連載「ジャパンブランドのトリビア」 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/連載「ジャパンブランドのトリビア」/ Fri, 30 Jun 2023 12:35:43 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 連載「ジャパンブランドのトリビア」 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/連載「ジャパンブランドのトリビア」/ 32 32 連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.8 「サイクル」を通して伝えたいサステナブルなメイド・イン・ジャパン https://tokion.jp/2022/07/21/japans-brand-trivia-vol-8/ Thu, 21 Jul 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=132051 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う企画。第8回は「サイクル」 を通してサステナブルなものづくりを考えるデザイナーのcomiが登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、もの選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った、“メイド・イン・ジャパン”のものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は、「サイクル(Cycle by myob)」のデザイナーcomiがセレクター。前身のブランドからの独立、出産をきっかけに環境のことに目が向くようになり、サステナブルな服作りをテーマに掲げる「サイクル」をスタート。昔から日本に根付いている習慣や職人の手によって生まれるもの、彼女はそれこそが本来のメイド・イン・ジャパン製品だと考えている。

−−環境問題にファッションでアプローチしている「サイクル」ですが、日本と海外のエコへの意識の違いはどのようなところに感じていますか?

Comi:「サイクル」では、ペットボトルを糸にして生まれるポリエステル生地や廃棄された服を粉々にし、糸にしてから紡ぎ直した生地、自然染色の生地などのエコ生地をメインに採用しています。そういったエコ生地の文化、研究開発が進んでいるのはダントツで日本の方だと思います。今まで中国や韓国でも生産はしてきましたが、まだ向こうにはエコ生地の文化が根付いていません。最新のコレクションで使用したリネンは、完全天日干しで作られたもの。乾燥機を使わず太陽の光だけで乾かし、職人さんが手で染めた生地を使っています。手仕事だから多少ムラも出るけれど、そこがまた良い。無駄な電力を使わず、昔ながらのやり方で生地を作っているというところがブランドの思想と合致して、価格は少し高くはなりましたが、採用することを決めました。「サイクル」というブランド名にはリサイクルなど環境のサイクルはもちろん、人との繋がり、縁の意味も込められています。「サイクル」を通して、環境問題をもっと知ったり、日本の職人達のことを広めたり、きっかけやいい連鎖をたくさん作っていくことがこのブランドのミッションかもしれません。

−−アトリエで縫製をしている商品もあるそうですね。実際日本の工場での生産は多くなってきていますか?

Comi:これまでは中国や韓国で量産してきました。やはりコスト面で安いイメージがあるけれど、最近はコロナの影響によって人員不足等で工場が減っているせいか高くなっている。それなら日本で作りたいという考えに自然と変わっていきました。一番良いのは何かあったら工場とすぐに連絡が取れて、すぐに会いに行けること。海外だと荷物が届くのに2週間くらいかかったりするけれど、日本だったら1〜2日程度で届くし追跡もできる。コミュニケーションがとれることはもちろんのこと、トラブルもなくなりました。今は生地を買って、プリントしてから、3分の1ほどを、アトリエで縫製しています。最近ポップアップで発売したリメイクデニムはアトリエですべて作り、お店に納品していました。徐々にですが、完全メイド・イン・ジャパンブランドに近づいてきている実感はありますし、目指したいところですね。

天然の素材で染めた「サイクル」

染めに興味を持ち始めたのは、子どもの着なくなった服をアボカドの種で染めている動画をSNSで見てから。まずは自分でやってみようと思って、アボカドの種や玉ねぎの皮、挽いた後のコーヒー豆のかすを使って、自宅のキッチンで染め始めました。アボカドの種は、なんとピンクに変わるんです。全部捨ててしまうものだけど、ためておけば染色に使えるという楽しい発見でしたね。それから藍染めもやってみようと藍を取り寄せたり、泥染めをしてみたり。自宅のキッチンからスタートした染めを、ブランドでも大きく展開するようになると、藍染のシルクスクリーンや泥のシルクスクリーンなどを独自に開発している方と出会い、新しいデザインが生まれました。藍は自宅のプランターで育てて、そのまま染めにも使える。全部家の中で完結しておしゃれも楽しめる、楽しいエコ活動です。

蚕が生み出すシルクのストール

自然染織家の伊豆蔵明彦さんのドキュメンタリー映画を観て、蚕産業を知り興味を持ちました。映画では伊豆蔵さんが1万匹の蚕と共に制作する巨大な糸の大球体、その制作過程が描かれています。本来シルクは人の手で織りますが、伊豆蔵さんは蚕の特性を生かして、吐き出した糸がそのまま布になるという技法を生み出した人。大きな球体に1万匹もの蚕を乗せると球体を守ろうとみんなで糸を吐きながら上に上がっていく。上にたまると重さで球が回り、下になった蚕はまた糸を吐きながら上に上がっていく。それは円運動と呼ばれていて、自然の摂理で蚕の生涯を全うさせるというのが伊豆蔵さんのプロジェクト。蚕によって出来上がった球体は、草木、雨水、太陽のみで染色されていて、すべて自然界にあるものだけで完結しています。その球体の中に入ると、命の紡ぎを感じて鳥肌が止まらなくなりました。バッグとストールを持っているんですが、ストールはお腹が冷えたときに巻いたりするとじんわり温まる。着るものも食べるものも生命に支えられて生きているんだと実感します。

自然あふれる街、生まれ育った滋賀

最近、実家の敷地内にある小屋をリノベーションして別荘にしたんです。だから実家に帰る機会は、今まで以上に増えました。滋賀は自然豊かで、人も温かくて、動物も多い癒される場所。東京にいると常に頭の中がフル回転。常にせかせかしているし、追われている。自分の感情を考えられないくらい忙しい。でも家族で滋賀に帰ると、まず子どもがいつもと全然違うんですよね。まさに魂の解放! 自然豊かな場所で遊ばせるとこんな顔して笑っているんだとか、こういうことが楽しいんだとか、本当に細かい表情の変化が見れる。私自身も同じで、今こう感じているとか、実はこれが好きなんだとか、今どんなこと考えているとか、頭の中がシンプルになる。きっと大人が解放できているから、子どももそれを感じ取って解放できているのかもしれません。滋賀で生まれ育って、ニューヨークでブランドをスタートして、今東京で暮しているけど、滋賀に帰ってくると一番心が落ち着く。やっぱりここが良いと思えるかけがえのない場所です。

Comi
2020年「M.Y.O.B NYC」から独立後、「サイクル(Cycle by myob)」をスタート。「サイクル」は再生生地、リサイクル、環境汚染、人との繋がりや縁と定義し、ファッションを通して環境問題をユニークに表現していくことで何かのきっかけを生み出したいと考え活動している。
Instagram:@comi_myob@cycle_by_myob

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.7 「イト スイム」が伝えたいメイド・イン・ジャパンの細やかさと私達の原点 https://tokion.jp/2022/05/23/japans-brand-trivia-vol-7/ Mon, 23 May 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=116416 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う企画。第7回は日本生まれのスイムウェア「イト スイム」のクリエイター、風間アリス、万歳まさよが登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、もの選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った、“メイド・イン・ジャパン”のものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は、マリンスポーツを快適に楽しめる機能性と、洋服のように着られるデザイン性が魅力のメイド・イン・ジャパンのスイムウェア「イト スイム」のクリエイター、風間アリスと万歳まさよがセレクター。水着というアイテムを通して彼女達が伝えたいこと。それはメイド・イン・ジャパンのものづくりの素晴らしさはもちろんのこと、私達が生きていくために守らなければならないことにも通じている。

−−オールメイド・イン・ジャパンでスイムウェアを作っている「イト スイム」ですが、ものづくりを通して改めてメイド・イン・ジャパンの価値や魅力をどのように感じていますか?

