施井泰平 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/施井泰平/ Wed, 01 Feb 2023 08:15:53 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 施井泰平 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/施井泰平/ 32 32 NFTやAIがアート界にもたらす変化とは? アート起業家の施井泰平に聞く https://tokion.jp/2023/02/02/interview-taihei-shii/ Thu, 02 Feb 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=166241 『新しいアートのかたち: NFTアートは何を変えるか』を出版した美術家で、スタートバーンとアートビートの代表を務める施井泰平へのインタビュー。

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施井泰平

施井泰平(しい・たいへい)
スタートバーン代表取締役、アートビート代表取締役、東京大学生産技術研究所客員研究員。美術家、起業家。2001年、多摩美術大学卒業後「インターネットの時代のアート」をテーマに美術制作を開始。現在世界中のNFT取引で標準化されている還元金の仕組みを2006年に日米で特許取得するなど、業界トレンドの先手を打っている。2014年、東京大学大学院在学中にスタートバーン株式会社を起業し、アート作品の信頼性担保と価値継承を支えるインフラを提供。事業の中心である「Startrail」は、イーサリアム財団から公共性を評価されグラントを受ける。東方文化支援財団理事、一般社団法人Open Art Consortium理事を現任。東京藝術大学非常勤講師、経済産業省「アートと経済社会を考える研究会」委員などを歴任。作家として、個展やグループ展などで作品を発表すると同時に、「富士山展」(2017~2020年)、「SIZELESS TWIN」(2022年)、「ムーンアートナイト下北沢」(2022年)などの展示を企画。主な著書に平凡社新書『新しいアートのかたちーNFTアートは何を変えるか』(2022)などがある。
https://taihei.org
https://startbahn.io
Twitter:@taihei

NFTの登場によってアートはどう変わるのか。そんな疑問に応えてくれる新書『新しいアートのかたち: NFTアートは何を変えるか』(平凡社)が昨年9月に出版された。著者は現代美術家で、スタートバーンとアートビートの代表を務める施井泰平。美術家として「インターネットの時代のアート」をテーマに制作してきた彼が、NFTやAIによってアート界がどのように変化すると考えているのか。彼の思想の根幹にある「価値転倒」への興味も踏まえて、話を聞いた。

■『新しいアートのかたち: NFTアートは何を変えるか』 著者:施井泰平

■『新しいアートのかたち: NFTアートは何を変えるか』
著者:施井泰平
判型・ページ数:新書版・272ページ
出版社:平凡社
https://www.heibonsha.co.jp/book/b609801.html

「価値転倒」へ興味

——『新しいアートのかたち』の山峰潤也さんとの対談で「価値転倒」に興味があるとおっしゃっていたのが印象的でした。本書で取り上げているNFTアートは既存のアートとは異なる基準やスピードで価値が決まっていくように感じます。そうした「価値転倒」へ興味がそそられた原体験などありますか?

施井泰平(以下、施井):うーん、はっきりと原体験として印象的な出来事などはないですが、幼少期にアメリカと日本を行き来していた頃に感じたカルチャーギャップが影響しているのかもしれません。例えばアメリカに住んでいた頃に慣れ親しんでいたギャグが帰国したら通じなかったことがあって。そうした体験からコミュニティが場所固有の価値を醸成する力を持つ一方で、排他的になる力も感じたんですよね。なので、なんでも価値が転倒すれば嬉しいというより、その背後にあるコミュニティ内の言語が醸成しすぎることに危うさを感じる裏返しに興味が湧くのかなと思います。

——インターネットは場所固有の境界線がもはや存在しない自由な場所のように捉えていますが、どのように見ていますか?

施井:インターネットもある種、1つの国のようなものでみんなが共有できるコミュニティとして存在しているんじゃないかなと思っています。同時代性のコミュニティを共有しているところもあるので、日本で言えばアニメや漫画など自国のカルチャーを素材として使いながら代弁しているような作家とは相性がいいと思います。彼等の活躍はもちろん尊敬していますが、一方で僕の原体験としては、1つのコミュニティに所属して表現することにどこか違和感や危機感を覚えますね。

——2001年に大学卒業後、インターネットの時代を1つのテーマに活動し始めた経緯について教えてください。

施井:在学中は絶対卒業したらアーティストとして活動すると思って生きてきたのですが、いざ卒業してみるとギャラリーとツテがあるわけでもレールがあるわけでもなく、この先50年間どのように活動していこうかと真剣に悩みました。その時に、歴史に名を残しているアートは時代の技術や変化を象徴する活動や作品を残していることに改めて注目して、当時、社会を大きく変えようとしていた技術であるインターネットをテーマに選びました。今でもインターネットで起こるカルチャーや現象よりも、インターネットがもたらす人類全体の生活や価値変化の可能性に興味があります。

——その後、2006年には実際に作品が二次流通した際に作家に還元金が支払われる仕組みの特許を日米両国で取っていますよね。インターネットをテーマにした作品制作や展示発表というよりも、インフラ作りに着目した経緯はどのような意図だったのでしょうか?

施井:卒業後は、森美術館のプレイベントとしてインターネット上で行う新俳句プロジェクトに合わせて実空間での展示も行ったんですが、会場に設置したプロジェクトサイトへのアクセス数は少なかったんです。時代を変える作家であればもっとアクセス数が多いはずだろうと感じて、リアルスペースで展示する方法を見直したんですよね。そうした時にインターネット時代を喚起するような展示を発表しつつも、新しい潮流に対して価値づけができて作家全員に関わってくる根底に携わるようなインフラ作りに取り組むべきなんじゃないかと思い、インターネット時代のアート流通のあり方を考えるようになりました。その流れで、二次流通した時に作家に還元金が送られる仕組みを発明しました。

——2006年当時となると、まだ現在よりも現実とインターネットの境目があったような気がしますが、当時のご自身の活動へのリアクションはどのようなものでしたか?

施井:2003年にYouTube、2006年にTumblrが出てきて、SNSもmixiに次いでTwitterができた頃なので、ある程度大枠としては、インターネットについてみんな理解していました。インターネット自体が伸びていくだろうという確信を持ち始める人も増えていったような。でも一番難しかった部分はインターネットへの理解というよりも、アートそのものへの理解でしたね。一般的にアートといえば絵画や彫刻であると考える人が99%なので、インターネットが普及する中でアートはどのように変わっていくのかという話はそもそもの段階で全く通じないんです。そしてアートに詳しい人はテクノロジーに興味がない。

例えば、単にインターネットで絵が見られるようになっても、アートがインターネットの時代になって価値が変わったとは言えないですよね。インターネット以前から、どんなに人気でも漫画やアニメやイラストが美術館に収蔵されない理由がきちんと言える人が少ないので、新たな変化への想像がしづらかったように思います。

——還元金の考え方自体は、ある意味NFTの仕組みと似ている部分があるかと思います。NFTの登場は、当時から予想されていましたか?

施井:全くしていなかったですね。先ほどお話しした還元金の仕組みを作った時点で、どこかで技術的な発展をする可能性は感じていたのかもしれないですが、世界的なカルチャーとしてここまで普及する仕組みが生まれるとは予想していなかったです。結局のところ、僕の興味関心はアートにしかないんです。だから現代美術家の目線として、アートと伸び代のある仕組みを組み合わせることを常に考えているといった感じですかね。

——組み合わせるという考え方であれば、アートにこだわらずさまざまなジャンルにもビジネスとして応用できそうですが、アートに軸を置く熱量とは一体なんなんでしょうか?

