村上亮太 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/村上亮太/ Fri, 01 Dec 2023 08:28:42 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 村上亮太 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/村上亮太/ 32 32 鼎談:「アキコアオキ」×「ケイスケヨシダ」×「ピリングス」 気鋭デザイナー集団“東京ニューエイジ”を経た成長 https://tokion.jp/2023/12/02/tokyonewage/ Sat, 02 Dec 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=217188 青木明子、村上亮太、吉田圭佑の3人に、それぞれのブランドがどのような進化を遂げ、どのような展望を描いているのか語ってもらった。

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左から吉田圭佑、青木明子、村上亮太

若手のファッションデザイナー集団「東京ニューエイジ」を知っているだろうか? 「リトゥンアフターワーズ」の山縣良和と「ミキオサカベ」の坂部三樹郎により2014年10月に発足され、2017年まで気鋭デザイナーを送り出してきた“日本の若手デザイナーの発掘と支援”を目的としたプロジェクト”だ。

「東京ニューエイジ」としてデビューしたブランドは成長を続けている。今年3月に開催した2023-24年秋冬シーズンの東京ファッションウィークでは、「アキコアオキ」「ピリングス」「ケイスケヨシダ」「ソウシオオツキ」などが強い存在感を放っていた。

デビューから今年で約9年となる元「東京ニューエイジ」のデザイナー達はどのような進化を遂げ、どのような展望を描いているのか。「アキコアオキ」の青木明子、「ピリングス」の村上亮太、「ケイスケヨシダ」の吉田圭佑の3人に鼎談形式で語ってもらった。

——東京ニューエイジはどのようにスタートした?

青木明子(以下、青木):ここのがっこうで学んだデザイナーが集まって、ショーをすることになったのが始まりでした。それぞれ別々の時期に学んでいたメンバーだったのですが、たまたまブランドをはじめたいというタイミングあったという感じで。初期メンバーは私と村上くんの「リョウタムラカミ」、周子ちゃん(中里周子)の「ノリコナカザト」、(山下)琴菜ちゃんの「コトナ」でした。

村上亮太(以下、村上):僕はたまたま声をかけてもらい、参加することになりました。東京ファッションウィーク関連イベントの「渋谷ファッションウィーク」(2014年10月)で、「東京ニューエイジ」として渋谷109前の文化村通りを封鎖して合同ショーを開き、渋谷ヒカリエでもインスタレーションをさせてもらいましたね。

吉田圭佑(以下、吉田):僕は半年後の2期目として、「渋谷ファッションウィーク」(2015年3月)内で、金王八幡宮の境内で合同ショーを行ってデビューさせてもらいました。そのシーズンは、僕と(横澤)琴葉の「コトハヨコザワ」、大月(壮士)の「ソウシオオツキ」、苅田梨都子の「梨凛花」がメンバーでした。

——当時を振り返ると?

村上:僕は急に参加することになったから、ブランド名とロゴを考えたり、提出する書類を用意したりとバタバタしてました(笑)。それに当時はファッションのシステムをちゃんと理解してなかったから、展示会を開かずに発表するだけで終わっちゃったんですよね……青木さんはしっかり初回から展示会を開いていたね。

青木:そう。私と「コトナ」は一緒に合同展を開きました。みんな茶化しに来たよね(笑)。

村上:茶化してないよ(笑)。なんなら僕はファーストシーズンから「アキコアオキ」を買って嫁にプレゼントしたよ。今も家にある。

単独ショーで芽生えた責任感

——この約9年間、お互いの成長を見てきたと思いますが、それぞれのブランドの魅力をどのように感じていますか?まずは「アキコアオキ」について。

村上:学生服を着想源にしたデビューコレクションから、純粋にすごいなと見ていました。特に「ファッションポート ニュー イースト」(2016年10月に東コレ内で開催されたパルコ支援のイベント)として宮下公園で行ったコレクションは身体をシェイプした作風が印象的で、一気にモードの要素が強まっていって、女性像も変わったように感じました。

吉田:僕も「アキコアオキ」のデビューコレクションが好きでしたね。宮下公園でのショー(2017年春夏)や、2018-19年秋冬の着替えを取り入れたプレゼンテーションも心に残っていて、その頃からしっかりブランドのスタイルが確立されていったと思います。

青木:東京ニューエイジとして合同ショーを発表していた頃は、「みんなで頑張ろう!」という感じだったけれど、単独でショーを行うようになってからは責任感が芽生えていった気がする。

