連載「Books that feel Japanese -日本らしさを感じる本」 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/連載「books-that-feel-japanese-日本らしさを感じる本」/ Wed, 06 Apr 2022 02:31:39 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 連載「Books that feel Japanese -日本らしさを感じる本」 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/連載「books-that-feel-japanese-日本らしさを感じる本」/ 32 32 連載「Books that feel Japanese -日本らしさを感じる本」Vol.3 「タコシェ」中山亜弓が選ぶ、オリジナルの解釈で新しい漫画様式を作る2冊 https://tokion.jp/2021/11/12/books-that-feel-japanese-vol3/ Fri, 12 Nov 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=70641 「タコシェ」中山亜弓が選ぶ、日本とフランス、日本と台湾。相互的な影響を感じ取れる漫画というアートブック

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国内外さまざまあるジャンルの本から垣間見ることができる日本らしさとは何か? その“らしさ”を感じる1冊を、インディペンデント書店のディレクターに選んでもらい、あらゆる観点から紐解いていく本連載。今回は、日本を代表するサブカルの殿堂、中野ブロードウェイの中にある書店「タコシェ」オーナーの中山亜弓さんにインタビュー。日本をはじめ、時に持ち込まれることもあるという世界中のアーティストたちのアートブックやコミック、ZINEが所狭しと並ぶ店内から、漫画という1つのカテゴリを独自の解釈で表現し、日本と相互的な影響を受けていると感じるフランスと台湾の本を紹介してもらった。

LAGON/Various artists

フランス発、新しい漫画様式を追究するアートブック

−−この本について教えてください

中山亜弓(以下、中山)作画だけでなくプリントや製本も一連の作品として捉えるアーティストがいる。「Lagon」はフランスで、まさにそういう活動を行うアーティスト集団が作るアートマガジン。版画や印刷に精通したサミー・ステイン、アレクシス・ボークレール、ベティナ・ヘンニ、セヴリーヌ・バスクエ―によって創刊された、年刊コミックアンソロジーです。

−−どんなところに日本の影響を受け、オリジナルの表現をしていると感じますか?

中山:彼らは漫画の中のグラフィックな要素を抽出したような作風で、漫画家や美術家、イラストレーターとして活躍する横山裕一さんに通じるものがあって、実際に横山さんも寄稿されています。一方でオリジナリティという意味では、日本では漫画は漫画用の原稿用紙に描くなど、統一ルールの中で本を作るけれど、彼らの創作方法はもう少しゆるくて発想がワイルド。印刷する素材もフィルムだったり、表面を手作業でザラザラに加工した紙とか、印刷紙に印刷するという先入観に縛られない。リソグラフも普通は純正インクを使うし、違うものを使うと機械が……と思うけど、保守点検が難しい海外だと自分たちで勝手にメンテナンスしたり、改造して刷ったり、インクをオリジナルで作る人もいる。アカデミックなところで、正統な方法で制作をする人もいれば、古い工房に出入りして、新しいものを熟練の職人さんの技術で制作する人もいたり、新旧の技法のいいところを取り入れて楽しむというのが上手な人たちだなと感じます。

−−本や作者にまつわるエピソードはありますか?

中山:メンバーの1人サミー・ステインさんは、幾何学的な感じの作風が特徴。アートブックフェアのため、東京に来ていました。彼の作品集に、マルセルさんというホームレスのアーティストへのオマージュ作品があるのですが、それがとても印象に残っています。マルセルさんは、17歳の時にお母さんがお父さんを撃ち殺す場面を目撃してしまい衝撃を受け、ホームレスとして生活しながら絵を描き、しかも女装趣味があったという風変わりな人。最後は犯罪に巻き込まれて、亡くなってしまったそうですが、まるでフィクションのような、衝撃的な人生を生きたホームレスアーティスト。サミーさんの作品の中には、幾何学的だけれども、人間世界とか不思議なもの、不条理なものとかが図像として入っているものがある。人のそういう部分に興味を持ちつつ、表現方法はグラフィックでクールというところがおもしろいなと思っています。

熱帯季風 Monsoon/黄佩珊(慢工文化出版/Slowork Publishing)

