DJ NOBU Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/dj-nobu/ Wed, 14 Jun 2023 09:45:11 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png DJ NOBU Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/dj-nobu/ 32 32 DJ NOBU × 日野浩志郎が目指す、解放への道。 https://tokion.jp/2023/06/15/dj-nobu-x-koshiro-hino/ Thu, 15 Jun 2023 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=190837 DJ NOBUの熱いラブコールを受け、日野浩志郎率いるバンドgoatが「FUTURE TERROR」に登場。東京では、約5年ぶりに新体制にてライヴを行う。

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DJ NOBU  Photography Dai Fujimura
日野浩志郎  Photography Dai Fujimura

DJ NOBU
DJ/サウンドプロデューサー。「FUTURE TERROR」、レコードレーベル<BITTA>主宰。パンク、ハードコアでの活動を経て、2000年初期よりDJをスタート。2001年より地元である千葉市でアンダーグラウンドに根付いたパーティ「FUTURE TERROR」を定期的に開催し、2009年以降はDJとして国内だけでなく海外にも進出。ワールドクラスDJとして、各国のパーティやフェスに出演し、2022年にはヨーロッパにて「FUTURE  TERROR」を開催。また、サウンドプロデューサーとしても定期的にトラックを制作しリリースを重ねている。
Twitter:@dj_nobu_ft
Instagram:@dj_nobu_ft

日野浩志郎
goat、bonanzasのプレイヤー兼コンポーザー。ソロプロジェクトとして電子音楽を主軸としたYPYをはじめ、中川裕貴によるユニットKAKUHAN、実験的なリズムを試みる5人編成バンドgoat、bonanzasでの活動のほか、舞台作品『GEIST』の作曲と演出、『戦慄せしめよ / Shiver』では、太鼓芸能集団 鼓童とコラボレートした音楽映画を担当。また、国内外のアンダーグラウンドミュージシャンのリリースを行うカセットレーベル「Birdfriend」や、コンテンポラリー/電子音楽をリリースするレーベル「Nakid」も主宰。
Twitter:@po00oq
Instagram:@po00oq

日野浩志郎率いるバンドgoat(ゴート)が、6月17日に東京・「UNIT / Saloon」で開催されるDJ NOBU主催の「FUTURE  TERROR」に出演を果たす。goatは昨年末に約5年ぶりにライヴ活動を再開、今秋には約8年ぶりに新作のリリースを予定している。今回、DJ NOBUがgoatに熱いラブコールを送り出演が決まったそうだ。本対談は、アメリカツアー真っ最中だったDJ NOBUからの連絡を受け、急遽実現。DJ NOBUがインタビュアーとなり、日野の思考に迫った。対話から見えてきた「耐え忍んだ先にある開放」——それはテクノを主流にしたDJ NOBUとgoatの日野浩志郎、2人が目指す共通点なのではないか。

DJ NOBU:日野くんとは、京都で<BLACK SMOKER RECORDS(ブラックスモーカー レコーズ)>と一緒にやった「BLACK TERROR」で知り合ったんだよね。その時に<BLACK SMOKER RECORDS>のJUBEくんが「いいバンドがいるんだよね」って、日野くん達をブッキングして。当時、日野くんはかなり若かったと思うんだけど、ライヴが終わった後に話しかけてくれて、それが最初の出会いだったよね。

日野浩志郎(以下、日野):確か2012年でしたかね。まだ僕はgoatを始めていなかったくらいの時かも。 

DJ NOBU:本当に綺麗な目をした若者で、とても印象深かったんですよね。日野くんは<BLACK SMOKER RECORDS>とも仲が良くて。

日野:そうですね、YPY(日野浩志郎によるソロプロジェクト)でアルバムを出したり。その時の「BLACK TERROR」ではbonanzasというバンドで出たんですよね。

DJ NOBU:YPYやKAKUHAN(日野浩志郎と独自の手法でチェロを演奏する作曲家・演奏家の中川裕貴によるデュオユニット)にしろ、日野くんはいろいろなプロジェクトをやっている中で、goatはどういうプロジェクトになるのかな? 

日野:僕自身も説明しづらいんですけど、僕が思い描いていた構想をやっと体現できたプロジェクトがgoatでした。goatの前にbonanzasをやっていたんですけど、それが母体とはなっていて……なんて言ったらいいのかな、自分達の楽器を使って全員がドラムの一部になるようなものをgoatは体現をしているんですけど。

DJ NOBU:僕はgoatを”人間ドラムマシーン”だと思っていて……というと安っぽい言い方になってしまうかもしれないんですけど、すごく精密だし、人間がやっているとは思えないような集中力。それにプラスして、人間が演奏しているテンションが加わっている。この間アメリカで4連チャンでDJをやったんだけど、東から西への移動もあって体力的にとてもつらくて、でもそんな状況で「std」を聴くとすごく元気が出たんです。

日野:聴いてくれたんですね!