風間アリス(以下、風間):コロナ禍もあって自分の衣食住や日本のもの、場所に着目し、改めてその良さを再発見する機会が増えました。ものづくりにおいてはもちろんのこと、文化や風習においても伝統的に伝わってきたモノがいかに環境に優しいか。原点に立ち返るような感覚というか、シンプルさと美しさの共存、自然に寄り添う方法や素材が浮き彫りになり、それこそが日本の魅力だと気 付かされました。クラフトマンシップにおいても、実体験として工場とのやりとり1つに感じる細やかさに感動することもしばしば。そのおかげで繊細で妥協のないものづくりがかない、100%満足のいく製品が生み出せると思っています。

万歳まさよ(以下、万歳):日本の良いものを応援したい気持ちも、より強くなりました。小さなことかもしれませんが、選択肢がある場合は日本のモノを選ぶようにするとか。モノづくりでは、すごく繊細で丁寧なモノ作りを得意とする工場がたくさんあるけれど、さまざまな事情で継続できない現状もある。日本の良さを絶やさないようにするには、どうしたらいいかも今まで以上に考えるようになりました。

−−ものづくりにおいて海外と日本の違い、またそのおもしろさはどんなところにあると思いますか?

風間:日本のものづくりにおいては、そこまで計算して作っているんだとか、やはり緻密さや細やかさを感じます。世界各国その土地の素晴らしいクラフトはあり、比べてしまうと少しざっくりとした印象を受けます。一方でそれが良さでもあると思うんですけどね。

万歳:センスにおいても感じます。水着を作っているので、海外のブランドもたくさん見てきましたが、日本のブランドは、ちゃんとおしゃれで機能面でも作り手の気配りが感じられる。もちろん海外のブランドも高品質ですし、使い勝手をきちんと計算して作られているけど、どこか見た目を重要視している印象があります。見た目のおしゃれさと機能面。どちらも同じクオリティーを保っていて、イコールであるところに日本人の完璧さを感じます。

海と街をつなぐメイド・イン・ジャパンのスイムウェア

マリンスポーツといったアウトドアのシーンで思いっきりアクティブに動いてもずれなくて、おしゃれな水着が欲しいという思いから始まった「イト スイム」。ただ水着を作るというよりも水着という媒体を通して自然環境のことや、日本のものづくりの価値などを伝えることで、生活や思考の原点に立ち返ってみようという思いも込めています。今季から日本ならではの技術や伝統を取り入れたシリーズをスタートし、藍染めプリントのアイテムを作りました。藍染めは、日本最古と言われる染色法。国内有数の産地である徳島県の海陽町にあるin Between Bluesの永原レキさんを訪ね、自分達の手で染めて水着の柄を作りました。染色した後は、工房の目の前にある海で藍を洗い流します。化学染料だと汚染になってしまうのでできませんが、藍は天然染料だからこそできる。永原レキさんは藍師であるだけでなく、サーファー仲間でもあり、地域の自然や魅力を伝える活動にも取り組んでいます。藍のことだけでなく、土地の歴史や文化など知識豊富な彼の話を聞いているうちにすっかり暗くなってしまい、陽が沈んだ月明かりの下で海に入り洗い流しの作業をしました。それもまた幻想的でいい思い出です。

生活をより豊かにしてくれる器

現在、私達の生活の拠点が海に近い田舎町ということもあって、食事は基本的に家で作って食べています。自然豊かな恵まれた環境なので周りには農家さんも多く、購入する食材のほとんどが地元産のもの。地産のものであることや無農薬野菜など、食材選びにもこだわるようになりました。食にこだわり始めると、器にも自然と目が向くように。写真右の2つは、ちょうど1年前陶芸体験をしようと、長柄町の六地蔵という地域にある備前焼作家さんのところへ行った際に購入したもの。ここでは素材である土づくりから、薪集め、轆轤、窯焼きまでを一貫して行っていて、ここまで一貫している陶芸家は日本でも1%程度だとか。釉薬を使っていないからこそ出せる自然の土の色、登り窯の入れる場所によって変わる風合いや柄も気に入っています。左側は藍染めのために訪れた徳島で、ふらっと立ち寄った工房で購入したもの。意図せず好みの陶器と出会ってしまい、2人で大量に購入しました。拠点や、選ぶ食や暮らし方が変わりましたが、生活はどんどん豊かになっている実感があります。自分の生活の中に起きる小さな変化をこれからも楽しんでいきたいですね。

自然の循環を目の当たりにした滝

徳島で永原レキさんに連れて行ってもらった轟の滝。ここは轟神社の御神体として祭られている場所で、滝壺への立ち入りは禁止されています。八百万の神への信仰が昔から言い伝えられている通り、こういう場所にいくと自然と手を合わせ、祈りを捧げてしまう。そういう日本人ならではの不思議な感覚になったのを鮮明に覚えています。ここまでの道中、彼が話してくれたのは“海は山の恋人”の話。海の水が蒸発して水蒸気となり雲を作る。そしてその雲が雨を降らし、山に降り注ぎ滝となり、森を通って川になり、海に流れる。そうやって自然は循環しているから、山を守れないことには海も守れない。もちろんその逆も然り。1つが狂えば、全部がダメになる。だから人間は非循環なことをしてはいけない。自然界における話ですが、話を聞いていてすべてに通じる話だなと思いましたし、都会で生活しているとすっかり忘れてしまっている自然の循環や人と自然の暮らしのこと。あたりまえのことだけど、絶対忘れてはいけない。そして未来のために1人ひとりが考えていかなければいけないことを「イト スイム」を通して伝えていけたらと思っています。

「イト スイム」
“The City and The Sea”がコンセプトのメイド・イン・ジャパンのスイムウエアブランド。サーファーでもあるデザイナー達の理想を形にしたアイテムは、日本人の体型を考慮したラインの他に、マリンスポーツを快適に楽しめる機能性と街中でも違和感なく着られるデザインが特徴。

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.6 長尾悦美が見るメイド・イン・ジャパンの美しい佇まいと唯一無二の魅力 https://tokion.jp/2022/03/13/japans-brand-trivia-vol-6/ Sun, 13 Mar 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=100238 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う企画。第6回は確かな審美眼で作られる高感度なファッションスタイルにファンも多い長尾悦美が登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、もの選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った、“メイド・イン・ジャパン”のものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は髙島屋のウィメンズ・クリエイティヴ・ディレクターを務める長尾悦美。ファッションを通して長年培ってきた審美眼で選ぶ“メイド・イン・ジャパン”のものとは。独自のこだわりをもって選ぶ条件を伺うと、自分の好きなものと真摯に向き合う彼女のセンスの源を感じることができた。

−−ファッションや百貨店勤務という環境の中で、さまざまなものと触れ合っている長尾さんですが、改めてメイド・イン・ジャパンのものの価値や魅力をどのように感じていますか?

