フライング・ロータス Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/フライング・ロータス/ Mon, 14 Nov 2022 11:21:10 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png フライング・ロータス Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/フライング・ロータス/ 32 32 フライング・ロータスが挑んだ“アニメ音楽の新境地” Netflixオリジナルアニメ『YASUKE-ヤスケ-』サウンドメイクの全貌―後編― https://tokion.jp/2021/07/23/flying-lotus-love-of-japanese-anime-part2/ Fri, 23 Jul 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=45435 音楽界の鬼才&日本のアニメフリークであるフライング・ロータス。アニメへの想いとNetflix『YASUKE-ヤスケ-』の物語&サントラ制作秘話。後編は、アニメ好きの自身が理想とする新たなアニメ音楽について聞く。

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ロサンゼルスのビートシーン&ジャズコレクティブの中心的存在で、サンダーキャットルイス・コールハイエイタス・カイヨーテらが所属する最重要レーベルの1つ、「Brainfeeder」を主宰するフライング・ロータス。

最近では、共同プロデュースしたサンダーキャットの『It Is What It Is』が、第63回グラミー賞最優秀プログレッシブR&Bアルバム部門を受賞するなど、音楽シーンを牽引し続けている。

その自身が、Netflixのオリジナルアニメシリーズ『YASUKE-ヤスケ-』に、制作総指揮&音楽監督として参加。織田信長に仕えた実在のアフリカ人侍を主人公に物語を再構築したファンタジー時代劇である本作は、『うしおととら』『進撃の巨人』『呪術廻戦』などの人気シリーズを手掛けてきたMAPPAが制作を担当するという、アメリカと日本が真正面からコラボレーションした意欲作として話題を集めている。

音楽監督としては、主題歌から劇中スコアまで本作のサウンドスケープを構築。今までのアニメ音楽の常識をも覆すアプローチで、最終的にオリジナル・サウンドトラック『YASUKE(ヤスケ)』を完成させた。

前編に続き後編では、本作でチャレンジした独自のサウンドメイクの制作秘話や、アニメ好きの自身が理想とする新たなアニメ音楽についての想いを披露する。

アニメ音楽で『ブレードランナー』みたいなものは聞いたことないだろ?

——あなたは「アニメのスコアで『ブレードランナー』みたいなものは聴いたことがないだろ。俺は“よし、じゃあやらせてくれ。その脳内世界に入ってみる”って言ったんだ」と、このプロジェクトを引き受けたそうですね。

フライロー:ああ、そうだ。

——主題歌から劇中のスコアまで全面的に手掛けていますが、今回のサウンドメイクでのテーマやコンセプト、独自の試みなどあったなら教えてください。

フライロー:今回のプロジェクトを機に、シンセサイザーをじっくりと密に用いて仕事をしたかった。過去にも使ったことはあったけど、それを自分のプロジェクトの土台にすると考えたことはなかったんだ。だから今回、自分自身と限られた数のシンセサイザーだけ、という作り方にした。

——普段の作品制作とは違ったと思いますが、どのようなプロセスで制作を進めていったのでしょうか? 

フライロー:いつもとは違うことが多かった。純粋にあまり時間がなかった、という意味でも、通常よりはるかに強烈な経験だったね。自分の作品は長い時間を掛けて、自分が思った通りに仕上げるから。非常にストレスではあったけど、サムライ音楽やビートを作ることができたのは最高に楽しかったよ。

ただ、時間が限られていたおかげで、自分のプロダクションのワークフローがステップアップしたし、思い浮かんだアイデアにのめり込む速度も速くなった。

——あとで振り返って修正しようとしなかった、ということでしょうか。もちろん、あなたは緻密な作家ですし、大雑把だという意味ではないのですが。

フライロー:その通りで、あと知恵で細かく変えることはしないようにした。もしも「これだ!」というアイデアを掴んだら足踏みも躊躇もせず、それが何であれ「とにかく仕上げろ!」と。

『YASUKE -ヤスケ-』オープニングテーマ「Black Gold」Flying Lotus & Thundercat – Netflix

今までのアニメ音楽のセオリーを覆す挑戦

——しかも、一般的なアニメ音楽のセオリーとは別のアプローチで取り組んだとのことですが、どういうことでしょう?

