2022年の私的「ベストミュージック」 Archives - TOKION https://tokion.jp/series/2022年の私的「ベストミュージック」/ Fri, 30 Dec 2022 06:26:17 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 2022年の私的「ベストミュージック」 Archives - TOKION https://tokion.jp/series/2022年の私的「ベストミュージック」/ 32 32 2022年の私的「ベストミュージック」 音楽家・渋谷慶一郎が選ぶアルバム5選 https://tokion.jp/2022/12/31/the-best-music-2022-keiichiro-shibuya/ Sat, 31 Dec 2022 10:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=163412 2022年に生まれた聴き逃がせない音楽を「TOKION」ゆかりのアーティスト・執筆陣がガイドする。音楽家・渋谷慶一郎が選ぶマイベスト5。

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終息に至らないコロナや大国による軍事侵攻、歴史的な円安などなど。2022年に刻まれた様々な出来事は、私たちの日常のありかた・感覚に少なくない変化をもたらした。しかし、そんな変動の時代の最中においても、音楽は変わらず鳴り続け、今年も素晴らしい作品がいくつも生まれた。その中でもとりわけ聴き逃せないベストミュージックを、音楽家・渋谷慶一郎が紹介する。

渋谷慶一郎が映画作品『ホリック xxxHOLiC』(監督:蜷川実花、主演: 神木隆之介×柴咲コウ)に書き下ろした全21曲を収録したアルバム『ATAK025 xxxHOLiC』を発表。

渋谷慶一郎(しぶや・けいいちろう)
音楽家。1973年、東京都生まれ。東京藝術大学作曲科卒業、2002年に音楽レーベル ATAKを設立。代表作は人間不在のボーカロイド・オペラ『THE END』(2012)、アンドロイド・オペラ®『Scary Beauty』(2018)など。2020年には映画『ミッドナイトスワン』の音楽を担当、第75回毎日映画コンクール音楽賞、第30回日本映画批評家大賞映画音楽賞を受賞。2021年8月 東京・新国立劇場にてオペラ作品『Super Angels』を世界初演。2022年3月にはドバイ万博にてアンドロイドと仏教音楽・声明、UAE現地のオーケストラのコラボレーションによる新作アンドロイド・オペラ®︎『MIRROR』を発表。4月には映画『xxxHOLiC』(蜷川実花監督)の音楽を担当。また、大阪芸術大学にアンドロイドと音楽を科学するラボラトリー「Android and Music Science Laboratory(AMSL)」を設立。テクノロジー、生と死の境界領域を、作品を通して問いかけている。
ATAK:http://atak.jp
Twitter:@keiichiroshibuy
Instagram:@keiichiroshibuy

今年はずっと音楽を作っていた年で、新しいアルバムとかを聴く時間があまりなかった。
まして今年発売のアルバムでなんて・・・と思いつつ印象に残っているもの、覚えているものを選びました。

Burial『Antidawn』

彼の音楽はビートがあってもなくても「時間」が消えているような印象があって、昔のアルバムも時々聴いてます。
確かDAWじゃなくて波形編集ソフトで作っていると聞いたことがあるような。

Nico Muhly & Alice Goodman『The Street』

歴史と現代のアプローチというかバランスで共感することが多いアーティストで、パリの劇場関係者からもよく名前を聞きます。
このアルバムも少ない音数で様々なバランスを行き来してますね。

Actress『Dummy Corporation』

コンセプトや制作方法など謎が多いアーティストなんですけど、そこが面白いなと思っています。
前作のアルバムもよく聴いてました。

VÍKINGUR ÓLAFSSON『From Afar』

フィリップ・グラスを弾いているアルバムで知ったピアニストなんですけど、タッチも録音も美しく明確な指向性があって好きです。
このアルバムは選曲も良いですね。

Keiichiro Shibuya『ATAK026 Berlin』

今年リリースしたアルバムなんですけど、複雑系、人工生命研究者の池上高志さんとのコラボレーションで、サイエンスデータの全面的な変換だけで出来てる
アルバムとしてはやり切った感じがあります。唯一の例外は人の声で、オットーレスラーという科学者とベルリンで話した時の会話の断片をカットアップコラージュしてます