DJ NOBU:もちろん聴いていますよ! 「std」のテンションやアッパーさからは、日野くんの人間力を感じるんです。

日野:「std」は1stアルバム(『NEW  GAMES』)の最後に入れた曲で、goatの中では爆発力があって一番解放的な曲なんです。タイトでミニマルな演奏で我慢をため続けて、曲の最後に解放的になるみたいな。僕等の中では一番人間的な曲というか。

DJ NOBU:そこの表現に僕はテクノを感じたりするんですよ。僕もやっぱり、我慢・我慢・我慢、で解放するみたいなのがとても大事で、ベルリンで12時間DJをしたんですけど、その時に8時間我慢させたんですよ。で、8時間経った後に「シルベスター」をかけたんです。そしたら泣いている人達がフロアにいっぱいいて(笑)。そういう、忍耐の先にある快楽というのがあると思っていて、まさに僕がgoatを好きな理由の1つに、そういう感覚をすごく感じる。それをみんなにも味わってほしいと思って、今回の「FUTURE TERROR」で声をかけたんですよ。

日野:goatの場合は、我慢タイムが、本当の我慢タイムになる時もあるんですけど(笑)。けどその我慢があるからこそ最終的には効果的に作用してくるんです。

DJ NOBU:goatって頭で聴くのも楽しくて、頭で聴いて数えたりすると、日野くんというアーティスト自体が数学的ということがわかったりするし。で、それを一度忘れて感覚で聴くと、ものすごい快楽を得るんですよ。それがgoatの素晴らしいところでもあるなと。

日野:難しく聴かせることって簡単なんですよね。実際に僕等はわりと複雑なことをしていると思うんですけど、それをいかにシンプルに聴かせるかっていうのが、作曲の中の一番重要なポイントの1つで。なので感覚的に聴いてもらえるのが僕にとっては一番嬉しいです。

「最後の快楽に向けての集中力」(日野浩志郎)

DJ NOBU:ライヴを観ても、音源を聴いても思うことなんですけど、goatは集中力がすごい。その集中力はどこからくるのかな。

日野:先ほどNOBUさんも言っていた最後の快楽に向けて、集中していってると言えばいいんでしょうか……。集中することが普通になっているのかもしれません。

DJ NOBU:幼少期とかに、そういう訓練を受けたとかはではない?

日野:ずっとスポーツをやっていました。子どもの頃は野球選手になりたくて、小学校の頃に野球部に入って頑張っていたんですけど、中学校が田舎すぎて人数が少なくて野球部がなかったんです。だから陸上部に入って、高校で野球をもう1回やるぞ! と思っていたんですけど、高校が弱小で、そこでサッカー部に入るという。なので学生時代は野球~陸上~サッカーとずっとスポーツをやっていましたね。

DJ NOBU:スポーツマンだったんだ。その頃は、今後につながるような音楽を聴いていたの?

日野:高校の頃はニルヴァーナとか、レッチリとか、流行りものも聴いていました。その中でも今でもやっぱり影響あるのはレッド・ツェッペリンかな。少し背伸びしてマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンとかも聴いていましたけど。

DJ NOBU:今でもツェッペリンは聴いたりするの? 

日野:聴きます。それにスピーカーを買い直したら、まずツェッペリンを聴きますね。

DJ NOBU:スピーカーの個性だったり、キャラクターだったりを、ツェッペリンをベースに聴いて確認しているんだね。必ず聴くという曲はあるの?

日野:曲よりはアルバム単位で聴いてますね。アルバムだと『フィジカル・グラフィティ』とか好きだし、曲で言えば「アキレス最後の戦い」とか好きです。

DJ NOBU:今度スタジオに遊びに行かせていただいた時に、あのスピーカーで聴いてみたいな。で、僕の個人的な感想として、goatってかっちり演奏をして、KAKUHANはインプロって感じに聴こえるんですけど、自分で違うことをやって楽しんでいるというか、自身の中でバランスを取っているとかはあるの?

日野:めちゃめちゃありますね。goatはつらいんですよ。作曲も練習もライヴもつらいですが、終わってからようやく解放感があるというか。1つのプロジェクトを続けていくとクリエイティヴでなくなっていくから、意図的に別のプロジェクトをやって1回goatのことは忘れるようにしています。その合間にYPYの曲を作ったり、KAKUHANでセッションをレコーディングしてみてとかバランスは取っていますね。

DJ NOBU:goatの反復って、概念でいうトランスと同居しているというか。演奏している方からしたら、とてつもないんだろうなと思うんですよ。

日野:演奏している側が一番興奮しているし、一番楽しいと思います。

DJ NOBU:一緒に楽しめる人っていうのを前提でメンバーを決めたの?

日野:なかなかメンバーを見つけるのは大変なんですが、正直まずは一緒に音を出してみないとわからないところがあります。練習時間をポジティブに共有できる人じゃないと難しいんですが、実際ライヴするまで新しく入ったメンバーはつらいと思いますよ。で、最後にライヴをして興奮に気づくって感じ。

DJ NOBU:昨年末まで5年間ライヴをやっていなかったですけど、その間にgoatは何をしていたんですか?

日野:作曲と練習とメンバー探し。暗黒期もさまよいつつ、って感じですかね。 

DJ NOBU:「暗黒期」という言葉が出てくると思わなかったんですけど、5年間ためてアップデートして、ここから一気にgoatが動き出すっていう感じですね。

日野:そうです。今年10周年なんで、秋には新作アルバムも出すし、8月にはgoatの国内ツアーも予定しているんですけど、その時のツアーで先行発売をして、その後に流通をし始めようかなと考えています。

DJ NOBU:アルバムは自身のレーベルから出す予定なの?

日野:今回は自分のレーベル<NAKID(ネイキッド)>からです。レコーディングもミックスも終わって、これからマスタリングですね。

DJ NOBU:ちなみにマスタリングは自分で? それか他に頼むの?

