連載:クリエイターのマスターピース・コレクション Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/連載:クリエイターのマスターピース・コレクシ/ Fri, 01 Dec 2023 10:04:36 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 連載:クリエイターのマスターピース・コレクション Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/連載:クリエイターのマスターピース・コレクシ/ 32 32 連載「クリエイターのマスターピース・コレクション」Vol.9  映像作家・吉岡美樹の“サトちゃん人形” https://tokion.jp/2023/08/23/creators-masterpiece-vol9-miki-yoshioka/ Wed, 23 Aug 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=201809 さまざまなクリエイターの愛用するアイテムについてインタビューする連載コラム。第9回は、映像作家・吉岡美樹の創作活動とリンクする点も多いという“サトちゃん人形”を紹介。

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連載「クリエイターのマスターピース・コレクション」 映像作家・吉岡美樹の“サトちゃん人形”

どこかレトロなモチーフが、ポップに動くアニメーション。その独特な感性で人気を集め、ミュージックビデオやさまざまなブランドのビジュアル制作で活躍する、映像作家の吉岡美樹。仕事の愛用品を見せてくださいというリクエストに、差し出されたのはサトちゃん人形。彼女にとってこのキャラクターが持つ意味から、創作活動をするようになったきっかけ、現在の作品づくりのコンセプトまで話を聞いた。

同じものを並べた時に生まれる、“連続性”が好き

――愛用品がサトちゃん人形とは、驚きました。

吉岡美樹(以下、吉岡):そうですよね(笑)。出会いはもうだいぶ昔の子どもの頃。薬局の店頭にある遊具タイプのサトちゃんに、10円玉を入れて乗っていた記憶があります。サトちゃんとの距離が急激に近づいたのは、大学生の時。4年間、ドラッグストアでアルバイトをしていたんです。佐藤製薬の商品におまけでついてきたりするので、サトちゃんはいつも身近な存在でした。

――サトちゃんグッズを収集するようになったきっかけは?

吉岡:私がつくる映像作品では、キッチュでちょっと変わったモチーフを使うことが多く、それでよくオークションサイトで小道具を探したりします。その時に、ものすごいバリエーションのサトちゃんグッズが出回っていることにびっくりして。時計だったり、体重計だったり……、ありとあらゆる日用品にさせられているのを見て、改めて興味深いなって。それで、集めるようになりました。

――サトちゃんの魅力はなんですか?

吉岡:そもそも、象がオレンジ色っていうカラーリングが奇抜です(笑)。よく見ると、手足の先は緑色だし……。この攻めたキャラクターデザインに、一目置いております。

集めている中で一番多いのは、ソフビの指人形。全部で50個くらいあると思うんですが、製造された年代によって顔つきが違うんです。時代が進むにつれてだんだんと鼻が短く、全体的に丸みを帯びたフォルムに。私は第2世代の顔が好きで、それを中心に集めています。妹の“サトコちゃん”もいるんですけど、やっぱりサトちゃんのオレンジ色がお気に入りです。指人形以外にもぬいぐるみとか、珍しいものだとペンダントトップとか、気になるものがあると購入して、部屋のいろんなところに置いています。

――吉岡さんの作品でも活躍しているんですか?

吉岡:同じものがたくさん並んでいる、モチーフの連続性が好きなんです。作品でも、同じものをぎゅっと集結させて撮影したりすることが多くって。サトちゃんもたくさん並べて、写真を撮ったりします。作品に頻繁に登場するってわけではないんですけど、いうなれば私の作風とリンクする存在って感じですかね。

同じものを集めることが好きだという話でいうと、映画の半券もそう。高校生の頃から、観た映画をスクラップブックに貼って保管しているんです。同じ形式のものが並んでいる、このくり返し状態にぐっときます。

思い返してみると、小学生の時はゲームセンターにあった「オシャレ魔女♥ラブandベリー」のカードとか。シルバニアファミリーの人形もたくさん持っていました。そういう意味では、もの心ついた頃から収集に対するこだわりがあったのかもしれません。

シルバニアファミリーの人形で、コマ撮りに挑戦

――創作活動に興味をもったきっかけは?

吉岡:幼稚園の頃から、絵と工作の教室に通っていて。ものづくりはずっと好きでしたね。本格的に学ぶようになったのは、高校生の時。工業高校のデザイン学科に進学してからです。1、2年生ではレタリングやグラフィックなどの、デザインの基礎をひと通り勉強したんですが、そういう緻密なデザイン作業はあまり得意ではないと感じました。3年生の選択授業で映像のクラスがあって、そこから自主的にも映像作品を制作をするようになりました。

――映像制作の何が魅力だったんですか?