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2022年の私的「ベストミュージック」 音楽ライター・石井恵梨子が選ぶアルバム5選 https://tokion.jp/2022/12/30/the-best-music-2022-eriko-ishii/ Fri, 30 Dec 2022 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=163172 2022年に生まれた聴き逃がせない音楽を「TOKION」ゆかりのアーティスト・執筆陣がガイドする。音楽ライター・石井恵梨子が選ぶマイベスト5。

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終息に至らないコロナや大国による軍事侵攻、歴史的な円安などなど。2022年に刻まれた様々な出来事は、私たちの日常のありかた・感覚に少なくない変化をもたらした。しかし、そんな変動の時代の最中においても、音楽は変わらず鳴り続け、今年も素晴らしい作品がいくつも生まれた。その中でもとりわけ聴き逃せないベストミュージックを、音楽ライター・石井恵梨子が紹介する。

石井恵梨子
1977年石川県生まれ。「CROSSBEAT」への投稿をきっかけに、97年より音楽誌をメインにライター活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味とする。現在「音楽と人」「SPA!」「リアルサウンド」などに寄稿。 Twitter:@Ishiieriko

Awich『Queendom』

Awich – Queendom (Prod. Chaki Zulu)

今年一番毅然と輝いていた音と声。さらに言えば今年一番格好良く各フェスティバルに降臨した人だと思う。フジロックのレッドマーキーは泣きながら見た。これ中学生の時に見ていたらわたしはラッパーを目指していたかもしれないな、と感じながら。自分の言葉で自分の来た道を語っているだけなのに、それが過去のシーンの男性優位性を恥ずかしいほど浮き彫りにしていくところも素晴らしかった。とはいえ普段はライブハウスにいるアナタ、さほどヒップホップに詳しくないよねと訊かれたら、その通りですと頷くばかり。ただポップ・ミュージック/レヴェル・ミュージックとして圧倒的な強度があった。憧れます。

the hatch『shape of raw to com』

the hatch – shape of raw to come

日本アンダーグラウンド/オルタナティヴの2022年金字塔。本作のリリースを機に拠点を札幌から東京に移したそうだが、どこに居るかという地域性が重要なのではなくて、誰ともつるまない、誰にも見つからない、誰にも踏み込めない場所で蠢いているドキュメント性にやられた。異物感のカタマリ。赤子の命はただ輝いているのではなくて、ぬるぬるの胎盤や羊水と一緒に飛び出してくる、なんてことも思い出す。スカスカなのに途切れることのない見事なリズム構成。その中で繋がる不協和音、ファンク、ジャズ、ポストハードコア。あとは妙に歌謡っぽい抒情性。なんだこれと背筋が震えたし、解はいまも出ていない。

String Machine『Hallelujah Hell Yeah』

String Machine – Gales of Worry [OFFICIAL MUSIC VIDEO]

友達に偶然教えてもらった作品。深く追いかけていたわけでもなく、ペンシルバニア州ピッツバーグの7人組インディ・フォーク・ロックだと後で知った程度。ただ、このユルユルでとぼけた空気感が好ましく、気づけば中毒になってしまった。特筆すべきはピンボーカルを立てず、歌いたい人がみんなで歌うというスタイル。同時期にアジカンの『プラネットフォークス』が出たことや、GEZAN with Million Wish Collective のライヴを見たこともあり、「みんなで歌う」ことは時代の嫌なムードに抗っていく行為なのだと発見。そしてこの人たち、闘争とか商業に無縁の底辺インディー感がとてもいいです。頬が緩む。愛おしい。

black midi『Hellfire』

black midi – Welcome To Hell

登場から数年、確かにすごいバンドだろうけど、私にとっては知能指数高すぎのプログレでいまいち夢中になれない存在だったUKウィンドミルのブラックミディ。「すいません! ようやく面白さがわかりましたぁ!」となったのが本作。スキル、スピード、アジテーションの凶暴さはもちろん、狂気とユーモアが絶妙に混じり合う感じ、危機迫るサスペンスの匂いとバカ楽しいファンク・セッションが一緒に鳴ってしまうところ、あとは超絶技法をあくまで踊りながらやっている姿などを見て、最高のエンターテインメント集団だなと認識を改めた。笑いがあるって重要。あと『地獄の業火』という日本語帯もナイスでした。

