十河幸太郎 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/十河幸太郎/ Wed, 29 Dec 2021 09:43:53 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 十河幸太郎 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/十河幸太郎/ 32 32 みんなの今年のベスト映画は? 「TOKION」ゆかりのクリエイターが選ぶ「2021年公開の私的ベスト映画」  https://tokion.jp/2021/12/29/the-best-movies-2021/ Wed, 29 Dec 2021 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=85499 今年、劇場やストリーミングサービスで日本公開された映画の中から、「TOKION」にゆかりのあるクリエイターが心に残った映画を選出する。

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昨年に引き続き、2021年も新型コロナウイルスのパンデミックによって、多くの映画作品が公開延期に追い込まれたり、映画館へ足を運ぶこともままならない時期もあった。一方で10月1日から全国の映画館で全席販売・レイトショーが再開される等、明るいニュースも聞かれた。

そんな過酷な状況でも、鑑賞後にポジティヴなエネルギーを与えてくれる作品が今年も数多く公開されたわけだが、「TOKION」にゆかりのあるクリエイターが、今年、劇場やストリーミングサービスで日本公開された映画の中から心に残った、私的なおすすめ映画を発表! グッと来た場面やシチュエーションなど、2021年を映画とともに振り返る。

『JUNK HEAD』
八木華(ファッションデザイナー)

たった1人で、独学で作り始め7年かけて完成させたストップモーションアニメ『JUNK HEAD』。

環境破壊が止まらず地上が汚染された未来。人類は遺伝子操作により永遠の命と引き換えに生殖能力を失う。そして新種のウイルスにより絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化していた人工生命体の住む地下世界へ調査に向かう。地下調査員として名乗りを上げた主人公が地下の世界で人類再生の道を探る物語。

ストップモーションを制作している妹と映画館で観たのですが、もう二度と観たくないくらい疲れる圧倒的な映像体験でした。映画の舞台は未知なる地下の世界ですが、地下の構造から生物が話す言語まですべて未知です。その上ストップモーションという技法で映像も音もノイズが多い。

CGや演出の技術によって整備されたファンタジーの世界を快適に楽しむことはできるけど、本当に未知の体験は快適ではないような気がします。わからないことばかりで疲れる。そういう体験をさせてくれる映画は貴重だなと思います。

そのような意味でこの混沌にたどり着くために1人で7年間をかけてストップモーションで表現する必然性を感じました。

八木華

八木華
1999年、東京都生まれ。都立総合芸術高校卒業後、「ここのがっこう」で学ぶ。2019年に欧州最大のファッションコンペ「International Talent Support」ファッション部門に最年少の19歳でノミネート。現在は、妹と組んで映像制作にも取り組んでいる。
Instagram:@hannah.yagi

『サマーフィルムにのって』
岡本大陸「DAIRIKU」デザイナー

© 2021「サマーフィルムにのって」製作委員会
配給:ハピネットファントム・スタジオ

良い映画だったなぁ。最近の映画に対する消費のされ方に疑問を訴えかける映画で、映画館が減ったりレンタルビデオ屋も少なくなっていたりして映画好きとしては悲しい。古い映画はなかなか観れなくなってしまうのではないのかなっていう心配もある。でも、この映画を観ると映画作りの舞台裏と高校生達のキラキラした青春を混ぜていて、しかもSF! 観てて本当に楽しかったし、もし僕が高校生の時くらいに観たら、映画をサブスクとかじゃなくて映画館で観ようとかDVD借りて観ようという気持ちにさせてくれそうな映画でした。

特に昔の日本映画や日本文学への多大なリスペクトが込められていて、随所に作品がストレートに紹介されて、その映画作品観たい! というきっかけを作ってくれる。

これから名作は生まれるの? みたいな葛藤はあるけど、ちゃんとラストシーンで映画の未来が明るいという気持ちにさせてくれるし、あのシーンは泣いた。映画の過去作も現在も未来へも、ヒヤヒヤしながらも丁寧に丁寧に線と線を結んでる感じ。

日本映画の影響が色濃いかと思いきや、小栗くんが乗っているデコチャリと彼の髪型は映画『さらば青春の光』のエースみたいだったり、ラストシーンは出演者がみんな体育館に集まって“祭”のような感じで、『フェリーニ』の“8 1/2(ハッカニブンノイチ)”のようだった。洋画からの影響もあるのかなって想像するたびにワクワクした。監督さんは、本当に映画を愛してるんだろうなって。

