デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、メイド・イン・ジャパンであることも、モノ選びの基準の1つになっている。本連載では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った“メイド・イン・ジャパン”のクリエイションにフォーカスする。今回は、原料から生産まで日本製にこだわって作られているスキンケアブランド「ダムダム」の創設者、ジゼル・ゴーとパートナーのフィリップ・テリアンに、自身のライフスタイルに紐づいているだけでなく、ファッション業界の第一線で活躍してきた2人ならではのセンスが光る、スペシャルなメイド・イン・ジャパンのモノを紹介してもらった。
−−メイド・イン・ジャパンのモノの価値や魅力はどのようなところにあると思いますか?
ジゼル・ゴー(以下、ジゼル):クラフトマンシップのレベルが非常に高いということです。プライベートでも仕事でも、モノづくりをしている職人やアーティストと関わる時、いつもコミットメント力が素晴らしいと感じます。だからメイド・イン・ジャパンの商品は、優れているのでしょう。もう1つは、古くからあるものが評価されているということ。例えば、金継ぎのような発想は、日本独特ですごくおもしろい。日本は先進国です。いろいろな企業や機器が、私達の日常生活のすぐそばに、当たり前のようにあって、その技術力を身近に感じることができる。その一方で、ハンドメイドの商品も評価されていてセレクトショップやギャラリーなど、いろいろな場所で楽しむことができるというのもすごく魅力だと思います。
−−モノづくりにおける海外と日本の違い、またそのメリットはどんなところにあると思いますか?
ジゼル:違いを感じるのは、スピードです。日本は少しゆっくり。ですがコミットメント力が素晴らしいので、ゆっくりであることが、デメリットというわけではありません。ディテールにこだわってモノづくりをし、完璧な商品を作りあげる。それがメイド・イン・ジャパンの素晴らしさですから。そこに他国と違いを感じます。時間はかかったとしても、出来上がった商品は完璧。それは、依頼する側にとって安心感と信頼に繋がります。メイド・イン・ジャパンの商品=安心という解釈は、そういったところから来ていると思います。
−−「ダムダム」を始めるきっかけや、スキンケアに限らず日本のクラフトも紹介しています。その活動について教えてください。
ジゼル:長い間、華やかなファッションの世界で仕事をしてきたので、別の分野でクリエイティブしたいという思いと、もともと興味があったスキンケア、そして日本の伝統的なクラフトマンシップをもう一度見直しておもしろい商品を作りたい、その思いを「ダムダム」という形にしました。それから、私達は旅が好きで、海外はもちろん日本各地を旅して集めた陶器がたくさんあります。昨年は車で、山梨、長野、滋賀、京都、奈良、四国と日本を回り、すてきな出会いがたくさんありました。そこで出会った職人やアーティストを紹介したいという思いから「ダムダム アトリエ」をスタート。「ダムダム アトリエ」rでは、「ダムダム」の商品だけでなく、アーティストや作家とコラボレーションして商品を作り、ポップアップという形で皆さんに紹介しています。将来的には、常に触れ合うことができ、手にした時の感覚を共有できる場所を作れたらいいですね。
長年受け継がれてきた日本由来の成分を活かした「ダムダム」
初めてイマジネーションしたことを実際に形にした「ダムダム」は、私にとってスペシャルな存在。「ダムダム」の製品は私達が日常で手にしている日本のものを原料にしています。例えば、お米からできる米麹や陶器で使われるカオリンクレイ、紫蘇やこんにゃくなど。お米は毎日食べていますし、紫蘇はお茶にして年中飲んでいるくらい、私達にとってとても身近なもの。そういった日本に昔からあり、長年使用され受け継がれてきた成分を厳選して原料として取り入れて、スキンケアに活かしたいという思いから立ち上げました。信頼のおける日本のラボで開発、パッケージに至るまですべて日本製にこだわっています。9月に発売したばかりの紫蘇を配合したシャンプーとコンディショナー、ボディウォッシュは香りも使い心地もとても気に入っています。
縄文土器から着想を得た「ノグチ カンサイ」のインセンスホルダー
野口寛斎さんに作っていただいたインセンスホルダー。「ダムダム アトリエ」rVol.3でも販売をしました。浄化やリラックス効果もあるお香は、自宅でいつも好きな香りのものを焚いています。野口寛斎さんはもともとファンだった陶芸家。縄文土器にインスパイアされたという形や、ユニークなテクニックで作られた作品は、どれも好みのものばかり。以前、彼の個展を訪れた際に知り合い、フィリップの誕生日プレゼントに花瓶を購入したことから、交流が始まりました。このインセンスホルダーは、白と黒の配色のモダンなデザインで、オブジェとしての佇まいもすてきです。
三浦半島の別荘は海の眺望に優れた自分達だけの場所
週末だけでもリチャージできる場所が欲しいと思って、数年かけて探して見つけたのが、三崎にある別荘。もともとあった古民家を購入しリノベーションしました。庭はまだ未完成ですが、ここで過ごしながらガーデニングをしたり、ペンキを塗ったり、ゆっくりと自分達の手で空間を完成させていこうと思っています。天気がいい日は富士山を望むことができ、目の前には海が広がり、素晴らしいサンセットが見られて、自然の音や匂いを直で感じられる場所。私たちは旅をしたり、いろいろな場所に行くことが好きですが、ここで過ごすだけで十分に満たされますし、スイッチを完全にオフにしてリラックスすることができます。もちろん新たな1週間のためのリチャージも! 新しい商品開発や創造をしていくために必要な空間と時間がここにはあります。