施井:根源的な熱量はどこから来るんですかね……。ある意味、厨二病みたいな精神で歴史に爪痕を残したいという気持ちが強いかもしれないです(笑)。社会の中で作品が評価されなくとも、作品が生き続ける仕組みを作ってしまえばいいんだって発想かもしれないですね。

——現在の活動において影響を受けた先人達はいますか?

施井:美術家を目指すきっかけになったのは、レオナルド・ダ・ヴィンチです。ちょっといつも言うのが恥ずかしいんですけど(笑)。中学生の時に将来の進路を決める授業が図書館であって、もともと理系志望だったこともあって、アインシュタインなど理数系の天才達のなど伝記本をよく見ていたんですよね。その中でレオナルド・ダ・ヴィンチだけ、さまざまな学問や活動に柔軟に取り組んでいるように見えて、1つの学問における天才達よりもいろいろな要素を含むことができる芸術家の姿に惹かれたことが作家活動へのきっかけになりました。しかも、彼の場合は当時を象徴する人物としてあらゆるものを網羅していて、世界を掌握したいというサディズムのような気持ちがあるんじゃないかなと感じたんですよね。答えが1つしかないものを追求するというよりも、いろいろな手段や活動を組み合わせて時代に対峙して世界を作りたいというある意味、サディズムと厨二病を感じたというか(笑)。

——サディズムと厨二病……!(笑)これまでのお話を聞く中で印象的な「現代美術家」と「起業家」の視点のバランスはどのように保っていますか?

施井:もともとその2つの境目は、あまり自分の中でないかもしれないです。空間構成から作品展示まで、なんだったらお客さんが来場するまでの導線もプロデュースしたいタイプなんです。やっぱり作品鑑賞において環境ってすごく重要じゃないですか。もし鑑賞する前に何か映画を観てから来たら、作品を考える時も多少影響を受けるだろうし。過去を遡れば、例えば千利休にしてもピカソにしても作品を作るだけじゃなくてそれが流通、評価される構造から作っていたり、環境創造に意識的だったクリエーターも多くいます。新しい時代に対して、新しい問いを作るという気持ちで作品を制作する時点で旧世代の制度にのっとっていたらスムーズにはいかないと考えています。

近年のアートの潮流

——NFTを軸に近年起きているここ数年のアートの潮流をどのように見ていましたか?

施井:そもそもNFTアートといっても2種類あると思っています。1つはNFTを活用するクリエイティブがコミュニティを形成し発展していったタイプの「NFTアート」、もう1つは既存のアート業界から新しいメディアとしてNFTを扱う「アートのNFT活用」です。いま顕著に「NFT」の盛り上がりとしてニュースになっているのは、前者の「NFTアート」だと思います。そしてこの盛り上がりにより、後者がヒントを得て既存のアート業界でのアートのあり方も進化している側面があるかと思います。

とはいえ、実際は両者とも似たようなことをやっているようにも思っています。例えば古くからある有名ギャラリーなんかでも作品購入者のみをパーティに招待したり、コレクターのコミュニティを形成して価値を高めるようなことをしていたので、NFTアートで行われているコミュニティ作りや特典の提供などは、従来のアートの世界にあったブラックボックスをインターネット上で可視化しただけのものだと思ってます。

——冒頭の話に戻るようですが、日本とグローバルの中間地点というのはこれから見つけられるのでしょうか?

施井:それもYESでありNOですね。日本人には意識的にアジアの中でマーケットを引っ張るような国民性が特にあるわけではなく、あったとしても経済的に弱くなっちゃったので今更な形になってしまいそうです。一方で、先ほどお話したように世界の価値づけに依存してしまい、どこかで自国のものをちゃんと自分達で価値できていない危うさを感じている側面もあると思います。

例えば、コミケやワンダーフェスティバルのようなイベントに起きる圧倒的な盛り上がりは、海外からの評価に伺いを立てずに自発的にできたものに誇りを持っているからなのかなと。そうすると気にしてなくても海外から国内で流行っているものが欲しいという動きが自然発生するんですよね。だからといって、個人的にはシンプルに応用できないNFTの複雑さも感じていて……。

——複雑さというと……?

施井:冒頭で話したようにインターネットにおけるNFTはある意味、1つのコミュニティでカルチャーが起きている状態なので、日本にとっては既存のアートマーケットが分断を起こしている中、新たなダイナミックなマーケットが生まれたというイメージにしかなっていないと思います。その間に、例えばいま盛り上がりを見せているNFTプロジェクトの「Azuki」なんかは、日本インスパイアの海外発プロジェクトとして世界で人気を得ています。彼らの賑わいを見ていると、もともとNFTが持つボトムアップで何種類ものキャラクターを生成する特性と日本のカルチャーと相性がいいはずなのに機会損失しているように感じますね。そのような状況に対して行動している「新星ギャルバース」チームにはリスペクトを感じます。

——『新しいアートのかたち』の冒頭で挙げているリチャード・プリンスの「New Portraits」シリーズに対してNFTアートとして起きたアクションもボトムアップ精神ですよね。

施井:そうですね。2022年5月にリチャード・プリンスの「New Portraits」シリーズに無断で自分のポートレイトを使われたことに怒ったモデルによる作品『Buying Myself Back: A Model of Redistributiion』がクリスティーズでNFTアートとして販売され、17万500ドルで落札されています。これまでアートマーケットであった階級やコミュニティとは関係なく、NFTは本来そうした従来の価値制度を覆すポテンシャルを持っているんですよね。

これからのNFTの可能性

——アートバブルが起きている中で、コレクションの意義も捉え直されているように思いますが、どのように考えていますか?

施井:難しい質問ですね……(笑)。というのも、作品へのマーケットの評価はほとんどの場合内容だけではなく、作品を取り巻く情報を前提にしているんですよね。例えば納屋にあった絵をただ単に古い絵だと思って十数万円で買ったとして、その後よく調べたらダ・ヴィンチの作品だった場合、値段は億円単位で変わってきますよね。そうした価値評価の現実を考えると、感覚よりも作者含めた情報をみんな頼りにしているんじゃないかと思っています。でも一方で、そういった情報なしに作品が持つ力も重要です。NFTでも誰も目をつけていなかった作品をいち早くコレクションしている方々がいるため、情報だけでは価値が生まれたり永続しない側面もあるかと思います。NFTの世界にはまだ価値評価を大きく変えるような権威が生まれていないので今は本当の意味での慧眼を試せる機会なのかもしれません。

——NFTが登場する以前からもSNSの加速するスピードによって、短期的な目線で作家活動を評価する流れもあったかと思いますが、そのあたりは作家目線としてもどのように感じていましたか?

