八木皓平, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/yagi-kohei/ Thu, 01 Apr 2021 15:47:35 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 八木皓平, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/yagi-kohei/ 32 32 「東京のほうが良いと思ったら出てくるかも」 NOT WONKが苫小牧で活動を続ける理由 加藤修平インタビュー後編 https://tokion.jp/2021/04/01/not-wonk-shuhei-kato-interview-part2/ Thu, 01 Apr 2021 06:00:16 +0000 https://tokion.jp/?p=25870 北海道・苫小牧を拠点に活動を続ける3ピースバンド、NOT WONKの加藤修平へのインタビュー。後編では、活動拠点となる地元・苫小牧について。

The post 「東京のほうが良いと思ったら出てくるかも」 NOT WONKが苫小牧で活動を続ける理由 加藤修平インタビュー後編 appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>

北海道・苫小牧を拠点に活動を続ける3ピースバンド、NOT WONK(ノット・ウォンク)。加藤修平(Vo.&Gt.)を中心に2010年に結成。2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース以降、そのライヴパフォーマンスでロックファンのみならず、多くのミュージシャンからも支持を集める。

今年1月27日には4枚目となるアルバム『dimen(ダイメン)』をリリース。これまでのUSインディー、メロディック、パンク、ギター・ポップ等をクロスオーバーさせてきた彼らの新たな実験的な試みが感じられる作品となった。

今回、NOT WONKですべての曲の作詞・作曲を手掛ける加藤修平のインタビューを前編と後編の2回に分けてお届けする。前編では、アルバム『dimen』についての話がメインだったが、後編はバンド、そして地元である苫小牧での活動について聞いた。

苫小牧に住むのは、音楽制作が第一だから

――バンドメンバーとはどれくらいの頻度で会っていますか?

加藤修平(以下、加藤):週に1度、リハで会っていますね。週に1回か、隔週くらいで、スタッフ含めたミーティングがもう1日くらいあります。

――けっこう頻繁に会っているんですね。メンバーは全員、今後も苫小牧拠点で活動を続けるんでしょうか?

加藤:そうですね。ただ、今後もずっと苫小牧から出ないかというと、少なくとも僕に関しては、そこまで意固地になっているつもりもなくて。他の2人はわからないですけど、僕は東京のほうがいいとなったらスパっと出てくる気もします。今のところは、東京に住むよりも苫小牧を拠点にしているほうが、メリットがあるという感じがするんです。人と会うんだったら「東京に来ないと」とは思いますけど、僕は音楽を作ることが生活のメインを占めていますからね。作ることだけ考えたら、間違いなく北海道のほうがいいんですよ。やっぱり住みやすいです。僕らの場合、地元のライヴハウスにアンプとか大量に持っていって、機材をまるまる置きっぱなしで占拠してしまっていることもあって(笑)。

――それはすごい話ですね、ふつうそんなことあるのかな(笑)ライヴハウスの一角にNOT WONKゾーンがあるということですよね。

加藤:そうですね。同じことを東京でやったら、いったいいくら掛かるんだろうなと思います。「ELLCUBE」というライヴハウスなんですけど、僕はそこにいつもいるんです。ブースとコントロールルームがあって録音もできるんです。1時間300円くらい払って借りて、そこでミックスしています。

この間、ELLCUBEで働いているエンジニアの先輩に相談しながらライヴ音源のミックスしたりしました。車でライヴハウスまで10分くらいなので、パソコンを車に積んで持っていって。「今日夜行ってもいいですか?」みたいな感じで作業をするというのは、かなりすごいことなんじゃないかなと思います(笑)。

――メリットがあるという感じなんですね。

加藤:そうです。デメリットがないというよりは、メリットがありますね。もし、みんな僕と同じ環境でできるんだったら、楽だと思いますね。機材の運搬のことを考えないで、好きな時にスタジオ代300円を払って使って。

――300円でコントロールルーム借りるってすごい話ですよね(笑)

