今泉力哉 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/今泉力哉/ Thu, 05 Oct 2023 06:27:06 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 今泉力哉 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/今泉力哉/ 32 32 対談:今泉力哉 × 木村和平 2人の創作へのこだわりと映画『アンダーカレント』の“わからなさ” https://tokion.jp/2023/10/05/undercurrent-rikiya-imaizumi-x-kazuhei-kimura/ Thu, 05 Oct 2023 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=210754 映画『アンダーカレント』の今泉力哉監督とスチール写真を手掛けた写真家の木村和平との対談。2人の創作に対するこだわりとは。

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今泉力哉(左)と木村和平(右)

今泉力哉
映画監督。1981年生まれ、福島県出身。2010年、『たまの映画』で商業監督デビュー。2013年、『サッドティー』が東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門に出品され、高い評価を受ける。2019年、『愛がなんだ』(2019)が大ヒットを記録。2023年、Netflix映画『ちひろさん』を手掛け、世界配信と劇場公開を同日に行う。その他の主な作品に『his』(2020)、『あの頃。』(2021)、『街の上で』(2021)、『猫は逃げた』(2022)、『窓辺にて』(2022)など。最新作として、漫画「からかい上手の高木さん」の実写化を手掛ける。
https://twitter.com/_necoze_

木村和平
写真家。1993年生まれ、福島県出身。東京在住。ファッションや映画、広告の分野で活動しながら、幼少期の体験と現在の生活を行き来するように制作を続けている。第19回写真1_WALLで審査員奨励賞(姫野希美選)、IMA next #6「Black&White」でグランプリを受賞。主な個展に、2023年「石と桃」(Roll)、2020年「あたらしい窓」(BOOK AND SONS)、主な写真集に、『袖幕』『灯台』(共にaptp)、『あたらしい窓』(赤々舎)など。
https://twitter.com/kazuheikimura
Instagram:@kazuheikimura

豊田徹也による人気漫画『アンダーカレント』を、今泉力哉監督が映画化し、10月6日から公開される。そこでスチール写真を手掛けたのは写真家の木村和平だ。これまでにも木村は『愛がなんだ』をはじめ今泉作品に関わってきたが、木村のスチールは監督にとって何が特別なのか。そして、木村から見た今泉作品の魅力とはどんなところなのか。映画とスチールの関係を通じて、2人それぞれの創作に対するこだわりを聞いた。

——木村さんが今泉監督の作品に関わるようになってから長いですが、監督は木村さんのスチールのどんなところに惹かれますか?

今泉力哉(以下、今泉):スチールを撮った時の空気感みたいなものが、写真にすごく残っているところですね。あと、俳優さんに無理をさせないというか。状況を伝えたうえで、できるだけ自然な感じでいてもらう。そういうところは自分が撮影する時と通じるものがあるなって思います。

——今監督がおっしゃったことは、木村さんがスチールを撮影する時に意識していることなのでしょうか?

木村和平(以下、木村):言われてみれば確かにそうかなって思いますが、一番大事にしていることではないですね。今泉さんは「役者に無理をさせない」って良い感じで言ってくれましたけど、そうでもないかもしれない。

今泉:させている時もある?

木村:芝居の延長だけど、ちょっと違うことをさせる、というのを意識しているところがあって。でも、それをしつこく追及しないというか、見切りをつける時は早い。そういうところは今泉さんの映画にもある気がします。

今泉:やばい。いろいろ見られてる(笑)。

——そういう被写体との関係性は映画のスチールだからなのでしょうか。それとも他の作品でも同じですか?

木村:自分の性格がいちばん大きいと思いますが、映画の仕事は他の仕事とは違うのは確かですね。自分が主導権を握っている仕事ではないので。映画には「参加させてもらっている」という意識があるのですが、そこで何か爪痕を残したいっていうスポ根的な意識が働く(笑)。短い期間の中で、役者さんと共鳴する瞬間を見つけたいと思うんです。だから、「あのシーンの後、どうしていると思いますか?」みたいなことを役者さんに言って、芝居に集中している役者さんの意識を少しズラさせる。そういう撮り方は映画のスチールの時しかないというか、他の仕事ではやりようがないですよね。映画みたいな「物語」がないので。

——そうやって役者に働きかけて撮影する、というのは、ある種の演出のようでもありますね。

木村:演出と言えるのかなあ。

今泉:スチールの撮り方ってカメラマンによっていろいろあると思うけど、木村さんのように役者さんに語りかけるのは、役者さんが演じていることへのリスペクトをすごく感じるので、役者さんからしたらありがたいと思いますよ。「一回、役を忘れて」って平気で言っちゃうカメラマンもいますからね。作品のイメージとかけ離れていても役者を美しく撮る、というやり方もあるから、それを理解している役者さんだといいけど、「役を忘れろだと?」ってイラッとしてしまう人もいる。僕は木村さんみたいに、俳優が役を演じていることを活かした演出をしてほしい。

木村:でも、撮影の目的次第では、役を忘れてもらってもいいと思うんですよね。全員の集合写真を白ホリで撮影するのであれば「役を忘れて」と言うのもありかもしれない。

今泉:木村さん、そういう写真も撮れるんですか? ガチガチに作り込んだような。

木村:撮れないです(笑)。というか、撮ったことがないからわからないですね。一度、やってみたい気はするけど、やっぱり、自分が関心があるのは役のままでその場でいてもらうことですね。

光について

——木村さんのスチールを見ていると、映画には描かれていない時間を撮っているような気がします。

今泉:(井浦新と真木よう子が沼の前に立っているポスターの写真を見て)これも映画の時間ではないですよね。

——真木よう子さんの顔は、ヒロインのかなえの顔になっていますよね。きっと、映画を観た人なら、あのシーンの前後だなってわかる。

木村:例えば「切ない表情をしてください」って言って撮るのと、「あのシーンの後、どうしていると思いますか?」とだけ言って撮るのとでは絶対に違う。役者さんはプロだから「切ない顔」をすぐ作れちゃうので、なるべくポーズとか表情の指示をしたくないんですよね。だから、この写真も「こっち向いて」とか言ってなくて、たまたま真木さんがこっちを見た時に撮ったんです。

——この写真をはじめ木村さんの写真は自然光の取り入れ方が印象的なのですが、そこは意識されているのでしょうか。

木村:自分の作品に関して光の話をしていただくことが多いんですけど、自分は独学で写真を学んで、スタジオで働いた経験もないのでライティングのことがあまりよくわかってないんですよね。だから、その場にある光を活用するしかない。変に光を操作せずに、その場の光を使った結果というか。自然光を使うことを、自分のスタイルにしようと思っているわけではないんです。

今泉:ファッション誌などで撮る時も?

