竹田ダニエル Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/竹田ダニエル/ Fri, 10 Mar 2023 10:02:36 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 竹田ダニエル Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/竹田ダニエル/ 32 32 アーティスト春野がEP『25』をリリースして「今思うこと」、そして「国境を越える音楽活動」について https://tokion.jp/2022/05/01/interview-artist-haruno-25/ Sun, 01 May 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=113734 EP『25』をリリースしたアーティストの春野に、竹田ダニエルが聞き手となり、リリース後の思いから海外アーティストとのコラボなど、多岐にわたるトピックスで話を聞いた。

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今年2月、約1年半ぶりにEP『25』をリリースしたアーティストの春野。自身の楽曲の他「ずっと真夜中でいいのに」「空音」のサウンドプロデュースをするなど、マルチな才能を発揮するネット発のシンガーソングライター・プロデューサーとして活動。今作では、プロデューサー・ギタリストのShin Sakiuraとコラボした「Angels」やシンガポールのR&Bバンド「brb.」とコラボした“cash out”、yamaとコラボした「D(evil)」など、全8曲を収録。タイトル『25』に至るまでの春野の過去のリアルな想い、そして今の死生観・人生観と深く向き合うことで生まれた作品群となっている。

今回、「brb.」とのコラボで海外とのコーディネーターを務めた竹田ダニエルが聞き手となり、『25』のリリース後の思いから、顔出しの理由、日本の音楽シーンの課題、海外アーティストとのコラボまで、多岐にわたるトピックスを語ってもらった。

竹田ダニエル(以下、竹田):今日は2月にリリースしたEP『25』について触れつつ、インターネット上での活動をメインとしているアーティストとして、音楽をやる理由について、表層の話だけじゃなく、内面的な理由についても話が聞けたらいいなと思っていて。まずは大きなエネルギーを費やして『25』を世の中にリリースして、出す前と出した後での気持ちの変化ってあったりする? 

春野:EPのタイトルの『25』は自分の実年齢から付けたんだけど、これまでの自分の過去を包括しつつ、これから先の将来について、よりポジティブに考えたいっていう気持ちの区切りとしてこのEPは位置付けていて。リリースして今はすごく晴れやかな気持ちなんだよね。

作品ってリリースしたら、自分で後から手を加えることができなくて、完全に自分の手から離れて、他者のものになった感じがしていて。だから作品について振り返ることもなくて、もう僕は次に進んでいて、これから先のことを考えているという感じかな。

竹田:パーソナルな経験を作品に反映して、その作品をリリースすることで、その経験が他者の一部になっていくような感覚がアーティストにはあると思うんだけど。

春野:そうだね。リリースすることで、作品に込めた僕の体験や思いが他者のものになった感じはあるね。僕のパーソナルな経験が供養された、という感覚に近いのかな。

竹田:私はインタビューで「ネットで届いている実感が湧くか湧かないか」って質問をよく聞くんだけど。例えば自分の場合だと、SNSで「記事を読みました」みたいなツイートがあるよりも、実際の知り合いとかに「読んだよ、こういう気持ちになった」と言われるほうが、「本当に届いているんだな」って実感するんだけど、春野君みたいにネット上でしか活動していない場合、「届いている」っていう満足感はどこから得ている?

春野:僕の場合、満足感みたいなのは、割と自分の中で生成できていて。個人的にファッションブランドの「サカイ(sacai)」が好きなんだけど、「サカイ」は半年に1回、毎シーズンコレクションを発表していて。それはシーズンのテーマと時世とファッションとを、どう絡めて見せていくか、ということの1つの到達点だと思っている。そういう認識は自分の作った音楽に対してもあって、作品を作ることで、「自己の表明の提示」っていう1つの大きな役割を果たしている。もちろん受け取ってもらって広がっていけばいいけど、自分が良いものを作って提示しているって自覚があるから、リリースしたことですでに役割は果たしていて。だから、他者の評価とかは気にならなくて。

僕はライブをすることがないので、感想や評価はネットでの口コミとかに頼ることが多いんだけど、そこに評価軸を置いてないから、もしかしたら強くいられているのかもしれないね。

「劣等感から顔出しをするにことした」

竹田:春野君はこれまで顔出しをせずに活動をしてきたけど、そういう匿名性があるからこそ、実験的なことができたり、「こういう風に見られたい・ありたい」っていう理想が作れてきたという感覚はある?

春野:もともと僕自身は外見にコンプレックスがあったから、人前に出たくなくて。でも、そういう人間でも本名や顔を出さずに何かしたいっていうところが根本にはあって。1990年代とか2000年代とかだと、何かを表明するには、自分の顔と名前を明かすことが大前提だったんだけど、YouTubeやニコニコ動画が出てきて、どんどん実名じゃない、何かしらテーマをもった人間達が増えてきた。そこに僕も可能性を感じて、2017年の1月からボカロPとして音楽を作り始めたんだよね。匿名ということは良くも悪くも自分が責任を負わないまま何かを表明できるし、やり直しができるから、僕としては都合が良かった。

竹田:そんな考えだった春野君が今回のリリースに合わせて顔出しをしようと思ったきっかけは何だったの?

春野:『25』は、これから先、自分とどう向き合っていくか、自己の尊厳をどう高めていくか、ということを考えていくための作品だったんだけど、自分が憧れているジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデ、マック・ミラーと、自分を比べた時に、やっぱり顔出ししないで匿名でやっていることに対して劣等感があって。それって結局、僕がボカロPを始めた2017年1月頃の「コンプレックスがある」ってことと何も変わってなくて。いろいろと作品を通して自己の表明をして、武装して、強くなってたつもりだったけど、憧れている形に対しては劣等感があった。それに対して、自分はどうなっていきたいかを考えた時に、もっと自分を出すこと、顔出しをすることにためらいはなかった。

竹田:それは大変な覚悟だったと思う。でも年齢とか見た目とかの属性で、どういう人間かをジャッジする大きな要素になるのって日本独特だなと思っていて。例えばMoe Shop(モエ・ショップ)やぷにぷに電機みたいに、アニメの女の子をイメージとしてまとっていて、アーティストと二人三脚で表現を作っているアーティストも結構いる。それはすごく日本的だなと感じていて。V-Tuberとかもそうだけど、日本人の「別の人になりたい」みたいな欲は強いよね。やっぱり、日本社会は規範が強くて、自分がどういう人であるかっていう属性からとても逃れにくくて、どこの大学行ったかとか、家族がどうとかが常にジャッジされていて、なかなか自分(本体)を変えることはできないからだと思うんだよね。ネット上だったら別の人になれるっていう変身願望、逃避欲がすごくあるような気がする。

春野:僕もたぶんその1人だと思うんだけど、どういう属性を身にまとってるか、みたいなものを「やり直し」をした人達が、今はいろんなシーンにいる感じはするよね。

竹田:属性の話からは少し外れるかもしれないけど、春野君や『25』に参加したShin Sakiura、A.G.Oとかって、ビートメーカーとしていろんなアーティストに楽曲を提供している。でも、それって相当コアなリスナーじゃないと知らないことだと思う。日本ではいまだにバンドとかシンガーソングライターじゃないと、広く認識してもらえないっていう風潮があると思うんだけど、春野君はどう感じている?

