TBSラジオ橋本吉史インタビュー Archives - TOKION https://tokion.jp/series/tbsラジオ橋本吉史インタビュー/ Fri, 30 Apr 2021 06:26:14 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png TBSラジオ橋本吉史インタビュー Archives - TOKION https://tokion.jp/series/tbsラジオ橋本吉史インタビュー/ 32 32 「アフター6ジャンクション」が掲げる多様性 TBSラジオ橋本吉史インタビュー後編 https://tokion.jp/2021/04/30/tbs-radio-yoshifumi-hashimoto-part2/ Fri, 30 Apr 2021 06:00:20 +0000 https://tokion.jp/?p=30393 TBSラジオで平日18〜21時に放送されている「アフター6ジャンクション」の橋本吉史プロデューサーのインタビュー後編。今回は番組作りについて語る。

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2018年4月からTBSラジオでスタートしたカルチャーキュレーション番組「アフター6ジャンクション」(以下、「アトロク」)。メインMCはライムスターの宇多丸が務め、平日18〜21時、3時間生放送で、毎回多様なテーマでカルチャーを紹介している。今回、番組のプロデューサーを務めるTBSラジオの橋本吉史に話を聞いた。前編では、「アトロク」を始める経緯からそこに込められた想いを語ってもらったが、後編では、「アトロク」の番組作りについて詳しく聞いた。

玄人向けにせず、リスナーの間口を広げる

——「アトロク」では、パートナーとしてTBSのアナウンサーが加わりました。「ウィークエンド・シャッフル」は玄人向けに作っていた印象がありましたが、「アトロク」ではアナウンサーが加わったことで、リスナーの間口が広がった印象があります。それは意図していたんですか?

橋本吉史(以下、橋本):そうですね。月~金の18〜21時の帯番組を作る上では、より開かれたものである必要がありました。「ウィークエンド・シャッフル」も玄人向けに作っていたわけでは決してなかったんですが、もっといろんな人が聴く番組にしていかなきゃいけないという意識は強くありました。その中で宇多丸さんと世代や性別、好きなものが全く違う人とが対話をする場を作ることで、どの立場の人でも入っていきやすくなると考えました。

カルチャーでいうと、例えば「ガンダム懐かしい」「ポケモンやってた」といっても世代で思い入れのある作品が違っていたりするし、特定の年齢から見た視点だけにならないよう、そして価値観に偏りがないようにするのも目的です。世代や性別が異なる人同士が対話することで、いろいろな側面からそのカルチャーを見ることができます。今は多様性をあたりまえにしていく時代だから、まず番組の在り方がそうなってなきゃいけない。

その中で、じゃあアナウンサーだったら誰でもいいかというとそうではなくて、僕は番組がスタートする前にTBSのアナウンサーとすごく長く仕事をしてきたので、どのアナウンサーがラジオ的に、もっと言えばこの番組的に適しているかっていうのはずっと前からリサーチしていました。アニメ好き、ゲーム好き、映画好き、とかの個性もありますが、自意識をこじらせていて人間味あるなとか(笑)。だから、「アトロク」のメンバーは、僕は前に仕事をして、この人なら大丈夫という勝算のある5人※なんです。

※「アトロク」のパートナーは、月曜日が熊崎風斗、火曜日が宇垣美里、水曜日が日比麻音子、木曜日が宇内梨沙、金曜日が山本匠晃。

——多少の噛み合わなさも番組としてはあってもいいと。

橋本:価値観が同じ者同士の会話の気持ち良さは当然ある。でも、いろんな立場の人達がそれぞれの視点を気持ち良くぶつけあう場のほうが聴いていて気付きが多いんじゃないかと。要は人として認めあってればトークとしては楽しく聴けるわけなので。あと、アナウンサーが主役になることだってあります。

例えば宇垣さんがいなかったらアニメや漫画の企画はほとんどできていなかったし、宇内アナがいなかったらゲームの企画もここまで育たなかったと思います。日比アナの演劇関連の企画、熊崎アナが韓国ドラマにハマり出した流れでの特集、山本アナのフード描写で映画を読み解く視線など、アナウンサーが主導する回もたくさんあります。