加藤:値上げして300円なんですよ(笑)。

――良い音楽を作っていれば、東京じゃなくて、苫小牧でいいんだというのは、ローカルで活動しているバンドマンに勇気を与えるかもしれませんね。

加藤:東京に来るということが最初のうちは結構大変だったんですけど、最近は、東京は東京でいいなと思う部分が大きくて。この間、計算したんですけど、苫小牧から新千歳まで車で行って、1時間前に空港に着いて、飛行機に乗って、渋谷のライヴ会場まで、ドアtoドアで5時間くらいなんですよ。関西で活動していて、車に乗って行くのと大変さがそんなに変わらない気がして。飛行機も早くとれば、8000円で行けるし。苫小牧は何もないといえど、ライヴハウスがあって、スタジオがあって、何の気なしに音楽がやれる環境があるというのは、かなり恵まれた環境だなと思います。

東京に来ればレーベルがあって、手伝ってくれるスタッフがいて、今回であればavexという資本主がいて、そのお金を使って移動してというのができる。僕が今も苫小牧を拠点に気持ちよく活動できているのは、それらすべてのパーツがそろっているからということがもちろんありますけど。そういう風にできるんだったら、今の形がいいなと思って。

「苫小牧を代表する」っていう気持ちはない

――苫小牧の音楽シーンについて教えてください。

加藤:「CLUB ROOTS」があって、2年くらい前に「CLUB ROOTS」の斜向かいに、「bar BASE」というバーができたんですよね。一応、Produced by 「CLUB ROOTS」のバーで、「CLUB ROOTS」のラウンジとしての「bar BASE」たいな。そこには30代以上のクラブに通っている人達がいて。ちょっと離れたところに「ELLCUBE」があって、そこにはNOT WONKがいて、後輩のバンドがいてみたいな感じで。僕らも苫小牧でライヴするのは年に1回とかなんで、シーン的なところはそもそも存在していないかも……。昔はあったんですけど、僕がそのシーンにいるバンドをたいして良いと思っていなくても、地理的に近いだけで仲良くしないといけないのは嫌だったので、そんなに一緒にやりませんでした。苫小牧にいる時は、自分らを一個のバンドとしてパッケージするみたいな意識でいたいんですよね。シーンみたいな横のつながりは希薄で、いつも一緒にいるやつとかとは一緒に飲んだり、遊んだりしますけど、共演するより一緒に遊んでいる時間のほうが長いかもしれないですね。

――苫小牧くらいなら何かしらのシーンがあるかなと思ったんですが、そうでもないんですね。あと、加藤さんが苫小牧についてけっこうドライな感じなのが良い意味で意外でした。苫小牧よりも札幌にいるバンドほうが気持ち的に近いとかそういうのはありますか?

加藤:最近は札幌に行っても、一緒にやるバンドはthe hatchとDischarming manくらいですかね。2つとも先輩バンドですけど、かわいがっていてくれていますね。こうやって話していると、僕らが北海道にいるのって、単純にそこで音楽を作っているというだけなのかもしれないですね。もしかしたら、北海道の人が一番NOT WONKというバンドがどういうものなのかわかっていないかもしれませんね。

――NOT WONKはavexと契約して音楽制作をしているわけですが、地理的に遠いことでavexのスタッフとのコミュニケーションで困ったことはないですか?

加藤:コミュニケーションをするということだけでいうと、困ってないですね。メジャー・レーベルはCDを作る会社という認識は本人達にもあるし、最初の話の段階で、「基本的に中身に関しては、加藤くんの好きなようにやって大丈夫です」という話でしたし、僕もそのつもりで契約したので。でも、個人的には、共同制作者的な感じで、誰かと意見をぶつけ合いながら何かを作ったりするということをavexの方とやってみたいと思うことはあります。自分が好きなようにやるのはもちろんありがたいことなんですけど、お互い言いたいことを言いあって、良いアイデアを作るのが人と関わる醍醐味かなと思います。

ソロの活動のSADFRANKとNOT WONKの違い

――『Down the Valley』や『dimen』でかなりプロダクションについて勉強したと思うんですけど、将来的にはプロデューサーもやってみたいという気持ちがあったりしますか?

