君島大空 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/君島大空/ Thu, 15 Feb 2024 08:28:57 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 君島大空 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/君島大空/ 32 32 音楽家、君島大空が2ndフルアルバム『no public sounds』を9月27日にリリース 10月からはリリースツアーも開催 https://tokion.jp/2023/08/16/ohzora-kimishima-no-public-sounds/ Wed, 16 Aug 2023 13:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=203945 「札」や「沈む体は空へ溢れて」、「˖嵐₊˚ˑ༄」他、書き下ろしの新曲を多数含む全11曲を収録。

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音楽家、君島大空が2ndフルアルバム『no public sounds』を9月27日にリリースする。2023年1月に待望の1stアルバム『映帶する煙』をリリースした君島。今作は、君島大空トリオで披露されている「札」や「沈む体は空へ溢れて」、配信シングルとしてリリースされている「˖嵐₊˚ˑ༄」他、書き下ろしの新曲を多数含む全11曲を収録している。

また合わせて、リリースツアーの概要も発表となった。

【君島大空 -2nd album conceptより一部抜粋-】
今作は初秋にリリースされます。
1st album映帶する煙では細部に悩み、迷う時間を意図的に設けました。
が、今作は季節に並走し、今自分が出したいものが集まった場所から見える景色や匂いを体内/体外へ(再)提示したいと思ってます。

アルバムには”no public sounds”と名前を付けました。
Soundcloudで公開された音源に、再びアクセスしたとき、その楽曲が削除されていた場合にブラウザに出るメッセージです。
なくなってしまった場所に克明な居場所を見つけようとする実験です。

君島大空
1995年東京都青梅市生まれ。ソングライター/ギタリスト。
ギタリスト/サウンドプロデュースとして、吉澤嘉代子、中村佳穂、細井徳太郎、坂口喜咲、RYUTist、adieu(上白石萌歌) 、高井息吹、UA、荒谷翔太(yonawo)など様々な音楽家の制作、録音、ライブに参加。2019年に『午後の反射光』epを発表後から本格的にソロ活動を開始した。2023年1月に1st アルバム『映帶する煙』をリリース。

■君島大空『no public sounds』(『ノー パブリック サウンズ』)
価格:¥3,000
発売日:2023年9月27日
収録曲 
01. 札
02. c r a z y
03. 諦観
04. ˖嵐₊˚ˑ༄
05. 映画
06. curtains
07. 賛歌
08. 16:28
09. – –  nps – –
10. 下沉的体从天而降
11. 沈む体は空へ溢れて

■ 君島大空2ndアルバム『no public sounds』リリースツアー(仮)
10月1日(日)梅田Music Club JANUS 君島大空トリオ
10月2日(月)名古屋 ell.FITS ALL 君島大空トリオ
10月7日(土)新潟 Golden pigs 君島大空トリオ
10月8日(日) 仙台 LIVE HOUSE enn  君島大空トリオ
10月21日(土)京都 CLUB METRO 君島大空トリオ
11月1日(水) 代官山UNIT
12月3日(日) 渋谷 Spotify O-EAST 君島大空合奏形態
12月8日(金) 名古屋 Jammin 君島大空合奏形態
12月10日(日)梅田 Music Club JANUS  君島大空合奏
※ツアー詳細については後日改めて告知。

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君島大空と羊文学の塩塚モエカによる弾き語りツーマンライヴが8月25日に「WWW」で開催 https://tokion.jp/2023/06/28/ohzora-kimishima-moeka-shiotsuka/ Wed, 28 Jun 2023 09:30:00 +0000 https://tokion.jp/?p=195079 チケットは前売り¥3,800(スタンディング/ドリンク代別)で、イープラスで7月2日まで抽選先行販売し、一般販売は7月8日10:00から開始する。

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君島大空と塩塚モエカが弾き語りツーマンライヴを8月25日に「WWW」で開催する。チケットはイープラスで7月2日まで抽選先行販売し、一般販売は7月8日から開始する。

多重録音を駆使した儚いサウンドで注目を集めるシンガーソングライター兼ギタリストの君島大空と、オルタナティブな音像をしなやかに美しく鳴らす3ピースバンドの羊文学のギターボーカルでもある塩塚モエカが、弾き語り形式でライヴを披露する。

君島は今年1月に待望の1stアルバム『映帶する煙』をリリースし、大きな話題を呼んだ。サンプリングを駆使した独特な質感の音と中性的な声が混じり合う楽曲の数々は、さまざまな物語や情景を想起させる。ソロ活動の他にも、吉澤嘉代子や中村佳穂、細井徳太郎、坂口喜咲、RYUTist、adieu(上白石萌歌)、高井息吹、UA、荒谷翔太(yonawo)等の楽曲制作やライヴに参加したことでも注目を集めている。

羊文学の全楽曲の作詞・作曲を務める塩塚は、バンドと並行してソロでの音楽活動や映画・ドラマの劇伴制作、CM歌唱、モデル、文章執筆、ラジオDJ等、幅広い領域で活躍している。昨年リリースした羊文学のアルバム『our hope』はCDショップ大賞(青)を受賞し、全国ツアーを全公演ソールドアウトさせる等、バンドとしての躍進も止まらない。今年 9月からは、全12公演となる自信最大規模のワンマンツアーの開催も決定している。

■君島大空×塩塚モエカ
日程 : 8 月25日
会場 : WWW
時間 : OPEN 18:30 / START 19:30
前売 : ¥3,800 (スタンディング/ドリンク代別)
販売 : https://eplus.jp/ohzr_kshm-moekashiotsuka/

Flyer photo by Kana Tarumi
Letter designed by KOHJI FUKUNAGA

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君島大空、サウンドの実験とジャズを語る-後編- 合奏形態とジャズ・ミュージシャンについて https://tokion.jp/2023/04/17/interview-ohzora-kimishima-vol2/ Mon, 17 Apr 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=179859 1stアルバム『映帶する煙』をリリースした君島大空インタビュー。後編では、君島大空とジャズの関係について聞いた。

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君島大空

君島大空(きみしま・おおぞら)
ソングライター / ギタリスト。1995年東京都青梅市生まれ。ギタリスト/サウンドプロデュースとして、吉澤嘉代子、中村佳穂、細井徳太郎、坂口喜咲、RYUTist、adieu(上白石萌歌) 、高井息吹、UA、荒谷翔太(yonawo)などさまざまな音楽家の制作、録音、ライブに参加。2019年EP『午後の反射光』を発表後から本格的にソロ活動を開始。2020年にEP『縫層』、2021年にEP『袖の汀』、2023年1月に1stフルアルバム『映帶する煙』をリリースした。
Twitter:@ohzr_kshm
Instagram:@ohzora_kimishima
YouTube:@ohzorakimishima7243
https://ohzorafeedback.wixsite.com/hainosokomade

