笹谷淳介, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/syunsuke-sasatani/ Fri, 23 Jun 2023 06:25:27 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 笹谷淳介, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/syunsuke-sasatani/ 32 32 SATOL aka BeatLiveが打ち鳴らす苛烈でハイブリッドなビート、その根底に宿る日本人としてのアイデンティティと誇り https://tokion.jp/2023/06/24/interview-satol-aka-beatlive/ Sat, 24 Jun 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=191273 UKガラージやダブテクノ、アブストラクトなどさまざまな音楽的変遷を経て、ハードコアやシンゲリ、ビートミュージックなどが交錯する異端のサウンドを紡ぐ日本人アーティスト、SATOL aka BeatLive。その表現の根底に宿る思いを尋ねた。

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SATOL aka BeatLiveという異端な存在をあなたは知っているだろうか。
ドイツ〈Madberlin〉、ロシア〈ahito〉やO.N.O(THA BLUE HEARB)主宰レーベル〈STRUCT〉、〈PROGRESSIVE FOrM〉、〈P-VINE〉、〈disk UNION〉などから作品をリリースし、ドイツとジャマイカへの居住経験も持つSATOL aka BeatLive。自身でレーベル〈-滅- METSUJP〉も主宰し、ビートミュージック、ベースミュージック、ハードコアなど交錯する越境的かつ異端のサウンドを紡ぐアーティストがこの度、新たなる楽曲を3曲続けてリリースする。混沌とした世の中へ強いメッセージを感じるリリック、そして重厚かつソリッドな音像に仕上がったこの作品群の話を皮切りに彼の音楽性、精神性を紐解く。

既存のシーンやジャンル分けに対する違和感と怒り

——まずは、ツアー中のお忙しいところ、時間を作っていただいてありがとうございます!

SATOL aka BeatLive(以下、SATOL):よろしくお願いします! 今、長野県です! ライヴ6連チャンが終了して、満身創痍です(笑)。

——6連チャン!? お疲れさまです! 早速ですが、今回の3部作についてお聞かせください。まずは、沖縄のAKAZUCHIのRITTOさんをフィーチャーした作品「FLASH BACK」ですが、破壊力抜群の低音が鳴り響くものに仕上がっています。こちらの楽曲はコンセプトなどはあるのでしょうか。

SATOL:コンセプトというわけではないですけど、クラブミュージックやダンスミュージックというカテゴライズ、日本の偏ったジャンル分けに対して歯向かった感じというか。そこが僕はすごく納得いかない部分だったので、わざとああいうサウンドにしましたね。

——具体的にはどのような部分に納得がいかなかったのでしょうか。

SATOL:僕もまだ中途半端な部分ではあるんですけれど、日本の音楽というものをもっとクリエイティブにしていきたいんです。海外の音楽の延長線をただやるだけになっているものが少なくない気がしていて。そこに対して一石を投じ続けたいという気持ちがあるんです。その思いからMVの映像がああいう形になったという感じではあるんですけどね。

SATOL aka BeatLive feat RITTO – FLASH BACK –

——なるほど。〈-滅- METSUJP〉立ち上げの際にも、「Saying genre yet?」、“まだジャンルなんって言ってんの?”という旨のリリースをされていたと思うんですけど、その思いは常々SATOLさんが思っていたということでしょうか。

SATOL:ずっと思っていることですね。俗に言うジャパニーズ・アンダーグラウンドに対しても僕は反目かもしれない。

——日本のアンダーグラウンドシーンにも思うことがある?

SATOL:もちろんアンダーグラウンドシーンが駄目だとかそういうおこがましい気持ちはないし、直接サシで話さないと分からないことも多いと思います。僕はいろんなジャンルの方にお世話になっているので、お世話になった方たちには尊敬もある。ただ、全体的な音楽の考え方、位置づけに対して納得いかないところがあるので、「FLASH BACK」のようなデスメタルの要素も入れ、ビートダウンのハードコアの要素も入れ、BPM280のシンゲリの要素も入れ、和のテイストを分かるように映像に反映させたという感じで。

——ジャンル分けが無意味なほどハイブリッドですね! 和の要素が入っていることも、SATOLさんの作品の特徴の1つだと思います。

SATOL:もともと音の方面でも和の要素を取り入れたい気持ちはあったんですけど、あの時は映像の方でそれが出ている感じですね。日本刀が出てきたり、般若が出てきたりとか。ただ、それは僕が指示したわけではなくて、3D映像担当が僕の考えや意図をくんでくれてあのMVが完成したんです。

——過去にリリースされた「埋没の代弁者」では戦争について、そして今回の「斬結ぶ能」では隠れキリシタンの子孫をフィーチャリングしています。SATOLさんは日本が抱えてきた負の遺産というものを残そうとされていると思うんですが、その思いの根幹にあるものってどういったものになるんでしょうか?

SATOL:僕は日本人ですから、日本人に対して尊敬と敬愛がもちろんあります。今は、音楽もそうですが、すべてが自由化されすぎている印象がどうしてもあって。根本的な部分がほぼないというか。ひたすら海外のモノマネを何年も何年も続けている状態というか。特化するのはいいのだけれど、それもまた模倣。中身の言葉だけ変化して結局変わらないじゃないか、みたいな感じで。だから、日本の歴史や文化を伝えていかないといけないという気持ちがあるんです。

たとえ負の遺産に見えるものだとしても、それをまるでなかったことにするのは行きすぎてるのではないか、やりすぎじゃないかなと思ったんですよね。その思いを現代に持ってきて、自分なりに曲に記していっているというか。まあ、曲であんなふうに叫んでいたら伝わりにくくはありますけど、やっていることをカッコいいと思ってもらえるわけじゃないですか? そこに突破口がある。大河ドラマを例に取れば、そこから歴史好きになる方がたくさんいるわけで、そういうキッカケになればいいなと思ってやっています。

——そういった強い思いがあるからこそ、ここまで重厚なサウンドに仕上げられているんですね。3曲目の「INVISIBLE PAIN」は、UMB 2020 全国チャンピオンの早雲さんと和歌山のExperimental Hard Core Unit / FayxistのHULKさんとの楽曲ですが、こちらはいかがでしょうか。

SATOL:HULKとは和歌山で出会ったんですけど、いい意味でも悪い意味でも孤立しているようなやつで、すごく真っすぐな他の人には溶け込まない志がある人間なんですけど、ちょくちょくフィーチャーして曲を作っていたんですね。そんな中、早雲くんを紹介してくれて2人で曲をやろうということになり、「じゃあ、今回の3部作の3つ目として看板を出そうか」ということになって。この曲も他の2曲と同様に、シンゲリ✕ハードコア。実は、3曲ともTaro Yamaguchiのバンドの曲をサンプリングしているんです。

——ちなみに、シンゲリを掛け合わせようと思った理由は?

SATOL:そこだけは、理由はないんですよ。正直、シンゲリでもゴムでもなんでもよくて。ただ、ハードコアを合わせたらできるんじゃないかなというのが理由です。ただみんながやっていなかったことをやっておかないと説得力がないなという。そういうことです。

本当は和モノをいれたかったんですけど、あのテイストに入れることはどうしてもしたくなくて。今回は、思想・思いだけ混ぜた感じですね。

「ポスト雅楽」の制作も進めている

——なるほど。では、今後はより直接的に和モノなサウンドに取り組むことにもなる?

SATOL:「ポスト雅楽」じゃないですけど、厳格なハードルの高い和モノを作りたくて、実はもう制作を進めているんです。今回は、激しい音楽を作るわけではなく、本当にその雅楽に則ったものであり、神道に則ったもので、雅楽をきちんとやっている方になんとかギリギリ許してもらえるラインを攻めたいんですよ。まさに「ポスト雅楽」というかね。

映像も作るんですけど、撮影自体は去年の12月に終わっていて。吉原義人(よしはら・よしんど)さんという、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」や「情熱大陸」とかに出演している日本の刀匠(日本美術刀剣保存協会無鑑査刀匠)で有名な方がいらっしゃるんですけど、その方とコラボレーションしています。

——サウンドにはエレクトロニクスを入れていたりするんですか?

SATOL:僕の場合は1人でやるしかないので、結局、嫌でもエレクトロニックにはなっちゃうんです。

——今度は雅楽の方面に踏み込まれるわけですが、SATOLさんの音楽性の根底にあるものは?