加藤:やるとおもしろそうだなとは思いますね。ただ、今度、地元のバンドの曲をミックスすることになっているんですよ。あと、まだ発表していないんですけど、この間とあるバンドにギターで参加して、サウンド・プロデュース的なことを少しだけ手伝ってきました。それと、去年自分のソロの活動(SADFRANK)もやるようになって。リーバイスのCMソングを手掛けたんですけど、あれが結構楽しかったんですよね。オーダーがあって作るのもいいなと。僕の頭の中にある楽曲のアイデアは、自分のバンドではやらないこともたくさんあるので、そのネタを無責任に使える感じがいいなと思って(笑)。

――SADFRANKに関してはNOT WONKとの住み分けが気になっていましたんですよね。

加藤:SADFRANKに関しては、日本語で歌おうと思っています。そうなってくると、NOT WONKでOKだったサウンドが、こちらでは全然OKじゃなくなっていくことがすごくありますね。逆もしかりで、NOT WONKで使えなかったものが、こっちだったらOKだなということもたくさんあります。だから、片方で生まれたアイデアがもう片方に流出する感じはないですね。

――日本ではASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さんなんかもそうですが、ロックバンドとソロ・プロジェクトの両方をやっている人がたくさんいますけど、やっぱり全然違うものとしてあるんですね。って当たり前のことを言ってますけど(笑)

加藤:NOT WONKでやる時はメンバーの顔が出てくるというか。誰が演奏するかということがはっきりしているので。おのずとちょっとした制限が外側でかかっていて、その制限の中で作っているという感じがします。逆にソロのほうは、誰が演奏するとか決まっていないので、制限が果てしなすぎて、逆に手がつけられないという感じがありますね。

だからSADFRANKが形になるのは、もう少し時間が掛かるだろうなという感じがしていますね。

――最後に、コロナ禍によって音楽に対する考えが変わった部分はあるかを聞かせてください。

加藤:コロナ禍になって、初めて8月にライヴをしたんですけど、前に比べてライヴをすることが楽しくなりましたね。これまではライヴする時は鼻息を荒くして、よしという感じで気持ちを作っていたんですけど。でも今は、ステージに単純に音楽を聴きに行ったり、観たり、演奏したりすることが純粋にめちゃくちゃ楽しみになっているというのはありますね。追われるものが全くなくなっちゃったというか。急いでもどうしようもない状況になったじゃないですか。コロナになってから、理由はさまざまですが今までのような活動ができなくなってモチベーションが続かずに脱退や解散に至るという話はよくありましたよね。僕はそういうタイプでもなかったんだなと。スタジオに入って、3人で古い曲を演奏しているだけでも全然楽しいなと思いながらやっているので、それがわかって良かったと思いますね。

NOT WONK
2010年結成。加藤修平(Vo.&Gt.)、フジ(Ba.)、アキム(Dr.)からなる北海道・苫小牧を拠点に活動する3ピースバンド。2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース。その後「ライジングサンロック フェスティバル」をはじめ、多くのフェスに出演。2019年6月に3枚目にしてメジャー初アルバム『Down the Valley』をリリース。2020年8月には渋谷WWWXにてワンマンライブ & 配信 イベントを敢行。2021年1月27日に4枚目のアルバム『dimen』をリリースした。
https://notwonk.jimdofree.com
Twitter:@notwonk_theband

4thアルバム『dimen』
収録内容(CD):
1. spirit in the sun 
2. in our time
3. slow burning
4. Shell
5. get off the car
6. 200530 
7. dimensions 
8. interlude 
9. the place where nothing’s ever born 
10. your name
価格:¥2,800