春野:確かにシンガーソングライターとか、バンドのボーカル、バンドのギターとか、そういう属性みたいなものってなぜか日本では大きな割合を占めている気がしていて。そんな中でも、ビートメーカーってトピックとして小さく見られがちだなとは思う。

『25』にはA.G.O君にトラックを作ってもらった曲が2曲あるんだけど、それって本当はもっと認知されるべきことなんだよね。そういったワークスに対する興味関心って、日本だとメディアも含めてあんまりないなって思っていて。僕の場合、最初にボカロPからスタートしているからこそ感じることなんだけど、ボカロPとビートメーカーってやっていることはそんなに変わらない。作詞しないボカロPがいたとしたら、ポップシーンで活躍しているビートメーカーと何ら変わりないんだけど、「ボカロP」ってだけで、注目されるシーンがあって、それをディグっているコアなファンがたくさんいる。自分としては、もっとビートメーカーが認知されるべきだと思うし、それは今の日本の音楽シーンの課題のような気もしている。今回、ミックス・マスタリングをいろんな人にやってもらったり、A.G.O君にトラックを作ってもらったり、さまざまな人に関わってもらう中で、それはより感じた。

海外アーティストとのコラボ

春野:「cash out feat. brb.」っていう曲でシンガポールのbrb.とコラボして、ありがたいことに注目してもらえているんだけど、こういうコラボって日本だとまだ多くないなって思ってて。SpotifyやApple Musicが普遍的になってからというもの、音楽って国境ないじゃないですか。だけど日本は国内だけで市場が回るから、まだまだ内向きなアプローチが多い気がする。そういうのもあってこの間、¥ellow BucksがØZIとやっているのを見て、驚いたし、これから先のシーンのためにも自分達の手でも進めていかなくちゃいけないなって思ったんだよね。それでもやっぱり、海外アーティストとのコラボは難しくて、今回のbrb.とのコラボは竹田さんの仲介があったからこそ無事に作品もリリースできたし、すごく感謝している。

竹田:ありがとう。そう言ってもらえるとすごく嬉しい! 例えばシンガポールとか台湾とかのアーティストは、自国の音楽シーンが小さいから、日本の音楽シーンがまだ国内だけでもそれなりに成立しているのを見て、すごく豊かだと思っている人が多くて。彼らは日本の音楽業界をリスペクトしているし、日本人のアーティストとコラボしたいって人もいるにはいるけど、それを仲介できる人がまだ少ないなと思う。

コラボして音楽を作ることは、すべてのやりとりが価値観の共有で、ちょっとでも齟齬が生じると作品に大きく影響する。人と人が、無から有を作っているからこそ、すごくそのコミュニケーションはセンシティブだし、仲介する人やそのプロセスもすごく作品に影響を与えるんだよね。

だから海外のプロデューサーとかアーティストに頼む時は、相手の国のカルチャーを理解しているかとか、曲作りの背景とかを理解できているのかどうかがすごく重要で、今後それがすごく試されると思っていて。コロナもあって、オンラインでしか会話ができないからこそ、コミュニケーションの質だったり、異文化コミュニケーションがすごく大事だなって感じている。

春野:そこはすごくエネルギーを使う作業だし、大変なことだとやってみて感じた。コロナ禍になってからの2年くらいで、僕も含めて日本のシーンとして、海外アーティストやクリエイターとのコラボに対して着実に前に進もうとしていると感じていて。ここから先はより海外のシーンに対しての理解度だったり、誠実さが試されていくから難しいことだと思うけど、そこの歩みは止めないで、より深く知ろうとする姿勢は続けていきたいと思っている。だからこそ、竹田さんみたいにちゃんと理解してくれている人は重要だと思うし、評価されるべきだと思う。

僕は自分のSNSをファッションブランドのアカウントみたいな気持ちで運営していて「SNSでは自分の意見を言わない」ことにしているんだけど、それは音楽っていう僕の意志の表明をすることができる大きな手段があるから。でもやっぱり竹田さんとか、A.G.O君とかには本来はもっと名前を出して「ありがとう」って大きく言うべきなんだよね。こうやってインタビューでは発言しているんだけど、それだけだとまだまだ十分じゃないなと感じていて。これから先、自分がどうなっていきたいかのか、課題として残っている。

竹田:私がインタビューすると、毎回反省会になるね(笑)。

春野:『25』は、これから自分がどうなっていきたいかを模索していくためにこれまでの人生を包括する作品だから、それこそ課題を見つけることとか、自分自身に問題提起することはとてもポジティブな作業だと感じていて。今回、こうやって竹田さんと話して立場を表明していくことは、僕にとって有意義だった。やっぱり、こういう機会をもらうことでしか自分を見つめ直すことって、なかなかないじゃないですか。もしかしたら、こういうメディアで話をすることで自分の認識を確かめようとしているのかもしれない。

春野
作詞・作曲・トラックメイキングまで自身で行うなど、マルチな才能を発揮するネット発の次世代シンガーソングライター・プロデューサー。これまでに自身でストリーミングサービスやYouTubeなどを中心にオリジナル楽曲を発表・リリースし話題を呼び、2020年に発 表したEP『IS SHE ANYBODY?』がiTunesおよびApple MusicのR&Bチャートで1位を獲得。2022年2月にEP『25』をリリース。
https://haruno-official.com
Twitter:@xupxq_
Instagram:@iswhooo
YouTube https://www.youtube.com/c/harunoiswhoo