木村:基本的にはそうですね。たまに広告とかだと照明さんに助けてもらうこともありますけど。近年は光から離れる努力をしているところです。この写真(ポスターの写真)は結局、光に頼っちゃいましたけど(苦笑)。

——映画本編も自然光を捉えた映像が印象的でしたが、監督は照明に関しては何か意識していることはありますか?

今泉:あんまり考えてないんですよね。照明と色味とかはカメラマンの提案を受けて、「それでいいと思います」みたいな感じなんです。今回の作品では、ちょっと青っぽくして汚しを入れているんですけど、それも撮影の岩永(洋)さんからの提案でした。よくわかってないんですよ、照明のことを。ロケハンの時に岩永さんに「今泉さんは撮りたい画ってないんですか?」って聞かれた時に「ないんだよね」って言っちゃって。そしたら、岩永さんがショックを受けて「今の言葉、一生忘れません」って言ってた(笑)。

木村:でも、なくはないでしょう?

今泉:うーん。画よりも人物をどう生かすかの方が重要なんだよね。

木村:優先順位が違うんですね。

今泉:そう。基本、風景だけの画って撮らないし。人があっての景色だから。芝居は通して撮るんですけど、ツーショットで押さえて、寄りも全部押さえる。カメラマンには「使うところが決まっていればそこに力を入れて撮れるけど、全部使えるように撮るのは疲れる」って言われるんですよ。でも、そこで照明にこだわられたくないっていうか。そこだけ、すごくきれいに撮れていても使いたくない。なるべくフラットな感じにしておきたいんです。

木村:監督が映像的なこだわりよりも、会話に注力しているからこそ、あの独特の空気感が出ているんだと思います。特に今回の映画はそうだった。すべてのカットの照明を作りこんでたら、いわゆる美しい映画になってしまって、監督の会話劇の面白さが薄れそう。

今泉:その辺を岩永さんはすごく理解してくれているんですよね。

——監督の作風を理解しているカメラマンじゃないとやりにくいですね。

今泉:そうですね。でも、サイズとかは細かく言うから、岩永さんは「任せるって言いながら、任せずにこだわるよなあ、今泉さん」ってイライラしてますけど(笑)。

——木村さんはスチールを撮る時にこだわっていることはありますか?

木村:ズームレンズは使用せず、単焦点の標準レンズしか使わないことですね。それはスチールに限ったことじゃないですけど、スチールの時は特にそうかもしれません。スチールって絶対望遠のズームレンズがあった方がいいと思うんですよね。いろんな機材があってスタッフさんがたくさんいるなかで役者を撮らなくてはいけないので、遠いところから顔のアップを撮れたほうが絶対いい。でも、僕は普段の仕事で使っている、ズームができない単焦点のレンズを映画のスチールでも使ってきました。それはどうしてなのか? と考えた時に、自分の視点が変わることのほうが大事なんじゃないかと思ったんです。レンズによって視点が変わるよりも、自分が動いて視点を変えていく方が大事だなと。

——その違いはなんでしょう?

木村:僕がいることを意識させない、ということも大事かもしれませんが、僕は僕がいることをわかったうえで撮られて欲しい、という気持ちがあります。役者さんとコミュニケーションをとったうえで撮りたいんです。

——撮られていることを意識する、というのは大きな違いですね。

今泉:今の木村さんの話を聞いて思ったんですけど、映画の長回しのシーンって観客が映画と同じ時間を体験するわけじゃないですか。しかも、カットがないので作り手のことを意識させないし緊張感も出る。だから、映画の2人に集中してほしい、と思ったシーンでは長回しにするんです。じゃあ、その場にスタッフを入れずにカメラだけ置いて、隠しカメラのように撮れば、もっと緊張感ある映像が撮れるか? というと絶対撮れない。大勢のスタッフがいると気が散るので、できるだけ少ない人数にしますけど、そこに人がいて見つめていることでしか生まれない演技がある気がして。それは木村さんが言ったことと通じるものがある気がしますね。監督がモニターの前にいるか、俳優を直接目で見るか、 でも全然違ってくるんです。

今泉作品の魅力

——なるほど。現実のリアルと映画のリアリティは違いますもんね。木村さんからご覧になって、今泉作品の魅力ってどんなところでしょうか?

木村:『アンダーカレント』は今泉さんと出会う前に、初期の作品を観ていた時のような感じで観られたというか。演出しているところ、してないところの「見切り」っていう言葉をまた使っちゃうけど、いい意味での見切りみたいなのをすごい感じました。監督の意志でコントロールし切れないことを受け入れるっていうか、ある種見守る姿勢で眺めているシーンが結構あるなと思ったんです。それが監督の初期の作品で「いいなあ」って思ったところなんですよね。『アンダーカレント』は2人の会話シーンが多い映画でもあるので、特にそういうところを強く感じました。

今泉:「見切り」っていうのは、どこまでネバるか、でもあると思うんですよ。自分が頭の中で思っているものになるようにすべてコントロールすべきなのか? これ以上、テイクを重ねても何も出ないんじゃないか? みたいなことも含めて。だから、この作品の感想で「見切り」ということを言われるのは、あまり人に見られたくない部分を見られた気がして、けっこうエグいというか(笑)。

木村:いや、僕は完全に褒め言葉として言ってますよ。

今泉:もちろん、そうなんですけど、なんでそんなにわかるの?っていうのが怖い。木村さんと出会ったきっかけって、僕が『アジェについて』っていう舞台をゴールデン街の劇場で演出した時に、木村さんがお客さんとして来てたんですよ。そのあと、木村さんがTwitterに舞台の感想を書いたのを読んで木村さんにスチールをオファーしたんです。その感想というのが、「面白く観たけど、笑いに関しては作り手が目指したところまで持っていけてないんじゃないか」みたいなことで、「それ、バレる?」と思って(笑)。だから木村さんと仕事をするきっかけって、木村さんの写真じゃなくて言葉なんですよね。今回の映画に関しては自分自身わかってないことが多かったので、全部コントロールしようとは思わなかったんですよ。自分より役者さんの方がわかっていることもあると思ったし。だから、今までの映画で一番理解できてないかもしれない。

木村:監督がすごく悩んでいるのはなんとなく伝わってきました。でも、役者に委ねるというのは、役者を信頼していないとできないことだし。

今泉:もちろん、全部投げているわけではないですけどね。でも、「それは絶対違う」というのはわかるし。

——これまでの作品と比べて、一番わからなかった理由というのは、なんだったんですか?