施井:NFTに限らず、現実的には短期的な市場以外は見えにくい世界だと思います。例えば草間彌生さんも70歳を過ぎた頃にようやく作家として市場でも高く評価され始めましたが、それまでは今と比べると作品価格はそこまででもなかったわけで、現在の高騰については一部の目利き以外は予想していなかった。だからいま、僕のできることは長い目で見て、決していま売れてなくても諦めずに30年後に残る作品を作ろうというメッセージを自分の活動を通して伝えるしかないと思っています。でも短期的にめまぐるしい変化が起きる中で、その考え方を押し付けるつもりはなくて、しばらくして実績が出てきた時に「施井が言ってたこと正しかったな」って思い返してくれたらいいんです(笑)。

——近年では、NFTとフィジカルの作品のすみ分けや融合点なども議論される場面がありましたが、今後どのような関係性になっていくと思いますか?

施井:究極的にはこの先20年もすればデジタルとフィジカルの境がなくなり、作品自体も現実にあるのかデジタルの世界に存在するのか区別がつかない程にテクノロジーが進化すると思います。そうした時に、人の手で作られたフィジカルな作品に宿っていた「念」のようなものに対しての扱い方が議論になってくると思うのですが、「唯一性」の確認技術があることで解決できるのかなと考えています。

例えば、亡くなった友人との過去のLNEのやりとりを見た時に、それが何かコピーや他人からのメッセージではなく、相手と自分の間だけで行われたということが大事だと思うんですよね。NFTの根源も同じく、コピーではなく唯一性とひもづくことが重要なので、モノなのかデジタルなのかということはあまり関係なくなってくるかなと。むしろ、物理的なものの方が実際にモノを見ることでしか判断できないというマイナス要素の方が阻害要因になって、合理的にデジタルへ移行していくと思いますね。そうした動きは、既にさまざまな場所で観測できるようになってきていると思います。

——そうした意味では、人間の手で作られた唯一性の対比としてAI作品についても語られ始めています。AIとアートの関係性はどのように進化していくと思いますか?

施井:2016年に17世紀の画家・レンブラントの過去作品を機械学習させて新作を発表したニュースが話題になっていましたが、著作権の問題やプログラマーこそがアーティストなんじゃないかという議論などが生まれたんですね。最終的にいろいろな意見が出る中で結局最初の作品は歴史上重要だったからアートになったけど、それ以降の類似コンセプトのものはそれだけではアートにならないと感じる人が多い印象です。現状のAIは視覚的な精度を上げることはできても、そもそも単純に絵が上手ければ良いアートという話でもないので、AIを使った作品に関しては絵画史の歴史における議論に戻るだけのような気がしています。

ただ、現時点でAIに可能性を見出すとしたら作品制作のほうよりも、作品購入において可能性があると思います。例えば、いまNFTアートは世界に何百万点もありますが、1点ずつ自分で見ていく代わりに自分の審美眼を学習させたAIを使えば、寝てる間でも全部見ていくことができますよね。現状、人間vs AIの関係性でネガティブに捉えられがちですが、見方を変えてAIによって価値が上がるものという視点で今後も注目していけばいいんじゃないかなと考えています。

——最後に、今後NFTはどのような方向に可能性を広げていくと考えていますか?

施井:NFTを含めたアートバブルの盛り上がりで期待したいところは、グローバルを前提として、日本の中から自分達で価値づけと発信ができるようになっていくことですね。これまでは海外の権威が認めることが日本で評価される一番の要因になっていたのですが、このアートバブルの流れでストリートや一部の国内ギャラリーで出来た日本独自のマーケットも賑わい始めています。一部の美術関係者は、変なビオトープができ始めたと危惧していますが、過去にも美術商団体や日本画の画壇など日本国内で作家や作品価値を醸成する仕組みがありましたが、結局のところグローバルマーケットまで広がらなかったんです。だから、個人的には自国のアートを自分達で評価して国際発信する動きはポジティブに捉えた上で、価値形成が出来る人達を巻き込んで世界に発信できるところまでいってほしいと思っています。

例えば若手の作家が作品をNFT技術を活用して公開することで、長期的に支援してくれたコレクターとの関係性が証明でき、価値がついた時には双方に特典や循環が生まれますよね。その仕組みがうまく運用できると、次世代の作家を率先して応援する潮流も生まれやすくなると思います。作家にとっても長い目で作品制作する意欲も湧いてきますし、絶対的な個数が両方増えていけばマーケットとしてもポジティブな盛り上がりができていくんじゃないでしょうか。

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アート連載「境界のかたち」Vol.12 NFTの可能性を実例とともにひもとく 山峰潤也×施井泰平×スプツニ子!によるクロストーク -後編- https://tokion.jp/2022/06/29/junya-yamamine-x-taihei-shii-x-sputniko-vol2/ Wed, 29 Jun 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=120155 ポストコロナにおけるアートを識者達の言葉から紐解く本連載。第12回は、NFTについての後編。美術館でキュレーターを務めてきた山峰潤也と「スタートバーン」の施井泰平とアーティスト・スプツニ子!による鼎談から、その可能性を考える。

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ビジネスからサイエンスに至るまで、アートの必要性を説くシチュエーションが激増している。コロナ禍で見える世界は変わらないものの、人々の心情が変容していく中で、その心はアートに対してどう反応するのか。ギャラリストやアーティスト、コレクター等が、ポストコロナにおけるアートを対象として、次代に現れるイメージを考察する。

第12回は、 “NFT”についての後編。仮想通貨の世界だけではなく、アート業界においてもブロックチェーンの技術を活用したNFTアートがマーケットの新風になっているのは言わずもがな。でも、NFTの実態と機能を的確に理解している人は少ないのではないだろうか。当然の話で、ブロックチェーンもNFTも成熟の途中にあるからだ。今回は美術館キュレーターの経験からメディアや企業とアートの社会的可能性を実証実験する山峰潤也と現代美術家でアートにおけるNFTの活用を事業化したパイオニアの施井泰平、2月に代表作「生理マシーン、タカシの場合」のNFTが50ETH(約2000万円)でコレクションされた、アーティスト・スプツニ子!とのクロストークが実現した。後編はNFTアートの可能性を実例をもとに語ってもらう。

非中央集権的な状況が生まれて、価値の文脈がリゾーム型に出てくるおもしろさ

山峰:現代アーティストのサイモン・デニーがブロックチェーンを使った作品を2016年に発表したんですけど、興味深かったのは権威という軸で別の誰かが利益を獲得していくような構造にも両義性があることを説明しながら見せていくような、アイロニックなメッセージが込められていたこと。NFTもそうですけど、開かれている印象の一方で、例えばGAFAが世界経済の中心になっていくような疑問もある。今NFTがその現状を更新して、新しい価値を作っていく場と考えた時に経済系だけの話にならないように日本で発信するにはどうしたら良いのかということが重要なポイントだと思います。具体的には、プッシー・ライオットのような活動を見てもらうことと、使い方の提案が必要。キュレーターとしても関心がありますね。

施井:日本はテクノロジーに対して社会課題解決ツールとしての希望が少ないと感じることが多いですね。例えば、Wikipediaの編集用語ランキングで、ドイツでは「ホロコースト」が上位にあるけど、日本の場合は「名探偵コナン」とか「ONE PIECE」だったかな、アニメが上位を占めていることが過去に話題になりました。ある意味、テクノロジーは現実社会とは別の軸や用途で扱われているように感じます。一方で西洋社会では、テクノロジーの下剋上じゃないですけど、今までできなかったことを成し遂げる道具であるという考え方があるように思える。民族性も関係していると思いますけど、テクノロジーの活用が課題解決につながるという考え方に至っていないことが、日本の残念なところだし、ならではだとも思うんです。

