カメレオン・ライム・ウーピーパイはとにかく謎多きユニットだ。ボーカルChi-とWhoopies1号・2号から成る新進気鋭なユニットが今までの活動の集大成となる1st EP『PLAY WITH ME』を完成させた。アイコニックなオレンジ髪、個性的な歌声と独自の感性を反映させたミクスチャー・サウンド、そしてキャッチーなネーミング。一言では説明できない不思議な存在感を放つ彼女達は一体、何者なのだろう。今回はボーカルChi-の幼少時代の記憶から音楽を始めたキッカケを振り返りつつ、謎多きカメレオン・ライム・ウーピーパイについて探っていく。
「最後」の選択肢には音楽しかなかった
――まず、最初にChi-さんの幼少時代のことからお聞きしたいんですが、Chi-さんの発言の中で印象的なのが「小さい時から生きている意味がないな」というものでして。どんな幼少期を過ごされたのかなと。
Chi-:活発な子どもではあったと思うんですけど、どこか曇っているというか。中学時代の友人には「死んだ魚の目をしてるね」って言われていたんですよ(笑)。病んでいたわけではないんですけど、どっか冷めてるんですよね。「どうせ死ぬのにな〜」ってずっと思ってはいましたね。
――どこか俯瞰して物事を見ている感じ。
Chi-:それはありましたね。学生の時ってグループで行動することが多いと思うんです。特に女子は。そこで揉めごとがあったりしても「なんか起きてるな〜」って感じで俯瞰で見てることが多かったと思いますね。
――鬱屈した感情を抱きながら、音楽をやるという選択肢にたどり着いたキッカケはなんだったんですか?
Chi-:そもそも人生に対して熱いタイプでもなかったんですが、高校を卒業するタイミングでその気持ちが余計に強くなってしまって。「なんで生きているんだろう?」っていう思いがすごく強くなったんです。でも、せっかくなら最後に自分の好きなことをやろうって思って。そこでいろいろ考えた時に音楽しかなくて、今も続けている感じですね。
――幼少期から、「生きている意味がない」と思いながら生活をしている中で、生きていくことに恐怖を感じたことはなかったですか?
Chi-:よくわからない状況が続いていたのは確かですね。特に高校卒業のタイミングはヤバかったなって思います。小さい頃ら存在したくないって気持ちが強かったし、ミジンコになりたいって思ってたし(笑)。だからこの状況を脱するためにも音楽をやろうと思ったのかもしれないです。
――存在したくないというネガティブな感情を基に音楽をするってとても難しいことのように思えます。
Chi-:確かに(笑)。普段は地味で隠れて生きていたい感じなんですけど、音楽が大好きなんです。音楽をやろうと決意した時から「もう消えてもいいや」っていう気持ちでスタートしてるから怖いものが何もないというか。逆に音楽に関しては目立ってやろうって思ってて、今まで馴染めなかった部分を全部個性に変えて、強みにしてやろうと思ったんですよね。
――音楽を通すことで、普段とは違う自分になれる。
Chi-:そうですね。基本的に私が音楽を作る時って、悲しさや怒りといった負の感情を出しているんですけど、負の感情って音楽を通すことで言えちゃうこともたくさんあると思うんです。だから、私の音楽を通してリスナーの方達へ伝わればいいなという気持ちで活動はしていますね。
孤独やネガティブな状態は強さにもなり得る
――なるほど。そういった音楽活動の中で出会ったのが、Whoopiesのお2人だと思うんですが、カメレオン・ライム・ウーピーパイとして活動することになった経緯について教えていただけますか?
Chi-:私が、音楽活動を始めて1ヵ月くらいで、月1回東京でライブをしていたんです。その2回目のライブにWhoopiesの2人が観に来てくれたのがキッカケですね。その時、「一緒に、こういう曲がやりたい」と言われて聴かされた曲が、すごく暗い曲で……(笑)。当時はこんな曲があるのかって思っていたんですけど、最近ビリー・アイリッシュのような少しダークな音楽が受け入れられているじゃないですか。だから、Whoopiesが先を読んでいたというか。その楽曲を聴いてカッコいいなって思ったんです。
――Chi-さんに声をかけた理由をWhoopiesのお2人に聞いたことはありますか?
Chi-:私の声を聴いて、一緒にやろうと思ってくれたみたいです。ネットで見つけてくれて、速攻でライブに来てくれたんですよ!
――確かに、Chi-さんの声ってすごく魅力的ですよね! でもカメレオン・ライム・ウーピーパイってすごく不思議なネーミングですよね。
Chi-:アメリカのお菓子で、“チョコライムウーピーパイ”というお菓子があるんですけど、そのお菓子をWhoopiesの2人が「かわいくない?」と言ってきて。チョコの部分を私が好きなカメレオンに変えてこの名前をつけた感じです。私、カメレオンの生き様が好きなんですよ(笑)。
――カメレオンの生き様ですか(笑)。具体的にはどんなところに魅力を感じるんでしょうか?