フライロー:俺が理解している限り、アニメ音楽の作曲家達は、できあがった映像や動画に合わせて作業することはない。彼らはまず音楽を作り、アニメが制作される前に作品を提出しなければならないからね。

——ええ、そうなんですか?

フライロー:うん。とても奇妙な話だけどね。でも俺は、実際のアニメーションをまったく観ていない状態で、各シーンのスコアを書きたくはなかった。物語の本当のペースを把握するためにも、どんな風に画が動くか、そのシーンからどんなフィーリングを受けるかなど、事前に観ておく必要があったね。

——『YASUKE-ヤスケ-』には穏やかで美しい景観が登場するシーンもあれば、一転して凝った戦闘シーンも展開される。音楽制作に取りかかる前に、実際にそれらのフィーリングを知っておくことでスコアの精度も上げられるということですか?

フライロー:ああ。とはいえ、自分だけ先走り過ぎるのも良くないと思っていたから、事前に観るエピソードは1話だけにした。一旦そのシーンを見極め、映像の流れがどういう方向に向かうかを見せてもらったら、ある程度は納得ができたね。とにかく、音楽的には、その都度ヤスケがどんな精神状態にいるのかを想像しながら彼に寄り添っていった。

まぁ、MAPPAスタジオや関係者の面々は、そういう俺の仕事の進め方を汲んでくれたことで、いつもとは少しプロセスを変えなければならなかったけど。運が悪いことに、今回の音楽監督が俺だったということでね(笑)。

このアニメは自分の音楽を、普段とは違うものとして聴かせてくれた

——事前に映像を観て合わせ込んだケースと、自分の想像力に任せて作るケース、その両方の手法を使ったわけですね。

フライロー:そういうこと。音楽制作を始めた頃は、まだ全話アニメ化されていなくて、部分的には絵コンテの段階だったりもした。だから、制作するタイミングは難しかったけど、それでも楽しい作業だった。一旦シーンのヴァイブスを想像できれば、サウンドでいろいろと遊ぶこともできたから。中には、自分としては「これは上手くいくだろう」と作ったものが思い通りにならないこともあった。そんな時でも「別のことに役立つかも」と考えることができたね。

——映像と音楽を合わせる最終的な決定は、ラショーン監督とMAPPA側に委ねられていた、ということですね。

フライロー:そうだね。

——そのことで、最終的にできあがった作品を観て納得いかないこともあったりしましたか?

フライロー:いや、俺もプロジェクト全体に関わっていたからそれはない。ただ、いくつかの場面でラショーンの音楽の用い方にはかなり驚かされた。自分の予想を裏切られたよ。彼がいきなりひらめいて「この音楽はここに使うべきだ」なんて言ってきたことがあって、俺は「えっ、マジ?」と半信半疑なこともあった。ところが、実際は上手くいって「なるほど、自分は完全に間違っていたな!」と(苦笑)。

——普段の作品ではすべて自分のジャッジだと思うので、そういうやり取りは新鮮だったかもしれませんね。

フライロー:ある意味、そこが一緒に仕事するメリットだった。彼は俺に、自分の音楽を普段とは違うものとして聴かせてくれたからね。自分としては他のシーンのために作ったはずのものが、戦闘シーンで使われたりして「まさかこう使われるとは!」とかいうこともあったから(笑)。うん、あれはとても妙だったね。

——資料に「いくつか俺なりの秘策があった。J・ディラがよく冨田勲やヴァンゲリスからサンプリングしていたことを思い出したんだ」と記載がありました。改めて、その秘策は何だったのかを教えてください。