それと、宇多丸さんのどんな人からでも学ぶ姿勢も素晴らしくて。本人は保守的なタイプだと言っていますが、常にアップデートしようとする姿勢がある人ですね。それと、カルチャーって世代を超えて共感する部分もあるのがいいですよね。『エヴァンゲリオン』が世代によって愛し方が違ってたりするのもあるし、ゲーム好きで知られる加山雄三さんが以前ラジオで「バイオハザードのスコアを孫と競っている」って言っていて、そういうの良いなあって。

——「ウィークエンド・シャッフル」でパートナーだったしまおまほさんを、そのまま「アトロク」のパートナーにするっていうのは考えなかったんですか?

橋本:長く聴いてくれてる人ならではの突っ込んだ質問ですね!(笑) 作り手からすると、しまおさんって自由にさせたほうがいいんです。でも「アトロク」のパートナーになると交通情報とか段取り的にやらないといけないことがたくさんあるので、しまおさんはそのポジションじゃないなと。

あとは、しまおさん本人も言ってましたが、番組とは距離があったほうが良くて、入り込みすぎずに番組を冷静に見て、足りないものを言ってくれたり。そういうスタンスのほうがお互い良い気がしています。それで今は月に1〜2回、しまおさんが理想とするラジオ番組の追求という形で自由すぎる企画をやったり、たまに出演するオブザーバー的な役割をお願いしたりしています。実は、しまおさんってものすごく自分に厳しくて、なれ合いになることをすごく気にするのでそれもあるのかも。アウトプットに対して実はストイックという。ストイックという言葉とすごくギャップがある人かもしれないですが。

特集は「まだ知られていないこと」が起点

——特集の内容は、ビギナー向けから玄人向けまでかなり幅広くやられていますが、どのように決めているんですか?

橋本:基本的には玄人にしかわからない企画、というものはやるつもりはなくて、題材がニッチだったとしても、むしろ、いかに知らない人や興味ない人に対して届けるかを大切にしています。玄人向けのように聴こえてたとするとその特集は失敗ですね(笑)。

一方で、みんなが知っているものでも「実はここが知られてない」とかも企画としてはあって。例えば最近やった企画だと「ダンサー」の仕事ってみんななんとなくは知っていますが、実はすごく不遇な条件で活動している人も多い。そういう「知らなかった」ことを伝えていきたい。だから基本的に、特集企画は、「まだ知られていないこと」が起点になることが多いです。

——どのくらい前から考えるんですか?

橋本:だいたい1〜2ヵ月前から考えています。特集によっては、ギリギリまで決まらないものもありますけど。

——映画、音楽、漫画、ゲームなど扱うカルチャーの割合は考えていますか?

橋本: あまり強くは意識してないですが、曜日スタッフやパートナーの得意分野で自然と分かれてくる感じですね。アニメや漫画は宇垣さんのいる火曜が多く、ゲームは宇内アナの木曜、とか。っていうか、こんな細かいとこまでインタビューしてくれるなんて! 扱うジャンルのバランスの話なんて局内で気にされたことないですよ(笑)。

——番組を聴いていると幅広く扱っているので、気になっていました。それでも毎日特集企画を考えるのは大変なのでは?

橋本:確かに、番組を始める時は「毎日特集ってできるかな?」って思いもありましたが、「できなかったらその時は特集をやめよう」くらいに考えていましたね(笑)。でも結果、企画案は渋滞しているくらいあります。カルチャーってトレンドも移り変わるし、視点次第でいくらでも語りがいがあるし、ディレクターや作家が優秀で素晴らしいチームなこともあってアイデアが尽きることはないですね。

あとは、出演者とスタッフが「あの映画が良かった」「この曲やばい」「この漫画スゴすぎ」「あのゲームやってる?」とか本気で雑談するんですよ、放送前後に。リモートでも仕事終わってるのにZoomでずっと話してたり。僕自身もですけど、番組クルーが本気でカルチャーを楽しんでいるっていうのが、あたりまえではあるんだけど、伝える側としての大切な原動力ですね。

——宇多丸さんから企画に対してNGが出ることはありますか?