1月27日にNew Album『dimen』をリリースしたNOT WONKが渋谷クアトロにて二部制によるワンマン公演を開催する
■LIVE! : dimen_210502_bipolar_dup.wtf
出演者:NOT WONK
日時:2021年5月2日@渋谷CLUB QUATTRO
第一部:OPEN 14:30 / START 15:15
第二部:OPEN 18:00 / START 18:45
料金:自由席¥4,000(税込・ドリンク代込み)
※送料込み / 当日 未定
チケット販売:NOT WONK ONLINE STORE  
https://notwonk.thebase.in
発売日:2021年3月24日(水) 19:00〜
INFO:03-5712-5227 (エイティーフィールド)
http://www.atfield.net/

Photography Takuroh Toyama

TOKION MUSICの最新記事

The post 「東京のほうが良いと思ったら出てくるかも」 NOT WONKが苫小牧で活動を続ける理由 加藤修平インタビュー後編 appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>
NOT WONKが『dimen』で到達した新境地 進化につながるその実験的試みとは 加藤修平インタビュー前編 https://tokion.jp/2021/03/28/not-wonk-shuhei-kato-interview-part1/ Sun, 28 Mar 2021 06:00:08 +0000 https://tokion.jp/?p=24424 北海道・苫小牧を拠点に活動を続ける3ピースバンド、NOT WONKの加藤修平へのインタビュー。前編では、最新アルバム『dimen』での実験的な試みについて。

The post NOT WONKが『dimen』で到達した新境地 進化につながるその実験的試みとは 加藤修平インタビュー前編 appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>

北海道・苫小牧を拠点に活動を続ける3ピースバンド、NOT WONK(ノット・ウォンク)。加藤修平(Vo.&Gt.)を中心に2010年に結成。2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース以降、そのライヴパフォーマンスでロックファンのみならず、多くのミュージシャンからも支持を集める。

今年1月27日には4枚目となるアルバム『dimen(ダイメン)』をリリース。これまでのUSインディー、メロディック、パンク、ギター・ポップ等をクロスオーバーさせてきた彼らの新たな実験的な試みが感じられる作品となった。

今回、NOT WONKですべての曲の作詞・作曲を手掛ける加藤修平のインタビューを前編と後編の2回に分けてお届けする。前編では、『dimen』での、エンジニアのIllicit Tsuboiの起用や各楽曲で行われた実験的な試みなどについて話を聞いた。

エンジニア・illicit tsuboiの起用について

――『dimen』の大きなポイントの1つに、illicit tsuboiさん(以下ツボイさん)の参加が挙げられると思います。ツボイさんと共同作業した楽曲は「slow burning」以外の9曲ですね。ツボイさんのことを知ったきっかけを教えてください。

加藤修平(以下、加藤): KiliKiliVillaから出たodd eyesのアルバムのミックスをツボイさんがやっていたので、そこで認識しました。その時は、別にツボイさんと仕事がどうのということはあまり考えていなかったんですけど、去年ナタリーでエンジニアの方を特集する連載をやっていて、そこでツボイさんのインタビューを読んだんですよ。その時に、「この人おもしろいな」と思ったのが仕事をしたいと感じた大きなきっかけですね。あと、SUPER STUPIDとも仕事をやっていたということにも引っかかりました。そんな人が、今長谷川白紙さんと仕事をやっていることもあり、話が通じそうだなと。

――ツボイさんに依頼する時に、どのような経緯でアプローチをしたんですか?

加藤:『dimen』は、初期の構想では1曲ごとにエンジニアを変えようと思っていたんですよ。その取っ掛かりの1曲「slow burning」を、前作『Down the Valley』で一緒に仕事をした柏井日向さん(以下、柏井さん)とやっていて、「これからどうやってアルバム制作を進めていこうか」という時に、コロナ禍が始まってしまったんです。スケジュールも予算も大幅に変わっていった時に、この状況で作品をおもしろくできるのはツボイさんしかいない、という感じになりました。仕事の流れとしては、基本的に僕がデモをガッツリ作って、それをツボイさんにお渡しして、ミックスをディスカッションしながら進めていきました。

――コロナ禍があったために、もともとの構想から方向転換して、ツボイさんに依頼するという流れになったと。ミックスはやはりリモートでのやり取りだったのでしょうか?