スプツニ子!:そういう文化の違いもあるのかな……。最近出てきたNFTコレクションで「アストロガールズ」っていうweb3.0にもっと女性を増やそうっていう目的のプロジェクトがあるんですけど、このNFTを購入した人は女性エンジニアのコミュニティの中でウェブ3.0を学べる仕組みがあります。さっき施井さんが仰ったように、テクノロジーを使ってどう下剋上するか、これまで白人男性中心だったテックワールドをどうハックするかっていう思想はウェブ3.0に根強い。現状はウェブ3.0やクリプトの世界ってまだ白人男性が圧倒的に多いんですよ。だからこそ、マイノリティをもっとエンパワーメントしようっていう動きが強まっています。アメリカは、今アートやカルチャー全体で、白人男性中心の歴史を反省して見直す構造ができつつある。だから「アストロガールズ」等のようなアクションがあるんですが、日本のNFTはどうかなと。

施井:国際的なアートの世界から見たら日本人男性も少なくともマイノリティだと思うんです。そこで、DAO(分散型自律組織)とかメタバース、NFTが完璧にその問題を解決するとは思っていないんですけど。例えば、LGBTQの人達が精子バンクにいくと白人男性の精子を選ぶ傾向にあるというデータもあり、マイノリティの人達もどこかで権威に対する欲望があったり、それが最適解になってしまう構造から抜け出せない状況に陥ってる。DAOに関してもそうですけど、例えば非中央集権組織を真剣に実現しようとしても、完全に非中央集権化するには無理がある。例えばどっかで誰かが意思決定をしたり、責任をとらなくちゃいけないから、そこにどうしても中央集権的な権威が宿ってしまうような。イタチごっこですし、人間の本質に1歩迫るとは思いますが、まだ何も解決しておらず、そこがテーマの時代になっただけなのだと思います。

山峰:その二面性があらゆるところで語られていますよね。僕も美術館の展覧会でアクティビズムやソーシャルに結びつくような事例を取り上げてきましたけど、美術館は象徴的かつ権威的な場所で、ラディカルに活動してきたアーティストを権威付けしていき、「ラディカルであること」自体が美術の価値の構造に吸収されていく状況に矛盾を感じたんですよね。

もう1つは前回のヴェネチア・ビエンナーレにいった時に世界のセレブリティが集まりますよね。加えて、世界有数の観光地であるヴェネチアに来ることができるのは限られた人達です。ビエンナーレを見るようなカルチャーエリートが、各地から集められた作品を通して世界の悲惨を嘆き、慈しむ、という状況に違和感を感じたんです。こういう欺瞞の世界に陥ってしまっているのではないか、社会を変革するアクションのためではなくて、世界の富裕層の同情心や自己満足をくすぐるために何かをしていることに「おかしくないか?」と。その答えがあると思って美術館の仕事から離れてしまったんです。

もちろんDAOがすべてではないと理解しています。権威活性する中間的な存在、野菜で言えばJAみたいな中間団体って、美術館やキュレーターのような存在が権威を作って、搾取してるんじゃないかっていう話がありますよね。ブロックチェーンの話をすると、ウォレットを難民の1人ひとりに配布することで中間業者を排除することができて、適正なマーケットにすることができるけど、実装の問題点は山積みです。ただ、直接構造になっていくことで、非中央集権的な状況が生まれて価値の文脈がリゾーム型に出てくるおもしろさがあると思うんです。僕の立場だと混乱しますけどね(笑)。

施井:NFTはあくまでインフラだから、みんなにとって良いものになるだろうけど、どう進むべきか、最終的にどんな世界になるのかは、まだわからないですよね。この間、アップルペイがメタマスクに対応して、日本でもクレジットカード等から直接イーサリアムが買えるようになりました。これまで日本でNFTを購入するには、ビットフライヤーなりコインチェックなりでKYCを経た上で口座開設して、仮想通貨を買った上で別に用意したメタマスクアカウントに送金してやっと購入準備が完了する、みたいな複雑で時間のかかるプロセスを経なければいけなかったのに、ウォレットへのアクセスが簡単に得られるようになったのは、「アップル」という巨大資本が対応するデバイスを広げてくれたから。今後も世界は、パーソナルコンピューターで個人がエンパワーされたり、個人が組織から独立する力を持つようにさらに進んでいくと思います。最近の戦争問題等を見ていますと、国家に縛られて国民が命を落とすような社会構造に違和感を感じている人も多いと感じます。

山峰:ウクライナの問題は、批評家がメッセージしてそれが世の中に広がって、政治が動き始めたパワーが見えてくるような状況と、ナラティヴ(物語)に牽引されてそういう考え方が立ち上がったことが、これまでとは決定的に違いますよね。「助けたい」というDAOが生まれて、最終的に経済系の民主化が生まれる時にようやく環境が整ったと考えられる気がするんですよね。

DAOとNFTとリアルなカルチャーを結びつけて、根っこにある文化的価値を守る仕組み

スプツニ子!:ファンドレイズして、みんなで作品をコレクションするっていうDAOは実際にあるんですけど、山峰さんもDAOをやってみてほしい。

施井:確かに、それおもしろい。「山峰DAO」。

スプツニ子!:もうそれを作っちゃうか、海外のアートコレクション系のDAOに入っちゃおうよ。現状のアートコレクション系DAOのメンバーは、テクノロジー系の人が多くてアート史に詳しい人はまだ多くないので、山峰さんのような人の知見が必要なんじゃないかな?

山峰:チャットコミュニケーションに途中で心が折れるっていうのがあるんですけど(笑)。やりたいことはいくつもあって、今までマーケットに乗りづらかったタイプの作家がソーシャルアクションできる場を作りたいので、DAOを媒介にして、作品のプロセスで出てくるNFTコンテンツやプロジェクト、そこから生産される副産物をNFTコンテンツ化して販売することで彼等の行動を支援したいです。

もう1つ、日本の建築遺産とか工芸はIP化できるものが多いですよね。刀とか鎧でもいいですし、それを使ってクリエイターがスピンオフで作品を作る。そのNFTが異なるメタバースでも使えるように整備さえすれば、日本の文化が世界に発信できて、かつアレンジされるという、インターネットならではの二次流通のおもしろさが生まれる。DAOとNFTとリアルなカルチャーを結びつけて、根っこにある文化的価値を守りたい。

施井:ものすごく重要ですよね。現状、DAOの運営って法的にグレーなものも多いんです。ブロックチェーン関連のファンドレイジングに切り込むスピード感がある人の中にはマネーロンダリング目当てだったり、反社会組織が関わっていたりする場合もあるので、どうしても規制に向いてしまう。これだけ社会を良くしていく可能性がある仕組みにも関わらず、社会的意義のある事例がまだまだ少ないんですね。でも、真面目な人は先行者にならない傾向にあるし、結局、怪しいものとして規制される。なので良い社会課題解決案を思いついたらみんなどんどんやってほしいです。

山峰:アイデアはあるんですけど、実装後の問題もあるので。このメンバーでやれたらおもしろいですよね。スプさんはアーティストとして実践しているし、情報も入りやすいのではないでしょうか?