村上:2018年くらいから青木さんフィーバーで、LVMHプライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)のセミファイナリストをはじめ、毎日ファッション大賞 新人賞、「VOGUE JAPAN」の「Rising Star Of the Year」賞など、その時の若手に贈られる賞は全て取りましたよね。僕らの手の届かない存在になっちゃって……。

青木:確かにあの1、2年はそういう時期だったかな。

吉田:「アキコアオキ」はよりアーバン(都会的)な感じ。ファッションショーから展示会形式の発表に切り替えて、僕等よりも先にクリエイションをしっかりプロダクトにするのも早かったよね。

青木:最初はビジネスについての知識がなくて悔しいと思った。支援でショーをさせてもらってきたけど、そのサポートは永遠に続くわけではないので、自立するために目標を立てていきましたね。セールス担当の春海ショールームと契約を結んでからは、ショーは行わずに展示会とルックの発表のみでビジネスに集中。今年3月に久しぶりにショーを発表しました。

吉田:あと、アキちゃんの魅力は精神的に強いところだね。

村上:そう、精神性の強さがブランドの女性像に反映されている。

自分がやりたいことがやっと実現できるようになった

——それでは、村上さんの旧「リョウタムラカミ」、現「ピリングス」については?

吉田:名前を変えてから、クリエイションが向上していったと思います。村上は元々お母さんがデザインした服を作っていて、強いインパクトを残したけど、正直その後はブランドとしての発展が厳しかった。でも、「ピリングス」にしてからは、アトリエ「K’sK」のニッターさん達と協業することになって、“お母さん”が増えた感じで(笑)。より村上自身が自分と向き合って、素直なコレクションが出るようになった感じがした。2022-23年秋冬コレクションは自分がやりたいことを表現できるようになっていて羨ましかった。

青木:村上くんはここのがっこう時代から個性が立っていて、いい意味で最初から普通じゃなかったですね(笑)。デビューコレクションも好きだった。オリジナリティがしっかりあって、「ITS(International Talent Support)」にもノミネートされていたし。私には無いものを持っているなと感じていました。

村上:褒めてくれて嬉しい。確かに母とコレクションを作った後、「リョウタムラカミ」として1人になってからは何をしていいのかわからなくなって……「ピリングス」に変えてからは1から新しいことをやろうと模索したんです。

青木:村上くんみたいにこれだけピュアにクリエイティブなデザイナーは、アーティストの道に進んだり、ブランドをやめてしまったりと、作品とビジネスを両立するのが難しいはず。でも最近は女性目線でも欲しいものが増えてきている。

村上:それまでは1シーズンで1つの強いテーマを掲げていたんですが、「ピリングス」では3〜4シーズンかけて1つのテーマを表現するように変えていきました。最初はニッターさんを含むブランドのアイデンティティを紹介する内容にして、直近のコレクションは自分と向き合って、人間像にフォーカスを当てるようになってきたかな。

ブランドとしての発展

——「ケイスケヨシダ」についてはどうでしょう?

青木:吉田くんも自分と向き合うクリエイションだよね。

村上:そうだね。僕の場合は「ダメな自分ですいません」って感じだけど(笑)。吉田くんは “モードへの憧れ”が強くて、コンプレックスや儚さも表現されている。初期は少年をモデルにしたコレクションが印象的だったな。

青木:最初は吉田くん本人の延長のような内容だったけれど、宮下公園で一緒に発表したコレクションからは、ウィメンズにシフトして外国人モデルも起用して、ファッションの提案に向き合い出した感じだったよね。そうしてここ最近は初期の少年の感じと、ファッションの提案がうまく融合していて、すごくいい。

村上:僕は赤いライトの演出が印象的だった2019-20年秋冬シーズンがいいと思ったな。「ケイスケヨシダ」ってこういうブランドです、というのがちゃんと出ていた。“Jロック”って感じ。悪い意味ではなく、本場のロックじゃなく、ちゃんと自分解釈が入ったもの。机のシーズンも、学校に行くのが憂鬱だった頃を思い出して共感したな。