音楽家・君島大空によるファースト・アルバム『映帶する煙』は、彼が「合奏形態」と呼ぶバンド編成での、初の一発録音が収録された作品でもある。メンバーは敏腕ミュージシャンばかり。ドラマーの石若駿は日本の現在進行形のジャズ・シーンを牽引する人物であるとともに、ポップスから実験音楽まで幅広いフィールドでも活躍。ベーシストの新井和輝はロック・バンドKing Gnuの一員として知られているが、ジャズ・コントラバス奏者としても第一線でその才能を発揮している。ギタリストの西田修大は数多くのサポート・ワークで今や欠かせない存在となっており、ジャズ・ミュージシャンとのジャンルを超えた共同作業もこなす稀有な音楽家だ。そう、君島大空の合奏形態は、ジャズを抜きにしては語れないメンバーから成る特異なバンドなのである。

それだけでなく、君島大空の周囲には多くのジャズ・ミュージシャンの姿を確認することができる。ならば『映帶する煙』も、いわゆるジャズではないにせよ、ジャズを抜きにしては語れない音楽だと言ってもいいだろう。では、君島大空とジャズにはどのような関係があるのだろうか。

前編はこちら

「合奏形態」について

——『映帶する煙』に収録された音楽は録音を前提とした表現だと言えますが、一方で歌もありますよね。いわゆる歌モノについては、ライヴで演奏することも想定して作曲されているのでしょうか? それとも制作時はそうしたことは特に考えず、あくまでも録音作品として面白いものを追求していましたか?

君島大空(以下、君島):どちらかと言うと後者です。レコーディングの時点ではライヴでやることは想定していなくて、バンド・メンバーにはライヴで挑戦してほしいという気持ちもあって曲を書いています。ライヴでは元の音源を別の音で置換するというより、元の音源と同じような印象をもたらすために、全く違う材料を持ってくるようなアプローチを取っていて。そうしたことが合奏形態のメンバーなら可能だと思うんです。だから同期音源を一緒に流すということは今のところ考えていなくて、この前のワンマン・ツアー「映帶」でも4人で合奏をしつつ、元の音源と同じような印象をお客さんの中に残すというようなアプローチをしました。

——ちなみに、「バンド」や「アンサンブル」ではなくて「合奏」と漢字で表記しているのはなぜでしょうか?

君島:今のメンバーで最初にやったライヴが、下北沢THREEで開催した『午後の反射光』のリリース記念イベントだったんです。その時に一番楽器が達者な友達を招集しようと思って、石若(駿)さんと(新井)和輝さん、西田(修大)を誘ったら、想像以上に良い演奏になって。それでもう1回やりたいと思い、「君島大空」が漢字4文字なので、もう4文字あると漢字8文字が連なってインパクトがあるんじゃないか? ということで「合奏形態」と名づけてライヴをして。その日限りのバンドのつもりだったんですが、ライヴが終わるとやっぱりもう1回やりたいと思い、もう1回やり終えるとさらにまたやりたくなって……というのが続いていまだに残っているという感じです。なので、最近はバンド名を考えたほうがいいのかなと週に2回ぐらいは思うんですよね(笑)。

でも、「合奏形態」という名前をつけた時、合奏という行為が僕はすごく好きだなと改めて思いましたね。1人でやるよりも誰かと一緒にやるほうが自分が生きてくるし、その時の人と人との関係性はとても大切なものなので。合奏することが自分の人生でどれだけ大事なのか、特に合奏形態でライヴをやり始めた時期はよく考えていました。やっぱり1人でやる時とは全く違うのが感覚的にもわかるし、ライヴ中に誰かと交感するものがあれば幸せなことだなと。それは音楽を始めた頃からずっと感じていたことでもあって、今でもそうですね。

君島大空とジャズとの関わり

——今回、合奏形態で初の一発録音の音源が『映帶する煙』には収録されています。メンバーの石若駿さんと新井和輝さんはジャズ・ミュージシャンでもありますよね。西田修大さんもジャズと隣接した領域で活動しています。そこでこの機会にぜひ君島さんとジャズの関わりについてもお聞きしたいのですが、君島さん自身はいつ頃からジャズを聴くようになったのでしょうか?

君島:いわゆるジャズを最初に聴いたのは、先ほど(前編で)お話しした〈Blue Note〉のジャズ・ギターのコンピレーション盤でした。中学1年の時、カセットテープに入れて通学中に聴いていました。チャーリー・クリスチャンからアル・ディ・メオラまで入っていて、ジャズ・スタンダードを弾いていたり、他のミュージシャンのリーダー作で演奏している録音も含まれていたんですが、ジャズらしいジャズを聴きだしたのはそれからですね。なので、ジャズの王道から聴いていったというよりは、ジャズ・ギターから入って、いろいろなジャズ・ギタリストを調べて聴いたりしていました。

——最初にハマったギタリストは誰でしたか?

君島:最初はテクニカルなものにハマって、それこそ〈Blue Note〉のコンピを聴きながら「ジャズ・ギタリストってめちゃくちゃ上手いな!」と思っていました。そのあとフュージョンも聴くようになって、メタルも好きだったので、しばらくはそういういわゆるテクいギタリストを追いかけていましたね。けど、それが1周回った時に落ち着いたのがビル・フリゼールでした。めちゃくちゃハマりました。特にソロ。テレキャス1本でライヴをしている音源があるんですが、それが好きで何回も繰り返し聴いたり。あと親父がトム・ウェイツを聴いていた影響で、マーク・リボーにもハマりました。ライヴ演奏を探して真似したりしていましたね。ビル・フリゼールとマーク・リボーの2人は自分の中ですごく大きな存在です。

——ビル・フリゼールもマーク・リボーも、もちろん上手いんですが、いわゆる超絶技巧とはベクトルが違いますよね。フュージョンやメタルなどのバカテク系から、そうではないギタリストに興味が移っていったのはなぜだったのでしょうか?

君島:バカテク系は今でも好きではあるんですけど、あくまでもエンタテインメントなんですよね。最高のショーを見せてくれる、思わず笑顔になってしまうような面白さ。けれど、マーク・リボーからは楽器との生々しい距離感が見えてくるというか。自分自身が音楽をやるうえでも身体性はとても重視していて、楽器との距離が近ければ近いほど魅力的な奏者だと思っているんです。親父がよくトム・ウェイツの『Rain Dogs』(1985)を流していたので、子供の頃からマーク・リボーのギター・プレイ自体は耳にしていました。当時は「めちゃくちゃ変な音のギターだなあ」ぐらいに思っていたのが、年齢を重ねてから、ある時、「ギター・プレイから人柄が見えるぞ」と感じたことがあって。そうした楽器との距離から滲み出る人間らしさに惹かれたところはあります。それはビルフリについても同じで。それと、彼らはジャズ・ギタリストの中でもかなり特異な立ち位置にいますよね。王道の系譜からは外れた場所にいるというか、そうしたところにもシンパシーを感じて好きになったんだと思います。

——世間的にはジャズといえばアコースティックなライヴのイメージが強いですが、録音ならではの表現という観点で、君島さんが特に好きなジャズ・アルバムはありますか?