いわゆる漫画的な文法で作られていないコミック誌

−−この本について教えてください。

中山:あえて日本的な漫画じゃない漫画を集めたアジアのコミック。台湾人の黄佩珊によるSlowork Publishingが発行する、4巻完結のドキュメンタリーコミック雑誌です。アジアにフォーカスした漫画を編集・発行する黄佩珊が、シルクスクリーンで少部数のドキュメンタリーコミックを出版した背景には、1990年代から続くフランスの小出版の影響があります。BDなどを経由して発見した漫画とは異なるアジアの漫画表現—ペンでなく筆での作画がうまい中華圏作家を紹介したりーを掘り下げ、台湾の新星、高妍にも、本人の叙情的な持ち味とはちょっと違ったテーマを提案したりしています。

−−どんなところにオリジナリティやおもしろさを感じますか?

中山:台湾でも日本の漫画は多く紹介されてきましたが、あえて「じゃない」ものの多様性を掘り下げています。日本の漫画的なものから離れて漫画の豊かさを探るという感じ。キャラクターの作り方や漫画的な文法の影響があまりないのがこの本のおもしろさ。モンスーン地帯に注目して、ドキュメンタリーという切り口で自然、社会問題、日常的なものまでいろいろなモチーフが描かれいます。いわゆるマンガとも違う、広い意味での漫画表現をアジアから集めたようなアンソロジーです。マンガ的でないものの豊さや各地域の持ち味、可能性を発掘しようとした感じがします。風景描写とかではそれぞれの国らしさを感じられたり、表現としてはグラフィックノベル的だったり、図解みたいだったり。日本の作品が入っていないんだけど、アジア的な表現を拡張するコミックを提示する志を尊敬します。

フランスもアジアも、日本と比べて見た時に、どっちがどっちの影響を受けてという境界線は曖昧になっている。相互的になっていると感じています。いろんなものを見るうちに、何々っぽいねとか、出尽くした感を受けたり、感動も薄れ始めている一方で、時々こんなのがまだあったのかと驚かされたり、基本的だけど誰もやろうとしなかったなという手法で作られたものがあったり、本やアート作品が、そうやっていろんな形となって独自の進化をして、世界中からまだまだ出てくるかなと期待しています。

中山亜弓
東京・中野の書店「タコシェ」店主。日本のインディーカルチャーの発信地。海外のzineの取り扱いも多く、フランス、台湾の書店や作家との交流をもつ。「タコシェ」は自費出版物をはじめ、少部数・限定出版物、品切本など通常の流通に乗りにくい書籍や雑誌のバックナンバーなどを中心にいろいろな本を新旧関係なく取りそろえているほか、インディーズのCD、カセット、映像、衣類、楽器、雑貨などを取り扱う。
http://tacoche.com

Photography Masashi Ura
Text Mai Okuhara
Edit Masaya Ishizuka(Mo-Green)

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連載「Books that feel Japanese -日本らしさを感じる本」Vol.2 「ブックマーク」マネージャー持田剛 音楽とアート、2つのシーンで新たな価値観を作りあげた本 https://tokion.jp/2021/10/17/books-that-feel-japanese-vol2/ Sun, 17 Oct 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=65053 「ブックマーク」マネージャー持田剛が選ぶ、アートと音楽のシーンで土着的な日本らしさを感じる作品を紹介。

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国内外さまざまあるジャンルの本から垣間見ることができる日本らしさとは何か? その“らしさ”を感じる1冊を、インディペンデント書店のディレクターに選んでもらい、あらゆる観点から紐解いていく本連載。今回は、マークジェイコブスがブランドのインスピレーション源を表現する場所「ブックマーク」で書誌仕入れとイベントのブッキングを行うマネージャーの持田剛にインタビュー。もともと「タワーブックス」で働いていた経験と、「ブックマーク」と関わりの深いアーティストの2軸から、改めて世界へ発信したい極めてドメスティックなカルチャーシーンを感じる4冊を選んでもらった。

