古川琴音 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/古川琴音/ Fri, 19 Jan 2024 04:51:16 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 古川琴音 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/古川琴音/ 32 32 ホラー映画初挑戦の古川琴音が『みなに幸あれ』で感じたこと 「現実をより理想に近づけるにはどうしたらいいかっていうのは常に考えておくべき」 https://tokion.jp/2024/01/20/interview-kotone-furukawa/ Sat, 20 Jan 2024 03:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=222231 映画『みなに幸あれ』に出演する俳優の古川琴音へのインタビュー。

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古川琴音

古川琴音
1996年10月25日生まれ、神奈川県出身。2018 年にデビュー。NHK 特集ドラマ『アイドル』(2022年 / NHK)、連続テレビ小説『エール』(2020年 / NHK)、『コントが始まる』(2021年 / 日本テレビ)や、映画『十二人の死にたい子どもたち』(2019年 / 堤幸彦監督)、『花束みたいな恋をした』(2021年/土井裕泰監督)、『偶然と想像』(2021年 / 濱口竜介監督)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022年 / 三木孝浩監督)、『スクロール』(2023年 / 清水康彦監督)、Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』(2023年)、『雨降って、ジ・エン ド。』(2024年公開予定/髙橋泉監督)など、注目作品に続々登場している。
http://www.humanite.co.jp/actor.html?id=39
Instagram:@harp_tonehttps://www.instagram.com/harp_tone/

日本で唯一の、ホラージャンルに絞った一般公募フィルムコンペティション「日本ホラー映画大賞」(主催:KADOKAWA)。第1回大賞受賞作品である下津優太監督の『みなに幸あれ』が古川琴音主演で映画化され、1月19日から全国で順次公開されている。「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」という命題を、とある村を舞台にしたホラーとして描く本作。古川は村の特異な成り立ちにあらがい、行動を起こすが、どんどん追い込まれていく主人公を演じている。作品ごとに全く違う表情を見せてくれる古川琴音の魅力は、自身にとって初のホラーとなる本作でも健在だ。彼女の瑞々しい演技の秘密や、ホラー映画の醍醐味、作品のテーマについて聞いた。

※記事内には映画のストーリーに関する記述が含まれております。

『みなに幸あれ』を終えて

——今回の主演映画『みなに幸あれ』で改めて、古川さんのお芝居の魅力は表情の瑞々しさにあると実感しました。古川さんは「表情の演技」に関して意識していることはありますか?

古川:「表情を作ろうとしないこと」は大切にしています。

——『みなに幸あれ』で、田舎に暮らす祖父母の家に遊びに行く「孫」役を演じています。祖父母の奇妙な言動に覚えた違和感や、開かずの間にいる誰かの気配などが、恐怖に変わっていくわけですが、「孫」をどういう人物と捉え、どう演じましたか?

古川:「孫」は、本当にごく普通の感覚を持っていて、作品の中でお客さんが唯一共感できる人。普通であればあるほど周りの人が異様に見えてくると思いましたし、「孫」という役名に普遍性を感じたので、特に「こういう人」という役作りはせず、「これから何が起こるんだろう?」という気持ちで現場にいました。

——作品を拝見して、「これはどういうこと?」という謎や疑問がたくさん残っています。それをああだこうだ考えることが楽しいのですが、古川さんは現場で監督に、それらの答えを求めましたか?

古川:私も確か、「おばあちゃんはなぜ妊娠したんですか? それは生贄と関係ありますか?」と聞いたと思うんですけど、「自由に考えてください」みたいな反応でした(笑)。「孫」は何が起きているのかがわからない役なので、「わからないままやってください」と。

——わからないまま出したものが正解かどうか、不安や迷いはなかったですか?

古川:なかったです。私はとにかくリアクションだけをしていました。監督もその「わからない表現」を受け入れてくださる方だったので。わかって何かを作ろうとするよりも、わからないまま、その時感じた表情が出ればいいということなんだろうなと解釈しました。

——下津優太監督はどんな演出をされる方でしたか?

古川:監督は今回長編が初めてということで、いろいろ実験されてたのかなという印象がありました。そのシーンのシチュエーションを役者に知らせないで撮ろうとしたり。私が叔母の家に行って吊るしてあった布を取り外すシーンでは、布の後ろに何が置いてあるかはずっと内緒で、本番で初めて「あれ」を見たんです。そういうサプライズ的な演出で生まれるリアルなものを大切にされているなと感じました。

——役者として、そういう演出はどうでしたか?