Alice In Chains『Dirt(2022 Remaster)』

Alice In Chains – 30 Years of Dirt

ふざけているわけではなくて。実は今年一番愛聴したのはボルチモア拠点のTURNSTILE『Glow On』で、2021年夏に発売されたこの作品には、90年代前半のUSハードコア・パンクやオルタナティヴを彷彿とさせるエネルギーが溢れ返っていた。今アメリカで何が起きているのかと戸惑い、同時に興奮もする。で、TURNSTILEばかり聴いていた半年後、ぬらりと蘇ったのが30年前に発表されたグランジ名作リマスター! 十代の熱狂が戻ってくるのはもちろん、歌やハーモニーの聴こえ方が全然違うことに衝撃を受けた。ビートルズのリマスターに毎回飛びつくおじさんの気持ちが初めてわかった。そんな年齢になった。

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2022年の私的「ベストミュージック」 サウンドアーティスト・細井美裕が選ぶ今年の5曲 https://tokion.jp/2022/12/28/the-best-music-2022-miyu-hosoi/ Wed, 28 Dec 2022 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=162605 2022年に生まれた聴き逃がせない音楽を「TOKION」ゆかりのアーティスト・執筆陣がガイドする。サウンドアーティスト・細井美裕が選ぶベスト5。

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終息に至らないコロナや大国による軍事侵攻、歴史的な円安などなど。2022年に刻まれたさまざまな出来事は、私達の日常のありかた・感覚に少なくない変化をもたらした。しかし、そんな変動の時代の最中においても、音楽は変わらず鳴り続け、今年も素晴らしい作品がいくつも生まれた。その中でもとりわけ聴き逃せないベストミュージックをサウンドアーティスト・細井美裕が紹介する。

細井美裕
1993年生まれ。慶應義塾大学卒業。マルチチャンネル音響をもちいたサウンドインスタレーションや屋外インスタレーション、舞台公演、自身の声の多重録音を特徴とした作品制作を行う。これまでにNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)無響室、山口情報芸術センター(YCAM)、東京芸術劇場コンサートホール、愛知県芸術劇場、日本科学未来館、国際音響学会AES、羽田空港などで作品を発表。
オフィシャルサイト:https://miyuhosoi.com/
Instagram:@miyuhosoi
Twitter:@miyuhosoi

Matmos「Tonight there is something special about the moon / Jaki księżyc dziś wieczór…」

Matmos「Tonight there is something special about the moon / Jaki księżyc dziś wieczór…」

ビョークのリミックスを担当したことでも知られるアメリカの電子音楽デュオMatmos、どう考えても音を楽しんでいることが伝わってきて憧れです。たまに、自分がいいと思うことを捻じ曲げて周囲の言っているようにやっちゃえば早く終わるよな、と魔がさす時あるじゃないですか、そういう時爆音でかけていきたい曲です。直接的に応援されるより、ただ楽しくやってる人達を見ている方が自分も気合が入る、みたいな状況になれるのでおすすめします。Matmosを教えてくれた写真家の三ツ谷想が「サンプリングというか、フィールドレコーディングを聴いてるみたいな感覚になる」と話していて、確かに。一音の情報が連なって歪んだ世界が作られていくみたいな、AIが何かを生成している途中のBGMが必要とされたらこの曲を使っていただきたいです。Matmosのことを考えていると、頭の片隅にフォルマント兄弟が出てくるんですよね。たぶん私が最初に憧れた楽しそうな大人達だったからかなぁ。

Marina Herlop 「shaolin mantis」

Marinaを知ったのはZora JonesとSinjin Hawkeからの紹介でした。2022年夏に「Circus Tokyo / Osaka」の出演のために来日していた2人から、日本にいるから会いたい! と連絡があり、その日か後日スタジオに一緒に入ってお互いの興味を話していた中で名前を知りました。最初にMarinaのinstagramのストーリーでたまに彼女がアップするフレーズやライヴのパフォーマンスを見てレベルの高さと美しさに驚き。多重録音のライブは音がだんだん増えていくか、カラオケみたいになるか、とパターンの偏見を持っていたのですが、Mrinaのライヴは多重録音の独特な職人芸を見るモードから鑑賞者を解き放ってくれる安心感がある! いつか生で見たい! 音源も彼女の声に勢いをつけるために必要な声以外の音が鳴っているようでちょーかっこいい! なんというか、プリペアドピアノを弾いているみたいな印象を受けたのです。身体の中にさまざまな音が準備されてあって、それを声がトリガーしていく……。

