加藤修平 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/加藤修平/ Thu, 20 Apr 2023 06:05:23 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 加藤修平 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/加藤修平/ 32 32 NOT WONK・加藤修平がソロプロジェクトSADFRANKで目指したものとは? 音楽家としての新たな挑戦 https://tokion.jp/2023/04/20/interview-sadfrank/ Thu, 20 Apr 2023 11:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=180853 3月1日にデビューアルバム『gel』をリリースした加藤修平によるソロプロジェクトSADFRANKのインタビュー。

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SADFRANK 加藤修平

加藤修平
バンドNOT WONKを藤井航平(Ba.)、高橋尭睦(Dr.)と共に2010年結成。北海道・苫小牧を拠点に活動する。2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース。2019年6月に3枚目にしてメジャー初アルバム『Down the Valley』を、2021年1月に4枚目のアルバム『dimen』をリリースした。2022年からソロプロジェクトSADFRANKを本格始動。「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in EZO」へ出演し、Hygge STAGE 初日のトリを務める。11月にはファーストシングル「Quai」を配信リリース、 そして北海道モエレ沼公園・ガラスのピラミッドにて開催した初めてのバンドセットライブが話題を呼ぶ。SADFRANK待望のデビューアルバム『gel』を3月1日にリリースした。
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バンドNOT WONKの加藤修平によるソロプロジェクトSADFRANK(サッドフランク)がデビューアルバム『gel(ゲル)』を3月1日にリリースした。同アルバムには石若駿、本村拓磨(ゆうらん船)、香田悠真のコアメンバーに加えて、くるりの岸田繁や松丸契など、多彩なメンバーが参加し、加藤自身初となる全曲日本語詞による全9曲が収録されている。

NOT WONKというタグを外し、加藤修平という1人の音楽家として、他のミュージシャン達と1対1で向き合ったという本作がいかにして誕生したのか。その思考に迫る。

SADFRANKの始まり

——今作『gel』は加藤さん史上初めての全曲日本語詞ということを含め、ご自身の歌心と言葉に向き合って、自分という人間の心奥に潜っていく楽曲ばかりだと感じました。音楽的に言っても、弦や鍵盤の美しい音色が前に出つつも、整合性を求めず心の中を自由に泳いでいく感覚が強い。総じて加藤修平の輪郭をはみ出していくことで自分と何なのかを探す旅のようなアルバムだと思ったんですが、ご自身の手応えはいかがですか。

加藤修平(以下、加藤):おっしゃった通りだと思いつつ、でも、いまだによくわかんねえ作品だと思ってます(笑)。

——はははははは。

加藤:録音からミックスダウンまで1年ちょっとかかったし、作曲から考えたらもっとかかったアルバムなんですよ。とはいえ音楽って、長い時間をかけたからいい成果を得られるってものでもないじゃないですか。なのでこの『gel』という作品に対してかけた時間は判断基準に入ってこないんですけど、ただ、自分のやりたいことは目一杯やり切ったと思えてますね。で、いろんな段階での「これをやりたい」を積み上げて作品にした結果、これは何? って自分でも思っちゃった(笑)。

そもそも僕は、「これは本当に俺が作ったんですか?」って言いたくて毎回取り組んでいるんです。自分でもよくわからないところに行きたくて音楽をやっているし、それはNOT WONKの時にも込めていた気持ちで。ただ今回の場合は、バンドという形じゃなく最初から最後まで自分の作品なわけですよね。だからこそ、俺が作ったはずだけどこれは一体なんなんだ? っていう感じが今まで以上に強い。自分から出たものなのに、自分のどこから出てきたものなのかがわからないっていう感覚です。

——その異物感は何によってもたらされたんだと分析できます?

加藤:NOT WONKをやっている時は楽曲にも言葉に大元が常にあって、自分がこう考えたからこうなったっていうのを音楽的にもマインド的にも説明できるんですよね。でも今回は日本語で歌詞を書いたのが初めてだし、歌においてもどこからどこまでをOKとするのか、基準が全くないところからのスタートだったんです。そういう行程を1つひとつ経て歌を探っていったので、今回の歌は自分でも説明がつかない。参照点がなく、俺が気持ちいいかどうかだけで進めていった過程がこの異物感に繋がっているんだと思います。この作品で鳴ってる音はDTMの時点から自分で入れていたし、作り方自体はNOT WONKと変わらないのに説明がつかないんですよ。それが面白いですね。

——制作に多くの時間をかけたとおっしゃいましたが、SADFRANKの始動自体は2019年の3月まで遡りますよね(2019年3月4日にTwitterアカウントを開設し、SoundcloudにSADFRANK名義の楽曲がアップされた)。

加藤:はい。

——そしてSADFRANKの始動とNOT WONK年表を照らし合わせると、『Down The Valley』のリリースより3ヵ月も前にSADFRANKという名前がついて、このプロジェクトは一旦産声を上げていた。そこから4年間の心の旅が『gel』にはたくさん入っていると思うんですが、そもそも加藤さんのソロプロジェクトとしてSADFRANKが始まったきっかけは何だったのかを教えてもらえますか。

加藤:2019年の3月といえば『Down The Valley』を録り終えていた時期ですけど、その頃に「これはNOT WONKじゃできないかもな」って感じた曲が1つ出てきてしまったんですよ。で、その曲を歌ってみたいなと思ったところから、じゃあ自分1人で歌ったらどうなるだろうっていうアイデアが生まれたんです。その曲はメロディと同時に日本語のイメージが湧く曲で、作ったというより出てきちゃった感が強烈にあったんですけど。

——日本語詞という部分が、NOT WONKでやる曲じゃないという感覚に繋がった?

加藤:そうなんでしょうね。当然言葉が違えばメロディも変わってくるから、その全部をひっくるめての感覚だとは思うんですけど。で、その曲が出てくる以前から、周りのバンドマンやスタッフから「加藤くんは日本語で歌うことを考えたりしないの?」って言われることは多くて。当時はなんとなく誤魔化してたんですけど、でも実際に日本語の曲が出てきちゃったもんだから、これはいよいよ歌わなきゃいけないのかもしれないなぁと思いながら2019年を過ごしてたんですよ。でもNOT WONKはavexと契約してガンガンやっていこうと思っていた時期だから、その曲は弾き語りで歌うくらいに留めていたんですよ。なのでSADFRANKという名前がついた頃は、NOT WONKとは違う曲を1人で歌う場所っていうくらいの意味あいだった気がします。

NOT WONKとの違い

——ただ、日本語で歌おうと思う以前に日本語詞の曲に自分が呼ばれたわけですよね。そのことについて、2019年当時の自分のマインドとリンクするものは思い当たります?