フライロー:まさに、J・ディラがやっていたその手法が秘策だったんだよ。

——つまり、今回使用したサウンドや音響が秘策だった、と。

フライロー:そういうこと。特定のシンセサイザーやリヴァーブなどが、今回の俺にとってのレシピだったんだろうね。というより「音のパレット」と言ったほうが近いかな。それが新しい試みだったし、このアルバムを象徴するものになった。

日本音楽のパロディは作りたくなかった

——別のインタビューでは「過去のアニメ作品の音楽と必ず比較されるはずだ」と答えていました。例えば、『アフロサムライ』『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』は、アニメ音楽という点でも評価が高かったと思います。それらとは違う、『YASUKE(ヤスケ)』ならではの音楽的アイデンティティを確立するために、どんな工夫をしましたか?

フライロー:今名前の挙がった作品は、ある意味サンプリングが主体となっているはずだ。それらの多くは、オールドスクールなヒップホップの美学、サンプリングなどに強く比重を置いたものだった。だから俺が思ったのは「自分はその代わりにシンセサイザーでサントラを作ることにトライしたい」と。

——それが、独自性につながっていったという。

フライロー:ああ、それをやっている人をのことを俺自身は聞いたことがないからね。アニメ音楽では、誰もアナログシンセサイザーを使っていない。中には、シンセサイザーは使われている、と言う人間もいるだろうけど、俺のやり方とは違う。俺が用いているのは、1970〜1980年代に使用されていた、古くて非常にレアな機材だ。だから、今ではもう聴くことができなくなった音質がもたらされているんだ。

——ヴィンテージ機材の他に、今回、積極的に取り入れた楽器やサウンドはどのようなものがありますか?

フライロー:日本の打楽器類、例えば太鼓は使いたかった。やっぱり、日本のサウンド要素を作品に反映させたかったからね。だからといって、安易にやるようなことではないんだ。日本音楽のパロディは作りたくなかったし、君達(日本人)が耳にして、不快に思われるようなものは嫌だったから(笑)。

——海外の作品で、日本ぽいけどどこか違和感を覚えるものもあります(笑)。

フライロー:だろ。だから、日本的なフィーリングを伝えるために最適な方法は、パーカッションを通じてやることだと思った。俺の個性の1つはドラムの扱い方だと思うし、日本のパーカッションを使って自分独自のことをやれば、この作品ならではの音楽になるだろうと。とはいえ、とにかくいろんな実験を重ねた。まるで、飛び込んであれこれ探索するウサギの穴みたいにね。

『YASUKE -ヤスケ-』インタビュー&メイキング映像 – Netflix

昔なら「自信がない」と断ったが、今は「受けて立つ」という感じ

——今までの自分の音楽制作の経験や手法で、今回のサウンドメイクに活かされたことは何ですか?

フライロー:これまで自分が学んだ、音楽理論や録音技術といった何もかもがこの作品に活かされている。コード進行についてはとても多くを学んだし……、とにかく自分の持てる技をすべて使った感じだ。

——あなたはどのアルバムでも、自分の知識のすべてを反映させようとしますよね?

フライロー:ああ、自分の正直な部分を作品にもたらそうとするから。

——サウンドトラック『YASUKE(ヤスケ)』に取り組んだことで、今までにない新しい発見や収穫はありましたか?

フライロー:発見の1つは、アルバムを1枚作るのに2年間も掛ける必要はない、ということ。

——それはかなりの発見ですね(笑)。

フライロー:その気付きはデカかったよ(笑)。収穫といえば、コンポジションを書きスコアをつけることに対する自信がついたというか、そこに関して自分には不安があったんだと思う。不安とは違うかな?  