橋本:あります。視点がよくわからないとか、切り口がよくわからないとか、スタッフと同じく編集者目線なこともあれば、「そのロジックだとゲストと話しづらい」とか「喋り手の目線」でも指摘してくれます。それこそなんとなくブッキングしただけでやろうとすると「なんで出るの? 出てもらって何するの?」って宇多丸さんも言いますね。そこから議論して企画がブラッシュアップされて「これだ!」って視点が定まっていく過程は、産みの苦しみでもありながら、チームで何かを作る冥利に尽きます。

——19時台の「LIVE&DIRECT」では、毎日ミュージシャンのライブが放送されています。あのブッキングも大変そうです。

橋本:これは前身番組からの積み重ねもあるし、ブッキングチームが優秀で、FMのミュージックステーション系で活躍するディレクターと、クラブやライブハウスを運営してたDJオフィスラブさんが担当してくれているので、5日間、毎日、注目アーティストがパフォーマンスを披露するという前代未聞の企画が可能になっています。これまだ伝わりきっていないので強調したいんですけど、このペースでやってるのは、日本はもちろん世界的にもたぶんこの番組だけなんですよ! アメリカのラジオ局NPRの「タイニー・デスク・コンサート」を目指そうって思ってたのに、実施ペースでいえばもう勝ってるという。

ただ、コロナの影響が出てきてからは、今後どうするかって話にもなったんです。前はライブもスタジオでやっていて、ここに十何人集まってやったりもしていました。たまに海外のミュージシャンも来てくれたりして、それが楽しかったんですけどね。でも、コロナでそれができなくなって。今は事前に録音してもらったライブ音源を放送したり、外部スタジオからリモートでライブするスタイルをとっています。

それこそ生でライブができないならやめるって選択もあったかもしれませんが、ミュージシャンがMCやっている番組で、ミュージシャンの活動の場を減らすってなんだよ、って。今苦しいアーティストやクリエイターがいるんだったら、その場を提供するのがカルチャーキュレーション番組の役割だろ!ということで続けています。

ライブショーと音声コンテンツのプロとして

——橋本さんはラジオの魅力はどういった点だと考えていますか?

橋本:「プロフェッショナル」の最後で聞かれそうなやつですね(笑)。庵野さんばりにはぐらかしたいところですが……もともとラジオはパーソナリティとリスナーの距離の近さっていうのは1つの魅力で、テレビなどよりも親近感の湧くメディアであることは間違いないと思います。「ラジオだけは本音を言ってくれる」みたいな信頼性も今の時代に貴重です。

その上で、「音声だけで表現しているということ」に今後は大きな可能性があると思っています。さらに言うと僕らの場合は生放送に対しての対応っていうのはかなりできるので、それはかなり強みになると思います。

——やはり生放送へのこだわりがあるんですね。

橋本:単に伝統的に生放送の割合が多い、ってだけなんですが、自然とそういう仕事の仕方になっていますね。一発勝負だったり、その瞬間に対応する瞬発力や対応力は、他のメディアの人よりはあると思います。だから、ラジオで働く人の強みとしては、ライブショーとしてのプロと、音声コンテンツとしてのプロという2つ。今は音声コンテンツに注目が集まっているからこそ、質の高い音声コンテンツを意識的に作る必要があるなと思います。

あと、番組とは別でオーディオムービーという、これまでのオーディオドラマのクオリティーを高めるプロジェクトをやっていて、そこにも可能性があるんじゃないかと思っています。最近「JapanPodcastAward」を受賞した「令和版・夜のミステリー」という作品があるんですが、経緯を話すと長くなるので「詳しくはオーディオムービーで検索」で!

——最後にラジオは今後どうなっていくべきだと思いますか?