日野:マスタリングはラシャド(・ベッカー)に頼もうかと思っています。

DJ NOBU:そうなんだ! ラシャドなんだね。彼に頼むのは意外だった。僕が前にベルリンの「ベルグハイン」でDJした時に遊びにきてくれて。goatの音って生音だけど、それをどうラシャドに指示する予定なの? 

日野:あまりこちらの意思を押し付けたくなくて。アーティストとして信頼しているから、まずはラシャドの好きなようにやってほしい。その上で修正するポイントがあればって感じです。普段はミキシングやマスタリングで、その人のアーティスト性を出されるのってあまり好きじゃないんですけど、ラシャドの場合は良くなっている。で、想像していないところが良くなったりしているから、楽しみなんですよね。

DJ NOBU:なるほどなあ。意識していなかったところが良くなるってことですよね。そこに自分が気づくという。 

日野:そうなんです。だからあまり言いたくなくて。ちなみにgoatの1st、2ndをコンパイルしたレコードがあるんですけど、それもラシャドにマスタリングしてもらって、その時にそういう良さがあったから、今回もお願いしようかなと思いました。そのコンパイルしたレコードは2018年ですが、今回出すアルバムは新作という意味では8年ぶりになるんですよ。

「反復の快楽は、本当の意味でのトランス」(DJ NOBU)

DJ NOBU:『Rhythm & Sound』から8年ってことですよね。前に「FUTURE TERROR」に出てもらったのって2016年でしたっけ。

日野:2016年から2017年のカウントダウンでした。

DJ NOBU:そこからアップデートされた部分とか、変わった部分はどういうところなんでしょうか。

日野:メンバーが増えたということもあって、昔の曲のアレンジがだいぶ変わりました。既存曲は昔より良くなっていると思っているのが1つ。さっき暗黒期と言いましたけど、初期のドラマーが素晴らしく、当時は彼のために作曲していた部分は大きくて、そのドラマーがいなくなって試されるのって、作曲やアレンジ能力だと思うんです。初期の楽曲に関して、初期ドラマーがいなくなった後、「彼がいなくなって、良くなくなった」と言われるのが一番最悪じゃないですか。

DJ NOBU:確かに。

日野:そのプレッシャーが一番大きくて。だから彼に頼らないで、アップデートするというのがまず大前提としてありました。けど今のドラムの岡田くんや雷くんも素晴らしく、アレンジが加わった今の既存曲は、これまでで一番良いんじゃないかと思っています。作曲に関しても2ndアルバム以降はアップデートする必要性を感じていて、いろいろとリズムアンサンブルの実験を繰り返してきました。昔はシンプルなフレーズを繰り返していって、その中で爆発力を持つみたいな作り方をしていたのを、リズムの組み合わせを、なんて言ったらいいのかな……シンプルだけど、変わり続けて聴き飽きないようなリズムみたいなものを試したいと思ったり。なおかつライヴで興奮できるもの。それを試すためにいろいろな作曲方法をして、実際に楽器を変えてみたり、みんなでボンゴやマリンバを叩いてみたりしたりして。それがある程度自分の中でうまくいくようになってから、バンドに落とし込んだのが今の状態ですね。

DJ NOBU:反復ではあるけど変化する感じが、アップデートする前と今との違いかな。 

日野:そうですね。反復する種類が違うって感じですね。

DJ NOBU:本当に反復の快楽じゃないですか。チープな言い方かもしれないけど、本当の意味でのトランスというか。それとgoatっていい意味でエンターテイメント性も感じるというか。2016年の「FUTURE  TERROR」のカウントダウンの時も完璧でしたからね。ライヴ、楽しみだなあ。

日野:あの時のカウントダウンは自分の人生の中でも最高に興奮したライヴでした。緊張も一番、演奏も納得できた。カウントダウンのための練習をしていましたからね。曲間は何秒だとか、BPMは絶対に変えないとか、合図は何分何秒の時に出すだとか。そういう特殊な練習をしていましたね。これ外したら殺される!みたいな(笑)。それは冗談ですけど。

DJ NOBU:(笑)。それがあの完璧な状態になっていくのか。そういう苦労を日野くんは見せないし、goatは「こういうことができて当たり前」だと思っていたから、そういう話が聴けて良かった。日野くんは謙虚でクールなんですけど、現場で反転する創造的なエネルギーを持っているというか、バーンッ! と現場で流すことができるのが、goatというバンドのすごさかなと思っています。

日野:いつもギリギリですけどね。ライヴの前は悪夢を見ますしね(笑)。だけど楽しんでいます。十分リハーサルをして、納得できるライヴができてやっと楽しめるってところはありますね。だからライヴをするまでは、すごい心配だし、95%以上はつらい。

DJ NOBU:なるほどなあ。僕も「FUTURE TERROR」やるのはつらいんですけど、アメリカにいる最中も気になるし、悪夢も見るし、だからお互い同じ気分になっていたんですね(笑)。今回は本当に、goatのためにパーティをやりたいんですよ。それで日野くんに愛を伝えたいっていう。

日野:受け止めまくっています。ありがとうございます。僕らも本当に気合い入れているんで。

硬くならずに「未来の恐怖(FUTURE TERROR)」へ向かう

DJ NOBU:何か伝えたいことはありますか? goatを知っている人でも、知らない人でも。

日野:あまり硬くならずに、難しく聴くこともないので、感覚的に聴いてもらえればいいです。

DJ NOBU:しばらくはgoatの活動をしていく予定ですか?