スプツニ子!:実践のコツというか、英語力は大事だと思います。ニューヨークやロンドン、東京に住んでるっていう地理的な障壁はなくなっているけど、日本では言語の壁があるので、英語でコミュニケーションしていかないと、プロジェクトが大きくなりづらいんですよね。友達の草野絵美さんが1980年代の日本のアニメをテーマにした「新星ギャルバース」っていうNFTを作っていて、私の今のアイコンも「新星ギャルバース」なんです。

施井:僕「ゾンビーズーキーパー」持ってます(笑)。

スプツニ子!:すごくかわいいし、「NFT発のアニメを作る!」というビジョンも独特でアメリカのインフルエンサーがSNSのアイコンを「新星ギャルバース」にしてるんです。絵美ちゃんは英語ができるので、アメリカのインフルエンサーの新星ギャルバースアイコンを作ったり、プレゼントもしているから、これからすごく広がっていくと思います。日本にいても、英語ができればプロジェクトは大きくなりますよね。絵美ちゃんのような新しい時代のコミュ力が重要。

山峰:アーティストとして成立すると思う一方で、誰もが作品について語れるわけじゃないですし、チャット空間にも長時間いられない現状もありますよね。

スプツニ子!:私はずっとチャットするのはしんどいタイプ(笑)。

山峰:フルタイムコミットメントですからね。アートオークションでオークショニストがハンマー役として盛り上げることと同じで、誰かがコミュニケーションを代替してあげることで言語問題を解決できたらいいなと思います。あと、文化財のIPみたいな話になると作者は生きていないので、誰かが代わりに語ってあげなきゃいけないし、インターネット空間における盛り上がりを理解していることが大前提。

スプツニ子!:私も英語はできるけど、ディスコードのマネジメントは無理だな……。日本だと「TART」っていう会社がアーティスト支援に力を入れていて、作品について英語で発信したり、インフルエンサーに作品を届けてマーケティングをサポートしていますよね。

施井:彼等はすごいです。2016年くらいからブロックチェーン関連事業をやっていて、作品も作っています。ジェネラティヴマスクを広げたマーケティングとか、おもしろい活動をしていますよね。過疎村の地方創生NFTプロジェクトとかもそう。

山峰:知人からマンションの住民が組合のコミュニケーションとしてDAOを使って、価値が下がらないようにするっていう話を聞いた時はおもしろいと感じましたね。共通の問題を抱えている人達が互いにインセンティヴを交換できる状態を作るプロジェクト。以前、北海道出身の著名人の方から「アートを使って町おこしをしたい」という相談を受けた時に、町の自然は美しいし、食べ物もおいしいから、そこにアーティストがレジデンスして勝手に広がっていく可能性で構造化ができると考えていました。ただ、ファンになった人達をどうつなげるのかが問題で、過疎化していく場所に対して「セカンドホームDAO」みたいな、居住者以外もそこをセカンドホームタウンって思える人が参加できるやり方を考えたんです。そこから生まれるコンテンツをメディア化していく。過疎村のプロジェクトの考えにも共通すると思いました。

スプツニ子!:過疎村のプロジェクトもNFTでコミュニティ化できるでしょうし、メタバース上のイベントが実現できるかもしれない。それに、先程のアップルペイがメタマスクに対応した話も「アップル」にはそういう力があるなって。デバイスとかアップルペイとかでNFTが突然身近になるような。

施井:いろいろなものが作れますよね。しかも個人情報を秘匿化する「アップル」のブランディングに即している。

スプツニ子!:そうすると日本人も近づきやすいし、ウェブ3.0のハードルも下がる。

環境問題に関する議論の必要性

山峰:あと、美術館の展覧会であらゆる環境問題のことを話しても、展覧会自体が象徴主義で、たくさんのエネルギーコストをそこに費やしているのか? という矛盾があって。暫時的にやっても象徴的に見せることが次のアクションによって解決に結びつくのかという疑問が湧きます。美術もポストモダンと言いながらモダニズムから脱却できなかったじゃないですか。変革というよりも“変革のイメージがある革命者”でありたいっていう、ある種のプレイの部分だけに注目が集まるような、方法論やプレイヤーの細分化、ステレオタイプを作ってフォローさせていくのではなくて、何ができるのかという話。その意味で環境問題について解決への議論のDAOが作られること等議論が進んでほしいです。

スプツニ子!:私は外から否定や批判をするだけではなくて、その中に入ってエコフレンドリーなシステムになるように変えていきたいなと思います。でも、批判はあるべきですし、そのおかげでNFTやイーサリアム全体も更新された部分もある。イーサリアムも「PoS(プルーフ・オブ・ステイク)」にすることでエネルギー消費量が劇的に少なくなる「イーサリアム2.0」に年内に移行すると言われています。他にもNFTプラットフォーム「Rarible」で、購入したNFTの生成したカーボン・フットプリントをリムーヴするためのボタンが作られたように、システム設計でエコフレンドリーなものを作ろうっていう動きがある。

施井:僕等もガス代が高騰した時に「ポリゴン」に移行したんですけど、一方で資産性のあるNFTを発行したい人はイーサリアムベースにしたいっていう要望が多くて、しかもポリゴンってプルーフ・オブ・ステイクとかいろいろな処理を減らす努力をすることによって、結局ダウンしやすくなったり、信頼性に関してはイーサリアムと比べると低くなることもある。そもそも自分達が「ポリゴン」を使っているから良いってわけじゃないし、「ポリゴン」もイーサリアムの土台と信頼があるから、みんなが使っている状況もあります。人類全体の問題と思いますし、向き合い続けることでより良い解決策を生み出していくしかないですよね。

山峰:そうですよね。みんな動物の肉を食べているわけだし、大量の廃棄物を出しながら生きているわけですから。美術館も含めて“生きる”以上、多少のグレーゾーンは存在する。ただ、無意識化されているものと意識化されているものだけに分類して議論することには疑問があります。コンテンツやビジネススキームの話をする人は多いですが、実は、エネルギー効率の良いハードウェアや、エンジニアリングの効率化等、インフラの議論も進む必要があります。

施井:もちろんそうですよね。ソースコードを少しでも減らすことでトランザクション(取引)コストを減らしていくこともできます。収穫加速の法則というのがあって、そこでは世界が何かの目標に向かって技術力を高めていく時には必ず天才が現れて、結果、指数関数的に技術進化が行われると言われているんですけど。インターネットの拡大が教師データ収集を加速させて、結果、人工知能の進化をスピードアップさせたこともあるし、ハードウェアレベルももちろんですし、プロトコルレベルでもきっとそうなっていくんだと思います。

スプツニ子!:いずれにしても、変革の時期って絶対的におもしろいと思うんです。大どんでん返しが起きやすいからこそ、カオスな中に入って、動いてみるのが楽しい。「ユニコーンDAO」のようなNFTの世界に女性やLGBTQの視点をもっと増やそうっていう動きもを応援したいし、加速していってほしい。山峰さんのDAOも期待してます。