 橋本:これまた「プロフェッショナルとは?」的な……(笑)。まず、今はスマホでも聴けるなどより身近な存在になってきているとは思いますが、そういったテック面、ハード面で時代に合わせて進化し続ける必要性ですね。

それと昨今のPodcastブームや音声SNSブームで、音声コンテンツの裾野が広がっているのも、すごくいい状況だと捉えています。YouTubeみたいにみんなが音声コンテンツにコミットしやすくなると、僕らが思いもよらない音声コンテンツも出てくるかもしれない。一方で映画のような、すごく作り込んだ、技術力の高い音声コンテンツっていうものを僕らがプロとして作っていかないといけない。そこに意識的であるラジオのプロを増やしていくことが、ラジオ業界にとっては重要なことだと思います。

あとは精神面で「ラジオに求められがちな、昔から変わらない安心感」に作り手が甘えすぎないことですね。アントニオ猪木引退時に古舘さんが言った「闘魂に癒やされながら時代の砂漠をさまよってはいられない」になぞらえて言うと「ラジオに癒やされながら時代の砂漠をさまよい続けないように」していくべきだなと。

橋本吉史(はしもと・よしふみ)
1979年富山県生まれ。2004年TBSラジオ入社。2007年『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』を立ち上げ、プロデューサーを務めた。2018年4月に『アフター6ジャンクション』を立ち上げ、現在は同番組のプロデューサーを務める。大学生時代は、一橋大学世界プロレスリング同盟(学生プロレス団体)に所属。
https://www.tbsradio.jp/a6j/
Twitter:@nakapiro

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「アフター6ジャンクション」が提示するカルチャーの意義 TBSラジオ橋本吉史インタビュー前編 https://tokion.jp/2021/04/15/tbs-radio-yoshifumi-hashimoto-part1/ Thu, 15 Apr 2021 06:00:30 +0000 https://tokion.jp/?p=28866 TBSラジオで放送中のカルチャー番組「アフター6ジャンクション」に込められたプロデューサー・橋本吉史の想い。

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2018年4月からTBSラジオでスタートしたカルチャーキュレーション番組「アフター6ジャンクション」(以下、「アトロク」)。番組のコンセプトは、「あなたの”好き”が否定されない、あなたの”好き”が見つかる場所。映画・音楽・本・ゲームなどの分析や、独自視点による文化研究など、日常の中にある『おもしろ』を掘り起こすカルチャー・キュレーションで現代社会に広がるさまざまな趣味嗜好の多様性を受け止める」というもの。

メインMCはライムスターの宇多丸が務め、平日18〜21時、3時間生放送で、毎回多様なテーマでカルチャーを紹介している。「アトロク」の前身となる番組「ウィークエンド・シャッフル」は2007年4月〜2018年3月まで毎週土曜日の22時から2時間生放送で行われていて、多くのコアなリスナーから支持を得ていた。そうした実績があるものの、平日の18〜21時にカルチャーを扱う番組にどれだけ勝算があったのか。番組のプロデューサーを務めるTBSラジオの橋本吉史に話を聞いた。前編では、「アトロク」を始める経緯からそこに込められた想いについて。

カルチャーとの偶然の出合いを創出する

——個人的に「ウィークエンド・シャッフル」は好きだったんですが、「アトロク」が始まると聴いて、平日の18〜21時で大丈夫かって思いもありました。当初から平日の18時~21時の時間帯でカルチャー番組をやるというのは、勝算はあったんですか?

橋本吉史(以下、橋本):もちろん勝算はありましたが、勝利してるのかどうか、は視点によるんだろうなとも思いつつ(笑)、ただなんでこの時間帯にカルチャー番組をやるのかについては、しっかりとした理由があります。

もともとTBSラジオでは平日の18〜21時って野球のナイター中継をしていた時間なんです。それでナイター中継をやめて次に何をやるか、そのあと枠を考えてくれというのが会社からのオーダーでした。それでまず考えたのは、平日の18〜21時はどういう時間なんだっていうこと。この時間って仕事をしている人もいれば、家でくつろいでいる人もいたり、人によって何をしているかが違う。そんな中でも、あえていうならば、「仕事や学校からプライベートへと、自分の時間に移行していくグラデーションの時間帯」だと思っています。