吉岡:私にとって映像は、割と勢いでつくれる印象だったんです。いわゆるデザイン作業は、細かい配置に気を配ることが多いというか、もう少し繊細な作業で。あまり楽しくできることではなかったですよね。

映像の中でも最初につくりたいと思ったのは、ストップモーション。好きなMVに影響を受けて、ひとりでシルバニアファミリーの人形を動かして撮影したりしていました。

最近は、純粋なストップモーション作品はあまりつくっていないんですが、どちらかというと“描いたイラストをストップモーション的に動かす“ものが多いです。

――なめらかな動きではなく、あえて解像度の低い動きをさせる?

吉岡:そうです。小学校3年生くらいからパソコンを使っていて、フラッシュゲームでよく遊んでいたんです。その頃のゲームの動きって、今よりもう少しカクカクしていたというか。そういう“解像度の低い映像”に愛着があって、だから最近メインで制作しているGIFの動きも好きなのかもしれません。

隅々までコントロールして動かせることが魅力

――作品づくりのアイデアはどこから?

吉岡:身近なものがテーマになることは多いですね。実家暮らしをしていた頃は、家族が作品に登場することもたびたびありました。2020年からは、もぐらちゃんという名前のゴールデンハムスターを飼っていたんですが、その時はもぐらちゃんがかじったトイレットペーパーの芯をモチーフに使ったり。今年亡くなっちゃったんですけどね。2歳8ヵ月だったので、人間でいえば100歳くらい。大往生でした。

ほかには、映画で得たインスピレーションが作品づくりに生きることも多いです。特に好きなのは1950年代から1970年代の日本の映画で、ずっと好きなのは増村保造監督です。本編ももちろんおもしろいんですが、クレジットの演出が気になったり。昔の日本映画は、クレジットが最初に流れることが多いんですけど、映像に合成したアニメーションの動かし方とか、増村作品は特にかっこいいものが多いです。

――映像作家として、映画をとりたいという願望は?

吉岡:映画は観る専門です。“自分がすべてをコントロールできる状態で作品づくりをしたい”っていうのが、自分のスタイルだと思っていて。映画の撮影だと、天候とか、人の動きとか、なかなか制御しきれない部分が多いですよね。もちろんそれが映画製作の醍醐味であるとは思うんですけど、私の趣向はちょっと違っていて。画面隅々のモチーフまで目配りして動かすほうが好きです。

――仕事道具へのこだわりはありますか?

吉岡:……あんまり考えたことないですね。イラストを描く時は、ペンタブよりマウスのほうが上手に描ける、ってことくらいですか。紙に描くこともありますけど、鉛筆とかスケッチブックに対するこだわりはあまりなくて。コピー用紙に描いて、それをスキャンするような感じです。

使う道具うんぬんっていうよりも、作品に登場させるモチーフに対するこだわりが強いかもしれないです。このモチーフは絶対に使いたい! とか、逆に、絶対に使いたくない! とか。自分の中に、確固たる判断基準がありますね。

――これから挑戦してみたいテーマは?

吉岡:ここのところのブームは、“異国感”。最近手掛けたミュージックビデオ、アマイワナの「上海逢引(Shanghai rendezvous)」では、タイトルのとおり上海がテーマで。リアルな上海っていうよりも、海外の人から見た“それっぽい”上海。もともとアメリカやヨーロッパよりも、アジアのちょっと湿度のある感じが好きなんです。あやしくて、どこか胡散臭いというか。そういう世界観の作品を、またつくってみたいですね。

Photography Shin Hamada
Text Maki Nakamura
Edit Kei Kimura(Mo-Green)

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連載「クリエイターのマスターピース・コレクション」Vol.7 劇作家・藤田貴大の“キャンプ道具” https://tokion.jp/2022/10/08/creators-masterpiece-vol7-takahiro-fujita/ Sat, 08 Oct 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=146372 さまざまなクリエイターの愛用するアイテムについてインタビューする連載コラム。第7回は「マームとジプシー」の劇作家・藤田貴大が公演ツアーに欠かさず持っていくという“キャンプ道具”を紹介する。

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演劇カンパニー「マームとジプシー」の主宰として、15年にわたり作・演出を手掛けている藤田貴大。人や土地が持つ記憶、時間と空間の流れ、会話といった普遍的なモチーフを扱いながら、「演劇の中でしか語られないこと」を描き続けてきた。今回は巡業の旅でも愛用しているというキャンプグッズを中心に、道具と演劇の関係性や、コロナ禍で感じた変化について、劇作家の視点で語ってもらった。