Chi-:カメレオンって背景の色に同化したり、環境に適応して自分の色を変えていくと思うんですけど、その能力が私とは真逆だなって思うんです。私は、昔から集団に馴染めなかったり、環境に適応するのがあまり得意なほうではなくって……。だからカメレオンってすごいなというか、憧れみたいな感情があるんですよね。
――集団に馴染めない自分っていうのは今回の1st EP『PLAY WITH ME』のリリックからも感じます。集団に対して否定的なニュアンスや孤独に対してのChi-さんの考え方は日常的に感じていることなのかなと。
Chi-:昔から常に感じていることではありますね。孤独ということをネガティブに捉えていたんですけど、生きているとみんな孤独な側面を抱えているんだなと思えてきて。私は、集団でいる時のほうが弱くなってしまう感じがあって、集団の中に入って何かやるとなるとルールやその集団を守らなきゃいけないこともあると思うんです。その責任感のようなものを感じていると弱くなっちゃう気がして。1人でいると失うものがないので、いろいろ無敵になれて、強くなれると思うんです。Whoopiesの2人が支えてくれているんですけど、1人で戦うという気持ちは強くありますね。
――確かにリリックは陰の部分がありますけど、楽曲の着地点は光が射しているというか、Chi-さんがこの世界に求めているものを表現しているようにも思えるんですが、楽曲を通して、リスナーに伝えたいことはありますか?
Chi-:私は最高にネガティブなところから音楽を始めて、今は何も怖くない状況なんですね。だからめちゃくちゃネガティブな状態って逆に最強なんじゃないかって思うんです。ネガティブな状況でも1周回ってポジティブになれば、ものすごく強いと思うし、マイナスなことの後にはきっといいことが起きると思うから、リスナーの方にはそういったことが伝わればいいなって思います。
――Chi-さんのコメントにもあった「いかれた世界で遊ぼう」にも通ずる考え方かもしれないですね。
Chi-:リリックに関しては、今の時代にフィットしてるなって思いますね。こんな世の中になると思って書いたわけじゃないけど、時代にぴったり過ぎて自分でも驚いてます(笑)。
「パンク」として日本の音楽シーンを変えたい
――あと、1st EP『PLAY WITH ME』の特徴を挙げるとすれば、独自性のあるサウンド感だと思うんです。ミクスチャー的な要素もあるサウンド感が魅力的だと個人的には思っているんですが、カメレオン・ライム・ウーピーパイが求めるサウンドはどういったものなのでしょうか。
Chi-:私は元々、忌野清志郎とかマイケル・ジャクソン、ジェームス・ブラウンが好きなんですけど、Whoopiesはビースティー・ボーイズやロック×デジタル、ロック×ヒップホップとかジャンルが混ざっている音楽が好きなんです。だから3人のいろいろな趣味が混ざって、グチャグチャになったサウンドというか。そういう各々の趣味を混ぜたものが今のスタイルになってるのかなと思いますね。でもWhoopiesは「俺達は、パンクをしてる」と言ってるので、私も、パンクをやってるのかなって思ってます……(笑)。
――反骨心のようなものがあると
Chi-:日本の音楽シーンを変えたいという気持ちが強くあるんです。ちょっと攻撃的だけど、J-POPを変えたいっていうのが心底すごくあるので、そこがパンクなのかなって思います。
――パンク・スピリット的な感じですね。J-POPを変えたいっておっしゃいましたけど、それはなぜですか?
Chi-:そうですね、マインドがパンクなのかも(笑)。私自身がJ-POPで憧れる人がいないというか。そういう人がいないからこそ音楽を始めたというのもあって。憧れる人がいないからこそ、自分がそれになればいいのかなって思ってやってるんですよね。もし私がもう1人いるとしたら、その私がファンになれるようにっていうのをすごく考えていて、行動とか、言動とかも、ストリートライブを銀座とかでやっちゃったりするのも、自分が私達のファンだったら、どこまでやってほしいかっていうのを考えています。カメレオン・ライム・ウーピーパイが音楽シーンを変える一翼を担えればなって。
――なるほど。今年はそのチャンスが訪れたような気がしますね。Spotifyの「RADER:Early Noise 2021」にも選出されて、より大衆へ向けてアピールする1年になってくると思います。
Chi-:そうですね。でも、スタイルや今やってることは変える気はないというか。ここまでやってきたことってすごく自分達が好きなことをそのままやってきたって感じなんです。だから、それをいろんな人に聴いてもらいたいって気持ちがいちばん強いですね。受け入れられた感覚もあるので、今回のEPを通してもっと広めていけたらなと思います。
――今後の展望も聞かせてください。
Chi-:4年間の活動を経て、ようやくスタートラインに立ったような気がしているんですが、Whoopiesとのライブの形も固まってきて今すごく楽しいので、それをイベントやフェスとかで皆さんに共有できればいいなって思うのと、このEPが名刺代わりというか、いろんな人に聴いてもらって、カメレオン・ライム・ウーピーパイを知ってもらう年になればいいなって思っています。
――制作も変わらず続けている?
Chi-:そうですね。この1stEPは「いかれた世界で遊ぼう」というコンセプトでやってて、次の曲は、「そろそろこの世界輝いてくれよ」という思いを込めた作品になってるので、私達が提示する次の段階の考えを今後も発信していきたいなと思ってます。
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