岡本太郎は“芸術は青春”って言ってた。それを感じるくらい、主人公ハダシ達のあの若々しい映画づくりこそ情熱であって青春。映画でも音楽でも服作りでも何にでも、ひたむきに頑張ることが青春だなって改めて感じた映画でした。

僕も今、青春してるんだって思ったよ。ありがとう、映画。

岡本大陸

岡本大陸
1994年、奈良県生まれ。バンタンデザイン研究所ファッションデザイン学科在籍中に自身のブランド「ダイリク」を立ち上げる。2016年にはアジア ファッション コレクション(AFC)のグランプリを受賞し、2017年にニューヨーク・ファッション・ウィークでランウェイデビューを果たす。ブランドコンセプトは「ルーツやストーリーが感じられる服」で毎シーズン映画をテーマにしたコレクションを発表している。

『#寛解の連続』
十河幸太郎「ノウハウ」デザイナー

昨今、子どもと一緒に映画館に行く機会が増え、ファミリー向け映画を観る機会が増えたのですが、この作品は、今年1人で観に行った数少ない映画の1つです。その映画『#寛解の連続』は、2011年にファーストアルバム『神戸薔薇尻』をリリースしたラッパー、小林勝行の創作と生活に密着したドキュメンタリーです。躁うつ病を抱える小林さんの日常と、セカンドアルバム『かっつん』のリリースに至るまでの過程に迫る、というのがあらすじです。

僕の想像以上にむき出しで己の内面と向き合いながら描かれた壮絶なドキュメンタリーでした。ここ数年ずっと頭上に重く立ち込めている暗いムードのようなものは、自分自身の受け止め方や行動でまだいくらでも払いのけれる、そんなことに気が付いてハッとしました。ドキュメンタリーが好きな方にはもちろんですが、もしそんなムードが自身に立ち込めているような気がするのなら、すごくおすすめの映画です。

印象に残っているのは、序盤にレコーディング風景の場面があるのですが、そこでのレコーディングエンジニアの方との会話です。ラップを吹き込むことで音楽として印象がガラッと変わっていくことに驚きと喜びを隠さないその2人のやりとりにグッときました。それと、ボールペンの視点で描く楽曲「オレヲダキシメロ」を自宅の部屋で1人で制作する様子がとても印象的です。何度も声に出し自分に問いながら自分を鼓舞しながら表現を模索する姿はとても胸を打たれます。

小林勝行を知ったのは、数年前に現代美術家のcobirdさんに教えてもらった「108 bars」を聴いた時で、それから、生きざまや表現についての向き合い方がとても気になっていました。映画は2019年にできあがっていたそうなのですが、コロナ禍の影響もあり鑑賞する機会がない中で、ようやく今年の4月に閉館間近の渋谷アップリンクで上映されるという情報を聞きつけて観に行ってきました。昔のインタビューで唾奇さんも小林勝行さんに影響を受けたと話していたのもこの映画を観る後押しになりました。

ただ、現時点では配信サービスでは観れませんので、お住まいのエリアのお近くで上映される情報を要チェックです!

十河幸太郎

十河幸太郎
1980年、北海道生まれ。2013年にパジャマブランド「ノウハウ」をスタート。チューソンとともに夫婦で製作を行っている。近年では広島県尾道にある複合施設「U2」内のホテルのアメニティパジャマを製作。また、インナー&ルームウエアのライン「トワイライト」や、“家が恋しくなる”をテーマにした高級ライン「ホームシック バイ ノウハウ」なども展開している。「ノウハウ」のオンラインショップ「ROOM SERVICE」は年末年始も休まず営業予定。https://nowhaw.shop-pro.jp/

『逆光』
工藤司「クードス」デザイナー

1970年代の尾道が舞台のこの映画は、主人公である晃の故郷に憧れの先輩である吉岡を連れ帰省し、晃の友人達とともに過ごすひと夏が描かれる。(そこで彼等の微妙な人間関係が交差していく)。シークエンスごとに繰り返し強調されるのは尾道の土地の音や光だ。

しかし、晃が好意を寄せる吉岡の顔や表情はなぜかどこかおぼろげで印象に残らない。それは晃にとっての彼自身が「逆光」だからなのかもしれない。カメラの前では、逆光は被写体を光で覆い隠す。

渡辺あやの脚本や大友良英の音楽はもちろんのこと、俳優・須藤蓮の初監督作品であるということが1つのこの映画への呼び水だとしたら、それはとても表層的な要素でしかない。