SATOL:根底に特定のジャンルの音楽があるとかは、ないですね。自分がすべてということではないですけど、感覚・感触がすべてかなと。だから、どんな音楽も持ってこれるし、自分が持ってくる音楽には自信があるんですよ。そこが自分の源になっていると思います。

——伝えたいメッセージが前面、それにハマるサウンドが裏側にあるというか。

SATOL:確かにそうかもしれないですね。

——だからこそジャンルレスにチャレンジできるのかもしれない。

SATOL:そうですね。すべての音楽は認められるべきだと思うんです。ただ、これは言ったら偏見が生まれるかもしれないですけど、自由度が高いほうが逆にたちが悪くなってしまうのかなとも思っていて。それって根も葉もないので。そうならないように、ドープに深く根を張りながら広げていくことを大事にしているというか。そして、根底のところにあるのは、やっぱり日本人としての精神性ですかね。

——その精神性を強く意識するようになったのは何かきっかけがあったのでしょうか?

SATOL:英霊顕彰プロジェクトの鈴木田遵澄(すずきだ・じゅんちょう)さんという方がいらっしゃるんですけど、その方が2020年に『忘れてはならない歴史がある』という短編映画を作ったんです。それを観た時に、すごく腹落ちしたというか、自分が今まで感じていたことが映像としてきちんと形になっていると思ったんです。きっかけといえばそれもきっかけになりますよね。

——そうなんですね。SATOLさんはUKガラージやダブテクノであったり、ポストクラシカルの要素が入ったサウンドだったり、さまざまその音楽性を変化させてきましたが、現在のハードコア要素や激しい音が混じってきているというのは、ソロアーティストとして活動する前にバンドを組んでいた頃の感覚に戻っているというか、原点回帰的なところがあるんですか?

SATOL:いえ、特に原点回帰という感覚はなくて、自分のことを素直に受け止めたらこうなっているという感じですね。「音楽だけには正直にいよう」と思ってやっていった結果が、今のサウンドなんです。ただ先ほどお話しさせていただいたように、それはあくまで今の着地点というだけで、これからまたどんどん変化していくんでしょうね。「ポスト雅楽」もそうですけど。

——SATOLさんの音は、激しい部分と静寂な部分が混在して、緊張と緩和というか。そういった独特のバランス感覚をお持ちだなと。それこそ、今回の3部作のような音とポスト雅楽のような音を並行してやられていることがすごいなと思うんですけども、それはSATOLさんの中では並行してあるもの?

SATOL:そうですね。今回の3部作に関しては思想・心だけは日本的なものを注入しているんですよ。実は、RITTOの曲のテーマは本当はヤンバルクイナだったんです。それがああいう形になってしまったんですよね(笑)。ヤンバルクイナって、今でこそ数は増えてきましたが、絶滅危惧種じゃないですか。そこを理解してほしいなということを遠回しに言っているという。もともとはそういう曲なんですよね。

——なるほど。

SATOL:そうなんです。そして「ポスト雅楽」のほうにいくと音が和になるということじゃないですか。だから精神性は同じなんです。僕の中では今回の楽曲もポスト雅楽もつながっていることなんですよね。

——出し方が違うということですよね。言葉として激しい音を伴ってそれが出てくるのか、直接的に音として、ポスト雅楽のようにして出てくるのかにせよ、根本は一緒なんですね。

SATOL:その通りです。

——最後になりますが、SATOLさんの今後の展望について教えてください。

SATOL:レーベルの存在をもっともっと伝えていきたいなと思っていますし、日本らしさというものを海外の方にも伝えていきたいと思います。日本の文化や日本人の実力、かっこよさを、多くの方たちに分かってもらえたらと、そんな精神性を持って活動していきたいですね。そして、そんな僕たちの活動や精神性が、日本の方たち自身のルーツに誇りを持つキッカケになればいいなと思っています。

あと、『ラーゲリより愛を込めて』や『護られなかった者たちへ』で有名な映画監督の瀬々敬久さんと仲良くさせていただいているのですが、その瀬々さんの師にあたる佐藤寿保監督の新作映画『火だるま槐多よ』に僕の音楽がいくつか使われています。今年12月頃から全国順次公開予定で、配信もあるそうなので、こちらもチェックしてもらいたいですね。

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「いつものフジロック」を目指して――コロナ禍の2年間、そして今年への思いを聞く https://tokion.jp/2022/07/08/fujirockfestival-interview/ Fri, 08 Jul 2022 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=134160 一昨年は初の延期、昨年はアルコール提供なし&日本人ミュージシャンのみとなった「フジロック」。この2年間を振り返るとともに、今年の意気込みを、主催者の1人である石飛智紹に聞く。

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2020年3月頃に本格化した新型コロナウイルスの流行によって、あらゆる業界の動きがストップ。その波は“体験”を提供する音楽フェスにも大きな打撃を与えた。

1997年の初開催から日本のロック・フェスティバルの先駆けとして歩み続けてきた、「フジロックフェスティバル(以下、フジロック)」も2020年に初めて延期を余儀なくされた。昨年は来場者数を絞り、出演者は日本人ミュージシャンのみにするなど、あらゆる制約がある中で開催。イレギュラーな2年間を経験した「フジロック」は今年、2019年以降で初めて海外ミュージシャンを迎え、「特別なフジロックから、いつものフジロックへ」を掲げ開催する。

今回は主催者の1人である石飛智紹に混沌とした2年間で感じた苦悩や昨年の開催を経て何を感じたか、そして、「いつものフジロック」と掲げた真意などたっぷりと話を聞いた。

2020年の初の延期、2021年のイレギュラーな開催を振り返る

――20年は初めて延期になりましたが、この結論に至るまでにはかなりの苦悩があったかと思います。当時の心境をお聞かせください。

石飛智紹(以下、石飛):結論からするとお手上げという感じでした。当時は、マスクはどこにあるのか? 消毒液は準備できるのか? などそういった不安を皆さんが抱いていた。「フジロック」では以前、SARSが流行した際に来日を控えたいというアーティストがいたことはありますが、その時以上に危機感を持たないといけないと考え、中止を決断したんです。とはいえ、初めての緊急事態宣言が出た数日後に第3弾ラインアップを発表しているんですよね。それは、コロナの収束を信じてという側面もあったけど、結局、感染対策を勉強すればするほど、お手上げという感じでしたね。海外も鎖国的状況にありましたし、海外のアーティストが来られないとなると、「フジロック」がやってきた音楽的多様性みたいなところを発揮できないなと。

――そこから21年は国内アーティストのみのイレギュラーな開催となりました。別の取材では、「開催することが目的だった」とも発言されていますが、まだまだ制約が多かった中で開催を決断したのはどういう思いがあったのでしょうか。

石飛:時系列で順に話していくと、20年は延期しましたが、21年は開催するという思いから、チケットは払い戻しの対応をしましたが、どうぞできればキープしてくださいという中で、半数以上のお客さんがキープしてくださったんです。そして、同じ20年の夏には「フジロック」の集大成的な過去のライヴをYouTubeで全世界に発信しようと「KEEP ON FUJI ROCKIN」という番組を放送し、かなりの反響があった。その時スーパーチャットを実施していて、そこでの収益はコロナ対策の寄附に充てたんですが、ここまで愛されているんだから、21年は絶対開催するぞって。じゃあ、どうすれば感染防止対策をしっかりとやって開催できるのかと考えていった流れなんです。

――それでは、20年から1年かけて感染対策などを学ばれていった?

石飛:そうですね。20年当時は勉強も追いつかなかったし、そもそもマスクも買えない。だけど私達も含めて、月日がたっていくごとに個々に感染対策やコロナ禍での生活のスタンダードができあがってきたと思うんです。経験を積み上げて、21年は「こうすればできる、ああすればできる」「じゃあみんなで協力してやってみようよ」ということを実現させることができると思った。結果、海外アーティストは諦めざるを得なかったんですけど、日本にも「フジロック」から成長していったアーティストもたくさんいる。お客さんもそこで新しい知らない音楽を知るみたいな、要は夏祭りみたいな出会いなんですけど、そういう楽しみや経験、つまりフェス文化を絶やしてはいけないというところですね、根底にあったのは。

――なるほど。

石飛:「フジロック」は野外フェスですし、もともと自然と音楽を一緒に楽しもうという考えがあります。だから、感染対策っていう難しい問題よりも、あの大自然の空気の中で音楽を楽しむこと、その自由さを大事にしたいと思った。その中でみんなが個々に気を付ければというか。最近ようやく屋外は飛沫感染のリスクが低いということが認められましたけど、前々から森で発生するオゾンが感染防止に効くみたいな論文もあったりする。やっぱり大自然と人間との向き合い方みたいなところが回り回って感染症を引き起こしているわけだし。

