木村和平 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/木村和平/ Thu, 05 Oct 2023 06:27:06 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 木村和平 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/木村和平/ 32 32 対談:今泉力哉 × 木村和平 2人の創作へのこだわりと映画『アンダーカレント』の“わからなさ” https://tokion.jp/2023/10/05/undercurrent-rikiya-imaizumi-x-kazuhei-kimura/ Thu, 05 Oct 2023 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=210754 映画『アンダーカレント』の今泉力哉監督とスチール写真を手掛けた写真家の木村和平との対談。2人の創作に対するこだわりとは。

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今泉力哉(左)と木村和平(右)

今泉力哉
映画監督。1981年生まれ、福島県出身。2010年、『たまの映画』で商業監督デビュー。2013年、『サッドティー』が東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門に出品され、高い評価を受ける。2019年、『愛がなんだ』(2019)が大ヒットを記録。2023年、Netflix映画『ちひろさん』を手掛け、世界配信と劇場公開を同日に行う。その他の主な作品に『his』(2020)、『あの頃。』(2021)、『街の上で』(2021)、『猫は逃げた』(2022)、『窓辺にて』(2022)など。最新作として、漫画「からかい上手の高木さん」の実写化を手掛ける。
https://twitter.com/_necoze_

木村和平
写真家。1993年生まれ、福島県出身。東京在住。ファッションや映画、広告の分野で活動しながら、幼少期の体験と現在の生活を行き来するように制作を続けている。第19回写真1_WALLで審査員奨励賞(姫野希美選)、IMA next #6「Black&White」でグランプリを受賞。主な個展に、2023年「石と桃」(Roll)、2020年「あたらしい窓」(BOOK AND SONS)、主な写真集に、『袖幕』『灯台』(共にaptp)、『あたらしい窓』(赤々舎)など。
https://twitter.com/kazuheikimura
Instagram:@kazuheikimura

豊田徹也による人気漫画『アンダーカレント』を、今泉力哉監督が映画化し、10月6日から公開される。そこでスチール写真を手掛けたのは写真家の木村和平だ。これまでにも木村は『愛がなんだ』をはじめ今泉作品に関わってきたが、木村のスチールは監督にとって何が特別なのか。そして、木村から見た今泉作品の魅力とはどんなところなのか。映画とスチールの関係を通じて、2人それぞれの創作に対するこだわりを聞いた。

——木村さんが今泉監督の作品に関わるようになってから長いですが、監督は木村さんのスチールのどんなところに惹かれますか?

今泉力哉(以下、今泉):スチールを撮った時の空気感みたいなものが、写真にすごく残っているところですね。あと、俳優さんに無理をさせないというか。状況を伝えたうえで、できるだけ自然な感じでいてもらう。そういうところは自分が撮影する時と通じるものがあるなって思います。

——今監督がおっしゃったことは、木村さんがスチールを撮影する時に意識していることなのでしょうか?

木村和平(以下、木村):言われてみれば確かにそうかなって思いますが、一番大事にしていることではないですね。今泉さんは「役者に無理をさせない」って良い感じで言ってくれましたけど、そうでもないかもしれない。

今泉:させている時もある?

木村:芝居の延長だけど、ちょっと違うことをさせる、というのを意識しているところがあって。でも、それをしつこく追及しないというか、見切りをつける時は早い。そういうところは今泉さんの映画にもある気がします。

今泉:やばい。いろいろ見られてる(笑)。

——そういう被写体との関係性は映画のスチールだからなのでしょうか。それとも他の作品でも同じですか?

木村:自分の性格がいちばん大きいと思いますが、映画の仕事は他の仕事とは違うのは確かですね。自分が主導権を握っている仕事ではないので。映画には「参加させてもらっている」という意識があるのですが、そこで何か爪痕を残したいっていうスポ根的な意識が働く(笑)。短い期間の中で、役者さんと共鳴する瞬間を見つけたいと思うんです。だから、「あのシーンの後、どうしていると思いますか?」みたいなことを役者さんに言って、芝居に集中している役者さんの意識を少しズラさせる。そういう撮り方は映画のスチールの時しかないというか、他の仕事ではやりようがないですよね。映画みたいな「物語」がないので。