古川:たくさんの発見がありました。自分が想像もしなかった反応が出たなと思う部分もありましたし……楽は楽でした(笑)。何も準備せず、周りに反応していればいいだけだったので。監督が、私が驚ける環境や怖がれる環境を作ってくださったおかげで、本当に楽でした。でも、体力的にはどんどん消耗していきました(笑)。泣いて叫んで逃げて怒ってびっくりしてという、感情表現にものすごく体力を使ったので。

——古川さんは89分間ほぼ出ずっぱりでしたよね。どうやって体力を回復させましたか?

古川:回復しなかったです(笑)。美味しいものはたくさん用意していただいていたんです。地元(ロケ地の福岡県田川郡)の方が用意してくださったイノシシ鍋とか、みんなでいただきました。今回スケジュールが順撮りだったので、体力が消耗していく様をそのままお芝居に生かせたんですね。だから「回復しなくてもいいや」って(笑)。

——ということは完成した作品を観て、「こんな表情をしていたんだ!」という驚きがありそうです。

古川:あります。叔母の家を飛び出して山の中で雨に打たれるシーンの表情は、自分でも結構好きです。体力が結構ギリギリの状態で、本当に寒くて寒くて、何も考えてなかったんですよね。自分に限界が来ていることが、ちゃんと顔に出てるなって(笑)。物語ともマッチしてるし、すごく真実味のある表情だったので、好きだなと思いました。

——つまりは「作為のない表情」ですね。

古川:毎回そうなればいいなと思いながらやってます。

——今作に限らず、古川さんが現場でお芝居をする時に大切にしてることを教えてください。

古川:カメラ前ではすべて忘れること、ですかね。自分の中に「こういう流れになったらいいな」みたいなイメージはあるんです。物語の軸としてそういうものをちゃんと持ちつつも、感情の面では相手の俳優と作っていく、相手に委ねる、相手の反応を見ながらその時に自分に湧き上がった感情に素直になる。それは忘れないようにしたいと思っています。

演技への思い

——本作のタイトルにちなみ、古川さんが幸せを感じる瞬間を、プライベート編と仕事編で教えてください。

古川:プライベートだと、家に帰ってきて猫がお出迎えしてくれた時! 毎回来てくれるんですよ。「ただいまー!」「疲れたよ〜」って言う私を癒してくれるので、すごく幸せです。仕事だと、出演作品を観た人から連絡をもらった時もそうだし、お芝居をしながら無になれた時。その時は無我夢中なんですけど、後から「あの時は楽しかったよね」って思います。さっきお話しした雨に打たれたシーンもそうだったんじゃないかなと思います。

——仕事において、目標や夢はありますか?

古川:実はあんまりないんです。

——そもそもこの世界に入った時は、「お芝居を仕事にしたい」ということだったんですよね?

古川:はい。就職活動の一環で自分の得意なことを探していった結果、「人からお芝居を褒められることが多いということは、得意なのかな」と思って、この仕事をやってみようかなって。でもまさか本当にできるとは思ってないから、「ドラマに出れたらいいな」「主演作とかできちゃったりして!」みたいな気持ちだったんですよね。今回の映画も含めてあの時の憧れみたいなものは叶えられてきているんですけど、その先のことっていうのはあまり考えられていないというか。自分がやりたい作品があったとしても必ずしもできるわけじゃなくて、ご縁だと思うので、あまり考えないようにしている部分もあります。

——古川さんはデビューしてまだ5年なんですね。もっと昔から見ている感覚でした。

古川;嬉しいです。ありがとうございます。

——この5年間を振り返ると、あっという間でしたか?

古川:6年目に入ったんですけど、小学1年生が小学6年生になると考えると、「え、もうそんなに経った?」みたいな感じです。デビューした時と気持ちはあんまり変わってないですし、まだまだ新人の気持ちです。でも確かに、最近若くて新しい子がたくさんいるなーとか思ったり(笑)。

——デビューした時の気持ちとは?

古川:ワクワク感、ですかね。ありがたいことに、今のところ同じような役も内容がかぶった作品もないと思ってるので、「次はどういうものが来るんだろう?」というワクワク感がずっとあります。

——「1本1本が勝負だ!」という緊張感みたいなものはありますか?