山峰:NFTのインフラに関しては、国内でマーケットプレイスも出てきています。ただ、文化財や建築、アニメ等のIPは日本の文化をおもしろがる海外層と結びつかなければならないと考えています。SNSでは日本からmixiが出てきたけど、結局Facebookが主流になっていったように、プラットフォームはグローバルに勝負できるところが強い。だからどうしても日本初のプラットフォームは厳しい。ただ、コンテンツでは日本も世界で勝負できる。その時にどうやってマーケットプレイス等のプラットフォームに対して、コンテンツホルダー側が強くいられるのかが重要で、メタバースコンテンツを作ってもメタバースそのものがなくなってしまったら、コンテンツもなくなくなるのではなくて、別のメタバースで使えるようなユニバーサルな状況があるべきですよね。言語問題で、ベースのインフラでは日本は世界に勝てないだろうと感じた時、一方で文化的アセットは豊富なので、それをどう生かせるかはポイントだと思うんです。

スプツニ子!:任天堂は理想的な日本のカンパニーって思いました。コンテンツの力で世界を席巻するようなイメージ。

施井:大きな質問だと思うんですけど、村上(隆)さんのアート活動にはそういう要素があるように思えます。日本のカルチャーって大衆からボトムアップで盛り上がっていく側面があって、逆に海外はトップダウンで、売り出し方にも「エリザベス女王が認めた」とか「MoMAの永久展示」という枕詞がつきますけど、村上さんはボトムアップカルチャーとトップダウンカルチャーの翻訳者的な活動をしています。彼が掲げている“スーパーフラット”というコンセプトも、情報社会における優劣のない社会的もさることながら、NFTの“スーパーフラット”をも示唆している。ある意味において日本のクリエイティヴが世界に挑戦していく時のキーワードになるだろうから、これまで村上さんが続けてきたことを理解することが重要なのかなと思います。同時にNFTマーケットのトレンドセッターはアメリカに多いけど、中心が必ずしもアメリカにしかないわけではないですし、ワールドワイドでマーケットが広がっています。日本のマーケットプレイスがあまり盛り上がっていないと言われますが、広くまとめると、NFTを1つのテクノロジーのムーブメントではなくて、新しいインフラの革命と考えた時に、情報社会と真剣に向き合うべき。どんなに情報社会が発展しても国家もコミュニティも存在するし、自身の身体性も切り離せるわけじゃないので、どう折衝していくかが論点になると思います。

明確な答えはないんですけど、最初に話した情報社会に生まれたミッシングピースが生まれたという感覚は、ようやくクリエイティブ領域も本格的なインターネットの時代に突入したということ。例えば、昔アーティストが作品を売る際にはコミュニティを醸成していたと思うんですけど、物理的にアクセスできるのがせいぜい30人くらいだったとして、情報社会で物理的制約がなくなって、世界中からアクセスできる分母が増えただけなのかなと。そう考えると、本質的なことはほぼ変わっていないし、情報ツールがこれまでの物理的な障壁を排除していくだけなのだと思います。ただし、そのダイナミズムを推し進めるのはとても重要なことですし、今後も向き合いたい。今日話した話はこの2、3年でどんな対談でも話していなかったので、かなりおもしろかったです。

山峰潤也

山峰潤也
キュレーター、NYAW代表取締役。東京都写真美術館、金沢21世紀美術館、水戸芸術館現代美術センターで、キュレーターとして勤務した後、六本木にあるANB Tokyoの企画運営に携わるほか、エイベックスが主催する「MEET YOUR ART FESTIVAL」等、メディアや企業によるアート事業の企画・監修を行う。主な展覧会に「The World Began without the Human Race and It Will End without It.」(国立台湾美術館)等。
Photography Ittetsu Matsuoka

施井泰平

施井泰平
現代美術家。スタートバーン、アートビート代表取締役。少年期をアメリカで過ごす。東京大学大学院情報学環・学際情報学府修了。2001年に多摩美術大学絵画科油画専攻卒業後、美術家として「インターネットの時代のアート」をテーマに制作、現在もギャラリーや美術館で展示を重ねる。2006年からスタートバーンを構想、その後日米で特許を取得。大学院在学中に起業し現在に至る。2020年にアートビート代表取締役就任。講演やトークイベントにも多数登壇。

スプツニ子!

スプツニ子!
アーティスト、東京藝術大学デザイン科准教授。ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学部を卒業後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で修士課程を修了。2013年からマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教としてデザイン・フィクション研究室を主宰。RCA在学中から、テクノロジーによって変化する社会を考察・議論するデザイン作品を制作。2018年より東北新社フェロー。著書に『はみだす力』。共著に『ネットで進化する人類』(伊藤穣一監修)等。

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アート連載「境界のかたち」Vol.11 NFTがもたらしたアート界のミッシングピースとは? 山峰潤也×施井泰平×スプツニ子!によるクロストーク -前編- https://tokion.jp/2022/06/18/junya-yamamine-x-taihei-shii-x-sputniko/ Sat, 18 Jun 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=120132 ポストコロナにおけるアートを識者達の言葉から紐解く本連載。第11回は、「NFT」について美術館でキュレーターを務めてきた山峰潤也と「スタートバーン」の施井泰平とアーティスト・スプツニ子!による鼎談が実現。

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ビジネスからサイエンスに至るまで、アートの必要性を説くシチュエーションが激増している。コロナ禍で見える世界は変わらないものの、人々の心情が変容していく中で、その心はアートに対してどう反応するのか。ギャラリストやアーティスト、コレクター等が、ポストコロナにおけるアートを対象として、次代に現れるイメージを考察する。

第11回は、“NFT”について。仮想通貨の世界だけではなく、アート業界においてもブロックチェーンの技術を活用したNFTアートがマーケットの新風になっているのは言わずもがな。でも、NFTの実態と機能を的確に理解している人は少ないのではないだろうか。当然の話で、ブロックチェーンもNFTも成熟の途中にあるからだ。今回は美術館キュレーターの経験からメディアや企業とアートの社会的可能性を実証実験する山峰潤也と現代美術家でアートにおけるNFTの活用を事業化したパイオニアの施井泰平、2月に代表作「生理マシーン、タカシの場合」のNFTが50ETH(当時約1,500万円)でコレクションされた、アーティスト・スプツニ子!とのクロストークが実現した。前編はNFTアートの可能性を実例をもとに語ってもらう。

情報時代に即した巨大なミッシングピースの爆誕

スプツニ子!:施井さんから今のNFTの状況を聞きたいです。

施井泰平(以下、施井):ある意味、暴力的な意見、あまりに抽象的で上から目線の話になってしまうんですけど、情報時代に即したマーケットや流通がアートの世界にも求められるだろうと思っていたし、その気配は感じていたものの、ずっとメインストリームになっていかない状況にここ15年くらい、ヤキモキしていたんですよね。だから、いきなりまとめから入りますけど、NFTの一連の盛り上がりについては情報時代に即した巨大なミッシングピースが爆誕したみたいな感想を持っています。「NFTをなんで買うの?」と言う人はそもそもアートを買うという行為に疑問を持ってる人で、普段からアートを買ってる人からすると、NFTは比較的理解しやすいかと思います。開口一番言っちゃいますけど、来たるべき情報時代のアートっていうのが今来ていると。もちろん、アートが急速に大衆化してしまったことによっていろいろ違和感を感じることもあると思いますが。