Beyoncé 「THIQUE」

Beyoncé 「THIQUE」

2019年にリリースされた「The Gift」というアルバムでBeyoncéに目覚めた私は、コロナ中の外からの刺激の少なさを補うように好きなものを掘り下げるモードになっておりました。例えばアルバムに参加しているメンバーの曲を片っ端から聴いたり。「MY POWER」に参加していて、Gqomのパイオニアの一人とされるDJ Lagの最新作は、友人Sinjin Hawkeとの共作だったこともありよく聴いていました(iKhehla / DJ Lag, Babes Wodumo, Mampintsha 等)。聴いても聴いても聴く視点(?)がどんどん出てくる恐ろしい「The Gift」から3年、ついにアルバム『Renaissance』が! 中でもTHIQUEはパワフルなBeyoncéではなくけだるめな始まりで、だんだんお尻を叩かれる感覚が完全に納品前の自分を奮い立たせる最後の手段になっていました。全曲サウンドはもちろんのこと、アルバムが持つメッセージも含めて長く聴いていきたい。『Renaissance』というタイトルと本人のInstagramのコメント“My intention was to create a safe place, a place without judgment. A place to be free of perfectionism and overthinking. A place to scream, release, feel freedom.(私が意図したのは、安全な場所、判断のない場所を作ること。完璧主義や考え過ぎから解放される場所。叫び、解放し、自由を感じる場所) ”を見て、いつか、あの時はああいう情勢だったなぁと記憶をたどるきっかけになるアルバムになるのだと思ったのでした。

Semblanzas del Rio Guapi, Cerrero「Los Guasangú (Cerrero remix)」

英語でも日本語でもあまり情報が出てこないのですが、コロンビア南太平洋の音楽文化の保存、強化、普及のために活動している伝統音楽グループSemblanzas del Río Guapiによる楽曲を、コロンビアルーツの楽曲のレコーディングから、ダブやエレクトロリミックスを手掛けるプロデューサーのCerreroことDiego Gómezがリミックスした楽曲だそうです。私個人の傾向として、言語がなくて、落ち着きつつ身体を定期的に小さく揺さぶられているような……でもわかりやすいビートだけじゃなくてたまに意識をほんの一瞬、音に持っていかれるくらいの曲を最も欲していて、そのプレイリストに今年追加された中で一番聴いています。Cerreroは近作のDub mixでプロデューサーとしてラテン・グラミー賞に2度ノミネートされているとのことです。「Reich: Remixed 2006」の中のEight Lines – Howie B Remixが好きなのですが、自分の中ではその周辺に位置しています。

Erik Hall「Canto Ostinato “Sections 17-30” / Simeon ten Holt」

曲のタイトルはなぜか「Sections 17-30」 のみになっていますが、Simeon ten Holtという作曲家の長作「Canto Ostinato」をErik Hallが演奏したうちの「Sections 17-30」のみ、という意味です。Bandcampで全編手に入れることができます。この曲、一部だけ聴くものではない……全部聴いてこそなのです。4台のピアノ(Erikの場合1962年製のHammond M-101、1978年製のRhodes Mark I、1910年製のSteinwayの3台)が緩やかに進行していく様子が、例えば、ある特定の感情を引き起こしやすいコードを1回、そして2回鳴らすことと、じりじりと1回目のコードに向かい、時間をかけてじりじりと2回目に移行していくこと、の2者であれば後者。すべての感覚をなめながら呼び覚まして、身体や心をニュートラルモードに戻す感覚です。そんなジリジリがあってこそのものを、ストリーミングでは一部だけ出すなんてやられたー。2019年、銀座メゾンエルメスフォーラムで向井山朋子さんが深夜から明け方まで1人で演奏し続けるパフォーマンスでこの曲を知りました。鑑賞者にはブランケットが2枚配られ、床に寝て、忘れられない夜明けだった。音源だと1989年リリースの30曲に分けられたものをずっと聴いていました。他のものはほぼすべて聴いたけど、テンポのせいかエチュードのように聞こえてしまって。でもやっと聴き続けたいものが出てきたかも!

