS』は“ライブラリー・ミュージック集”といったイメージのもとに制作され、環境音楽~アンビエント的な音像も随所で聴かせるなど新たなムード/モードも感じられる一作となっている。両作の制作背景を糸口として、そのデビューから時代にとっての、自身にとっての“フューチャー・リスニング”を提示し続けてきたテイ・トウワというアーティストの現在地に迫る。

『LP』と同じバイブスを引き継ぎ生まれた二卵性双生児的な2アルバム

——『TOUCH』を『LP』の続編として制作されたとのことですが、『LP』で示した世界観を具体的にどのように『TOUCH』では拡張していくことを考えながら制作されたのでしょうか?

テイ・トウワ:世の中で起きてることに興味がないようでいてもやっぱり物を作っていると気分とか、世の中の風潮だったりが大きく影響すると思うんですよね。『LP』を作り始めた頃に流行病が始まり、「これは収束までに案外長くかかりそうだし、人に出会ったり、クラブでDJをするようなことはしばらくはなくなるんじゃないかな」と思ったんです。

それでここ軽井沢で1人で過ごす時間が増え、レコードに触れる時間が長くなったのですが、『TOUCH』の制作を始める頃も「これはまだまだ終わらないな」と思ったので、とりあえず当てもなく、この環境のまま他にやりたいこともないから、『LP』と同じバイブスのまま、新しいアルバムを作ろうと思い制作を始めました。

——今回は2枚同時リリースとなりましたが、最初から2枚リリースを想定して制作されたのでしょうか?

テイ・トウワ:あくまで結果的にそうなったという感じです。ただ、それに起因するのが以前、僕がサントラを担当した『SUPER CROOKS』というアニメを手がけた堀元宣監督とのやりとりですね。その監督の別の作品のために数曲を提供することになったのですが、その時に「すごく速い戦闘シーンのためのBGMを作ってほしい」というオーダーもあって。

それで「速度」という言葉をいろいろな言語で調べて、とりあえず仮で曲名にしていくという作業をしていたのですが、ある時、俯瞰で見ながら仕上げていく自分の作品と違って、こういう感じでリクエストさえあれば、曲自体はどんどんできるなと思ったんです。それで周りを見渡してみると軽井沢は今すごく不動産がはやっているし、こっちのローカルCMで流れそうな曲を作ってみることにしました。

実は僕が作った曲って、結構世界各国のテレビやラジオで使われることが多いんですよ。その中にはクイズ番組やバラエティー番組で使われる曲もあるんです。でも、それはあくまで二次使用であって僕としてはそういう使い方は意図していない。ただ、そういう使い方をされることもあるので、今回はあえてそっちに向けた音楽を作ることにして、最終的にできた曲を『TOUCH』と『ZOUNDTRACKS』の2枚に分けて収録することにしました。

——できた曲をどういった基準で分けて収録されたのでしょうか?

テイ・トウワ:基本的に他の誰かと一緒に作った曲は『TOUCH』、自分ひとりで作った曲を『ZOUNDTRACKS』に収録しています。もちろん『TOUCH』の中にも自分ひとりで作った曲もありますが、そこはバランスを見ながら振り分けていきましたね。そういう意味では、この2枚は二卵性双生児みたいな感じです。

ただ、自分の中で『ZOUNDTRACKS』はデモテープ集のようなものだったので、このアルバムに関してはCDと配信だけでなくカセットでもリリースすることにしました。

なぜレコードというフォーマットにこだわるのか

——『TOUCH』はレコードでもリリースされますが、その理由を教えてもらえますか?

テイ・トウワ:やっぱりレコードだとジャケットのデザインも含めてモノとしての愛着が湧くんですよ。でも、バリー・マッギーにジャケットを描いてもらっていた『FLASH』、『BIG FUN』、『SUNNY』に関してはレコードを作っていないんです。その頃はダウンロードが増えてきたけど配信がなかったから、世の中的にもまだCDがモノとして必要とされていた時代でした。

それに僕自身は、レコードサイズで描かれた原画をゲットした時点でもう満足していたこともあって、CDはある意味でリスナーにそのお裾分けをするためのものという感じでした。でも、草間彌生さんに『LUCKY』のジャケットを描いていただいた時に「やっぱりこれはリスナーにも共有しないといけない」と思い、またレコードでもリリースするようになりました。

あと、レコードを聴く時には、レコード棚から出して、盤面を拭くというようにレコードに“触る”必要がありますよね。そのことを考えると『TOUCH』というタイトルは、自分の中ですごくしっくりくるアルバム名なんですよ。

ソロ初の日本語ラップ曲に高木完をフィーチャーした理由、高橋幸宏と過ごした歳月への想い

TOWA TEI「EAR CANDY」

——『TOUCH』にはこれまでにもゲストとして招かれていた細野晴臣さんを筆頭にさまざまなゲストが参加されています。特に「EAR CANDY」では、高木完さんが参加され、近年のテイさん作品ではあまり聴くことがなかったラップ入りの楽曲になっています。今作で日本語ラップをフィーチャーすることにした理由を教えてもらえますか?