とにかく、例えば「映画『スター・ウォーズ』のサントラを作曲してほしい」と依頼されたら、以前の自分なら「自信がないから無理だ」と断っていただろう。規模の大きいフランチャイズなわけだから、プレッシャーも大きいし、うかつに変則的なものはやれないぞ、と。

でも、今の自分なら「受けて立つ」という感じ。むしろ、やってみたいと思う。どんな依頼に対しても何をやればいいのか、そこに対する理解がより深まった気がしているからさ。もう心得た、という感じ。だから、今後も前進し続けて、自分自身の限界に挑戦し続けたいよ。

フライング・ロータス
LA出身のプロデューサー、フライング・ロータスことスティーヴン・エリソン。モダンジャズの最重要サックスプレイヤー、ジョン・コルトレーンを大叔父に持つ。サンダーキャット、カマシ・ワシントン、テイラー・マクファーリン、ルイス・コールらを輩出し、最近ではハイエイタス・カイヨーテらが在籍する人気レーベル、「Brainfeeder」を主宰。これまでに『1983』『Los Angeles』『Cosmogramma』『Until The Quiet Comes』『You’re Dead!』『Flamagra』を発表。その他、自ら手掛けた映画『KUSO』や、渡辺信一郎監督の短編アニメーション『ブレードランナー ブラックアウト 2022』の音楽など、映像関連の仕事も多
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『YASUKE(ヤスケ) 』(Warp Records / Beat Records)
オールド・シンセサイザーを駆使し、フライング・ロータスが理想とする新しいアニメ音楽を構築した本作。サンダーキャットが歌う「Black Gold」や主人公ヤスケをイントロデュースしデンゼル・カリーがラップで参加した「African Samurai」を筆頭に、コモンのバックも務めるジャズ・ピアニスト、ロバート・グラスパー、アニメクリエイターのブレンドン・スモール、ミゲル・アトウッド=ファーガソン、ニキ・ランダ、クリス・フィッシュマンらが参加

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フライング・ロータスが語る“日本のアニメ愛” Netflixオリジナルアニメ『YASUKE-ヤスケ-』に込めた情熱―前編― https://tokion.jp/2021/07/17/flying-lotus-love-of-japanese-anime-part1/ Sat, 17 Jul 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=45316 音楽界の鬼才&日本のアニメフリークであるフライング・ロータス。アニメへの想いとNetflix『YASUKE-ヤスケ-』の物語&サントラ制作秘話。前編は、本作で表現したかった作品の意図や狙いから、日本のアニメに対する深い愛について。

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ロサンゼルスのビートシーン&ジャズコレクティブの中心的存在で、サンダーキャットルイス・コールハイエイタス・カイヨーテらが所属する最重要レーベルの1つ、「Brainfeeder」を主宰するフライング・ロータス。

これまで発表された6枚のスタジオアルバムが世界的に高評価を得ているのはもちろん、最近では共同プロデュースしたサンダーキャットの『It Is What It Is』が、第63回グラミー賞最優秀プログレッシブR&Bアルバム部門を受賞するなど、音楽シーンを牽引し続けている。

その一方で、自他ともに認める熱狂的なアニメ&カルトカルチャーフリークとして知られている。これまでも、日本屈指のアニメ監督である渡辺信一郎が手掛けた『ブレードランナー ブラックアウト2022』や『キャロル&チューズデイ』のサウンドメイクに携わるなど、アニメーションの世界と密接にリンクしてきた。

その自身が、Netflixのオリジナルアニメシリーズ『YASUKE-ヤスケ-』に、制作総指揮&音楽監督とし参加。織田信長に仕えた実在のアフリカ人侍を主人公に物語を再構築したファンタジー時代劇である本作は、『うしおととら』『進撃の巨人』『呪術廻戦』などの人気シリーズを手掛けてきたMAPPAが制作を担当するという、アメリカと日本が真正面からコラボレーションした意欲作として話題を集めている。

このプロジェクトを通じて本格的にアニメ業界・作品に携わり、今までのアニメサウンドの常識をも覆すアプローチでオリジナルサウンドトラック『YASUKE』を完成させたフライング・ロータス。

今回の前編では、『YASUKE-ヤスケ-』で表現したかった作品の意図や狙い、主人公・ヤスケに込めたメッセージ、そして日本のアニメに対する深い愛について語り尽くす。

世界に向けて「ブラック・サムライ」という新しいヒーローをもたらしたかった

——そもそも『YASUKE-ヤスケ-』には、どのような経緯で参加することになったのですか?