今泉:まず、原作のすごさ。あと、原作のテーマが「わかる/わからない」じゃないじゃないですか。

木村:この原作を「わかりました」って言える人って、まずいないんじゃないですか。

今泉:この原作って、これまで何度か映像化の話があったけど、作者の豊田(徹也)さんは断ってきたそうなんです。僕が初めて豊田さんに会って話をした時に、「この漫画って映画になって面白くなると思いますか?」って聞かれたんですよ。俺は「なります!」って言える人じゃないから、「ほんとですよね。すごく難しいと思います」って言ったから、豊田さんは信頼して任せてくれたんじゃないかと思うんですよね。こういう、深いというか重いテーマを真正面からやったのは久しぶりだから、早くいろんな人の感想を聞いてみたいです。多分、賛否両論出てくると思うし。

——公開が楽しみですね。監督も木村さんもヴィジュアルの表現に関わられていますが、映画と写真では大きな違いもあります。今泉監督から見た写真の良さ、木村さんから見た映画の良さがあれば教えてください。

今泉:写真は、その一瞬が撮れたらいいっていうところが良いですよね。その一瞬を撮るっていうのが、めちゃめちゃ大変なんだろうけど。例えば、こういう取材で撮影時間が10分だったりすると、撮られながら、こんなにたくさん撮れるんだって思うんですよ。映画だったら段取りしている間に10分過ぎてしまう。そう思うと映画って贅沢ですよね。写真とか、お笑いもそうですけど、今起こっていることがすぐに形になる。そこが強みかな。

木村:映画には時間の前後が映ることが魅力的に感じます。自分は写真をこれからもやっていこうと思っているので、写真でそれができないかなって考えているんです。写真は「あ」っていう瞬間しか撮れないけど、その1枚で「ああ」みたいなものが写せないかしら、みたいなことを考えている。それって、映画への羨ましさみたいなところからきていると思います。

今泉:映画を撮ろうとは思わないですか?

木村:スチールで映画に関わるまでは撮りたかったんですけど、関わり始めてからは無理だなって(笑)。

今泉:いや、それは木村さんが映画の現場を見ているからで、そういう撮り方じゃないようにすればいい。木村さんがやりやすい現場を作ればいいんですから。

木村:それができるといいですけど。

——監督は写真を撮ったりは?

今泉:まったく撮らないですね。携帯でも撮らないし、自分の子供を撮ったりもしない。

木村:そうなんですか。

今泉:いい写真が撮れないんです。自分が撮ったものを見ても、全然撮れてねえじゃん!って嫌になっちゃう。反省するのは映画で十分ですよ(笑)。

Photography Tameki Oshiro

映画『アンダーカレント』

■『アンダーカレント』
銭湯の女主人・かなえ(真木)は、夫の悟(永山)が失踪して途方に暮れていた。そこへ堀(井浦)と名乗る謎の男が現れ、住み込みで働くことに。友人の勧めで探偵・山崎(リリー)と悟の行方を探すことになったかなえは、夫の知られざる事実を知り、やがて自分自身の心の奥底に触れることに……。

10月6日より全国公開
出演:真木よう子、井浦新、江口のりこ、中村久美、康すおん、内田理央、永山瑛太、リリー・フランキー
監督:今泉力哉 
音楽:細野晴臣
脚本:澤井香織 今泉力哉 
原作:豊田徹也『アンダーカレント』(講談社「アフタヌーン KC」刊) 
撮影・照明:岩永洋 
特写:木村和平
企画・製作プロダクション:ジョーカーフィルムズ 
配給:KADOKAWA
©︎豊田徹也/講談社 
©︎2023「アンダーカレント」製作委員会
https://undercurrent-movie.com

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今泉力哉 × 城定秀夫 気鋭の映画監督が異色のコラボ 新たに“L/R15”を始動 https://tokion.jp/2021/06/19/rikiya-imaizumi-hideo-jojo/ Sat, 19 Jun 2021 09:00:41 +0000 https://tokion.jp/?p=39740 今泉力哉監督と城定秀夫監督が、コラボ。お互いに脚本を提供しあい、それぞれがその脚本を元に監督を務める。

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映画『愛がなんだ』や『his』『あの頃。』『街の上で』などを手掛けた今泉力哉監督と、Vシネマ・ピンク映画界で活躍し、2020年には『性の劇薬』『アルプ ススタンドのはしの方』などを手掛けた城定秀夫(じょうじょう・ひでお)監督がコラボし、新たなプログラムピクチャー“L/R15”を始動。お互いに脚本を提供しあい、それぞれがその脚本を元に監督を務め、R15+のラブストーリーを2本制作する。

監督:城定秀夫が、脚本:今泉力哉によるL/R15のL=映画『愛なのに』は、古本屋の店主と、店主にプロポーズする女子高生、店主の憧れの女性など、一方通行の恋愛が交差し二転三転する先の読めないラブコメディ。

一方、監督:今泉力哉、脚本:城定秀夫によるL/R15のR=映画『猫は逃げた』は、飼い猫“カンタ”をどちらが引き取るかで揉める離婚直前の夫婦と、それぞれの恋人の話。1匹の猫と愚かで不器用な4人の男女によって繰り広げる異色の恋愛狂騒劇となっている。