古川:勝負というよりも、1本1本実験をしている感覚が強いです。お芝居って正解もなければ間違いもないから、自分の中で毎回いろんなお芝居を試している感じです。「もうちょっとキャラクターに振ったらどうなるかな」とか、「ここの動きをいつもは自然体にやってたけどあえてポーズを決めたらどうなるかな」とか、細かいことなんですけど、そういう実験……というか「工夫」を繰り返しています。

『みなに幸あれ』が描くテーマ

——ホラー作品は普段ご覧になりますか?

古川:観ます。『パラノーマル・アクティビティ』とか『コンジアム』、最近だとNetflixの『呪詛』を観ました。日本映画に限らず、いろいろ観ます。

——古川さんが思うホラーの面白さとは?

古川:何なんでしょうね……。私は、意味がわからないものが怖いなと思うんです。「こういう原因があって、この恨みが発生したんだよね」っていう話よりも、「なんでこれがここにあるのかわからない」「なんでこの人がこんな動きをしてるのかわからない」のほうが怖いと感じるんです。好奇心というか、怖いもの見たさの気持ちが、自分にとってのホラーの醍醐味かなと思ってます。

——『みなに幸あれ』は「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」というテーマを、「生贄」というホラー的なアイテムを使って表現しています。古川さんはこのテーマについて、今現在どのような考えを持っていますか?

古川:最初にこれを言われた時、「すごい嫌なこと言うな」と思ったんです。見ないように生活できてるだけで、見ようと思えばいくらでも身の回りにあふれてることかなと思うんですよね。私は「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」と認めたくはないし、そういう世界になってほしくないという願いがあるからこそ、これを言葉にしてほしくなかったなとは思いました。でも、言葉にしたからこそ、向き合わざるを得ないという気持ちにもなりましたし、そこでいろいろ考えさせるところがこの映画の面白さだなと思いました。監督がいろいろな答えを散りばめてくれているなとも思います。

——目、耳、口を縫い合わされる描写がありました。それはつまり、「見ざる言わざる聞かざる」ということで、大人になったら自分を殺して社会の歯車になりなさい、という圧力も意味しているのかなと思いました。「孫」はちょうど、看護学校を卒業して社会に出る直前だったので。

古川:あ、なるほど。「孫」はそれに反発してもがくじゃないですか。そこに私はすごく共感できました。自分がもし同じ状況になったとしたら、同じようなことをするだろうなと思います。

——監督はおそらくこのテーマを「こうである」と押し付けているのではなく、問題提起していると感じました。孫の幼なじみの父親が、「みんながみんな自分の夢だけを追いかけたら世の中成り立たない」と言うと、幼なじみが「でもみんなが幸せになる方法もある」と言い返しますし。

古川:それはこの物語における理想の部分だなとは思いました。絶対に自分の中に持ってなきゃいけない部分でもあると思うんですよね。現実を見つつも、理想を掲げて、現実をより理想に近づけるにはどうしたらいいかなっていうのは常に考えておくべきことだと思っているので。みんながみんな一緒の意見じゃなくてもいいけれど、私はその気持ちは持っていたいと思ってます。

Photography Takuroh Toyama
Styling Makiko Fujii 
Hair & Makeup Yoko Fuseya(ESPER)

ドレス ¥99,000、ブーツ ¥165,000(ともにサカイ/sacai.jp)、アクセサリー(mamelon/@mamelon

■映画『みなに幸あれ』1 月19日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

■映画『みなに幸あれ』
1 月19日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

出演:古川琴音 松大航也ほか
原案・監督:下津優太 
総合プロデュース:清水崇 
脚本:角田ルミ 
音楽:香田悠真
主題歌:「Endless Etude (BEST WISHES TO ALL ver.)」 Base Ball Bear
製作:菊池剛 五十嵐淳之
企画:工藤大丈 
プロデューサー:小林剛 中林千賀子 下田桃子
製作:KADOKAWA ムービーウォーカー PEEK A BOO 
制作プロダクション:ブースタープロジェクト 
配給:KADOKAWA
©2023「みなに幸あれ」製作委員会
https://movies.kadokawa.co.jp/minasachi/

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映画『偶然と想像』濱口竜介監督インタビュー 実在世界とフィクションの境界と、「聞く」と「開く」の往還からあらわれるもの https://tokion.jp/2021/12/17/ryusuke-hamaguchi/ Fri, 17 Dec 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=83129 カンヌで日本映画史上初の脚本賞を受賞するなど、世界的評価を高め続ける映画監督・濱口竜介。12月から全国公開が始まった最新作『偶然と想像』の制作哲学に迫る。