誰かに想いを寄せ、それを直接伝えられない歯がゆさそれ自体は、いつの時代にも等しく僕等を苦しめると同時に喜びでさえもあるということを改めて思い知らされた。

1970年代を意識し作り込まれた衣装のスタイリングの世界観もとても心地のいいものだった。

工藤司

工藤司
沖縄県出身。早稲田大学卒業後、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに進学。中退後に渡仏し、パリの「ジャックムス」でデザインアシスタント、「Y/プロジェクト」ではパターンアシスタントとして経験を積み、その後渡英し「JW アンダーソン」のデザインアシスタントを経て2017年に自身のブランドである「クードス」を立ち上げる。2018年にはウィメンズ「スドーク」をスタート。写真家としても活躍。今秋に出版事業「TSUKASA KUDO PUBLISHING」を始動し『TANG TAO by Fish Zhang』を出版。
https://kudoskudos.co
Instagram:@tsukasamkudo

Photography Kisshomaru Shimamura

『浅草キッド』
藤原新「クオン」創業者

ビートたけし(北野武)さんのファンで楽しみにしていました。監督・北野武としての作品はもちろん、小さな頃からビートたけしさんを見て育った世代なので。劇団ひとりさんが監督・脚本を務め、松村邦洋さんが演技指導をするなど、ビートたけしさんをリスペクトする人達が多く関わっているということで、どんな作品になるのだろうという期待感がありました。希代の芸人・ビートたけしという主人公を通した、師匠である深見千三郎の物語。印象に残ったシーンはたくさんありますが、ビートたけしさんを演じる柳楽優弥さんのタップダンスが映像としてもすてきだなと思いました。

KUON 藤原新

藤原新
メンズブランド「クオン」創業者兼株式会社「MOONSHOT」代表。2011年「1sin」を立ち上げ、2016SSシーズンより新たに石橋真一郎をデザイナーとした「クオン」をスタート。現在も法律に携わる仕事を継続しながら、さまざまな日本の伝統技術を結集したメンズウエアを提案し続けている。ブランドの公式noteも更新している。
https://note.com/kuontokyo2016
https://www.kuon.tokyo

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源馬大輔×「ノウハウ」十河幸太郎対談 ファッションにおける“究極の自己満足”のパジャマ、その遊び心と機能性について https://tokion.jp/2021/04/09/pajamas-fashions-ultimate-example-of-self-satisfaction/ Fri, 09 Apr 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=28076 「TOKiON the STORE」キュレーターの源馬大輔と「ノウハウ」デザイナーの十河幸太郎の対談から生まれる、「自分が着たい」と思うパジャマとは? アイテムは4月16日発売。

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「TOKION」はMIYASHITA PARK内の「TOKiON the STORE」やECで、国内外のアーティストやクリエイターとタッグを組んだアイテムを展開している。本企画は、「TOKION」キュレーターの源馬大輔が“今”会いたい人と対談をしながら、プロダクト開発のきっかけを探る。

今回の相手は、“新しく思いがけない驚きのある休日と世界”がテーマのパジャマブランド「ノウハウ」デザイナーの十河幸太郎。プロデューサーで妻のチューソンとともに制作を行っており、1日中着られるジャケット型の“day”、ノーカラーや比翼などの“静かな”デザインが特徴の“shhh”など、コンセプチュアルなパジャマを展開している。利便性にも優れており、文庫本がちょうど入るポケットやちょっとした外出時に便利なベルトループ、さらには襟裏のシークレットポケットや暗闇の中でも目立つ蓄光ピスネームなど、気が利くものから軽い冗談を本気で実現してしまったようなディテールまでを詰め込んでいる。着心地が良いだけでなく、気兼ねなく洗濯できるようにステッチも強固に施されている。また、現代アーティストの加賀美健や平山昌尚らとのコラボレーションも行っている。

思わず笑顔になってしまうコンセプトとデザインの「ノウハウ」が表すように、十河自身もユーモアにあふれていて、対談は終始和やかな雰囲気で行われた。今回の対談からどのようなパジャマが生まれるのだろうか?

源馬大輔(以下、源馬): 6年くらい前に雑誌で「ノウハウ」の“kung-fu”(チャイナジャケット風のデザイン)を見つけて、超良いと思って。それですぐに連絡して展示会に行った時に初めて出会ったんですよね。

十河幸太郎(以下、十河):源馬さんが来た時は驚きましたよ。思わず「え!? 暇なんですか?」って聞いちゃいました(笑)。

源馬:「ノウハウ」はモノが良いのはもちろんですけど、全員人柄も良いし、それにめちゃくちゃおもしろいんです。

十河:僕達が何言っても笑ってくれるので、チューソンと一緒に嬉しくなっちゃって。こんなアンダーグラウンドなパジャマメーカーもチェックしているなんて、信頼できる人だって思いました。