――自然といかに共生できるか。

石飛:そうですね。自然の治癒力といったら変だけど、21年は、そういう力を信じていた面もありますね。

「『力になりました』というお客さんの声が本当にありがたかった」

――「フジロック」は地域とも密接なフェスだと思いますが、20年から21年にかけて苗場の方とはどんなお話をされてきたのでしょうか。

石飛:やっぱり20年に延期を経験して、苗場をはじめとした湯沢町や周辺の皆さんも非常に困っているというお話はありました。もう1度中止になってしまったら潰れる民宿も両手じゃ数えきれないと。確かにそうですよね、観光業がコロナでストップしてスキー客もインバウンドも激減したわけですから。そういう声が強く、昨年開催することの後押しになったという側面もあります。その中で、僕は町議会に出席して、説明と質疑を2時間くらい行いました。それは町としても、主催者を出すこと自体がたぶん、「フジロック」をやりたいということの裏付けだったんじゃないかなと今にして思うんですよね。

町のみんなが開催に対して納得できるようにしてほしいというような空気感がありました。そのとき観光協会長が、「1年ならまだしも、2年やらなかったら苗場が忘れ去られちゃうかもしれない」と危機感を持ってらっしゃっていたんですよ。それは僕らが「フジロック」を忘れられちゃうと思わなかった分、結構ショックでしたけどね……。

――それはドキッとするお言葉ですね。

石飛:変な話、2年中止しても忘れられることはないだろうって思ってたんですけど、コロナ禍になって今年で3年、そんなことないかもしれないなって。世の中の次元が変わってきているし、いろいろな問題をはらんで結果として、ライフスタイルというよりは生活の根源が変わってきてる感じがする。

――何かを体験することを忘れているのかもしれませんね。

石飛:そうですよね。一般のライヴも本数はコロナ前の90%以上に戻っていますけど、動員数は40%。制限があるから仕方がないことだけど、つまり以前と同じだけ働いても収入は半分以下。動員数の制限が解除されはじめているけど、まだそこにお客さんの気持ちが追いついてないのかなって思います。もともとキャパが数倍あるメジャーなアーティストは別かもしれないけど、多様な音楽、オルタナティブなことをやっている彼らからすれば、非常に厳しい状況が続いていますよね。

――個人的には、昨年の「フジロック」はみんなが思いを発信する場所だったとも思っていて。音楽業界がコロナ禍で打撃を受けている中で、音楽で発信できなくなった、たまっていた思いを発信する大事な機会だったと思うんです。

石飛:ありがとうございます。そういう声に助けられた部分はかなりありますね。昨年はやることをしっかりやれば開催できるんだということをとにかく証明して、パフォーマンスの場を確保しようという思いが強かったし、終わったあと、「力になりました」というお客さんの声が本当にありがたかった。お互い音楽の力を信じて良かったです。音楽の力があるからなんとか開催しよう、出演しよう、参加しようという考えにつながったと思いますしね。

今年の「フジロック」は「自分が行きたい道を決断するキッカケになれば」

――この2年間でさまざまなことを経験されて、今年は「いつものフジロック」と掲げられています。今年はどのようなことを意識して開催されるのでしょうか。

石飛:昨年は感染対策を意地悪なくらいやりすぎた「フジロック」だった。PCR検査をスタッフ、アルバイト、出店者、出演者も含めて5800人くらいに事前に受けてもらいましたし、抗原検査キットを3万数千個以上はお客さんに用意しました。抗原検査は任意だったんですけど、10日前くらいに告知して、必要なら3日前には届くようにお送りしたんです。

まあ、本当にやりすぎたがんじがらめの「フジロック」ですよね。でもそういうことを経て、今となってはお客さんもコロナに対して自分なりの感染予防のスタイルがもうできあがっているわけじゃないですか。だから今年は、21年の開催とはまた別の意味で絶対に感染状況はよくなる。だからわれわれも先頭を走って、いつものような世の中が帰ってくるように願いつつ、「いつものフジロック」でお客さんを迎えようと思っているんです。

――今の世の中のスタンダートを落とし込むということですね。

石飛:そうですね。昨年、自粛したことはすべて取り止めようと。フラットな環境の中で、できる感染対策をしっかりとやっていきましょうという感じですね。ただ、まだまだリスクはあるんだから、そこに対してはわれわれも対策するので、お客さんもきちんとやっていきましょう。要は少し自由になった環境の中でどれを選択するかっていうことですよね。

――確かに、アルコール提供も中止されていない世の中ですもんね。

石飛:われわれだけで決められるものではないから、この世の中の水準を見ながらではあるんだけど、昨年はその象徴的なことがアルコール販売中止だったり、極端な検査だったりした。やりすぎた部分は今年、回避しようって。もう本当に去年がとにかく特別だったんですよ!

――改めて、今年はどのようなフェスにしたいとお考えですか?

石飛:去年はお客さんが本当に楽しめたのかという疑問も残りますから、「今年は本当に楽しんだね」「やっぱフジロックだね、行ってよかった」と言ってもらえるようにしたいですよね。そのためにはライヴはもちろんですけど、ほかのことにも注力する。その総合的なキャッチフレーズが「いつものフジロック」に戻すということ。行ったことないからわからないよと言う人がいるのであれば、単純に1回来てみなよって思います。これも「いつものフジロック」だと思うし。

――忘れかけていた体験を思い出すキッカケにしていただきたいですね。

石飛:とはいえ、旅行やフェスに行く計画を立てるのって難しいじゃないですか。そもそも難しいのに、このコロナが収まりきれてない中で、決断するのは容易ではないと思いますけど、そろそろ自分が行きたい道を自ら選ぶ決断をしてもいいのかなって。そのキッカケがフジロックになればいいなと思います。

旅行や観光に限らず、このコロナで大きく変わりつつある人の心境というんですかね、そういった感情をもう一度つなぎ止めるためにも夏フェスがいろんな地方で開催されてほしいし、ライヴ1つとっても生を観に行くっていう機会をようやく提供できるようになってるわけだから、お客さんがここに1歩踏み込んできてほしいなと思います。

石飛智紹
1959年3月31日生まれ。スマッシュ取締役。学生時代から携わったザ・ルースターズのマネジメントを担う。1984年スマッシュ設立に参加。ライヴイベント制作、音映像制作事業に従事し現在に至る。

Photography Ryu Maeda

■フジロックフェスティバル’22
会期:7月29~31日
会場:苗場スキー場
住所:新潟県南魚沼郡湯沢町三国
入場料:1日券 ¥21,000/2日券 ¥38,000/3日通し券 ¥49,000
Webサイト:https://www.fujirockfestival.com

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Siaと共振するELAIZAのクリエイティビティ 映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』公開に寄せて語られた、表現への想いと背景 https://tokion.jp/2022/03/03/interview-elaiza-life-with-music/ Thu, 03 Mar 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=100545 オーストラリアの“覆面アーティスト”・Sia(シーア)の初映画監督作品が公開に。その主題歌の日本語版カバーソングを披露したELAIZAに、同作に感じたことや自身の表現の根底にある想いについて尋ねた。

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オーストラリアの“覆面アーティスト”・Sia(シーア)が初めて監督を務めた映画作品『ライフ・ウィズ・ミュージック』が2月25日に公開された。この映画は孤独で生きる希望を失ったひとりの女性が、家族や周囲の人間の助けによって“愛”を知り、自身の居場所を見つける姿を描いた作品だ。そんな映画の公開に際し、ELAIZAが同映画の主題歌「Together」の日本語版カバーソングを発表。

池田エライザとして女優やモデルとしての確固たるキャリアを持ちながら、昨年11月にはアルバム『失楽園』をリリースするなどアーティストとして新たなクリエイティビティを発揮しはじめた彼女に、表現へと駆り立てる原動力や表現し続ける意味について、今回のSiaとのコラボレーションを糸口に話を聞いた。

『ライフ・ウィズ・ミュージック』を観た時に嬉しさと幸せを感じた

――『ライフ・ウィズ・ミュージック』はSiaの初監督作品で音楽と映像が交差する作品です。ELAIZAさんは俳優やアーティストなど多くの顔も持つ方ですが、音楽と映像の両方に携わる身としてどのようにこの映画をご覧になりましたか?

ELAIZA:まず純粋に1つの映画として素敵な作品に仕上がっていることが、本当にすごいなと思いました。そして美術だったり衣装だったり、この作品はSiaがこれまでの活動で協力関係を築き上げてきた様々なクリエイターたちとともにつくり上げたものなんだと気づいた時、私も映画監督をしているので共感を覚えるところもあったりして、とても楽しみながら鑑賞しました。

――なるほど。映画監督・池田エライザとして何か感じたことはありますか?

ELAIZA:強く感じたのは、嬉しさですね。純粋に素晴らしい感性と言葉を持ち、さまざまな経験をされている女性が生み出した映画を観れるということは、私個人としても嬉しかったですし、これからも女性の監督の作品がさまざまな場所で上映されて評価される世の中になっていくと思います。そんな中でSiaというアーティストが映画を次の表現の場として選んでくれたことが本当に嬉しい。それはいちファンとしてもそうですし、同じく女性で監督をする人間としても幸せな気持ちになりました。

――Siaのクリエイターとしての在り方に共感する部分はあるのでしょうか?