日野:そうですね。今年は10周年なので、“goat year”って感じだと思います。

DJ NOBU:「FUTURE TERROR」以降の、ライヴの予定はこの先ありますか?

日野:今回は各週末、週末ツアーみたいな感じで、全部で7ヵ所やります。年末にやった大阪のライブは、今の編成になって初めてのライヴだったんですけど、今のgoatをプレゼンテーションするには納得のできだったかなと。

DJ NOBU:日野くんが作曲をした譜面に対して、どれくらいのパーセンテージでメンバーの人達はパフォーマンスするんですか?

日野:決めているところは100%そのまましてもらうんですけど、自由度のあるところもあります。元鼓童の立石雷くんが笛を吹く楽曲もあるんですけど、その曲の中ではサックスと笛は自由度があって、そのボトムを演奏している自分達は自由度ゼロ。そういうバランスのものもあります。だけど他の曲は、100%演奏方法が決まっているのがほとんどですね。もう毎日、練習しないと「FUTURE TERROR」が怖い。だけど、良いライヴをして「FUTURE TERROR」を楽しみたいですね。

DJ NOBU:「未来の恐怖(FUTURE TERROR)」とはよく言ったもんだ(笑)。6月17日のライヴ、楽しみにしています。

■FUTURE TERROR at UNIT / Saloon
日にち:2023年6月17日
場所:UNIT / Saloon
時間:オープン[Saloon] 23:00 / [UNIT] 23:30
Line up:
[UNIT]
DJ Nobu
Haruka
Akie
Live:goat

[Saloon]
Occa
鏡民
Kuri
Sakuma
Live:MANISDRON

Sound design:HIRANYA ACCESS
Tickets:https://future-terror.zaiko.io/item/355848
[カテゴリー3]
前売 / ADV:¥3,500
25歳割 / U25:¥2,500

■日野浩志郎スケジュール
6/24~25 日野浩志郎、古舘健(ダムタイプ)、藤田正嘉、谷口かんな、前田剛史「Sound Around 003」@ロームシアター京都 
7/15~17 KAKUHAN@Rural
7/21:YPY@AZUL(大分)
7/22:YPY@NAVARO(熊本)
8/27:goat 10 year anniversary 東京公演@渋谷WWW X
8/31~9/1:goat 10 year anniversary event@ロームシアター京都

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DJ NOBUと「FUTURE TERROR」。20年を経ても常にカウンターを守り続けるパーティの在り方―後編― https://tokion.jp/2022/05/30/dj-nobu-future-terror-vol2/ Mon, 30 May 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=117370 DJ NOBUに聞く、発足20周年を迎えたアンダーグラウンド・テクノ・パーティ「FUTURE TERROR」の現在の在り方と、DJ活動についての後編。

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日本のクラブシーンが大きく成長を果たした1990年代を経て、成熟したパーティが多く開催されていた2000年前後、そこからさらにカウンターをいくパーティが登場した。

それは、2001年に千葉市でスタートしたアンダーグラウンドパーティ「FUTURE TERROR」。 千葉ローカルのDJ達をメインに、己のスタイルを毎回フロアへと投げかけ、ハードコアかつ、ハッピー極まりない現場を実際に経験した人達の間で口コミでどんどんと全国へうわさが広がっていった現場主義のパーティである。国内外問わず、これまでに出演してきたDJ、音楽アーティスト達に共通していたのは、高い音楽スキルを持った独自のサウンドを放つひとびとばかりだということ。

その「FUTURE TERROR」が今年、20周年を祝い、いくつかパーティを開催する。1回目となる、「札幌プレシャスホール」でのパーティはすでに開催されたが、DJ NOBUHarukaOccaが出演したパーティは、日本でも、いや世界でもトップクラスのサウンドシステムを兼ね備えたプレシャスホールと実にマッチし、素晴らしい日となった。

今回は「FUTURE TERROR」の発起人であり、パーティとともにDJのスキルを磨き世界へと羽ばたいていったDJ NOBUに、20年を経たパーティについての話を2回に分けて紹介する。

前編の「FUTURE TERROR」についてに続き、後編は、コロナ禍を経て各国でDJ出演が始まっている現在の活動状況について。

コロナ禍により国内のシーンの良さに気付いた、この2年

——コロナ禍はどのように過ごしていましたか?

DJ NOBU:昨年の夏までは、それぞれの解釈でパーティをやっていたと思うんですけど。うーん、そうだなあ……。コロナ渦は、楽曲制作に集中していましたよ。それこそヨーロッパへの移住も中止にしちゃったし、その中で将来どうすんのかなって。それで音楽を作るスキルを上げるための時間があるというところで、その時に何ができるか考えて、やれることをやっていたって感じです。それが今の音楽活動にいい感じに作用しているし、決して無駄な時間ではなかったから、それで良かったのかなと思いますね。あとはこの2年間、海外に出ないで国内のシーンを見ることができたんですけど、改めて日本のシーンの良さに気付きました。

——ワールドワイドに活躍するDJ NOBUさんが見た国内のシーンですが、どのようなところが良かったですか?