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世界三大映画祭においてもその存在感を確固たるものとし、国際的な評価を高め続ける映画監督・濱口竜介。カンヌ映画祭にて日本映画史上初の脚本賞受賞作に輝いた『ドライブ・マイ・カー』に続き、第71回ベルリン国際映画祭・銀熊賞受賞作『偶然と想像』がこの12月から日本全国で順次公開となる。濱口初の短編集作品となる今作は、親友である2人の女性の軽快な恋愛トークから幕を開ける「魔法(よりもっと不確か)」(出演:古川琴音 他)、作家・大学教授と教え子の研究室での会話を基軸とする「扉は開けたままで」(出演 : 渋川清彦 他)、高校の同窓会のために帰郷した女性に訪れる20年ぶりの再会を描いた「もう一度」(出演:占部房子 他)の3編の物語からなる。シチュエーションはさまざまながら、そこに通底し観る者を惹き込むのはタイトルに冠された「偶然」であり、それは「想像」と表裏一体のものであるのだと、濱口は述べる。今作はどのように紡ぎあげられたのか、その背景にある制作哲学を探る。

※文中に一部作品の構成・内容に触れる箇所があります。

短編を撮ることで生まれる映画制作の好循環

──『ハッピーアワー』(317分/2015年)や『ドライブ・マイ・カー』(179分/2021年)など、長尺の長編作品で知られる濱口監督ですが、濱口さんにとって短編というのはどういった存在ですか?

濱口:製作者としては、長編と同じくらい重要なものと考えています。というのも、長編は単純に物量として非常にコストがかかりますから、時間も気力も使います。一方で、短編は始めるのがより簡単な分、負えるリスクも大きくなるというか、チャレンジしたいことに挑戦しやすくなります。それは次の長編の準備にもなりますし、逆に前に撮ったものの復習みたいな役割を果たす場合もあります。実際に、『ハッピーアワー』と次の長編『寝ても覚めても』(2018年)を作る間に、『天国はまだ遠い』(2016年)という短編を撮ったのですが、このことがすごく良かったんです。今回始動した短編のプロジェクトは、その好循環のサイクルを自分の映画作りの中でちゃんと確立できないかという試みでもあります。

──今回は、久しぶりの完全オリジナル脚本という点もファンとしては期待が膨らみます。短編を7本作るという企画段階で共通のテーマを「偶然」に決めたそうですが、実際の脚本はどのように書かれたのでしょうか?

濱口:基本的にはごく普通で、まずあらすじみたいなものがあって、次はそのあらすじを「箱書き」といって、「こんなことがあって、こんなことがある」というふうに場所ごとに分割していくんですけど、今回はその場所ごとのシーンがとても長いので、その中でもいろいろなうねりがありました。その箱の中(場所)のシーンをダイアローグで書いていく過程はけっこう行き当たりばったりというか、探り探り書いていく感じですね。そして、その「箱」で起こるべきことが「起きた」と思ったら、次の場所に行きます。

『偶然と想像』予告編

──濱口さんの脚本では、現実では思っていても言わないようなことを、あるキャラクターに敢えて言わせて、関係性に変化が起きるという展開が必ずあると思います。今回も、第1話でいうと、古川琴音さん演じる芽衣子がある男性のところに行った時のやり取りがまさにそうです。

濱口:箱書きの時点で想定しているところとしては、アンリアルなところに行きたいというか、「いやいや、そんなことないだろ?」というようなことを、「でも、あるかもな」と思わせるところまで最終的には持っていきたい。そのためにはある程度リアリティも大事になってきますから、例えば、芽衣子というキャラクターがめちゃくちゃで、一見、常識外れな人物に思われるかもしれないけど、芽衣子は単にめちゃくちゃやればいいというわけではなくて、彼女には彼女なりの行動原理があるんだろうなという想定のもとに書いていきます。

──それが実際に「あり」になるかどうかは、役者さんとの本読みで探っていくのですか?