吉田:最初のコレクションは半径5メートルの等身大で作っていて、やりたいことを形にできるようになるまでは時間がかかった。まさに2019-20年秋冬コレクションからやっと世界観が固まってきて、次のシーズンでリボンのシャツやチェスターコートなど、ブランドの代表的なアイテムに発展できるようになった。コレクション作りは体力的にも精神的にも負荷がかかるから、出来上がった時には本当に達成感がある。僕の場合はショーを行わないシーズンも、ショーを行うつもりで制作しないといけないと思っています。

——吉田さんは展示会に一般の方も自由に来場できるように招待していて、その場で受注オーダーできるのが画期的です。

吉田:展示会は8日間ほど開いていますが、たくさんファンの方が遊びにきてくれて、お話しできる時間が楽しいんです。今年3月に開催した展示会では、お客さんの上着を預かったときにラックにずらっと「ケイスケヨシダ」のアーカイブのアウターが並んでいて嬉しかった。ファンの方の着こなしを見られるのが面白いし、若い勢いも感じる。

海外でも評価されるブランドへ

——それぞれ、今後の目標は?

青木:日本だけでなく海外でも通ずるブランドになること。なぜそうなりたいのか考えた時に、世界にいるスタイリストやフォトグラファー、クリエイターに出会って、一緒に仕事をしたいという思いがありました。数年前にECをはじめて、シューズの売り上げが順調に伸びてきました。なので、“パリで発表することが成功”ではなく、卸もECも頑張りつつ、クリエイションももっと面白いものを見せていけるように続けていきたいですね。

村上:僕はヨーロッパでファッションショーを発表したいという憧れがずっとあります。自分の作ったものがどのように評価されるのか知りたいし、チャレンジしてみたい。漠然と「パリコレは37歳までに」と思っていたので、あと2年で達成したいなと。また将来的には、僕が亡くなった後もブランドが“手編みニットの工房”として続いていって欲しいという夢があります。現在、他ブランドから制作の外注も受けるようになっているので、今後は海外にも協業先を広げていきたいですね。

吉田:僕は海外での経験がないので、世界に出ていくことには弱腰でした。でも最近は外国からの連絡がインスタグラムに来たり、2023-24年秋冬からはパリを拠点にするスタイリストのレオポルド・ドゥシェマンと協業を始めたりして、確実に意識はグローバルへ向かっています。ヨーロッパのブランドに憧れて育ったので、早く肩を並べられるようになりたい。国内に留まらずもっと多くの人に好きになってもらえるように、クリエイションを高めていきたいです。

Photography Tameki Oshiro

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連載「ものがたりとものづくり」 vol.8:「ピリングス(pillings)」デザイナー・村上亮太 https://tokion.jp/2023/03/08/monogatari-and-monodukuri-vol8/ Wed, 08 Mar 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=172798 作家・ライターの菊池良が、各界のクリエイターをゲストに迎え、小説やエッセイなどからの影響について対話を行う連載企画。第8回のゲストは「ピリングス(pillings)」デザイナー・村上亮太。

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「ものづくり」の背景には、どのような「ものがたり」があるのだろうか? 本連載では、『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)、『タイム・スリップ芥川賞』(ダイヤモンド社)の作者である菊池良が、各界のクリエイターをゲストに迎え、そのクリエイションにおける小説やエッセイなど言葉からの影響について、対話から解き明かしていく。第8回のゲストは「ピリングス(pillings)」を手掛けるファッションデザイナーの村上亮太さんです。

村上さんが挙げたのは次の3作品でした。

・松本人志『遺書』(朝日新聞出版)
・太宰治『お伽草子』(新潮社)
・町田康『きれぎれ』(文藝春秋)

さて、この3作品にはどんな”ものづくりとものがたり”があるのでしょうか?

中学生の頃のーパーヒーロー、松本人志によるエッセイ『遺書』

──『遺書』は現在も活動するお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志によるエッセイ集です。1994年に出版されてベストセラーになりました。

村上亮太(以下、村上):『遺書』は中1ぐらいの時に読んで。もともと関西の出身っていうのもあって、お笑いはすごく好きで。「かっこいい」=「おもしろい」だったんですよね。おもしろい人が一番かっこいいっていうふうに思っていて。その中でダウンタウンってめちゃくちゃ憧れる存在で、松本人志さんは自分の中でスーパーヒーローみたいに思っていましたね。

──年齢的には直撃世代ではないですよね?