君島:すごく好きなのはマーク・リボーの『Requiem For What’s-His-Name』(1992)です。あのアルバムには僕がやりたい音楽の理想形のようなものが詰まっていて。あんまりギターが前面に出てこなくて、めちゃくちゃポップな作品なんですよ。ポップなのに、それこそブラダー・フラスクや実験音楽におけるテープコラージュのような質感もあって、おそらくオーバー・ダブをしまくっていて、かなり意欲的に編集作業を施したアルバムになっている。主軸となるのは楽器演奏で、即興のアドリブ・ソロも続くんですけど、突如としてライヴ音源が出現するところもある、みたいな。デコボコな部分もありますけど、自分が音楽活動を行ううえでの心のリファレンスとしても、今でもずっと聴いている好きな作品ですね。

あと、ここ数年ハマっているのがビル・エヴァンスの多重録音作品です。特に『New Conversations』(1978)。1曲目が奥さんに捧げた「Song for Helen」という曲なんですけど、1人で演奏したピアノとフェンダー・ローズを重ね合わせていて、どっちが先に録ったのかわからないようなソロの掛け合いが始まっていく。1970年代にああいうオーバー・ダブをやっていたこと自体も驚きですが、これはエヴァンスがリアルタイムで2人いないと説明がつかないんじゃないかというレベルの奇跡の名演にもなっていて。今はポスト・プロダクションでソロを切り貼りしたり、弾き損じたらその部分だけ録り直すということが当たり前のようにできる時代ですけど、それらが困難な当時の録音、編集技術で今でも新鮮な輝きを放っているのはやっぱりすごいなと。それに、ビル・エヴァンス自身がときめきながら制作していたんだろうなということも見えてくる音なんですよね。新しいテクノロジーに興奮している状態のタイムレスな良さというか。なので、音像というだけでなく、作品の中で起きている状態そのものとしてすごく好きなアルバムです。

ジャズ・ミュージシャンからの刺激

——なるほど。ところで合奏形態のメンバーのほか、君島さんの周りには細井徳太郎さんや瀬尾高志さん、松丸契さん、梅井美咲さん等々、広い意味でのいわゆるジャズ・ミュージシャンがたくさんいらっしゃいますよね。君島さん自身、新宿ピットインや東池袋KAKULULUのようなジャズの現場でライヴをされることもありますが、ジャズ・ミュージシャンとの交流というのは、君島さんの音楽にどのようにフィードバックしていると感じますか?

君島:そうした交流がなかったら今の自分が存在すらしていないような気がします。そこにはとても自覚的ですね。時々、周りにいる人がジャズをやっているということを忘れてしまうことがあるんですよ。特に一緒に演奏している時はすっかり忘れていて、ジャズ・ミュージシャンばかりだと意識し始めると急に緊張したりもするんです(笑)。でもやっぱり、音楽に対して分け隔てない人達だなとは感じますね。彼らと知り合う前は、いちリスナーとしても、ジャズに対して何か壁があるような気がしていました。それは日本だからなのかもしれないですけど、ジャズは難しい音楽だ、みたいな空気感ってあるじゃないですか。

でも実際にジャズを演奏している人達に会ってみると、こんなに実直で自由奔放な人達はいないんですよね。『午後の反射光』を作るまでは周りにジャズ・ミュージシャンが全くいなかったんです。いわゆるロック・バンドが出るようなライヴハウスでポエトリー・リーディングと即興ギターのライヴをするぐらいで。それが、まずは石若さんとの出会いが大きくて、そこからいろいろと繋がりができていきました。そうした繋がりは感謝という言葉では足りないぐらい、周りにいてくれてありがたいと思っています。

もちろん音楽的な意味でも刺激を受けることは多々あります。やっぱりみんな作品を出すスピード感がものすごくて、僕は1年かけて5分の曲を作るぐらいのペースでやっていましたけど、石若さんとか(細井)徳ちゃんなんかは「これ録ってみたから来月出そうかな」とか言ってくることがあって。どんどん自分の中の空気を入れ替えていくスピード感には圧倒されますね。あと、普段は言わないですけど、身の回りでジャズをやっている友人達は、自分の表現をしっかりと言語化できる力がある。当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、石若さんからは特にそうした姿勢を感じます。尋常じゃない気迫を感じることもあります。例えば(松丸)契ちゃんは、付き合いが長いわりに一度しか演奏したことがないのですが、出す音の機微や音価に対して僕の知らない次元でとても繊細なコントロールをしているなと思います。自分の表現にものすごくプライドを持っていることが一緒に音を出すだけでも伝わってくるんです。

それと傍から見ていて面白いなと思ったのが、例えば新宿ピットインで30代のミュージシャンがライヴをやる時に、ピアニストが20代、ドラマーは80代、みたいな状態が当たり前に存在しているじゃないですか。それってよくよく考えたらヤバいなと。普通にライヴしているけど、ポップスとか他の音楽からしたら、そういう世代間の交流ってなかなか見られない。あるとしたらその交流自体に大きなスポットを当てたイベントになりますよね。そんなことがピットインだと連日のように普通に行われている。「今日こういうライヴだったよ」って写真を見せられると、ああ、こういう場所は僕にはなかったなと思ったり。そういう風に年齢も分け隔てなく一緒に演奏して、そこから何かを抽出して糧にしている徳ちゃんとか梅井ちゃんの話を聞くと、もうそれだけでとても刺激的ですね。

今しかできないことをやる

——君島さん自身は、ジャズではないにしても、例えばインプロやノイズのインストゥルメンタル作品を作りたいと思ったことはありますか?

君島:あります。ずっと作りたいという気持ちはありますけど、まずは今しかできないことをやろうと思っているんです。今回の『映帶する煙』に関しても、今自分がこの国に住んでいて、この年齢で、この性別でできる音楽はこれだなというのがあったので、優先して作ることにしました。やっぱり古い曲が多いので、(前編の)最初に言ったようなリミットも感じていて。今回のアルバムは、時間が止まった場所から歌が聴こえてくるような空間を作ることがコンセプトとしてありました。なので、アルバム全体にそうしたフィルターをかけているんですが、これまで出してきたEPと比べても、かなりそうした靄のようなものはサウンド・プロダクションの段階で意識的にかけていて。ともあれ、インプロヴィゼーションやノイズ、エクスペリメンタルな音楽はずっと好きなので、1人で作ってためてはこっそり聴いたりしています。だから、なにか起爆剤のようなものがあれば作品としてまとめたいとは思いますね。

——最後にお聞きしたいのですが、もし今回のアルバムをジャズのリスナーに紹介するとしたら、君島さんとしてはどのあたりをポイントに聴いてほしいと思いますか?