山峰潤也(以下、山峰):ちょうど僕が美術館から離れたのがコロナのパンデミックの始まりの頃で、その後、日本のコレクターが急増するという現象があったと思うんですけど。そこで美術館ではなくてマーケットとアカデミーとのつながりを考えた時に、アートがコモディティ化する部分と一方で市場が生まれることでアートを支える、ベースの力が育つことが同時にある。社会的にアートの注目度が増していくことによって多様化する作品への期待が膨らみ過ぎることで、ある種の混乱も起こっているけど、時間とともに適正化されていくと思っています。

NFTに関しては客観的に見ていたり、いろいろな相談も受けますけど、実践的なことはこれから。今の単体ではなく、もともとリアルにあったコンテクストと接続していくように、点ではなく面のアクションというか、そういうサイクルを生み出していくんじゃないかということと、そう期待しています。

スプツニ子!:私はこれまで作家として「なんだかアート界に何かが足りない」という気持ちをずっと抱えていたんですよ。今はインターネットで私の作品を知ってたり、観てる人が増えているし、実際にオンライン上で仕事したり、コミュニケーションする機会が現実の世界より多いですよね。なのに、これまで私が作品を売ろうとするとデジタルではないリアルな世界、トラディショナルなギャラリーやアートフェアの物理空間を必ず通さないといけない、ということにモヤモヤした違和感を感じていたので、NFTによって“ミッシングピースが爆誕”っていう言葉が本当に正しいと思う。NFTは2021年に突然やってきて嵐のようにすべての問題を解決していきました。

昨年の秋に施井さんの「SBIアートオークション」で《THE MOON WALK MACHINE》のNFTを販売したんですが、自分にとっては革命が起こった感覚がありました。山峰さんが言う通り、今のアート界はカオス期でもあると思うんです。“.comバブル”の加熱のような、得体の知れないものが突然やってきて、あらゆる憶測が行き交うところはあるけど、“ミッシングピース”は確実にありました。でも、オンライン上でアートをコレクションして、メタバース上で展示するインフラが現れたことで、今後のアートの在り方が変わるのは間違いないです。今のNFTマーケットの不安定さは確かにありますけど、確実にドットコムバブルを乗り越えてインターネットは成長しましたよね。ただ、日本は始まっていない状況なので、アメリカと比較するとキュレーターもアーティストもこれからっていう印象かな。お互い様子を見ている感じですかね。自分で失敗したくないっていうアーティストやギャラリーもいると思いますけど、私は逆にどんどん進んでいきたいですね。

施井:僕もSBIアートオークションを通じて、スプさんのメンタルに触れるっていうか、アーティストが作品を発表する場に立ち会わせていただいたことが本当に貴重な体験でした。時代を切り開いていくのは、こういうメンタリティの人なんだなって改めて気付かされました。スプさんは慎重なところがあって、ものすごくリサーチするけど、あるタイミングで「エイッ!」と突き進むようなたくましさも感じました。

スプツニ子!:ありがとうございます。施井さんはいろいろなアーティストと仕事をしているし、客観的に見られているので、話をしたいなとずっと思っていました。これまでのアートを取り巻く状況とNFTにどんな違いがあるのかとか。ちなみに私はリスクっていう言葉に疑問があるんです。慎重でありたいしリサーチもするけど、NFTはリスクではなく重要な判断という。

施井:そうですよね。

スプツニ子!:リスクを取ってる感覚ではないっていう。

施井:イノベーターって言う方が正しいですね。切り込み隊長。

スプツニ子!:切り込んでみないと何もわからないから。

施井:ちなみに僕等が最初にNFT発行を手掛けた最初のデジタル作品は池田亮司さんなんです。彼は全くマーケットの人じゃないし、バブルに興味はお持ちでないけど、現状のテクノロジーのパラダイムシフトを見て「みんなが使うようになる前に自分が先導して始めようと思った」って仰った時に、すごく意識的だなと感じたんですよね。あと、プッシー・ライオットっていう、ロシア人の反プーチンアクティビスト集団がいて、口座が凍結されてたんですが「FOUNDATION」というNFTマーケットプレイスでNFTの販売を通して活動資金の調達をして注目を集めたんです。池田さんはプッシー・ライオットの活動を見た時にNFTの可能性を感じたとも仰っていたんですけど、その辺がスプさんの活動にも重なると言うか。そのような感じで心あるアーティストのNFT活用事例が重なっていくと土台ができていくと思います。

スプツニ子!:私ももともとプッシー・ライオットが好きなんです。フェミニストパンク集団、ミュージシャンでもあるし、かっこいいですよね。最近、プッシー・ライオットは「ユニコーンDAO」っていう女性やLGBTQのアーティストを支援するDAO(分散型自律組織)を立ち上げたんですが、私が彼等のキュレーターの1人に就任することになって、ちょうど明日も「ユニコーンDAO」と話をします。彼女達って今はNFTアーティストの中心的、シンボリックな存在ですけど、以前はマーケットとは程遠いアンダーグラウンドでクールな存在でした。

施井:有名になったのってワールドカップの決勝に乱入した時ですよね(笑)?

スプツニ子!:そうそう! 私は反プーチンのパフォーマンスで逮捕された時からファンだったけど、もしかして日本ではあれで有名になったかも。さっきお話ししていた、「FOUNDATION」で高額で作品を販売することでファンドレイズして、一部をDV被害者女性のためのシェルターに寄付していました。彼女達のインタヴューでも「ポリティカルなステイトメントを持っているアーティストが資金調達できる」って話してました。NFTってビジネスっぽい感じでしょ! っていう偏見を持ってる人がいるなら「違うよ」って伝えたい。

施井:むしろアナーキズム(無政府主義)的な要素も大きいですよね。

山峰:日本ではまだ、そういった部分が認知されていない。日本だとバブルなイメージ、アートシーンだと経済系と強く結びついているような見え方があって、そこが二の足を踏ませているんだと思うんですけど、僕は可能性を感じています。DAOとアナーキズムでいうと、美術の世界は権威的な構造によって守られているので、そのラインがあることで価値が決まったり、流通してきたわけですよね。あとは、海外での売買がベースになるので、映像出身の僕としてはマーケットの中で社会的なアクションをしているアーティストは生きづらいと感じてはいました。

スプツニ子!:わかってくれる側で嬉しいです(笑)!