竹田ダニエル

竹田ダニエル
カリフォルニア出身、現在米国在住のZ世代。ライターとしては「カルチャー × アイデンティティ × 社会」をテーマに執筆。インディペンデント音楽シーンで活躍する数多くのアーティストに携わり、「音楽と社会」を結びつける社会活動も積極的に行っている。現在、「群像」にて「世界と私のA to Z」連載中。
Twitter:@daniel_takedaa

「HARUNO #25-26 ONEMAN LIVE」

■「HARUNO #25-26 ONEMAN LIVE」  
【東京】6月25日 / 表参道WALL&WALL 
【大阪】7月16日 / 梅田NOON+CAFE  
開場18:00 / 開演19:00 ※2公演共通 
https://eplus.jp/sf/detail/3624640001?P6=001&P1=0402&P59=1

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対談〈佐久間裕美子×Z世代〉 「メンタルヘルスと持続可能性について」竹田ダニエル—後編— https://tokion.jp/2022/01/10/yumiko-sakuma-x-daniel_takeda-part3/ Mon, 10 Jan 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=85429 NY在住の文筆家、佐久間裕美子がZ世代の本音に迫る対談連載。1人目の対談相手はZ世代のライター竹田ダニエル。全3回でお届けする対談の後編では、Z世代の視点から見る大人像やポップカルチャーシーンの多面的な変化、自身が執筆することも多いテーマである「メンタルヘルス」について。

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カルチャー、ライフスタイル、ファッション、社会運動など幅広いジャンルの執筆活動をし、著書『Weの市民革命』では若者が率先する「消費アクティビズム」のあり様を描いたNY在住の文筆家、佐久間裕美子。キラキラした世代と描かれることも多い一方、気候変動や所得格差など緊急の社会イシューとともに生きるZ世代についての解説を求められる機会が増え、それなら本人達の声を聞き、伝えたいと考えるに至ったことで持ち上がった〈佐久間裕美子×Z世代〉の対談企画。

第1弾の対談相手は注目のZ世代ライター、竹田ダニエル。前編では竹田自身の活動について、中編では、アメリカのZ世代の政治観や、日本において若者のムーヴメントや思想を育む土壌の違いについて聞いた。後編となる今回は、Z世代の視点から見る大人像やポップカルチャーシーンの多面的な変化、自身が執筆することも多いテーマである「メンタルヘルス」について聞いた。

「バズった」を超えた、多面的な理解

佐久間裕美子(以下、佐久間):Z世代が抱えている最大の問題は気候変動で、その原因を作った人達が責任を追及されて逆ギレしたり、被害者仕草をしたり、「わかっていない」と却下することが多いんですが、若い人達がどんどん行動し発言してくれていることに、大人も連帯しないといけない。今の世の中に問題を感じている人は張り切って声を上げていかないと社会は変わらない、特に貧困や気候変動などの緊急課題を解決するのに間に合わない、と思います。

竹田ダニエル(以下、竹田):インターネットの影響でZ世代の趣味が多種多様という前提を考えると、「Z世代ってこうだよね」という括りこそがナンセンスですよね。どの媒体から情報を得るかによっても見える世界が全く違うし、例えばTikTokで普段からZ世代のファッショニスタ達をフォローしているとをやっていると全然奇抜だと思わないファッションも、TikTokをやっていない人にとっては「え、今こんなのが流行ってるの⁉︎」となるし、逆にInstagramでミレニアル世代のインフルエンサーを見ていたら、シンプルなスタイルやマスメディアに影響されたファッションをしている人が多いし、もちろんそれに影響される。

佐久間:アンテナが立っている人は日本に住んでいても世界の影響を受けているわけだけど、「自己肯定感」を吸収することに関してはどう見ている?

竹田:海外のポップカルチャーが「新しい価値観」を知る入り口だった人は多いと思います。自己肯定感が高めのリベラル思考な友達は、中学生の時にデミ・ロヴァートの生き方に感銘を受けて、いわばデミと一緒に成長した感じで、英語を勉強して海外留学もしたんです。ライトな映画ファンが、Netflixでティーンドラマを見て「今のティーンってこうなんだ」と思う傾向も見受けられます。

佐久間:コロナが起きて、世界が変わって、英語で情報を得られるかどうかがサバイバルに繋がってしまっているようなところがあると思うんです。そう考えるとポップカルチャーの力は侮れない。

竹田:ポップカルチャーも多面的に変化していますしね。日本では「行き過ぎたポリコレ」と言われてしまうかもしれないけど、映画ひとつとっても平面的な作品の良し悪しでは判断できなくて、どれだけダイバーシティに配慮してるか、監督の過去の行い、俳優の待遇はどうか……というところまで、現実社会の価値観との関係性について深く考えていくんです。

ポップミュージックも、ただ単に「TikTokで曲がバズったから」ではなくて、「オリヴィア・ロドリゴやビリー・アイリッシュがこんなに人気なのはなぜか? その背景にある社会的な現象は何か?」。逆に「ビリー・アイリッシュが批判されているのはなぜか?」という倫理的・社会問題的な背景情報がわからないと、最終的には日本での洋楽シーンの理解が追いつかなくなりますよね。

日本国内での「アイドル的」な売り出し方との差も開いていると実感します。洋楽シーンでも過去にアイドル的なアーティストが多かったのは事実で、特に政治的な思想はなく、単に「見た目」と「音楽」という情報の少ない見せ方から大きく変わってきているし、(受け取り手が)求めることもどんどん変化している。アーティストの人間としてのあり方と音楽のあり方はやはり切っても切り離せないし、「買い物は投票」という考え方と似たように、どのようなアーティストを支持するかは自分の政治観や社会的意識の表明だということも大前提になっていると思います。

佐久間:ある方面には単に「ポリコレ」に映るかもしれない世界は、実は、受け手の自己認識や自己肯定、メンタルヘルスへの寄り添いにつながっている、ということなんだろうね。

レイシズム・環境問題・資本主義……全てに向き合う

佐久間:逆に言うと、ダニエルの人生は日本にコミットしなくても成立する中で、(現在の活動をする)モチベーションはなんですか?