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2022年の私的「ベストミュージック」 CYK・Kotsuが選んだ年間ベスト https://tokion.jp/2022/12/27/the-best-music-2022-cyk-kotsu/ Tue, 27 Dec 2022 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=162311 2022年に生まれた聴き逃がせない音楽を「TOKION」ゆかりのアーティスト・執筆陣がガイドする。多くの現場でDJプレイをしたKotsuが選ぶベストミュージックとは。

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終息に至らないコロナや大国による軍事侵攻、歴史的な円安などなど。2022年に刻まれたさまざまな出来事は、私達の日常の在り方・感覚に少なくない変化をもたらした。しかし、そんな変動の時代の最中においても、音楽は変わらず鳴り続け、今年も素晴らしい作品がいくつも生まれた。そんな2022年に生まれた数多の作品群から、「TOKION」執筆陣・ゆかりのクリエイターの方々に、ベストアルバム・EPを選出してもらう。

今回は、DJとして日本各地で現場をわかせたハウスミュージックコレクティブ、CYKのKotsuに、今年1年を振り返ってもらいながら選曲いただいた。

「2022年の私的ベストミュージック」セレクター:Kotsu

Kotsu(コツ)
1995年千葉県市川市生まれ。ハウスミュージックコレクティブ。CYKのメンバーであり、ソロにおいても国内外で多くのギグを重ねている。2020年9月に1人、京都へ拠点を移して以降もより活動範囲を広げ、ダンスミュージックおよびクラビングにおけるピュアエナジーを全国規模で放出し続けている。DJ以外の活動でも、グラフィックデザインやZINEの製作を行うなど、あらゆるフォーマットでアウトプットを行っている。DJという肩書きに依拠せず活動する彼は、この時代に投下された一種の吸収体による純粋な反応にすぎないのかもしれない。
https://soundcloud.com/kotsu0830
Instagram:@kotsu0830

DJとしてもっとも忙しない12月を迎え、振り返ろうにも振り返り切れないこの時期を毎年のように確認する。それでも絞り出すように浮かべた2022年の思い出は、師走の冷えた体を少しずつ温めてくれるような淡くすてきな記憶群だ。

今年は多くの街に降り立った。数でいうと約17の都道府県にあるクラブやDJバー、フェスティバルなどでDJをさせていただいた。繰り返し足を運ぶ都市もいくつかあった。今は京都を拠点にしながらも年の30%くらいは東京に滞在している。自分にとってのその淡き記憶群はまさに日本中にちりばめられていて、その記憶の回収は“都市”という記号をもってして行われる。

僕は小学生の頃、2年ほど広島に住んでいたことがあり、昨年に当時以来となる広島の地に降り立った。その際に訪れた小学校の通学路は、ずうっと脳の奥にしまわれていた記憶の再起装置でもあった。帰り道が一緒で仲が良かった友達の表情さえもが脳裏に浮かび上がり、その頃の子どもながらの感情が思い返された。それはまるで夢想状態のようにも思えたと同時に、当時の自分からの背丈の変化によって相対的に生まれる、小学校のグラウンドを囲うフェンスの低さへの認識は、十数年という長いブランクのリアリティを明確に描き出していた。その街での物語がまた再び動き出したような実感とエモーショナルな感情があふれ出した。

そんな夢想と現実の狭間に揺らめいたこのエピソードを代表するような曲を紹介したい。それは今年、広島の「BAR EDGE」という場所でDJの瀧見憲司さんと共演した際に、瀧見さんがフロアに投下した1曲だ。

Tornado Wallace 「Sea Translation」

Tornado Wallace 「Sea Translation」

耽美的かつ郷愁を誘うあるバレアリックなメロディが襲う一方で、重心の低めなブレイクビートがむち打ち続ける。アンビエンスの海に揺らぎトランスさせるような夢想さと、低音という体に作用する現実との同居バランスが素晴らしい作品だ。聴いた場所が場所だったこともあり、その追憶のエピソードを再び思い返す瞬間だった。この曲もまた僕の記憶を再起させる装置にもなっている。