——そうやって役者に働きかけて撮影する、というのは、ある種の演出のようでもありますね。

木村:演出と言えるのかなあ。

今泉:スチールの撮り方ってカメラマンによっていろいろあると思うけど、木村さんのように役者さんに語りかけるのは、役者さんが演じていることへのリスペクトをすごく感じるので、役者さんからしたらありがたいと思いますよ。「一回、役を忘れて」って平気で言っちゃうカメラマンもいますからね。作品のイメージとかけ離れていても役者を美しく撮る、というやり方もあるから、それを理解している役者さんだといいけど、「役を忘れろだと?」ってイラッとしてしまう人もいる。僕は木村さんみたいに、俳優が役を演じていることを活かした演出をしてほしい。

木村:でも、撮影の目的次第では、役を忘れてもらってもいいと思うんですよね。全員の集合写真を白ホリで撮影するのであれば「役を忘れて」と言うのもありかもしれない。

今泉:木村さん、そういう写真も撮れるんですか? ガチガチに作り込んだような。

木村:撮れないです(笑)。というか、撮ったことがないからわからないですね。一度、やってみたい気はするけど、やっぱり、自分が関心があるのは役のままでその場でいてもらうことですね。

光について

——木村さんのスチールを見ていると、映画には描かれていない時間を撮っているような気がします。

今泉:(井浦新と真木よう子が沼の前に立っているポスターの写真を見て)これも映画の時間ではないですよね。

——真木よう子さんの顔は、ヒロインのかなえの顔になっていますよね。きっと、映画を観た人なら、あのシーンの前後だなってわかる。

木村:例えば「切ない表情をしてください」って言って撮るのと、「あのシーンの後、どうしていると思いますか?」とだけ言って撮るのとでは絶対に違う。役者さんはプロだから「切ない顔」をすぐ作れちゃうので、なるべくポーズとか表情の指示をしたくないんですよね。だから、この写真も「こっち向いて」とか言ってなくて、たまたま真木さんがこっちを見た時に撮ったんです。

——この写真をはじめ木村さんの写真は自然光の取り入れ方が印象的なのですが、そこは意識されているのでしょうか。

木村:自分の作品に関して光の話をしていただくことが多いんですけど、自分は独学で写真を学んで、スタジオで働いた経験もないのでライティングのことがあまりよくわかってないんですよね。だから、その場にある光を活用するしかない。変に光を操作せずに、その場の光を使った結果というか。自然光を使うことを、自分のスタイルにしようと思っているわけではないんです。

今泉:ファッション誌などで撮る時も?

木村:基本的にはそうですね。たまに広告とかだと照明さんに助けてもらうこともありますけど。近年は光から離れる努力をしているところです。この写真(ポスターの写真)は結局、光に頼っちゃいましたけど(苦笑)。

——映画本編も自然光を捉えた映像が印象的でしたが、監督は照明に関しては何か意識していることはありますか?

今泉:あんまり考えてないんですよね。照明と色味とかはカメラマンの提案を受けて、「それでいいと思います」みたいな感じなんです。今回の作品では、ちょっと青っぽくして汚しを入れているんですけど、それも撮影の岩永(洋)さんからの提案でした。よくわかってないんですよ、照明のことを。ロケハンの時に岩永さんに「今泉さんは撮りたい画ってないんですか?」って聞かれた時に「ないんだよね」って言っちゃって。そしたら、岩永さんがショックを受けて「今の言葉、一生忘れません」って言ってた(笑)。

木村:でも、なくはないでしょう?

今泉:うーん。画よりも人物をどう生かすかの方が重要なんだよね。

木村:優先順位が違うんですね。

今泉:そう。基本、風景だけの画って撮らないし。人があっての景色だから。芝居は通して撮るんですけど、ツーショットで押さえて、寄りも全部押さえる。カメラマンには「使うところが決まっていればそこに力を入れて撮れるけど、全部使えるように撮るのは疲れる」って言われるんですよ。でも、そこで照明にこだわられたくないっていうか。そこだけ、すごくきれいに撮れていても使いたくない。なるべくフラットな感じにしておきたいんです。

木村:監督が映像的なこだわりよりも、会話に注力しているからこそ、あの独特の空気感が出ているんだと思います。特に今回の映画はそうだった。すべてのカットの照明を作りこんでたら、いわゆる美しい映画になってしまって、監督の会話劇の面白さが薄れそう。

今泉:その辺を岩永さんはすごく理解してくれているんですよね。

——監督の作風を理解しているカメラマンじゃないとやりにくいですね。

今泉:そうですね。でも、サイズとかは細かく言うから、岩永さんは「任せるって言いながら、任せずにこだわるよなあ、今泉さん」ってイライラしてますけど(笑)。

——木村さんはスチールを撮る時にこだわっていることはありますか?