加藤:ミックスは立ち会いで、1週間くらいスタジオに籠ってやっていました。2020年の11月末に録音を初めて、12月の1週目くらいで共同作業は終わりました。一緒に作業した期間は短かったですけど、毎日一緒にいたみたいな感じです。

――ツボイさんは、短期集中で依頼主と一緒に仕事をするスタイルなんですね。

加藤:いえ、基本はツボイさんが自分でやって、ミックスも時間をかけたくないタイプのようです。でも、僕は、僕なりのビジョンがあるので、自分で言いたいタイプなんですよね。ツボイさんに頼んだ理由としても、ナタリーの連載の中で、「オーダーがあるバンドとは一緒にやらない。こういう音にしたいというのがあると受けない」というのを見て、じゃ一緒にやったらどういうふうになるのか。僕の作ったものをぶつけてみたら、どのように思うのかという好奇心が湧いてきました。もっと意見が衝突するかと思ったんですが、ツボイさんが紳士的な方なので、いい感じに意見を交換しながらできましたね。

――『dimen』を聴いて、いつも通りツボイさんの色が出ているなと思ったので、意見交換しながらやったというのは少し意外でした。

加藤:みんな、「ツボイさんのプロデュースが効いているな」と思っているかもしれないですけど、サウンドのコンセプトは、僕がもともと目指していた方向性とそんなにズレがないです。ツボイさんとの作業も大事だったんですけど、『dimen』のサウンドには柏井さんと仕事をしたことの影響があるんですよね。「slow burning」は2020年の3月に録って、柏井さんとのミックスが終わったのが10月なんですけど、そこでのミックスについてのやりとりの中で、ポストプロダクション的なサウンドの突き詰め方みたいなものをけっこう勉強しました。この曲は、音響的なところを実験したくて、「これをやったらこうなるのか」というのをひたすらミックスで試していくというのをやりました。だからこの曲はアルバムの中で一番デコボコしていると思います。それを出発点にデモを作って、「ツボイさんの時はこういうふうにしよう」という流れだったので、自分が持っていた方向性にツボイさんのカラーを足したという感覚のほうが大きいですね。

――サウンドには加藤さんと、ふたりのエンジニアそれぞれとの相乗効果が現れているということなんですね。ツボイさんが「自分のこういうところと波長が合ったんだろうな」という部分はありますか?

加藤:ツボイさんとはスタジオで会ったのが初めてだったんですけど、ミックスのタイミングで「いわゆるちゃんとした音はおもしろくないですよね」という話をしました。楽器のキャラクターとか、部屋鳴りのキャラクターとか、声のキャラクターを活かす方向で考えると、バランスは二の次、三の次になりますよね、みたいな話で、そこは波長が合いました。

――ツボイさんと柏井さんはかなりタイプが違いそうですよね。柏井さんのエンジニアリングについて教えてください。

加藤:柏井さんは基本的にNOT WONKの音を好きでいてくれているんですよ。僕とフジ(ベース)とアキム(ドラム)が演奏するのを、そのまま録ることができればかっこいいと思ってくれているんです。ただ、個人的にはそのままだと、今の自分達からはみだせない感じがありました。「slow burning」を録る段階でも、そういう認識のズレをなくしていくところにちょっと時間がかかりました。逆に言うと、ツボイさんはバンドの印象がなく、僕が今回お渡ししたデモの印象が最初の印象だったと思うので、そういう意味ではやりやすかったです。

「1回やったら同じことはやらない」のがルール DTMにも挑戦

――デモを作っていたのはいつ頃ですか?