濱口:そうですね。正直自分では、「これで大丈夫かな?」って思いながら書いているところもあります(笑)。やっぱり生身の役者さんがいることは大きくて、フィクションを現実に落とし込んでいくプロセスとして、最近自分は「本読み」(※)をしているんだな、ということに自覚的になってきました。この短編3作は、『ドライブ・マイ・カー』を撮影する前だったということもあって、『ハッピーアワー』から取り組んできた本読みというものがどの程度機能するのか、その精度を上げていこうという意図もあってやっていました。

※(注) 濱口監督がリハーサルで重要視している本読みは、ジャン・ルノワールが晩年に採用したと伝えられる“イタリア式本読み”に着想を得たもので、一切ニュアンスや感情を込めずに台詞を読み、俳優から「自動的に言葉が出てくる」まで繰り返すという方法。その際に俳優から違和感などが出たら適宜台詞を変更していくが、リハーサルで読みを完成させるのではなく、撮影が始まっても随時調整を重ねていくという。今回は、1話について1週間から10日ほどかけて、ひたすら俳優たちと脚本を読み合わせた。

─個人的には、芽衣子の言動は全然ありというか、理解できるものでした。でもそれは、その前の10分近いタクシーのシーンでのつぐみとの自然な会話があるからこそ、信じられたのかもしれません。

濱口:そうなんです。ああいう親友同士のガールズトークのようなすごく自然なものがまずあって、その現実を1つ捲るとフィクション的な状況が待ってるという構造にしています。でもその表面と心の奥底の矛盾というのは、意外と誰しもが現実で抱えているものなのではないかという気がしなくはない。そして、フィクションというのは、何がしかそこに訴えかけていくものなのではないかという気がしています。

──脚本段階では、第1話は「噂の男」というタイトルだったそうですが、最終的なタイトル「魔法(よりもっと不確か)」は、抽象度が増して数段魅力的に響きますね。

濱口:これは結果的に芽衣子が言う台詞から採用しました。撮りながら、やっぱりこれがこの話のパンチラインだなと(笑)。

──最初はつぐみから発せられた「魔法」の意味を、芽衣子がだんだん反転させていくところが素晴らしいです。

濱口:ありがとうございます。芽衣子というキャラクターは本当に難しい役だったと思いますが、普通の女子みたいなところから、恐ろしいなこの人というところまで、古川さんが見事に演じてくれました。

──第1話の最後には、観客をあっと驚かせる、撮り方の「魔法」とも言うべき仕掛けもあります。

濱口:あそこはカットを割ってしまったらよくあるシーンになってしまうので、見ている観客の感覚としてより曖昧さが強くなるような方法として採用しました。考えればすぐ分かるちょっとしたことなんですが、楽しんでもらえると嬉しいです。

実在する世界とフィクションの境界面にあるもの

──第2話「扉は開けたままで」では渋川清彦さんが大学教授・作家を演じられています。これまでの渋川さんであまり拝見したことのないような役柄でした。

濱口:渋川さんとご一緒するのはこれで4回目だと思いますが、基本的にはちょっと乱暴者な役が映える方なんですよね。でも4回目となるとちょっと違う役も振りたいという気持ちもあったのと、自分も渋川さんもいろいろ時間を重ねてきて、今だったらこういう役も説得力をもってやれるんじゃないだろうかと思ってお願いしました。でもこの役も、やっぱり渋川さんの人間的な魅力というか、核の部分みたいなものがあるからこそ成立する役だったと思います。

──第3話「もう一度」の占部房子さんと河井青葉さんも、これまでに度々お仕事をされていますが、渋川さん含めて、3人とも今回のような本読みをされたのは初めてだったのではないでしょうか?

濱口:そうですね。「濱ちゃん、今はこんなことやってるんだ」と言いながらも(笑)、楽しんでくれたと思います。通常の現場では、呼ばれて、「こういう役で、この衣装で」となって、本番になったら「ここでこういう台詞を言ってください」というふうに始まることが往々にしてあるので、役者さんにとっても、リハーサルに時間をかけられるということ自体が貴重といいますか、これは今回どの役者さんも言ってくださったことですけど、1つの役にこれだけ時間をかけて接するというのは、あまりない機会ということでした。

