モーリー・ロバートソン Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/モーリー・ロバートソン/ Fri, 16 Apr 2021 23:32:25 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png モーリー・ロバートソン Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/モーリー・ロバートソン/ 32 32 #映画連載 モーリー・ロバートソン Vol.4 時代の大転換を妄想できる3作品 ―『英国王のスピーチ』編― https://tokion.jp/2021/04/18/morley-robertsons-movie-column-4/ Sun, 18 Apr 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=28315 タレントのモーリー・ロバートソンが、ポストコロナの大転換した世界を妄想するための3作品を紹介。ラストは『英国王のスピーチ』。

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映画鑑賞は動画配信サービスの普及によって、もはや特別な行為ではなくなり、感想の共有やレコメンド検索も簡単になった。しかし、それによって映画を“消費”しているようにも感じる。本連載では、映画を愛する著名人がパーソナルなテーマに沿ったオススメ作品を紹介する。

タレントのモーリー・ロバートソンによる時代の大転換を感じさせる映画の第3弾。メディアを中心にコメンテーター、DJ、ミュージシャンの他、国際ジャーナリストとしても活躍し、政治・経済からサブカルチャーまで、いくつもの引き出しを持つ彼がコロナ禍の今だからこそ、見るべき映画を紹介する。

“がんばる人が報われる”。今だからこそ心に響く物語

『ジョーカー』では、その先の未来がどんな姿をしているかもわからない状況の中で、抱えている不安や恐怖を解放する姿に私達が置かれている現状、まさに今、時代の大転換を感じさせるというお話を。『マッドマックス』では恐怖心も何もかもを捨てて未来へ向かうことができる人こそが、この混沌とした時代において強い人間であるというお話をしました。

そして今回ピックアップしたのは、『英国王のスピーチ』です。この作品は、先出の2作品よりも、ものすごくリアリティを感じさせる作品。エドワード8世が離婚歴のある民間出身のアメリカ人ウォリス・シンプソンと駆け落ちしてしまい、幸か不幸かイギリス国王になることになってしまったジョージ6世の物語です。本来ならば隠しておきたい吃音症に悩む様子を赤裸々に描いていて、本当にギリギリのリアリティを保っている秀作です。

英国のロイヤルファミリーをリアルに描いた作品で有名になったのは、ヘレン・ミレンがエリザベス2世を演じた『クィーン』(2006年公開)だったのではないかと考えているのですが、美しく清楚で尊い女王が、実は一般人と同様のマインドを持っていることを描きましたよね。女王を1人の人間として描くなんて本来はタブーであろうことなのに、ヘレン・ミレンの演技が素晴らしく、映画からエリザベス女王への愛が溢れていたこともあり、この表現がギリギリ許されたんじゃないかと想像しています。愛こそが防御壁になっていたというか。

『英国王のスピーチ』がおもしろいのは誰もが知るエリザベス女王が主人公の『クィーン』を経て、実はあまり語られなかったジョージ6世を主人公に描いたことで、さらにこの王様を尊敬するイギリス人が増えたであろう点です。血筋も身分もある王様が吃音症であり、さらにとても子どもっぽい側面があったり、執事がいなかったら何もできないところが赤裸々に描かれるなんて、普通だったら許されないですよね。でも、非現実的に尊い人としてだけ描いてしまえば嘘に嘘を重ねていくだけで、映画で観る意味が全くない作品になってしまう。日常で語ることができないものを観ることこそ映画の醍醐味なわけだから、恐れずジョージ6世のありのままを描いた。興味深いのは、今のように世の中が不安定になって、何か解放されたいと思っている時にこの作品を改めて観ると、見てはいけないはずのものが美しく見えること。結局は環境が違うだけで、「王様だって自分と同じ人間だった」って感情移入ができるから、王様ががんばったように自分が無理だと思うことも逃げずにやれば、もしかしたら成就できるのではないか。結局、がんばる人が報われるということが、この映画の側面にあったと感じられるんです。

『英国王のスピーチ』

ブルーレイ ¥2,200

発売元・販売元:ギャガ

© 2010 See-Saw Films. All rights reserved.