“L/R15”の始動にあたって、城定監督は「いまや日本を代表する天才映画監督、今泉力哉氏とのコラボ!……って、こんなヤバい企画誰が考えたのでしょう? プレッシャーで吐きそうになりつつ、自分らしい映画を撮るしかないと思い至ったわけですが、油断すると、自分らしい映画ってなんだ? 自分とはいったい何者だ? なぜ自分は自分なんだ? 映画ってなんだ? という無限問答に陥り、また吐きそうになります。とにもかくにも、頑張っておもしろい映画作ります!」とコメント。

今泉監督も、「城定監督と一緒になにかやりませんか? と言われて、ぜひ、と即答しました。私の脚本を城定さんが撮り、城定さんの脚本を私が撮る。めちゃくちゃプレッシャーではありましたが、それはそれは好き勝手に脚本執筆しました。きっとお互いに。城定さんが書いてくれた脚本には猫が出てきます。猫!撮影、大変だ!と思いながらも猫とたくさん向き合いました。そしてその物語には、どこか懐かしさをおぼえるとともに、城定作品に滲む人間の優しさや愚かしさなどがあちこちに垣間見えて、とても惹かれました。ご一緒してみたかったキャストやスタッフとの撮影を無事に終えて、今は仕上げの真っ最中です。楽しい映画になりそうです」とコメントする。

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ありふれた恋愛、変わりゆく街、成長しない主人公――『街の上で』からひもとく、今泉力哉の映画作り https://tokion.jp/2021/04/10/rikiya-imaizumis-over-the-town/ Sat, 10 Apr 2021 03:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=27626 約1年の延期を経て公開された『街の上で』。激変する下北沢で変わらない思いを胸に生きる主人公を描く同作から、今泉監督の映画作りに迫る。

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今泉力哉監督は、『愛がなんだ』や『his』などで恋愛映画の名手と称される一方で、今年2月に公開された『あの頃。』では男子の青春映画に挑戦した。コロナ禍により公開が延期されていた『街の上で』は、再開発により激変する東京・下北沢を舞台に、恋人に振られた青年・荒川青(若葉竜也)の日常を描く群像劇。この映画を入り口に、“恋愛映画”“下北沢”“役者”“監督自身の恋愛観”の4つのキーワードから今泉監督の映画作りをひもといていく。

「そこらへんに転がっていそうな」恋愛を描く

――今泉監督は数々の恋愛映画を作ってきましたが、作品毎に「今回は恋愛のこんな側面を描きたい」というテーマを持って臨むものですか?

今泉力哉(以下、今泉):毎回同じものを作っても仕方がないよね、というくらいです。『街の上で』は「下北沢で撮る」というベースがあったので、変わっていく街と、変わらない気持ちや思いを対比させたいという意図がありました。浮気した恋人に振られた主人公が、下北沢でいろいろな女性に出会うけれど、元恋人を思い続ける。そこで、彼女の浮気相手が誰なのかを突き止めるような能動的な話ではなく、変わらない思いを引きずりながら日常を過ごす主人公を撮りたいと思いました。

――『街の上で』では特に「恋愛の滑稽さ」みたいなものが際立って見えました。

今泉:自分で脚本を書いているものでは、“笑い”はずっとやっている意識があって。今回は恋愛面も含め、笑いのウエイトが上がっていた気がします。主人公の青が若葉竜也さんに決まる前は、アキ・カウリスマキ作品の主人公のように、寡黙というか、ほぼせりふをなくそうと思っていたんです。不器用で、恋愛がうまくできない受け身の主人公が、周りにいる変な人達に動かされる、オフビートな空気感のコメディを作りたかった。だから『街の上で』では、主人公が変なカップルや警察官と遭遇した時の困惑や気まずさを重点にした、笑いのシーンを増やしていきました。笑いの部分って、狙っているように見えたりコントっぽくなりそうになったりしたところは、今までは脚本に書いても削ったりしてたんです。でも今回は、共同脚本に入ってくれた大橋裕之さんにジャッジしてもらって、「ここはおもしろいから大丈夫だよ」と言われたところは残しました。

――恋愛映画を作る際に、大事にしていることはありますか?

今泉:いろんな映画があっていいと思うんですけど、俺がオリジナルでやる時は美男美女が現実味のない恋愛をする映画ではなく、極力そこらへんに転がっていそうな、「自分の話」になる恋愛にしたいという思いはあります。だからせりふは、普段言わない言葉は書かずに、今こうして喋っているような言葉をベースに作るようにしています。そうすることで、逆に決めぜりふっぽい言葉もより効果的に響いたりするので。

――『街の上で』には、微妙な距離感の男女が何組も登場します。付き合っているのか、引かれあっているのか、異性の友達なのか、ただの知り合いなのか、といったような。

今泉:恋愛関係ではない男女が、お互いの昔の彼氏や彼女の話だけをする時間っていうのには以前から興味がありました。そこに恋愛感情があるのかどうか、みたいな曖昧な距離や時間というものを描いてみたかったんですよね。

――青が城定イハ(中田青渚)の部屋で夜通し話すシーンですね。お互いに恋愛に発展する予感はないけれど、客観的に見るとそうなるかもしれないという可能性を孕んだ時間を楽しんでいる。

今泉:学生映画の監督の高橋町子(萩原みのり)から映画に出てほしいと言われた青が、友達から「それは告白だ」と言われて、その気になってしまう。青は女性に対して下心はゼロではないけれど、恋愛に進展せず、女性がバトンタッチしていく脚本のイメージはありました。通底しているのは、元恋人をずっと引きずっていることですね。

――導入は青が恋人に振られるシーンです。青の部屋での会話劇に、今泉監督らしさを感じました。

今泉:別れを拒否する青に、川瀬雪(穂志もえか)が「じゃあ付き合ってるって言い続けていいよ。私は別れたと思って過ごすけど」というせりふは、自分で書きながら「何を言ってるんだこいつは」と思いました(笑)。こういうせりふが書けた時は、とても嬉しくなりますね。ただ、けっこうシリアスな別れ話のシーンだから、笑っていいのかどうか判断が難しいみたいで、今までの先行上映や試写でのお客さんの反応はさまざまです。その後の青が働く古着屋での謎のカップルのやりとりから、明らかに笑いが起き始めました。

変わりゆく下北沢にいる、変わらない主人公

――監督にとって、下北沢はどんな街ですか?