長尾悦美(以下、長尾):百貨店で働いているからこそ、幅広い視野で見られるという意味では、ファッションに限らずメイド・イン・ジャパンの製品に触れる機会は多いです。もともと興味もあったので、潜在的な感覚にスイッチが入るような。今の仕事を通して、あらためて日本の四季の大切さや、豊かな色彩、文化をきちんと学べる機会も増えました。

メイド・イン・ジャパンの製品は、すべてにおいて職人気質。日本独自の美学の丁寧さや華美じゃない美しさ、佇まいやオーラまでも醸し出されているように感じます。それは建築しかり、器や骨董品、今の日本のものづくりの産業を見ても同じく。仕事で、ヨーロッパやアメリカに行く機会が多いので、街を見ていると長い歴史の中で大切に残されてきた装飾が多く見られますが、日本は奥ゆかしさや生活の中に溶け込んでも過剰ではない美しさを感じるものが多い気がします。

−−ものづくりにおいて海外と日本の違い、またそのおもしろさはどんなところにあると思いますか?

長尾:ヨーロッパは街全体が芸術作品のようで、まるで映画のセットの世界。見ていて楽しくて美しい。日本もまた違う意味で美しく芸術的な見方ができるけれど、ヨーロッパとは対極にある気がします。アメリカはもう少し雑多な印象。いろいろな文化が混ざっているのを感じますしね。北欧はミニマルな世界の中で、独特の色彩感覚と機能美をすごく感じる。それぞれの国の美に対する意識の違いをあらためて見るとおもしろいです。

−−ファッションにおいては、どのような目線で見つけていますか?

長尾:洋服を選ぶときにまず最初に見るのは、ファブリックのクオリティです。テキスタイルの佇まいや品質は一番重視するところ。ヴィンテージ・ショップでもファブリックから手にとって、その後にスタイルを考えるというのが私のファッションの組み立て方です。仕事としてバイイングする時は、売れる売れないの判断はあるものの、ハンギングされているときのファブリックの佇まいが安っぽくないかどうかも、ジャッジする時の重要なポイントの1つになっています。2つ目は、毎シーズンたくさんの展示会を周りますが、ファブリックとテキスタイルのバランスはもちろん、オリジナルのスタイルをちゃんと作っているか、流行ではなくデザイナー本人のルーツや好きなものでもって、自分のスタイルを築けているかどうか。この2つがポイントになっています。何かどこかで見たことあるなとか、どこかの何かっぽいみたいなことでは、私は心が動かなくて。もちろん売れると思うものもあるので、ビジネス目線では取り入れることもあるけれど、やっぱり唯一無二のスタイルを作っている人、デザイナーに惹かれますね。

唯一無二のスタイルを作る「FUMIKA_UCHIDA」

日本のヴィンテージカルチャーって、すごく独特。世界のどの国にも古着はあるものの、それをファッションとして確立させているのが東京。スタイルとして築き上げられていて、トレンドもあるというのは、東京ならでは。ミリタリーやデニムなど、ギアに偏っているのがメンズヴィンテージのイメージですが、レディースにおいて「FUMIKA_UCHIDA」はその先駆者だと思っています。すごく軽やかに、カッコよく、古着をスタイルとして確立させ、びっくりするようなスタイルやバランスを築き上げた。デザイナーの内田さんはレディースのヴィンテージカルチャーを作った人だと思っています。 彼女自身、ヴィンテージの背景をしっかり理解し生活に取り入れているからこそ、自分らしく編集しスタイルを作れる。その強みは唯一無二で、感度は素晴らしく高い。デビューコレクションから見ていますが、毎回違うアクションのスタイルを作ってくる。テキスタイルのこだわりも随所に感じられて完璧だなと。

このニットは、2014年のデビューコレクションで発表されたアイテムの1つ。当時これを着てニューヨーク・コレクションを訪れた時のこと。たくさんのセレブリティにカメラが向けられる中、フォトグラファーのビル・カニンガムが、このニットを着て、レザーパンツにコンバースでいた私にカメラを向けてくれたことがありました。その瞬間、他のカメラマン達も集まってきて……。帰り際、「Nice Sweater!」って言ってくれたのは、忘れられない思い出です。すごくクラシックなフィッシャーマンのニット、誰もが知っているテキスタイル。パッチワークされていて、肩が抜けたシルエット、そのバランスがとても新鮮だったんでしょうね。私にとっては伝説的なニットだと思っています。

トライバルな模様がモダンなアイヌのお盆

日本橋髙島屋で、日本民藝展が開催された際に購入したもの。アイヌ文化が注目される今、生活に取り入れてみるとトライバルなデザインのモダンさが際立って、特別なものに。私は北海道出身で、アイヌの家系ではないですが、アイヌをルーツに持つ同級生がクラスに1人はいましたし、アイヌの文化は当たり前に身近にあったもの。逆に東京に出て百貨店で働くようになってから、彼等のものづくりや歴史、ルーツをあらためて知る機会が増え、帰るたびにゆかりの場所を訪れるようになりました。

彼等の生活に基づいたものづくりは、美しいものを作ろうと商業的な考え方ではなく、生活と自然の中で生きていくために、木々や動物の革を使って作られたものばかり。その精神はネイティブ・アメリカンに精通するところがあると感じています。以前、阿寒湖の近くにあるアイヌ木彫りの第一人者だった藤戸竹喜さんのお店「熊の家」を訪れた際、私が身につけていたアクセサリーを見て、奥様が「ネイティブ・アメリカンのジュエリーが好きなの?」と声をかけてくれたことがあったんです。アイヌの民族衣装にも、ブルーターコイズを使ったアクセサリーがあるからだと思うのですが。その時に、作品の貯蔵庫になっているお店の地下を案内していただきました。藤戸さんのご両親はアイヌ民族でお父様に弟子入りし技術を継承した方。熊だけでなく狼や鹿、海洋生物等、まるで命を吹き込まれたように木から彫りだされるモチーフをみていると、貯蔵庫はまるで博物館のようでした。神居古潭(カムイコタン)には、実際にネイティブ・アメリカンの人が焚き上げにきたことがあるそうで、その際に置いていったのであろう、羽の飾りなどが祀られていたり。彼らもまた同じスピリットを感じていたということですよね。藤戸さんの作品もそうですが、アイヌの民芸品は、本当にかっこいい、心奪われる佇まいがあるものが多いなと感じます。

どの季節も自然の色彩が美しい故郷、十勝・帯広

アイヌ文化を始め、ニセコなど世界的にもフォーカスされている北海道。雪のシーズンだけでなく、夏生まれのせいか夏の北海道をおすすめしたいです。出身地である十勝・帯広は、実は暑さも寒さも全国1位になる地域。冬から春までが長く真冬はマイナス20度の白銀の世界。5月に雪が溶け出し、6月に急に暑くなって、夏は40度を超える日もある。そしてお盆明けには秋に。そんなふうに四季がはっきりしているというのが、自然の彩りを濃くさせているのだと思います。とかち帯広空港に降り立つ飛行機から見える景色は、イギリスの田園風景のように美しいと、イギリスに住んでいる人が言うほど。農業のイメージが強いエリアですが、実は美術館など文化的な施設も多いです。六花亭が運営する「六花の森」や「中札内美術村」は、広大な敷地の中にギャラリーが点在していて、大自然の中で帯広の綺麗な空気や景色と一緒にアートや観光を楽しめるところが魅力だと思います。都会にいると、ひっきりなしに入ってくる情報量に支配されてしまいがち。ここに帰ると、それが一旦遮断されるんです。広い空と大地、すぐそこに山が見えて、自然の色彩が美しい。そういう景色の中に身を置くだけで、人間本来の生命の指針みたいなものが正しい位置に戻るような感じがして。頭の中がクリアになって、またフレッシュな気持ちでいろいろなものが見えるようになる。ありきたりだけど、やっぱりリセットできる場所なんですよね。

