ゴールドウィン(Goldwin)とスパイバー(Spiber)の共同研究開発によって誕生した新素材“Brewed Protein™”を起点とし、新たな未来への可能性を探求するコミュニティ「REGENERATIVE CIRCLE」のメンバーである「FORMAFANTASMA(フォルマファンタズマ)」がhomework projectを発表した。
アンドレアとシモーネのふたりが手がけるデザインスタジオの「FORMAFANTASMA」は、植物の樹液等を原料にする“未来のプラスチック”で花瓶を、さらに小麦粉に農業廃棄物を混ぜて土に還る器や溶岩を主な成分にした鏡やガラスを作る等、あたり前にあるものを見直し、入念なリサーチと実験を重ねてプロダクトデザインを施している。
こうしたものづくりのアプローチから世界的に注目を集める彼らから発表された“宿題”は、「身近にあるものの視座を変えて、どう使うことができるのか(流用)、または目的を変え、どのようにすれば資源として生まれ変わらせることができるか(活用)できるか」を考えるものだ。
“ホームワーク(宿題)”とプロジェクト名に命題されているように、日常的に実践できるもの、また社会というような大きなスケール感ではなく、家や個人という小さな単位で実践できる“再生”や“循環”を共有するプラットフォームになっている。
またこの宿題に対する回答者には、現代美術家の目(me)や、不完全なものから価値の転換に焦点を当てるアートコレクティブのSKWAT、さらに都内人気店である「path」や「LIKE」を手がけるシェフの原太一の他、長野県に住むおばあちゃん、さらにフィンランドやイタリアのクリエイターも参加した。回答は、神宮前にある「ザ・ノース・フェイス・オルター(THE NORTH FACE ALTER)」のウィンドウモニターとREGENERATIVE CIRCLEのInstagramで10月24日まで毎日発表されている。
こうした時代だからこそ、アーティストだから、おばあちゃんだからと、職業や年齢のようなカテゴライズに縛られずに、みんなが知っていることを独り占めするのではなくシェアすることが大切である。「FORMAFANTASMA」は「このhomework projectを通じて、個人個人が再生できる対象物を見つけるきっかけになってほしい」と話す。
原太一(path/LIKEのオーナーシェフ)
大旗ともみ(石鹸教室TECA LABO主宰)
種村太樹と尾崎紅(O’Tru-no- Trus)
宮原もも代(長野県に住むおばあちゃん)
エリザ·デフォッセ· 菊地(プロダクトデザイナー)
白木麻子(現代美術家)
狩野佑真(プロダクトデザイナー)
桐原かほり(継師)
また、同プロジェクトでは建築家やプロダクトデザイナー、ミュージシャンやシェフまで、地球とのよりよい関係性をインスピレーション源や創作に取り入れつつも、新しい価値観を提示するアーティストやクリエイターの7組を取材している。彼等の言葉が同プロジェクトが始動するきっかけになっている。
「無駄なものを無駄と思うことではなく、トランスフォーメーションすることなのでしょうね。 変容や変異したり」
シモーネ・ファレジンとアンドレア・トルマキによって設立したリサーチベースデザインスタジオ。素材の探究、文化や伝統に重きを置いた発想、必ずしも機能を最優先にしない実験的な姿勢によるデザインが注目されている
「美しいとか、きれいとか何か一緒に感覚を共有できたらいいなと思うことはあります」
テクノロジー、生物、無生物、人間を縦軸ではなく横軸で捉え、存在を存在として認めることを制作の目的としている。フランスと日本を拠点に活動
「いきなり大きなことは変えられないから、みんなそれぞれが、家という単位の中で“再生”や“循環”のことを意識することが大切なんだと思います」
フランスの老舗のレストラン「タイユバン」やスペインの「 エル・ブジ」、さらにデンマークの「 ノマ」では副料理長を務めた。独立後にレストラン「レレ」とナチュラルワインバー「マンフレッズ」をオープン。レレは2014年、2015年の2年連続でThe Sustainable Restaurant Award の受賞するなど、クリスチャンの名を世界に広げる。しかしパンデミック期間に閉店。現在は、「ミラベル」と「ビースト」を経営。また活動範囲はキッチンだけに限らず、さまざま食と気候に関する学会に参加したりやカンファレンスでスピーチをする
「とりあえず実験してみないとその次に何をすればいいのかも分からないことが多い」
東京都生まれの現代美術家。3Dプリンターで出力したプラスチック製の「やど」をヤドカリに渡し、引っ越す様子を観察した「やどかりに『やど』をわたしてみる」シリーズ(2009〜)や、飼い犬の毛と自身の髪でケープをつくり、互いに着用する《犬の毛を私がまとい、私の髪を犬がまとう》(2014)など、生き物との共同作業のプロセスを作品化する。人間とは異なる視点やふるまいを持つ動物たちとの共作を通して、人と生き物の関係性を再考する。2012年第15回岡本太郎現代芸術賞入選。14年YouFab Global Creative Awardsグランプリ、18年Asian Art Award 2018特別賞を受賞。近年の個展に、「AKI INOMATA:Significant Otherness 生きものと私が出会うとき」(十和田市現代美術館、2019〜2020)などがある。
「ここに落ちている糸クズですら、何かに使える宝物なのかもしれない」
1976年生まれ。幼少期より音楽に触れ、バークリー音楽院大学に入学後は、TVCMや映画などの音楽制作をはじめプロの音楽家としてデビュー。フランク・オーシャンの『Endless』(2016年)やソランジュの最新作『When I Get Home』(2019年)にも参加するほか、演劇やダンスなどでも多種多様なジャンルで活躍する。
「遠くばかりを見るのでなく、足元をみる。今後のものづくりはもっとローカルに、そして賢く作らないといけない」
2010年に設立した建築スタジオ。このスタジオが手がける建築物は、機能性や構築、運搬などに焦点を当てたシンプルなものが多い。そのシンプルさから生まれる柔軟性が、ニーズに合わせ変化する余白部分となり、建物自体の耐久性や寿命を高めている。こうしたラディカルな考え方から2019年にThe EU Prize for Contemporary Architectureを受賞する。
「多くの考え方や思想を受け入れる多様な社会に移り変わっている。だから未来はポジティブだと思います」
ネパール出身、ロンドン在住のミュージシャン、ビジュアルアーティスト。2020年にデビューシングル『Waterays』を発表し、そのエレクトロニックとオーケストラ・サウンドを融合させた神秘的な楽曲と個性的なボーカル、独自の世界観をもった歌詞で注目を集める。
■REGENERATIVE CIRCLE FORMAFANTASMA presents homework project 日常的再生行為
会期:10月24日まで
場所:THE NORTH FACE ALTER
住所:東京都渋谷区神宮前6-10-9
公式サイト:https://regenerative-circle.goldwin.co.jp/