DJ NOBU:日本人DJの底力ですかね。なんというのかな、厚みというか。バラエティに富んだDJがたくさんいて、改めて日本のローカルDJの良さがわかったことは、コロナ禍でのいい部分だなと。だけど悪いところで言うなら、まだ成熟していない部分も見えてしまったというか……。例えば、欧米は日本より進んでいて、セーフティゾーンを作ろうとかあたりまえにそういうことが意識されているけど、日本はまだまだだなと。20代の若い子達とコミュニケーションをとることも海外へ行かない分増えて、彼らには学ばせてもらうこともたくさんあるし、教えていかないといけないこともあるし。日本っぽい本音と建前みたいな、歪な部分を結構食らったという意味では、この2年くらいで見た日本は衝撃的でした。

——では、日本のクラブシーンにアドバイスするとしたら、何かありますか?

DJ NOBU:例えばフェスではあまり話を聞かないですが、クラブのパーティでディスカウントリストが重要視されているのは日本だけだと思うんですよ。もちろん私も集客するためにやらざるを得ないし、箱やオーガナイザーによりけりですが、お客さんを呼べないから、DJのディスカウントゲストリストでたくさんお客さんを呼ぶっていう。それを若い子に頼む、みたいな感じの風習は日本にはありますよね。DJの中身ではなくリストの多さでブッキングが増えるというか。

その習慣は根強いのかなって。箱やオーガナイザーも頑張ってお客さんを呼ばないといけないけど、日本はDJも頑張ってお客さんを呼ばないといけない。そこがなんか難しいし歪なところだなって思います。他所の国だと自分から過剰に宣伝をしなくても、パンパンにお客さん入りますからね。すごく大事なことなんですが、仕事帰りや生活の一部にパーティに遊びに行く文化があるのとそうでない国の文化の差を感じます。

——ここ何年もですが、パーティでは何人ものDJがプレイしている傾向がありますが、その方式でお客さんをつかもう的な流れはありますよね。

DJ NOBU:そういった幕内弁当的なノリのパーティは多いですよね。その中で、「FUTURE TERROR(以下、FT)」ってDJの人数を極力抑えているんですよ。数が多くてDJプレイの時間が短いほうが、派手に見えるし、興味を引くのかもしれないですけど、そこには乗っかりたくない。

そもそもテクノって1時間や1時間半とかで聴かせる音楽でもないし、ここ数年、自分はそういうパーティには一切出ないようにしているんです。そういう意味では、われわれが考えるテクノに触れてもらって、テクノってこういう楽しみ方があるということをパーティを通じて、少しずつ教えていきたいとは思いますね。

自分が痺れるテクノをプレイすることにより自己の表現を伝達する

——2022年に入ってDJ NOBUさんは海外へ出られましたけど、メキシコ、アメリカはいかがでしたか?

DJ NOBU:自信はついたかな。みんな待っていてくれたんだなって感じれたし、前編でも言ったけど、世代の違う今はやりのDJと一緒にマイアミとロサンゼルスでやった時に、そういう人達に混ざって自分は何をどう表現するか、それにチャレンジできたと思います。それが上手くいって、こんなに自分のテクノにみんな反応してくれるんだって、勝手に感動しちゃって。なので、今の自分のテクノに自信を持っていいのかなと改めて感じましたよ。

——はやりに流されずに、自身のスタイルでプレイできたんですね。

DJ NOBU:それこそマイアミで今人気の、レイヴ系のDJの後にやったんですけど、若い人達がその人のDJで「ワ~ッ!」と盛り上がっている中で、その次に自分が何をやるのかは過去の経験から、例えば、最初のきっかけ作りから自分のスタイルを崩さずにどうやるかといいますか。それは自分の持っている武器というか、引き出しというか。それまで他のDJで盛り上がっている人達をどう自分に引きつけるか。そのテクニックもここ2年はあまりやっていなかったけど、それもできて成功しました。

やっぱり周期的な音楽のはやりってありますよね。それと自分は関係なくやっていけるなということも感じられたし。そういうのを不安がって口にするDJさんが海外にはいたりするんですけど、自分はそう思っていないから! とか(笑)。やっぱり自分がかっこいいと信じている表現を堂々とやってあげないとだめじゃないですか。そういう意味では、自分が痺れるテクノっていうのをちゃんとやれたし、今年はこれから毎月海外でのギグもあるので、その姿勢で今年はやっていきたいなと感じています。

海外でプレイするDJ NOBU

——おのおのの場所によって、盛り上がった曲などはありますか?

DJ NOBU:そこはどこもあまり変わらないんじゃないですかね。それこそウクライナにパンデミック前に行った時は、他の国よりディープな表現のほうがお客さんがついてくるなと思ったけど、他はそんなに変わらないかなって。自分を求めてくれるお客さんが来ているわけだから、そこは堂々と表現していいだろうし、お客さんも喜んでくれるかなって感じですよね。

——FTの話に戻りますが、FTではこの先どんなことを目指していますか?