君島:やっぱり合奏形態の一発録りのトラックです。「19℃」と「都合」、「光暈」がそうで、この3曲のテクスチャーは僕の中ではジャズと近いところにあるなと思っています。単にジャズ・ミュージシャンが参加しているからというより、そうした音像のテクスチャーに着目して聴いてもらえたら、ジャズが好きなリスナーにも届くんじゃないかと。特に「光暈」という曲は意識的にジャズの一発録りの質感を狙ってレコーディングしました。僕は〈ECM〉もすごく好きなので、静謐でドラムが隅々まで聴こえていて、音場がどのぐらい広いか一聴してわかる、というような録音を意識したミックスにしています。

——個人的には最後の「No heavenly」もある種のジャズ的な面白さがあるなと思いました。特にギターがノイジーで、大友良英さんを彷彿させると言いますか。

君島:バレてしまった(笑)。実は「No heavenly」のギターは西田がU字金具を使っていて、まさに大友さんの技なんですよね(笑)。このトラックは一発録りではないですが、合奏形態のメンバーで遠隔で制作していて。ドラムだけスタジオで石若さんと録音して、和輝さんにはベースの音源を送ってもらって、その後、西田の家に行ってギターを録音して、それらの素材をミックスして作りました。あえて通常のギター・ソロではない音にしたいと思ったんですね。立てかけてあるギターが倒れて弦が切れた時に鳴るような具体音が欲しくて、西田に「具体音のソロを弾いてください」ってお願いしたんです。彼はエフェクト・プロセッシングのプロなので、どうしたら面白い具体音が出るのかいろいろ試したんですけど、なかなか「これだ」というのが見つからなくて。

そしたら西田が「意外と最近のギタリストがやっていないのはこういうアプローチなんじゃない?」って、U字金具を取り出してきて。「封印を解く」みたいに言いながら、U字金具で出したギター・ノイズをワーミーで上げたり下げたりしたら、めっちゃかっこよくて、それであの音になりました。なので、確かにそのあたりもジャズ的な視点からも聴いてほしいですね。

Photography Mayumi Hosokura

■君島大空『映帶する煙』(えいたいするけむり)
発売日:2023年1月18日
価格:¥3,000
収録曲
「映帶する煙」
「扉の夏」
「装置」
「世界はここで回るよ」
「19℃」
「都合」
「ぬい」
「回転扉の内側は春?」
「エルド」
「光暈」
「遺構」
「No heavenly」

<ライヴ・インフォメーション>
■君島大空独奏遠征春編「箱の歩き方」
2023年4月22日(土)愛知県文化フォーラム春日井・ギャラリー
2023年4月23日(日)静岡県鴨江アートセンター301号室
■4月15日(土)横須賀飯島飯店「夜と朝のあいだに」独奏
■4月19日(水)渋谷LOFT HEAVEN 穂ノ佳プレゼンツ 独奏
■ビルボードライブ公演 「外は春の形vol.2」w/石若駿
2023年5月3日(水・祝)ビルボードライブ横浜、5月5日(金・祝)ビルボードライブ大阪
1stステージ OPEN 15:30 / START 16:30 2ndステージ OPEN 18:30 / START 19:30
◼5月6日(日)J-WAVE & Roppongi Hills present TOKYO M.A.P.S Chris Peppler EDITION 六本木ヒルズアリーナ 独奏
■5月21日(日)福岡 CIRCLE`23 海の中道海浜公園野外劇場 独奏
■7月28日(金)FUJI ROCK FESTIVAL’23 合奏形態
https://www.fujipacific.co.jp/artists/artists/post_23.html

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君島大空、サウンドの実験とジャズを語る-前編- 1stアルバム『映帶する煙』とノイズ/アヴァンギャルド https://tokion.jp/2023/04/14/interview-ohzora-kimishima-vol1/ Fri, 14 Apr 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=179781 1stアルバム『映帶する煙』をリリースした君島大空インタビュー。前編では、初のフル・アルバムの制作背景からエクスペリメンタルな色彩を帯びたサウンドについてまでを語ってもらった。

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君島大空

君島大空(きみしま・おおぞら)
ソングライター / ギタリスト。1995年東京都青梅市生まれ。ギタリスト/サウンドプロデュースとして、吉澤嘉代子、中村佳穂、細井徳太郎、坂口喜咲、RYUTist、adieu(上白石萌歌) 、高井息吹、UA、荒谷翔太(yonawo)などさまざまな音楽家の制作、録音、ライブに参加。2019年EP『午後の反射光』を発表後から本格的にソロ活動を開始。2020年にEP『縫層』、2021年にEP『袖の汀』、2023年1月に1stフルアルバム『映帶する煙』をリリースした。
Twitter:@ohzr_kshm
Instagram:@ohzora_kimishima
YouTube:@ohzorakimishima7243
https://ohzorafeedback.wixsite.com/hainosokomade

音楽家の君島大空が初のフル・アルバム『映帶する煙』を完成させた。2019年に最初のEP『午後の反射光』をリリースしてから4年。この間、さらに2枚のEPを発表したほか、フェスやツアー、アーティストへの楽曲提供など、精力的に活動してきたこともあり、フル・アルバムは多くのリスナーが待ち望んでいた作品だったに違いない。全12曲、約52分の長さにまとめられた本盤は、1つひとつの楽曲に物語があり、情景があり、あたかも複数の短編映画が連なるかのようでもある。だが同時に、決してオムニバス風というわけではなく、全体が1つのトーンで覆われてもいる。それはサンプリング・コラージュを駆使したテクスチュアルで触覚的な音響、および中性的な固有の歌声がアルバムを通底しているからでもあるだろう。

これまでEPを3枚リリースしてきた君島大空は、なぜ今回フル・アルバムの制作に踏み切ったのか。また、エクスペリメンタルな色彩を帯びたサウンドの背景にあるものとは何か。前後編に分けてお届けするインタビューの前編では、アルバム制作経緯や実験音楽との出会いなどを伺った。

なぜこのタイミングでのリリースだったのか

——これまで君島さんは『午後の反射光』(2019)、『縫層』(2020)、『袖の汀』(2021)と、いずれもEPというフォーマットで作品を発表してきました。今回EPではなく、初めてフル・アルバムとして『映帶する煙』をリリースするに至ったのはなぜだったのでしょうか?

君島大空(以下、君島):最初のEPを出した段階では、自分がソロで活動していくとまでは考えていませんでした。1枚出せたらいいな、ぐらいの気持ちで、名刺代わりになる作品として『午後の反射光』を出したんです。でも出してから聴き返していたら悔しくなってきた。「ソロでやっていくぞ」という気持ちがなかったわりには、もう少しやりたいことを実現したい、自分の音楽をもっとコントロールしたい、そしたらこれ以上のことができるんじゃないかと思うようになって。それで『縫層』を出して、その次の『袖の汀』ではもともと自分がやっていたスタイルに戻っていきました。

そうしたEP作りを通して、自分1人で立っているという自覚が芽生えてきたんですね。いまだに「ソロでやっていくぞ」という気持ちは希薄ではありますけど、3枚のEPを制作することで音楽を作ること自体が楽しくなっていきました。特に最初の『午後の反射光』は苦しみの中で出したファーストでもあったので、その頃に比べると気持ちが変化してきたんです。まだやっていないことがたくさんありますし、作っておいて発表していない曲もたくさんあって。

それらを振り返った時に、ちゃんと整理し直して出しておくタイミングは今しかないなと。古い曲も多いので、自分の中でのリミットが迫っていると感じていました。今それらを編じて出しておかないと、おそらく一生出さないことになってしまうのではないか。そう思ったのが1年半ぐらい前で、清算するような気持ちもあって、まとまりのあるものを作ろうとしてフル・アルバムを出すに至りました。

——「1枚出せたら」という思いで『午後の反射光』をリリースしたとのことですが、その時点でフル・アルバムではなくてEPという30分弱のコンパクトなフォーマットを選んだのはなぜだったのでしょうか?