木村:ズームレンズは使用せず、単焦点の標準レンズしか使わないことですね。それはスチールに限ったことじゃないですけど、スチールの時は特にそうかもしれません。スチールって絶対望遠のズームレンズがあった方がいいと思うんですよね。いろんな機材があってスタッフさんがたくさんいるなかで役者を撮らなくてはいけないので、遠いところから顔のアップを撮れたほうが絶対いい。でも、僕は普段の仕事で使っている、ズームができない単焦点のレンズを映画のスチールでも使ってきました。それはどうしてなのか? と考えた時に、自分の視点が変わることのほうが大事なんじゃないかと思ったんです。レンズによって視点が変わるよりも、自分が動いて視点を変えていく方が大事だなと。

——その違いはなんでしょう?

木村:僕がいることを意識させない、ということも大事かもしれませんが、僕は僕がいることをわかったうえで撮られて欲しい、という気持ちがあります。役者さんとコミュニケーションをとったうえで撮りたいんです。

——撮られていることを意識する、というのは大きな違いですね。

今泉:今の木村さんの話を聞いて思ったんですけど、映画の長回しのシーンって観客が映画と同じ時間を体験するわけじゃないですか。しかも、カットがないので作り手のことを意識させないし緊張感も出る。だから、映画の2人に集中してほしい、と思ったシーンでは長回しにするんです。じゃあ、その場にスタッフを入れずにカメラだけ置いて、隠しカメラのように撮れば、もっと緊張感ある映像が撮れるか? というと絶対撮れない。大勢のスタッフがいると気が散るので、できるだけ少ない人数にしますけど、そこに人がいて見つめていることでしか生まれない演技がある気がして。それは木村さんが言ったことと通じるものがある気がしますね。監督がモニターの前にいるか、俳優を直接目で見るか、 でも全然違ってくるんです。

今泉作品の魅力

——なるほど。現実のリアルと映画のリアリティは違いますもんね。木村さんからご覧になって、今泉作品の魅力ってどんなところでしょうか?

木村:『アンダーカレント』は今泉さんと出会う前に、初期の作品を観ていた時のような感じで観られたというか。演出しているところ、してないところの「見切り」っていう言葉をまた使っちゃうけど、いい意味での見切りみたいなのをすごい感じました。監督の意志でコントロールし切れないことを受け入れるっていうか、ある種見守る姿勢で眺めているシーンが結構あるなと思ったんです。それが監督の初期の作品で「いいなあ」って思ったところなんですよね。『アンダーカレント』は2人の会話シーンが多い映画でもあるので、特にそういうところを強く感じました。

今泉:「見切り」っていうのは、どこまでネバるか、でもあると思うんですよ。自分が頭の中で思っているものになるようにすべてコントロールすべきなのか? これ以上、テイクを重ねても何も出ないんじゃないか? みたいなことも含めて。だから、この作品の感想で「見切り」ということを言われるのは、あまり人に見られたくない部分を見られた気がして、けっこうエグいというか(笑)。

木村:いや、僕は完全に褒め言葉として言ってますよ。

今泉:もちろん、そうなんですけど、なんでそんなにわかるの?っていうのが怖い。木村さんと出会ったきっかけって、僕が『アジェについて』っていう舞台をゴールデン街の劇場で演出した時に、木村さんがお客さんとして来てたんですよ。そのあと、木村さんがTwitterに舞台の感想を書いたのを読んで木村さんにスチールをオファーしたんです。その感想というのが、「面白く観たけど、笑いに関しては作り手が目指したところまで持っていけてないんじゃないか」みたいなことで、「それ、バレる?」と思って(笑)。だから木村さんと仕事をするきっかけって、木村さんの写真じゃなくて言葉なんですよね。今回の映画に関しては自分自身わかってないことが多かったので、全部コントロールしようとは思わなかったんですよ。自分より役者さんの方がわかっていることもあると思ったし。だから、今までの映画で一番理解できてないかもしれない。

木村:監督がすごく悩んでいるのはなんとなく伝わってきました。でも、役者に委ねるというのは、役者を信頼していないとできないことだし。

今泉:もちろん、全部投げているわけではないですけどね。でも、「それは絶対違う」というのはわかるし。

——これまでの作品と比べて、一番わからなかった理由というのは、なんだったんですか?