Super Milk Chan Forever/田中秀幸

1990年代を代表する日本独特のキャラクターカルチャー

キャラクターを活かした日本のアーティストが世界的に評価されるようになったのは、田中秀幸さんが最初期だったのでは。1990年代からグラフィックアーティストとして、電気グルーヴのアートワーク、きゃりーぱみゅぱみゅMV、テレビCM、スーパーミルクチャンと多方面で活躍されていたその作風は、可愛らしいキャラクターに毒っぽい要素があって、シニカルでちょっと意地悪さもあるもの。近年90年代リバイバルと言われて久しいですが、田中さんを筆頭にしたグラフィックアーティストと、欧米で起きていた90年代の地殻変動みたいなカルチャーがマージして新しく表現されている印象を受けます。これはスーパーミルクちゃんの20周年と、「ヘブン バイ マーク ジェイコブス」にコントリビュートしていただいた商品のリリースに合わせて行われた「ブックマーク」での展示の際の図録。日本のイラストレーションの基本となるテクニカルな部分と、少し毒々しい表現が見ていて飽きない1冊です。

Remix/酒井いぶき

自由をまといレディメイドする東京ミクスチャーな作品集

世界観が独特だと思うんです。テプラという既製品を使いデイグロなカラーリングで、彼女なりのガーリーを表現している。そこにすごくオリジナル性や東京っぽさを感じる。ごった煮のコラージュは手作りっぽさが残っていて、それが唯一無二というか。テキストをアート作品に入れていくのは、バーバラ・クルーガーやジェニー・ホルツァーをはじめメッセージの方に軸足を置く傾向があるけれど、彼女は深い意味合いを入れているわけではなくて、全体のコラージュの中で作られる構成力で、1つのアウトプットを作る。途中なのか完成なのか、あえて過剰な説明をしないのも魅力。以前ワークショップを行ってもらったのですが、彼女の制作過程ってすごくインプロビゼーション(即興)で、すごく綺麗なバランスを作っていくんです。あっという間に。反復不能な一回性のマジックが宿る様な印象を受けました。これまであらゆる形で創作してきたアートワークがアーカイブされたこの1冊を見ればその感覚を感じ取ることができるはず。

Underground GIG Tokyo 1978 -1987/佐藤ジン

写真集としての日本的、音楽カルチャーとしての日本的が纏まった1冊

1970〜1980年代の日本のパンクロックシーンを撮っていた佐藤ジンさんの写真集です。当時から日本のインディーズのシーンはすごく盛り上がっていて、国内だけでしか語り継がれていないシーンでしたが、あえて今、東京にもNY・ロンドンに続いて、ほぼ同時期にパンクロックのシーンがあって、そこにはすごく個性的なバンドやグループがいたということが網羅されているこの一冊を紹介したい。アーティストごとの紹介ではなく年代でアーカイブされている。東京でこういうシーンがあったことは、あまり語られないので、海外の友人らに紹介すると驚かれることが多いです。この頃のインディーズシーンは、アーティストが舶来の模倣ではなく、自分たちの表現を体張って本気でしている。今でこそ日本の音楽シーンを総称してJ-POPと呼ばれるようになりましたが、この時代のインディースシーンは日本の音楽が確立されていくカンブリア紀だったんじゃないかなと僕は思っています。

ゆでめん/MIKE NOGAMI

純粋な感覚で時代の先をいくというカリスマ性

“はっぴいえんど”も同じく、言わずものがな日本のロックシーンを作った方々。そんな彼らのデビューアルバム『ゆでめん』の制作風景を、写真家の野上眞宏さんが撮り下ろした写真集。以前にも野上さんは彼らの写真集を発表していて、その本の中には、メンバーの細野晴臣さんがラリー・クラークの『Tulsa』のカバーと同じポーズしている写真がある。たしかに『Tulsa』は当時写真集の世界では評価されてはいたものの日本ではまだ知られていない存在だった。その発売とほぼ同時期に、おそらく世界の、アメリカのバンドですら残してこなかったであろうオマージュを、写真の世界よりも先行して日本の音楽シーンで実現していたという事実に、すごく衝撃を覚えました。こちらの写真集は、日本の音楽業界がまだまだ黎明期で今と比較できないくらい小さな世界だった中で、メンバーの細野晴臣さん、大瀧詠一さん、松本隆さん、鈴木茂さん、4名の先達者が、後の日本語ロックの方向性を決定づけた瞬間を収めた貴重な歴史的資料ともいえる内容です。