君島:それは聴いてほしい曲が2曲だけだったからです。「遠視のコントラルト」と「午後の反射光」、とにかくその2曲を聴いてほしくてEPを作り始めて、それらを固めるものとして他の曲を揃えていきました。だから自分の中ではシングルにも近いところがあります。景色を説明するためにインタールードとして短い曲を前後に配置したんです。EPというサイズはそうした作品を作るうえでとても自分に合っているなと思いました。

——なるほど。それで『縫層』と『袖の汀』も、フル・アルバムではなくてEPというフォーマットでリリースしてきたと。

君島:あと、制作スタイルにも理由があると思っています。レコーディングからミックスまですべて自分でやってきたので、1つの録音作品を作るのにものすごく時間がかかってしまう。だから、聴いてほしい中心的な曲を自分の中でピックアップして、その周りに小曲を配置するというような作品だと、サイズ的にEPが限界だなというのがありました。逆に言うと、このサイズであれば1人で作ることができる。インタールード込みで7~8曲ぐらいなら1つの循環、1つの景色を見せることができるんです。

でもEPはEPで、ある意味では音楽を聴くうえでちょうどいいサイズだとも思うんですよ。人によっては、例えば出勤の時に家から会社に着くまでの時間、電車に乗っている間に聴き終えてしまうこともできる。生活する中で聴きやすいサイズ感ですよね。ただ、物理的な時間は短くても、体感時間としては長いものを目指しています。あえてコンパクトなサイズの中に体感時間の長い音楽を入れる。そういう体感時間の長さが個人的に好きなんです。それは『袖の汀』を作っている時に意識するようになりましたね。

「1曲1曲をすべてシングルカットしたいぐらいの気持ちで作りました」

——今回、初めてフル・アルバムというフォーマットで作るうえで、工夫したことや大変だったことはありましたか?

君島:『映帶する煙』はこれまでと違って、全曲が「聴いてほしい曲」なんですね。1曲1曲をすべてシングルカットしたいぐらいの気持ちで作りました。最初にたくさん曲を作って、そこから選んでいったんです。もう1枚アルバムを作れるぐらい曲を用意しました。だから、あんまりアルバムらしい作り方はしていないかもしれないです。それぞれ1曲だけ取り出しても独り立ちできるような曲なので、それらを繋いでいくこと、最後に空気感を揃えることが大変でした。これまでのEPと比べて曲数が倍近くなっているので、アルバムとしてどうまとまりを持たせるのか。全体の空気を揃えるためのテクニカルなサウンド・プロダクションには力を入れましたね。

——とてもテクスチャーが印象的なアルバムだと感じました。冒頭の表題曲「映帶する煙」はミュージック・コンクレートのようですが、その後の歌モノでもサウンド・コラージュを散りばめています。サウンド・プロダクションの面では、今回どのようなテーマがありましたか?

君島:もともと僕はギタリストになりたくて、特にフリー・フォークやフリー・ジャズのギタリストが好きだったんです。そこからミュージック・コンクレートや実験音楽も聴くようになっていきました。10代の頃にそうした音楽に親しんでいたこともあって、テクスチュアルな音像にはとても興味があるんです。それで音それ自体に意味があるものというか、聴いただけで場所性を強く感じさせるような音を作りたいとは思っていて。それと歌はどうしたら共存できるだろう、というのが今回のアルバムでは一貫したテーマの1つではありました。

そのためにあえて曲同士を共存させないようにもしています。曲と曲を繋げないことで逆に一貫性が出てくるような並びというか。さっきまで声が遠くにあったのに、急に近くに現れる、というようなギミックに近いところもありますけど、そういうような調整です。分断されているけど繋がっているものをどう配置したらよいのかはいろいろと工夫しましたね。曲と曲の間もそうですし、1曲の中でもそうしたアプローチは取っています。できるだけ人為的に作られた感じは出さないようにしたいとも思いました。もちろん結果的には作られた音ではあるんですが、そうではない偶発性みたいなものを面白がりながら編集していきました。

——偶発性といえば、曲によっては冒頭に一瞬だけノイズが紛れ込むこともありますよね。ああした音も偶発性を面白がるというような発想からあえて入れたのでしょうか?

君島:そうです、普通はミックスの時に絶対カットする音なんですよね。でも、「ぬい」や「遺構」、「No heavenly」の冒頭で一瞬だけ鳴っているノイズはカットせずに残していて。あれはレコーディングする時に偶然入ってしまった音なんです。けれどそれが良かったので、そのまま残しました。楽器が出す具体音が大好きなんですよ。立てかけておいたギターが倒れて「ダーンッ」って鳴る音とかが聴こえると「ああ、いいな」と思ってしまう。レコーディングの時に偶然にもそういう音が録れたので、意図的に編集もしつつ、そしたら曲同士が偶然にも繋がっているような状態になって。実はすごく気に入っている部分でもあります。

——さりげなく耳を引く響きで、私も良いなあと感じました(笑)。ところで、アルバムでは具体音をはじめ無数のサンプル音源を切り貼りしていますが、それらの素材はどのように用意しましたか?

君島:Spliceというサンプル音源のサブスクリプションサービスがあって、そこから引っ張ってきたサンプルが3割。残りの7割は自分で作った素材ですね。自分で作ったというか、いろいろな場所でフィールド・レコーディングをすることがよくあるんです。1年間いつでもレコーダーを回し続けていて。例えば海に行った時に録音した海鳴りとか、自分の声とか、あとはなんとなくレコーダーを回しながら録った即興演奏の音源とか。それらをギターのエフェクターに通して加工したり。

音が面白いからだけではなくて、思い入れのある場所の音をレコーディングすることもあります。例えば、ある曲の着想を得た場所の響きを記録したり。そうやって録った音源がメモのようにたくさんストックしてあって、忘れた頃にファイルを開くと自分のサンプル音源のアーカイヴみたいなものができているんです。そこから引っ張ってきて、さらにエフェクターで加工したりして、記名性が高くなる音にしていくという作り方をしていました。

——もともと音楽制作で使うためにフィールド・レコーディングをして録り溜めていたのでしょうか? それとも特に目的はなく録音自体を楽しんでいましたか?

君島:録音すること自体が昔から好きでした。ボイスメモを録っておいて後から聴き返すのが大好きで。ちょっとした盗聴のようなスリリングさもあるかもしれないです。例えば友達と遊んでいる時にレコーダーを回して、みんなが帰ってから1人で聴くとか。今思い出したんですけど、中学1年の時にカセットテープレコーダーを親父に買ってもらったんですね。それに〈Blue Note〉のジャズ・ギターのコンピを入れて通学途中に聴いていたんですが、ある日、「これ録音機能があるぞ!」と気づいて、空のカセットテープを買ってきたんです。それで授業中にずっと録音していて、帰ってから聴き返していると、なんかとてつもなく悪いことをしている感じがして面白かった(笑)。

——それは別に授業の内容を復習するために録音したわけではないんですよね?