ELAIZA:Siaを目指すことはないですけど、多分ほとんどの女性クリエイターが同じような心を持っていると思うんです。もちろんSiaと全然レベルが違うなんて言い出したら、尽きないですけど。きっと彼女はそんな卑下をしてほしいと思ってないはずだから、これからもたくさん作品を作って欲しいと思うし、私もたくさん作りたいって思います。

Siaの歌が持つ力と、日本語で歌った時に気付いたこと

――ELAIZAさんは、Siaが生み出す音楽のファンであると公言されていますよね。

ELAIZA:そうですね。人ってなかなか叫ぶ機会ってないじゃないですか。自分の思いの丈がここ数百年噴火していない富士山のマグマのようにたまっていっているというか。でもそんな中でSiaの歌声にはそのたまった気持ちを代弁してくれるパワーを感じるし、歌によっては“生きる”というただそれだけを叫んでくれているものもある。それが痛快ですし、自分の中身をいい意味で引っ掻いてくれるというか、かき乱してくれる力があると思うんです。この映画を観て、また新たなSiaに出会えたような感覚もありましたね。

――そんな好きなアーティストが手掛けた映画の主題歌「Together」の日本語版カバーソングを歌うことになったわけですが、お話を受けた時はどんな思いでした?

ELAIZA:ありがたい気持ちと同時に、動揺しましたね。簡単に真似できる歌声ではないですし、真似してはいけないとも思いました。お話を頂いた時はまだ日本語の歌詞ができていない段階で、これを日本語に書き換えた時にどう自分が表現できるのかなっていうのは、かなり想像しましたね。

――実際に歌われてみて、いかがですか?

ELAIZA:彼女の楽曲が持つ魅力やパワーを日本語で表現した時に、日本語の魔力を感じたんです。「ありがとう」という言葉1つとっても、柔らかさを持ってるじゃないですか。柔らかい意味を持った感情には柔らかい平仮名が付いている。この曲は、固い音よりも柔らかい音が多かったので、そこに焦点を当てた歌い方があるなと思い、日本語の美しい柔らかさみたいなものをかなり大切にしながら歌いました。

ELAIZAの表現をつくりあげるもの、背景にある想い

――今回の歌唱はとてもチャレンジングな経験でもあったと思うんですが、しっかりとELAIZA色に昇華されている印象を抱きました。きっとその理由はELAIZAさんが幼少期から多くの音楽に触れてきたからこそだと思うんですが、これまでどんな音楽を聴いてこられたのでしょうか。

ELAIZA:幼少期はバレエをやっていた影響でクラシックを聴いていて。あとは私も今度ライブをするんですが、ビルボードで母親もよく歌っていたので、そこについて行っていわゆるジャズ、R&B、ソウルっていうのは一通り聴いていました。中学生になるとオタクだったので、アニメの曲を聴いたり、でも日曜の教会のミサではゴスペルを聴くみたいな。今はみんなサブスクで昔よりもどんどん、いろんなジャンルを聴くようになってると思うんですよね。プレイリストを介して普段自分が聴かないような音楽も聴いている。自分たちの世代がその先駆けだったのかなって。偏見なくいろんな曲を聴いてたと思います。

――中でも好きだったアーティストはいますか?

ELAIZA:ニーナ・シモンも好きだったし、大塚愛ちゃんも好きだった(笑)。

――すごい振れ幅ですね! 昨年11月にはアルバム『失楽園』をリリースされ、アーティスト・ELAIZAとして本格的に始動しましたが、なぜこのタイミングで歌で表現しようと思われたのでしょう。

ELAIZA:前提として、私が歌うことが楽しいから。小さい時から歌ってばかりで、怒った時も嬉しい時も歌っていました。自分の心を整えてくれる手段として歌があったんです。だけど、いざ仕事となるとやるべきか否か、5、6年以上迷っていたところではありましたね。ただ20代半ばになって「大人としてできることが増えてきたな」っていう気がしてきた中で、(歌を)やってみようと思ったんです。今の若い世代の子たちが私の曲を聴いて、何か感じたり、世の中に対してポジティブな気持ちを持ってくれたりしたらいいなって。

だからこそジャンルもニュートラルに、「こういうサウンドもあるんだ」「こういうジャンルが私好きかも」というような気付きを与えるものにしたかったんです。

――『失楽園』のテーマは“ディストピア”。反理想郷というネガティブなイメージをまとう言葉ですが、このテーマを設けた理由は?

ELAIZA:幼少の頃は育成ゲームよりRPG派でしたし、小説もSF小説が好きだったんです。だから、ユートピアよりディストピアの方がしっくり来る感覚があって。ディストピアって、必ずしもネガティブなものではないというか、そこから希望に向かっていく感じがするんですよ。逆に、ユートピアってどんどんディストピアになっていく可能性も秘めている。曲を聴いて希望みたいなものを感じてほしいと考えた時に、ディストピアというテーマが、実は一番今を生きる方々の心に寄り添うんじゃないかなって思ったんです。

――現在の混沌とした状況も少なからず影響しているのかもしれないですね。

ELAIZA:完全に「渦中」を生きているので、毎日天晴れっていう気持ちではいられないところもありますよね。そうありたいとは思いますけど。

――ELAIZAさんは女優としての顔もお持ちですが、アーティスト業と女優業でマインドの違いはあるのでしょうか。

ELAIZA:女優業の時は「練習生」のような気持ち。朝の挨拶や現場での関係性みたいなものにすごく気を遣いますし、映画の現場というものが1つの生き物のような気がするので、本当に規律正しくあろうと心掛けていますね。

――それでは、音楽の方がよりパーソナルな姿に近い?

ELAIZA:朝の挨拶にしても、もう「おはよ〜」みたいな感じで(笑)。普段の肩肘を張ってない自分かな。

――素に近い感性が音楽では表現できるんですね。

ELAIZA:ダダ漏れですね(笑)。お芝居をする時は背筋がキュってなってる。それはそれで勉強になりますけど、音楽活動ではルーツも含めてもっと自分のパーソナルな部分を肯定できる感じですね。

――なるほど。ELAIZAさんは表現することの意味についてどう考えていらっしゃいますか?

ELAIZA:うーん、私にはそれしか生きてる理由がないというか……。「誰かの役に立たないといけない」という思いが根底にあるんです。自分だけのために生きていても、生きながら死んでいくような人生しか歩めないと感じていて。誰かのためにやってる方が私も生きやすいし、得るものも大きい。私にとって、表現は生き甲斐ですかね。

――それは、どのELAIZAさんにも通ずる考え方?

ELAIZA:そうですね。手段が変わっても、私自身はそんなに変わってなくて。自分の原体験を元にしているか、お芝居のように全くできないところから勉強していったことなのかの違いがあるだけ。私も一応会社員みたいなものなので(笑)。仕事を頂ければその都度向き合うっていう働き方だと思うし。

――必要とされている場所で何かを表現したい?

ELAIZA:必要としてくれる人がいるところに居たい、という気持ちはありますね。

――なるほど。最後に、ELAIZAさんが表現をする上で大切にしていることや、心掛けていることを教えてください。

ELAIZA:なるべく誰かを見捨てたり、見逃したりしないように真摯に生きながら、幅広い視野を持って学び、自分なりの表現を1つひとつ形にしていきたい。私は勝手に発信し続けるので、皆さんも勝手に受け取ってもらえたら嬉しいですね。

『ライフ・ウィズ・ミュージック』
2月25日よりTOHO シネマズ⽇⽐⾕ほか全国公開
■監督・製作・原案・脚本:シーア
■出演:ケイト・ハドソン、マディ・ジーグラー、レスリー・オドム・Jr.
■配給:フラッグ
公式サイト: lifewithmusic.jp

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』予告編
ELAIZA

ELAIZA
女優・映画監督・アーティスト。1996年生まれ、福岡県出身。池田エライザとして『高校デビュー』(2011年、監督・英勉)で映画女優としてのデビューを飾り、『みんな!エスパーだよ!』(2015年、監督・園子温)、『映画 賭ケグルイ』(2019年、監督・英勉)、『真夜中乙女戦争』(2022年、監督・二宮健)など多数の話題作に出演。2020年には自ら監督を務めた映画作品『夏、至るころ』が公開となった。NHK BSプレミアム放映の歌番組『The Covers』(出演:2018年4月~2021年3月)や松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム『風街に連れてって!』などで歌声を披露してきた中で、2021年8月に「ELAIZA」名義で音楽活動をスタートすることを発表。同年11月に1stアルバム『失楽園』をリリースした。