テイ・トウワ:僕名義の作品で日本語ラップをフィーチャーした曲はこの曲が初めてです。この曲は、今回のアルバム制作の最後に作った曲ですが、最初から児童合唱団とか、たくさんの人が歌っているパートを入れたいと思い、途中でラップになるセクションを作りました。それで完ちゃんにお願いすることにしたのですが、そのお願いをするまでには少し経緯があって。

実は完ちゃんのことは同世代だし、昔から知っていたのですが、それまでは一緒に仕事をしたことがなかったんです。でも、去年の年末くらいからかな。ジャングル・ブラザーズのアフリカ(ベイビー・バム)が日本に来ていたタイミングで完ちゃんから「アフリカがテイくんに会いたがってるよ」と言われて、3人で一緒にカレーを食べに行くことがあり、それからちょくちょく会う機会があって。そんな感じで会話を重ねていくうちに同時代を生きてきたからこその共通項というか、話す内容は全く一緒ではないけど、いっぱい公約数があることに気が付きました。

それで「EAR CANDY」について、自分が思っていることをちゃんと説明した上で、それを反映する形でラップをやってもらえないかとお願いしたところ、快く引き受けてもらえました。その後、東京の僕の部屋でレコードの話とかいろいろな話をしたのですが、完ちゃんは、ちゃんとその時に出てきた共通のワードを取り込んだリリックをすぐに作ってきてくれて。そのおかげで非常に楽しい作業になりましたね。

——同世代ならではの通じ合うことが多かったからこそ、完成した曲ということでしょうか?

テイ・トウワ:そうですね。お互いにいつ死ぬかもわからないし、会えばそういう話ばかりしています(笑)。だた、こういう話はやっぱり若い人とはできないというか。仮に向こうもそういう話をされたところで、どうしていいかわからないだろうし。でも、それは作る音楽にしても同じなんですよ。若い人に媚を売ってまで売れたいと思わないし、売る気もない。自分のやりたいことをやるというか、自分がまだ聴いたことがない音楽を作りたい。ただそれだけですね。

——2013年の『LUCKY』にも収録された高橋幸宏さんとの「RADIO」の新バージョンが収録されています。今回、このバージョンを収録した理由はやはり今年亡くなられた高橋さんへのトリビュートという意味合いが強いのでしょうか?

テイ・トウワ:この曲に関しては、ちょうど10年前の曲と気が付いたこと、そして、幸宏さんとは想い出多き10年近くの年月を過ごしたこともあって、今年また幸宏さんの声を聞きたいと思い、アルバム完成間際で急遽収録を決めました。

サンプリングという方法論の魅力

——『TOUCH』ではボーカルのカットアップをはじめ、テイさんらしいサンプリング・コラージュの秀逸さを感じました。そのような手法で音楽を作ることにどのような可能性や面白さを感じていますか?

テイ・トウワ:特別意識してやっているわけではないんですけど、元々美大でデザイナーになろうと思ったきっかけがロバート・ラウシェンバーグやアンディ・ウォーホルのアート作品なので、カットアップやコラージュはやっぱり刷り込みとしてあるんですよ。

あと例えば、シンセサイザーで純粋なサイン波の“ド”という音を鳴らしても“ド”以外の音域はなく、倍音は出ません。でも、自然界の音は常に倍音というか、なんらかのノイズがある。だから、普段気がつかないようなものもサンプラーに取り込んだ時点で“ド”の音だとしても“レ”の音を弾いた瞬間に違和感を覚えますが、その感じが好きなんですよ。

基本的に僕は音階とか音楽理論はあまりわからないままやっていますが、絶対音感がある人からすると僕の音楽って理論的には音がぶつかっているはずなんです。でも、そういう音を使っているからこそ、おもしろいと思うんですよ。とはいえ、長年やっているとそういうことも理解できるようになってきたので、そこは直感的にやっていきたいこともあって、なるべく理解しないように努めているという感じですね。

閉鎖的な状況における想像力の広がりから生まれた『ZOUNDTRACKS』

——『ZOUNDTRACKS』では、これまで以上にテイさんのアンビエントテイストの楽曲も目立つ作品になっていると感じました。ある程度まとまった数のアンビエントテイストの楽曲が収録されていますが、これにはどういった狙いがあったのでしょうか?