竹田:「今の自分にしかできないこと」だという認識を持って、ある意味自分にとっての学びの機会だと思って執筆や取材を受けています。アメリカで起きていることをそのまま伝えるというより、複雑な社会的背景や世代間の関係、そして日本にも共通するような価値観の変化などを模索して切り口を考えて書いていますね。あとこれは最近強く思うのですが、英語がわからないから、または情報を得る機会がないからという理由で「自由になるための新しい価値観」を身に付けられないのはもったいないことだなと思うんでしょうね。少し情報を得れば、すごく思考が開けるということは自分も敬愛しているメディアや執筆家(例えば、佐久間さんなど笑)から学びを得て実感してきています。究極的には、「これが起きているのはなぜか?これが話題な理由は?」とカルチャーを「現象」として深くまで考えることは、自分にとって勉強になっています。

佐久間:日本でも若い子が不安を抱えているわけだよね。将来が不安だからいろんな所に玉を入れるというか、「自分は今これやってるけど、これで食べていけるか心配だから厨房の修業もしとこうか」という人が多いようだけど。

竹田:「Z世代の何割が副業をしているか」という話があって、コロナ中に古着を転売する、アクセサリーを作る、コンサルティングをはじめる、という人が増え、“Entrepreneurship(起業家精神)”がキーワードになっています。

最近出版された『An Ordinary Age: Finding Your Way in a World That Expects Exceptional』(オーディナリーエイジ 特別を求められるこの世界で自ら道を見いだす/レインスフォード・スタウファー著)という本にもありますが、ミレニアル世代以降、受験の競争率が上がり「とにかくスペシャルでなくてはいけない」という意識が強かった。小学校の頃からアフリカに行って水道をひいたり、世界一周したり、車椅子を1000個寄付したり、それくらいのことをしないと中学受験さえも勝ち残れない。大学受験のためにはAP(アドバンスト・プレイスメント)の授業をとり、試験は満点で、ボランティア、社会貢献、起業もする。

若い頃から「経験を積まなくてはいけない」というプレッシャーが重く、インターンシップをする中学生もいるんですよ。その時点で過去の経験を問われるなんておかしいと思いますが。大学生のインターン先探しも本当に大変で、副業収入を得られてラッキーという面もありますが、より多くのことをやらなければいけない、という焦燥感を抱いている人が多いですね。

トップの大学では約半数が何かしらのスタートアップに関わっているような雰囲気で、学校側もそれを支援している。シリコンバレーのテック企業やイーロン・マスクなどのスター起業家の影響は大きいですね。SoundCloudにラップをあげただけで「自分はラッパーでアントレプレナーです」なんて言い方をする人もいますし。資本主義社会において、趣味や個性までもマーケティングしなければならず、「自分をブランディングする」ことの必要性は若い頃から植え付けられていることは確かです。

知識がメンタルヘルスを守る

佐久間:そんなに多くのことをみんなができるわけではないじゃない? 焦燥感、いわば「圧」を感じて生きるって深刻なことだと思うんだけれども、Z世代が全体的に抱えているメンタルヘルスの問題についてはどうですか?

竹田:メンタルヘルスの話もセルフアウェアネス(自己認識)から来ると思っていて。全て繋がっているんですよね。

「他の子達よりも機会が少ないのは、自分ができないとか、バカだからじゃない」「自分は有色人種だから歴史上のディスアドバンテージがあって、クオータ制などもあるけど、それでも社会には根強いステレオタイプやレイシズムがある」というように。レイシズムや環境問題や資本主義……全てに向き合い、社会構造を認識することでメンタルヘルスを守る。

セルフアウェアネスは、やっぱり知識から来るもので、マインドフルネスだとか、もっと深いところだと“Therapy-speak(セラピースピーク)”という概念があって、すごく単純な感情もセラピスト的な専門用語で分析することがもはやスラング的な「流行り」になっています。

「新しく出会った人となんかエネルギーがマッチしなくて、なんとなく自分のトラウマをプロジェクトされてるような気がして……」とツイートしたり。それに対して「嫌いなだけだろ、気が合わないって言えよ」と引用リツイートされたりしますが。TikTokでも「あなたはこう言われたらこう考えますか? 親からのトラウマによるPTSDかもしれません」というように、Self-diagnosis(自己診断)を促すような投稿があったり。

ビリー・アイリッシュを含めた多くのポップカルチャーのアーティストが、メンタルヘルスについてオープンに話すようになったり、TwitterやInstagramに流れてくるインフォグラフィックから知識を得やすくなった影響は大きいですね。ミレニアル世代にも共通しますが、Z世代は(セラピースピークを)やりすぎなのでは、という議論も出てきてはいます。同時に、メンタルヘルスを優先することは当然「持続可能性」というより大きなテーマにもつながってきます。

佐久間:メンタルヘルスと持続可能性の話でいうと、Z世代は早くから気候変動について勉強し、常に脅威を身近に感じていることが原因でディプレッション(うつ)や気候不安症(Climate Anxiety)を感じる人が多いですよね。

竹田:TikTokでも、車に座って「世界が炎まみれになってるのに、今日もスタバで働かなきゃいけないの? マジ?」という動画があって。

ミレニアル世代に見られる「個人が起こせる行動として、金属製ストローを持ち歩く」的な動きに対し、Z世代はエコな行動はしつつも、「根本原因は社会構造にあり、そこに一番大きな影響を及ぼすのは政治だ」と気づいていて、ジェフ・ベゾスのような人を極端に嫌う。口だけだ、と言われるかもしれないけど、「個人の責任」というマインドセットから一歩先に踏み出せたことは変化ですよね。

佐久間:Z世代が誰もAmazonで物を買わなくなったら、お金の流れにすごく大きなdent(へこみ)を作れるわけだしね。

竹田:普通に仕事をしながらも、現実逃避として「友達と一緒にコミューンを作って農業できたらいいのにな」ということはよく言いますね。

特権と影響力を認識し、声をあげよう

佐久間:ダニエルは自分をペシミスト(悲観主義者)かオプティミスト(楽観主義者)のどちらだと思う?