長尾悦美
髙島屋」ウィメンズファッションクリエイティブディレクター。セレクトショップの販売員を経て上京。髙島屋STYLE&EDITのバイヤーを務めたのち、ウィメンズファッション部門のクリエイティブディレクターに就任。卓越したセンスで、自由にミックスするスタイルとおしゃれな自宅から垣間見えるライフスタイルにも注目を集めている。
Instagram:@yoshiminagao

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.5 街をアトリエに日常を描写する エイドリアン・ホーガンが思うメイド・イン・ジャパンの魅力 https://tokion.jp/2022/01/11/japans-brand-trivia-vol-5/ Tue, 11 Jan 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=84651 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う企画。第5回は東京を拠点に活躍するオーストラリア出身のイラストレーター、エイドリアン・ホーガンが登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、もの選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った、“メイド・イン・ジャパン”のものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は、出身地であるオーストラリアから東京を拠点に移し、イラストレーターとしてさまざまなメディアで活躍するエイドリアン・ホーガン。イラストレーションに対する考えや思い、そして彼にとって“メイド・イン・ジャパン”のものは、自身の創作にどんな影響を与え、インスピレーション源になっているのだろうか。

−−日本に活動の拠点を作って8年が経つそうですが、あらためてメイド・イン・ジャパンのモノの価値や魅力をどのように感じていますか?

エイドリアン・ホーガン(以下、エイドリアン):日本に来る前、メイド・イン・ジャパンのものに対して、“ハイクオリティ”と“長く使えるもの”という2つのステレオタイプがありました。そのイメージは日本に来て合っていたと確信しましたが、思っていたよりもものづくりの幅の広さと芸の細かさに驚いたのを覚えています。例えば、レストランの各テーブルにおいてある爪楊枝。先端を折り箸置きのように爪楊枝を置くとテーブルに直接置くことなく使えるとか、温かいおしぼりを出してくれるとか。用途を考えて誰かがデザインしたものが、時代を越えて残っていて、日本のおもてなし精神につながっている。その考え方をもっと理解したいと思って、日本語の勉強をするようになりました。実際に東京で暮らし始めて8年になりますが、クオリティライフとしては東京に住んで本当によかったと思っています。大きく国際的なビジネス街の面もありますが、自分らしくも暮らせる街。ビル群の中にも、少し歩くと昔ながらの街並みや工場が残っていたり、そのミックス感もおもしろいですしね。

−−気になる“メイド・イン・ジャパン”のものやスポットはどこで見つけていますか?

エイドリアン:東京に引っ越してきたばかりの頃からいろんな街をたくさん歩いて散策しています。5分歩いただけで景色が変わり、その変化も見ていて楽しい。東京の都会の部分も好きですが、東村山のように都心から離れたカントリーな雰囲気の街も好き。街を見ていると長く使っているもの、そのエイジング感に魅力を感じるようになりました。ボロボロになってしまったら、捨てて新しく買えばいいと思っていたけど、古き良きを大事にする精神、直して長く使うという習慣をものだけでなく建物にも感じて、そういう風景の絵をよく描いています。東京はベーシックな色の建物が多いけれど、人がお洒落でたくさんの色をまとっている。その建物と人のコントラストも描いていておもしろいなと発見しますね。

日常的なスモールトレジャー「ポスタルコ」のペンケース

長く使っている「ポスタルコ」のペンケース。「ポスタルコ」というブランドは、アメリカ人と日本人の夫婦で、日常的に使うステーショナリーや革製品を使いやすくデザインし、販売しています。アメリカから拠点を東京に移し、日本人の職人さんに生産を依頼している彼らは、インターナショナル感もあるけれど、メイド・イン・ジャパンであるというおもしろさもある。僕はそのイラストヴァージョンを目指しています。例えば、一緒に暮らせる絵。長く愛してもらえるように、日差しで色が落ちて変わってしまっても、味があるみたいな絵を描いていきたい。そういう意味でも「ポスタルコ」のものづくりの考えやコンセプトは、お手本であり、先輩でもある。それに、海外から原画を買いたいという依頼が来ると、ある意味僕の作品もメイド・イン・ジャパンだと思っているので、梱包時に“MADE IN JAPAN”と書いているんです。外国人のイラストレーターなのに、メイド・イン・ジャパンというのは違和感があるけど、意味としては間違ってはいないんじゃないかなと思っているから。

筆のタッチと特有のワビサビに惹かれた「筆ペン」

日本に来た時、それぞれの色の意味もわからず使って絵を描いていた筆ペン。液がなくなってきた時の擦れ感とか、色の濃淡が調整できたり、力の入れ加減で繊細な線が描けたりする。何よりコンビニでも手に入り、そして安い。使っていてとても楽しい。日本に来てこの筆と出会わなかったら、描けなかった絵もたくさんあります。書道用の筆も、細いものから太いものまでいくつか持っていて、それで絵を描くことも。最近はデジタルで、こういうタッチの質感が出せるツールもありますが、僕はアナログなスタイルにこだわっているので、デジタルで描いたものに、筆ペンを使って描いた絵をスキャンして合わせたりすることもあります。手作りで完璧というメイド・イン・ジャパンのものづくりの精神に従って、そういう手法を取り入れています。それに似顔絵を描いていても似ているかどうかより、フィーリングで描く手描きの絵にはその人らしさや個性が表れます。それが僕の作品のオリジナリティーにも繋がっていると思います。

絵をきっかけに人とつながることができる「カフェ」

イラストレーターとして駆け出しの頃、人を描くのが好きなので、家で描いているよりも外で描いている方がいいと思って、電車の中や街を歩きながらスケッチしたり、いろんな街のカフェでも絵を描いていました。よく行くカフェの店の同じ場所で絵を描いていても、いつも違う発見がある。1枚として同じ絵はないんです。今いちばんのお気に入りはワーキングスペースの下にある「パーラーズ」。カフェは、偶然の出会いも多く、描いていたら「イラストレーターさんですか?」とスタッフの人が声をかけてくれて、同じ店内にいたアートディレクターの人を紹介してくれて、仕事につながったり。そういうきっかけにつながるコミュニケーションの場所でもあります。あと、最近はiPhoneでみんなすぐ写真を撮るけれど、僕はその瞬間をスケッチで残したい。そういう習慣の中で、幸せな瞬間や、たくさんの思い出をスケッチブックに残そうと思って、ポケットにコンパクトなスケッチブックをいつも入れています。見返すと、日常的な瞬間もアートになるんだなと感じることも多いですし、名刺の渡し方やお辞儀の角度といった日本らしい習慣やマナーを、自然と描いていたスケッチから知ることもありました。