──短編集のテーマを「偶然」に決めたのと同じように、製作の面では「時間をかけて撮る」ことを大きなテーマとして掲げられたそうですね。

濱口:はい。(初の商業映画であった)『寝ても覚めても』を監督してみて、みんなこんな短い時間で撮ってるのかと驚いたんです。プロデューサーには「これでもかなり確保したんですよ」と言われましたが(苦笑)、こんなにも早く物事が進んでいくのかと。もちろん、たくさんスタッフがいるのでシステマティックに進んでも撮ることができるという面はあるんですが、その前の『ハッピーアワー』は2年ぐらいかけて作っていたりするので、時間感覚が全然違ってきて、自分がこの環境でずっと良いものを作り続けるのはなかなか大変じゃないかと思ったんです。『ハッピーアワー』はかなりインディペンデントな制作体制でしたが、そういう現場を手放すのは自分にとって良くないなという危惧があったので、この短編の企画も、『ハッピーアワー』のプロデューサーである高田(聡)さんに脚本を送ったことから始まりました。

──今回3話をまとめた短編集のタイトルは『偶然と想像』となっています。当初からあった「偶然」という共通のテーマに加えて、「想像」という言葉はいつ出てきたものでしょうか?

濱口:おっしゃるように、まず「偶然」というテーマがありました。この3話の脚本を書き上げて、おそらく第2話を撮り終えた頃に、これは、想像力というのも共通のテーマになっているなと気づいたんです。偶然と同じように想像力にもいくつか種類があって、例えば第1話のように、ある偶然があって、「ああだったら、こうだったら」と考える想像力がありますよね。それとは別に、もっと精度の高いフィクションを構築するタイプの想像力というのがあって、そのことが3話に共通するなと思ったので「想像」という言葉を入れました。「偶然」と「想像」は、考えれば考える程つながっている気がするというか……。

──それはどのようなつながりですか?

濱口:まだしっかりと言語化できているわけではないですが、1つ言えるのは、実在する世界とフィクションの境界面みたいなところに、「偶然」も「想像」もあるのではないかということです。想像というのは、ないから想像するという側面がありますが、偶然の方は、稀な、ほとんどあり得ないことなんだけど確かにあることなんですよね。つまり、偶然はその境界面の「ある」側の方に、想像は「ない」側の方にあって、その現実とフィクションを取り違えさせる、あるいは超えていくために、この2つは表裏一体の役目を果たしているんじゃないかと考えているところです。

聞くことと開くことがもたらす奇跡の交感

──『ハッピーアワー』以降、ここ何作かの濱口さんは、自分を開いていくということ、もしくは傷なり痛みを分かち合うことで他者とつながるということを、一貫して描かれていると思います。

濱口:そうですね。

──実際、自分を他者へ開くということは、ある種の賭けといってもいい行為だと思いますが、今回は、第2話で提示されたその真のテーマが、第3話でより具体的な形となって結実します。興味深いのは、第3話で起こる奇跡のような交感が、作中のキャラクターである夏子とあやが、自分とは別の人物を「演じる」ことを通して生じることです。

濱口:やっぱりある種の欲望や欲求というか、「こうでありたい」と思うことが、すべての核にはなっていると思うんですね。欲しいものがあるからないものを想像する、あるいはそれを手に入れたいからウソをつくとか。そういうことを含めて想像の役割だと思いますが、本当に欲しいものを現実のものにする時に、やっぱり自ら飛び込んでいく必要がある。そして、その飛び込んでいく対象というのは、ある種の偶然によって現れるんだと思います。ルーティンで構成されている自分の人生に訪れる、本当はこちら側の人生に開かれていきたいと思っているその偶然にうまく飛び乗れるか、自分を投げ出せるかということ。

──そうなった時に、今度は「聞く」ということが出てきますよね。

濱口:「聞く」ということは、演じる上でものすごくキーになることです。彼女たちは相手のことを聞くから演じることができるとも言えるわけですよね。例えばあやが夏子に「あなたは幸せなの?」と尋ねる時、あやは聞き役として他人を演じています。でも、あやはその聞くことを通じて、夏子が想像している、自分とは別の存在と混じり合っていくようなところがある。聞くことによって相手を引き出すことができるし、その引き出したものに応じて、その人自身も変わっていけるというんでしょうか。聞くことは対応するということなので、自分自身が開かれていくことにもつながるんだと思います。

──自分だけワーって開いたと思っても、それは一方通行でまったく違うものですからね。

濱口:実際、現実の中で見知らぬ他者が互い開き合うということはなかなか起こらないじゃないですか。でも、聞く側にまわることで、その可能性がものすごく上げられるということなのではないでしょうか。そして、聞きながらその相手が開く瞬間を待つことができたら、いつでもつながれる、とまでは言えないけれど、つながり得る。「聞く」ことはよりよくつながるための数少ない方法の1つだと思います。