Photography Kousuke Matsuki

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新世代バンドの雄・MONO NO AWARE、コロナ禍を経て紡がれた“変化”に満ちたその新作について https://tokion.jp/2021/06/23/mono-no-aware/ Wed, 23 Jun 2021 01:00:38 +0000 https://tokion.jp/?p=39778 4thアルバム『行列のできる方舟』において、個人主義や言葉遊びを排し新たな音世界を紡いだMONO NO AWARE。玉置周啓(Vo & Gt)と加藤成順(Gt)がその背景を語る。

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文学的かつ遊び心のあるリリックとポップなバンドサウンドを武器に唯一無二の存在感を放つMONO NO AWAREが4枚目となるアルバム『行列のできる方舟(はこぶね)』を完成させた。混乱を極める現代で忘れそうになっていた「身近にあるかけがえのないもの」、「ありのまま」とは何かと問うた本作。今回は、制作時のエピソードを皮切りにアルバムタイトルに込められた思いについて玉置周啓、加藤成順の2人に話を聞いた。

今まで以上にメンバー全員がコミットしたアルバムに

――今回の『行列のできる方舟』は全体を通して玉置さんの素直な言葉で表現されている多幸感に満ちた作品という印象です。身近にあったかけがえのない存在に気付くことの大切さや逃げ場のない現実を肯定的に引き受けることを1つのメッセージとして表現されているのかなと感じました。

玉置周啓(以下、玉置):「そこにあったから」を作った時に僕にしては珍しく、「いい曲だ」という手応えがあったんです。だから「そこにあったから」をランドマークにその周辺地域を開拓していくような感覚でこのアルバムを作ったんですよね。メッセージで言えば、おっしゃったような「身近にあったもの」や自然体というものがどういうものなのか。最近よく耳にする「ありのまま」というものは一体どういうものなのかを問うた感じかな。

でもサウンドはありのままと言いつつも、ナチュラルな感じにいくんじゃなくてどっちかというといろんな音を使って、できるだけ刺激を増やすみたいな感じでしたね。違和感を頑張って増やした感じ。

――MONO NO AWAREのサウンドはアルバムを出すごとにブラッシュアップされている印象です。今回のアルバム制作でサウンド面での変化はありましたか?

加藤成順(以下、加藤):今回大きく変わったのは、周啓のデモが完璧なものではなくて、鍵となるワードがあったり、サビだけが決まっていたりなど、完全に決めたものではないものをバンドメンバーに共有して曲にしていったことですかね。周啓のデモは芯となるものが伝わるものになっていますし、そこをメンバーで大きく広げていくことができたのが大きな変化なのかなって思います。

――それは意図してやってみようと思った?

玉置:今回はコンセプトを決めず、アルバム制作を始めたということもあって、メンバーともう少しコミュニケーションを取りたいなと思ったんです。今までは、僕がコンセプトを決めて僕がほぼ曲を作って、みんなにやってもらう感覚で。それでもいいんですけど、バンドとして考えた時にどうなのだろうって。僕がメンバーの才能の幅を狭めている可能性があるなと思ったんですよね。だから今回はできるだけ共有して作ってみようと思ったんです。

加藤:その結果、メンバーがやれることの“枠”が広がって。今まで以上にメンバー全員の個性が感じられるアルバムになっていると思いますね。

玉置:そうだね。渡すデモも、スケッチに近いものというか。曲名も決まってない、1文字、2文字のタイトルと、「謎」とか「海」とか「風」とかそういうパッと思いついた言葉と1分のデモみたいなものをメンバーに投げて。それで反応がいいものを詰めていくみたいな作り方にしたんです。そういう意味では意図的かもしれないですね。レコーディングだけじゃなくて、デモを作る段階から、曲の内容自体にみんながコミットできるようなやり方を模索したという違いが前作からの変化ですね。

――コミュニケーションを取ろうと思ったキッカケは?

玉置:「ゾッコン」、「そこにあったから」、「LOVE LOVE」の3曲を作った時点でアルバムの大体の感じが人間関係に関することになりそうな予感があって。今、Dos MonosのTaiTanとポッドキャストをしているんですけど、そこで話していく中で、さっき言った「ありのまま」とか「自分らしさ」とか「絆」とかみんな何も考えずにその言葉を使っているような感覚があるんじゃないかと、これは以前から考えていたことではあったけど、TaiTanと話すうちにそれがはっきりしてきたんです。人の目があるから「自分らしさ」とか「絆」とかを考えるのかなって。

結局、TaiTanと盛り上がったのは、人間ってそもそもバラバラでいいよねという話で。なんでこんなにつながっていなきゃいけないんだろうねって。コロナであぶり出された感じはありますけど、例えば、隣の人が陰謀論者だとわかるとか、言葉が通じると思っていた相手が、実は通じなかったり、通じ合わないって思っていた人と意外と話せたりとか、人間関係について発見がある年だったので、とにかくそういうものをアルバムに落とし込みたかった。それを作るのに自分のエゴだけで作るのは、矛盾するというか、プロセスもそれにちゃんと付随した形がいいだろうということで、メンバーとコミュニケーションを取りながら作ろうというふうに決めました。

言葉遊びをやめて、ストレートな思いを綴った

――なるほど。では、今回のリリックは玉置さんの昨年感じた素直な思いが言葉になっている。

玉置:そうですね。以前までは、言葉遊びでだまくらかすというか、煙に巻くスタイルで歌詞を書いていたりしましたけど、今回はそれをやめたというか、言葉遊びはほぼない。韻を踏むくらいですかね。

――リリックのお話をすると「LOVE LOVE」はストレートに愛を伝えるというか。ものすごく深い愛を歌っていますよね。

玉置:「LOVE LOVE」は19歳の時に作った曲なんですよ。“深いことを言うバンド”になる予定だった頃に書いた歌詞なんですけど(笑)。27歳の僕には書けないというか、〈君のコンタクトレンズになって〉という歌詞なんて、もうなくしてしまったような感覚で(笑)。だからこそ、この前まで興味が湧かなかった過去の曲というか、ちょっと若々しすぎて無理だなって思った世界観みたいなのが、失われたものとして魅力的に見えてきたし、コロナとか関係なく日本社会に不信が渦巻いているということもあったので、「言葉遊びをしてる場合じゃないな」って思ったんです。正直、僕はストレートなものは嫌いなんですけど、今の社会状況を考えると、もう少し真摯な態度が大切だなって。だから僕自身が胸を打たれたものをパッケージングしようと思って選んだ曲なんです。

――以前の曲だと「ダダ」もこれまで温めていた曲ですよね? 何故このタイミングでアルバムに収録しようと思ったんですか?

玉置:そうですね、よくご存知で! 「ダダ」は成順が入れようって言った気がする。

加藤:4月くらいかな、周啓が制作に困っていたのかは覚えてないけど、自分のパソコンに今まで作っていた過去のMONO NO AWARE曲のファイルがあって、それを周啓と共有して話をしたのが大きかったかもね。さっき言っていた“昔だからこそ出る歌詞のよさ”と通じる話で、「ダダ」を改めて聴いた時に「今アレンジしたらいけそう!」みたいな感触があって、すごく盛り上がったんだよね。

玉置:そう、今のモードに合う昔の曲はそのままやってもいいかなと思えたというか。もしかしたら3年後にはハマらなくなっているかもしれないと思ったので、モードが合ってるうちに作りたかったし、形にしたかった。「ダダ」は初めて長く付き合った人との別れみたいなタイミングで作った曲で、そういう瞬間の、好きだけど別れないといけないとか、すれ違いというものをしみったれた感じではなく、そういうもんだというスタンスで見ている感じがいいなと感じたんです。それって人間関係にもよくある形だと思って、アルバムに入れたんですよ。

「方舟」に乗れたら、それでお終いなのか?

――また、コロナ禍に世界が苛まれる現代において「方舟」を用いたアルバムタイトルも特徴的だと思うんですが、このタイトルに込めた思いなどはありますか?

玉置:毎回気まずい思いをするんですけど、お酒を飲んで、たまたま思いついた言葉でして。響きがいい感じだったので……。思いついた段階でこれしかないという思いはあったんですけどね。現代において「方舟」というモチーフが存在し得るのかと思って。

――なるほど。

玉置:適当ではないんです。インタビューを何本か重ねたんですけど、毎回絶妙な言葉の詰まり方になってしまって(笑)。よくわからないけども最適なタイトルを付けた気はしているという感じですね。

――今回のアルバムは2020年に感じたことを曲に落とし込みたかったとのことですが、思うように活動ができなかったことで、ライブヴや制作面で再確認できたことはありましたか?