エイドリアン・ホーガン
オーストラリア出身。2013年から東京に拠点を移し、フリーのイラストレータとして活躍。国内外問わず、雑誌をはじめ、広告、書籍、壁画など、幅広くイラストを手掛けている。日常の様子をスケッチし投稿しているSNS も人気。
Instagram:@adehogan
http://www.adrianhogan.com/

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.4 セラピストRYOKO HORIが長い海外生活で改めて感じる日本のモノや人の魅力 https://tokion.jp/2021/12/05/japans-brand-trivia-vol-4/ Sun, 05 Dec 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=79939 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う本企画。第4回は、ベルリンで RYOKO senses salon を営むセラピストの堀涼子が登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、モノ選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿ったメイド・イン・ジャパンのものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は、ベルリンを拠点にセラピストとして活動する堀涼子。服飾専門学校卒業後、渡仏。その後帰国し3年ほど、ファッション業界で働いたのち、シドニーを経てベルリンへ移住。ベルリンでの生活は、もうすぐ10年になるという。海外生活が長いからこそ、改めて感じる彼女のメイド・イン・ジャパンの価値観とは。

−−パリ、シドニー、ベルリンと長年海外生活を送る中で、改めて感じるメイド・イン・ジャパンのモノの価値や魅力はどのようなところにあると思いますか?

堀涼子(以下、堀):メイドインジャパンのモノは、世界的に見ても“高いクオリティ”の代名詞だと思います。比べものにはならないクオリティがありますから。私が住んでいるベルリンでもコロナ禍の少し前くらいから日本ブーム。日本旅行を楽しむ友人も多く、私がなかなか帰れない分、彼らから日本各地のホットスポットの情報を聞いたりして。友人達も皆、そのクオリティの良さに信頼を置いています。だからこそ、日本のものを選びたいという思考の人も増えている。また、海外で生活をしていると改めて、日本人は人としてもすべてにおいて完璧だなと感じます。作っているものの完璧さはもちろんのこと、人としても、仕事も、時間もきちんと守りますし、とにかく“きちんとしている”のが日本人らしいなと思います。

−−モノづくりにおいて海外と日本の違い、またそのおもしろさはどんなところにあると思いますか?

堀:海外の人はトライが早いと思います。興味を持ったらやってみる人が多い。だから実験的に作ってみたら、おもしろいものや新しいアイディアが生まれたり、そういうおもしろさがありますよね。日本の器やクラフトが好きで、いろいろ集めているのですが、ものを見ていると、長年受け継がれてきた技術力が本当に素晴らしいと感じます。伝統的であるだけでなく、モダンさもある。しっかりとしたベースがあるからアレンジができる。いろんな作家さんとお仕事をするので、日本人が作ったか、外国の作家さんが作ったか、器などをみているとすぐにわかります。ベルリンは移住者が多く、いろんな国の人がクリエイティブな仕事をしていておもしろい。だからこそ、違いもわかりやすいんです。

日本のクオリティをベルリンで具現化する陶芸家による「Studio Cuze」

陶芸家久世さんの作品です。彼もベルリン在住で、スタジオを持って活動をしています。ちょうど私がベルリンに移り住んだのと同じ頃、彼も引っ越してきていて、友人を介して知り合いました。私はアルコールベースの香水を調香しているだけでなく、樹脂や香木などを焚くお香も取り扱っていて、香水のボトルやスマッジホルダー、香炉(香木や樹脂などの香を焚く器)をメイドインジャパンのクオリティで、作ってもらっています。日本にも、もちろん好きな作家さんや一緒にお仕事してみたい方はたくさんいるんですが、やはり距離があるので気軽には難しく。近くにいて、クオリティも素晴らしい。私の考えを具体的に形にしてくれる久世さんの存在はありがたいですね。

時代を超えて受け継がれる日本の古道具

日本に帰ると必ず骨董市を訪れて、昔からある街の古道具屋を巡ります。そこで江戸時代のものなんかを見つけるとお宝を見つけたような気分になります。古道具や骨董品を見て作り方や当時の用途をあれこれ想像しては、もちろんその時代のものはすべて手作りのはずですから、その技術力に圧倒されてしまいます。大切にしているモノの中でも、100年以上前の櫛は、細く均等に作られていて、その繊細さに惚れ惚れしますし、キャンドル立ては、今でいう懐中電灯のようなものだったのでしょう、常に蝋燭がまっすぐ上に立つような仕組みになっていて、きちんと考えられた機能性が素晴らしい。ヨーロッパのアンティークももちろん好きなのですが、ヨーロッパのものは、機能というよりも視覚的に楽しめるようなデザインが印象的。日本のものは機能を重視していて、デザインは削ぎ落とされている。そのシンプルさは古臭さが全くなくモダン。時代を超えて受け継がれる日本独特の機能性と技術力は本当に素晴らしいですよね。

ベルリンで一番おいしいお寿司が食べられる「Sasaya」

前回帰国したのは3、4年前。日本食が恋しくなる日々の中で、ベルリンできちんとおいしい日本食がいただけるお店があります。それが『Sasaya』。東京は、おいしいお店もたくさんあって、値段が高ければもちろんですが、安くてもハズレってめったにないですよね。ほとんど魚が食べられないベルリンで、生魚が食べられて、しかもおいしいお店は貴重。なので、頻繁に食べに行っています。「Sasaya」は、ベルリンの日本料理屋さんの中でも一番おいしいと言われているほどの人気店。日本人の大将が握ってくれるサーモンのあぶり寿司の、あのとろける感じは、食べるといつも日本を思い出します。大将は寡黙だけど、お店の中の様子は、すべて見えている。その感じも日本料理屋さんならではという感じがして、行くとほっとできる場所です。

堀涼子
1980年生まれ、大阪府出身。パリ、ロンドン、東京、シドニーを経て、現在ベルリン在住。「RYOKO senses salon」を主宰し、リメディアルマッサージ&ビューティーセラピスト、調香師、ショップオーナーとして活動している。

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.3 日本の魅力を生かしたスキンケアブランド「ダムダム」創設者ジゼル・ゴーとフィリップ・テリアンのセンスに迫る https://tokion.jp/2021/10/24/japans-brand-trivia-vol3/ Sun, 24 Oct 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=65777 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う本企画。第3回は、話題のスキンケアブランド「ダムダム」の創設者ジゼル・ゴーが登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、メイド・イン・ジャパンであることも、モノ選びの基準の1つになっている。本連載では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った“メイド・イン・ジャパン”のクリエイションにフォーカスする。今回は、原料から生産まで日本製にこだわって作られているスキンケアブランド「ダムダム」の創設者、ジゼル・ゴーとパートナーのフィリップ・テリアンに、自身のライフスタイルに紐づいているだけでなく、ファッション業界の第一線で活躍してきた2人ならではのセンスが光る、スペシャルなメイド・イン・ジャパンのモノを紹介してもらった。

−−メイド・イン・ジャパンのモノの価値や魅力はどのようなところにあると思いますか?