竹田:オプティミスティック(楽観的)ではないですね。Z世代全体で見てもオプティミスティックではないと思います。

ペシミストでありながら、「世の中は変えられない」と諦めるのではなく、はっきりと何が問題なのかを指摘して向き合い、まず「悪は悪である」ことを認識することを徹底している気がします。

「他の人の方が大変だから、自分は静かに暮らそう」ではなく「他の人の方が大変だからこそ、声をあげられるなら行動を起こそう」という意識が多くのZ世代がBLMのデモに参加したことや、投票率が高いことなど、いろいろなところに反映されているのではないでしょうか。

「自分の“Privilege(特権/自動的に受けられる恩恵)”を自覚し、声を聞かれにくい“Less-privileged”な立場の人のためにも声をあげよう」「自分の影響力を認識しよう」と。

竹田ダニエル

竹田ダニエル
カリフォルニア出身、現在米国在住のZ世代。ライターとしては「カルチャー x アイデンティティ x 社会」をテーマに執筆。インディペンデント音楽シーンで活躍する数多くのアーティストと携わり、「音楽と社会」を結びつける社会活動も積極的に行っている。現在、「群像」にて「世界と私のA to Z」連載中。
Twitter:@daniel_takedaa

Photography Kyotaro Nakayama
Text Lisa Shouda

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対談〈佐久間裕美子 × Z世代〉 「過去に学び、変化を起こそう」竹田ダニエル—中編— https://tokion.jp/2022/01/03/yumiko-sakuma-x-daniel_takeda-part2/ Mon, 03 Jan 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=82227 NY在住の文筆家、佐久間裕美子がZ世代の本音に迫る対談連載。1人目の対談相手はZ世代のライター竹田ダニエル。全3回でお届けする対談の中編では、アメリカのZ世代の政治観や日本において若者のムーヴメントや思想を育む土壌の違いについて。

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カルチャー、ライフスタイル、ファッション、社会運動など幅広いジャンルの執筆活動をし、著書『Weの市民革命』では若者が率先する「消費アクティビズム」のあり様を描いたNY在住の文筆家、佐久間裕美子。キラキラした世代と描かれることも多い一方、気候変動や所得格差など緊急の社会イシューとともに生きるZ世代についての解説を求められる機会が増え、それなら本人達の声を聞き、伝えたいと考えるに至ったことで持ち上がった〈佐久間裕美子 × Z世代〉の対談企画。

第1弾の対談相手は注目のZ世代ライター、竹田ダニエル。日米カルチャーライターのみならず、音楽コンサルタント、アーティストのPRやマネジメント、日英通訳・翻訳家などいくつもの肩書きを持ち、独自の視点で「Z世代的価値観」を提示する竹田との対談を3回に渡ってお届けする。前編では自身の活動について語ってもらったが、中編では、アメリカのZ世代の政治観や、日本において若者のムーヴメントや思想を育む土壌の違いについて聞いた。

「コミュニズムはかっこいい」反資本主義の世代

佐久間裕美子(以下、佐久間):『生きるためのフェミニズム パンとバラと反資本主義』(堅田香緒里 著/タバブックス)を読んでいるんですが、つくづく自分達の世代はネオリベ的価値観の中で生きてきたかを痛感して。例えば、シェリル・サンドバーグの『リーン・イン 女性、仕事、リーダーへの意欲』という本では、日本でもアメリカでも女性達が経済的な理屈の中で「なんかできちゃってる」という幻想を抱き、家父長制に基づいたシステムの中で生きていたんだな、と思っていて。結局、「救われていなかった低所得の女性を見ようとしてこなかったことが、これまでの市民運動の弱点だった。「社会進出」以前に、むしろ働くことは当たり前で、底辺の仕事だけをさせられてきた女性達がいて、そういうことを今、Z世代が突きつけてきている気がする。

フェミニズムもそうだし、いろんな意味での社会の改善運動からは見えなかったのか、見えないようにされていたのか、目に入らなかったことを見せてもらっているというか。

竹田ダニエル(以下、竹田):親世代とも経験していることは一緒ですよね。ミレニアル世代が9.11を経験している世代で、Z世代がポスト9.11かつコロナの世代と言われていて。9.11なりリーマンショックなりを経験した親から受ける影響も全体的に大きいですよね。

アメリカのZ世代には「“自分達だけじゃなんにも変わらないよね”と言うのが一番ダサい」「自分達の力でどうとでも変えられる」という感じがあって。それは学びから来なきゃいけない。永遠に間違いを繰り返しているのは見ればわかるから、「じゃあ過去の歴史に学ぼう」と。友達がパーティに行って「ねえ、マルクス読んでる? 『共産党宣言』読んでる?」と聞いてまわったり、TikTokでも「マルクスなんかの古典を読んでる人はホットだよね」って言われていて「ホット」であることの定義がどんどんラディカル化しているんですよ。

“Bimbo(ビンボ)”というのがTikTokで流行っていて、超露出の高いピンクの服を着てメイクも超濃くてギャルなのに、超過激フェミニストでクィアで、“This video is for girls,gays and theys(※女性・LGBTQ+・ノンバイナリーのグループに属する人々を指す)”、つまり「(シス・ヘテロな)男はいなくていいから」と。なんというか、これまでのフェミニズムの形と全く違う。理論的にはインターセクショナルでありながら、シニシズムから来ていて、しかもめちゃくちゃ若い。とにかく反共主義の思想が全然ないんですよ、冷戦を経験してないし。だからコミュニズムはかっこいいと思っていて、ラップトップにコミュニストのシールを貼ったりする。

バーニー・サンダースの影響も大きいですね。“Eat the rich(金持ち達を食え)”的な、その言葉自体には意味があるわけではないけど「資本主義は駄目だよね」という認識がある。実際にTikTokを通じてトランプ集会を潰すことができたり、選挙で変化を起こすことができたり、「SNSで誰かに話しかけたら意見が変わるかもしれない」という意識もあります。

ブーマー世代のFacebook的な、身内でどんどん狭まっていくのではなくて、どんどん広がっていく感じ。クィアで田舎に居たら、30年前なら一生カミングアウトできなかったし自分のアイデンティティに対して疑いを持っていたかもしれないけど、今はTikTokでクィアなインフルエンサーをフォローできるし、メディアで多様な人々が取り上げられているし、気軽に世界中の同世代の人達ともつながれる。「自分の考えが間違ってるわけじゃない」と、同じ考えの人を容易に探せることが発言する力にもなるし、潰されることが少ないかなって思いますね。

若者のムーヴメントを育む社会

竹田:日本とアメリカの大きな違いでいうと、アメリカは保守派同士が密接につながっているけど、逆に正反対の意見を持った人達の団結力もすごく強い。バトったとしても潰されはしない勢力があるから、声を上げることには全く抵抗がないんですね。

ブリトニー・スピアーズやエイミー・ワインハウスは大人に支配されたポップスターではあったけど、レディー・ガガやテイラー・スイフトは大人になってから政治的発言をしてアイコニックな存在になり、今やビリー・アイリッシュは17、8歳で“Fuck Trump”って言える。そうやって自分の声を取り戻した有名人の影響というのは大きいと思います。

佐久間:アメリカと日本のZ世代の最大の違いに、人口が多いか少ないか、という問題があって、人口が少ないと声を上げた時に小さくなってしまう。特に日本の場合はこれからどんどん歳をとっていく人達の負債を背負っていかなければならない悲壮感のようなものもあると思うのだけど、その辺はどう見えている?