加藤:大きいのは2019年の末に「your name」(地元・苫小牧のELLCUBEで開催されたNOT WONKの主催イベント。加藤の直筆・手刷りのインビテーションが届き、個々の名前を呼び合い1人ひとりが繋がる空間を志した)をやったことで。あの時って、自分がNOT WONKとしてステージに上がる時間よりも、それ以外の時間のほうが人に何かを伝えられた感があったんですよ。だとすれば、この気持ちとこの場所を音楽として表現したいという気持ちが強まっていって。ステートメントを書いたり場所として感じてもらったりするより先に、最初から直接的に歌ったほうがいいのかもしれないなって思うところもあったんですよね。それもあって、普段使っている日本語でより直接的な歌にするっていうアイデアは自分の中で大きくなっていきました。

——イベントの「your name」を開催するのに先立って、「your name」という楽曲を発表していたじゃないですか。イベントの屋号でもあり、社会的に押し込められていく個人の尊厳を「名前」というミニマムな部分から掲げていくための歌だったわけですけど、そういう強い気持ちの楽曲の中に〈あなたの名前〉という日本語詞はすでに登場してましたよね。

加藤:「your name」というイベントは超最高でしたけど、ただ、あんなに大変で回りくどいことをしなくても1曲だけで伝わり切っちゃう可能性があるのかもって思っていた節はあります(笑)。自分が言いたくてしょうがなかったこと、自分が本当に表現したいことって何なんだろうっていうのは、イベントの「your name」以前と以降ですごく考えてたんでしょうね。「your name」という場所や時間の過ごし方によって「あなたの存在」というものを伝えようとしていたけど、それって実は回りくどい方法だったんじゃないかなって思い返すことがあったし。じゃあなぜ直接的な伝え方じゃなく場所や時間で伝えようとしていたのかと考えると、単に俺の照れだったんだろうなって思ったんですよね。で、そういう照れみたいな部分とか、今まで歌にしてこなかった感情とか——そこから紐解いて歌にしてみたいなっていう気持ちが膨らんでいきましたね。

——今までにない歌を歌う、つまり自分の照れとか弱さとか、目を向けようとしなかった感情を歌える場所としてSADFRANKを動かしていこうと考えた。

加藤:そういう感じかもしれないです。時系列で言うと——デモの整理をしていて判明したんですけど、今回の1曲目に入っている「肌色」のデモは2020年の5月に作ってたんですよ。『dimen』の「200530」を作っていたのと同じ時期で、「肌色」みたいにミニマムな楽曲と「200530」を並行して作っていたのが自分でもびっくりしたんですけど(笑)。

で、自分でも謎だと思うくらい、「肌色」ではメロディと同時に〈明日が来るかどうか不安になるたびに/辛くなって笑う顔さえも君は綺麗だね〉という歌い出しが出てきたんです。メロディと歌詞が同時に生まれるなんて「肌色」が初めてで、それはNOT WONKの時にはあり得ないことだったんですよ。だからこそ「肌色」が自分の中でキーになったし、「肌色」を作れたことによって、こういう言葉を歌うのを自分に許せるんだって思えるようになりましたね。

——〈明日が来るかどうか不安になるたびに/辛くなって笑う顔さえも君は綺麗だね〉というような、不安や弱さを感じさせる歌が今作には多いわけですけど、そういう歌を綴るようになったことで、自分から出てくる音楽も変化していったんですか。

加藤:「肌色」を作っていた段階では音楽的にどうするかを全然考えてなくて、ひとまずメロディと歌の方向性が掴めてきたくらいでしたね。ただ、ちょうどその頃に「リーバイス(Levi’s)」のCM音楽の話をいただいて。NOT WONKでやってもいいと言われてたんですけど、いい機会だからSADFRANKでやってみたいと答えたんです。もっと言えば、他の人と一緒に演奏してみたかったんですよね。石若駿、本村拓磨、香田悠真と一緒に演奏してみて、そのコアメンバーで作品を作りたいと思うようになっていって。で、くるりの岸田さんにアレンジをお願いした曲(「I Warned You」)を最初に録音してみたんです。

そこから一旦NOT WONKで『dimen』の制作に移ったんですけど、『dimen』を作ったことによって、なおさら次は日本語で歌わなくちゃいけない気がしてきて、SADFRANKに本腰を入れ始めて。それで『dimen』が出た後に1年かけて座組みを考えつつ曲を作って、『gel』の制作に入っていきました。

「自分らしさとして勝手に語られていたものから遠ざかっていくのが第一目標」

——『dimen』の取材の時に話してくれたことは今も覚えてますが、「your name」以降、加藤さんは人と対話することで他者とどう混ざって、人と人のわかり合えない部分をどう理解していくのかということにより一層興味がいってたと思うんですね。実際に『dimen』で従来のNOT WONKからはみ出すような音楽を作ったことも、人が何を感じて解釈するのか、そこからどんな対話が生まれるのかの試金石だったように思うし。「リーバイス」のCM音楽を「NOT WONK以外のメンバーとやってみたかった」とおっしゃったことも、ある意味それと通ずるところがあるんじゃないかと思ったんですけど、当時の自分の欲求はどんなところにあったんですか。

加藤:2020年のアタマからコロナ禍に入った時、今までよりもさらに苫小牧にいなくちゃいけなくなって。そうするとやっぱり退屈なんですよ(笑)。毎日面白いことが起こるわけじゃないし、毎日人に会うわけでもない。その中で、自分は苫小牧にないものを求めて毎週東京に行って人と会っていたんだなっていうことを逆説的に理解したんです。そもそも東京なんかダメダメだから田舎でスローライフを送りたいっていうタイプでもないし、やっぱり僕は人が好きで、いろんな人といろんなことをやってみたい気持ちがもともと強いんですよね。で、閉じこもる生活を経たことで、自分の根本的な部分——もっといろんな人と対話して、いろんなことをやってみたい欲求がさらに強烈になった気がするんですよね。

16歳の時からバンドをやって、苫小牧に住みながらも東京に出て、レーベルがついてくれる中で音楽を作ってきた。そのチーム自体はずっと一緒だったし、avexに入った時も同じ制作チームだったし。そうしていろんなことが固定化されていく上での風通しの悪さが……恐らくは嫌だったんだろうなってことにも気づいて。それこそ「your name」をやった時に、自分で決めて動きさえすれば何かがチェンジしていく感覚を覚えられるんだなと実感しましたし。だから『dimen』のタイミングでも全然会ったことのないillicit tsuboiさんにエンジニアをお願いしてみたし、ゲストミュージシャンも呼んだし、自分主導だったアートワークも誰かの作品に委ねてみたし。「your name」以降、他者とどう交わるのかにどんどん興味が移っていったし、SADFRANKはより一層自由に人と交わるためのチャンネルっていう意味合いも持っていったと思います。

——それは、単純に人と出会って混ざり合うことへの興味だったのか。あるいは、バンドマンではなく音楽家としての自分に対する興味があったがゆえに今までの自分を一度脱ぎたかったのか。それこそ、今までにない歌が出てきたっていうことも含め、今作からは従来の自分の外へ行こうとする感覚が聴こえてくるから、こう訊くんですけど。

加藤:全部ひっくるめて音楽に対する探求だとは思うんですけど、自分の気持ちとしては……NOT WONK、あるいは俺個人にも、たくさんのタグがつき過ぎちゃってる気がしてたんですよ。苫小牧にいて、元・銀杏BOYZのアビちゃんのレーベルで、みたいな付箋がペタペタ貼られていってるだけで、それがNOT WONKや加藤修平だと見られている感じがあった。でもそれは俺自身の話じゃないんだよなって思っちゃって。

——それこそ「your name」で伝えようとした「あなたはあなたで、俺は俺だ」ということが自分に跳ね返ってきたような感覚?