テイ・トウワ:特に狙いはなくて、さっき話したように環境や状況といった条件が整ったことで作れてしまったから収録したという感じですね。あの時期はDJもほぼやっていなかったし、こんなにも制作だけに集中できる機会は今後もう2度とないということで作ってみた曲です。

実際、ほぼ1年間の間に2枚もアルバムを作ったことはこれまで一度もなかったと思います。ただ、『ZOUNDTRACKS』が先にできたからそっちを11枚目にして、『TOUCH』を12枚目にし、かつ『LP』の続編ということで自分の中では流行病三部作というか、そういう位置付けの作品になりましたね。

でも、基本的には音楽というものは自由なものだから、流行病にすごく影響されたということではないですよ。例えば、「2BAD」は、Netflixでやっているテレビでは流せないような作品で使われるBGMのような音楽をやってみたら自分でも作れたというだけです。そもそもこの作品は、あくまでライブラリー集ということもあって、全部がハッピーな曲である必要はないんですよ。だから、ああいうダークな曲があってもいいなと思って収録することにしました。それとアニメの主役に合いそうな「MUSE」だったり、何か自分なりに勝手にお題を出して、ひとりノリツッコミみたいなことをしながら曲を作っていきました。

そういう意味では、このアルバムは流行病による閉鎖的な状況のおかげで自分の想像力が広がった結果なのかもしれません。結局、音楽は気持ちが一番大事なんですよ。それとクラブでDJができなくなったことも少なからず関係があると思います。そう考えると、もしかしたら自分がニューヨークに行ってDJにならなかったらできたかもしれないアルバムというか。『ZOUNDTRACKS』は、そういう世界線上にあるアルバムだと思っています。

削ぎ落としの果てにたどり着いた、“フューチャー・リスニング”の現在地

——近年、2000年前後のテイさんの作品でも取り入れられていたガラージツーステップやドラムンベースの要素を取り入れたポップなダンスミュージックを打ち出す若いアーティストが増えています。このようにかつて流行したトレンドが若い世代を中心にSNSを起点に再評価される状況が最近では国内外でも珍しくなくなっていますが、音楽の作り手としてはこのように時代を超えて評価される音楽の魅力をどのように捉えていますか?

テイ・トウワ:おそらくそういう20年後、30年後もフレッシュに聴こえる音楽は、タイアップ曲のように1週間後や2週間後のチャートのことだけを考えて作られていないと思います。だから、今はY2Kリバイバルがブームだからといって、そういうすでにあるイディオムに拘って音楽を作っていても、時代を超えていく“フューチャー・リスニング”は、生まれづらいのかもしれません。

ただ、僕自身も若かったこともあって、昔はハウスやボサノヴァ、R&B、ドラムベース、ツーステップなど、その時々のトレンドにアンテナを張っていましたし、それらをうまく自分なりに消化して取り入れるということもやってきました。でも、2002年にSWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE名義のエレクトロニカを取り入れたアルバムを最後にそういったそれまで自分が培ってきたものをどんどん捨てていったように思います。

だから、今の僕は、その時々のトレンドではなく、自分が興味がある“マイブーム”と言える音楽同士をかけあわせた、自分なりのフューチャー・リスニングをやっているつもりです。そして、そういうノンカテゴリーで自分らしい音楽を表現する言葉が“TOWA TEI”という7文字であってほしいと思っています。

■TOWA TEI『TOUCH』
発売日:2023年9月6日
形態:CD /LP
https://columbia.jp/artist-info/towatei/discography/COCB-54360.html

■TOWA TEI『ZOUNDTRACKS』
発売日:2023年9月6日
形態:CD /DIGITAL/CASSETTE TAPE

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テイ・トウワが語る、ハードコアなレコード偏愛とその結実たる新作のこと https://tokion.jp/2021/03/30/towa-teis-hardcore-love-for-records/ Tue, 30 Mar 2021 06:00:10 +0000 https://tokion.jp/?p=25926 NYの地でディー・ライトのメンバーとしてキャリアをスタートさせて以来、30年以上にわたりシーンの第一線で活動を続けるテイ・トウワ。そのハードコアなレコード至上主義に貫かれた新作アルバム『LP』の制作背景を尋ねた。