ジゼル・ゴー(以下、ジゼル):クラフトマンシップのレベルが非常に高いということです。プライベートでも仕事でも、モノづくりをしている職人やアーティストと関わる時、いつもコミットメント力が素晴らしいと感じます。だからメイド・イン・ジャパンの商品は、優れているのでしょう。もう1つは、古くからあるものが評価されているということ。例えば、金継ぎのような発想は、日本独特ですごくおもしろい。日本は先進国です。いろいろな企業や機器が、私達の日常生活のすぐそばに、当たり前のようにあって、その技術力を身近に感じることができる。その一方で、ハンドメイドの商品も評価されていてセレクトショップやギャラリーなど、いろいろな場所で楽しむことができるというのもすごく魅力だと思います。

−−モノづくりにおける海外と日本の違い、またそのメリットはどんなところにあると思いますか?

ジゼル:違いを感じるのは、スピードです。日本は少しゆっくり。ですがコミットメント力が素晴らしいので、ゆっくりであることが、デメリットというわけではありません。ディテールにこだわってモノづくりをし、完璧な商品を作りあげる。それがメイド・イン・ジャパンの素晴らしさですから。そこに他国と違いを感じます。時間はかかったとしても、出来上がった商品は完璧。それは、依頼する側にとって安心感と信頼に繋がります。メイド・イン・ジャパンの商品=安心という解釈は、そういったところから来ていると思います。

−−「ダムダム」を始めるきっかけや、スキンケアに限らず日本のクラフトも紹介しています。その活動について教えてください。

ジゼル:長い間、華やかなファッションの世界で仕事をしてきたので、別の分野でクリエイティブしたいという思いと、もともと興味があったスキンケア、そして日本の伝統的なクラフトマンシップをもう一度見直しておもしろい商品を作りたい、その思いを「ダムダム」という形にしました。それから、私達は旅が好きで、海外はもちろん日本各地を旅して集めた陶器がたくさんあります。昨年は車で、山梨、長野、滋賀、京都、奈良、四国と日本を回り、すてきな出会いがたくさんありました。そこで出会った職人やアーティストを紹介したいという思いから「ダムダム アトリエ」をスタート。「ダムダム アトリエ」rでは、「ダムダム」の商品だけでなく、アーティストや作家とコラボレーションして商品を作り、ポップアップという形で皆さんに紹介しています。将来的には、常に触れ合うことができ、手にした時の感覚を共有できる場所を作れたらいいですね。

長年受け継がれてきた日本由来の成分を活かした「ダムダム」

初めてイマジネーションしたことを実際に形にした「ダムダム」は、私にとってスペシャルな存在。「ダムダム」の製品は私達が日常で手にしている日本のものを原料にしています。例えば、お米からできる米麹や陶器で使われるカオリンクレイ、紫蘇やこんにゃくなど。お米は毎日食べていますし、紫蘇はお茶にして年中飲んでいるくらい、私達にとってとても身近なもの。そういった日本に昔からあり、長年使用され受け継がれてきた成分を厳選して原料として取り入れて、スキンケアに活かしたいという思いから立ち上げました。信頼のおける日本のラボで開発、パッケージに至るまですべて日本製にこだわっています。9月に発売したばかりの紫蘇を配合したシャンプーとコンディショナー、ボディウォッシュは香りも使い心地もとても気に入っています。

縄文土器から着想を得た「ノグチ カンサイ」のインセンスホルダー

野口寛斎さんに作っていただいたインセンスホルダー。「ダムダム アトリエ」rVol.3でも販売をしました。浄化やリラックス効果もあるお香は、自宅でいつも好きな香りのものを焚いています。野口寛斎さんはもともとファンだった陶芸家。縄文土器にインスパイアされたという形や、ユニークなテクニックで作られた作品は、どれも好みのものばかり。以前、彼の個展を訪れた際に知り合い、フィリップの誕生日プレゼントに花瓶を購入したことから、交流が始まりました。このインセンスホルダーは、白と黒の配色のモダンなデザインで、オブジェとしての佇まいもすてきです。

三浦半島の別荘は海の眺望に優れた自分達だけの場所

週末だけでもリチャージできる場所が欲しいと思って、数年かけて探して見つけたのが、三崎にある別荘。もともとあった古民家を購入しリノベーションしました。庭はまだ未完成ですが、ここで過ごしながらガーデニングをしたり、ペンキを塗ったり、ゆっくりと自分達の手で空間を完成させていこうと思っています。天気がいい日は富士山を望むことができ、目の前には海が広がり、素晴らしいサンセットが見られて、自然の音や匂いを直で感じられる場所。私たちは旅をしたり、いろいろな場所に行くことが好きですが、ここで過ごすだけで十分に満たされますし、スイッチを完全にオフにしてリラックスすることができます。もちろん新たな1週間のためのリチャージも! 新しい商品開発や創造をしていくために必要な空間と時間がここにはあります。

ジゼル・ゴー
シンガポール版『ハーパーズ バザー』元編集長。2017年に、日本でPRやコンサルティングを行うフィリップ・テリアンとともに、スキンケアブランド「ダムダム」を立ち上げた。「ダムダム」は生産からパッケージに至るまで、すべて日本製にこだわって製造されており、6月にはパリ発祥の大手コスメセレクトショップ「セフォラ」に出店した。

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連載「ジャパンブランドのトリビア」vol.2 癒しとエネルギーに満ちた日本食 唯一無二の魅力をフード・アーティスト前田まり子が再考 https://tokion.jp/2021/09/20/japans-brand-trivia-vol2/ Mon, 20 Sep 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=58405 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う本企画。第2回は、ブッダボウルの先駆者でフード・アーティストの前田まり子が登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、メイド・イン・ジャパンであることも、モノ選びの基準の1つになっている。本連載では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った“メイド・イン・ジャパン”のクリエイションにフォーカスする。今回はナチュラル・アンド・ヘルシーをテーマに活動するフード・アーティストの前田まり子に、日本の食文化の魅力を改めて考察し、自身の日本食に関するものやお店を紹介してもらった。

−−「カノムパン』から「ブッダボウル』を作るまで、その経緯を教えてください。

前田まりこ(以下、前田):イタリアンで働いたり、ケーキやクッキーを作って販売したりと、ずっと料理の世界と近いところにいました。パンとの出合いは突然で、ある1冊の本に出合ってから。その本は、日本各地で暮らす人が、自分の生活に沿ったパン作りをしているという内容。残った野菜の皮やお米から酵母を作ったり、その無理のない感じが、ちょうど生活を田舎へシフトしたいと思っていた気持ちと重なって、葉山へ移住しパンを作り始めました。「カノムパン」を始めて、気付いたら13年が経っていた。あっという間でした。毎日酵母の様子も変わるし、中に入れてから焼けるまで、1日たりともオーブンの中を見ない日はなかった。毎日が必死だったんです。10年が経った時、周年パーティーを開いて、その時自分の中で100点が出せた。そこから次に新しいことをやってみたいと意識が変わって、東京に戻ってきました。

しばらく抜け殻状態の中、「ムスムス」でアルバイトをしているうちに、食のクリエイティブ欲が再燃。葉山に住んでいた時に知ったヴィーガン食、どんなに忙しくても半年に1回のペースで行っていたほど大好きなタイのヴィーガンも網羅していたんです。そのヴィーガンを生かし、間借りしていたお店でヴィーガンプレートを始めました。その時、たまたまFacebookでブッダボウルの存在を知り、もともと作っていたプレートを少しアレンジして、色とりどりの野菜と穀物、果実を1つの皿に盛るブッダボウルに。私自身がヴィーガンというわけではなく、シンプルに野菜が好きだった。それに新しいことを考えるのも楽しかった。ブッダボウルというネーミング力も強くて好きで、これはいける! 私ブッダボウルの先駆者になる! と確信しました。それから『ブッダボウルの本』を出版しました。本を出してからは、ヴィーガン、プラントベース、ブッダボウルというワードがすごく身近に感じるようになって、なんとなく1つのブームを作れたような感覚になりましたね。

伝統のある料理、旬の食材を通して日本の風情を味わう

−−食人生においてさまざまな節目を経て、改めて思う日本の食文化の魅力とは?