加藤:“your name”と謳った俺自身はどうなの? っていう感じですよね。これは細かい話ですけど、ジャーンとギターを弾いた時に「やっぱり北の音だね」とか言われたりするわけですよ(笑)。そういうのはいい加減にしてほしいと思ってたし、北の音がどうとかじゃなくて俺は俺の音楽をやってきたんです。で、自分らの表層についたタグに対する評価で飯を食ってるんだとしたら、それは絶対に嫌だと思ったんですよね。

音楽の手練達に対して僕個人が音楽家として向き合えるのかどうかを試したかったし、そこから逃げたくなかった。自分達の音楽に対して「パンク」や「ロック」っていうタグをつけて、アマチュアリズムと紙一重なジャンルに逃げる人もたくさんいると思うんです。だけど僕は、自分のやってきたことに言い訳をしたくなかった。だから今回一緒にやった素晴らしいミュージシャン達と1対1で向き合いたかったし、その人達に「加藤は面白い」と思ってもらえたら、苫小牧のパンクバンドとか、どこのレーベルに所属してるとか、そういうタグを1つひとつ外していける気がしたんですよね。タグを外してみて、そこで見える俺の姿はどんな感じなんだろうっていう興味があったというか……なのでさっきの質問に答えるのであれば、音楽家として新しいところへ行くことと、いろんな人と関わってみることは僕の中で同じ意味合いですね。

——そこで「肌色」について伺うんですが、人間誰しもが外的なタグによって自分の輪郭を作ってしまうところがあると思うんです。どこに所属しているとか、すでに名前のついている思想とか、性別とか、経歴とか、生まれ育ちとか。で、SADFRANKのスタート地点になった「肌色」で歌っていることを見ると、そういうアウトラインを剥がすことで本当の自分が見つかるのかどうかを実験している向きが強いと思うんですよ。自分という人間の輪郭を取っ払うことで本質的な「自分」の概念を見つけようとしたり。他者との間にある線を曖昧にして混ぜてしまうことで、最後の最後に残る自分らしさを感じようとしたり。こう言われてみて、当初の「タグを外す」という目標はどういうところに向かっていったと思います?

加藤:今おっしゃったことが今作の99.9%を占めていると言っても過言じゃないです(笑)。本当にそうで、苫小牧がどうだとか、ギターの音がデカくていいとか、自分らしさとして勝手に語られていたものから遠ざかっていくのが第一目標だったんです。なので、曲を作っている最初の頃はギターを弾くのもやめようと思っていたんですよ。ギターの音がいいよね、と人に言われることが多いなら、ギターを置いても僕は僕なのか。そういう意味での実験がありました。とにかく、いろんなタグを外してもなお残る自分らしさはあるのかどうか、それを見てみたい気持ちが強かったですね。ガワの部分を剥がしてみて初めて、僕を僕たらしめているものが見つかると思ったんですよ。

例えば事故に遭って指がなくなったり、歳をとって同じ声が出なくなったりしたら僕は僕じゃなくなるのかって考えたら、そうではないじゃないですか。だとすれば、僕が僕である根拠とは何なんだろうっていうのが大きな疑問で、その模索自体がこの音楽になっていった気がするんですよね。本質的な自分とは何なのかを考えれば考えるほど、自分を象っているあらゆる線を取っ払うことから始めないといけなかった。

——ギターじゃなく弦と鍵盤が前に出ている楽曲が多い理由がわかった気がします。

加藤:ピアノは全然弾けなかったんですけど、それこそゼロからスタートしようと思ってめちゃくちゃ練習しました(笑)。それでちょっと上達したのが嬉しくて、インスタの親しい友人に向けてピアノを弾いている動画をシェアしたことがあったんですね。歌も乗せず、何の曲かもわからない映像だったんですけど。そしたらWisely Brothersの晴子ちゃんから「すごく加藤くんっぽいね、加藤くんの歌みたいだね」というリプライがきて(笑)。

——あー。自分っぽいと言われるものから離れたかったのに、どうしたって滲んじゃうものがあった。

加藤:そうなんですよ!(笑)。そのコメント自体は嬉しかったけど、反面、えーっていう気持ちもあって。ピアノにまで「加藤くんの歌っぽいね」と言われちゃったわけだから。まあ……今思えば、その頃から「俺はどこまでいっても俺なのかもな」っていうことを徐々に受け入れ始めた気がするんですけどね。固定観念から離れたいと思えば思うほど、やっぱり自分っぽさがにじんじゃうものなんだっていう腹の括り方が生まれていったというか。じゃあどこまでも行き切っちゃうほうがいいよなって思えるようになっていった気がします。

——一旦使わないと決めたギターも、「Quai」の後半で飛び出しますよね。しかも叫ぶようにエモーショナルな鳴りで。

加藤:そうなんですよね。ギター弾かないと決めたのに、結局ギターを持ってしまった。結局は自分なんだなっていう気持ちが必然的に曲に入ってきたというか、全部引き連れてやろうと思えたんでしょうね。

大事なのは人と対話し続けること

——一番最初に「自分の歌心に向き合っている」と申し上げましたが、その核心を話していただいた気がします。歌以外の音もやっぱり歌っちゃってるんでしょうし、NOT WONKの時には「音楽とリリックは別で考えている」とおっしゃっていたのが、今回は歌と音楽が呼び合っているところが強いんじゃないかと思うんです。

加藤:「肌色」や「Quai」を作っている時、メロディと同時に自然と歌詞がついちゃったのはそういうことなんでしょうね。「Quai」で言うと、冒頭の<恋やテロ>が自然と出てきちゃって。自分でも「〈恋やテロ〉って何だよ」と思ったんですけど、歌い出しはそれ以外にないと思ったんですよね。

——〈恋やテロ〉というラインには、人間のミニマムな営みと、人間の一番暴力的な側面の両極が並列されていて。これもまた、自分を自分たらしめるものの境界を探っていく中で出てきた言葉なんですか。

加藤:境界線っていうワードで言うと……自分とは? っていう思考を深めれば深めるほど、自分の中の気持ちと人の気持ちの間には境目すらないんじゃないかっていう気がしてきたんですよ。

——というと?