DJ NOBU:なんていうのかな……ストリクトリー・テクノ。サイケデリックであって挑戦的で、オリジナルであって、力強いものであって、自分達がおもしろいと思うこと。シンプルに、余計な形容詞がつかない“プロパーなテクノ”であることがすごく大事だと思っていま
す。もちろん今までと同じようにテクノ以外のおもしろいDJやアーティストを紹介して驚きだったりマインドブローイングするような音楽体験ができる場でありたいと思っています。

今年はこれから日本に海外からアーティストがたくさん来ると思いますが、誰々を呼べることになったとか、そういうゲームに乗るんじゃなく、DJとして私やHarukaが海外のDJとも肩を並べて、自分達の表現をしっかりできたらいいなと思っていますね。だからFTを海外に持っていけたとしたら、私とHarukaでそこは自信を持って、自分達しかできない何かをやれたらいい。もう何年もラインアップの豪華さとか、見た目の派手さに寄っちゃっているパーティが多いかなって思うので。

——プレイ時間が短く、ラインアップが多いイベントが多いですものね。

DJ NOBU:そこはそうじゃないよって感じで、自分はやりたいですね。やっぱ自分達の考え方をシンプルに表現するってことはすごく大事だと思うので。ここから先、どうなるかわからないですけど、自信を持ってやっていこうって感じです。

テクノを軸に、強さを持つHarukaの魅力

——Harukaさんと、NOBUさんの出会いを教えてください。

DJ NOBU:2006年、2007年くらいにHarukaが私を彼のローカルである仙台と山形に呼んでくれた時ですね。今は、基本的にはHarukaがFTをオーガナイズして、仕切っているようなもので、考え方とかはもちろんFTならではのものがありますけど、オーガナイザーとしては世代交代です。私は相談役的な立ち位置で(笑)。今はHarukaという存在が大きいので、そこはFTの20年の中でも大きな出来事ですね。

——DJ NOBUさんから見た、HarukaさんのDJの魅力はなんですか?

DJ NOBU:バランスの良さですよね。サイケデリックであり、グルーヴの強さであり、彼しかできないテクノ。なになにぽい曲とか、だれだれぽいとかではなく、ただただHarukaのテクノっていう。私がやりたかったのは、それなのかなって。これがテクノでしょ! っていう。そういう意味では、テクノっていうものがちゃんとできている人なんじゃないかな。その中で強さを持っているDJであり、オーガナイザーでもありって感じですかね。

——FTでも、他にご自身がオーガナイズされている現場でも、サウンドシステムへのこだわりを感じていますが、出音に関しては、どれくらい大切なものだと感じていますか?

DJ NOBU:パーティの1stプライオリティって、出音だと思うんですよ。というか良い音だと自分が楽しいんですよね。フロアにいて、長い時間踊れて、マインドブローイングできるかどうかっていうのが大事な要素なので、そのために常に出音は研究してますね。日本のクラブでも、海外のクラブでもおのおのまったく出音が違いますから。

——ちなみに、出音の良さで感動したクラブはありますか?

DJ NOBU:ロンドンの「プラスティック・ピープル」ですかね。すごく気持ちいい出音だったし、自分の理想に近い出音のクラブはあれ以降現れてないです。好き嫌いもあるかと思いますが、自分はあの感じが好きです。

——コロナ禍では、常に制作をしているなという印象がありました。制作面では何か変化はありましたか?

DJ NOBU:自分と向き合った時間だったので、自分のやりやすいやり方、スタジオに入って、その向き合った時間がそのまま出たって感じですかね。向き合った時間がすべての答えだと思うし、コロナ禍で現場が動かなくなったその時間に何をやっていましたか? って。その結果は、作品にも出ているかなと思います。

——今年はこれからFTをいくつか開催される予定ですが、パーティを楽しみにしているお客さんへメッセージを頂けますでしょうか。

DJ NOBU:ただただシンプルに遊びに来て、踊ってほしいです。そしてわれわれの作るストーリーを感じてほしいです。ぜひ、楽しみにしていてください。

DJ NOBU 
DJ/サウンドプロデューサー。「FUTURE TERROR」、レコードレーベル、BITTA主宰。パンク、ハードコアでの活動を経て、2000年初期よりDJをスタート。2001年より地元である千葉市でアンダーグラウンドに根付いたパーティ「FUTURE TERROR」を定期的に開催。2009年以降はDJとして海外にも進出し、日本のテクノシーンを代表する現在は、ワールドクラスのDJとして、各国のパーティやフェスで活躍中。また国内では「FUTURE TERROR」だけでなく、不定期に自身主催のパーティも主催する。サウンドプロデューサーとしても定期的にトラックを制作しリリースを重ねている。
Twitter @dj_nobu_ft
Instagram @dj_nobu_ft

Photography Jun Yokoyama

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DJ NOBUと「FUTURE TERROR」。20年を経ても常にカウンターを守り続けるパーティの在り方―前編― https://tokion.jp/2022/05/26/dj-nobu-future-terror-vol1/ Thu, 26 May 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=117329 DJ NOBUに聞く、発足20周年を迎えたアンダーグラウンド・テクノ・パーティ「FUTURE TERROR」の現在の在り方と、DJ活動についての前編。

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日本のクラブシーンが大きく成長を果たした1990年代を経て、成熟したパーティが多く開催されていた2000年前後、そこからさらにカウンターをいくパーティが登場した。

それは、2001年に千葉市でスタートしたアンダーグラウンドパーティ「FUTURE TERROR」。 千葉ローカルのDJ達をメインに、己のスタイルを毎回フロアへと投げかけ、ハードコアかつ、ハッピー極まりない現場を実際に経験した人達の間で口コミでどんどんと全国へうわさが広がっていった現場主義のパーティである。国内外問わず、これまでに出演してきたDJ、音楽アーティスト達に共通していたのは、高い音楽スキルを持った独自のサウンドを放つひとびとばかりだということ。