こんな時代だからこそ生まれるヒーローもいる

『マッドマックス』は、どんなにがんばっても犠牲になる人が存在する残酷さも描いていて、そこに妙な爽快感を覚えるけど、『英国王のスピーチ』の場合は真逆の勧善懲悪の物語になっている。実際、イギリスではこのような王室をはじめ、身分制度はいらないんじゃないかというディベートもなされているのですが、一方で王室があるおかげで生きる気力をもらっている人も大勢いるわけです。前回の『マッドマックス』の回でも同じことをお話ししましたが、誰か強い人に守ってほしいと思う現代人がすがることができる究極は血筋。目に見えないパワーが心の聖域になるからです。だからこそ、王様に共感し、自分を重ね合わせ、生きる力に変えることができるんです。まさにこのコロナ禍におけるリーダー像にふさわしいですよね。

実は、こんな時代だからこそリーダーになれた人物が現代にもいます。ドナルド・トランプです。毎回、世間を賑わす彼の言動を考えてわかったのは、権力を持つ人が、国民1人1人の願望と重なるような、言ってはいけないことや、はしたない行動をしていると、熱烈に愛情をいだいてしまう。被害者意識が強い状態や不安・圧迫されるような状態が続くと、行儀の悪いリーダーを欲しがるのが民衆でもある。善人が言うことには「お前が言っているようなことを真似したって、俺達に何もいいことなんて起きないじゃないか!」と反発されるだけですしね。そう考えると、トランプもジョーカーもイモータン・ジョーも、そして権力のある王様と繋がるように思えませんか? もちろんプリズムの違う角度から見て、ですがね。

守りに入るな! 挑戦してこそ明るい未来は見えてくる

よく考えてみると時代の流れがものすごくよくわかるようになるし、未来に向けて行動したくもなってくる。でも、実際のところディスカッションする場所や場面ってそうそうないですよね、それがすごく現代っぽくもある。今って賢者の出番がない時代なんです。本当はこんな不安な時代であればヨーダ(『スター・ウォーズ』)や山の上にいる仙人のところへ行って教えを乞いたいし、乞うべきですよね(笑)。でも今の社会=特に生活保守的な人々を見ていると、賢者の前でみんながギャーギャー騒いでいる。賢者が素晴らしいことを言ったとしても、その人の人格否定までしてみたり。そういう現象を見ていると「ああ、賢者の声なんて聞きたくないんだな」って思うし、結局みんな今持っているものを失うのが怖くて、その恐怖に大声を上げているだけなんだという惨めささえ感じます。

でも、よく考えてみてください。幸せになりたいということは、いわゆる快楽を求めているわけですよね。本来、快楽というのは死と向き合ったり、破綻や恐怖などリスクと向き合って冒険してこそ得られるんです。生活保守的な考え方に縛られて、ただ大声を上げて生きていると、大きな罠に引っかかると思いますよ。例えば、「絶対儲かる投資話があるよ」と、どこかで聞いたことがあるような詐欺を信じてしまったりとか(笑)。

僕がこの3作品を通して伝えたいのは、とにかく今の世界を生き抜くために固定観念を全て捨ててしまえということ。不安定な時代だし、僕にだって先に何があるかなんてわからないけれど、生活保守的考えや思考停止したまま生きていては時代に取り残されてしまう。

『ジョーカー』や『マッドマックス』で、未来がどうなろうが自分の正義と幸せのために自分自身の殻を破り、突き進んでいく物語を『英国王のスピーチ』で、ひたすらがんばれば報われるという希望の物語を観て感じたように、守りに入るのではなく、とにかく自分がワクワクするものに向かっていく生き方に勝算あり! ということ。不安な時代はまだ続くと思います。だからこそいらないものは捨てて、頭を使って、チャレンジしながら明るい未来を作っていきたいですよね。

Edit Kei Watabe
Photography Teppei Hoshida

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#映画連載 モーリー・ロバートソン Vol.3 時代の大転換を妄想できる3作品 ―『マッドマックス』編― https://tokion.jp/2021/03/17/morley-robertsons-movie-column-3/ Wed, 17 Mar 2021 06:00:20 +0000 https://tokion.jp/?p=23957 タレントのモーリー・ロバートソンが、ポストコロナの大転換した世界を妄想するための3作品を紹介。2作目は『マッドマックス』。

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映画鑑賞は動画配信サービスの普及によって、もはや特別な行為ではなくなり、感想の共有やレコメンド検索も簡単になった。しかし、それによって映画を“消費”しているようにも感じる。本連載では、映画を愛する著名人がパーソナルなテーマに沿ったオススメ作品を紹介する。