加藤:「200530」という曲はデモを作った日のファイル名になっていて、その日に作っています。夏の間は、曲を作っていなくて。10月いっぱいでデモを作成しました。曲自体はあったので、それをまとめる作業に1ヵ月かかったという感じですかね。実は、今回のアルバムの最後から2番目の「the place where nothing’s ever born」や「dimensions」は5年くらい前からあった曲なんです。前作の『Down the Valley』というアルバムを作った時は収録曲の倍くらいのデモがあって、それに入らなかった曲をけっこう入れているんですよ。『Down the Valley』は脚色をあまりせずに3人で演奏できるものを作ることがテーマの1つだったので、前作では弾かれた曲が『dimen』に入ってきています。だから新作は脚色が必要な曲が多かったという感覚がありますね。

――そうなると『dimen』は、3人で演奏することにフォーカスしなくなったということになりますが、それはコロナ禍の影響でしょうか?

加藤:コロナ禍というよりも、自分の中で「1回やったら同じことはやらない」というルールがあるので、『Down the Valley』の逆をいったというところです。2019年に『Your Name』というイベントやった時に、「your name」を苫小牧で録音したんですけど、それも最初から3人で演奏せず、女性のコーラスも入れて、自分でピアノを弾いて、ギターもいっぱい重ねて、というのをやっていました。だから、コロナになる前から「次はこっちだな」というのが2019年の夏くらいからあったという感じですね。

あと、『dimen』はデモを作るにあたって、DTMソフトを使用したのも大きいです。『Down the Valley』の時は、ギター1本弾き語りで作っていたんですけど、それとは作り方が全然違います。だからDTMのトレーニングを合わせると、『dimen』の制作には2年くらいかかっているかもしれません(笑)。

――ギター1本弾き語りからDTMソフトの使用というと、その間、バンドでジャムって作っていたということもしなかったということでしょうかね。

加藤:そうですね。もとからNOT WONKはバンドでジャムって作ることを一切しないので。ただいつもと違うところでいうと、「spirit in the sun」は、オケだけ全部作って歌を最後に起こしたというのはやりました。今までは歌ありきで全部作っていたので、その方法は初めてかもしれません。いわゆるギター&ボーカルの感じになったら嫌だなと思って。それを解除するために、全部ギターのフレーズを考えて弾いちゃってから歌うほうがいいなとその時思ったんですよね。

――加藤さんにとってのギター&ボーカルのノリというのはどういうものか教えてください。

加藤:基本的には、ストロークのアタックと歌のアタックが一緒になることじゃないですかね。そういうふうにならないようにしたかったんです。あと、僕はジェームス・チャンスがすごく好きで、「spirit in the sun」ではああいうフリーキーなギターをやりたかったので、それをやろうと思うと、歌とギターがある程度分かれていて、歌はベースとドラムの仲間みたいな感じでいたほうが作りやすかったというのもあります。

「バンドにとって課題がないのがストレス」

――『Down the Valley』からリズムが多彩になっていったじゃないですか。あのあたりから、バンドに対して求める技術レベルが高くなっていきましたよね。

加藤:そうですね。基本的にはみんな練習が好きなので、課題がない状態が一番バンドとしてはストレスなんですよ。僕ができないような難しいフレーズを持っていくと、「え〜」と言いつつも、次の週にはできるようになっているみたいなことがけっこうあり、それが楽しかったです。僕らの場合、曲のテーマというのは「ゴーストをきれいに叩く」とか、「裏の感じを感じつつ、音符の長さを大事にする曲」とか「テンポがハーフになって、めちゃくちゃ遅いんだけど、ちゃんとシャッフルする曲」とか、演奏のイメージが大きいんですよね。

――新作に影響を与えた音楽家がいれば教えてください。

加藤:挙げだすとキリがないですけど、例えば「in our time」はザ・バーズ、「slow burning」と「spirit in the sun」がフランク・シナトラ、「the place where nothing’s ever born」がシンディー・ローパーですね。