今泉:福島県出身で、大学は名古屋、その後も大阪に住んだりとウロウロしてたんで、東京に来るまでは単純に憧れの街でした。下北沢トリウッドという映画館にも憧れていましたね。東京では(下北沢近くの)笹塚に住んでいたこともあって、ちょこちょこライヴとかを観に行きましたけど、行きつけの店ができることはずっとなくて。今は都内から離れて遠くに住んでいるのですが、逆に離れてからのほうが、都内で仕事がある時に下北沢付近に住む知人宅に泊まる機会が増えて、下北沢に入り浸るようになりました。劇中に出てきたバー「水蓮」や居酒屋「にしんば」など、決まった店によく行くようになってやっと深く関わるようになった感じです。

――下北沢が再開発で変化することに対してはどう思っていましたか?

今泉:昔のほうが絶対に良いとは思わないけれど、やっぱりきれいになった南口は、昔を知っている自分からするとダサいと思っちゃいます。でも、これから下北沢に触れる若い人は、いつかまた街の風景が変わることがあったら、今の下北沢を懐かしむのかもしれない。劇中でも話していますが、それぞれに懐かしむ時代が違うのはいいのかなと思いますし、漫画や小説、映画など、いろいろな作品の中にその時々の下北沢が残るのはやっぱりおもしろいと思います。そういう意味で、この映画はちょっとメタ構造になってるんですよね。『ざわざわ下北沢』や、劇中でも触れた魚喃キリコさんの漫画とか、下北沢を舞台にした素晴らしい作品がいくつもあるので、「変なものを作れない」というプレッシャーもありました。

――カルチャーの聖地ですもんね。

今泉:そんなところで自分が作るのはめちゃくちゃ怖かったですし、どちらかというと部屋の中で喋る人物を撮ってきたので、「下北沢で撮ってください」と言われた時は「え? 街とか撮ったことない……」という不安や葛藤がありました。でもだからこそ、街全体を網羅しようとせずに、自分が知っている場所だけで撮ると決めて、自分の中で整理をつけていきました。音楽の使い方も、下北沢で撮るということが影響していると思います。青がライヴを見るシーンは、自分が何度も行ったことのあるTHREEで、自分が好きなマヒトゥさん(GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポー)に出てもらいました。結果、自分でも気に入った映画が撮れましたし、『ざわざわ下北沢』と比較している人の感想を読んで、安心したりもしています。

――青は、恋人との関係にしても、学生映画へ参加した時の状況にしても、居場所がなくあまりうまく立ち回れない人に見えました。しかし、その場には確かにいた。自分語りで恐縮ですが、この青の立ち位置に、下北沢における自分自身が重なったんです。私も学生時代からちょくちょく古着屋やライヴハウスに行っていたけれど、行きつけの店ができないまま疎遠になりました。下北沢という街の年表を作るなら、私はモブであり、よそ者であり、いなくても成り立つ存在です。『街の上で』からは、「街にいたけれどいなかったことになっている人」の存在が感じられて、下北沢の登場人物になれなかった自分も疎外感なしに観ることができました。

今泉:俺も普段、どこにも属せない側の人間なので、わかります。『愛がなんだ』という映画は、主人公が成長する話ではなくて、うまくいかないまま行き着くところまで行っちゃう話でした。そういうふうに主人公が成長しない物語って、ある場所に馴染めない人や、自分の恋愛がうまくいってない人がその物語に触れた時に、自分自身がそのまま肯定される時間になると思うんです。つまり、そのお客さん自身が主人公たりえるというか。そのことには、作っている時から意識的でした。だから今回も、青という人を、普段だったら日が当たらない、どこにでもいる人にしようという意識はありました。青は俳優もミュージシャンも何も目指していない、ただ古着屋で働いて、本を読んでいる人。それって本来は主人公の周りにいる人なんですけど、そういう人が主人公たり得る映画は、今後も意識的に作っていくつもりです。

撮影現場における役者との関係性

――青が関わる4人の女性が、それぞれに個性的でとにかくかわいくて、きれいに映っています。どうやって女優を選んでいるんですか?

今泉:単純に好みですよね(笑)。男性もですけど、女性に関しては特に。すごく有名な役者でも俺が苦手な人は、俺が撮っても魅力的にならないので、その方を魅力的に撮れる人とやったほうがいいと思います。俺が撮れば、すべての人が魅力的に撮れるってわけではないですよ。

――きれいに撮る監督なりのセオリーはありますか?

今泉:あまり演出はしないってことですかね。ただでさえ魅力のある人を選んでいるから、本人がなるべく好き勝手にやったほうが、魅力が出るのではないかと。方法としては、演じる時に1回任せます。女優に限らず、俺の映画で俳優が魅力的に映っているのだとしたら、本人の考えややろうとしていることを、なるべく受け入れようとしているからだと思います。

――言われたことをなぞろうとする人よりも、自主性のある人のほうがいい?

今泉:そうですね。まあ、言われたことっていうか、俺、何も言わないので(笑)。だからといって「自分が、自分が」となる役者が一番苦手なんですけど(笑)。自分を押し出すのではなく、作品に対するお芝居のアイデアを持っていることが大事なんですよね。現場ではシーンごとに段取りをして、カメラマンとカット割りを決めて、テスト、本番という流れがあるんですけど、段取りの時は基本的に何も言いません。「1回やってみましょうか」で「よーい、スタート」。例えば、2人で芝居するシーンの場合、座る位置とかも極端な話、本人達で決めてほしい。魅力的な俳優って、「ここ、立ってていいですかね?」「じゃあ俺は座ろうかな」と、自分でやってくれるんですよ。そのアイデアが俺の考えと一致していればそのまま撮りますし、俺の発想よりもおもしろければもう最高ですよね。先に指示して、おもしろくなる可能性をつぶしたくないのです。

――そういう作り方にカメラマンが対応してくれる。

今泉:そうですね。あと、今回もご一緒した、今まで自分の映画を一番多く撮影している岩永さんは人物との距離感が近くないんですよね。俯瞰までとはいわないけど、ワンショットを心地よく見られる。俺、レンズがどうこうとか全然わかんないんですけど、その感覚が自分に合ってると思います。

――若葉さんを筆頭に、何度も起用される役者さんが増えつつありますね。

今泉:安心感があるので、知らない人でどうなるかわからないよりは同じ人で、というのはあります。ジョン・カサヴェテスなど、自分の好きな映画監督が同じ人を繰り返し起用していることに影響を受けているのかもしれないです。

恋愛そのものをどう見るか?