──観客は、その聞くことと開くことの往復運動を、たぶんスクリーンを通して追体験するんですね。だからこそ、いくつもの企みとユーモアにも満ちたこの『偶然と想像』という作品が、最後にいたって大きな感動をもたらすのだと思います。

濱口:ありがとうございます。そのような映画になっているとしたら嬉しいです。

映画『偶然と想像』


『偶然と想像』
12月17日よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

■監督・脚本:濱口竜介
■ 出演:古川琴音 中島歩 玄理 渋川清彦 森郁月 甲斐翔真 占部房子 河井青葉
■配給:Incline

公式サイト:https://guzen-sozo.incline.life/

濱口竜介

濱口竜介
1978年神奈川県生まれ。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され話題を呼ぶ。その後は日韓共同制作『THE DEPTHS』(2010年)、東日本大震災の被害を受けた人々の「語り」をとらえた『なみのおと』『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(2011〜2013/共同監督:酒井耕)、4時間を超える虚構と現実が交錯する意欲作『親密さ』(2012)などを監督。2015年、映像ワークショップに参加した演技経験のない4人の女性を主演に起用した5時間17分の長編『ハッピーアワー』が、ロカルノ、ナント、シンガポールほか国際映画祭で主要賞を受賞。商業映画デビュー作『寝ても覚めても』(2018年)がカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、共同脚本を手掛けた黒沢清監督作『スパイの妻〈劇場版〉』(2020年)ではヴェネチア国際映画祭銀獅子賞に輝く。本作『偶然と想像』は第71回ベルリン国際映画祭にて銀熊賞(審査員グランプリ)受賞。一足先に劇場公開された『ドライブ・マイ・カー』(2021年)では、第74回カンヌ国際映画祭にて脚本賞に加え、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞も同時受賞。今、世界から最も注目される映画作家の1人として躍進を続けている。

Photography Kentaro Oshio

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#映画連載 古川琴音 混沌の今。やっぱり人間っていいなと思わせてくれた『君の名前で僕を呼んで』 https://tokion.jp/2020/10/31/series-of-movie-kotone-furukawa/ Sat, 31 Oct 2020 06:00:18 +0000 https://tokion.jp/?p=9340 世界中で起こる痛ましい出来事を見るたびに人に対して疑問を感じることもあったと話す古川琴音。そんな彼女を救った1本の映画とは。

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映画鑑賞は動画配信サービスの普及によって、もはや特別な行為ではなくなり、感想の共有やレコメンド検索も簡単になった。しかし、それによって映画を“消費”しているようにも感じる。同連載では、映画を愛する著名人がパーソナルなテーマに沿ったオススメ作品を紹介する。

コロナ禍の自粛中に、世界中で起こったさまざまな動きがニュースで報じられるたび心を痛めたと話す俳優・古川琴音。そんなニュースを目にするたびに、人間の浅ましさや卑しさを感じとても落ち込んだ。そんな古川を救ったのが、映画『君の名前で僕を呼んで』だった。美しい映像と、美しい初恋…。そしてこんな素晴らしい作品を作ることができる人間がいることに、喜びを見出すことができた。

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2018年の公開時に映画館で観たのですが、コロナ自粛中に観返して改めて感動したので今回ピックアップしました。このコロナ禍、ただでさえ落ち込んでいたのに政治、環境問題、人権問題など、世界中で起こったいろいろな出来事をニュースで目にして、さらに気持ちが沈んでしまって。極端な言い方をすると、“人間ってなんて欲深い生き物なんだろう”って感じてしまって。私は役者で、人間を表現することが仕事なのに、人間が嫌いになりそう…。こんな仕事を続けられるの? 続けていくべきなの? いや、もっとやるべきことが他にあるんじゃないか? とまで考えるようになっていました。

そんな時に「あ、あの映画って本当にきれいだったな」と思い出して、イタリアの街並みを観て癒されたい、旅する感覚を再び楽しみたいという気持ちだけで再び『君の名前で僕を呼んで』を自宅で観たんです。そして期待を裏切らず、美しい街並みや色彩に思い切り癒されることができたんですが、実はもう1つ得るものがありました。それは「やっぱり人間っていいな」ってこと(笑)。1度目に観た時には気付かなかった、主人公エリオの1つの初恋を観客も実感できるような鮮明な描かれ方が見えてきて。1人の人間が生活をする中で、理由もなく相手に惹かれて恋に落ちる姿を見て、初恋っていいなって純粋に思えたんです。「人間て嫌な生き物だな」と思って役者の仕事に就いていることにさえ疑問を感じてすらいたのに、人間の一瞬のきらめきや感情をこうして美しい作品に昇華できる仕事を見せつけられると、人間ってやっぱり素晴らしいなと感じることができて、また役者として生きることに熱意が湧いてきたんです。