前田:例えば、お節料理とか、受け継がれてきた料理や日本ならではの習慣が消えつつあるような感じがして、寂しいですし、なくなってほしくない。うちは毎年必ずお節料理を作ります。やっぱり日本人の体には日本の食材が一番合う。カノムパンをやっていた時もブッダボウルを作っていた時も、お店で野菜を見て食材ありきで、今日何しようって考えていました。それを考えている時に一番アドレナリンが出ていたかもしれません。そういう時も日本の食材を使うことが多かった。意識はしていないけど、ナチュラルに自分の中でそれが目利きとなって染み付いていたのかもしれないですね、ルーツですから。葉山での生活は、日本の生活に沿ったものをなるべく自分の手で作ろうと思った始まりで、お味噌作りや梅干しを漬けたのはその頃から。特別な何かというよりはいつもの生活の中にある普通のこと。魚を焼いて、玄米を炊いて、自分で作った味噌でお味噌汁を作って、糠床から糠漬けを出して。そういう食卓がやっぱり好き。干物や、余裕があれば、がんもどきも手作りする。それが夢のようにおいしい。季節の変わり目に、旬の食材でお祝いするとか、食べると体が喜ぶのを感じられるとか、日本食にはそういう魅力が詰まっていると思います。

季節や体調の変化を料理で感じる「麹」「糠」「梅」

−−おすすめの食材に麹と糠、梅を挙げた理由を教えてください。

前田:タイ料理店、「カノムパン」、「マリデリ」、「ムスムス」……と、これまで忙しく働いてきて、おいしいものを食べてもらいたい、その一心で続けてきたので、自分が食べるもののことまで気にかける余裕がなかった。今人生で一番自分のことにちゃんと時間をかけて、丁寧に生活できている気がしています。発酵させていく過程を楽しむこと、自分の手で作った味噌を使ったお味噌汁や、糠漬け、梅干しが日々の食卓に並ぶ。それが何よりも嬉しいんです。

−−和食に欠かせないこれら3つの食材ですが、手作りする時の楽しさはどのようなところに感じていますか?

前田:麹と納豆菌のダブルだからきっとすごく免疫力が高い。納豆麹にすると納豆の賞味期限も延びるので、そこに日本食文化ならではの保存食の魅力が詰まっています。梅は毎年漬けていて、今年は梅シロップとカリカリ小梅を漬けました。梅雨の鬱陶しい時期にする梅仕事はワクワクしますし、晴れたら外に干すので、じめっとした日が続く中で晴れを待つ。そういう季節の移り変わりとともに在ることが毎年楽しみなんです。日本独時の侘び寂びみたいな感覚が好きですね。糠床は、自分に余裕がないとすぐだめになってしまう。自分の気持ちのゆとりのバランスを教えてくれるような、そんな感覚や自分の中の小さな変化を作っていると感じることができます。

すり鉢で胡麻をする、ひと手間にこだわる

−−おすすめのアイテムにすり鉢を選んだ理由について教えてください。

前田:炊飯器は台湾のもの、土鍋も日本らしさがなく、鍋はタイやインドで買ってきたものばかり、あとはストーブなので、自分の持っているものの中で何か日本らしいものはあるかな……とふと台所を見回した時に、目に入ってきたのがこのすり鉢。夫からのプレゼントでもらったものです。する時のゴリゴリという音も好きですし、だんだんといい香りがしてくるのもワクワクする。改めて日本ならではの、いい道具だなと思います。

−−どんな料理を作る時にこのすり鉢を使いますか?

前田:胡麻は擦りたてが、格段に香りが良くておいしい。ほうれん草の胡麻和えを作る時は、ほうれん草を茹でてボウルの中に入れ、そこにすり胡麻を入れるより、すり鉢ですって、そこに調味料とほうれん草を入れて、すり鉢の側面についた胡麻までも、満遍なく和えるのが好き。その方がおいしい気がするんです。

日本の食材の魅力とオーガニックを学んだ「ムスムス」

−−「ムスムス」のおすすめポイントは?

前田:まず、本当においしいです。お米は天日干ししたものを使っていて、私が働いていた頃はランチはそのお米がおかわり自由だった。天日干ししているだけで普通のお米と味が全然違うんです。玄米と白米とを選べて、お惣菜も食べられる。「ムスムス」という店名は、野菜をせいろで蒸す料理名から名付けられたそうです。

−−前田さんにとってどんなお店ですか?

前田:「カノムパン」を辞めて1年くらいアルバイトしていたお店。日本食の勉強は、「ムスムス」での経験が生かされています。日本のものしか使わない「ムスムス」は、日本の端から端までの日本のオーガニック食材を仕入れ、調味料までこだわって料理を出していたので本当においしい基本の日本食と出合うことができました。私はランチタイムに働いていたので、丸の内のOLさんやサラリーマンで常に忙しく、優しい日本食を提供しているけれどキッチンの中は、体育会系でしたね。料理はすごく細かくて、丁寧。例えば針生姜は、針より細く切るように言われていて、私が切ったのだけ太くてすごく怒られたこともありました。技術力や腕、料理。自分にないものを知り、かなり鍛えられ、本当に勉強になりました。

前田まり子
フード・アーティスト。さまざまな飲食店で料理の腕を磨き、2000年には葉山に「カノムパン」をオープン。野菜をふんだんに使ったヴィーガン料理を得意とし、日本にブッダボウルを広めた第一人者。

Text & Edit Mai Okuhara

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.1 ダイバーシティから生まれる“MADE IN JAPAN”の力をパリ発「TEMPURA」編集長が紐解く https://tokion.jp/2021/08/19/japans-brand-trivia-vol1/ Thu, 19 Aug 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=47234 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う本企画。第1回はパリ発カルチャーメディア「TEMPURA」編集長のエミール・ヴァレンシアが登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、メイド・イン・ジャパンであることも、モノ選びの基準の1つになっている。本連載では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った“メイド・イン・ジャパン”のクリエイションにフォーカスする。第1回はパリ発の雑誌『TEMPURA』の編集長エミール・パシャ・ヴァレンシアに、海外から見るメイド・イン・ジャパンの魅力と彼の目利きで選んだアイテムについて話を聞いた。

−−海外から見て、メイド・イン・ジャパンの価値をどう感じていますか?