君島:そうです、単純に音を聴くために録音してました(笑)。その場所で起きている何かを聴くことが楽しかったというか。遠くで誰かが立ち上がる物音がしたり、誰かの声が聞こえてきたり。それを聴き返すという一人遊びをして「なんて楽しいんだ!」と喜んでましたね(笑)。もしかしたら今の音楽制作もその延長線上にあるのかもしれないです。

制作中に聴いていたエクスペリメンタル音楽

——なるほど(笑)。ところで、フィールド・レコーディングやミュージック・コンクレートを音楽作品として発表しているアーティストもいますよね。いわゆるエクスペリメンタルな音楽と呼ばれる領域になりますが、そうした実験的なアーティストや作品で、特にハマったものなどはありましたか?

君島:10代の頃にアラン・リクトの『サウンドアート 音楽の向こう側、耳と目の間』という本を親父に買ってもらって。当時はアラン・リクトもサウンドアートもよく知らなかったんですけど、もともとジム・オルークが好きで、オルークが序文を書いているということで興味が湧いて。それを読んでいろいろ調べて、YouTubeで検索して聴いたりして「う~ん、わかんねえなあ」とか思いながら年末を過ごしていたことがあります(笑)。その中でラ・モンテ・ヤングにまずハマったんですよね。あの人、奥さんのマリアン・ザジーラと一緒に「ドリームハウス」というインスタレーションのプロジェクトをやっているじゃないですか。それにすごくときめいたり、ラーガの作品を聴いたり。ラ・モンテ・ヤングはめっちゃ好きで、当時ケータイのアドレス名にもしていました(笑)。

なんでそんなに好きだったのかはよくわからないですけど、「音楽でこんな行為をしている人がいるんだ」ということは衝撃的で。それで聴いたり調べたりし始めたのだと思います。それから、そもそも著者のアラン・リクトって誰だろうということで彼のソロ・アルバムを聴いてみたり。アラン・リクトの作品は今でも聴いていますね。やっぱりギターのインプロヴィゼーションはとても好きなんです。あとはオヴァルのマーカス・ポップかなあ。彼の作品集もいろいろ好きで、マーカス・ポップと日本人アーティストの豊田恵里子さんが一緒にやっている「So(ソー)」というユニットのアルバムもよく聴きました。

あとセレスト・ブルシエ=ムジュノというフランスのアーティストがいて、寝かせたエレキギターの上で小鳥を遊ばせる「From Here to Ear」というサウンド・インスタレーションのプロジェクトがあります。あまりにコンセプトが強すぎて、最初は「いや、出オチでしょ」と思ったんですけど、音を聴いてみたらめちゃくちゃかっこよくて(笑)。小鳥があんな音を奏でるなんて……とびっくりしました。やっぱり、ギターで何かをしている人を自然に探してしまうところはあるのかもしれないです。

それと、テープコラージュだとブラダー・フラスク(Bladder Flask)がすごく好きです。たぶん日本での知名度はゼロに近いレベルで、音源もアルバムは1枚しかリリースしていなくて(註:1981年リリースの『One Day I Was So Sad That The Corners Of My Mouth Met & Everybody Thought I Was Whistling』。オリジナル盤は500部限定だったが、2023年、フランスのレーベル〈Sonoris〉からCD/LPが再発された)。ものすごい高速テープコラージュなんですが、現代の制作環境で最新のテクノロジーを用いてもなかなかキツいなということを、当時テープでやっていて。それはずっと聴いていましたね。

——『映帶する煙』の制作中に特に聴いていたエクスペリメンタルな音楽というのはありましたか?

君島:1曲目の「映帶する煙」はカセットテープで作っているんですよ。カセットに入れた音をエフェクターに通して、ループさせたものを加工してカセットのMTRに突っ込んで、それを1回パソコンに入れてまたエフェクターを通して……ということを延々とやって作ったんですが、その着想を得たのは実はローレン・コナーズのソロ作品なんです。彼、ボイスメモで録音した音源もリリースしているんですけど、ギターを演奏している後ろで、例えば奥さんが部屋に入ってくるドアの音とかが紛れ込んでいたりするんですね。その質感がすごく良いなと思って。

「映帶する煙」はザ・ケアテイカーからも着想を得ています。そもそもザ・ケアテイカーの音像を作りたいということがテーマとしてあったんです。どんどん情報が劣化していく、いわばデジタル・ローファイとでもいうような音像。ローファイといっても、デジタルなローファイとアナログなローファイがあると思うんですよね。アナログなローファイが古いテープの温かみに向ける眼差しだとしたら、デジタルなローファイは1990~2000年代へのローファイ的な視座というか。それらは自分の中では分別して聴いていて。それで、ザ・ケアテイカーのようなデジタル・ローファイの音をエフェクター・ペダルで作ろうと実験しながらアルバムを制作していました。

あとはノルウェーの〈Hubro〉というレーベルから多数の作品を出しているギタリストのキム・ミール。インプロヴァイザーであり作曲家であり、ジャズもやる人なんですが、彼のギターの使い方もすごく好きで。ネットでキム・ミールのエフェクター・ボードの写真を探して、同じものを全部揃えたぐらい好きです。いや、本当は全部じゃなくて、ファズはまだ買えていないんですが(笑)、でも彼が使っているエフェクターを揃えてキム・ミールの音がするよう足元を揃えたり。

アメリカの〈Recital〉というレーベルを運営しているショーン・マッキャンも大好きで聴いていました。彼は音楽家としても活動していて、〈Recital〉から自分の作品も出しています。その中でもマシュー・サリバンとコラボレートした『Vanity Fair』(2012)というアルバムが特に好きで。室内楽のようなものをベースに劣化させまくった音像で、非常にノイジーなんです。このアルバムも『映帶する煙』を作るうえでめちゃくちゃインスピレーション源になりましたね。

他にもBandcampでいろいろなエクスペリメンタル系のアルバムを聴いていました。Bandcampをチェックしていると、毎日のようにオススメに新しい作品が上がってくるじゃないですか。エクスペリメンタルやアンビエント、ノイズ等々のタグがついている作品で気になったのがあれば、全然知らないミュージシャンでもウィッシュリストに入れておいて、あとでまとめて買ったりしていました。ここですべて列挙することはできないですけど、そうやって偶然出会ったいろいろな作品からも少なからず影響を受けていると思います。

後編へ続く

Photography Mayumi Hosokura

■君島大空『映帶する煙』(えいたいするけむり)
発売日:2023年1月18日
価格:¥3,000
収録曲
「映帶する煙」
「扉の夏」
「装置」
「世界はここで回るよ」
「19℃」
「都合」
「ぬい」
「回転扉の内側は春?」
「エルド」
「光暈」
「遺構」
「No heavenly」