“(広義の)ハウスミュージック”を主たる選曲コンセプトとしてDJ活動を行う僕としては、ダンスミュージックを挙げたいところだが、同時に思い出のある曲が多すぎて選べないよ! という気持ちにもなる。とにかく今年も多くのダンスミュージックに出会い、多くの素晴らしい瞬間に立ち会った。今年らしい話でいえばやはり、海外アーティストの往来が再開したことに尽きる。ひさびさの海外アーティストのプレイはやはりグッとくるものがある。音楽そのものの良し悪しはもちろんのこと、音楽以外の人間の性格的な余剰の部分も含めてDJという表現形態に接していることを再確認した。

また、自分がメンバーであるコレクティブ、CYKにおいて過去に招聘したアーティストとの再会も今年あった嬉しいトピックの1つだった。ミュージシャンの小袋成彬くんと、今年7月に全国で行われたUKのリイシュー作品を世に送り出すレーベル「Melodies International」の合同ツアーで訪れた京都では、そのレーベルメンバーとして来日したセオ・テレビ(Theo Terev)との再会でもあった。彼は以前別のLa Mamie’s(ラ・マミーズ)クルーの一員として、CYKと共演してくれたアーティストであり、コロナ禍を経たお互いの表情は勇ましかった。

僕もこのパーティにDJとして参加させてもらったが、過去への追憶と未来への希望的な視点が線となり非常に記憶に残るひと晩になった。そんな「Melodies International」よりリリースされ、今回のツアー企画のテーマソング的な曲でもあるAged In Harmony(エイジド・イン・ハーモニー)の「You’re A Melody」をピックしたい。ダンスフロアにおいてのドラマは、そこにいる人の数だけあり、すべてを計り知れずにまた朝を迎えてゆく。その複雑さの結晶がメロディとなりフロアを構築している。その計り知れなさが好きでまた足を運ぶのかもしれない。そんな気持ちを祝福するような優しいナンバーだ。

Aged in Harmony 「You’re a Melody (Extended Disco Version)」

Aged in Harmony 「You’re a Melody (Extended Disco Version)」

そして今年は、CYKとしても重要な1年だった。制限された夜が本格的に解放され、再びクラブカルチャーが大きく息を吹き返す中で、われわれのセーフスペース観をまたみなで作り上げ直していく1年だったと思う。6周年を迎えたわれわれが12月に渋谷O-EASTにて行ったCYK4人によるB2Bセットでのパーティは、総勢550人ほどのダンサーに囲まれ、まさに今年の総決算のようなひと晩だった。規模がどうであれ、われわれのハウスミュージック パーティへのスタンスは不変であることを強くレプリゼントすることができたと思っている。

そのわれわれにはメンバー内で共有するクラシックな楽曲がいくつも存在する。それらを聴くとCYKとしてたどった道のりが走馬灯のように立ち現れる、まさに追憶装置のようなものでもある。その中でも今年の大事なタイミングでよく1人で聴き込んだ楽曲がFusion Groove Orchestra(フュージョン・グルーヴ・オーケストラ)の 「If only I could (Liem Remix)」だ。これは昨年に、今はなき「Contact Tokyo」にておいて行われたCYKのパーティで、Nariが朝方投下したディープハウスナンバーである。この曲はCYKが発足した2016年頃、よく小さなパーティで聴いていた曲だった。うだつの上がらない日々を過ごしていたぼやけた思い出。

あの頃は何かを強く信じることができなかった。ただそれでも踊っていた。そんな思い出深い曲を、まさかContactの規模感の場所でひさしぶりに聴くことになるとは思っていなかった。この楽曲の歌詞は、人によってはその実直さに目を背けたくなるかもしれない。当時の自分もそうだった。でも、今CYKとして歩みを進める中で、この実直さへのピントが合ってきたように思える。激動の時代を迎えている現在において、あらゆることへのため息が年々多くなる一方で、小さくとも手の届く範囲の世界から愛をもってやれることをやり続けたいと思っている。