フライング・ロータス(以下、フライロー):プロデューサーの友人から連絡をもらって、彼に「黒人の侍についてのプロジェクトに取り組む気はあるかい?」と尋ねられたんだ。こっちとしては「イエス! もちろん!」と。それで、Netflixのメンバーとも会って俺もゲーム(=この企画)に参加することになった。本当に、思いがけなかったね。

——ということは、ストーリーに興味を持たれて参加を決めたのでしょうか?

フライロー:部分的にはそうだよ。ただ、俺はずっとアニメが大好きで、アニメ業界で仕事をしたい、そしてNetflixのために何かやりたいという思いがあった。だから、このプロジェクトは完璧に思えたよ。

——夢が実現したようなものだったわけですね。

フライロー:そう、その通り。

——本作では制作総指揮という立場でも参加されましたが、作品をどのように描きたいと考えていたのでしょうか?

フライロー:この作品は、日本で初のアフリカ人侍の人生をたどっていくファンタジーストーリーで、侍としての人生を終えたあと、彼が経験したさまざまな冒険を描いている。その「ブラック・サムライ」像を通じて、世界に新しいヒーローをもたらしたかった。子ども達が鼓舞されるような誰かをね。

——ヤスケについて史実があまり多く残っていないとはいえ、あなた方が16世紀の日本にいたとされる人物に引き寄せられていったのは、非常に興味深いことですね。

フライロー:ああ。俺達にとっても、史実が多く残っていなかったことはとても興味深いことだった。だからこそ、作品にする価値もあると思ったし、彼について知られていることがあまりないからこそいろいろと創作することができたわけだからね。

——創作面で自由度が高かったから、形而上学的な未来と過去を行き来する物語になったわけですね。

フライロー:そう。事実に沿って物語を描くことができないから、じゃあそれをファンタジーでやろうと、この伝説上の人物を俺達なりに再構築したというわけ。

『YASUKE -ヤスケ-』日本版ティザー予告編 – Netflix

世の中のアニメには完璧なヒーローが多過ぎる

——主人公・ヤスケの人物像はどんな風に描きたかったのでしょうか?

フライロー:欠点をもつ人物として描きたかった。世の中には、完璧なヒーローが多過ぎるからね。言い方を変えれば、人間っぽさがないというか。絶対に間違いは犯さず、常に正しいことだけをやる。でも、この作品では「そんな奴でもしくじることがある」と言っている。人間には欠点があるし、時に問題やトラウマを抱えることだってある。俺達はヤスケを、そうしたことの多くに立ち向かわせたかったんだと思う。つまり“ハートのある侍物語”にしたかったわけだ。

——日本では、誇り高く、何者にも屈しない強い意志、自己犠牲的精神などを持った人を「サムライ」と表現することもあります。真の侍であるための条件として、何が必要だと考えますか?

フライロー:まさに君が今言った通りだと思う。ずばり、それらの資質だよ。無私無欲であることは、もっとも大きな要素の1つだね。自分よりも他のひとびとの役に立つことを考える、という“高貴さ”と“誉れ”だね。

——日本史の資料によれば、織田信長がヤスケを気に入った理由として、英語が少し話せた、話していると飽きなかった、力が強かった、芸が少しできた、とあります。改めて、織田信長はヤスケのどういう部分に引かれたと考えますか?

フライロー:好き嫌いは分かれるだろうけど、信長は先進的な考えの持ち主だった。しかも俺が理解している限り、かなりエキセントリックな人だったようだ。だから、信長はきっと、とても大きくてダークスキンなこの男をそばに置けば、みんなを震え上がらせることができる(そうは言いつつ実は良いやつで、ただ他の連中と少し違うだけなんだけどな)と考えていたと思う。おそらく俺が信長の立場でも、そんな人物を自分のそばに置きたくなっただろうな、ハハハハハッ!(笑)。