タレントのモーリー・ロバートソンによる時代の大転換を感じさせる映画の第2弾。メディアを中心にコメンテーター、DJ、ミュージシャンの他、国際ジャーナリストとしても活躍し、政治・経済からサブカルチャーまで、いくつもの引き出しを持つ彼がコロナ禍の今だからこそ、見るべき映画を紹介。

時代の大転換を感じさせる映画の2作品目は、『マッドマックス』です。こちらの作品も『ジョーカー』同様シリーズ化され1970年代の終わりから1980年代までに3作品が発表されましたが、どれも「メガトン級の核戦争が起きたら人が100万人単位で死んでしまう。そんな世の中に生きる人達は一体どうしたら良いんだ!」という問題をジョークのように描いていたんですよね。僕は、今そんな映画さながらの状況がもう目の前に迫っていると感じます。「よっしゃ、もうそろそろ!」と、あってはいけない期待感さえ抱いています。

それは新型コロナウイルスが世界中に蔓延したこともそうですけれど、少子化問題とか難民や移民問題とか世界情勢に鑑みてもそう思える。もしかすると、世界の国の均衡が崩れて、ウワーッとまるでローマ末期のゲルマン民族大移動のようなことが起ってしまうのではないか。そういう状況の一歩手前にいるような気がしてならないんです。一方で4作品目の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』では『ジョーカー』で感じたのと同様に、これからの未来に希望を感じさせられもしました。同じ名前のついた作品でありながら、過去のテーマを継承しつつ世の中の課題をあぶりだした秀作なのです。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ダウンロード販売・デジタルレンタル中

ブルーレイ ¥2,619(税込)/DVD ¥1,572(税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

Ⓒ2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

登場人物全員が自分の正義だけを信じる世界に感嘆

1作品目の『マッドマックス』(1979)は核に恐れている時代。3作目の『マッドマックス サンダードーム』(1985)では核戦争が起きてみんな死んだらどうなるのか? という恐怖を感じさせる作品でした。まだ当時はバブル期で、豊かさの中で生活保守が進んでいる時代。トランスジェンダーに対してもまだ偏狭な考え方で、「個性的な格好をしていても、少しであれば晩餐館に入れてあげるよ。だから頑張りなさいよ」という時代でもあったんです。それが、27年を経て公開された4作目にあたる『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)では多様性の時代になり、サイエンスフィクションが多少描かれているものの、ある種のリアリズムを追求した、ほぼ女性が主役の物語に変わっていました。サンダードームの頃の“普通と普通じゃない人”が時代を経て入れ替わっていて、ミレニアル世代がすんなり受け入れられる世界として描かれています。

それはかつてマイノリティだったものが現代ではメインストリームになっている証拠で、美しさの価値も多様化していることを指しているんですよね。そして、それぞれに正義がある描き方をしているから、今作の悪役として登場したイモータン・ジョーにさえ感情移入できる。人権もなく、ただ、子どもを産ませるためだけの存在として女性を扱っているのに、自分の子どもは命に代えても守りたいという気持ちってすごいなって思えるんですよね。生きることに一生懸命だけど、映画が始まった瞬間に善悪がなくなるという描き方も秀逸ですよね。サバイバルと愛の物語なんだと思うと、こんな混沌とした世界観の中でも生きる意味を見出せたような気持ちになるんです。

恐怖を超えたところに彼らの正義と喜びがある

中でもひらめきがあったのは、シルバーのスプレーを口元に塗って「私は輝いている!」と死に向かうシーン。これって普通だったら全く考えつかないような演出ですけど、宗教がなくなった時に、それに代わる神秘的な儀式のようなものを相当研究して生み出したのではないかと思っています。かつて、外部と接触のなかった人々が暮らす島に飛行機が貨物を落としてしまうと、落ちたものが例えコーラの瓶だとしても聖なるオブジェとしてまつりあげられるという事例ってたくさんあったんです。外界と接触してしまったらなくなってしまうけれど、すべてが完結した島の中に不純物が1つ入り込むだけで、それが宗教心になってしまう。たまたまあったシルバーのスプレーを吹きつけると顔が輝いて不死身を意味するとか。