<ライヴ・インフォメーション>
■君島大空独奏遠征春編「箱の歩き方」
2023年4月22日(土)愛知県文化フォーラム春日井・ギャラリー
2023年4月23日(日)静岡県鴨江アートセンター301号室
■4月15日(土)横須賀飯島飯店「夜と朝のあいだに」独奏
■4月19日(水)渋谷LOFT HEAVEN 穂ノ佳プレゼンツ 独奏
■ビルボードライブ公演 「外は春の形vol.2」w/石若駿
2023年5月3日(水・祝)ビルボードライブ横浜、5月5日(金・祝)ビルボードライブ大阪
1stステージ OPEN 15:30 / START 16:30 2ndステージ OPEN 18:30 / START 19:30
◼5月6日(日)J-WAVE & Roppongi Hills present TOKYO M.A.P.S Chris Peppler EDITION 六本木ヒルズアリーナ 独奏
■5月21日(日)福岡 CIRCLE`23 海の中道海浜公園野外劇場 独奏
■7月28日(金)FUJI ROCK FESTIVAL’23 合奏形態
https://www.fujipacific.co.jp/artists/artists/post_23.html

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コラージュから読み解く君島大空 https://tokion.jp/2020/11/04/ohzora-kimishima-collage/ Wed, 04 Nov 2020 06:00:38 +0000 https://tokion.jp/?p=9897 ミュージシャン、君島大空が自らの「コラージュ」性を語る。彼の知られざる音楽遍歴と表現のコアに、批評家・伏見瞬が迫った。

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君島大空。1995年生まれの音楽家。彼の音楽には、ありとあらゆる要素が詰め込まれている。ロックもポップスもフォークもジャズもエレクトロニカも入り込んでいるのだが、そのどれかが中心を成しているわけではない。どちらかというと、あらゆる要素が切り貼りされて一つの世界を成していくコラージュ性が、表現の主導権を握っている。そのような感覚がある。

今回は、君島大空の「コラージュ性」をテーマに話を伺うことになった。結果的に、そのテーマは彼の音楽的ルーツや言葉との関わり方につながっていった。

まず、彼は何枚か紙を差し出してきた。それは、今までの作品のジャケットにもなっている、彼自身の手によるコラージュ作品だ。デジタルでの切り貼りではなく、すべて手作業で行っている。切り取られた紙だけで構成されているのではなく、糸も細かく器用に縫い付けられていた。

「手」で考える、「耳」で見る

──コラージュの制作を始めたのはいつ頃から?

君島大空(以下、君島):3年前です。弾き語りのデモCDを出すことになって、ジャケットをどうしようか迷ったんです。絵を描くのも好きなんですけど、人に見せられる程の自信はなくて。そこで、コラージュをやってみようと思い、実家の窓からの風景に切り取った写真を重ねました。

岡上淑子さんというコラージュ作家が好きなんです。特に彼女の『はるかな旅』という作品。一見感情の通ってない冷たい質感なんだけど、よく見ると人の手で作った跡が感じられる。手で切った跡に体温を感じました。これなら僕もできるんじゃないかと思って、音楽制作に煮詰まった時に、コラージュを作るようになりました。

コラージュの制作中は、手をずっと動かすことになります。「この写真をこの角度で切り取りたい」と集中すると、それ以外のことが頭から消える。その時間がすごく好きで。とてもリフレッシュできます。時と場合によりますけれど、調子が良いと1日で3つ作れたりします。

そして手を動かす時間以上に配置を考える時間のほうが長いかもしれません。それは音楽も同じです。ミックス段階で音をどう配置するかですごく悩む。目で見るのと耳で聞くのを、同じ頭でやっている感じがします。ちょっと共感覚っぽいところがある。聴いていて風景の見える音楽が一番好きなんです。海のことを歌ってないのに海が見える。そういう力が音楽にはある。自分の音楽からも景色が見えないと納得できないんですよね。今くらいの秋の晴れた日だと、カーテンのレースに光が当たって、柔らかく「ふわぁ」となっている状態を、言葉で描写せずに表現したい。新しい作品ではそのことをすごく考えました。

──手作業が楽しいという話に関連して、君島さんはギター弾くの好きですよね?

君島:めちゃくちゃ好きですね。

──ライヴでは合奏形態でも弾き語りでも、ギターを弾きながら笑っている姿が印象に残っています。コラージュもギターも手を使うという共通点があって、君島さんは“手の人”なんだなと。

君島:「手」で考えているところはありますね。過去のライヴ後に「エグベルト・ジスモンチみたいだ」(エグベルト・ジスモンチ=1947年生まれ、ブラジル出身のマルチ器楽奏者、作曲家)ってツイッターで書いていましたよね?僕はジスモンチがすごい好きなので嬉しかったです。「届いたな」って思った(笑)。

──ジスモンチもギターが好きで好きで仕方ない感じしますよね。

君島:彼はそもそもピアニストで、ギターは楽しいから弾いているというスタンスな気がします。独学で習得した演奏法に誰とも比較できない静けさと無邪気さを覚えました。自分で10弦ギターを作ったりもしている。ギターを弾いている時は遊んでいる子どもみたいな感じがすごくいい。ここ2、3年強く意識している1人です。

情報量と「演技」しない音

──ブラジル音楽はもともとお好きなんですか?

君島:大好きです。特にアントニオ・ロウレイロ(=1986年生まれ、サンパウロ出身のシンガーソングライター、マルチ器楽奏者、作曲家)。彼のファーストアルバム(『Antonio Loureiro』2010年)は特別な作品です。すべて1人の内から湧き出てきてしまった感じとか、和声の連結の仕方やそこに乗せるメロディも込みで1つのかたまりになっている。こういう感じを自分の作品でも出せないかな、と思っていました。

ロウレイロのファーストには音楽の「湿度」みたいなものがある。じめっとした暗さ、作らずにはいられなかった衝動が出ている状態。それが僕にとってかけがえのないものなんですよね。

──ちなみに長谷川白紙さんもロウレイロが好きと言ってました。

君島:去年ロウレイロがトリオ編成のライヴを日本でやったんですけど、観にいったら白紙くんに会いました。

──君島さんと白紙さんから同じミュージシャンの名前が出てくるのはおもしろいですよね。お二人の音楽は出てくる音が似ているわけではないけれど、共通性はある。それは「情報量の多さ」だと思うんですよね。あらゆる要素を、取捨選択をせずにすべてまぜこぜにしたまま放出している感じがある。それが、ある種のコラージュ感覚にも通じていると思う。自らの作品の情報量は意識しますか?