加藤:例えば最高にハッピーな気持ちで起きた日だとしても、換気扇の下でタバコを吸っている時に「理由はわからないけど死にたいな」って思っちゃうことがあるじゃないですか。結局は本質的な「自分」の輪郭なんてなくて、名前のつけられない気持ちがグルグル回っているだけなんじゃないかって思ったんですよ。どんなに探っても自分の形なんて結論づけられなかったし、喜怒哀楽っていう感情の名前すらつけられないものなんだな、名前をつける必要すらないんだなと思ったんです。で、特別でもなんでもない俺がそう感じるのなら、周りの人もそうなんじゃないかと考えるようになって。自分も人も、名前のない感情をずっと巡っている。だとしたら、人と自分の境界線なんてそもそもないのかもしれないんですよね。俺が家で彼女と過ごしている時に、テロのニュースを見逃すこともある。トルコでひどい地震が起きていても、俺がその時に幸せであれば影響は受けないという現実もある。逆に、俺が組んだイベントの対バンがどんなに盛り上がっていても、俺がその時に電車の事故を見て凹んでたら「こんな時に盛り上がってんじゃねえ」って思っちゃうこともあるんです。

そういうふうに、なんて言ったらいいのかわからない曖昧な感情の中で俺は生きていて……自分っていう枠組みを外して本質的な自分を探そうとすればするほど、何も折り合いがつかないんだって気づくことばっかりだったんですよね。でも折り合いがつかないことは悲しいことじゃなくて、その曖昧な感情の織りとか色彩が、外からはきれいに見えるのかもしれないなって思うようになって。

例えば俺が悲しい気持ちになっていることと、悲しい気持ちの俺がそこにいるっていうことは、ちょっと別の話なのかもしれないなっていう感覚。それが「Quai」を書いている時の気持ちでしたね。折り合いがつかないままの自分が誰かにとって美しく見えればそれでいいのかもしれないし、元も子もない話ですけど、結局自分の目では自分のことは見えないんだなっていう感覚になっていったんですよね。

——凡庸な言い方で申し訳ないですけど、やっぱり自分は自分だけで成立しているわけではないし、外の世界に影響されない絶対的な形を持っているわけではないということですよね。

加藤:結局、見てもらわないと自分のことはわからないんですよね。逆もしかりで、僕は僕のことを見られないけど、人のことは見られる。鏡のような関係、パッチワークのような関係の上で「自分」という概念は成り立ってるんだなって。そんなことを考えて「Quai」を書きました。

——本質的な自分を見つけ出そうとしてきた結果、自分とは何かっていう思考自体から解き放たれたとも言えますか。

加藤:そうかもしれないですね。自分にも人にも、なんならすべてのことに折り合いをつける必要がないし、折り合いがつくはずがないんです。だってそうじゃないですか。家族や友達が亡くなった後に「あ、今悲しくなくなったわ!」みたいなタイミングなんて自分じゃわからないし、どんなに時間が経っても、亡くなった人の持ち物を見たら悲しみが蘇ったりするでしょうし。で、悲しくて酒飲んでたら葬式で久しぶりに親戚に会って嬉しい気持ちになることがあるかもしれないですし。結局、1つの形で括れるものなんてないですよね。そういうことばっかりなのに、いちいち整理して答えを出そうとするから余計ややこしくなるんじゃねえかって気もするし。

——そうですよね。人と人が受け入れ合えず争いを繰り返している今で言っても、いろんなものを1つの型に押し込めようとするから歪みが生まれ続けてるんじゃないかと思うんです。だからこそ、自分も他者も1つの形に括れるものじゃないと考えることから寛容さが生まれていくはずで。

加藤:大事なのは人と対話し続けることで、最初から綺麗にハマる形なんてあるはずがないんですよね。人と人は鏡の関係なんだと思ったと話しましたけど、関わる人の数だけ鏡があって、どんどん自分は1つの側面で語れなくなっていくものなんですよね。

母親の息子である加藤修平の時もあれば、子供に勉強を教えている修平くんの時もあれば、彼女と一緒にいる修ちゃんの時もある。他の人だってそうで、鏡になる人の数だけいろんな側面を持ってる。それを1つの正解に収めることなんて無理だし、折り合いをつける必要すらないんですよね。で、僕はどこにいても本当の僕でいられたらいいなと思ってるし、それを追い求めて音楽をやっている気がするんですよ。

だからこそ、タグだけで語られたり、ミュージシャンとしての側面と個人としての側面をごっちゃにして定義づけられることが気持ち悪い。どの側面の自分も自分であって、何にも縛られない自分であれたらいいなと思ってるだけなんです。じゃあそういう自分でいるためにどうするのかって考えたら、音楽を作って歌う以外のこともちゃんと紐解いて、それを歌にしていくプロセスが必要だったんです。

だから今回はふがいないところも全部出さなくちゃいけなかったし、自分の弱さも歌に込めるっていうタスクがあったんですよね。じゃないと自分という人間の全部を引き連れていけないと思ったし、そういう道筋を丁寧に収めたアルバムなんじゃないかなって思います。

——元も子もない言い方ですけど、「自分とは何だ?」っていう思考自体が自分自身を縛りつけていく気がするし、自分らしくいなくちゃいけないという刷り込み自体に苦しめられている人もいると思うんです。で、加藤さんはそこに自覚的だった気がするんですよ。結果として、人はハナからオリジナルだっていうことを証明している自由な楽曲ばかりになったんじゃないかと。自分らしさに縛られなければ人は寛容になって混ざり合っていけるんじゃないか、そうすればいまだに増え続ける社会の歪みを越えていけるんじゃないかっていうヒントまみれの話でした。

加藤:「折り合いをつける」っていう言い方を何度かしましたけど、いろんな物事に折り合いをつけて納得していくのは俺自身じゃないですか。でも俺が折り目をつけて納得したとして、折り目の分のシワはどこかに寄っているかもしれない。だからきっと何事においても、折り合いをつけることと物事を解決することは違う話なんですよね。社会に目をやってもいろんなところで問題が山積みですけど、折り合いをつけたところでその問題が解決するわけじゃない。やっぱり1つひとつの本質を捉えないと本質的な解決には繋がらないんですよね。そういう意味で、今回のSADFRANKは、自分の中のネガティヴな感情や不甲斐なさに特段フォーカスすることで、まずは自分の本質から逃げないようにしようと思ったんですよね。

例えばデートの日の朝にテレビでテロのニュースが流れていて、俺はそれをシカトして眉毛剃ってたとか……そういう自分のカッコ悪さとか、なんて言ったらいいのかわからない悲しみとか、そういう気持ちを無視しないことが、自分を取り巻く世界に対峙する最初の一歩だと思ったんです。挙げ出したらキリがないほどの悲しみや怒りのフォルムをちゃんと捉えることから始めないと、その悲しみや怒りの対象に立ち向かうのは難しいんですよ。そうして感情のフォルムに向き合って初めて、自分が何に苦しんでいるのか、何が人を悲しい気持ちにさせているのか、この社会に蔓延している気持ち悪さの正体は何なのかということがわかってくるんじゃないかなって気がします。