そういう解釈をすると、例えば今ホームセンターで売っているような商品が断片化して文明がなくなると魔法のオブジェにさえ映ってしまうということでもある。つまり日常の退屈は、実は退屈でもなんでもなく、一歩先には考えられない可能性を秘めているという伏線でもあるんじゃないですかね。

悲観的ではあるんだけど、そこに生きる喜びのようなものを感じてすごく元気になれる。イモータン・ジョーのところへ行くぞ! なんて一見恐怖に支配されているようなシーンも、実は口元にスプレーを塗ることがトリガーになってすべてが手放しになり、この上ない喜びを感じていると思うんです。

本当の強さとは何かを教えてくれるような気がする

そもそも物語は、すべてが破綻している状態で始まっています。観客には冒険の先に清々しさを感じられる人と、怖いから早く終わってほしいと思う人に二分されるのではないですかね。清々しさを感じられる人の方が今の時代は圧倒的に強い。自分を守ってくれるものは少なくなるけど、戦う人は報われるという動物的な力がみなぎっている証拠ですからね。案ずるより産むがやすしということわざがありますけれど、“案ずるより壊すがやすし”で、すべてを手放して向こう側に行けたらそれはそれで良いんじゃない? というメッセージを暗示しているのは、前回紹介した『ジョーカー』と同じ。

災害やコロナで貧富の差が生まれた時に、誰か強い人に守ってほしいと現代人がこれからすがれるものってなんだろうと考えると、究極は血筋なんじゃないかなって思います。ずっとそこにいてくれるという揺るがない安心や目に見えないパワーは心の聖域にもなり得ますから。でもやっぱり、映画同様崩れかけている今の世界をサバイブするためには、すべてを手放せる人の方が強いですよね。登場人物のように自分だけの正義を胸に、いろいろ壊して突き進んでみてこそ、全く新しい未来を見ることができるんだとこの映画は教えてくれているような気がします。

Edit Kei Watabe
Photography Teppei Hoshida

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#映画連載 モーリー・ロバートソン Vol.2 時代の大転換を妄想できる3作品 ―ジョーカー編― https://tokion.jp/2021/02/22/morley-robertsons-movie-column-2/ Mon, 22 Feb 2021 06:00:16 +0000 https://tokion.jp/?p=21049 タレントのモーリー・ロバートソンが、ポストコロナの大転換した世界を妄想するための3作品を紹介。まずはジョーカー。

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映画鑑賞は動画配信サービスの普及によって、もはや特別な行為ではなくなり、感想の共有やレコメンド検索も簡単になった。しかし、それによって映画を“消費”しているようにも感じる。本連載では、映画を愛する著名人がパーソナルなテーマに沿ったオススメ作品を紹介する。

タレントのモーリー・ロバートソンが2回目の登場。メディアを中心にコメンテーター、DJ、ミュージシャンのほか、国際ジャーナリストとしても活躍し、政治・経済からサブカルチャーまで、いくつもの引き出しを持つ彼がコロナ禍の今だからこそ、見るべき映画を紹介。

「もうすぐそこまで来ている?! 時代の大転換を妄想する」

新型コロナウイルスの出現によって大きく生活が変わった今、時代は大きなサイクルを迎えていると感じます。占星術の概念に基づいた時代、とでも言いましょうか。立証をしなくても良い大きなサイクルが目の前に迫っているなと。

今って、生活保守的な考え方が破綻している時代ですよね。特に特権階級が「何も変わらなくていいんだ!」なんてふんぞり返っていたのが、そのはしごを外されちゃって慌てふためいている。そんな彼らが自警団になって世間をパトロールして、ルールを破ったりする悪い人間を火にくべようっていう世界になってしまった。Twitterで殴りあったりとかね。すでに社会は破綻しているのに、現状に順応できない人たちがすごく多い。そんな旧態依然の秩序の価値観がもう限界にきていて意味を持たなくなった今、幸せになるため、生活保守、政府のマニュアルに描かれていない、とてつもないパワーの活断層が限界に達したように一気にリリースされ、危険だけどおもしろい時代=時代の若返りがすぐそこまで来ていると妄想してしまうんです。