源馬:ブランドの話を聞いていくと、どのモデルもコンセプチュアルだし、デザインのさじ加減も絶妙で。

十河:めちゃくちゃ嬉しいですね。それこそ源馬さんや藤原ヒロシさんみたいにセンスを生業にしている人達を見て、僕達もブランドを始めたわけですから。源馬さんは僕達のパジャマを着込んでくれていますよね。

源馬:夏はTシャツに短パンですけど、冬はよく“kung-fu”を着ていますよ。それにコンビニなんかにもそのまま着て行けますからね。

十河:華やかにバシって着飾るのもかっこいいけど、全く気を使ってないようで実はシャレているのも魅力の1つだし、僕達はそっちをやりたいんです。「ノウハウ」を始めた頃は代官山に住んでいたんで、近所の蔦屋書店に着て行けるようなパジャマを作りたいというのが根底にあります。出掛けるためにわざわざ着替えなくてもいいもの。

「みんなダラダラするの好きでしょ?」

源馬:そもそもパジャマを作ろうとしたきっかけはなんだったんですか?

十河:僕はパジャマを着て家で過ごすのが好きだったし、「ノウハウ」を始めたのも30歳を過ぎてからだったので、長く気楽に続けられるものを作りたかったというのが理由の1つです。それに、家でダラダラ過ごすことに対する世間的なイメージはあまり良くないけど、声に出さないだけで「みんなダラダラするの好きでしょ?」って思ったんですよね。

源馬:僕なんか大好きですよ。家に“おひとりさまソファ”って呼んでいる足を伸ばせるソファがあるんですけど、休みの日はそれに座りながら観たい映画をひたすら探して、本当に何も考えずにぼーっと過ごしてる。

十河:僕も一緒ですよ。そういう時間のために日々の雑務をこなしているんですから。だから、家でゴロゴロできることに特化しつつも、昔読んでいた雑誌から受けた影響や好きなカルチャーなんかを落とし込んだり、アーティストとコラボしたりするようなブランドを作ろうと思ったんです。

源馬:新型コロナが流行って、それまでみんな無理して出掛けていた部分もあったんだなって思いましたよ。

十河:意外とダラダラするのも良いじゃんってね。

源馬:家の中のものにこだわる潮流もありますし。

十河:当初は誰からもうまくいかないと言われましたよ。一般的には外で着る服にお金をかけるし、やっぱりパジャマはニッチなマーケットです。

源馬:まあ、洋服は自己満足で楽しむ部分もありますけど、パジャマはその最たる例ですよね。

十河:そうそう、僕もそう思っていましたし。今は時代に合っているとか言ってくれることもありますけど、いち早く「ノウハウ」を見つけてくれたのは源馬さんですから。6年も前によく展示会に来てくれましたよ。

「ノウハウ」を巡る機能美とサイズ感

源馬:「ノウハウ」のパジャマはコンセプチュアルですよね。

十河:もちろん“伝えすぎない”魅力もあると思うんですけどね。パジャマは一般的なファッションとはちょっと違って生活雑貨の側面が強いですが、寝心地や機能性さえ担保されていればデザインで遊べると思うんです。それに人に見られることを前提としていないから似合う、似合わないではなくて、着たいと思ったら買えるアイテムなんですよね。

源馬:確かに、パジャマって究極のプライベートな服装じゃないですか。誰かに見せるものじゃないから買う時は純粋に気に入ったものを選ぶし、そういう意味ではパジャマはファッションの本質を突くものだとも思います。「ノウハウ」を始める前って、何か服作りはしていたんですか?

十河:デザイナーズブランドのパタンナーでした……とか言えたらいいんですけど、そうじゃないんですよ。20代の頃はゴミ収集車に乗ったり、六本木の「わけあり熟女倶楽部」ってお店の厨房で働いたり、定職に就かずブラブラしていました。その後も紆余曲折あるんですけど、「A.P.C.」の販売員もやっていました。結構売っていたんですよ。

源馬:意外な一面を出してきましたね。

十河:接客の経験も少なからず今に活きていて。店頭の商品から、お客さんは限られた予算の中でお買い物をするわけじゃないですか。だから買おうかどうか悩んでいる時に、「お似合いですね」とか「今日はいているパンツと合っていますよ」みたいなセールストークをしてもただ虚しいだけなんです。全然刺さらない。そういう時には、機能について話すと盛り上がります。