――最後の質問です。監督は恋愛を美しいものと捉えていますか? それとも?

今泉:美しいものだと思ったことはあんまりないですねえ。基本的につらいものですよね。俺は全然モテたりもしなかったし、付き合ってもうまくいかなくて、奥さん以外の人と1年間もったことがないんです。彼女と2人で過ごした楽しい時間の記憶がほぼない(笑)。1人でいる時間のほうが精神が安定してるんですけど、やっぱり寂しいから彼女が欲しくなって、つらい片思いをして。彼女ができたらできたで、今度は精神が不安定になり、1人に戻りたくなって別れを切り出して……の繰り返しでした。熱量をもって夢中になれたらいいんですけど、付き合い始めると、「これはおもしろいことになってるなあ」と俯瞰してしまう自分がいたりして。最低ですよね。最低ついでに言うと、付き合って振られたことがないんですよね。付き合った相手は全員振ってます。ただ、恋愛はつらくてきついけれど、それが嫌だというよりは、その時間へのいとおしさがあるので、映画にしたくなるんだろうなと思います。

今泉力哉
1981年生まれ、福島県出身。2010年『たまの映画』で長編映画監督デビュー。2013年『こっぴどい猫』がトランシルヴァニア国際映画祭にて最優秀監督賞受賞。翌年には『サッドティー』が公開され、話題に。その他の長編映画に『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018)、『愛がなんだ』(2019)、『アイネクライネナハトムジーク』(2019)、『mellow』(2020)、『his』(2020)、『あの頃。』(2021年)など。

Photography Kazuhei Kimura

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今泉力哉×劔樹人 映画『あの頃。』で描く「アイドルに捧げた大人の青春」 https://tokion.jp/2021/02/19/talk-about-the-film-in-those-days/ Fri, 19 Feb 2021 06:00:06 +0000 https://tokion.jp/?p=20564 劔樹人のコミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』が映画化された。今回、公開に合わせて映画で監督を務めた今泉力哉と原作の劔による対談を行った。主役を演じた松坂桃李のことからハロプロ愛まで語ってもらった。

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『あの頃。」の監督を務めた今泉力哉(左)と原作者の劔樹人

2014年、劔樹人(つるぎ・みきと)による自伝的コミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』(イースト・プレス)が気鋭の映画監督・今泉力哉によって映画化された。同作では、2000年代初頭、大阪・阿倍野を舞台に、モーニング娘。や松浦亜弥など、「ハロー!プロジェクト」のアイドルに青春を捧げた劔やその仲間達とのリアルな様子が描かれている。

映画『あの頃。』では、主役の劔役を松坂桃李が演じることでも話題に。ほかにも、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、そして本作が映画初出演となるお笑いコンビ「ロッチ」のコカドケンタロウなど、幅広い分野で活躍する俳優陣が集結。強烈なキャラクターを熱演している。

原作をどう映画化し、作品を通してどんなメッセージを伝えたいのか。監督を務めた今泉と原作の劔による対談から探っていく。

劇中の松坂桃李はまさに劔樹人だった

――劔さんが映画をご覧になった感想から聞かせてください。

劔樹人(以下、劔):まず言えるのは、監督、脚本の冨永昌敬さん、スタッフのみなさんに原作を大事にしていただいたということで。スティーヴン・キング的な、原作者が映画に不満だとかそういうのが全然ないんです。

――『シャイニング』とは違う(笑)。

劔:自分で作り直したいということになりませんでしたから(笑)。むしろ人に届けづらい作品をブラッシュアップしていただきました。本当にありがたいですね。それに尽きます。

――劔さんはかなり撮影現場に入られたんですよね。

劔:そうなんですよ。その時は普通のつもりだったんです。「明日もいらっしゃいますか?」と聞かれるので、「じゃあ明日も」みたいな感じで行ってたんですけど、あとになってあんなに原作者が現場にいることは珍しいと言われるので、だんだん恥ずかしい気持ちになってきちゃって(笑)。楽しいから行っていただけなんですけど、それもどうかと思いますよね。

今泉力哉(以下、今泉):これが例えば小説とか漫画の大先生みたいな人が毎日来たらすごい空気になると思うんですけど(笑)。むしろ劇中のイベントのセリフとかも書いてもらったりしたし、現場にいてもらうと、困った時に「ここ、変じゃないですか?」と確認できたりするので、原作者というより監修みたいな感覚もありました。

劔:当時のハロプロの状況や友達のことは僕にしかわからないことなので、そういう時に役者さんや監督から聞かれたら答えたりしていました。

――劔さんが現場に行くことで、松坂桃李さんが劔役を演じるにあたって特徴を観察するということもあったみたいですね。

劔:松坂さんはそうおっしゃってますよね。

――すでに映画を観た方がよく言うことですが、松坂さんが劔さんにしか見えないと。

劔:僕が言うのもなんですが、そうなんですよね(笑)。「松坂桃李がキモかった」みたいな感想も見るんですけど、それは単純に僕が気持ち悪かっただけですから。一般的なハロプロファンを表現しているわけではなくて、僕のことを表現しているので。松坂さんの演技が評価されるほど僕に刺さってくるんです(笑)。

今泉:劔さんと松坂さんの話をすると見た目のことでイジられることが結構あるけど、もしかしたら中身も似てるのかな。

劔:本当ですか!?