君島:わざと情報量を増やしている部分もあります。録音していて好きなのは、衣擦れの音とか咳払いとか、偶然入った「録れちゃった」音。それは録ろうと思って録った音とはやっぱり違って、「録られる」こと意識していない、緊張を強いられていない音なんです。

──音も「演技」しますよね。

君島:そう、「演技」していない音が好きなんです。ボイスメモで偶然録れちゃった音を、自分にしかわからないように作品に取り込んだりしています。日々聞こえている音を、日記みたいな感覚で録音しています。その中で良いなと思った音を、曲のテクスチャーに加えてみる。「テクスチャー」というと曲の上澄みみたいに捉えられることが多いかもしれないけれど、僕はそれが一番最初にあってほしいと思います。すごく大事で、大気や酸素のようなものに似ている気がします。自分にしか聞こえない音を入れていくことで、やっと自分の色が出てくるんです。

コロナ、フェネス、そしてメタル

──ここ数年の世界には1990年代っぽい雰囲気があると僕は感じています。ざっくりまとめると、1990年代は情報が未整理のまま詰まった状態が生々しくリアルだった。それと同時に、1990年代には世界が良くならないままだらだらと日々が続くような、ローファイやグランジのアーティストが表現していたような気怠いフィーリングもあったと思う。最近の世界の気配、特に新型コロナ以降の空気は1990年代のそれに近い。情報過多の中で、だらだらと日々が続いている。そして、情報量の多さや気怠いフィーリングは、君島さんの音楽にも通じるものがあると思うんです。
君島さん自身は、ご自身と、外側の時代の空気をどういう距離感で考えていますか?

君島:なるべく関係ないものにしたいとは思っていました。世界と関係なくなれる場所に、自分の音楽がなればいいなと。けれどコロナ禍になって、結局世界から影響は受けちゃうし、それはそれで別に構わないなと思うようになった。コロナの状況になって初めて外からの影響を意識するようになりました。自分と向き合う時間が長くなったからでしょうね。

1990年代っぽいというのは最初のEP(『午後の反射光』)を出した時にもよく言われたんですけど、実はその時代に人気だった音楽からは全然影響受けてないんですよ。レディオヘッドを初めて聴いたのは1年半前だし、スマッシング・パンプキンズも1曲くらいしか知らない。かっこいいとは思うけど、僕はみんなが聴いていた音楽を避けていたところがあったんです。

自分で音楽を作ろうと思ったきっかけは、フェネス(=オーストリア出身の電子音楽家、ギタリスト。坂本龍一とのコラボ作品でも知られる)の『Endless Summer』(2001年)なんです。ここまで1人の人間が広げられる音楽があるんだ」と衝撃的で。彼の脳みそをそのまま覗いている感じがしたんです。時系列はばらばらのまま、彼の大切なものが全部詰まっている。フェネスがこのアルバムで使っている機材を調べたら、ラップトップとジャズマスターのギターとファズエフェクターだけ。必要最小限の機材で作った音楽が、日本の片隅の若者にも届いていることに感動した。「これを自分でもやりたい」と思ったんですよね。いろいろな時期の録音を1つの音源に入れるのも、フェネスからの影響かもしれません。

──なるほど。僕が1990年代の匂いを感じたのも、脳みそをそのまま見せるような生々しさ故かもしれません。

君島:ちなみに、フェネスに出会う前はメタルばっかり聴いていました。

──メタルはどのようなものを聴いてましたか?

君島:メシュガー(=スウェーデン出身、1980年代から現在まで活躍するメタルバンド。複雑なリズムやノイズの多用など、実験的な作風で人気)ですね。福生のライヴハウスのセッションに通っていた時期があって、そこでドラムを叩いていた人がメシュガーのCDを貸してくれました。なんというか、「融けた鉄」のような感触があって、すごいかっこよかった。

それから、ドリーム・シアター(=アメリカ出身、1980年代中期から高い人気を誇ってきたバンド。プログレッシブ・メタルというジャンルの草分け的存在)もよく聴きました。特に『Train of Thought』(2003年)というアルバムが本当に大好きで。この作品には絵に描いたような絶望の音が鳴っています(笑)。ドロドロした重たさ、暗さがずっと続いていく。心がおかしくなった時に聴くと優しさを感じられる気がします。

あとはジャズ/フュージョンの馬鹿テクな人達を聴いてました。グレッグ・ハウとかリッチー・コッチツェンとか、ただただギターが素晴らしく達者な人達(笑)。メタルとかフュージョンはスポーツのような、どれだけ速く正確に弾けるか、競技のような美しさがあります。聴いていると元気が出てきます。「手」を動かす人がやっぱり好きなのかも知れません。

「自分」を表現しつつ「自分」を出さない。

──11月に発売される新しいEP『縫層』は、音の細かいところまで聞こえてくるのが気持ちよくて、音の解像度が上がったという印象を持ちました。歌もキャッチーで耳に残りやすい。メロディがきれいに反復してたり歌詞が韻を踏んでたりとか、記憶に残る工夫が随所に見られるなと。

君島:まず、単純に使用した機材が良くなりました。所謂ローファイな音も、良くないとされる音質も大好きなんですけど、今回は良い音で気持ちいいぞ、と(笑)。歌も、過去の作品よりも少し前に出すようにしました。ただ、自分の声が前に出てくるのは怖いですね。声って記名性というか、その人の情報が勝手に出てくるじゃないですか。作っている人の顔や声を知ってしまうと、音楽の聞こえ方にも影響が出てくる。それが怖い。だから、前作は声を思い切り小さくして、リヴァーヴも深くかけてました。「自分」を表現したいんだけど、「自分」が出すぎないようにしたいんですよね。

歌詞の書き方も同じなんです。僕は他人を主役にした物語は違和感があって書けない。自分の記憶と結びついた妄想しか詞にできないんです。だけど、そこから「君島大空」という人間の固有性が出てきてほしくない。今の時代は人々が言葉をすぐに伝えられる。でも、それは本当に「言葉」なんだろうかと思います。茨木のり子さんの詩に「言葉らしきものが多すぎる」という一節があって。おこがましくも、今の世界に僕が覚える違和感を言い当てていると思いました。言葉がすごく雑に扱われていて、言葉がとても軽い。僕は「言葉らしきもの」じゃない言葉が欲しい。本来、言葉の連結ってもっと乱暴で、麗しくて、そこから「間」や「距離感」が感じられるはずなんです。

──一般的には、言葉は相互理解のための道具ですよね。人は他人との距離を近づけるために言葉を使っている。君島さんは、むしろ自らの表現と受け手の間に「距離」をとるために言葉を使っているんですね。歌詞にもどこかコラージュめいたものを感じるのも、そのためかもしれない。

そうですね。僕自身は伝えたいメッセージがたくさんある人間だと思っているんですが、それをそのまま伝えたければ文章を書いたほうがいいなと思います。歌詞は、メッセージを伝えるために書いてないですね。人間の体温や湿度が、言葉の連なりの全体像からなんとなく見えてくればいい。そう思って、言葉を選んでいます。

君島大空
1995年生まれ。2014年から活動を始め、SoundCloudにて自身で作詞、作曲、編曲、演奏、歌唱をして多重録音で制作した音源の公開を始める。2019年3月にファーストEP『午後の反射光』を、7月にファースト・シングル「散瞳/花曇」をリリース。同年の 「フジロックフェスティバル ’19」の「ROOKIE A GO-GO」に合奏形態で出演した。今年11月11日にセカンドEP『縫層』をリリースする。自身の活動と並行して、ギタリストとして 高井息吹、坂口喜咲、婦人倶楽部、吉澤嘉代子などのアーティストのライヴや録音に参加する他、劇伴や楽曲提供なども行っている。
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Photography Ko-ta Shouji

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