源馬:へぇ、おもしろいですね。

十河:例えば「このポケットだったらiPad miniが入りますね」とか。勝手な後付けでもいいから、機能美の話をするとお客さんの背中を押せることは肌で感じました。「ノウハウ」のパジャマには家の中の動きに対応できるような機能を随所に盛り込んでいます。あとはくつろぎやすさを考えるとパジャマはゆったり着るほうが良いと思ってるので、サイズで悩んでいる人には大きいサイズを薦めますよ。

源馬:機能的にも良いし、だらっと大きめのサイズを着るのも可愛いですもんね。

十河:いにしえから「大は小を兼ねる」って言葉があるし、うちのおかんもよく言っていました。たまにおかんのパンチラインを思い出します。

源馬:母親が言うことは聞いておくべきですよ(笑)。デザインは生活に根付いたものが多いけど、どういう時に思いつくんですか?

十河:意識してはいないですけど、普段の生活の中で引っかかることがあれば、後々それをデザインに落とし込んだりはしています。ただ僕達は器用なタイプじゃないので、サンプルを作ってはボツにしていますよ。チューソンのジャッジが厳しくて……。

源馬:声が小さくなった(笑)。

十河:企画とデザインは僕なんですけど、それを世に出すかどうかをジャッジするのはチューソンなので。もう、ボロクソ言われますよ。「そんなの誰が着るの?」って。

源馬:チューソンさんはしっかりされていますよね。鍛えられるんじゃないですか?

十河:僕も「はーい……」って言って、何事もなかったようにまた仕事に戻るんです。ただ、なんだかんだ言われてもサンプルまでは作らせてくれるのはありがたいですよ。

源馬:良い関係性じゃないですか。

「自分達が着たいもの」――「TOKION」とのコラボで何を作るか?

十河:僕達は自分からの営業があんまり得意ではないんで……ありがたいことにこうやって好き者が声かけてくれるんですよ。

源馬:好き者って(笑)。

十河:でも僕達も好き者に引かれていますから。好き者から影響を受けていますし、実際そういう人が僕達の相手をしてくれるんですよ。源馬さんだって僕からしたら大先輩ですから、胸を借りるつもりでコラボしたいです。

源馬:一緒に何かを作る時にアーキタイプというか、共通の感覚があるのは大事ですからね。

十河:僕もコラボは楽しいんですよ。でも、やっぱり、自分達が着たいものを作りたいじゃないですか。源馬さんは短パンが好きだし、上は長袖で下は短パンが良いなと。真夏だったら短パンとTシャツで過ごせるし、ちょっと寒くなったら長袖を羽織るみたいな感じで、長く使えるもの。「ノウハウ」のパジャマは必ずセットアップで作っていますが、その縛りの中でどれだけ遊ぶかっていうのもコラボの醍醐味なんです。

源馬:ポケットにマチを付けても良さそうですね。

十河:トートバッグも作りたいんです。僕がよく行くスーパーのLサイズのレジ袋と同じ大きさで。上下でパジャマ着て、同じ柄のバッグ持ったらとても可愛いと思います。

源馬:それと僕、ある時に職質されて、警官に「なんで職質したんですか?」って聞いたら「全身黒だから」って言われたんですよ(笑)。だから今回は黒じゃなくてネイビーの無地を作りたいなと。

十河:“職質されないパジャマ”、良いですね(笑)。

十河幸太郎
1980年、北海道生まれ。2013年に「ノウハウ」をスタート。チューソンとともに夫婦で制作を行っている。加賀美健や平山昌尚、Yuki MIKAMI、BAKIBAKI、今井俊介、書道家の万美など、アーティストとのコラボレーションも積極的に行う。また、パジャマを着る前後の時間のためのインナールームウェアを制作する「トワイライト(Twilight)」や、シルク100%の“家が恋しくなる”着心地のパジャマを制作する「ホームシック バイ ノウハウ(HOMESICK by NOWHAW)」などのラインも展開している。
www.nowhaw.com

源馬大輔
1975年生まれ。1996年に渡英し、1997年ロンドンのブラウンズに入社、バイヤーとしてのキャリアをスタートさせる。 2002年帰国後、中目黒にセレクトショップ、ファミリーを立ち上げ、 WR/ファミリー エグゼクティブ・ディレクターに就任。2007年に独立し、源馬大輔事務所を設立。セリュックス(旧LVJグループの会員制クラブ)のブランディング・ディレクターなどを務め、現在は「サカイ」のクリエイティブ・ディレクションや香港の高級専門店レーン・クロフォードのバイイング・コンサルタントなどを行っている。経済産業省「ファッション政策懇談会」の委員も務める。

Photography Kazuo Yoshida
Cooperation MIDORI.so NAKAMEGURO

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