独自の世界観を表現しながらそこに新たな価値を作り出す人達の魅力、日本らしさを世界に発信していきたい。

東京らしいカルチャーを感じるアーティストのちょっと賑々しい作品集と、日本の音楽シーンを確立していったアーティストを追った写真集。あえて両極端な選書になりました。もちろん今注目の写真家さんのおすすめの写真集などまだまだ紹介した本はたくさんありますが、僕自身のルーツや「ブックマーク」「ヘブン バイ マーク ジェイコブス」と関わりの深い方々を中心にピックアップしました。音楽にまつわる写真集は、自宅で音楽を聴いている時に読み返しますし、アーティストの作品集は、何かのヒントを見つけたい時に。それがインスピレーションになったり、新しい感覚につながって、見るたびに再発見することがあります。今回紹介した4冊のように、独自の価値観を世界基準の視点から構築していくアーティストやクリエイターが、結果的によりドメスティックな世界観を作っていく。その面白さやと魅力、日本らしさを世界に発信していけたらと思っています。

持田 剛
「ブックマーク」マネージャー。2013年に原宿にオープンした「ブックマーク 東京」の統括として書誌仕入れとイベントのブッキングを精力的に行う。過去「ブックマーク」で行った国内外アーティストや作家のサイン会やエキシビションは延べで150回を超える。

Photography Masashi Ura
Text Mai Okuhara
Edit Masaya Ishizuka(Mo-Green)

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連載「Books that feel Japanese-日本らしさを感じる本-」Vol.1 「loneliness books」オーナー・潟見陽 刺激があっておもしろいアジアの本 https://tokion.jp/2021/07/29/a-book-with-japanese-feel-vol1/ Thu, 29 Jul 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=42483 グラフィックデザイナーとしても活動している「lonliness books」のオーナー潟見陽が選ぶ、クィアのジャンルから日本らしさを感じる作品を紹介。

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国内外さまざまあるジャンルの本から垣間見ることができる日本らしさとは何か? その“らしさ”を感じる1冊を、インディペンデント書店のディレクターに選んでもらい、あらゆる観点から紐解いていく本連載。今回は日本のみならず、世界中で作られているLGBTQにまつわる出版物を扱う予約制の書店兼ライブラリー「lonliness books」のオーナー潟見陽にインタビュー。クィアのジャンルから日本らしさを感じる1冊。そしてグラフィックデザイナーとしても活動する彼ならではの目線で、日本へ影響を与えている1冊を選んでもらった。

Film Typography Vol.2 Calligraphy

韓国屈指のデザイナーが生み出す、優しく、時に鮮烈な印象を残すカリグラフィ

−−この本について教えてください。

潟見陽(以下、潟見):韓国・ソウルのデザインスタジオPROPAGANDA CINEMA GRAPHICSが発行している本『Film Typography Vol.2 Calligraphy』。デザイナーのチェ・ジウンさんが携わってきた数々の映画ポスターのタイトルロゴをまとめた1冊。映画タイトルはもちろんのこと、パッケージデザインなどにも描かれてきた、手書きのカリグラフィ作品を集めたアーカイブ集です。

−−この本にアーカイブされたロゴや映画ポスターのデザインが、どんな部分で日本へ影響を与えていると感じますか?

潟見:韓国の映画や演劇のポスターデザインは、物語のイメージや雰囲気を伝えることに特化していて、写真と書き文字、いわゆるカリグラフィで構成されたシンプルなデザインが多い。かつての日本の映画ポスターも海外のデザイナーが憧れるような凝ったデザインや、シンプルなポスターが見られたのですが、2000年あたりから大胆なキャッチコピーや、劇中写真をふんだんに使った情報過多なものが増えてきました。ジウンさんが日本映画の韓国版ポスターを担当している作品もあり、洗練されている韓国版と、比較されて SNS などで 話題になることもあり、近年じわじわと日本の映画ポスターもシンプルに戻ってきた印象があります。実際に日本人のグラフィックデザイナーで、彼のファンは多いですから。彼のカリグラフィを用いたポスターデザインが、少なからず日本映画界に影響を与えているんじゃないかと感じることが 増えましたね。

−−本や作者にまつわるエピソードはありますか?