“自分達の空間”をどこにいても作れるように

--藤田さんの愛用品について教えてください。

藤田貴大(以下、藤田):今日は「ヘリノックス」のチェア、インナーテント、テーブルなどを持ってきました。ちょっと先に組み立てますね。キャンプ道具だけど、僕はアウトドアで使うというよりも、稽古場や楽屋で使っているんです。やっぱり、知らない部屋の備え付けの椅子に座るのって嫌じゃないですか。もともとあるスペースを、“自分達の空間”にしていくような感覚で使っています。

--空間を持ち歩くような感じですか。

藤田:そうですね。そもそも「マームとジプシー」の演劇には舞台美術っていうものがなくて、自分達の私物を配置するだけなんですよ。いわゆる「セット」をかっちり作るというよりも、自分達が持っているものを倉庫から引っ張り出して使うから、終演後に捨てるものがない。舞台上にある椅子1つでも、自分がよく知っているものを使いたいという意識があるんです。だから「空間を持ち歩く」っていうのはその通りで、そういうことをずっとやってきた感じです。

コロナ禍になってからは、さらに内側のことに気持ちが向いていって、「楽屋ってもっと重要な場所だったんじゃないか」と思ったんですよね。観客からは見えていない部分でも、そこに自分たちの空間があって、ちょっとコーヒーを飲んだり、簡単な料理をしたり、横になったり。そうやって「部屋」のようなものが配置されていることで、みんなの気も緩むんじゃないかなと。

--使っていて、いいなと感じるのはどういうところですか?

藤田:数分で簡単に組み立てられるし、椅子の高さや座り心地が全部違うから、気分に合わせて座り回れる(笑)。家の中で考えているような感じで、どこにいてもうろうろできるのが気持ちいいんですよね。それでいて、僕たちの製作スペースはプライベートじゃなく、あくまでパブリックスペースだっていう意識もある。開かれたみんなの場所だという感覚がありつつ、でも誰しもにとって人ごとではない空間にしたいというのは、舞台にも言えることなんですよね。そのせめぎ合いが楽しいし、劇場やリハーサルスタジオ、楽屋がセミパブリックであるという観点をいつも自分の中に持っておくことが、演出にも影響を与えていると思います。

--家と外の中間みたいな感じですね。

藤田:そうですね。だから、僕が気になっているものとか、いいなと思っているものを、その時取り組んでいる作品と関係がなくても、それとなくどこかしらに置いておいたりもします。キャストやスタッフに何がやりたいか、表現する意図を伝えるのも僕の仕事だけど、あんまり言葉だけでそれをやっちゃうと、簡単に説教じみてしまうから(笑)。今年、沖縄での製作を通して考えたことや対談集を収録した『Light house Dialogue』という冊子を「マームとジプシー」から出したんですが、それも「読んでね」というよりも、ただどこかにスッと置いておく。手に取る人がいてもいいし、手に取らない人がいてもいいくらいのムードで。

今日はツアー先にも必ず持っていくものをいろいろと用意してきたんですが、僕がいちばん見せたかったのは、この『HUNTER×HUNTER』の最新刊。いや、おこがましいですね。ジャンプに掲載されて、まだコミックスになっていないページをカッターで切り取ってまとめた“自作”の最新刊です。約3年半前に連載が休止になりましたが、その最後の回の掲載時からずっと肌身離さず、持って歩いています。海外へ行くにも、どこへ行くにも。連載再開を待ち侘びつつ、冨樫先生のことを唯一無二だと思って尊敬しているので、とにかくお身体が心配ですし、もう思う存分時間をかけて、納得いくものを描いてほしいです。

外にいながら内にいる感覚は、キャンプも劇場も同じ

--藤田さんがものを買う時に、選ぶ基準みたいなものはありますか?