玉置:とりあえず、多くのミュージシャンが言うように、ライヴはバイオリズムの1つだったんだなって思いますね。それ以外に社会との接点がないんだということに気付かされました。音源は作っていたけど、結局メンバーとしか会わないから、危険なことだなって思いましたね。個人的には「SaveOurSpace」運動が起こったときに、「芸術が政府からお金をもらうな」と過剰に批判されたことも大きかったです。音楽業界が孤立しているようにも感じて。「音楽を必要としていない人もいるよな」って思ったときに、すごく寂しかった。独りぼっちだなって。

加藤:僕は、最初のうちは、自分の好きなことをしたり、ゆっくりMIZの曲を作ったりもして、意外と楽しく過ごしていたんですよ。

玉置:そうだね、最初は楽しそうにしてた。久々の暇みたいな感じで。僕もそうだったし。当初は2ヵ月くらいで収束すると言われたし、「とりあえず2ヵ月休みがあって、そのあとフジロックだ!」みたいな気分だったから。でもフジロックが中止となって、そこから僕はローに入ったけど、成順はその後もけっこう楽しそうだった。だからこいつ脳天気だなって(笑)。

加藤:(笑)。だけど、このまましばらくライヴができないということが現実味を帯びてきて、僕もモードが変わっていったんです。

玉置:成順も冬には「最近暇すぎて、やることがなくなってきた」と言ってて、そうだよなって。今回のアルバムの制作プロセスの変化には、この経験が与えた影響も大きいかもしれないですね。みんながどう過ごしているかというのを初めて考えたというか、だからこそ制作でコミュニケーションをたくさん取ろうって思えた。僕が「こういうものが作りたい」と伝えまくるとつながりすぎちゃうじゃないですか。僕はそこまでズブズブな関係でバンドをやりたくないし、MONO NO AWAREは目標もないし、4人の音楽の趣味もバラバラだし、その状態でなぜバンドというものを続けられているんだろうと考えた時に、「理由はないな」って僕は思ったんです。それがすごく心地いい。理由があるとその理由が消えた瞬間に存在意義がなくなってしまうので、そこが集団の怖いところだなって思うし。それだわ! アルバムタイトルのこと思い出しました(笑)。

――改めて教えてもらってもいいですか。

玉置:方舟には“真理”や“理由”みたいなイメージがあったんですよ。コロナも関係しているかもしれないですけど、2017年くらいからSNSが活発になってきて、“真理”や“理由”、“正義”を誰もが語れないといけない状況下になってきた。それが僕には恐ろしくて。みんな“理由”が欲しいし背中を押してほしいし、誰にも否定されない“真理”や“自分らしさ”とか確立されたものが欲しいって思ってる。それを求めている姿が、「方舟に並ぶ行列」に見えたんですよね。“真理”や“理由”さえ手に入れれば、死ぬまで安泰に暮らせる感覚が蔓まん延してる感じが、現代にはある気がする。

――そんな状態でいいのかという思いがある?

玉置:そうですね。「方舟に乗れたらそれでいいのか? それで終わるものなのか?」って疑問があって。実際、そういう部分もあるとは思うんです。お金も“方舟”で、資本主義社会であれば大金を持ってしまえば楽に生きていけるかもしれない。だけど、全員がその“方舟”に乗れるわけではなくて、むしろ乗れない人のほうが多い。そして、それに乗るために社会のルールを破るのもいとわない人がいたりもする。そういうのを見るといろいろと考えざるを得ない感覚もあって……。不平等や歪みって、今たくさんあるじゃないですか? そんな中で『行列のできる方舟』という言葉を聞いた方達が何を感じるのかな?と気になって、このタイトルを付けたんです。

――確かに、方舟って聞くだけでも、いろんな意見がありそうですもんね。助け舟という印象もありますし、幸せをもたらす舟だと思う人もいるかもしれない。

加藤:そうですね、人それぞれいろいろな受け止め方があると思いますし、そこに“正解”があるわけでもないと思うんです。

玉置:うん、たくさんの意見があることがおもしろいなって。共感してもらいたくて作ったアルバムでもなかったので、摩擦でもいいから反応がもらえたら嬉しいですね。

MONO NO AWARE
東京都八丈島出身の玉置周啓(Vo& Gt)と加藤成順(Gt)、2人が大学で出会った竹田綾子(Ba)、柳澤豊(Dr)からなる4人組ロックバンド。ポップの土俵にいながらも、多彩なバックグラウンドを匂わすサウンド、言葉遊びに長けた歌詞で、ジャンルや国内外の枠にとらわれない自由な音を奏でる。FUJI ROCK FESTIVAL’16 “ROOKIE A GO-GO”から、翌年のメインステージに出演。2021年6月に4thアルバム『行列のできる方舟』をリリースした。
HP:https://mono-no-aware.jp/
Twitter:@mono_no_aware_

Photography Kazuo Yoshida

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謎多きユニット、カメレオン・ライム・ウーピーパイ その「パンク」な全貌 https://tokion.jp/2021/03/25/chameleon-lime-whoopiepie/ Thu, 25 Mar 2021 11:00:08 +0000 https://tokion.jp/?p=25800 Spotify「RADER:Early Noise 2021」にも選出された新進気鋭のユニット、カメレオン・ライム・ウーピーパイ。謎多き彼女たちの全貌を探る。

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カメレオン・ライム・ウーピーパイはとにかく謎多きユニットだ。ボーカルChi-とWhoopies1号・2号から成る新進気鋭なユニットが今までの活動の集大成となる1st EP『PLAY WITH ME』を完成させた。アイコニックなオレンジ髪、個性的な歌声と独自の感性を反映させたミクスチャー・サウンド、そしてキャッチーなネーミング。一言では説明できない不思議な存在感を放つ彼女達は一体、何者なのだろう。今回はボーカルChi-の幼少時代の記憶から音楽を始めたキッカケを振り返りつつ、謎多きカメレオン・ライム・ウーピーパイについて探っていく。

「最後」の選択肢には音楽しかなかった

――まず、最初にChi-さんの幼少時代のことからお聞きしたいんですが、Chi-さんの発言の中で印象的なのが「小さい時から生きている意味がないな」というものでして。どんな幼少期を過ごされたのかなと。

Chi-:活発な子どもではあったと思うんですけど、どこか曇っているというか。中学時代の友人には「死んだ魚の目をしてるね」って言われていたんですよ(笑)。病んでいたわけではないんですけど、どっか冷めてるんですよね。「どうせ死ぬのにな〜」ってずっと思ってはいましたね。

――どこか俯瞰して物事を見ている感じ。

Chi-:それはありましたね。学生の時ってグループで行動することが多いと思うんです。特に女子は。そこで揉めごとがあったりしても「なんか起きてるな〜」って感じで俯瞰で見てることが多かったと思いますね。

――鬱屈した感情を抱きながら、音楽をやるという選択肢にたどり着いたキッカケはなんだったんですか?

Chi-:そもそも人生に対して熱いタイプでもなかったんですが、高校を卒業するタイミングでその気持ちが余計に強くなってしまって。「なんで生きているんだろう?」っていう思いがすごく強くなったんです。でも、せっかくなら最後に自分の好きなことをやろうって思って。そこでいろいろ考えた時に音楽しかなくて、今も続けている感じですね。

――幼少期から、「生きている意味がない」と思いながら生活をしている中で、生きていくことに恐怖を感じたことはなかったですか?

Chi-:よくわからない状況が続いていたのは確かですね。特に高校卒業のタイミングはヤバかったなって思います。小さい頃ら存在したくないって気持ちが強かったし、ミジンコになりたいって思ってたし(笑)。だからこの状況を脱するためにも音楽をやろうと思ったのかもしれないです。

――存在したくないというネガティブな感情を基に音楽をするってとても難しいことのように思えます。

Chi-:確かに(笑)。普段は地味で隠れて生きていたい感じなんですけど、音楽が大好きなんです。音楽をやろうと決意した時から「もう消えてもいいや」っていう気持ちでスタートしてるから怖いものが何もないというか。逆に音楽に関しては目立ってやろうって思ってて、今まで馴染めなかった部分を全部個性に変えて、強みにしてやろうと思ったんですよね。

――音楽を通すことで、普段とは違う自分になれる。

Chi-:そうですね。基本的に私が音楽を作る時って、悲しさや怒りといった負の感情を出しているんですけど、負の感情って音楽を通すことで言えちゃうこともたくさんあると思うんです。だから、私の音楽を通してリスナーの方達へ伝わればいいなという気持ちで活動はしていますね。

孤独やネガティブな状態は強さにもなり得る

カメレオン・ライム・ウーピーパイ – Normal Luck

――なるほど。そういった音楽活動の中で出会ったのが、Whoopiesのお2人だと思うんですが、カメレオン・ライム・ウーピーパイとして活動することになった経緯について教えていただけますか?