Photography Leo. Y

■SADFRANK 1stアルバム『gel』
リリース日:2023年3月1日
All Music & Lyrics : 加藤修平 
Total Produce:加藤修平
1. 肌色
2. 最後
3. I Warned You
4. per se
5. 瓊 (nice things floating)
6. offshore 
7. 抱き合う遊び
8. the battler
9. Quai
https://friendship.lnk.to/gel

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「東京のほうが良いと思ったら出てくるかも」 NOT WONKが苫小牧で活動を続ける理由 加藤修平インタビュー後編 https://tokion.jp/2021/04/01/not-wonk-shuhei-kato-interview-part2/ Thu, 01 Apr 2021 06:00:16 +0000 https://tokion.jp/?p=25870 北海道・苫小牧を拠点に活動を続ける3ピースバンド、NOT WONKの加藤修平へのインタビュー。後編では、活動拠点となる地元・苫小牧について。

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北海道・苫小牧を拠点に活動を続ける3ピースバンド、NOT WONK(ノット・ウォンク)。加藤修平(Vo.&Gt.)を中心に2010年に結成。2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース以降、そのライヴパフォーマンスでロックファンのみならず、多くのミュージシャンからも支持を集める。

今年1月27日には4枚目となるアルバム『dimen(ダイメン)』をリリース。これまでのUSインディー、メロディック、パンク、ギター・ポップ等をクロスオーバーさせてきた彼らの新たな実験的な試みが感じられる作品となった。

今回、NOT WONKですべての曲の作詞・作曲を手掛ける加藤修平のインタビューを前編と後編の2回に分けてお届けする。前編では、アルバム『dimen』についての話がメインだったが、後編はバンド、そして地元である苫小牧での活動について聞いた。

苫小牧に住むのは、音楽制作が第一だから

――バンドメンバーとはどれくらいの頻度で会っていますか?

加藤修平(以下、加藤):週に1度、リハで会っていますね。週に1回か、隔週くらいで、スタッフ含めたミーティングがもう1日くらいあります。

――けっこう頻繁に会っているんですね。メンバーは全員、今後も苫小牧拠点で活動を続けるんでしょうか?

加藤:そうですね。ただ、今後もずっと苫小牧から出ないかというと、少なくとも僕に関しては、そこまで意固地になっているつもりもなくて。他の2人はわからないですけど、僕は東京のほうがいいとなったらスパっと出てくる気もします。今のところは、東京に住むよりも苫小牧を拠点にしているほうが、メリットがあるという感じがするんです。人と会うんだったら「東京に来ないと」とは思いますけど、僕は音楽を作ることが生活のメインを占めていますからね。作ることだけ考えたら、間違いなく北海道のほうがいいんですよ。やっぱり住みやすいです。僕らの場合、地元のライヴハウスにアンプとか大量に持っていって、機材をまるまる置きっぱなしで占拠してしまっていることもあって(笑)。

――それはすごい話ですね、ふつうそんなことあるのかな(笑)ライヴハウスの一角にNOT WONKゾーンがあるということですよね。

加藤:そうですね。同じことを東京でやったら、いったいいくら掛かるんだろうなと思います。「ELLCUBE」というライヴハウスなんですけど、僕はそこにいつもいるんです。ブースとコントロールルームがあって録音もできるんです。1時間300円くらい払って借りて、そこでミックスしています。

この間、ELLCUBEで働いているエンジニアの先輩に相談しながらライヴ音源のミックスしたりしました。車でライヴハウスまで10分くらいなので、パソコンを車に積んで持っていって。「今日夜行ってもいいですか?」みたいな感じで作業をするというのは、かなりすごいことなんじゃないかなと思います(笑)。

――メリットがあるという感じなんですね。

加藤:そうです。デメリットがないというよりは、メリットがありますね。もし、みんな僕と同じ環境でできるんだったら、楽だと思いますね。機材の運搬のことを考えないで、好きな時にスタジオ代300円を払って使って。

――300円でコントロールルーム借りるってすごい話ですよね(笑)

加藤:値上げして300円なんですよ(笑)。

――良い音楽を作っていれば、東京じゃなくて、苫小牧でいいんだというのは、ローカルで活動しているバンドマンに勇気を与えるかもしれませんね。

加藤:東京に来るということが最初のうちは結構大変だったんですけど、最近は、東京は東京でいいなと思う部分が大きくて。この間、計算したんですけど、苫小牧から新千歳まで車で行って、1時間前に空港に着いて、飛行機に乗って、渋谷のライヴ会場まで、ドアtoドアで5時間くらいなんですよ。関西で活動していて、車に乗って行くのと大変さがそんなに変わらない気がして。飛行機も早くとれば、8000円で行けるし。苫小牧は何もないといえど、ライヴハウスがあって、スタジオがあって、何の気なしに音楽がやれる環境があるというのは、かなり恵まれた環境だなと思います。

東京に来ればレーベルがあって、手伝ってくれるスタッフがいて、今回であればavexという資本主がいて、そのお金を使って移動してというのができる。僕が今も苫小牧を拠点に気持ちよく活動できているのは、それらすべてのパーツがそろっているからということがもちろんありますけど。そういう風にできるんだったら、今の形がいいなと思って。

「苫小牧を代表する」っていう気持ちはない

――苫小牧の音楽シーンについて教えてください。

加藤:「CLUB ROOTS」があって、2年くらい前に「CLUB ROOTS」の斜向かいに、「bar BASE」というバーができたんですよね。一応、Produced by 「CLUB ROOTS」のバーで、「CLUB ROOTS」のラウンジとしての「bar BASE」たいな。そこには30代以上のクラブに通っている人達がいて。ちょっと離れたところに「ELLCUBE」があって、そこにはNOT WONKがいて、後輩のバンドがいてみたいな感じで。僕らも苫小牧でライヴするのは年に1回とかなんで、シーン的なところはそもそも存在していないかも……。昔はあったんですけど、僕がそのシーンにいるバンドをたいして良いと思っていなくても、地理的に近いだけで仲良くしないといけないのは嫌だったので、そんなに一緒にやりませんでした。苫小牧にいる時は、自分らを一個のバンドとしてパッケージするみたいな意識でいたいんですよね。シーンみたいな横のつながりは希薄で、いつも一緒にいるやつとかとは一緒に飲んだり、遊んだりしますけど、共演するより一緒に遊んでいる時間のほうが長いかもしれないですね。

――苫小牧くらいなら何かしらのシーンがあるかなと思ったんですが、そうでもないんですね。あと、加藤さんが苫小牧についてけっこうドライな感じなのが良い意味で意外でした。苫小牧よりも札幌にいるバンドほうが気持ち的に近いとかそういうのはありますか?