日々積み重ねた愛の蓄積が、その延長線上に存在するパーティに収れんし、結晶となった時ハウスは魔力を持ち得ると信じて疑っていない。

こうして日々クラブミュージックカルチャーに接近していると、一般に非日常的な体験とたとえられがちなクラビングが、僕にとっては日常として存在している。日常的に摂取しているダンスミュージックとは異なりダンスフロア以外ではフロア志向ではない音楽をたしなむことも多い。その中でも先述の通り今年は移動が多く、音楽を聴く時といえば新幹線やバスの中での時間が特に多かった。もしくは拠点にしている京都の街中を散歩している時。喧騒から離れ、時には癒やしとなる音楽に心を委ねている。そんな中で今年、個人プロジェクトとして行った企画に「UNTITLED -Light Edition-」がある。まさに社会の抑圧からの反動として解放的なムード=ハードなグルーブが世界的にもダンスフロアにて散見されるようになった一方で、ソフトで軽やかな音楽を主に扱いながらリラクシングなムードを演出し、おのおのの日常的な輪郭を浮かびあがらせるような企画だ。名もなき感覚をすくい、それぞれのありのままの感覚をゆすぎ出すこと。

その企画で出演したアーティストの中に、松永拓馬という人がいる。彼は2022年の3月に初のアルバムとなる『ちがうなにか』をリリースした。9曲からなるこの作品は、アートワークからも想起されるような幽玄的なアンビエンスが漂ったトラックに、彼の内面性が表出したポエトリーな感覚を持ち合わせたようなリリックがのせられている。今年はアルバムを通してこの作品を聴くことが多かった。中でも「Vou Pegar」がお気に入りだ。

松永拓馬 「Vou Pegar」

言語化は難しいけれど、“ここに居続けたいわけでもなければ、今すぐ飛び去りたいわけでもなく、ただ軽やかにいたい”みたいな感覚がコロナ禍以降特に強まった自分を救ってくれるような作品だったと思える。個人的には2020年にリリースされたLe Makeup(ル・メイクアップ)の「微熱」やAnthony Naples(アンソニー・ネイプルズ)の「Take Me With You」、2021年にリリースされたKazumichi Komatsu(カズミチ・コマツ)の「Emboss Star」にも感じたような気持ちだなと今さらながら思っている。 

世界の眺め方というか、確かにCYKとしての活動の規模は大きくなりはしているが、「より多くの人に影響を与えたい!」だとか「社会を直接大きく変えたい!」だとかは欲求としてそこまで思っていなくて……。ただ先述の通り、そこが小さな世界であれど、自分の信じるスタンスや美学的なものが“ある”ってこと自体に価値を感じている。そして“居る”こと。

結果誰かがそれに触れ、何かが良い方向にシフトして行ったらおもしろいなと思っている。それを僕は“作用”と呼んでいて関心がある。その表現の仕方はそれぞれあるわけで、それが作品として自然ににじみ出たかのような、そしてそのようなセンシティブなムードに触れることで自分も次に進めるような……。そんなことをこの作品を聴きながら思いふける。

そろそろまとめに入ろうかと思う。とにもかくにも今年も常に刺激的でさまざまな作用があった。作用の話で考えると、ハウスミュージックのパーティはひと晩という区切りの中で、多くの人が相互に作用していった結果醸成される独特のオーラが存在する。もっといえば、音楽と人間が相互包摂的になり音楽と人間という2つの関係性が瓦解した瞬間が、DJによって引き出される時、まさにトランスした感覚を得る。そして、トランスした多数の人間がある種の1つの個体としてカウントされた時に立ち現れるオーラは、パーティが終わると同時に分散し、それぞれの生活におけるパワー源として蓄積されてゆくような感覚がある。

それこそが個人的には希望でありゆすぎであり、DJとしての活動が来年以降も続いていく理由のような気がしている。ここに居続けたいわけじゃないと思いながら来年もしきりに都市を転々とする。それは点ではなく線としての物語であると体が実証する。もはや自分にとっては移動することが生き生きとしているための必要条件になっているのかもしれない。まるで人間の体の内部にある動脈をたどるかのように移動する。であれば心臓は音楽そのものなのかもしれない。そうして体を新しく循環させてゆく。各器官にスタックされた記憶の続きを紡ぐ。どの部分も生きるためには必要不可欠だ。

息を吸い、息を吐いて歩みを進める。また来年も素晴らしい音楽にたくさん触れられますように。最後によく聴いたこちらの曲を紹介して終わりにさせていただきます。

Atarashi Karada 「Dove」

Atarashi Karada 「Dove」


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