——確かに、織田信長はひとびとを驚かせたり喜ばせたりすることが大好きだったみたいですから。

フライロー:だろ。それに、信長にとってヤスケはステータスのシンボルでもあり、変わった意味での「貴重な宝」だったのかもしれない。みんなを驚かせることもできるし、時にはひとびとを怖がらせることもできる、自分で支配できる玩具みたいな存在でもあったかもね。でも、俺達の作品では、信長が単にヤスケの強さだけではなく、ヤスケの精神もリスペクトしていた、という部分も取り入れたかったんだ。

『YASUKE -ヤスケ-』信長の最期 – 弥助へ命を渡す – Netflix

アニメ業界ではブラックアメリカンはまだ少数派だ

——フライング・ロータスさんとヤスケに共通点はありますか?

フライロー:もちろん! ヤスケはアウトサイダーなわけだろ? だから、ブラックアメリカンである俺達が、アニメ業界でこの作品を制作しながら感じたことも、ある意味ではヤスケの立場や感情に近いと思っているよ。

——ということは、ブラックアメリカンはアニメ業界ではまだごく少数派である、と。

ロータス:ああ、非常に少ないよ。とても排他的な世界だからね。ヤスケが生きた世界も、まさにそれと同じだった。黒人男性である彼もまた、非常に排他的な世界で多くを学び、受け入れてもらうための試練をくぐる必要があったわけだ。俺達も同様で、日本のMAPPAスタジオに自ら作品を売り込み、彼らに参加してもらうようにしたんだから。

——本作『YASUKE-ヤスケ-』を通じて、視聴者に伝えたかったメッセージとは?

フライロー:その質問への答えは、監督のラショーン・トーマスが語るべきだと思う。でも、俺個人としては、今まで話してきたことも含めて、インスピレーションを掻き立てられて、もっと彼の冒険を観たいと思ってもらえるような、新しいヒーローとして世界にもたらしたかった。

アニメ界には、まだまだ黒人のヒーローがいないようなもの。だから、黒人のキッズ達がヤスケの真似やコスプレをするくらいのヒーローになってくれたら嬉しいね。

俺は子どもの頃から日本のアニメを山ほど観てきたんだぜ

——今回、念願のオリジナルアニメ作品に本格的に携わることができたわけですが、そもそも日本のアニメを好きになったきっかけは?

フライロー:子どもの頃、従兄弟が『AKIRA』や『Fist of the North Sta(=北斗の拳)』といった映画を観せてくれたんだ。そういった昨品の影響はデカかったね。

——あなたは『ドラゴンボール』の大ファンだったそうですね。

フライロー:そうだ! だから、俺はアニメをずっと観てきたんだ。古い作品から新しい作品まで山ほど観てきたし、アニメに対する愛情はとても深いよ。

——答えるのが難しいかもしれませんが、日本のアニメで、好きな作品、好きなクリエイターを教えてください。その理由は?

フライロー:(まいったな調の感嘆)ヒュ〜〜ッ! 渡辺信一郎は最高だね。俺のお気に入りには『カウボーイビバップ』は間違いなく入ってくるし……。確かに、答えるのがとても難しい質問だ。ハハハッ!

——すみません……。

フライロー:君だってそうなるのはわかっていただろ(笑)。

——外国人の視点から、日本のアニメにはどのような特徴・魅力がありますか?

フライロー:自分が子どもだった頃に観ることができたのは『バットマン』のアニメシリーズだった。アメリカのテレビアニメでベストな作品と言えば、ほぼあれだったからね。

でも、日本のアニメは、非常にドープな内容でプロダクションやヴィジュアルの質が高い。キャラクターの描き方も興味深いし、筋書きも大人向けで、アメリカの作品より映画的な感じがした。俺はそこに引きつけられたんだと思う。アメリカで日曜の朝に放映される子ども向けのアニメ番組は、とにかく複雑さが足りなかった。ただ単に、関連のフィギアや玩具を売るのが目的で作られていたから。

——日本のアニメはストーリーが複雑かつ、哲学的になることすらありますからね。

フライロー:そう、その通り。

日本のアニメ音楽はノーマル過ぎるし、作品の一部として機能していない

——日本のアニメ音楽についてはどう思いますか?