山峰:特に、アナーキズムっていう中央集権から自由になる思想からコミュニティを立ち上げて、経済圏を作れるようになったことは、アーティストから見るとチャンスですよね。自分達でコミュニティを作っていく意味でも素晴らしいことですけど、そこに到達するまでの事例がもっと国内で発信できるといいなって思います。

スプツニ子!:そうそう。「ユニコーンDAO」の事例を共有すると、NFTの有名アートコレクター達がトークンを買う形でDAOを立ち上げていて、プッシー・ライオットがコアファウンダーの1人なんです。このDAOはテクノロジーやクリプトの世界が白人男性中心という事に警鐘を鳴らしていて、女性やLGBTQのアーティストの作品をみんなでコレクションしてプロモーションするというミッションを持っています。コレクションしている作品の一つに、粘土で女性器のようなオブジェを作ってOpenSeaに投稿してるコレクションがあるんですけど、おもしろいですよ。

施井:これ、いいな。買おうかな。

スプツニ子!:こういう作家を見つけてきて、DAOでコレクションするとコレクターの注目が高まって価値が高くなるんですよね。アジア圏だとスプツニ子!の活動も注目してくれていて、「ユニコーンDAO」の新しいコミッションや作品の話をしています。彼女達はNFTでお金が集まるようになったけど、私腹を肥やそうと思っているわけではないんです。むしろ利益を分配しようとしてる。

施井:仕組みとしてはファンドレイズする時にDAOを使って、ヴォーティング(投票)で何を買うか決めていく感じなんですか?

スプツニ子!:DAOのメンバーで何を買うかを決めます。DAOとして買うことで作品の価値が上がって、ファンドみたいにもなるんですよ。自分達で買えば、価値も上がるしコミュニティもエンパワーできる、という考え方です。

山峰:陶芸作品のようにリアルで作っているアーティストとか、リアルなアクティビスト、パフォーマンスをやってるようないろいろなタイプの方がいるんですね。

スプツニ子!:私もこのDAOにどんな人が集まってくるんだろうという気持ちで見ています。こういう流れをもっと知ってほしいですね。

地域性を超えた、共感だけで人が集まる場所が作れる可能性

山峰:この事例もそうなんですけど、施井さんに聞きたいのが、コミュニティを作る過程で、売りづらいけど社会的な意義のあるアーティストってすごくいたと思うんです。ただ、生息ができなかった。でも、そういうアーティストこそ語られるべきだと思っていたんです。ヴェネチア・ビエンナーレに出てくるようなアーティストでも、社会的な発信力はあるけど、マーケットだと売りづらいので、なかなか難しい状況が続いていた。それが価値観ベースで思想やスタンスに共感している人達が集まれる、共感的なナラティヴ(物語)を共有するためにNFTを買っているような気がするんです。これまで生きづらかったアーティストが出ていく場所になると感じています。あと、文化財がデジタルコンテンツ化していくことでリアルに存在するものを守れる状況が作れるでしょうし、あらゆる解決策になるような可能性をすごく感じます。その上で、DAOとNFTとメタバースをどう考えているのか、その関係性の中でできることは何なのかということ。

施井:マイノリティのアートというか、もともと市場で評価されにくかった作品がDAOやメタバースで押し上げられる状況はあると思います。最初に、情報社会に対する課題の解決策としてNFTが爆誕したと話したんですけど、そもそもコロナがトリガーになってるんですよね。最初に情報社会と話した理由はNFTってただの技術ですけど、何を価値化するかというところが重要です。情報社会は、ダイバーシティを共有するリゾーム型の社会を実現できるものだと思うんです。でも、コロナ前のアートマーケットのデータでは、黒人アーティストの取引内訳が80%近くが(ジャン=ミッシェル・) バスキアでしたし、草間彌生さんも女性でなければ取引額の桁が違ったという話も聞きます。

間接的な話になるんですけど、コロナが発生して間もない時にある識者が、差別が大きな社会問題になると予見していた通り、BLM(ブラック・ライブズ・マター)の運動が起きました。その後はグッゲンハイムのチーフ・キュレーターに黒人が就いたり、何でもかんでも黒人を採用したら良いのかという話になって。#me too運動もそうですけど、差別反対運動なんかは情報社会と密接に関係しているんですよね。だからコロナで情報社会が大きく前進したと同時にそれとシナジーのある社会構造も表出したと。そういった状況の中でちょっとおもしろいと思ったのが、クリプトパンクス。10,000個のキャラクター画像の6割が男性、4割が女性で、9体だけエイリアンパンクがいたり、数体だけ帽子をかぶっていたり。リアルな世界とは異なり、クリプトパンクの経済圏では、マジョリティな男性キャラクターの価値が一番低いんです。DAOにしてもその考え方を推し進めるというか、メジャーじゃないもの、つまり“レア”なものに価値や力を与えるのかなと。SBIアートオークションで初のNFTセールをする時にスプさんに声をかけた理由としては、当時、世界中の男性起業家が月に行ったり、企画をしていた時に、月にハイヒールの足跡を残す《THE MOON WALK MACHINE》はすごく時代に即している感覚もありましたし、何よりセールのステイトメントにも合う。ポストヒューマン的な思想もタイムリーでした。NFTが注目される前から、作品のコンセプトの中心にNFTのポテンシャルが潜んでいたスプさんが適切というか、グッときたっていうか。全体的な答えを言うとDAOもNFTもメタバースもそういう世界観と相性がいいのかなって思います。

山峰:言語の問題はありますけど、英語が使えるコミュニティだと地域性を超えた、共感だけで人が集まる場所が作れると思うんですよね。国や地域、分野とか、これまでできなかった垣根を越えられるのはおもしろいと感じます。そこに経済がついてくるという期待値はあると思います。

スプツニ子!:これまでもアートやカルチャーをパトロンする人達って、ルネッサンスも産業革命時代も、それぞれの時代の富裕層だったわけで。でも、ここ20年はテクノロジー・ビリオネアの時代だったにも関わらず、テックビリオネアがアートをパトロンするためのインフラが十分になかったんですよね。NFTは彼等がアートやカルチャーを支援するために相性がいいシステムだと思います。でも、従来のアート業界側から見るとテクノロジー界が搾取しにやってきているように見えるのかな……ナップスターとかSpotifyみたいなプラットフォームがCD中心の音楽業界を衰退させた歴史もありますし、そういったテクノロジーによるパラダイムシフトがアート業界にも起きる感覚はありますね。

山峰潤也

山峰潤也
キュレーター、NYAW代表取締役。東京都写真美術館、金沢21世紀美術館、水戸芸術館現代美術センターで、キュレーターとして勤務した後、六本木にあるANB Tokyoの企画運営に携わるほか、エイベックスが主催する「MEET YOUR ART FESTIVAL」等、メディアや企業によるアート事業の企画・監修を行う。主な展覧会に「The World Began without the Human Race and It Will End without It.」(国立台湾美術館)等。
Photography Ittetsu Matsuoka

施井泰平

施井泰平
現代美術家。スタートバーン、アートビート代表取締役。少年期をアメリカで過ごす。東京大学大学院情報学環・学際情報学府修了。2001年に多摩美術大学絵画科油画専攻卒業後、美術家として「インターネットの時代のアート」をテーマに制作、現在もギャラリーや美術館で展示を重ねる。2006年からスタートバーンを構想、その後日米で特許を取得。大学院在学中に起業し現在に至る。2020年にアートビート代表取締役就任。講演やトークイベントにも多数登壇。

スプツニ子!

スプツニ子!
アーティスト、東京藝術大学デザイン科准教授。ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学部を卒業後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で修士課程を修了。2013年からマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教としてデザイン・フィクション研究室を主宰。RCA在学中から、テクノロジーによって変化する社会を考察・議論するデザイン作品を制作。2018年より東北新社フェロー。著書に『はみだす力』。共著に『ネットで進化する人類』(伊藤穣一監修)等。

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