加藤:最近は札幌に行っても、一緒にやるバンドはthe hatchとDischarming manくらいですかね。2つとも先輩バンドですけど、かわいがっていてくれていますね。こうやって話していると、僕らが北海道にいるのって、単純にそこで音楽を作っているというだけなのかもしれないですね。もしかしたら、北海道の人が一番NOT WONKというバンドがどういうものなのかわかっていないかもしれませんね。

――NOT WONKはavexと契約して音楽制作をしているわけですが、地理的に遠いことでavexのスタッフとのコミュニケーションで困ったことはないですか?

加藤:コミュニケーションをするということだけでいうと、困ってないですね。メジャー・レーベルはCDを作る会社という認識は本人達にもあるし、最初の話の段階で、「基本的に中身に関しては、加藤くんの好きなようにやって大丈夫です」という話でしたし、僕もそのつもりで契約したので。でも、個人的には、共同制作者的な感じで、誰かと意見をぶつけ合いながら何かを作ったりするということをavexの方とやってみたいと思うことはあります。自分が好きなようにやるのはもちろんありがたいことなんですけど、お互い言いたいことを言いあって、良いアイデアを作るのが人と関わる醍醐味かなと思います。

ソロの活動のSADFRANKとNOT WONKの違い

――『Down the Valley』や『dimen』でかなりプロダクションについて勉強したと思うんですけど、将来的にはプロデューサーもやってみたいという気持ちがあったりしますか?

加藤:やるとおもしろそうだなとは思いますね。ただ、今度、地元のバンドの曲をミックスすることになっているんですよ。あと、まだ発表していないんですけど、この間とあるバンドにギターで参加して、サウンド・プロデュース的なことを少しだけ手伝ってきました。それと、去年自分のソロの活動(SADFRANK)もやるようになって。リーバイスのCMソングを手掛けたんですけど、あれが結構楽しかったんですよね。オーダーがあって作るのもいいなと。僕の頭の中にある楽曲のアイデアは、自分のバンドではやらないこともたくさんあるので、そのネタを無責任に使える感じがいいなと思って(笑)。

――SADFRANKに関してはNOT WONKとの住み分けが気になっていましたんですよね。

加藤:SADFRANKに関しては、日本語で歌おうと思っています。そうなってくると、NOT WONKでOKだったサウンドが、こちらでは全然OKじゃなくなっていくことがすごくありますね。逆もしかりで、NOT WONKで使えなかったものが、こっちだったらOKだなということもたくさんあります。だから、片方で生まれたアイデアがもう片方に流出する感じはないですね。

――日本ではASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さんなんかもそうですが、ロックバンドとソロ・プロジェクトの両方をやっている人がたくさんいますけど、やっぱり全然違うものとしてあるんですね。って当たり前のことを言ってますけど(笑)

加藤:NOT WONKでやる時はメンバーの顔が出てくるというか。誰が演奏するかということがはっきりしているので。おのずとちょっとした制限が外側でかかっていて、その制限の中で作っているという感じがします。逆にソロのほうは、誰が演奏するとか決まっていないので、制限が果てしなすぎて、逆に手がつけられないという感じがありますね。

だからSADFRANKが形になるのは、もう少し時間が掛かるだろうなという感じがしていますね。

――最後に、コロナ禍によって音楽に対する考えが変わった部分はあるかを聞かせてください。

加藤:コロナ禍になって、初めて8月にライヴをしたんですけど、前に比べてライヴをすることが楽しくなりましたね。これまではライヴする時は鼻息を荒くして、よしという感じで気持ちを作っていたんですけど。でも今は、ステージに単純に音楽を聴きに行ったり、観たり、演奏したりすることが純粋にめちゃくちゃ楽しみになっているというのはありますね。追われるものが全くなくなっちゃったというか。急いでもどうしようもない状況になったじゃないですか。コロナになってから、理由はさまざまですが今までのような活動ができなくなってモチベーションが続かずに脱退や解散に至るという話はよくありましたよね。僕はそういうタイプでもなかったんだなと。スタジオに入って、3人で古い曲を演奏しているだけでも全然楽しいなと思いながらやっているので、それがわかって良かったと思いますね。

NOT WONK
2010年結成。加藤修平(Vo.&Gt.)、フジ(Ba.)、アキム(Dr.)からなる北海道・苫小牧を拠点に活動する3ピースバンド。2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース。その後「ライジングサンロック フェスティバル」をはじめ、多くのフェスに出演。2019年6月に3枚目にしてメジャー初アルバム『Down the Valley』をリリース。2020年8月には渋谷WWWXにてワンマンライブ & 配信 イベントを敢行。2021年1月27日に4枚目のアルバム『dimen』をリリースした。
https://notwonk.jimdofree.com
Twitter:@notwonk_theband

4thアルバム『dimen』
収録内容(CD):
1. spirit in the sun 
2. in our time
3. slow burning
4. Shell
5. get off the car
6. 200530 
7. dimensions 
8. interlude 
9. the place where nothing’s ever born 
10. your name
価格:¥2,800

1月27日にNew Album『dimen』をリリースしたNOT WONKが渋谷クアトロにて二部制によるワンマン公演を開催する
■LIVE! : dimen_210502_bipolar_dup.wtf
出演者:NOT WONK
日時:2021年5月2日@渋谷CLUB QUATTRO
第一部:OPEN 14:30 / START 15:15
第二部:OPEN 18:00 / START 18:45
料金:自由席¥4,000(税込・ドリンク代込み)
※送料込み / 当日 未定
チケット販売:NOT WONK ONLINE STORE  
https://notwonk.thebase.in
発売日:2021年3月24日(水) 19:00〜
INFO:03-5712-5227 (エイティーフィールド)
http://www.atfield.net/

Photography Takuroh Toyama

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NOT WONKが『dimen』で到達した新境地 進化につながるその実験的試みとは 加藤修平インタビュー前編 https://tokion.jp/2021/03/28/not-wonk-shuhei-kato-interview-part1/ Sun, 28 Mar 2021 06:00:08 +0000 https://tokion.jp/?p=24424 北海道・苫小牧を拠点に活動を続ける3ピースバンド、NOT WONKの加藤修平へのインタビュー。前編では、最新アルバム『dimen』での実験的な試みについて。

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北海道・苫小牧を拠点に活動を続ける3ピースバンド、NOT WONK(ノット・ウォンク)。加藤修平(Vo.&Gt.)を中心に2010年に結成。2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース以降、そのライヴパフォーマンスでロックファンのみならず、多くのミュージシャンからも支持を集める。

今年1月27日には4枚目となるアルバム『dimen(ダイメン)』をリリース。これまでのUSインディー、メロディック、パンク、ギター・ポップ等をクロスオーバーさせてきた彼らの新たな実験的な試みが感じられる作品となった。