フライロー:んんん……、ほとんどのものが好きじゃないな。アッハッハッハッ!

——それは、なぜでしょうか?

フライロー:ダサくて安っぽいし、ポップ調なものが多い。まぁ、俺のスタイルじゃないよな。中には良いものもあるよ。音楽が頭にこびりついて、3回聴いてエピソードを観ると、その曲が頭から離れなくなる、とかね。

だけど、大抵のアニメ音楽は作品とマッチしていない。行き当たりばったりにポップソングを採用して、それを作品のイントロ的に使っているだけだ。つまり、その曲が作品の一部だという気がしないわけ。

——あなたの趣味からすると、ちょっと奇妙で不可思議過ぎるんでしょうね。

フライロー:ノー! いや、そうじゃない。そうじゃなくて、良い意味でヘンさが足りない。ノーマル過ぎるんだよ(笑)。

——あなたにとっては、あれでも普通過ぎる、と(笑)。

フライロー:そうなんだよね(苦笑)。

一緒に仕事してみたい日本のアニメクリエイターは……

——ちなみに、最近、特に気になっている日本のアニメ作品やクリエイターを教えください。

フライロー:良い質問だな。どうだろう……『Kids on the Slope(=坂道のアポロン)』かな。渡辺信一郎監督が何年か前に作った作品だけど、かなり地味で誰も話題にしないんだよ。

ところが、非常にインスピレーションを掻き立てられる作品だし、実際あれを観て俺もピアノを弾こうと強く鼓舞された。俺にピアノという楽器に目を向けさせたという意味で、自分にとって非常に大切な作品だ。もっと多くの人に観てもらえたらな、と思う。本当に美しい作品だから。

「More feat. Anderson .Paak」 フライング・ロータス

——渡辺監督とは、アンダーソン・パークをフィーチャーした「More」のMVや、短編アニメ『ブレードランナー ブラックアウト2022』『キャロル&チューズデイ』などで一緒に仕事をしています。他に日本のアニメイターやクリエイターで、一緒に仕事をしてみたい人は?

ロータス:『My Hero Academia(=僕のヒーローアカデミア)』や、『呪術廻戦』を作っている人達とは、ぜひ仕事したいね。

——そうなんですね!

ロータス:もちろん! 何度も言った通り、俺は熱烈なアニメファンなんだぜ。『One-Punch Man(=ワンパンマン)』のクリエイターともぜひ仕事してみたい。願わくは、今後もアニメの仕事を続けたいなと思っているよ。

フライング・ロータス
LA出身のプロデューサー、フライング・ロータスことスティーヴン・エリソン。モダンジャズの最重要サックスプレイヤー、ジョン・コルトレーンを大叔父に持つ。サンダーキャット、カマシ・ワシントン、テイラー・マクファーリン、ルイス・コールらを輩出し、最近ではハイエイタス・カイヨーテらが在籍する人気レーベル、「Brainfeeder」を主宰。これまでに『1983』『Los Angeles』『Cosmogramma』『Until The Quiet Comes』『You’re Dead!』『Flamagra』を発表。その他、自ら手掛けた映画『KUSO』や、渡辺信一郎監督の短編アニメーション『ブレードランナー ブラックアウト 2022』の音楽など、映像関連の仕事も多数。
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『YASUKE(ヤスケ) 』(Warp Records / Beat Records)
オールド・シンセサイザーを駆使し、フライング・ロータスが理想とする新しいアニメ音楽を構築した本作。サンダーキャットが歌う「Black Gold」や主人公ヤスケをイントロデュースしデンゼル・カリーがラップで参加した「African Samurai」を筆頭に、コモンのバックも務めるジャズ・ピアニスト、ロバート・グラスパー、アニメクリエイターのブレンドン・スモール、ミゲル・アトウッド=ファーガソン、ニキ・ランダ、クリス・フィッシュマンらが参加

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