竹田:不況だし人数が少ないし……最終的には大人の意見が一番大事で「大人に気に入られなければやっていけない」という感じがある。

佐久間:それは現実としてあるということ? それとも若い世代の頭の中に?

竹田:若い世代の頭の中にもあると思うし、大人が「若い子すごいよね」と言ったとしても、結局は大人のために利用する感じが否めなくて。若者のためのムーヴメントではなくなってしまっている、というか。若者がムーヴメントを起こしても、大人は「自分達も若い頃そうだった」というより「なんだ、あいつら若くて何も知らないのにバカか」と言ったり。周囲のZ世代が、大人に気に入られるためにそういう風に言うこともあると思うんですね。

佐久間:わかる! 年功序列が強い社会だからかな?

竹田:学校で先生に気に入られるためにいじめに加担することも少なくない。自分の強い意志を持つことがすごく難しいと思っていて。「会社でジェンダーに対する差別があった」と言う友達も多いけど、なかなか声に出すことができていない。佐久間さんや長田杏奈さんの熱心なファンで本とかも読むけれど、それを書けるのはインスタの親しい友達に向けてだけだったり「これは絶対的に間違っている」って自信を持って言えないんですよね。

佐久間:それはどうしてだと思う?

竹田:やっぱり、それは絶対的に間違っているという認識が社会にまだないからなんじゃないかな。

佐久間:アメリカのZ世代は人口も多い分、雇用や競争ということでいうとわりと替えがきくけれど、日本はZ世代にも働いてもらわないとしょうがないという構造がある分、労働者人口としてももっと自分達からいろんなことを要求していいと思うの。ただある程度の自己肯定感がないと、要求することって難しいのかと思うんだけど、日本のZ世代があまり自分から要求できないのは、大人から踏みつけられてきたからなのかな?

竹田:変化を起こす前例を見てないからじゃないかな。政権を変えた経験もなければ、選挙で何か変わったところも見ていない。前例としてポジティブな変化があればいいと思うんですけど。

佐久間:最近よく日本のリベラルは「成功体験がない」ということを耳にするけれど、確かにZ世代の場合は、要は見てきた社会がずっと自民党ってことだもんね。

竹田:そうですね。価値観的にも。

佐久間:Z世代のアートディレクターと話していたら、やっぱり「自己肯定感が持てている人と持てていない人の差が激しい」ということを言っていて。

竹田:そうかもしれないですね。「ジェンダーライツとか Marriage equalitiy(婚姻の平等)の話をして、実際に同性婚が合法化された」というような前例があれば、自信になるんだろうけど。何かするとはぐらかされて何も変わらない、ということが続くと「真面目にやってるだけ損」という気持ちになってしまう。真面目にやっていない人達が得しているし。

個人的な感覚だけど、日本語で読めるものと英語で読めるものの差がどんどん開いてるような気がしていて。アメリカではメディアのインディペンデント化がすごく進んでいて、例えば「ティーンヴォーグ(Teen VOGUE)」が誌面からネットになり、Z世代が主導しながらもものすごくラディカルな政治的なことやセルフケアやカルチャーの話をしている一方、それと同等な日本のメディアがない。

「自分は社会がこうなればいいな、と思ってるんだよね」と話したら「あ、『ティーンヴォーグ』でこんな記事があったよ」と共有できて「えっ自分が言いたかったことが既に言語化されてるじゃん!」ということがある。

日本のメディアではいまだに「フェミサイドかどうかは意見が分かれる」というような議論ばかりが目立ってしまう。自己肯定感を高めるにも、(ラディカルな)思想を育むにも、知識は必要だから、日本語と英語で読めるものの差が開いている以上、思想のミスマッチは起きますよね。

Z世代が大人を見る視線

佐久間:Z世代はいろいろと上の世代から言われることもあると思うけど、逆に大人に対してはどう思っている?

竹田:Z世代は「大人って全然だめじゃん」ということをよく理解していると思います。Facebookで、良い年した白人の大人がウォルマートで有色人種に対して差別的な行為を堂々としている投稿動画が出回ったり、ワクチンを打たないことをアイデンティティにしてしまっている、陰謀論に染まった保守派の大人達とか、白人男性中心的な価値観を絶対に手放さない政治家がいまだに権力を持っていたり……この点は日本でも同じはずですが、大人はみんな偉くてすべて知っているわけのではない、ということは特にコロナや大統領選を通して露呈しました。

若者の方がわかってることもあるし、今の大人と自分達の状況は違うから、「お前の年頃には俺達はあんなに頑張っていたのに」という話は通用しない。大人になったら25歳くらいで家を持ち、子供がいて……というのは優遇された時代だったからできたこと、と冷静に見られる。親についても“They didn’t know what they were doing(彼らも若い時は何もわかっていなかったよね)”とよく言います。

竹田ダニエル

竹田ダニエル
カリフォルニア出身、現在米国在住のZ世代。ライターとしては「カルチャー x アイデンティティ x 社会」をテーマに執筆。インディペンデント音楽シーンで活躍する数多くのアーティストと携わり、「音楽と社会」を結びつける社会活動も積極的に行っている。現在、「群像」にて「世界と私のA to Z」連載中。
Twitter:@daniel_takedaa

Photography Kyotaro Nakayama
Text Lisa Shouda

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対談〈佐久間裕美子 × Z世代〉 「Z世代は自分達が作る」竹田ダニエル—前編— https://tokion.jp/2021/11/30/yumiko-sakuma-x-daniel_takeda-part1/ Tue, 30 Nov 2021 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=77609 NY在住の文筆家、佐久間裕美子がZ世代の本音に迫る対談連載。1回目の対談相手はZ世代のライター竹田ダニエル。全3回でお届けする対談の前編では、竹田ダニエルの活動の原点について。

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カルチャー、ライフスタイル、ファッション、社会運動など幅広いジャンルの執筆活動をし、著書『Weの市民革命』では若者が率先する「消費アクティビズム」のあり様を描いたNY在住の文筆家、佐久間裕美子。キラキラした世代と描かれることも多い一方、高齢化、気候変動や所得格差など緊急の社会イシューとともに生きるZ世代(1997〜2012年頃の生まれ)についての解説を求められる機会が増え、それなら本人達の声を聞き、伝えたいと考えるに至ったことで持ち上がった〈佐久間裕美子 × Z世代〉の対談企画。

第1弾の対談相手は注目のZ世代ライター、竹田ダニエル。日米カルチャーライターのみならず、音楽コンサルタント、アーティストのPRやマネジメント、日英通訳・翻訳家などいくつもの肩書きを持ち、独自の視点で「Z世代的価値観」を提示する竹田との対談を全3回に渡ってお届けする。

前編となる今回は、竹田の目に映ったかつての日本とアメリカのポップカルチャー、SNSと共に育ったZ世代の1人として現在の活動に至る「原点」について聞いた。

一般教養としてのポップカルチャー

佐久間裕美子(以下、佐久間):子どもの頃、竹田さんには日本はどのように映っていた?