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音楽活動30周年を迎えたテイ・トウワが、記念すべき通算10作目のスタジオ・アルバムを発表した。タイトルは『LP』。いうまでもなく、LPとは直径12インチのアナログ盤のことであり、それはテイ・トウワという音楽家のキャリアを象徴するメディアでもある。2020年はいつにも増してレコードを買い漁り、その偏愛ぶりをみずから再確認したというテイ・トウワ。今回はそんな彼に最新作『LP』のこと、そしてアナログ・レコードに注ぐ過剰なまでの愛情を語ってもらった。

レコードを聴き、レコードを作ることが僕の仕事

——『LP』の制作は2019年から始まっていたそうですね。

テイ・トウワ(以下、テイ):ええ。当初の予定では2020年前半にこのアルバムを出して、あとは別の仕事に集中するつもりだったんです。並行してサウンドトラックを作ることも決まってたし、2020年はスケジュール的にもけっこう無理しなきゃいけない感じだったんですけど、それが昨年2月以降はいろんなことができなくなっちゃって。結果的にはじっくり取り組めたんですけど、かといって時間をかけすぎるのもよくないので、『LP』とサントラの制作は2020年のうちに終わらせようと思ってました。

——DJなどの活動にも制約がかかる中、制作に没頭した1年だったと。

テイ:自分が持っているファンクションの中でいま機能できることは、作ることしかなかったんです。要は早い段階で諦めたんですよね。2020年に起きたことは、言ってしまえば産業革命みたいなことだから、今からこれを元に戻そうという考え方は違うのかもしれないなと。それで僕はDJ休止ということにしたんですけど、もしこれが毎週末にレギュラーでやってた頃だったら、かなりキツかったと思う。だから、いつか元に戻ると信じて粘り強く頑張ってる人の気持ちはよくわかりますし、やっぱりクラブに行けないのは残念ですよね。普段はヘッドフォンでしか爆音で聴けない人達にとって、身体が震えるくらいの爆音で音楽が聴ける環境というのはやっぱり貴重だし、それが日常からもぎ取られてしまったのは、本当に辛いと思う。そういう点でいくと、僕はまだよかったというか。

——というのは?

テイ:クラブほどの爆音ではないにせよ、自分にはそれなりに大きな音でレコードを聴ける環境があるし、正々堂々とそれが仕事だと言えますからね。レコードを聴き、レコードを作ることが僕の仕事。それに、こうして取材を受けてると「コロナの影響はありましたか?」と聞かれるんですけど、そもそもコロナだろうとなんだろうと、人生において自分に関係ないことなんて何もないんですよ。僕は自分の身体で濾過したものをアウトプットしているだけなので、もちろん制作にコロナの影響はありました。ただ、この『LP』自体に影響があるかというと、はっきり言ってないですね。

新作はすべてDJやレコードにちなんだ曲でできている

——アルバム最後の曲「NOMADOLOGIE」についてはいかがですか? タイトルもさることながら、哀愁を帯びたアンビエントにコロナ禍の2020年を感じました。

テイ:このタイトルは実体験に寄せてますね。というのも、昨年の非常事態宣言が出ていた時期に、タクシーで六本木から西麻布を移動したことがありまして。いつもにぎわっていた街には人が全然いないし、どこの店にもテイクアウトの張り紙があって、これはちょっと見たことがない光景だなと。それから東京の部屋に戻ってすぐにシンセで作ったのが、あの曲なんです。当初は別の曲をアルバムのエンディングにする予定だったんですけど、こういう曲も2020年らしくていいかなと思って、最後の段階で差し替えました。なんというか、これが2020年のテイ・トウワの心象風景だったのかなと。

——「NOMADOLOGIE」には、Natural Calamityの森俊二さんがギター、METAFIVEでもテイさんと活動を共にするゴンドウトモヒコさんがフリューゲル・ホーンで参加しています。

テイ:この曲はゴンさま森さまとのトリオで作ったんです。それもほぼ即興に近い感じなんですけど、2人とも僕がイメージしていた音を素早く返してくれて、ちょっと他にない曲になりましたね。