その時間帯にどんな情報が流れていればいいのかを考えると、自分のための時間の使い方、つまり余暇や、趣味にまつわるものだとフィットするんじゃないかと。それを番組に落とし込む時に、宇多丸さんとずっとやってきた「ウィークエンド・シャッフル」の要素をうまくミックスすると、カルチャー・キュレーション番組みたいなものが成立するんじゃないか、というのがまずありました。

あとは番組のコンセプトともつながるのですが、1人で趣味を楽しんでいた人が番組を通して仲間がいるんだって気が付いたり、趣味がなかった人でも「これだったらもしかして自分も楽しめるかも」みたいなカルチャーが見つかったり、そういった“好きが見つかる”とか“好きがつながる”場を番組を通して作れたらいいなと思って。それはラジオがもともと持っている「リスナーとのつながり」や「コミュニティー性」と相性がいいだろうという考えもあって始めました。

——なるほど。そういう意図があったんですね。番組制作で意識していることはありますか?

橋本:番組を運営する上で、「ただみんなが好きそうなものばかりを提供する番組にはしない」というのは意識しています。今はインターネットでも自分が好きそうなものを自動でおすすめされていく。それが当たり前になってきているので、「思いもよらない好きなものとの出合い」という体験がなかなかなかできなくなっています。そうした体験は今や不特定多数に向けたメディアじゃないと作れない。全く興味のなかった音楽だけど、勝手に流れてきて、それと接触したらすごく良かった。そういう体験ってたぶんその人の人生の中で楽しみが増えることにつながる、すごくいい体験なはずなんです。だから「勝手に出合わされてしまうことの価値」を番組で作れたら、それは意味のあることだし、それであればやる意味があるはずだと信じています。少なくとも自分は出身がカルチャー不毛な地域だったので(笑)、学生の頃とかまだ自我が形成されきってない時期に、いろんなカルチャーを教えてくれる場があってほしかったこともあり、こんな番組があったら最高だっただろうなあと思ってやっているところもあります。

——「ウィークエンド・シャッフル」の実績があったとはいえ、平日毎日3時間、しかも生放送でカルチャー番組をやることに対して、「それで数字が取れるのか」とか「スポンサーが本当につくのか」みたいな否定的な意見はなかったんですか?

橋本:それはなかったですね。というか「カルチャー番組」ってだけで数字が取れない、っていうイメージがあるんですか? それ知ってたら考え直したかな(笑)。確かに番組作りで言えば、すごく人気がある人を起用したり、ゲストに呼んだりすると、当然数字が取りやすいというロジックが出てくるのも想像できますし、スポンサーにも人気者の◯◯さんの番組ですといえば話をしやすいのかもしれません。

「みんなが聴きたい番組」っていうのはもちろん大事なことなんですが、加えて「メディアがやるべき番組」っていうことも考えないといけない。かといって “お勉強”みたいなことを地味にやっても仕方がないので、そこにエンタメとして聞ける要素もケレン味ある演出でプラスしてカルチャーを紹介する番組であれば「おもしろくて、ためになる」可能性はあると思っていました。

インターネットのPV至上主義みたいに、「わかりやすくて、みんなが聴きたい」だけを考えると、当然、人気者に出てもらえばいいって話が出てくる。でも、「人気者が出て何をするんですか」「人気者が出て何を伝えるんですか」っていうことがあまり考えられていない。番組を通して、どういうビジョンを描いてリスナーに伝えていくのかを答えられる作り手は、ラジオ業界に少なくなっている気がします。要は「ブッキングさえできれば、あとはその人が好きなことをやってくれればそれでいい」と思っているスタッフも少なからずいる気がして。そうじゃなくて、「この人にこれをやってほしい」と企画もしっかり作るというのが、僕らの仕事。YouTubeやClubhouseでタレント自身が直接受け手に発信できる時代になって、ラジオのプロとしての役割って何なのかっていうのが、問われてきていると思います。

もちろんタレントさんや芸人さん、アーティストさんと一緒に何かを作ることの楽しさ、重要さ、キャッチーさも当然あるから、それをしてないわけじゃないんですが、そこにもう1つ「番組としてこういうスタンスを打ち出すんだ」っていうところはあるべきですね。

パーソナリティの覚悟

——そもそも宇多丸さんのスケジュールを押さえるのも大変だったんじゃないですか?