エミール・パシャ・ヴァレンシア(以下、エミール):メイド・イン・ジャパン=“ハイクオリティー(高品質)”を意味しているように感じています。 フランスでは、メイド・イン・フランスの製品が再評価されているものの、それはファッションに特化した話で、まだまだ限定的。それに比べてメイド・イン・ジャパンの製品は、フランス製のものよりも見つけやすい。その理由は、高いデザイン性やスタイル、手作りの温かみがあるから。熟練した職人技術で、美しい器やインディゴシャツなどを作られているのも世界的に知られています。しかしそれらはほとんどが工場で作られている。どんなブランドも、ハイクオリティーが保たれているところは、本当に素晴らしいと思います。

−−日本だからこそ、と感じる部分はどんなところですか?

エミール:例えば、イタリアのムラーノガラスやフランスのカレーレース、アメリカのホーウィン社製レザー、イギリスのミラレーンや、サヴィルロウのオーダーメイドスーツなどのように、“メイド・イン……(その国)”の製品は世界的に人気が高く、長い歴史の中で愛されています。同じようにメイド・イン・ジャパンの製品を見ると、衣服、木工品、ガラス、スチールやカーボン製のナイフ、漆、陶器など、種類が多岐にわたっています。それは日本だからこそだと感じる部分です。

「日本人がモノづくりを始めると、質の高いものができる」というのは、1つの決まり文句だと思っていて、フランスやイタリアで食べる料理と変わらないくらいおいしいピザやクロワッサンを東京で食べることができる。これほどまでに高品質で豊富なものを作る国を他に知りません。

−−パリと日本でモノづくりにおいての違いやおもしろさはどんなところだと思いますか?

エミール:メンズファッションのシーンでいえば、東京はとてもオープンでたくさんのブランドやスタイルがあり常に新鮮。一方、パリのメンズファッションは従来の型にはまり過ぎている印象があります。最近とあるブランドが、“be normal(普通であること)”というベースラインに刷新したのですが、とても残念だと感じました。ファッションは社会的な表現をするための方法の1つです。“be normal”は、個性のない全体主義のようなもの。“be yourself”はどこへいってしまったのか? と問いかけたくなりました。

私はストリートでインスピレーションを得ていますが、東京のストリートは最適です。人々を観察することで、何が変わってきているのか、男性と女性のファッションの境界線がますます曖昧になってきていること、ジェンダーレスの服が新しい普通になってきていることなどを感じ取ることができます。

豊かな自然、歴史ある街が生んだジャパン・ブランド「ロフミア」

−−このブランドについて教えてください。

エミール:岐阜県美濃加茂市にあるブランド「ロフミア」。竹内太志さんと浩子さんご夫婦がデザインから制作まで行っていて、2人は何をするにも一緒です。レザーを使ったジャケットやバッグを得意として作っているだけでなく、ハイブリッドキューベンファイバーというハイテク素材を使ったバッグも作っています。私はここのバックパックを2つ持っていて、これまでの人生で手に入れたバッグの中で最高のバックパックだと思っています。

−−「ロフミア」のバッグの、どんなところが気に入っていますか?

エミール:技術力、品質、ファッション性、その全てが1つのバッグに完璧に融合されているところです。デザインから、パターン、縫製、販売に至るまで、すべてデザイナー自身が行っていて、さらにとてもミニマルなデザインでありながら、高い機能性も備えている。常に革新的な試みをしながら、自分達の技術を高めているところに感銘を受けました。私は、洋服を着ていて不快な思いをするのが嫌いなので、服やアイテムを選ぶ時、機能性の高さをとても重要視しています。最近はアウトドアブランドがよりスタイリッシュなスタイルを提案しているのはとても嬉しいこと。ピュアウールやレザーなどの天然素材も商品を選ぶ基準になっているので、そういう意味でもロフミアはとても好みのブランドです。

−−「ロフミア」のモノづくりの魅力とは?

エミール:以前、彼等を取材し「TEMPURA」で紹介したことがあります。その時にも感じたのですが、高い技術力や機能性に優れた素材で作られている日常品であること。そして大量生産ではなくデザイナー自身が納得するまでこだわってものを作るという思想に魅力を感じます。「TEMPURA」では常にこのような若くこだわりのある日本のブランドを取材し取り上げたいと考えています。

USED古着からセレクトアイテムまでを取りそろえるこだわりのショップ、祐天寺のfeets

−−このショップについて教えてください。

エミール:私は東京ではいろいろな街を歩き、ストリートからインスピレーションを得たり新しいスタイルを探したりしているのですが、そんな時に見つけたのが、祐天寺にあるセレクトショップ「feets」。メンズの古着や日本人デザイナーのブランド、雑貨など多様なセレクトが魅力的なお店。4、5年前に見つけて以来、日本に行くと必ずチェックしているお店の1つです。

−−どんなところが気に入っていますか?

エミール:セレクトの幅が広く、スタッフの知識も豊富で話をしているだけで楽しい。オーナーが作るオリジナルのアイウェアブランドも好みです。個人的には大きなデパートやブランドのショップよりも、各店がこだわりを持ってブランドをそろえるセレクトショップが好きなので、このお店も同じように、自分の好きなスタイルに合わせてアイテムを選ぶことができるところが気に入っています。

−−何を購入しましたか?

エミール:私自身、どんなものであっても量より質にこだわりがあります。なので、ファッションは大好きですが、たくさんの服は持っていません。シンプルなカッティング、ワイドパンツ、ミニマルな色やスタイルが好きで、ここで購入した「フジト」のワイドパンツは、いつもはいています。それからお香(アロマ)も気に入っています。

素朴で不ぞろいないとおしい備前焼のカップ

−−このカップとの出合いについて教えてください。

エミール:10年前、千葉にあるセレクトショップでこの備前焼のカップに出会いました。良質な陶土で作られる備前焼は、焼き味が不規則で、1つとして同じものがないのが魅力です。初めて手にした時、まるで地球上で長い年月を経て作られる美しい天然石のように感じました。これでいつも煎茶を飲んでいるのですが、味わいが全然違います。

−−ファッションのカテゴリーだけではない、メイドインジャパン製品の魅力とは?

エミール:日本はダイバーシティーです。たくさんの職人によって、さまざまな物が作られていて、常に新しい発見の連続。私は陶磁器、特にカップやティーポット(備前、丹波、常滑、萩、越前……)のコレクターでもありますが、掘り下げていくと伝統的な職人もいれば、革新的な試みをする職人もいることを知りました。新しいアーティストや陶芸家を見つけるのは楽しくて、とても刺激的です。

−−好きな作家はいますか?

エミール:福島の安齋賢太さんや吉田直嗣さんの黒漆の陶器が大好きです。2人とも黒田泰蔵さんに師事していましたが、今は独自の道を進み、現代の陶芸を再定義しています。日本は全国に、陶芸はもちろんのこと、それぞれの名産がありますよね。旅をすれば、必ずと言っていいほど、その土地の名産品に出会うことができます。まだ出会っていない新しい作家を探し、魅力的な陶器をたくさん見つけて「TEMPURA」でも紹介していきたいと思っています。

エミール・パシャ・ヴァレンシア
パリに拠点を置く「TEMPURA Magazine」の編集長。日本の社会問題やアンダーグラウンドカルチャーやサブカルチャーをテーマにしたメディア「TEMPURA」を2019年にスタート。設立におけるクラウドファンディングでは目標額の300%を達成した。Vol.5までを出版した。

Text Mai Okuhara
Edit Miyuki Matsui(Mo-Green)

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