——冒頭からビートの効いたアップリフティングな曲が続いて、最後に「NOMADOLOGIE」が流れてきたときはハッとしました。

テイ:オフィシャル・インタビューをしていただいた小野島大さん曰く、いわゆるクラブ系のアーティストが2020年にリリースした作品はアンビエントが多かったらしいですね。僕もその気持ちはよくわかりますし、ちょっとしたシンクロニシティも感じました。とはいえ、ビートのない音楽自体は過去にも出してますからね。『FUTURE LISNING!』(1994年リリースのデビュー作)の 「Raga Musgo」もそうだし、カセット2台で多重録音を始めた16歳の頃なんて、そもそもアンビエントかミニマルしかできなかったので。

——確かに。

テイ:ただ、基本的に僕はDJとして社会に出て以来、ずっとリピート・ミュージックを作ってきた人間ですから。アンビエントで1枚作ろうという気持ちはまったくなかったし、基本的に今回はどれもDJやレコードにちなんだ曲なんです。たとえば「RINGWEAR」なんかはそのままで、要は加齢したレコード・ジャケットのことですね。僕はリングウェアの付いてるレコード・ジャケットが好きなんですよ。あとはそれこそ「NOMADOLOGIE」もそう。今頃みんな家でレコード聴いてるんだろうなぁと。

——4曲目「MAGIC」の歌詞には“My Yellow Magic”という言葉もありますね。

テイ:僕が初めて買ったLPはYMOの『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』だったんです。僕にとってはそれが音楽を好きになるきっかけだったし、そのLPが透明なイエロー・ヴァイナルだったこともふと思い出して、これは歌詞に使いたいなと。

TOWA TEI WITH HANA – MAGIC

ハードコアなレコード教徒として“満点”のアルバムが作れた

——制作が始まった時点で、アルバム・タイトルも決めていたんですか?

テイ:いや、そんなことはなくて。『LUCKY』から今作にかけて、タイトルの文字数がひとつずつ減ってきていることにふと気付いたので、だったら今回は2文字だなと(笑)。それで当初はフォルダ名に仮で「TT10」と書いてたので、今回のタイトルは「10」でもいいかなと思ってたんですよ。それこそ僕はデジタルで音楽を作ってますし、「All or Nothing」みたいな感じでいいかなと。

——なぜそれを『LP』に変えたのでしょうか?

テイ:なんていうか、ここにきてレコードへの偏愛がますます密になった気がしたんですよね。誰かと会食することもなく、ずっとステイホームで過ごしていてるうちに、おのずとレコードを買ったり聴いたりする時間が増えていって、気付いたら自分の愛情がすべてレコードに向かっていたんです。

——テイさんのお話を聞いてると、アナログ・レコードへのフェティッシュな愛情を感じます。

テイ:確かにこれは性癖みたいなものだと思う。たまにはデータで買ったりもしますけど、やっぱりアナログがあるとそっちに手が伸びちゃうんです。多分それはDeee-Liteの頃から変わってないんじゃないかな。それこそ当時はジャケットのデザインもLP用が先だったし、LPはキャンバスとしてもいいんですよね。なんていうか、もはや僕はレコード教徒なんですよ(笑)。便利なCDやMP3に洗脳されてた時期もありつつ、『LUCKY』あたりでまた本来の自分に戻って、晴れてまた僕はハードコアなレコード教に入信したんです。

——(笑)。レコードへの偏愛が詰め込まれた作品として、今作は『LUCKY』以降の到達点だと感じました。

テイ:僕もここでチャプターが1つ区切られたような気がしてます。草間彌生先生にデザインしていただいた『LUCKY』のLPは僕の家宝ですし、それ以降のジャケットをお願いしてる五木田智央くんも、アナログ一辺倒な人ですからね。というか、いま思うと僕をレコード教に再入会させたのは五木田くんだったのかもしれない(笑)。レコードを聴いてる時間は他のことなんて何も考えなくていいし、特に今回の『LP』はヴィジュアルも含め、レコードとして満点に近いものが作れたと思う。これを聴いている40分間くらいは、みんなにもコロナのことを忘れてもらいたいですね。

テイ・トウワ
1990年にDeee-Liteのメンバーとして、アルバム『World Clique』で全米デビュー。現在、10枚のソロ・アルバム、3枚のSweet Robots Against the Machine 名義、METAFIVEのファースト・アルバム等がある。その他に、2013年9月から現在に到るまで、東京・青山にあるINTERSECT BY LEXUS -TOKYOの店内音楽監修。2020年に音楽活動30周年を迎えた。2021年3月に10枚目のオリジナル・ソロ・アルバム『LP』をリリース。
http://www.towatei.com
Twitter: @towatei

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