その「FUTURE TERROR」が、今年20周年を祝い、いくつかパーティを開催する。1回目となる、「札幌プレシャスホール」でのパーティはすでに開催されたが、DJ NOBUHarukaOccaが出演したパーティは、日本でも、いや世界でもトップクラスのサウンドシステムを兼ね備えたプレシャスホールと実にマッチし、素晴らしい日となった。

今回は「FUTURE TERROR」の発起人であり、パーティとともにDJのスキルを磨き世界へと羽ばたいていったDJ NOBUに、20年を経たパーティについて聞いた話を2回に分けて紹介する。

前編は、「FUTURE TERROR」について。後編は、コロナ渦を経てひさしぶりに各国でのDJ出演が始まっている現在の活動状況について。インタビューは、アムステルダム滞在中にリモートで決行。画面越しに見るDJ NOBUは、すこぶる絶好調だと感じた。

20年を経て、再び原点に戻りつつある「FUTURE TERROR」

——「FUTURE TERROR(以下、FT)」20周年、おめでとうございます。今年はパーティがいくつか開催される予定ですね。

DJ NOBU:始まりは2001年なので、本当は今年で21周年なんです。だけど去年はパンデミックで、パーティを積極的にやる感じでもなかったので。というのも、パーティをやることが許されないみたいな世の中の空気もあったじゃないですか。 FTとしては去年、群馬で一度室内よりリスクの少ない野外をやっただけなんですけど、今年は完全に元通りではないけど、世界的にパーティもDJも活動再開していく流れができつつあるし、この2年間でウイルスに対する認識が成熟されました。個人的にウイルスは今後ついてまわるものだし、今年こそ元通りの生活に戻してよいだろうと考えています。そういう意味で、今年はもう普通に活動しようと。なので、20周年記念はこのタイミングでやらないとなって感じです。

——もともと2001年にパーティを始めたきっかけはなんだったのですか?

DJ NOBU:自分達の遊び場がなかったというか、つまらなかったんですよね。当時、私は27歳。自分にとっては窮屈な遊び場しかなくて、東京もおもしろくなかったし、それだったら自分達が好きでコントロールできて楽しめる遊び場を作ろうっていう。始めた動機はそんなシンプルな感じでした。

——それまではDJ NOBUさんDJをされていたんですか?

DJ NOBU:FTが始まるまでもやってはいたけど、超適当な感じでした。だからFTでDJを始めたようなものです。

——20年を経た、現在のFTはいかがですか?

DJ NOBU:結局、ここ20年くらいで2周したと思うんですよ。もともとD.I.Y.でパーティを始めて、結婚式場やレストラン、ポートタワーだとか、クラブでないところでやっていた時代もあるし。最近はパンデミックでクラブでパーティができにくくなったので、一昨年から野外で再チャレンジをした感じですね。Harukaがすごく頑張ってくれて、野外のノウハウを覚えてくれたし、20年たってまた原点に戻った感じがします。

——2000年代、2010年代を経て、どのような流れでFTは大きくなっていったなと思いますか?

DJ NOBU:最初は千葉でローカルベースのパーティだったけど、今は日本を代表するパーティになったと思いますね。だから海外でも知っている人が多いし、今年は日本以外でもFTをやりたいなと思っていて、昨日はこっちのエージェントとミーティングをしました。いくつか候補に挙がっているクラブがあって、われわれのテクノの美学を世界にも伝えたいというのがありますね。 



——FTに行くと独自の空気感を感じますが、この20年を振り返ってみてパーティはどんな方向でやってきましたか?

DJ NOBU:2001年にどういう経緯でFTが始まったのかっていう、話につながってくるんですけど、私がその時にDJをきちんとやろうと思ったきっかけが、当時、日本ではハウスミュージックがオルタナティヴ化したというおもしろい現象が起きた時だったんです。音楽の考え方や捉え方というか、人から与えられたものじゃなくて、自分達で「こういうことなんじゃないの?」っていう独自の解釈がいいなと思って。当時は大阪の「FOL」や三重の「eleven」とか、同時多発的に一般のシーンからはみ出たパーティが生まれた。それと同時に個性的なDJも現れたけど、われわれみたいな癖の強いDJがプレイする場所があまりなかった。

そんな時代にFTを始めたんだけど、例えば世界的なトレンドがあるとしたら、それに流されずに、別の世界で自分達の好きなことをして音楽をDJで表現したり、何かをやっていくことがすごくおもしろいことに気付いたんですよね。日本でも海外でも世界にはトレンドがあるけど、自分はそこにいるわけではないし、左右される必要もない。この間も私と真逆の今はやっているファストで、1990’sリバイバルスタイルの人気DJとマイアミとロサンゼルスで一緒にやったけど、そこに乗っからないで自分のスタイルを貫いてプレイすると喜ばれる。その時は、僕のことを知らないであろう新しいお客さんもたくさん残ってくれて延長までしたし、そういう意味ではきっとHarukaもスタイルを崩さないと思うので、FTでは私達が好きなテクノをストリクトリーに表現していくというか。それをパーティで形にしてやってきた感じですね。

テクノと共振するような、おもしろい音楽をテクノファンにも紹介していきたい

——わが道を進んできたということですね。FTは表のシーンに対するカウンターをいく、そんな印象があります。

DJ NOBU:もともとはカウンターカルチャーではありますね。さらに今の若い人達は、私達がやっていることに対するカウンターカルチャーをやっているのかなと思うこともありますけど。自分達が理想とするテクノや音楽の魅力をパーティで表現するといいますか。

——テクノというキーワードがでてきましたけれど、FTでテクノをメインにやっていくと意識されたのはいつ頃からですか?