SNSで他人の評価を気にしても幸せになれない、気の利いたコメントをしても自分の評価にはならないってことにも気付き始めている人も多いじゃないですか。そうすると、個人の開放や今までになかった自分の殻を破るチャンスが来ていることにも気付くんですね。そんな状況に、血湧き肉躍り、野獣のような喜びを感じる人も今後は増えてくると思う。自分の殻を破った時に訪れるのは、時代や文化の大転換。近い将来、必ず壮大なスケールでそれを感じ取ることができると思うんですよね。こんな今の僕の妄想にぴったりと合うのが『ジョーカー』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『英国王のスピーチ』の3本。まずは『ジョーカー』からお話ししたいと思います。

※一部ネタバレを含みます

『ジョーカー』
ダウンロード販売中、デジタルレンタル中
ブルーレイ ¥2,619

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
TM

© DC. Joker  © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

「自身の殻を破るきっかけなんて探すものじゃない」

ジョーカーが描かれた映画やテレビシリーズはたくさんあります。ジャック・ニコルソンが演じたのは1989年上映の『バットマン』で、当時僕は映画館で観たんですけれど、すごい明るいジョーカーだった。漫画を映画化したこともあり、漫画らしく無邪気に演じていたのに対してホアキン・フェニックスが演じたジョーカーはさすがNetflix時代! というような時代をえぐる描写を何重にも重ねているのが印象的です。狂気、統合失調症とも思われる精神疾患を抱えるジョーカーの役は、ホアキン自身その不安定さを研究してアドリブも多く入れていたようですがすごく圧倒されました。それまで内に籠もっていたジョーカーが着々と外に出る準備をしながら問題行動を起こしていく姿は、どうしても今の時代と重なって見えてしまうんです。そして状況がどうであれ、僕にとってはジョーカー本人を見続ける映画でした。

ばかにされたり、殴られたり、銃を売りつけられたり、お母さんがジョーカーの父親だと信じる相手に書き続けている手紙など、彼が人殺しをしてしまう=大爆発に至るまでの伏線はあらゆるシーンに描かれているけれど、銃は小道具でしかないし、手紙に書かれている内容だって嘘か本当かなんてわからない。それでも彼が大爆発したのはきっかけをずっと待っていたからに過ぎないんですよね。アルベール・カミュの『異邦人』で殺人犯が「太陽がまぶしかったので人を殺しました」と供述したのと同じで、彼にとって殻を破るきっかけは別になんだって良かったということをすごく感じました。デリケートな秩序をかろうじて守っている人が、他者に正論を言われると自分のバランスを保てず「その正論を許せない!」と喚き散らして、変化を許すことができないところが、今の日本が抱える不寛容さだと思うのですが、ジョーカーを見ていると、そもそも最初から不安定なものはずっと不安定なままで崩れるのをそっと待っているだけなんだなと。かろうじてつっかえ棒をして保っているほど、自分が臆病だということをわかりながらも最後には気が狂ったように不安な気持ちがあふれてしまい、1回殺してしまうとドミノ倒しのように次々と連鎖してしまう。そして不安は全部なかったことにしてやろうとロバート・デ・ニーロ演じるマレー・フランクリンを殺しちゃう。めちゃくちゃなんだけれど、妙に腑に落ちるというか。もうこの後はパーティで、思考性のない群衆が警察を殺したりしてしまったり……。これはシンボル的に見ると権力を殺してしまうということなんだろうけれど、皆、結局各々が持っている不安や想いを吐き出す=時代の大転換のシーンだと読み取ることができる。群衆シーンはよっぽどリアルのデモなんかの方が大規模だから下手に映画で描いてしまうと具体性がなかったり物足りなくなりがちなところを、あえてジョーカーが神であるかのように描いているのもすごく秀逸。群衆にとっては、ジョーカーがトリガーだったというわけですよね。ただ、結局その先にある新秩序は誰にもわからないというのもおもしろい。まさに今現在私たちが置かれている状況と同じですからね。

「ロバート・デ・ニーロの存在は時代の移ろいを見事に表現」

ロバート・デ・ニーロの存在もすごくおもしろい見方ができるんです。彼は、『タクシードライバー』で狂気の権化のような役柄を演じましたよね。そんな彼がこの映画では熟年の往年スターを演じ、消耗品の出演者を上手に動かしている安定した存在として描かれている。少々強引ではあるけれど、かつて狂気の権化だった彼が現在では生活保守志向になり、射殺されるという勝手な物語をオーバーレイして観ることができるので、そういう意味ではおもしろかった。狂気というのは普通の中にあるんだということがわかるというか。日常的な普通さや保守的で中産階級的なカタログに載っている幸せが歪んでいくと、行き着くところはここなんだというのが上手に語られているような気がします。