今泉:まず、原作のすごさ。あと、原作のテーマが「わかる/わからない」じゃないじゃないですか。

木村:この原作を「わかりました」って言える人って、まずいないんじゃないですか。

今泉:この原作って、これまで何度か映像化の話があったけど、作者の豊田(徹也)さんは断ってきたそうなんです。僕が初めて豊田さんに会って話をした時に、「この漫画って映画になって面白くなると思いますか?」って聞かれたんですよ。俺は「なります!」って言える人じゃないから、「ほんとですよね。すごく難しいと思います」って言ったから、豊田さんは信頼して任せてくれたんじゃないかと思うんですよね。こういう、深いというか重いテーマを真正面からやったのは久しぶりだから、早くいろんな人の感想を聞いてみたいです。多分、賛否両論出てくると思うし。

——公開が楽しみですね。監督も木村さんもヴィジュアルの表現に関わられていますが、映画と写真では大きな違いもあります。今泉監督から見た写真の良さ、木村さんから見た映画の良さがあれば教えてください。

今泉:写真は、その一瞬が撮れたらいいっていうところが良いですよね。その一瞬を撮るっていうのが、めちゃめちゃ大変なんだろうけど。例えば、こういう取材で撮影時間が10分だったりすると、撮られながら、こんなにたくさん撮れるんだって思うんですよ。映画だったら段取りしている間に10分過ぎてしまう。そう思うと映画って贅沢ですよね。写真とか、お笑いもそうですけど、今起こっていることがすぐに形になる。そこが強みかな。

木村:映画には時間の前後が映ることが魅力的に感じます。自分は写真をこれからもやっていこうと思っているので、写真でそれができないかなって考えているんです。写真は「あ」っていう瞬間しか撮れないけど、その1枚で「ああ」みたいなものが写せないかしら、みたいなことを考えている。それって、映画への羨ましさみたいなところからきていると思います。

今泉:映画を撮ろうとは思わないですか?

木村:スチールで映画に関わるまでは撮りたかったんですけど、関わり始めてからは無理だなって(笑)。

今泉:いや、それは木村さんが映画の現場を見ているからで、そういう撮り方じゃないようにすればいい。木村さんがやりやすい現場を作ればいいんですから。

木村:それができるといいですけど。

——監督は写真を撮ったりは?

今泉:まったく撮らないですね。携帯でも撮らないし、自分の子供を撮ったりもしない。

木村:そうなんですか。

今泉:いい写真が撮れないんです。自分が撮ったものを見ても、全然撮れてねえじゃん!って嫌になっちゃう。反省するのは映画で十分ですよ(笑)。

Photography Tameki Oshiro

映画『アンダーカレント』

■『アンダーカレント』
銭湯の女主人・かなえ(真木)は、夫の悟(永山)が失踪して途方に暮れていた。そこへ堀(井浦)と名乗る謎の男が現れ、住み込みで働くことに。友人の勧めで探偵・山崎(リリー)と悟の行方を探すことになったかなえは、夫の知られざる事実を知り、やがて自分自身の心の奥底に触れることに……。

10月6日より全国公開
出演:真木よう子、井浦新、江口のりこ、中村久美、康すおん、内田理央、永山瑛太、リリー・フランキー
監督:今泉力哉 
音楽:細野晴臣
脚本:澤井香織 今泉力哉 
原作:豊田徹也『アンダーカレント』(講談社「アフタヌーン KC」刊) 
撮影・照明:岩永洋 
特写:木村和平
企画・製作プロダクション:ジョーカーフィルムズ 
配給:KADOKAWA
©︎豊田徹也/講談社 
©︎2023「アンダーカレント」製作委員会
https://undercurrent-movie.com