DJ NOBU:私が2006年くらいからテクノを取り入れ始めたのは、「FUNKTION-ONE(ファンクション・ワン)」との出会いがあったからなんですけど、そこに機材やテクノロジーの進化も関係してくるというか。当時、「Micro Office(*宇川直宏が渋谷の地下でやっていたクリエイティブスペース)」に「FUNKTION-ONE」が入っていて、浅田さんという自分が好きなPAがいました。そこでディテールがクリアで、トリッピーでパワーもあって、快楽度の高い気持ちの良いテクノを聴いて、テクノに対する考えが変わったんです。さらにはテクノの進化の仕方が、自分のやりたいことと合致したんですよね。曲に頼らずDJのスキルによって、どういうふうにでも調理することができる、DJ次第でぜんぜん聴こえ方が変わっていく、というテクノの魅力に取りつかれたというか。

——これまでにFTにはいろいろなDJやアーティストの方々が参加されてきたと思いますが、これまでどんな人達を呼んできたと思いますか?

DJ NOBU:2009年くらいからは海外のテクノ系アーティストを呼ぶようになって、さらに自分も2010年くらいから海外へ行くようになって、そこで物事、パーティ、そしてテクノの見え方が大きく変わったかな。テクノの自由さというか。テクノってどうにでもできるじゃないですか。料理をすることと共通することがたくさんある。DJの腕次第でうまくもまずくもなる。なので2009年以降は、電子音楽のおもしろい人やDJ、バンドにしろテクノパーティだけど、さまざまな表現の音楽、テクノ好きの人達が聴いても何か発見があって楽しめるアーティストを呼んできました。例えば、この間はテリー・ライリーを呼びましたけど、そうやって音楽としておもしろいものをテクノファンにも紹介していきたいし、そういう自由度を保ったまま、2009年から最近くらいまでの第2~3期はやってきたって感じですね。

——音楽に対する姿勢や精神面など、呼ばれた方々に共通するものはありますか?

DJ NOBU:精神面はみんなバラバラだけど、音楽に真面目で挑戦的に向き合っている人というのは大前提です。 あとおもしろくて刺激があるのも重要ですね。自分がそう感じなければ呼びたくないし、現場でパフォーマンスしてもらってやっぱりおもしろいなって感じさせてくれる人達ですよね。

昨年、「FUTURE TERROR KAWABA」の時のタイムテーブルも、時間によってパーティ全体を通しての流れとおのおのの役割というか、ここにこの人を挟んだらおもしろいだろうってことを、Harukaとアイデアを出し合って考えましたし。なので精神的なところは特に気にしていないですね。

——第1期の頃は、千葉ですごく良いパーティをやっているという印象が強かったのですが、お客さんはどのような方々がいらっしゃっていましたか?

DJ NOBU:地元の人もだし、普段テクノを聴かない人も来ていたし、いろんな人達、スケーターもグラフィティライターもそうだし、バンド系の人達も来てるし。で、やっぱりなんだろう。今は世界中で問われていますけど、現場がセーフティゾーンであることとかあたりまえにならないといけない。この間、「Nowadays」ってニューヨークの箱でやったんですけど、そこはスタッフもお客さんも多様性の大事さを完璧に具現化していて、ひさしぶりに衝撃を受けました。その場にいる人達で超ナチュラルに秩序が守られている。私にとってはすべて最高で、本当に遊び方の上手な人達が集まっているし。すごくお手本になる場所でした。誰しもが安心して遊べるというか。日本はまだまだ意識が低く、セクハラなどの相談も受けるし、起きたトラブルに対して積極的じゃない場がまだまだ多い印象です。こういったことに対してDJ達も未熟な人が多過ぎて、世界とのギャップに首がもげそうになることもあります。

——2009年あたりに、マルセル・デッドマンがFTに出演していたかと思いますが、DJ NOBUさんにとって大きな出来事でしたか?

DJ NOBU:衝撃を受けましたよ。自分がそれまで我流で模索していたテクノに対して当時のヨーロッパの“主流”を初めて食らいました。だけどそのあたりから自分のスタイルが出てきたのは確かです。

※後編へ続く

DJ NOBU 
DJ/サウンドプロデューサー。「FUTURE TERROR」、レコードレーベル、BITTA主宰。パンク、ハードコアでの活動を経て、2000年初期よりDJをスタート。2001年より地元である千葉市でアンダーグラウンドに根付いたパーティ「FUTURE TERROR」を定期的に開催。2009年以降はDJとして海外にも進出し、日本のテクノシーンを代表する現在は、ワールドクラスのDJとして、各国のパーティやフェスで活躍中。また国内では「FUTURE TERROR」だけでなく、不定期に自身主催のパーティも主催する。サウンドプロデューサーとしても定期的にトラックを制作しリリースを重ねている。
Twitter @dj_nobu_ft
Instagram @dj_nobu_ft

Photography Jun Yokoyama

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