今回、NOT WONKですべての曲の作詞・作曲を手掛ける加藤修平のインタビューを前編と後編の2回に分けてお届けする。前編では、『dimen』での、エンジニアのIllicit Tsuboiの起用や各楽曲で行われた実験的な試みなどについて話を聞いた。

エンジニア・illicit tsuboiの起用について

――『dimen』の大きなポイントの1つに、illicit tsuboiさん(以下ツボイさん)の参加が挙げられると思います。ツボイさんと共同作業した楽曲は「slow burning」以外の9曲ですね。ツボイさんのことを知ったきっかけを教えてください。

加藤修平(以下、加藤): KiliKiliVillaから出たodd eyesのアルバムのミックスをツボイさんがやっていたので、そこで認識しました。その時は、別にツボイさんと仕事がどうのということはあまり考えていなかったんですけど、去年ナタリーでエンジニアの方を特集する連載をやっていて、そこでツボイさんのインタビューを読んだんですよ。その時に、「この人おもしろいな」と思ったのが仕事をしたいと感じた大きなきっかけですね。あと、SUPER STUPIDとも仕事をやっていたということにも引っかかりました。そんな人が、今長谷川白紙さんと仕事をやっていることもあり、話が通じそうだなと。

――ツボイさんに依頼する時に、どのような経緯でアプローチをしたんですか?

加藤:『dimen』は、初期の構想では1曲ごとにエンジニアを変えようと思っていたんですよ。その取っ掛かりの1曲「slow burning」を、前作『Down the Valley』で一緒に仕事をした柏井日向さん(以下、柏井さん)とやっていて、「これからどうやってアルバム制作を進めていこうか」という時に、コロナ禍が始まってしまったんです。スケジュールも予算も大幅に変わっていった時に、この状況で作品をおもしろくできるのはツボイさんしかいない、という感じになりました。仕事の流れとしては、基本的に僕がデモをガッツリ作って、それをツボイさんにお渡しして、ミックスをディスカッションしながら進めていきました。

――コロナ禍があったために、もともとの構想から方向転換して、ツボイさんに依頼するという流れになったと。ミックスはやはりリモートでのやり取りだったのでしょうか?

加藤:ミックスは立ち会いで、1週間くらいスタジオに籠ってやっていました。2020年の11月末に録音を初めて、12月の1週目くらいで共同作業は終わりました。一緒に作業した期間は短かったですけど、毎日一緒にいたみたいな感じです。

――ツボイさんは、短期集中で依頼主と一緒に仕事をするスタイルなんですね。

加藤:いえ、基本はツボイさんが自分でやって、ミックスも時間をかけたくないタイプのようです。でも、僕は、僕なりのビジョンがあるので、自分で言いたいタイプなんですよね。ツボイさんに頼んだ理由としても、ナタリーの連載の中で、「オーダーがあるバンドとは一緒にやらない。こういう音にしたいというのがあると受けない」というのを見て、じゃ一緒にやったらどういうふうになるのか。僕の作ったものをぶつけてみたら、どのように思うのかという好奇心が湧いてきました。もっと意見が衝突するかと思ったんですが、ツボイさんが紳士的な方なので、いい感じに意見を交換しながらできましたね。

――『dimen』を聴いて、いつも通りツボイさんの色が出ているなと思ったので、意見交換しながらやったというのは少し意外でした。

加藤:みんな、「ツボイさんのプロデュースが効いているな」と思っているかもしれないですけど、サウンドのコンセプトは、僕がもともと目指していた方向性とそんなにズレがないです。ツボイさんとの作業も大事だったんですけど、『dimen』のサウンドには柏井さんと仕事をしたことの影響があるんですよね。「slow burning」は2020年の3月に録って、柏井さんとのミックスが終わったのが10月なんですけど、そこでのミックスについてのやりとりの中で、ポストプロダクション的なサウンドの突き詰め方みたいなものをけっこう勉強しました。この曲は、音響的なところを実験したくて、「これをやったらこうなるのか」というのをひたすらミックスで試していくというのをやりました。だからこの曲はアルバムの中で一番デコボコしていると思います。それを出発点にデモを作って、「ツボイさんの時はこういうふうにしよう」という流れだったので、自分が持っていた方向性にツボイさんのカラーを足したという感覚のほうが大きいですね。

――サウンドには加藤さんと、ふたりのエンジニアそれぞれとの相乗効果が現れているということなんですね。ツボイさんが「自分のこういうところと波長が合ったんだろうな」という部分はありますか?

加藤:ツボイさんとはスタジオで会ったのが初めてだったんですけど、ミックスのタイミングで「いわゆるちゃんとした音はおもしろくないですよね」という話をしました。楽器のキャラクターとか、部屋鳴りのキャラクターとか、声のキャラクターを活かす方向で考えると、バランスは二の次、三の次になりますよね、みたいな話で、そこは波長が合いました。

――ツボイさんと柏井さんはかなりタイプが違いそうですよね。柏井さんのエンジニアリングについて教えてください。

加藤:柏井さんは基本的にNOT WONKの音を好きでいてくれているんですよ。僕とフジ(ベース)とアキム(ドラム)が演奏するのを、そのまま録ることができればかっこいいと思ってくれているんです。ただ、個人的にはそのままだと、今の自分達からはみだせない感じがありました。「slow burning」を録る段階でも、そういう認識のズレをなくしていくところにちょっと時間がかかりました。逆に言うと、ツボイさんはバンドの印象がなく、僕が今回お渡ししたデモの印象が最初の印象だったと思うので、そういう意味ではやりやすかったです。

「1回やったら同じことはやらない」のがルール DTMにも挑戦

――デモを作っていたのはいつ頃ですか?

加藤:「200530」という曲はデモを作った日のファイル名になっていて、その日に作っています。夏の間は、曲を作っていなくて。10月いっぱいでデモを作成しました。曲自体はあったので、それをまとめる作業に1ヵ月かかったという感じですかね。実は、今回のアルバムの最後から2番目の「the place where nothing’s ever born」や「dimensions」は5年くらい前からあった曲なんです。前作の『Down the Valley』というアルバムを作った時は収録曲の倍くらいのデモがあって、それに入らなかった曲をけっこう入れているんですよ。『Down the Valley』は脚色をあまりせずに3人で演奏できるものを作ることがテーマの1つだったので、前作では弾かれた曲が『dimen』に入ってきています。だから新作は脚色が必要な曲が多かったという感覚がありますね。

――そうなると『dimen』は、3人で演奏することにフォーカスしなくなったということになりますが、それはコロナ禍の影響でしょうか?