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木村和平が写真展「石と桃」を開催 “不思議の国のアリス症候群”に着想を得た作品を展示 https://tokion.jp/2022/03/21/kazuhei-kimura-ishi-to-momo/ Mon, 21 Mar 2022 12:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=104016 時間の流れやものの大きさなどが現実世界と異なって感じられる症状をテーマに、10年にわたって作品を制作。会場は東京・飯田橋のロールで、会期は4月1〜17日。

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写真家の木村和平は、写真展「石と桃」を東京・飯田橋のロールで4月1〜17日に開催する。

本展では、木村自身が幼少期から抱える、時間の流れやものの大きさなどが現実世界と異なって感じられる症状“不思議の国のアリス症候群”の感覚を残すべく、10年間にわたって実験的に撮影した作品を展示する。タイトルの「石と桃」は、モノトーン調の硬いものと発色のよい柔らかいものが混ざり合うという、彼が日常的かつ突発的に見るイメージを言語化したものとなる。

■石と桃
会期:4月1〜17日
会場:ロール
住所:東京都新宿区揚場町2-12 セントラルコーポラス105号室
時間:13:00〜19:00
休日:月曜
Webサイト:https://yf-vg.com/roll.html

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新作『あたらしい窓』を通して見る、木村和平の写真世界 https://tokion.jp/2020/12/25/kazuhei-kimura/ Fri, 25 Dec 2020 11:00:03 +0000 https://tokion.jp/?p=15907 木村和平による新写真集および個展『あたらしい窓』。そのタイトルから彼の写真への姿勢や作品のテーマに迫る。

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写真家・木村和平は音楽や映画、ファッションなどの分野で精力的に活動しつつ、過去の体験や現在の生活に根付いた作品を発表してきた。被写体の輪郭はまばゆい光や粗い粒子により曖昧になることでかえって強調され、神秘性やノスタルジーを感じさせる。日常の風景が刹那的な光に照らされるからこそ、特別な輝きを放っている。

この度、2016〜2020年に撮影した写真の中から編集した写真集『あたらしい窓』(赤々舎)を2021年1月2日に発売する。それに伴い、個展を東京・学芸大学のBOOK AND SONSと、吉祥寺のbook obscuraの2会場で開催。前者では写真集の中から構成した作品、後者では未収録の作品をそれぞれ展示している他、写真集も先行販売している。『あたらしい窓』というタイトルから彼の写真への意識に迫るとともに、写真集と個展への思いを聞いた。

──どのような経緯で個展を2カ所同時開催するに至ったのでしょうか?

木村和平(以下、木村):もともと2カ所で開催する予定はありませんでした。写真集は2年くらいかけて作ったのですが、個展は後回しになってしまっていて。どこで開催するかと考え始めた時から、窓があって自然光が入る場所がいいと思っていたのですが、まず浮かんだのがBOOK AND SONSでした。依頼したのが10月初旬でとても遅かったのですが、調整してくださったんです。

そのことを前からお世話になっていたbook obscuraの黒崎(由衣)さんに話したら、同時開催しようと言ってくれて。BOOK AND SONSとは違う内容にしようと相談した結果、写真集に載せきれなかった作品を展示することになりました。というのも、前に出した『袖幕』と『灯台』という写真集は着地点がある程度頭にある状態で撮影した作品だったんですが、『あたらしい窓』は膨大な数の写真から着地点を見つけて編集した写真集なので、好きだけど入れられなかった写真がいっぱいあるんです。写真選びをしている時にも黒崎さんに相談していました。

──『あたらしい窓』というタイトルをつけた理由はなんでしょうか?

