「ネペンテス ニューヨーク」が新進アーティストを紹介するエキシビジョン 米ペインターのジュリアン・カリディによる「Sometimes It’s the Sun」をレポート

2010年のオープン以来、アメリカや日本のアーティストによるストア内でのアートエキシビションやポップアップを精力的に開催している「ネペンテス ニューヨーク」。2024年の最初のエキシビジョンとなるのが、ペインターのジュリアン・カリディによる「Sometimes It’s the Sun」だ。

ジュリアンは1994年コロンビア・バランキージャ生まれ、 ニューヨークのトライベッカ育ち。同エキシビジョンでは、彼の最新の作品群が展示されていて、アブストラクトなストロークと色彩で美しく滲むウォーターカラー(水彩絵の具)のペインティングがタペストリーのようにストア内に飾られている。

「最初に、キャンバスとなる工事現場でも使うような防水シートやリネンを染めるところからはじめる。バケツに顔料で染色液を作って、大体1日ファブリックを漬けて、液から取り出した瞬間からその上に描きはじめるんだ。ものすごい速さでね(笑) ほとんどのペインティングは集中して描き込んだり、ただ眺める時間をとったり、時間をかけて作業したりするんだけど、この新しいペインティングはとにかく乾くのが速い。ウォーターカラーのように、とにかく乾く前に作業を終わらせる。この布は裏面だけ防水になっているから、滲み方も独特。布にインクが滲んでいく時、毎秒、違うテクスチャーが生まれていくんだよね。この日本の伝統的な墨汁をよく使うんだけど、これは最高」 。

ジュリアンは昨年、ニューヨーク州のアップステートにあるコールドスプリングからサウスウィリアムズバーグにスタジオを移したばかり。アップステートは自然に囲まれた環境はよかったけれど、ニューヨークシティからスタジオ・ビジットに来てもらうには距離があった。だがブルックリンのスタジオに移ってからはアクセスもよいため、作品を見せる機会も増えたそうだ。「ネペンテス」もスタジオ・ビジットに来てくれたことがきっかけで今回のエキシビジョンに繋がった。アートエキシビジョンに併せて、東京発のブランド「ネイタルデザイン」と久留米産の半纏 「クワノ ホーム」によるポップアップストアも3月27日まで開催中。

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工藤キキ

横浜生まれ。ライター、シェフ、ミュージックプロデューサー。カルチャー誌でファッションやアートなどのサブカルチャーに関する寄稿や小説を執筆。著書に小説『姉妹7(セヴン)センセイション』、アート批評集『post no future』(すべて河出書房新社)などがある。2011年にニューヨークに拠点を移す。2014年にアートフードプロジェクト「CHI-SO-NYC」をスタート。レストランへのレシピのデザイン、フードを絡めたイベントなど食にまつわる活動をしている。2017年から音楽のプロデュースを始め、EPをリリース。2022年3月にはThe Trilogy TapesからEP『Profile Eterna』をリリース。6月には初のクックブック『I’m cooking for you』を<Positive Message>から出版。レシピのYOUTUBEチャンネルもスタートしている。 kikikudo.com Instagram: @keekee_kud

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