ただ、ロバート・デ・ニーロこそが狂気の権化として『ジョーカー』に出ていると考える人も多かったみたい。ある種の、自己ブランド化して巨匠となったデ・ニーロがそこにいて、彼を敬愛する若手=ホアキンがやってきて射殺する。これって実はデ・ニーロの本望なんじゃないかと考えているようなるんだけれど、なるほどなと。“戦場で死ぬことこそ美しい“じゃないけれど、怒涛の情熱ある生き方であり、死に様であると解釈できた。病院や特老院で死ぬのではなく、戦場で死ぬことに時代の渇きのようなものも感じられますしね。 ジョーカーはとにかくはちゃめちゃやるわけですが、僕は全然悲惨な気持ちにはならず、むしろ希望の物語として捉えましたしなんなら彼のようにはちゃめちゃしたい! なんて思いましたね(笑)。その先の世界がどうなるか、すごく興味がありますしね。

Edit Kei Watabe
Photography Teppei Hoshida

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#映画連載 モーリー・ロバートソン 今の世界を映す『ウエストワールド』を見て覚醒せよ https://tokion.jp/2020/07/31/series-of-movie/ Fri, 31 Jul 2020 04:00:36 +0000 https://tokion.jp/?p=1354 コロナ禍で感じる喜怒哀楽はすべてこの作品に詰まっていると話すモーリー・ロバートソンが、この作品を通して伝えたいこととは?

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記念すべき第1回目は、タレントのモーリー・ロバートソンが登場。メディアを中心にコメンテーター、DJ、ミュージシャンのほか、国際ジャーナリストとしても活躍する。政治・経済からサブカルチャーまで、いくつもの引き出しを持つ彼がコロナ禍の今だからこそ、見るべき映画を紹介!

重すぎないSF作品が時を経て重厚な物語へと進化 この世界そのものを描く、恐ろしい作品

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言による自粛期間中、最も感情を揺さぶられた作品が『ウエストワールド』です。1973年に公開された映画版ではなく、HBO(米・ケーブルテレビ放送局)がリメイクしてドラマ化した作品に今ハマりにハマって。その理由は、世界情勢や芸能界など、国内外で起こっていることが、すべてこの作品にリンクしていたから。シーズン3まで公開されているのですが、もうすごすぎて自粛期間中に3回も観てしまいましたよ(笑)。

1973年の映画版は、リアルタイムで両親と劇場で観ました。当時僕はちょうど10歳。砂漠に建設された「デロス」と呼ばれる巨大遊園地が舞台の話で、まるで人間のような姿のアンドロイド=「ホスト」が、高額の入園料を払ってデロスを訪れる富裕層の人間=「ゲスト」を迎えるんですね。デロスではゲスト達が、アンドロイドであるホストを現実世界で抑制された禁断の欲望を満たすとばかりに殺害したり、レイプしたりとやりたい放題。ホストは傷つけられるたびに修理され記憶を消されてテーマパークに戻り、何事もなかったかのように再びシステム通りに生活を送ります。しかし、ある時、突然アンドロイド達が制御不能になり暴走し始める……というように、ストーリーは単純明快。子どもにもわかりやすい一方で、当時はインターネットなんて存在しない時代。だから今観てみると、アンドロイドも非常にお粗末な弱点がある、ロボットの域を出ない仕様だったり、また、エコロジーや格差、人種の問題に触れていないように見えるものですから、重すぎないSF作品に仕上がっているんです。

でも、HBOがリメイクした同作は、そんな単純さや軽さは全くなし。あちこちに社会に対するメッセージが込められていて、非常に緻密で複雑で、心揺さぶられ考えさせられる作品に進化しました。3回も観ているから、至るところにちりばめられたメッセージをすべてキャッチできましたね。しかも、この作品を観終わった時は、くしくもアメリカのミネアポリスでジョージ・フロイドさんが殺害され大規模なデモが起きた時でした。他にも人種問題、トランプ政権、価値観が相容れない者同士の対立……もう、その出来事のすべてがこの作品とシンクロしちゃったので、とても不思議な縁を感じてしまい、ますますハマってしまって。みなさんにもぜひ観てもらいたいと思って今回ピックアップしました。