木村:まず『あたらしい窓』という言葉の響きが好きなんです。「窓」は「生活」の比喩として使っています。僕は生活圏内の人やものを撮っていますが、そこでは人との関係性が変化したり、ペットが増えたり、引っ越せば家も変わりますが、「窓」は常に「生活」の中に存在している、象徴のようなものです。あとは、自分の写真には窓の要素が多いな、という気付きから来ている言葉でもあります。

そして写真集を作ることが決まって、赤々舎の姫野(希美)さんと話している時に、写真における“鏡と窓の役割”という概念を教わりました。恥ずかしながらそれまで知らなかったのですが、1978年にMoMAでジョン・シャーカフスキーというキューレーターが『Mirrors and Windows』という展覧会を開いて、100人の写真家を「鏡派」と「窓派」に分けて作品を展示したんです。「鏡派」は自分と向き合って内面を作品にする写真家で、「窓派」は社会など外のことを観察して作品にする写真家のことをいうんですが、それでいうと僕は「鏡派」なのかもしれません。でも僕は自分の中に閉じこもって制作をしているわけではなく、作品を社会へと向けたい気持ちがある。だから“鏡と窓”の話を聞いた時に、『あたらしい窓』というタイトルは自分にフィットしていると思ったんです。姫野さんとも話し合って、最終的にこのタイトルに決めました。

──それでは日常において、どのような時に写真を撮りたくなるのでしょうか?

木村:僕は普段あまり写真を撮らない方だと思うんです。家にはカメラがあるのでまた別ですが、外出する時はカメラを持っていないことも多いし、写真を撮るためにどこかに行くこともしない。どのような時に撮るかを考えれば考えるほど、言葉にするのは難しくて。例えば「光と影がきれい」とか「人の動きがすてきだ」とかもあるんですけど、サボった表現で言えば「自分の中のあらゆる条件をクリアしたものが目の前に現れると、これを逃したらいけない」という気持ちになり、その時にたまたまカメラを持っていたら撮影するんです。

──さまざまな偶然が重なった結果、写真を撮るんですね。

木村:友達とかと遊んでいる時に、その人の髪が風になびいたり光が当たったりしてきれいだなと思っても、カメラを持ってないこともあります。とはいえカメラを持っていればよかったと後悔することもあまりないと最近気付きました。目で見ているだけでも楽しいんです。撮れなかった景色を再現しようとすることもないし、撮れない日があってもいいと考えています。

ただ、こんな話をしていると必ずしも自分には写真は必要ないんじゃないかと思うんですけど、いざカメラを取り上げられたらやっぱり生きていけない。頻繁に撮らないからこそ、わざわざ撮る写真とはどんなものなのかを『あたらしい窓』で考えました。

──光や風の条件などによって一瞬しか現れないような風景を捉えた写真が多いので、普段あまり撮影しないのは意外でした。

木村:その代わり撮りたいと思ったら納得いくまで撮り続けます。撮る時には頭の中で理想形がイメージできるし、絶対に良い写真になると思っているんですよね。

──裏を返せば、写真を撮るという行為よりも、日常生活の方が大事ということでしょうか?

木村:そうですね。写真を撮ることよりも、誰かと出掛けたいとかあそこのお店でご飯を食べたいというような行動目的が第一優先です。

自宅にも写真的に映えるものという動機ではなく、自分が嬉しくなる家具やものだけを置いています。自分がしたい生活のために好きなもので部屋を飾っているから、結果的にその写真を撮るんです。

──自分が好きなものにあふれた部屋を撮るという行為は「鏡派」的ですね。

木村:僕は誰も扱っていない新しい表現をしているわけでも、自分の外のことを積極的に取り入れて制作しているわけでもありません。自分のことしか自分の言葉で語れないと考えています。ただ、撮影する動機は「鏡派」でも、その写真が社会に何かを働きかける存在になってほしいと思っています。だから一見「鏡」であるようで「窓」ともいえるのかなと。僕は音楽や映画、服などに影響を受けているのですが、作り手のエッセーみたいなパーソナルな内容なのに、受け取り手が自由に解釈できたり、それぞれの体験と置き換えたりできる作品に感動してきました。自分はそれを写真でやりたいんです。

──まさに『あたらしい窓』ですね。

木村:自分の写真も好きなように見てほしいですね。もちろん自分が作品で言いたかったことはあるので、写真集や個展ではその手助けとなるようなものを用意しますが、個展でお客さんに写真や構成の意図を質問された時は、「どう思いましたか?」って聞き返したのちに、自分の考えを話したりします(笑)。

──『あたらしい窓』は、近しいはずの存在に感じる「距離」がテーマの1つだとお伺いしました。

木村:そもそも仲が良い人と一緒にいても、その人が遠い存在だと感じることが思春期くらいからありました。『あたらしい窓』では1人の女性がベースになっていますが、1冊まるごと彼女にフォーカスした本を作りたかったわけではありません。被写体に優劣はなくて、自分にとって大切な人やもの、そして動物達を等しくみつめる、ということをしたかったんです。