Chi-:私が、音楽活動を始めて1ヵ月くらいで、月1回東京でライブをしていたんです。その2回目のライブにWhoopiesの2人が観に来てくれたのがキッカケですね。その時、「一緒に、こういう曲がやりたい」と言われて聴かされた曲が、すごく暗い曲で……(笑)。当時はこんな曲があるのかって思っていたんですけど、最近ビリー・アイリッシュのような少しダークな音楽が受け入れられているじゃないですか。だから、Whoopiesが先を読んでいたというか。その楽曲を聴いてカッコいいなって思ったんです。

――Chi-さんに声をかけた理由をWhoopiesのお2人に聞いたことはありますか?

Chi-:私の声を聴いて、一緒にやろうと思ってくれたみたいです。ネットで見つけてくれて、速攻でライブに来てくれたんですよ! 

――確かに、Chi-さんの声ってすごく魅力的ですよね! でもカメレオン・ライム・ウーピーパイってすごく不思議なネーミングですよね。

Chi-:アメリカのお菓子で、“チョコライムウーピーパイ”というお菓子があるんですけど、そのお菓子をWhoopiesの2人が「かわいくない?」と言ってきて。チョコの部分を私が好きなカメレオンに変えてこの名前をつけた感じです。私、カメレオンの生き様が好きなんですよ(笑)。

――カメレオンの生き様ですか(笑)。具体的にはどんなところに魅力を感じるんでしょうか?

Chi-:カメレオンって背景の色に同化したり、環境に適応して自分の色を変えていくと思うんですけど、その能力が私とは真逆だなって思うんです。私は、昔から集団に馴染めなかったり、環境に適応するのがあまり得意なほうではなくって……。だからカメレオンってすごいなというか、憧れみたいな感情があるんですよね。

――集団に馴染めない自分っていうのは今回の1st EP『PLAY WITH ME』のリリックからも感じます。集団に対して否定的なニュアンスや孤独に対してのChi-さんの考え方は日常的に感じていることなのかなと。

Chi-:昔から常に感じていることではありますね。孤独ということをネガティブに捉えていたんですけど、生きているとみんな孤独な側面を抱えているんだなと思えてきて。私は、集団でいる時のほうが弱くなってしまう感じがあって、集団の中に入って何かやるとなるとルールやその集団を守らなきゃいけないこともあると思うんです。その責任感のようなものを感じていると弱くなっちゃう気がして。1人でいると失うものがないので、いろいろ無敵になれて、強くなれると思うんです。Whoopiesの2人が支えてくれているんですけど、1人で戦うという気持ちは強くありますね。

――確かにリリックは陰の部分がありますけど、楽曲の着地点は光が射しているというか、Chi-さんがこの世界に求めているものを表現しているようにも思えるんですが、楽曲を通して、リスナーに伝えたいことはありますか?

Chi-:私は最高にネガティブなところから音楽を始めて、今は何も怖くない状況なんですね。だからめちゃくちゃネガティブな状態って逆に最強なんじゃないかって思うんです。ネガティブな状況でも1周回ってポジティブになれば、ものすごく強いと思うし、マイナスなことの後にはきっといいことが起きると思うから、リスナーの方にはそういったことが伝わればいいなって思います。

――Chi-さんのコメントにもあった「いかれた世界で遊ぼう」にも通ずる考え方かもしれないですね。

Chi-:リリックに関しては、今の時代にフィットしてるなって思いますね。こんな世の中になると思って書いたわけじゃないけど、時代にぴったり過ぎて自分でも驚いてます(笑)。

「パンク」として日本の音楽シーンを変えたい

1st EP『PLAY WITH ME』

――あと、1st EP『PLAY WITH ME』の特徴を挙げるとすれば、独自性のあるサウンド感だと思うんです。ミクスチャー的な要素もあるサウンド感が魅力的だと個人的には思っているんですが、カメレオン・ライム・ウーピーパイが求めるサウンドはどういったものなのでしょうか。

Chi-:私は元々、忌野清志郎とかマイケル・ジャクソン、ジェームス・ブラウンが好きなんですけど、Whoopiesはビースティー・ボーイズやロック×デジタル、ロック×ヒップホップとかジャンルが混ざっている音楽が好きなんです。だから3人のいろいろな趣味が混ざって、グチャグチャになったサウンドというか。そういう各々の趣味を混ぜたものが今のスタイルになってるのかなと思いますね。でもWhoopiesは「俺達は、パンクをしてる」と言ってるので、私も、パンクをやってるのかなって思ってます……(笑)。

――反骨心のようなものがあると

Chi-:日本の音楽シーンを変えたいという気持ちが強くあるんです。ちょっと攻撃的だけど、J-POPを変えたいっていうのが心底すごくあるので、そこがパンクなのかなって思います。

――パンク・スピリット的な感じですね。J-POPを変えたいっておっしゃいましたけど、それはなぜですか?

Chi-:そうですね、マインドがパンクなのかも(笑)。私自身がJ-POPで憧れる人がいないというか。そういう人がいないからこそ音楽を始めたというのもあって。憧れる人がいないからこそ、自分がそれになればいいのかなって思ってやってるんですよね。もし私がもう1人いるとしたら、その私がファンになれるようにっていうのをすごく考えていて、行動とか、言動とかも、ストリートライブを銀座とかでやっちゃったりするのも、自分が私達のファンだったら、どこまでやってほしいかっていうのを考えています。カメレオン・ライム・ウーピーパイが音楽シーンを変える一翼を担えればなって。

カメレオン・ライム・ウーピーパイ – Play With Me

――なるほど。今年はそのチャンスが訪れたような気がしますね。Spotifyの「RADER:Early Noise 2021」にも選出されて、より大衆へ向けてアピールする1年になってくると思います。

Chi-:そうですね。でも、スタイルや今やってることは変える気はないというか。ここまでやってきたことってすごく自分達が好きなことをそのままやってきたって感じなんです。だから、それをいろんな人に聴いてもらいたいって気持ちがいちばん強いですね。受け入れられた感覚もあるので、今回のEPを通してもっと広めていけたらなと思います。

――今後の展望も聞かせてください。

Chi-:4年間の活動を経て、ようやくスタートラインに立ったような気がしているんですが、Whoopiesとのライブの形も固まってきて今すごく楽しいので、それをイベントやフェスとかで皆さんに共有できればいいなって思うのと、このEPが名刺代わりというか、いろんな人に聴いてもらって、カメレオン・ライム・ウーピーパイを知ってもらう年になればいいなって思っています。

――制作も変わらず続けている?

Chi-:そうですね。この1stEPは「いかれた世界で遊ぼう」というコンセプトでやってて、次の曲は、「そろそろこの世界輝いてくれよ」という思いを込めた作品になってるので、私達が提示する次の段階の考えを今後も発信していきたいなと思ってます。

*

カメレオン・ライム・ウーピーパイ
オレンジの髪が特徴的な Chi-。そして仲間に Whoopies1 号・2 号がいる。作詞や作曲、レコーディングはもちろん、 映像もアイデア出し、小道具を集めるところから、撮影、編集までありとあらゆるものを全て 3 人のみで手掛け、常に 新しいクリエイティヴを生み出し続ける次世代型アーティスト。Spotify「RADAR : Early Noise 2021」に選出されるなど各所から注目を集めている。
Twitter: @chi_clw
Instagram: @chameleon.lime.whoopiepie
Youtube: https://www.youtube.com/channel/UCP9dFgrskFYoSXX52K2xAyw

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88risingから世界デビュー! 新しい学校のリーダーズは「はみ出すこと」を厭わずまっしぐらに前へと進む https://tokion.jp/2021/03/13/global-debut-from-88rising-atarashii-gakko/ Sat, 13 Mar 2021 06:00:34 +0000 https://tokion.jp/?p=22405 「歌い踊るセーラー服、青春日本代表」と称する4人組グループ・新しい学校のリーダーズが、世界を席巻するレーベル88risingと契約し世界デビューを果たした。彼女たちの信念と原動力、この先への思いを尋ねる。

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他のZ世代のアーティストとは一線を画す存在として、異彩を放つグループである新しい学校のリーダーズ。奇抜な装飾と日本の女学生の象徴であるセーラー服を身に纏い、自らを“青春日本代表”と称し活動を続ける彼女たちが”ATARASHII GAKKO!”として世界を席巻するレーベル88risingから世界デビューを果たした。

卓越したダンススキルと歌唱力、そして世間から“はみ出す”ことを厭わない独自のスタイルは、どのジャンルにもカテゴライズできない唯一無二の存在感を示すとともに、新たな時代を牽引するニュースターの誕生を期待させる。今回はそんな新たなステージへの一歩を踏み出した新しい学校のリーダーズの4人に、世界デビューに至るまでの軌跡、そして今後の展望をきいた。

コンセプトに勝って「自分たちの居場所」を見つけた5年半の歩み

――まずは、世界デビューおめでとうございます。皆さんは、今回の世界デビューに至るまで、どんな活動をしてこられたんですか?

