終息に至らないコロナや大国による軍事侵攻、歴史的な円安などなど。2022年に刻まれた様々な出来事は、私たちの日常のありかた・感覚に少なくない変化をもたらした。しかし、そんな変動の時代の最中においても、音楽は変わらず鳴り続け、今年も素晴らしい作品がいくつも生まれた。その中でもとりわけ聴き逃せないベストミュージックを、音楽家・渋谷慶一郎が紹介する。

渋谷慶一郎(しぶや・けいいちろう)
音楽家。1973年、東京都生まれ。東京藝術大学作曲科卒業、2002年に音楽レーベル ATAKを設立。代表作は人間不在のボーカロイド・オペラ『THE END』(2012)、アンドロイド・オペラ®『Scary Beauty』(2018)など。2020年には映画『ミッドナイトスワン』の音楽を担当、第75回毎日映画コンクール音楽賞、第30回日本映画批評家大賞映画音楽賞を受賞。2021年8月 東京・新国立劇場にてオペラ作品『Super Angels』を世界初演。2022年3月にはドバイ万博にてアンドロイドと仏教音楽・声明、UAE現地のオーケストラのコラボレーションによる新作アンドロイド・オペラ®︎『MIRROR』を発表。4月には映画『xxxHOLiC』(蜷川実花監督)の音楽を担当。また、大阪芸術大学にアンドロイドと音楽を科学するラボラトリー「Android and Music Science Laboratory(AMSL)」を設立。テクノロジー、生と死の境界領域を、作品を通して問いかけている。
ATAK:http://atak.jp
Twitter:@keiichiroshibuy
Instagram:@keiichiroshibuy
今年はずっと音楽を作っていた年で、新しいアルバムとかを聴く時間があまりなかった。
まして今年発売のアルバムでなんて・・・と思いつつ印象に残っているもの、覚えているものを選びました。
Burial『Antidawn』
彼の音楽はビートがあってもなくても「時間」が消えているような印象があって、昔のアルバムも時々聴いてます。
確かDAWじゃなくて波形編集ソフトで作っていると聞いたことがあるような。
Nico Muhly & Alice Goodman『The Street』
歴史と現代のアプローチというかバランスで共感することが多いアーティストで、パリの劇場関係者からもよく名前を聞きます。
このアルバムも少ない音数で様々なバランスを行き来してますね。
Actress『Dummy Corporation』
コンセプトや制作方法など謎が多いアーティストなんですけど、そこが面白いなと思っています。
前作のアルバムもよく聴いてました。
VÍKINGUR ÓLAFSSON『From Afar』
フィリップ・グラスを弾いているアルバムで知ったピアニストなんですけど、タッチも録音も美しく明確な指向性があって好きです。
このアルバムは選曲も良いですね。
Keiichiro Shibuya『ATAK026 Berlin』
今年リリースしたアルバムなんですけど、複雑系、人工生命研究者の池上高志さんとのコラボレーションで、サイエンスデータの全面的な変換だけで出来てる
アルバムとしてはやり切った感じがあります。唯一の例外は人の声で、オットーレスラーという科学者とベルリンで話した時の会話の断片をカットアップコラージュしてます