――シンディー・ローパーからの影響っていうのはイメージできていなかったので、面白いですね。

加藤:まず、ピシっとした8ビートの曲というのは、実は「the place where nothing’s ever born」しかないんですよね。8ビートとか4ビートというのは普通にやるとめちゃくちゃ普通になってしまうので、本来は使いたくなかったんです。でもそこであえて「8ビートはかっこいいよねということをちゃんとやる」というのは、どういうことなのかとみんなで考えたんです。『dimen』は「グルーヴすること」を念頭において作ったアルバムなので、「全くグルーヴしない」というのも、一周回っておもしろいなと思って。8ビートは「グルーヴしない」ことが可能なビートなので、ベースもギターもEDITしまくって作っていったんですよ。そしたら「これは80sっぽいな」と思うものができて、そこでシンディー・ローパーが参照に出てきたんです。

――「200530」についても聞かせてください。これはツボイさんと仕事していないとできないような曲だなと思ったんですけど、これもディスカッションの中でボーカルを小さくしていくことになったという感じですか。たぶん、最初はもうちょっと大きかったですよね?

加藤:最初はもう少し大きかったんですけど、僕のデモだと引っ込んでしまっていたという感じだったんですよね。でもツボイさんのようなちゃんとしたエンジニアの方がやると、歌はちゃんとするんです。めちゃくちゃにやろうしても、ある程度歌の帯域は残っているので、隙間があるというか。ツボイさんのモニターで、爆音でプレイバックするんですけど、サブウーファーもちゃんと鳴っていて、その辺のクラブより音がでかいみたいな。そうやって聴いていってボーカルが小さくなっていったという感じです。ミックスは深夜の作業だったので、深夜テンションの悪ノリもあります(笑)。

――『dimen』をリリースして、今どのように感じていますか?

加藤:先週、メンバーと「もうちょっとバンドっぽい曲やりたいよね」という話をしていました。「バンドっぽさってなんなんだろうな」ということをアルバムを出して以降から考えていて。バンドで演奏するというのは、要はグリッドがないじゃないですか。それをもうちょっと曲のアレンジに反映させたいなと思っていて。『dimen』はDTMソフトで作ったというのもあって、「spirit in the sun」は如実ですけど、違うブロックが並んでいる構成になっていますよね。それはそれでおもしろさがあるんですけど、3人で演奏するんだったらそれなりの流動性があるようなことを次はやりたいねという感じですね。

後編へ続く

NOT WONK
2010年結成。加藤修平(Vo.&Gt.)、フジ(Ba.)、アキム(Dr.)からなる北海道・苫小牧を拠点に活動する3ピースバンド。2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース。その後「ライジングサンロック フェスティバル」をはじめ、多くのフェスに出演。2019年6月に3枚目にしてメジャー初アルバム『Down the Valley』をリリース。2020年8月には渋谷WWWXにてワンマンライブ & 配信 イベントを敢行。2021年1月27日に4枚目のアルバム『dimen』をリリースした。
https://notwonk.jimdofree.com
Twitter:@notwonk_theband

4thアルバム『dimen』
収録内容(CD):
1. spirit in the sun 
2. in our time
3. slow burning
4. Shell
5. get off the car
6. 200530 
7. dimensions 
8. interlude 
9. the place where nothing’s ever born 
10. your name
価格:¥2,800

1月27日にNew Album『dimen』をリリースしたNOT WONKが渋谷クアトロにて二部制によるワンマン公演を開催する

■LIVE! : dimen_210502_bipolar_dup.wtf
出演者:NOT WONK
日時:2021年5月2日@渋谷CLUB QUATTRO
第一部:OPEN 14:30 / START 15:15
第二部:OPEN 18:00 / START 18:45
料金:自由席¥4,000(税込・ドリンク代込み)
※送料込み / 当日 未定
チケット販売:NOT WONK ONLINE STORE  
https://notwonk.thebase.in
発売日:2021年3月24日(水) 19:00〜
INFO:03-5712-5227 (エイティーフィールド)
http://www.atfield.net/

Photography Takuroh Toyama

TOKION MUSICの最新記事

The post NOT WONKが『dimen』で到達した新境地 進化につながるその実験的試みとは 加藤修平インタビュー前編 appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>