今泉:どちらかというと劔さんのほうがしっかりしてるのかな? そんな気もします。

劔:ああ、わかります。松坂さんは根がハンサムな感じじゃないというか。

今泉:普段は普通の人なんですよね。フラットというか。いい意味で。

劔:人からどう見られるとかを意識してないんでしょうね。だから僕みたいなのにもスッとなじめるんです。自分と松坂さんは近いと思うんですけど、映画に出てくる友達に関しては、劇中のキャラクターになっているなと感じました。

原作ものならではの難しさ

――今泉監督は、どの役者を誰役にするかのイメージが立ち上がってくるまでに時間が必要だったと言っていましたよね。

今泉:劇中の劔とかコズミンみたいにわかりやすい役割がある人は迷わなかったんですけど、最初は西野、イトウ、ナカウチ、ロビとかに関しては、役者さん達が達者ということもあって、誰が誰をやるというキャラクター付けが自分の中で明確になってなかったんです。この人ならどっちでもいけるのかなと思っちゃったり。でも、蓋を開けてみれば今の配役を入れ替えるのは想像もつかないから、これでよかったのかなと。人数の整理もあるので、実存する2人の人物を1人に投影している部分もあったりして。今回、「NO MUSIC, NO IDOL!」のポスターがあるじゃないですか。あそこには映画で省いてしまった人も劔さんが描いてくださっていたので、よかったなと思いました。

劔:タワーレコードさんのほうから原作のキャラクターを描いてほしいと言われたんです。

今泉:今回に限らずですが、登場人物みんな出すというのもいいけど、パンクしちゃわないように整理しないといけないことはありますよね。

――原作を読むと登場人物だけじゃなくて複数のエピソードもまとまったりしていることがわかって、改めて見事な脚本だと思いました。冨永昌敬さんとどんなやりとりをしてできていったのでしょうか。

今泉:まず大きな構成を冨永さんが作ってくれて、そこからでしたね。この作品にかかわらず、原作ものの脚本を自分で書くことはしないようにしていて。取捨選択や構成の能力というのは、オリジナルで物語を生み出すのとは別の力だと思うんです。俺は小さいエピソードが好きなので、自分でやり出すと捨てられなくて縮まらなくなっちゃう。2つの話をまとめるにしても、こことここの間には逡巡があるよな、とか、それをまとめるのは元の作品に失礼なんじゃないか、とか思って何もできなくなったりするんです。それを冨永さんがやってくれて、そのあと詰めていきました。最初のほうは劔のうだつの上がらない描写がもっと丁寧に書かれていたんですよね。職場の描写もありましたし。ただ、全体の温度感とかバランスを見ながら(シーンを)削っていった感じです。

劔:監督は細かいエピソードを大事にしてくれようとするんですよね。

今泉:だって西野さんがその後、クイズ王になってるとか、入れたくなっちゃうじゃないですか(笑)。それぞれのメンバーの現在の様子を点描で入れようとしたときが一瞬あって。『スタンド・バイ・ミー』みたいな(笑)。でも、それをやってるとウェイトがすごいことになる。あと、実際問題、クイズ王のシーンってどうやるんだ、みたいな。入れてもおもしろかったかもしれないですけどね。

劔:Netflixで10話のドラマとかだったらできるのかもしれないですけど(笑)。

今泉:たしかに。あとは大阪から上京してからの劔さんをどれだけのリアリティーでやるのかというのも意外と難しくて。劔さんがやっているバンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」のことや、神聖かまってちゃんのマネージャーだったこともやりだすとしたら……みたいな。音楽事務所の仕事だと、自分が担当しているアーティストの取材に立ち会うとか、そういう描写になるじゃないですか。でも、その仕事のさまってどう伝わるんだ? みたいなことを考えたり、ロケハンしていく中で、今の形にまとまっていった感じですね。

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*この下に記事が続きます

見逃せない今泉監督の細かいこだわり

――ディテールへのこだわりも今作の見どころの1つだと思います。劔の部屋のエアコンに松浦亜弥「Yeah!めっちゃホリディ」のミュージックビデオと同じように「故障だってさ。」と書かれた紙が貼ってあったり。

劔:ああ、よくぞ(笑)。

今泉:嬉しいですね。初見で気付いてくれる人は少ないんじゃないかと思います。原作のなかに描いてありましたよね。

劔:はい、さりげなく。僕も当時、誰か気付くかなと思って描いてました。「Yeah!めっちゃホリディ」をちゃんと見てないと気付かないんですよね。

今泉:あのシーンも編集で飛ばせるっちゃ飛ばせるのでカット候補になっていたんですけど、これがどうというわけではないけど部屋があやや化した瞬間はあったほうがいいと思いますと話したのを覚えてます。

劔:文字も似た感じになってましたよね(笑)。何回も観ると細かいことにたくさん気づくと思います。

――今泉監督らしさも随所に見られます。劔が初めて仲間の家に行った時など、どこまでがセリフなのかなというやりとりはまさに今泉節を感じました。なかなか次のシーンにいかずに、素のような顔が垣間見れる瞬間があって。

今泉:一応、セリフがあるにはあるんですけど、間のごちゃごちゃの繋ぎの部分は役者さんの芝居です。ぶっつけで一発撮りではなく、何回かのリハーサルの中で役者さんがやったことを「それもおもしろいですね」と採用していく感じでした。それで言うとシチューのくだりも終わりをどうするか決めずに撮ってますね。

――監督も予期しないものを撮りたいという思いがあるのでしょうか。

今泉:それもありますし、さっき「どこまでがセリフなのか」と言われたみたいに、現実世界と近づくといいのかなというのもあって。作り物度が下がるし。ただ、一歩間違って素に戻り過ぎると役から離れてしまう危うさはあるんですけどね。ああいうシーンはテイクを重ねて固めていく時もあれば、一発でしか撮れない時もあります。現場で1人にだけ台本にないセリフをぶっこむ時もあります。今回はそんなになかったんですけど、準備を丁寧にして、役が固まっていく人を崩す時にたまにやりますね。どうしても決まったこと以上が出てこなくなっちゃうという時にやったりします。

『あの頃。』をきっかけに、今のハロプロを知ってほしい

――題材となったアイドルとファンについての話もお聞きしたいと思います。

今泉:劔さんはあややにハマる前、何かにハマったことはありますか?