竹田ダニエル(以下、竹田):日本の文化といえばかわいい文房具とかバラエティ番組ですね。物心ついたのが2000年代前半だったので、アメリカは今のカルチャーと全然違っていて、テレビは当時ディズニー・チャンネルで、『ハイスクール・ミュージカル』や『ハンナ・モンタナ』、ジョナス・ブラザーズが流行っていて。ポップスターもブリトニー・スピアーズとか。でも、自分は「これが人気」みたいなのにあまり共感できなくて、逆に日本の音楽や音楽番組自体が好きでした。いきものがかりを好きになったり、紅白歌合戦にも惹かれるものがありました。J-POPは自分にとってはすごく新鮮で、やっぱり異国の文化みたいな感じもちょっとあったりして。

当時は、日本のテレビしか見ていなくて。学校の子達がみんな『ゴシップガール』の話をしてるのに、うちでは日本語教育のために親が日本のテレビしか見させてくれなくてあんまりわからないことも多くて仲間に入れてもらえない、なんてこともよくありました。逆に日本に旅行で訪れると、みんなと似たような見た目だし、英語ができるから尊敬されることが多くて、「生活しやすいな」と思うことは多かったです。漫画とかアニメとかも好きだったけれど(アメリカの)学校ではそれがあまりクールではなかったから、中学ぐらいから周りの子達が好きなものやポップミュージックを一生懸命聴くようになりました。当時のiTunesチャートの1位から30位までを全部ダウンロードしたiPodを友達にもらって、全然洋楽がわからないところから「このアーティストが人気なんだったらこれを次に聴こう」と覚えるようにして聴いていましたね。

ポップカルチャーって、アメリカだと普通の生活の中の一般教養として会話に必要だから、知らなきゃいけない焦燥感に追われて。そこから好きになる以前に詳しくなっていきましたね。グラミー賞とかアカデミー賞があると必ずその話題を学校でみんなが話すことが多くて、知らなきゃそもそも会話にも入れてもらえないんですよね。

SNSで拡がる音楽と竹田ダニエルの原点

佐久間:一般教養として身につけていたポップカルチャーの知識が「これで食べていきたい」というような情熱に変わる過程はあったの?

竹田:年上のミレニアル世代(1981〜1996年頃の生まれ)にとってはMyspace(マイスペース)、Z世代や若いミレニアル世代にとってはTumblrが大きなカルチャーで、Tumblrではインディーバンドとファッション、ライフスタイルとブログなどが融合して発信されていました。

もともと世代的にもテイラー・スウィフトが好きなのがきっかけで、Tumblrのカルチャーを追うようになったのですが、テイラーがインディーバンドを巻き込むような活動を2014、2015年くらいからどんどんし始めて。テイラーがTumblrで活発だったから、THE 1975やアークティック・モンキーズ、ハルシーなどもその「オルタナTumblr」の文化圏から台頭して、Tumblrを中心にファンやリスナーの発信がメインでファッションとライフスタイルと音楽が繋がるようになっていきました。ファン主導で画像の加工やアーティストごとの美的世界観の形成をしていたのを、自分ではやらなかったんですけど、研究するように熱心に見ていました。

ハイムもデビューしたてで、THE 1975も全く有名じゃなかったところから、インターネットとSNSで拡がって、どんどん有名になっていく過程を見ることができて。特にTHE 1975はムーディーな世界観と若さあふれるサウンドを繋げることが天才的に上手くて、感動するほど好きで。それが自分にとっての「音楽を届けることの研究」の原点でもあります。そこから初めてライブに行ったり、その後、大学でミュージックビジネスの授業を受講して。自分で音楽をやっていた時期も長いですが、それよりもアーティストの良さをどう伝えるのか、ファンの熱狂をどう汲み取るか、どう音楽の魅力をパッケージングするのか、その「カルチャー」の面に対する興味は昔からとても強かったです。

ミュージックビジネスの授業は、いろいろな学部や学校外からの人が参加して、ファッションデザイナーやラッパー、ライブハウスのオーナーなど学校に直接関係ない人も厳密な選考を経て集まっていて、お互いのプロジェクトに関われるワークショップのような授業で、実際にユニバーサル ミュージックから業務委託を受けたり、グラミー賞を主催するザ・レコーディング・アカデミーのメンバーとしてプロジェクトに関わることができたりして。そこで実際にバンドのマネージャーやアーティストのPRを担当したのが、今の活動の始まりですね。

佐久間:音楽だけでなく、「現象や文化としての音楽」ということに興味がある?

竹田:まさに、YouTubeが出始めた頃に、ちょうど自分も音楽を聴き始めて、変化と一緒に成長できたことが大きいと思います。レディー・ガガとビヨンセが「Telephone」をリリースした時にミュージック・ビデオをみんながYouTubeで見たり、ケイティ・ペリーの新曲をみんなで見る、という現象が当時では一般的で、音楽を「みんなで共通して体験」することの喜びや楽しさはずっと心に残っています。

かつてあったその「みんなに共通している体験」が、今ではとても少なくなりました。2013年のトップ50は必ずしも「みんなが知っている」というわけではなく、聴いている曲はどんどん多様になってきていると思います。今はストリーミングがあるから、それぞれ好きなものを聴けるし、ニッチな音楽を聴いていることがファッションや自己表現の一部でもあります。CDの時代はあまり経験しなかったけど、ジャスティン・ビーバーもYouTubeから出てきたという現象があって。今までミレニアル世代が見てきた、ブリトニー・スピアーズ的な「大手にピックアップされて有名になる」以外のルートがTikTokやストリーミング経由でZ世代アーティストではどんどん出てきて、それは見ていて面白いですよね。

アップデートされ続ける世代観

佐久間:日本語の文章がシャープなのは、とても努力をしたから?