『君の名前で僕を呼んで』
Blu-ray&DVD好評発売中
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
セル販売元:ハピネット
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© Frenesy , La Cinefacture

エリオが初恋に落ちる姿は、全身で愛情表現をする子猫のように見えてとても可愛らしくって。ひと夏を過ごす避暑地のエリオの自宅にオリバーが居候にやってきて2人が出会って恋をする。たったそれだけの物語なのですが、夏の気だるい暑さもオリバーが来る前と来た後とではエリオにとって全く違うものになって。大げさに描いているわけではないのに、一気に日差しが魅惑的に変化するのを感じられたり、2人が触れ合っている体温や皮膚の感じも画面を通して想像できたりする。そこまで画面の中に観客を取り込める作品ってただただすごいなと感動しました。

ティモシー・シャラメの演技に魅せられる

エリオ演じるティモシー・シャラメもとても素晴らしかった。私自身、役を演じる時に “なぞろうとしないこと”を意識していて。相手の反応に対してリアクションで返すぐらい自然に振る舞うことが一番大切で、自分で気持ちや次に取る行動を準備しないようにしているんですが、撮られている環境ってカメラもあるし人と人との距離も近いから、そうしたいと思ってもなかなかできない時もあります。でもこの劇中でティモシー・シャラメはその場で、自意識を取り払って、その場で感じるだけの演技をしているように見えて、本当にすごいな…って思いました。相手が発した言葉や仕草に対して、エリオ自身が思ったことを表現する速度がものすごく早いからすごく自然で、まるで演技をしていないかのよう。

演技ってある程度、相手の反応や自分が発する言葉や行動がプロット通りの、いわゆる予測がついた中で行われるものになりがち。でも自分が脚本を読んで、準備してきたことをなぞるだけの演技だと、自分の想像の範囲内の演技しかできないし、その範囲内をやろうとして無駄な力みが出てしまう。そうなると、“演技しているな”ってわかってしまうから、ティモシー・シャラメがそうするように素直なリアクションを演技として積み重ねたいんだけれど、怖さもあります。理想的なのは、脚本を読んだり、できる限りの役についての準備をして、いざ演技をするとなったら一度全部それを取り払って、自分が思ってもみなかった方向に状況がそれたとしても、それたことを受け入れてまた新しい流れを作ることができる演技。それは私が理想とするものなのですが、ティモシー・シャラメは全部自然にそれができている。それって本当にすごいなと感動させられました。

また、美しい初恋のきらめきに感動した自分にもすごく喜びを感じました。この映画を通して全身を使って、無我夢中で人を愛することが人間にはできるんだってことを知ったし、こんな素晴らしいものを映像として作ることができる人間は尊いとすら感じました。それに気付ける自分で良かったし、やっぱり結果、人間っていいなって(笑)。生きていると言葉にできない感情や行動や事柄ってたくさんあるものですが、それを無理やり言語化するわけではなく、映像の中ですべての要素を使って丁寧に描かれている気がしてとても心に残りました。

振り返ってみると、私は異国情緒あふれる世界観の中で、物語だけではなくムードを楽しむ映画が好きなようです。この世界に入るきっかけになったのも『海辺の生と死』という映画で。この作品がとてもきれいだなと思って調べてみたら、製作会社と主演の満島ひかりさんの所属事務所が同じユマニテで。こんな作品に出たいと思って、事務所のオーディションに応募した過去があって今があります。中・高・大学と演劇部に入っていて演劇漬けの毎日。正直、映画は役者になるまであまり観ていなかったのですが、役者になってからいろいろと観るようになって。それからは映画からさまざまな人の感情や体験など自分が知らなかったことを吸収して、それが自分の演技の糧になっています。これからも映画はたくさん観ると思いますが、『君の名前で僕を呼んで』は私の人生の大切な作品です。

Photography Kosuke Matsuki
Hair&Makeup Ayane Kutsumi
Edit Kei Watabe

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