MIZYU:やっぱり、ライブじゃない?

SUZUKA:ライブはたくさんしたね。あとは、幸楽苑さんとのタイアップやドラマの主題歌を歌わせていただいたり、『関内デビル』(TVK)で公園についてリポートするレギュラー企画を持たせてもらったりとか、バラエティに富んだことやらせてもらったよね?

RIN:うん。そう考えると、私たちの持っているダンスと歌という2つの大きな幹を、どんな企画でもどこかで絡めて表現する事ができるので、何でも自分たちらしい物に変化させる事ができるなと感じました。

――そこには自信を持ってる。

SUZUKA:うん。自信はあります。

MIZYU:おもしろいと思いますよ、私たち(笑)。

――いろんな経験をしてきたと思いますが、振り返ってみてどうですか? デビューからの5年半はどんな時間でしたか?

SUZUKA:成長って感じですよね。個人的にも成長できた5年半だったと思いますし、リーダーズとしての考え方も成長したのかなと思います。「踊るセーラー服、青春日本代表」というコンセプトに対してもみんなでたくさん話し合って、自分たちの居場所を見つけれた気がしますね。未だに見えないこともたくさんあるけど、基本的なラインはクリアできたなって思うし、そこのクリアした部分が最近何をやっても自信持って、できちゃうってところにつながってると思いますね。

MIZYU:最初の頃は私たちが私たちのことをわかってなかったので。そこを理解するところから、4人で始めたんだよね。

SUZUKA:この5年半で、コンセプトに勝てたんやな!

――コンセプトに勝てたっていう表現はすごいですね! 具体的にはどんなところが成長できたと思いますか?

MIZYU:脳ですかね(笑)。

SUZUKA:そうだね。自分たちが現在持っている実力でこの世の中に対してどうアプローチしたら面白くなるのかなとか、自分たちの居場所を見つけるための脳がすごく成長したと思う。

――物事を冷静に考えられるようになったんですね。

KANON:リーダーズの軸というか、考え方や根っこの部分を鍛えれたかなって思います。4人での感覚を鍛えれたというか。

MIZYU:踊りは昔からできていたけど、脳で踊るようになったと思います。自分の想像を踊りで表現する、みたいな。1年前の自分を見返すと今と全然違う人に感じたりします。

個性を楽しみ、バランスを取りながら成長していく

――新しい学校のリーダーズの活動を通して、伝えたいことはありますか?

MIZYU:大まかになっちゃうけど、やっぱり青春ですかね。年齢は関係ないと思うんです、青春って。今を全力で楽しむこともそうだし、何か葛藤があったとしてもそこに全力で立ち向かうことは青春だと思うんです。だから学生だけの特権じゃないというか。私たちの歌やライブで青春を伝えたいなって思います。

SUZUKA:しかも、世の中の風潮が、どんどん自由や個性を大切にする流れになってるから、その流れに乗っていってほしいなって思いますね。それぞれ、個性があって何が悪いって感じやし。その個性を楽しもうぜ!って思います。

――今、世の中の風潮って言葉が出ましたけど、若い皆さんから見て今の世の中はどうですかね? コロナもあってすごくネガティブな側面が浮き彫りになった感じもあると思うけど。

SUZUKA:めっちゃいい方向へ向かってると思います! 今は、固い考えと自由な考えが混ざってるって感じ。良い方向へ向かうための途中経過ですね。

RIN:今って、SNSが発達してるじゃないですか。そこで自分の考えを共有することができるんですよね。共感できる場が増えたことはすごくいいことだなって思います。

SUZUKA:でもさ、アナログの良さも大切じゃない? だから、デジタルの良さとアナログの良さのバランスを取れるようになればいいなって思うよね。

88risingとの契約前に感じた確かな予感と、この先への自信

――なるほど、柔軟に世の中が見れてるんですね。そんないい方向に向かってる最中で“ATARASHII GAKKO!”として世界デビューが決まったわけですが、どういう経緯だったんですか?

MIZYU:経緯は、『恋ゲバ』という曲を関係者の方にお披露目する謎の機会があって、なんかわからないけど、これは絶対実るぞっていう気持ちで戦ったんです。そうしたら88risingのエージェントの方がたまたま見ていて携帯で動画を撮って、この1本の動画がきっかけで、今すぐ契約しようっていう形になりました。だからすごく急に決まったんですよね。

KANON:「これがこのあと何かにつながるから」って4人で言い合って、パフォーマンスしたら本当につながって本当にびっくりしました。

SUZUKA:でも、あのときはすごく予感がしたよね。これ、なんかヤバいことになるかもって。

――直感的に感じたんですね。どうですか、率直に世界デビューについてどう思いますか?

SUZUKA:始まってはいるけど、まだ始まってない感覚もあって。それはステージに立つことを実際してないので、まだファンタジーみたいな感覚がすごくするんです。でもその未来が絶対待っているので、自分たちにとっていいプレッシャーは常にかかっている状態ですね。

RIN:確かに。見ようとする世界は広がったけど見える世界は広がりきれてないんですよね。

――でも、不安より楽しさが勝る?

MIZYU:楽しみだし、自信はありますね。ただ不安な部分ももちろんあって。今は映像作品だけで我々を知ってくれている人が多いので、いざその人達の目の前でパフォーマンスをする時、期待をどれだけ超えれるかっていうプレッシャーはあります。

「青春日本代表」として世界に発信していきたいこと

――世界へどんなことを発信していきたいですか?

SUZUKA:日本の魅力と私たちの魅力を伝えていきたいです。青春日本代表として日本っていいな、リーダーズっていいなって興奮してもらいたいと思いますね。

――本当に日本代表になったわけですもんね。日本のカルチャーの良さはどこにあると思いますか?

MIZYU:細かい規則の中で生きて、その律儀さや丁寧さが基盤に備わっているのが、日本人の良さだなと最近思うようになりました。

SUZUKA:日本の校則とかが海外から見ると美しく見えるんやなって思って。繊細な部分に気を配るじゃないですけど、そういうとこを美しいって見られてると感じるから、そういうところを伝えていければなって思いますね。

KANON:礼儀とかね?

SUZUKA:そうだね。ステージに上がるときは礼をするとか、そういうところから日本っぽさを出していきたいなって思いますね。

――そこまで明確にビジョンがあると、早くライブで表現したいですね。

MIZYU:やりたいですね。でも多くライブをやらせていただいている中で、ライブに来た方にはアプローチできるけど、来てない人には知っていただけない状況があるなと感じていて。それが、コロナ禍でライブが出来なくなり、配信するという新たな手段が出てきたんですよね。それまで、私たちは全然ライブ映像とかを出してこなかったんですけどこのキッカケで出すようになって知っていただく機会が増えたんです。だから、ライブができない今は映像とSNSを活発に動かして、知ってもらう動線を作れたらなって思うんです。

SUZUKA:今は、無観客ライブもできますし一度動画をアップしてしまえば、その動画はいろんな人が何回も見るわけじゃないですか。気持ち的にライブを何回もしてる気持ちになるんですよ。だから、あとはどうアプローチしていくかを考えるというか、リーダーズを知ってもらうためにどう動くかなのかなって。

KANON:私たちにとっては、去年の自粛期間もプラスに作用してるというかね。レベルアップする意味ではいい段階になってると思いますね。

RIN:世界デビューをしてから、YouTube のコメント欄で海外の方からもたくさんの反応を頂いているんです。今は皆さんが SNS を 見る時間も増えていると思うし、すごく良いタイミングだったなと思います。

――ライブができない状況も悲観することなく、成長できてるわけですね。じゃあ、これからどういう見せ方をするか考えている?

KANON:そうですね。試行錯誤はしてますけど、これからもっといろいろ考えていきたいですね。

SUZUKA:私たちにしか出来ないやり方で面白い事やっていきたいです。

――これからの展望について改めて教えてください。

RIN:SNSや映像で盛り上げつつ、最終的には国内外問わず、ライブを観た沢山の方々に最高だと思ってもらえるものを作っていきたいです。

SUZUKA:何かのキッカケでバズる時が近いうち必ず来ると信じてるので、今はしっかりと日本へのアプローチ、世界へのアプローチをやっていきたいですね。これからも新しい学校のリーダーズを楽しみます。

新しい学校のリーダーズ
「歌い踊るセーラー服、青春日本代表」と称し、現代社会を強く楽しく生きるべく、個性や自由を全身で表現し【はみ出していく】。ライブや音楽、ダンス、前衛的動画など378度くらいの全方位で、もっと自由にもっと個性を出していける社会になる事を望み、ざわつきを生み出し続ける四人組。
http://leaders.asobisystem.com
Twitter: @japanleaders
Instagram: @japan_leaders
TikTok: @japanleaders

Photography Kentaro Oshio

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