テーマを考えたきっかけについてですが、ベースになった女性はずっと髪が長かったのですが、ある時バッサリ切ったんです。長い髪を切ることはさまざまな意味を持つことがあるかと思います。本人がどんな気持ちだったのかはわからないんですが、彼女が髪を切った時と、僕自身や彼女自身、そしてお互いの関係性がどんどん変化してきていると感じたタイミングが一致していると思ったんです。『あたらしい窓』では彼女が長かった髪を最後に切るという構成にしようと思い、写真集では髪の長いことが強く伝わる写真を表紙にして、個展では最初に目に入る場所に大判のその写真を飾りました。他の写真は小さくプリントして作品との物理的な距離をとったり、最後にたどり着く部屋には髪の短い写真を1枚だけ飾ったりしています。もちろん髪を切ってあなたは変わってしまったと言いたいわけではなくて、彼女を含めさまざまな対象への敬意と、新しい窓(生活)に向かっていくことへのはなむけのようなものになっていたらいいなと思います。『あたらしい窓』というタイトルや「髪を切った女性」などがキーワードになって、作品を見る人が考える手掛かりになってくれたら嬉しいです。

──今回の展示では大判の写真以外はすべて手焼きして、写真集もデータではなく実際に焼いた写真を入稿して制作したそうですね。

木村:そうですね。今回の作品はパーソナルなことが出発点にあるので、どうしても全部自分でやりたい気持ちがありました。今までも手焼きができないわけではなかったんですが、正直自信を持って「これが自分の色です」と言えるほどの技術がありませんでした。今回は写真家の熊谷聖司さんに教わったおかげで、手焼きの写真を展示することができました。僕は熊谷さんのプリントがずっと好きなんですが、去年末にbook obscuraでばったりお会いしたんです。かねて黒崎さんが僕の作品を紹介していたらしく、熊谷さんが僕を認識してくれていて、そのまま居酒屋で飲んだんですよ。そしたら熊谷さんが自宅とは別に暗室用の部屋を借りて、そこで暗室教室も行うというお話を聞いて、今しかないと思って教えていただきたいとお願いしました。

年明けに全10回の教室を2〜3週間で終わらせて、ある程度やり方を覚えたあとはひたすら練習。そうしているうちに新型コロナがはやりだして仕事がなくなったので、鍵だけ開けてもらう形で頻繁に暗室に通って、毎回6時間くらいひたすら焼いていました。今年だけで1000枚近くは焼いたと思います。もちろんまだまだですし、熊谷さんには「あと3000枚くらい焼けばわかるんじゃない?」と言われましたが(笑)、ある程度やりたいことがコントロールできるようになってきたので、今回は序章として手焼きを発表することにしました。

──最後に、今後の予定があれば教えてください。

木村:コロナのせいで不透明なことも多いですが、『あたらしい窓』の巡回展を来春にかけて開催する予定です。あとは映画のビジュアル撮影が1件決まっているので、それを頑張りたいですね。

木村和平
1993年、福島県いわき市生まれ。大学進学に伴い上京し、2012年に写真を撮り始める。2018年に「第19回写真『1_WALL』審査員奨励賞」を受賞。現在までに発表した写真集は『piano』(2015年)、『楽譜』(2016年、共に私家版)、『袖幕』(2018年)、『灯台』(2019年、共にaptp books)。個展は『piano』(2015年)、『袖幕/灯台』(2019年、共に東京)を開催。アーティスト写真や、映画『愛がなんだ』(2018年)や、『佐々木、イン、マイマイン』(2020年)のビジュアル撮影なども行っている。

■『あたらしい窓』
会場:BOOK AND SONS
会期:2020年12月12日~2020年12月27日 
住所:東京都目黒区鷹番2-13-3 
時間:12:00〜19:00
休日:水曜
入場料:無料

会場:book obscura
会期:2020年12月10日~2021年1月18日 
住所:東京都三鷹市井の頭4-21-5
時間:12:00〜20:00
休日:火曜、水曜
入場料:無料

※年末年始の営業日は各店舗へお問い合わせください。

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