村上:世代的にはちょっとズレているんですけど。『ダウンタウンのごっつええ感じ』(※)とかをレンタルビデオで借りて見ていましたね。

その時やっていた「放送室」っていうラジオ番組も聴いていました。当時いろいろダウンタウンのものに触れている中で『遺書』があったって感じですね。

※ダウンタウンのごっつええ感じ……1991年~1997年にフジテレビで放送されていたコント番組。ダウンタウン、今田耕司、東野幸治などが出演していた。

──ダウンタウンが出ているものに、いろいろ触れられていたんですね。

村上:ダウンタウンだけじゃなくてお笑い全体が好きで。深夜ラジオとかもすごく好きだったんですよね。自分ではがきを出したりして、たまに読まれて嬉しかったですね。その時、将来的にはお笑いの仕事がしたかったんですよね。

ネガティブなことを笑いに変えることによって、すごくポジティブなものに変わったりとか、社会の見え方が変わったりすることを感じて、こういう仕事をしたいなって思うようになって。

放送作家になりたかったんですよ。自分は表に出て何か披露するとかはできないなって思っていたんで、裏方でお笑いに携わる仕事がしたいなって。

──しかし、現在はファッションデザイナーです。どこかで変わったんですね。

村上:松本人志さんがラジオか何かで、自分がお笑いをやっているのは100%お笑いが好きだからじゃないって言っていて。お笑い自体に不満があったから、それを仕事にしたみたいなことを言っていたんですよね。

それを聞いた時、自分はお笑いが100%好きなものだったんで、それを仕事にするのは違うのかなって思うようになったんです。

──そこからファッションに行った?

村上:ファッションも好きなものだったんです。

ただ、小学生の時に母親が作った服を着ていて、それを学校でバカにされた経験があったんですね。そこからみんなと同じ服を着たいと思って服を勉強したっていうきっかけがあるんですけど、でも小学生の時に着ていた服はファッションじゃなかったのかなっていう疑問もあって。

さっきの不満の話を聞いて、瞬時にそう思ったわけじゃないですけど、長い年月をかけて、自分がファッション業界に行った理由はそこなのかなって思います。

──ダウンタウンからファッションへ、というのは一見離れているように見えます。

村上:「ごっつええ感じ」のコントに「ゴレンジャイ」(※)ってありますよね。あれでアカレンジャーが5人連続で出てくるとか、あれって今見るとめちゃくちゃファッションを笑いでやっているなって思うんです。

※ゴレンジャイ……「ダウンタウンのごっつええ感じ」内のコントシリーズ。戦隊モノのヒーローに扮した人物が5人登場し、名乗りを上げるが、毎回扮装が違うというもの。

あれってファッションショーのシステムと同じなんです。1ルック目が出てきて、2ルック目に何が出てくるのか、っていう連続で、ファッションショーは心地よさや意外性を作っていくものなんで。

ゴレンジャイってまさにファッションショーそのものっていうか。

ものの見方を変えるおもしろさに気付かせてくれた、太宰治『お伽草子』

──2冊目は太宰治の『お伽草子』。太宰を読んだのはいつ頃ですか。

村上:太宰を読み出したのは、たぶん中学生ぐらいで。でも、僕ってめちゃくちゃ読書が好きで読み出したタイプじゃなくて。

友達がいなかったので、教室でやることがなかったんですよ。それでマンガだとすぐ読み終わっちゃうじゃないですか。だから、時間をつぶすために本を読み出したってところがありますね。あと小説を読んでいたらそれっぽく見えるかなっていう。

──最初は時間つぶしになるから小説を読み始めたと。

村上:それで、読んでいくうちに結構おもしろいなって思ってハマってきたって感じですね。『人間失格』や『斜陽』とか、有名な作品を読んでいたんですけど。ああ、太宰ってこういう感じなのかって思って。

でも、『お伽草子』を読んだ時に、太宰自体の見え方が変わって。めちゃくちゃおもしろい人なんだなって思ったんですよね。ものの見方を変えるとこんなおもしろくなるんだって。あと全部弱者目線だと思うんですよね。弱い人の目線でこの人は物語を書いているんだなって感じて、そこから他の作品の読み方が変わりましたね。

『人間失格』もある意味笑えるというか、笑いの構造みたいなのがあるなって思って。

──太宰の作品の中に笑いがあると。

村上:太宰って、僕は世間で言われているような印象はあまり持っていなくて。どちらかというと、笑えるというか、人のおかしみのあるところを突いてくるなって。そこくるかみたいな。