劔:音楽とかはもちろんありますし、あとはグラビアアイドルが大好きだったんですよ。

今泉:ああ。それはなかなか表立って話さないことですよね。なんか恥ずかしくて。俺も当時は何人か好きな人がいましたね。杏さゆりさんを筆頭に。

劔:僕はそんなに隠してなかったんですけど、優香さんとか眞鍋かをりさんとか。めちゃくちゃチェックしてました。懐かしいなぁ。

――時とともに好きな対象が変わるじゃないですか。熱量が変わっていく寂しさというのも当然あって。

劔:わかります。熱量が変わってない人間からすると寂しいんですよね。最近興味ないのかな、みたいな。流動的なものじゃないですか。僕の知り合いでも急にハロプロに熱を持つ人がいれば、最近はNiziUが好きなんだなという人もいたりするし。

今泉:離れていく時の理由って、それだけ熱量を持っていたからだと思うんです。思い入れがあるからこそ、変わっていくことについていけない人もいるだろうし、変わることを否定的には捉えていないけど、これ以上増えるとちょっと覚えられないぞ、みたいなこともある。思い入れがあればあるほど、一番推してた人が卒業するとか、距離ができたりするそれぞれのきっかけはあるのかなと思います。

――きっと誰しもがそういう経験があるので、この映画もハロプロ関係なく広く共感できるのかなと思うんです。

今泉:この原作って、いま現在から見れば、ハロプロの歴史の中でも、ある過去の1つの時代を描いているということになるので、あの時が一番良かったと見られるこわさがあって。最初からそうはしたくないとずっと言ってました。でも実際、みんなが離れていったり、劔達が東京に行ったりしますよね。脚本上もそうなんですけど、後半はあまりハロプロの曲がかからないので、それで2008年前後から10年あたりのハロプロがあまり良くないように見えちゃったりしたらこわいな、とか。実際のコズミンは当時、Perfumeを聴いてたという話ですし。

劔:ですね。

今泉:タイトルがもう『あの頃。』ですし、過去は良かったね、というのが前面に出て勘違いされる危険性に関しては、俺がハマったりオタクだったりしてこなかったぶん、めちゃくちゃ気を使ったかなと思います。

――今が一番楽しいというメッセージが込められた作品でもありますよね。

劔:そのメッセージに辿り着いていただければと思います。

今泉:あとは単純に、映画をきっかけにして、現在のハロプロのライブを見に行くのがいいと思うんです。それが補完というわけじゃないけど、映画では現在のライブは描かれていないので、そっちに関してはいまのハロプロを見に行ってもらって、という。そういえば、最近、YouTubeでハロプロの番組とかを見ていて。変遷を知っていくと、こんなに変わることってある? というくらいメンバーも変わっているんですよね。ああいうのを見れば見るほどに道重(さゆみ)さんのすごさを知ったり、あるタイミングあるタイミングの新規メンバー加入時に(モーニング)娘。の平均年齢がめちゃくちゃ下がったことを知ったり。いま、どんどん詳しくなってるんですよね(笑)。後藤真希さんのYouTubeで柏木由紀さんとコラボしてるのを見て、ネットサーフィンの末、最終的にはハロオタの指原莉乃さんと峯岸みなみさんのコラボ動画にたどり着いて朝を迎える、みたいな(笑)。=LOVEのMVもいいし、ハロプロに戻って、BEYOOOOONDSもやっぱいいな、みたいな。

――このタイミングで監督がその方向に(笑)。

今泉:不思議ですよね。どういうハマり方なんだという。この間、映画『のぼる小寺さん』のトークゲストに出て。

――元モーニング娘。の工藤遥さん主演の。

今泉:はい。朝の戦隊もの(『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』)にモーニング娘。のOGの方が抜擢されたというのが最初の認識だったんですけど、最近、過去の番組とかを見てたら、工藤さんが当時まだ13歳とかで。ええ!? って驚いたり(笑)。その程度の知識のやつが監督したのかと思われたら申し訳ないんですけど、作ってる時は劇中の時代のことを認識するので精一杯だったので、最近になってわかったことも多いんです。

――はからずも監督がそうしているように、今回の作品からさかのぼったりする人が増える可能性も大いにありますよね。

劔:それに期待しています。僕にできることはそれだけなので。

――劔さんが10年ほど前に「今、自分が応援すべきは、あややなんだと。」とブログで決意したじゃないですか。それが巡り巡って、今泉監督が映画化することになり、結果的に劔さんは大きな規模で応援することになっているというのがすごい話だなと思います。

劔:本当にそうですよね(笑)。当時は松浦さんにもう一度表舞台に出てもらうための活動をしたりしていたんですよ。企画書持って事務所に行ったり。それがなかなかかなわぬままだったんですけど、こういう別のかたちになったというか。

今泉:こっちはあとから乗っかってる部分もあるので不思議です。俺は原作を書いているわけではなく、いただいた話なので。でもやっぱり、ハロプロはあれだけの歴史があるのがいいですよね。後藤真希さんがあややとバチバチだった話とかもあちこちでしてるじゃないですか。そういうのもおもしろいなと思うし。……いま話していたように、この映画からさかのぼってハロプロを知りたいと思う人の第一号が俺になった可能性がありますね(笑)。

今泉力哉
1981年生まれ、福島県出身。2010年『たまの映画』で長編映画監督デビュー。2013年『こっぴどい猫』がトランシルヴァニア国際映画祭で最優秀監督賞受賞。翌年には『サッドティー』が公開され、話題に。その他の長編映画に『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018)、『愛がなんだ』(2019)、『アイネクライネナハトムジーク』(2019)、『mellow』(2020)、『his』(2020)など。2021年には、『あの頃。』の他に、全編下北沢で撮影した若葉竜也主演『街の上で』が4月9日に公開予定。
Twitter:@_necoze_

劔 樹人
1979年5月7日生まれ、新潟県出身。漫画家、「あらかじめ決められた恋人たちへ」のベーシスト。また、過去にはパーフェクトミュージックで「神聖かまってちゃん」や「撃鉄」のマネジメントを担当。数々のウェブサイトで漫画コラムを執筆するなど、音楽の領域に留まらない幅広い活動が注目を集めている。2014年にエッセイストの犬山紙子と結婚し、「主夫の友アワード2018」を受賞。2020年12月には新作コミック『僕らの輝き ハロヲタ人生賛歌』(イースト・プレス)を刊行。
Twitter:@tsurugimikito

映画『あの頃。』
監督:今泉力哉
脚本:冨永昌敬
出演:松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウほか
2021年2月19日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
https://phantom-film.com/anokoro/index.php

Photography Kazuo Yoshida

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