“自由意思で生きている”なんて全部うそ この世界に公平なルールは存在しない

HBOリメイク版で描かれる世界は、今のグローバル社会そのもの。これは、ものすごい発見でした。何が同じか。それは、どちらも一部のあらかじめ選ばれた人の幸せのために、果てしなく“つけ”を末端に押し付け、末端にいくほどそれが極端になっていく不公平な世の中であること。

例えば、アメリカと中国に置き換えると非常にうなずける部分が多い。まずアメリカ。トランプ政権下では新型コロナウイルスによって黒人が白人の倍死んでいる事実があります。また黒人が白人警官に意味もなく殺されている。次に中国はどうでしょう。香港に中国が介入してきて香港人の人権が中国人と同じ平均値にまで下げられ、さらに警察がオールマイティで何をやっても良い国になりつつある。これだけ見ても、世の中は全然公平なルールでなんて成り立っていないってわかりますよね?

端的にいうと、自由意思を働かせた人間の行動によって、社会の今までの“普通”が崩れてしまったら、劇中でいうところの“設定されたシステム”が脅かされることがあったら、世界はどうなるでしょう? 意思を持ったホストは即氷漬けにされてしまうんですが、これって非常に今のアメリカや中国っぽくないですか? そんな厳しい世界の中でも体制に反対し、頑張っている人はいるけれど、結局迷路の中を走らされているハツカネズミのようなもの。本人は頑張れば世界のルールに応じて報われると信じているけれど、プログラミングされた社会ではそんなの無理な話。めちゃくちゃな世界ですよね。でも、それって現実世界そのものにも見える。恐ろしいけれどそれが真実であり、常識なんです。

覚醒せよ! 反逆者であれ!
自分で考えてこそ“本質”が見える

この物語の主人公はホストの1人「ドロレス」という女性なのですが、他のホストと同じく、デロス(運営側)の作った虚構の世界を維持するために、都合の悪いことが見えないようにプログラムされています。でも、ある出来事によって覚醒してしまう。都合の悪いものも、いいものもすべてを認知してしまい、また、自我が芽生えてしまった。つまりドロレスは運営側に都合のいい、もしくはこの世界の秩序を守る“幸せになっていい”人物ではなくなってしまったんですね。自分の意思で自分の生活を変えていこうと人間相手に反乱を起こす、真の反逆者へと進化したんです。

この出来事は僕にはある種、このコロナ禍における希望のストーリーに映りました。「みんな、ドロレスのように生きたらいいのに」って大きなヒントを得たような。残念なことに、コロナ禍では、本当にどうでもいいことでも他人に対するやっかみや攻撃がとても増えたと感じていて。それって、今までのサステナブルではない生活が新型コロナによって露呈して、みんなが一気に不安になったから。人間って、アンドロイドの設計と同じく都合の悪いことから目を背ける生き物なんですが、新型コロナによって次々に不都合なことが否が応にも見えてきてしまった。でも、マニュアルや想像力がコロナ以前のまま取り残されている人は「自分だけは大丈夫だ」という傲慢さから、何かうまくいかなければクレームをつけて人のせいにして安心している。それが同調圧力に似た力によって、拡散してどんどん広がっていった。

その現実を目の当たりにして思ったんです。「自分で考えることがそんなに嫌なの?」って。他人を攻撃することは簡単にできるけれど、心に生まれた攻撃的なエネルギーは “自分を封じ込めている今までの常識”から解放する動力に変換すればいい。それができない人は「どうぞ氷漬けになってください全員」と(笑)。要は「覚醒せよ」ってこと。そして、自分を覚醒させるのは自分しかいないということを理解すること。それを理解できた人は、ものすごく強いと思います。この世界の見えない檻を作っているのは誰か、本当に自分が良いと思う社会はどういう姿か……。うそだらけの社会、特権階級に有利になるように作られた社会に評価されることよりも、“本質”を大切にするドロレスのように、自分の頭で考え、リスクを抱えながら乗り越えていくことが、真の人間の姿なんだと思うんですよね。僕自身、自分をドロレスそのものだと思っていますよ(笑)。いつだって、反逆者でいるのが、僕ですからね。

Photography Teppei Hoshida
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