──有名なシーンですが、主人公がクラスメイトに「ワザ、ワザ」と言われる場面とかはそうですよね。

村上:いいですよね。鉄棒で、尻もちついて。あと僕が好きなのはすし屋のくだりで、本筋と関係なくすし職人の手の動きが気になって見ちゃうとか。あ、なんかこういうことあるよなって。よくこんなところ書けるなって。でも、人って結構そうやって生きているよなって思ったりして。

──『お伽草子』は語り聞かせの作品ですよね。それも語り手が独自の解釈を入れたり、自分の意見を言ったりするという。

村上:ちょうど12月に青森の斜陽館(※)に行ったんです。前から行きたかったんですけど、その時に時間ができて。そこの職員の人が言っていたんですけど、この前太宰の弟子にあたる人が訪ねてきたって。90歳ぐらいのお爺さんで。その人によると、太宰は人を楽しませる天才だったって。めちゃくちゃしゃべる人だったって。

『お伽草子』って落語っぽいなって思うんです。防空壕の中で親が子どもに話を聞かせるっていう始まりですし。

※斜陽館……青森県にある太宰治の生家。「斜陽館」という名前で記念館として公開されている。重要文化財に指定されている。

独自の文体に魅せられ今でも読み返す、町田康『きれぎれ』

──3冊目は町田康の『きれぎれ』ですね。

村上:たぶん雑誌か何かで「現代の太宰治」って言われているのを見たんですよね。それで『くっすん大黒』(文藝春秋)を最初に読んだんです。おもしろかったですね。ほんとに電車で読めないぐらいでした。しかも「何読まされているんだ、これ」って。

一番ぜいたくな時間の無駄って感じがしましたね。読んでも何も得るものはないけど、めちゃくちゃいい時間だったなって。初めての経験でしたね。

──「ぜいたくな時間」、わかります。密度の濃い時間というか。

村上:その次に『きれぎれ』を読んで。めちゃくちゃ衝撃を受けてファンになっちゃいました。

なんて言ったらいいんですかね、脳みそちぎって見せられたみたいな。ストーリーもあってもないような……なくてもいいし、みたいな。夢的な感覚にも近くて。影響を受けたいけど、何を影響受けたらいいかわからないみたいな気持ちにさせられるというか。

──町田さんは文体が特徴的ですよね。独特の語彙と、勢いのある文体です。

村上:書きながら考えているんじゃないかっていうか。どんどん脱線していって「何に付き合わされているんだ」って気持ちになるみたいな。

落語っぽく書いていると思うんですよね。冒頭のデパートの上から飛び降りて……ってところは落語の枕っぽいし、リズムもすごくいいですし。ラップを聴いているような感じもしますし。

未だに読み返しますね。当時買ったものをずっと持っていて、ボロボロすぎて、外で読むのは恥ずかしいんですけど。

──ところどころ近代文学への言及がありますね。『きれぎれ』でも夏目漱石とアルベール・カミュが出てきます。

村上:すごくしょうもないようなことを書いているようでいて、土台はすごくインテリジェンスというか。

ファッションも文脈を踏んで、変なことやっているようで、抑えるところは抑えているっていうのが大事なんです。

たぶんそこがズレてくると、ただ好きなことをやっているだけって感じになると思うんですよね。

僕は文学については詳しくないですけど、町田康さんの小説を読んでいると、ベースのすごさというのを感じますね。

──最近の作品も読みましたか。

村上:最近はそんなに読めてないんですけど、『ギケイキ』(※)は読みましたね。古典の翻案なのに、言葉づかいがおもしろいですよね。「マジで」とか使ったりして。

そういう意味では、『お伽草子』に近いのかなって思いますね。

※『ギケイキ』……2016年に出版された町田康の小説。古典『義経記』の翻案。

──太宰治も町田康も、語りのおもしろさという共通点がありますね。

村上:太宰も、町田康さんも、おもしろいものを書くテクニックっていうのもすごいんですけど、それを超えた本音が漏れた時が一番おもしろいと思うんです。

最後の最後に出てきた一言みたいなものが、すごく力があるし、おもしろいってことなのかなって思うんです。

だから、下手に狙ったことはしちゃダメなんだなって、今自分では思っています。こっちは本気で作っていて、みんなはおもしろいと思っている関係性が一番いいのかなって。

──村上さんの作風の秘密が少しわかった気がします。

Phototgraphy Tasuku Amada

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