加藤:コロナ禍というよりも、自分の中で「1回やったら同じことはやらない」というルールがあるので、『Down the Valley』の逆をいったというところです。2019年に『Your Name』というイベントやった時に、「your name」を苫小牧で録音したんですけど、それも最初から3人で演奏せず、女性のコーラスも入れて、自分でピアノを弾いて、ギターもいっぱい重ねて、というのをやっていました。だから、コロナになる前から「次はこっちだな」というのが2019年の夏くらいからあったという感じですね。

あと、『dimen』はデモを作るにあたって、DTMソフトを使用したのも大きいです。『Down the Valley』の時は、ギター1本弾き語りで作っていたんですけど、それとは作り方が全然違います。だからDTMのトレーニングを合わせると、『dimen』の制作には2年くらいかかっているかもしれません(笑)。

――ギター1本弾き語りからDTMソフトの使用というと、その間、バンドでジャムって作っていたということもしなかったということでしょうかね。

加藤:そうですね。もとからNOT WONKはバンドでジャムって作ることを一切しないので。ただいつもと違うところでいうと、「spirit in the sun」は、オケだけ全部作って歌を最後に起こしたというのはやりました。今までは歌ありきで全部作っていたので、その方法は初めてかもしれません。いわゆるギター&ボーカルの感じになったら嫌だなと思って。それを解除するために、全部ギターのフレーズを考えて弾いちゃってから歌うほうがいいなとその時思ったんですよね。

――加藤さんにとってのギター&ボーカルのノリというのはどういうものか教えてください。

加藤:基本的には、ストロークのアタックと歌のアタックが一緒になることじゃないですかね。そういうふうにならないようにしたかったんです。あと、僕はジェームス・チャンスがすごく好きで、「spirit in the sun」ではああいうフリーキーなギターをやりたかったので、それをやろうと思うと、歌とギターがある程度分かれていて、歌はベースとドラムの仲間みたいな感じでいたほうが作りやすかったというのもあります。

「バンドにとって課題がないのがストレス」

――『Down the Valley』からリズムが多彩になっていったじゃないですか。あのあたりから、バンドに対して求める技術レベルが高くなっていきましたよね。

加藤:そうですね。基本的にはみんな練習が好きなので、課題がない状態が一番バンドとしてはストレスなんですよ。僕ができないような難しいフレーズを持っていくと、「え〜」と言いつつも、次の週にはできるようになっているみたいなことがけっこうあり、それが楽しかったです。僕らの場合、曲のテーマというのは「ゴーストをきれいに叩く」とか、「裏の感じを感じつつ、音符の長さを大事にする曲」とか「テンポがハーフになって、めちゃくちゃ遅いんだけど、ちゃんとシャッフルする曲」とか、演奏のイメージが大きいんですよね。

――新作に影響を与えた音楽家がいれば教えてください。

加藤:挙げだすとキリがないですけど、例えば「in our time」はザ・バーズ、「slow burning」と「spirit in the sun」がフランク・シナトラ、「the place where nothing’s ever born」がシンディー・ローパーですね。

――シンディー・ローパーからの影響っていうのはイメージできていなかったので、面白いですね。

加藤:まず、ピシっとした8ビートの曲というのは、実は「the place where nothing’s ever born」しかないんですよね。8ビートとか4ビートというのは普通にやるとめちゃくちゃ普通になってしまうので、本来は使いたくなかったんです。でもそこであえて「8ビートはかっこいいよねということをちゃんとやる」というのは、どういうことなのかとみんなで考えたんです。『dimen』は「グルーヴすること」を念頭において作ったアルバムなので、「全くグルーヴしない」というのも、一周回っておもしろいなと思って。8ビートは「グルーヴしない」ことが可能なビートなので、ベースもギターもEDITしまくって作っていったんですよ。そしたら「これは80sっぽいな」と思うものができて、そこでシンディー・ローパーが参照に出てきたんです。

――「200530」についても聞かせてください。これはツボイさんと仕事していないとできないような曲だなと思ったんですけど、これもディスカッションの中でボーカルを小さくしていくことになったという感じですか。たぶん、最初はもうちょっと大きかったですよね?

加藤:最初はもう少し大きかったんですけど、僕のデモだと引っ込んでしまっていたという感じだったんですよね。でもツボイさんのようなちゃんとしたエンジニアの方がやると、歌はちゃんとするんです。めちゃくちゃにやろうしても、ある程度歌の帯域は残っているので、隙間があるというか。ツボイさんのモニターで、爆音でプレイバックするんですけど、サブウーファーもちゃんと鳴っていて、その辺のクラブより音がでかいみたいな。そうやって聴いていってボーカルが小さくなっていったという感じです。ミックスは深夜の作業だったので、深夜テンションの悪ノリもあります(笑)。

――『dimen』をリリースして、今どのように感じていますか?

加藤:先週、メンバーと「もうちょっとバンドっぽい曲やりたいよね」という話をしていました。「バンドっぽさってなんなんだろうな」ということをアルバムを出して以降から考えていて。バンドで演奏するというのは、要はグリッドがないじゃないですか。それをもうちょっと曲のアレンジに反映させたいなと思っていて。『dimen』はDTMソフトで作ったというのもあって、「spirit in the sun」は如実ですけど、違うブロックが並んでいる構成になっていますよね。それはそれでおもしろさがあるんですけど、3人で演奏するんだったらそれなりの流動性があるようなことを次はやりたいねという感じですね。

後編へ続く

NOT WONK
2010年結成。加藤修平(Vo.&Gt.)、フジ(Ba.)、アキム(Dr.)からなる北海道・苫小牧を拠点に活動する3ピースバンド。2015年に1stアルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース。その後「ライジングサンロック フェスティバル」をはじめ、多くのフェスに出演。2019年6月に3枚目にしてメジャー初アルバム『Down the Valley』をリリース。2020年8月には渋谷WWWXにてワンマンライブ & 配信 イベントを敢行。2021年1月27日に4枚目のアルバム『dimen』をリリースした。
https://notwonk.jimdofree.com
Twitter:@notwonk_theband

4thアルバム『dimen』
収録内容(CD):
1. spirit in the sun 
2. in our time
3. slow burning
4. Shell
5. get off the car
6. 200530 
7. dimensions 
8. interlude 
9. the place where nothing’s ever born 
10. your name
価格:¥2,800

1月27日にNew Album『dimen』をリリースしたNOT WONKが渋谷クアトロにて二部制によるワンマン公演を開催する

■LIVE! : dimen_210502_bipolar_dup.wtf
出演者:NOT WONK
日時:2021年5月2日@渋谷CLUB QUATTRO
第一部:OPEN 14:30 / START 15:15
第二部:OPEN 18:00 / START 18:45
料金:自由席¥4,000(税込・ドリンク代込み)
※送料込み / 当日 未定
チケット販売:NOT WONK ONLINE STORE  
https://notwonk.thebase.in
発売日:2021年3月24日(水) 19:00〜
INFO:03-5712-5227 (エイティーフィールド)
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Photography Takuroh Toyama

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