潟見:ジウンさんは、コレクターでもあるんです。中でもオリンピックが好きで、ソウルオリンピックの広告やポスター、マスコット “ホドリ” のグッズを集めて、それらをデザインしたデザイナーを実際に訪ねてインタビューしたものを、本にまとめて出版したり。とてもおもしろい方です。それに筋金入りの映画マニアで、日本の映画ポスターやグッズも集めていて、月に一度PROPAGANDA のスタジオの隣で自身がコレクトした映画グッズを販売するお店を開放しています。

FUTURE ADULT ONLY

台湾のイラストレーターが描く強い意思と温もりを感じることのできる世界

−−この本について教えてください。

潟見:台湾のイラストレーター、山山來馳さんの『FUTURE ADULT ONLY』。この本は、ロマンティックな描写が印象的なコミック短編集。山山來馳さんのイラストは、ぽっちゃり系男子のキャラクターが特徴で、この本の中でもかわいらしくカラフルに描かれています。

−−どんなところに日本らしさを感じますか?

潟見:80年代90年代の日本のアニメのような面影もあり、昔の日本のゲイ雑誌はイラストで描写されているものが多かったのですが、その頃のイラストに影響を受けているのかなと感じる部分もあります。それらが山山來馳さんのフィルターを通して、今っぽくオリジナルな表現にアレンジされている。少女漫画的でもあり、ジェンダーを超越した世界観がおもしろいです。

−−日本からの影響を受け、アレンジされ、その国らしさが作られていく。日本と台湾をはじめとするアジア諸国と、そのオリジナリティにどんな違いがありますか?

潟見:日本と比べて、アーティストや物語の要素で違いを感じる部分は、アジアの作品は、社会と連動しているということ。個人の物語であってもそこに社会が垣間見える。アーティストであってもなくても、政治や人権についてちゃんと声をあげる人が多い。日本は、最近は少し変化を感じるけれど、セクシャルマイノリティのことを描いていても、個人の物語は個人の物語でしかないものが多くて、社会はどこにあるんだろうと思うこともあります。山山來馳さんは、そんなちゃんと声をあげるアーティストの1人で、台湾で同性婚が法律化される時、“同性婚を支持します”とか、“男女の不平等を是正していきましょう”とか、メッセージをSNSや作品で積極的に表明し発信していました。

アジアのアートや本を通して社会のことを考えるきっかけになってほしい

近年日本でも海外からの影響を受け、今起きている政治や社会、人権問題にまつわる新しいコンテンツやメディアを作る若い世代が増えています。とりわけジェンダーやクィアをテーマにした新しい雑誌は、さまざまなバックグラウンドを持つ若い人達やファッションが社会、政治的スローガンになる時代を反映した見せ方で作っていて新鮮。台湾や韓国といった近隣のアジア諸国では、少し前からそういった雑誌が出始め、例えば韓国は、生半可な気持ちで作っても権力に負けてしまう、だからこその強さをクオリティの中に感じるし、台湾はまだまだ不平等の中にいる女性に焦点を当てているものが目立つ。国によってある違いや国民性を比べて見てみると、その国の今を知ることができる一方で、日本はまだまだという印象も残る。欧米のカルチャーが好きな人は多いけれど、実はすぐ隣の国のアジアにも、刺激があっておもしろい本がたくさんある。勢いのある作家がたくさんいる。そういうことを知ってほしくて「lonliness books」を始めたという。

「今は、いい意味で境界線が曖昧な時代。SNSもあるし、手の中ですぐに情報が得られて、世界中の人と簡単にコミュニケーションが取れる。だからこそ外面的な表現という意味では、境目がどんどんなくなっていくかもしれない。同じように内面的な表現においても、他国のように日本にももっと社会の動きに対する発言や表現が増えて、アートや本を通して一緒に社会のことを考えられる時代になっていくことを期待しています」。

潟見 陽
グラフィック・デザイナー/書店オーナー。映画のポスターや、広告、本の装丁のデザインを行っている。また自身がオーナーを務める東京・大久保の書店兼ライブラリー「loneliness books」では、これまでに世界中から集めたジンや本、グッズなどを閲覧・購入することができる。

Photography Masashi Ura
Text Mai Okuhara
Edit Masaya Ishizuka(Mo-Green)

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