連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.4 セラピストRYOKO HORIが長い海外生活で改めて感じる日本のモノや人の魅力

デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、モノ選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿ったメイド・イン・ジャパンのものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は、ベルリンを拠点にセラピストとして活動する堀涼子。服飾専門学校卒業後、渡仏。その後帰国し3年ほど、ファッション業界で働いたのち、シドニーを経てベルリンへ移住。ベルリンでの生活は、もうすぐ10年になるという。海外生活が長いからこそ、改めて感じる彼女のメイド・イン・ジャパンの価値観とは。

−−パリ、シドニー、ベルリンと長年海外生活を送る中で、改めて感じるメイド・イン・ジャパンのモノの価値や魅力はどのようなところにあると思いますか?

堀涼子(以下、堀):メイドインジャパンのモノは、世界的に見ても“高いクオリティ”の代名詞だと思います。比べものにはならないクオリティがありますから。私が住んでいるベルリンでもコロナ禍の少し前くらいから日本ブーム。日本旅行を楽しむ友人も多く、私がなかなか帰れない分、彼らから日本各地のホットスポットの情報を聞いたりして。友人達も皆、そのクオリティの良さに信頼を置いています。だからこそ、日本のものを選びたいという思考の人も増えている。また、海外で生活をしていると改めて、日本人は人としてもすべてにおいて完璧だなと感じます。作っているものの完璧さはもちろんのこと、人としても、仕事も、時間もきちんと守りますし、とにかく“きちんとしている”のが日本人らしいなと思います。

−−モノづくりにおいて海外と日本の違い、またそのおもしろさはどんなところにあると思いますか?

堀:海外の人はトライが早いと思います。興味を持ったらやってみる人が多い。だから実験的に作ってみたら、おもしろいものや新しいアイディアが生まれたり、そういうおもしろさがありますよね。日本の器やクラフトが好きで、いろいろ集めているのですが、ものを見ていると、長年受け継がれてきた技術力が本当に素晴らしいと感じます。伝統的であるだけでなく、モダンさもある。しっかりとしたベースがあるからアレンジができる。いろんな作家さんとお仕事をするので、日本人が作ったか、外国の作家さんが作ったか、器などをみているとすぐにわかります。ベルリンは移住者が多く、いろんな国の人がクリエイティブな仕事をしていておもしろい。だからこそ、違いもわかりやすいんです。

日本のクオリティをベルリンで具現化する陶芸家による「Studio Cuze」

陶芸家久世さんの作品です。彼もベルリン在住で、スタジオを持って活動をしています。ちょうど私がベルリンに移り住んだのと同じ頃、彼も引っ越してきていて、友人を介して知り合いました。私はアルコールベースの香水を調香しているだけでなく、樹脂や香木などを焚くお香も取り扱っていて、香水のボトルやスマッジホルダー、香炉(香木や樹脂などの香を焚く器)をメイドインジャパンのクオリティで、作ってもらっています。日本にも、もちろん好きな作家さんや一緒にお仕事してみたい方はたくさんいるんですが、やはり距離があるので気軽には難しく。近くにいて、クオリティも素晴らしい。私の考えを具体的に形にしてくれる久世さんの存在はありがたいですね。

時代を超えて受け継がれる日本の古道具

日本に帰ると必ず骨董市を訪れて、昔からある街の古道具屋を巡ります。そこで江戸時代のものなんかを見つけるとお宝を見つけたような気分になります。古道具や骨董品を見て作り方や当時の用途をあれこれ想像しては、もちろんその時代のものはすべて手作りのはずですから、その技術力に圧倒されてしまいます。大切にしているモノの中でも、100年以上前の櫛は、細く均等に作られていて、その繊細さに惚れ惚れしますし、キャンドル立ては、今でいう懐中電灯のようなものだったのでしょう、常に蝋燭がまっすぐ上に立つような仕組みになっていて、きちんと考えられた機能性が素晴らしい。ヨーロッパのアンティークももちろん好きなのですが、ヨーロッパのものは、機能というよりも視覚的に楽しめるようなデザインが印象的。日本のものは機能を重視していて、デザインは削ぎ落とされている。そのシンプルさは古臭さが全くなくモダン。時代を超えて受け継がれる日本独特の機能性と技術力は本当に素晴らしいですよね。

ベルリンで一番おいしいお寿司が食べられる「Sasaya」

前回帰国したのは3、4年前。日本食が恋しくなる日々の中で、ベルリンできちんとおいしい日本食がいただけるお店があります。それが『Sasaya』。東京は、おいしいお店もたくさんあって、値段が高ければもちろんですが、安くてもハズレってめったにないですよね。ほとんど魚が食べられないベルリンで、生魚が食べられて、しかもおいしいお店は貴重。なので、頻繁に食べに行っています。「Sasaya」は、ベルリンの日本料理屋さんの中でも一番おいしいと言われているほどの人気店。日本人の大将が握ってくれるサーモンのあぶり寿司の、あのとろける感じは、食べるといつも日本を思い出します。大将は寡黙だけど、お店の中の様子は、すべて見えている。その感じも日本料理屋さんならではという感じがして、行くとほっとできる場所です。

堀涼子
1980年生まれ、大阪府出身。パリ、ロンドン、東京、シドニーを経て、現在ベルリン在住。「RYOKO senses salon」を主宰し、リメディアルマッサージ&ビューティーセラピスト、調香師、ショップオーナーとして活動している。

author:

奥原 麻衣

編集者・ライター。「M girl」、「QUOTATION」などを手掛けるMATOI PUBLISHINGを経て独立。現在は編集を基点に、取材執筆、ファッションブランドや企業のコンテンツ企画制作、コピーライティング、CM制作を行う他、コミュニケーションプランニングや場所づくりなども編集・メディアの1つと捉え幅広く活動中。 Instagram:@maiokuhara39

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