橋本:現役バリバリのミュージシャンですから、もちろん大変でした。ただ、以前から宇多丸さんには「ラジオパーソナリティを長くやっていくと、この先、月曜日から金曜日の帯番組をやらないかって話が来るのが普通の流れです。だからその時にどうするかっていうのは、覚悟しておいたほうがいいかもしれないです」って話をしていました。

それでいよいよ帯番組の話が来るなって予感があったので、前振り的に「たぶん来るかもしれないです」って話したら、「まずはやってみる」と宇多丸さんが快諾してくれて。全然もめることもなく決まりました。

これは放送でも言っていましたけど、土曜日の夜のほうが実はスケジュールを押さえられているのがミュージシャンとしてはきつかったみたいで、週末空くほうがツアーやライブがやりやすいそうです。ただ平日の帯の3時間生放送は大変ですけどね(笑)。

——番組をスタートしてどれくらいの時期に手応えを感じましたか?

橋本:何をもって手応えとするか次第ですが、開始してまもない頃に、「今まで知らなかったけどこれ好きになりました」とか、「今まで全くその人が接触してなかったジャンルにハマってオタクになりました」とか、リスナーの声が聴けると、やっている意味があるなって思うし、その人の人生の選択肢が増えたことがすごくうれしいですね。生放送中に、働くビジネスマンから「今日はまっすぐ帰る予定でしたが、紹介されていた書店に帰り道の途中で寄れそうだったので、立ち寄ってみたらそこで出合った本が素晴らしかった」と感謝のメッセージをいただいたこともありました。これこそまさに!といううれしいリアクションでしたね。

「おもしろかった」っていうのももちろんうれしいんですけど、番組を通じて何か行動を起こしてくれたり、視点が変わったりっていう報告があるのが一番の手応えです。また、映画業界の人に「番組で聴いてた話を自分の作品の参考にした」とか音楽関係者の人が「紹介されてたアーティストが気になったのでコラボした」とか、「番組でやっていた企画を書籍化したい」「ドラマ化したい」など、クリエイターの方々からリアクションをもらえるのも、こんな光栄なことってないなと思いますね。

——実際の指標としては、聴取率やradikoの再生数ですか?

橋本:あとはマネタイズも大切と言われますね。民放なので。これらはもちろん頑張らないといけないんですが、それだけをクリアするものが良いメディアです、って状況がいいのだろうかって思っています。「広告収入がたくさんあります」「大勢の人に聴いてもらえています」って、それは素晴らしいことだけど、メディアの役割ってそれだけじゃない。もう1つ発信する側の責任というか、それは絶対に必要で、番組の作り手としての矜持がないといけないんじゃないかと思います。

番組が社会に対してどう役に立ってるのか、とか、あとは他メディアにも取り上げられるような存在感も重要ですね。ラジオってよくネットニュースに取り上げられますが、「出演者がこんなことを言った」というゴシップ的な視点も多い中で、「あの番組でこんな企画やるらしいぞ」と番組側が企画したことについてニュースになることが大事かなと。

——「アトロク」は、その番組内容と姿勢からリスナーからの信頼度は高そうですね。

橋本:そうですね。だからその信頼を裏切れないし、そういった意味では慎重に作っています。というと腰が引けているように聴こえるかもしれないですが、「何この企画」と思われる攻めた姿勢を忘れないという意味での慎重さと、時代に取り残されないようにするという意味での慎重さ、です!

後編へ続く

橋本吉史(はしもと・よしふみ)
1979年富山県生まれ。2004年TBSラジオ入社。2007年『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』を立上げ、プロデューサーを務めた。2018年4月に『アフター6ジャンクション』を立ち上げ、現在は同番組のプロデューサーを務める。大学生時代は、一橋大学世界プロレスリング同盟(学生プロレス団体)に所属。
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Twitter:@nakapiro

Photography Hironori Sakunaga

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