竹田:ライターをやり始めたきっかけは音楽ジャーナリストの柴那典さんに声を掛けてもらって「現代ビジネス」の寄稿依頼をいただいたことでした。メンタルヘルスとZ世代と音楽について一生懸命に書いたのが、テーマとしてもタイムリーで話題になりました。

佐久間:本を読んだりは?

竹田:本は読むことは読みますね。日本の漫画や雑誌は子供の頃からよく読んでいて、そうやって馴染みのある媒体に今寄稿できていることはとても嬉しいです。ただ小説的な日本語は身につかなくて、だからエクストリームでディベート的な日本語になってしまっているのかな、というのはあります。やはり自分の中で英語を日本語に変換してるから。

佐久間:私は竹田さんの文章を読んで違和感を持ったことは1回もないけれど、頑張って書いているという感じ? 初めて日本語で記事を書く依頼があった時はどうでした?

竹田:文献をいっぱい探して、日本語に翻訳し、DJのようにつなぎ合わせ、自分の論を追加する、ということをやっているのですが、それが新しかったのかもしれません。本職の理系研究職の論文引用のスタイルが影響しているとは思います。「現代ビジネス」の記事でも自分にしか出せない切り口で、リサーチ論文のような感じで書いたのですが、それが今でも書き方としては続いていますね。

アメリカのジャーナリズムでは「ニッチな話題を探して意見を言おう」という傾向があります。それがヒットするか炎上するかはわからないけれど、そういった斬新な切り口みたいなものを見ていくうちに「コレとコレは繋がる」と。「i-D」や「Vice」の書き方もそうですが、参考にしているかな。日本では「最近のZ世代のトップアーティスト」のようなまとめ記事がほとんどだけど、英語の記事を1つずつ読んでいったら「じゃあ、どうしてこういう人が出てきたのか」とその背景に繋がる。

佐久間:世代というと「この年からこの年に生まれた人は全員同じ世代」で、いいやつも悪いやつも皆同じ世代にいる一方で、その時代を生きることによる共通項もあるわけで。竹田さん自身、「Z世代ライター」と称しているけれども、それはアイデンティティの中で「世代」というものが大きいから?

竹田:ミレニアル世代には「甘やかされて育って、自分が特別だと思っていて怠慢で、アボカドトーストと『ハリー・ポッター』が好きなんでしょ?」というような他者からのレッテルがある。それがミレニアル世代だとしたら、Z世代は「自分達で作っているものだ」っていう実感があるんです。

アメリカではZ世代にレッテルを貼るように“that’s so Gen Z”と大人が鼻で笑うように言ったりもしますが、一方ではZ世代はアメリカの人口の中でも最大の層を占めていることもあり、当事者の声がとても大きく、大人が「Z世代はこう」とレッテルを貼ること自体がダサいという雰囲気があります。「インターネットで育っているから」という表層的な分析に対し「いや、私達はもっとこういう経験をしてるし、こういう世代間の相互作用もある」と反論できるし、どんどん自分達の定義も変わってきている。皮肉的なZ世代という定義も自分達の中にあるし、何でも過敏にポリティカルコレクトネスを求めたり、“Everyone is getting depressed(誰もがうつになってる)”とか。そういうのも自発的に、、客観的に分析できているように思うんですね。

そこを踏まえて「自分が定義づけるZ世代を展開する」という意味で、Z世代ライターをやっているかな。Z世代を代表するという意味ではなくて、たまたまその世代に属している身として「私自身はこういう価値観がある」と提示する、というような。

「諦めから来る生命力」

佐久間:ちなみに私はX世代(1965〜1980年頃の生まれ)なのですが、自分が生きてきた時代の共通体験はあるにしても、シニカルなスラッカーという世代の全体感にもシンパシーは弱いし、属性意識は薄いんですね。Z世代にとって世代意識というものが大きいのはどうして?

竹田:ミレニアル世代はメディアや周りの人にネガティブなことを言われてきたわけですが、単体として考えるより「ブーマーの影響を受けた世代」と考えると、客観的に見てもかわいそうという感じがあって。

アメリカでも「Z世代」はまだちょっと新しい言葉なので、いまだに「若者=ミレニアル世代」って思われているところがあって。でもミレニアル世代って、実際一番年上は腰痛持ちだし、一番若くても20代後半。Z世代の一番年上はもう就職してる。もはや〈ジェネレーションα(アルファ)〉(2013年頃以降の生まれ)が出てきているのに、「ミレニアル世代はこうで……」というように言われて、(世の中の認識が)すこし遅れているんですよね。

それでミレニアル世代には「自分達は被害者」っていう意識もあるし、その痛々しい様子をZ世代が見た時に正直ダサいっていうのはあって、それは馬鹿にしつつ、でもその気持ちは同情から来てるというか、「まあかわいそうだよね」と。

それと対比した時に「自分達はかわいそうな境遇にあるけど、それは結局大人のせいだし、かわいそうって言われるよりも大人が頼りにならないから自分達で変えてやろう」という「諦めから来る生命力」のようなものが感じられる。

佐久間:諦めから来る生命力!

竹田:ピーターパン・コンプレックス的なものではなく、逆に「今までのシステムって壊れてるじゃん」ってことを普通にリアリスティックに言う。

例えば、“Girlboss(ガールボス)”が流行って、本が出てドラマにもなって。新しいポップなフェミニズムの形として「ミレニアルピンク」が流行ったりもしましたよね。でも結局、資本主義的に消費されてしまったり、“Patriarchy”(家父長制)に流されてしまっていて。

Z世代から見ると「それら(資本主義や家父長制)に乗るよりも本質的なシステムを変える」だとか「うつだけど、それは自分がおかしいからじゃなく、社会システムがおかしいからだ」と認識して割り切れるということかな。

竹田ダニエル
カリフォルニア出身、現在米国在住のZ世代。ライターとしては「カルチャー x アイデンティティ x 社会」をテーマに執筆。インディペンデント音楽シーンで活躍する数多くのアーティストと携わり、「音楽と社会」を結びつける社会活動も積極的に行っている。現在、「群像」にて「世界と私のA to Z」連載中。
Twitter:@daniel_takedaa

Photography Kyotaro Nakayama
Text Lisa Shouda

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