藤田:最近わかったのは、なんていうか、役者さんをキャスティングするのと同じように“もの”を選んでるんですよね。例えばこのテーブルもキャストも、等価値に考えてみるんです。「道具と一緒にするな」みたいに言われるかもしれないけど、いくら役者さんが素晴らしくても、その横にある椅子がなんでそこにあるかわからない椅子だったら、何も成立しないと思うんです。だって演劇における観客は常に舞台の全体を見つめていて、その目には同時に人も“もの”も、空間の余白も、何もかも全部が映っているわけだから。こだわらないわけがないし、こだわらないにしても「こだわらない」というデザインがなされているはず。舞台に存在するからには、何であっても何らかの意図が必要だと思う。だから必然的に、もの選びもキャスティングと同じように大切な時間で、繊細になるんですよ。自分がそうやって、大切に道具と接していればそれが役者さんたちにも伝わる。演じるための、ただのツールとしてではなくて、“もの”のことも共演者だと思ってほしい。

--自分が何を持っていて、どうなりたいかによって選ぶものが変わってくる。「キャスティング」っていう感覚はわかるかもしれないです。

藤田:あ、そうなんですよ。別に演劇に限った話じゃなくても、みんな普段から生活や日常の中で“もの”をキャスティングしてるんですよね。「マームとジプシー」には「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。 そのなかに、つまっている、いくつもの。 ことなった、世界。および、ひかりについて。」という舞台美術がテントだけの作品があるんですが、それは海外公演の旅にも持っていきやすいんですよ。アウトドアグッズってすごくコンパクトなのに、広げたときのインパクトがあって、どこにでも行けるというおもしろさがあるなってずっと思ってて。

--『てんとてん』は、森の中でテントを張っているというシチュエーションですよね。そういう状況だと、普段は話せないようなことが話せたりする。外であり内であるっていう感覚は、劇場や演劇っていうものと少し似ているなと思いました。

藤田:そうですね。森の中というのは、ただ広大で有機的な空間ってだけではなくて、箱庭的な空間性もありますよね。樹々に包まれているようで、そこでしか話せないことがある、みたいな。最近までツアーをしていた「cocoon」という作品でも、観客と役者さんとの間でだけ交わされる言葉があるような気がするんですよ。そこだけで交わされる秘密の、一度きりしかない時間が上演時間なのだとしたら、それは森の中でひそひそ声で語り合うようなイメージと似ているのかもしれない。

--どちらも日常やシステムからのエスケープというか、別の空間に行きたくなる感じがありますよね。

藤田:劇場ってもちろんインドアな空間ですけど、観客からしたら外に出ないと行けないところだから閉塞的な屋内とも言い切れなくて、そこがおもしろいですよね。子どもと大人が一緒に見れる演劇を作っていたときも思ったんですが、森とか海とかプールとか、レジャーに行くのと近い感覚が劇場にはあるのかなって。

--そういうところにいると、時間の感覚も変わってくる気がします。

藤田:劇場の中に展開されている空間性を前にすると、観客のみなさんはやっぱり普段の生活では味わえない何かを体感するんですよね。いつもとは違う時間の中でワクワクしているのが、わかる。コロナ禍になってソロキャンプとかも流行っていますけど、ここじゃない現実に行きたい、非日常を味わいたいっていうのが一層高まっているのかもしれない。外へ出て、いつもだと触れられないものに触れるというのは、衣食住と同じように、人にとって必要なことだと思うんです。例えそれが散歩だとしても、外の空気を吸いたくなるのが人だと思う。だから「不要不急」と言われても演劇を諦めたくないし、外へ出て、曖昧な何かを掴みたいという意識のある人達がこんな時代でも劇場に来てくれていることが、とても嬉しいです。

一度きりの奇跡みたいなものを待つ時間が、演劇という営み

--『cocoon』の東京公演がそうでしたが、コロナの影響で中止になってしまうことも多いです。日々状況が変わっていくなかで、どんな心境でいますか?

藤田:この3年間で、いろんなプロジェクトが中止になりましたね。未だに僕らも演劇界も打撃を受けているし、それにともなった仕組みもまだできてないから、厳しい状況は続いています。ただ、やっぱり必要とされているっていうのは感じるし、僕ら自身も演劇という営みがあってここにいるわけだから、やめるわけにはいかないよねって話しています。

あたりまえのように活動できていた演劇があたりまえじゃなくなったことは、いい面もあると思ってるんです。明日中止になるかもしれないから、観客も僕らもその1回にかける緊張感が以前とは全然違う。コロナ禍にならなくたって、演劇とは奇跡のような時間を待つ行為だなって思っていたんですけど、そのことに改めて気づかされたというか。むしろ演劇がもともと持つ性質が自分の中でも、世の中的にも再評価される機会になるんじゃないかなあ、と。

--藤田さんは子どもの頃から演劇をやっているからこそ、それができなくなるっていうのは大きな揺らぎですよね。でも、悪い面だけではない?

藤田:そうですね、10歳からやっていて、今がいちばん揺らいでる時期かもしれない(笑)。演劇ってなんだろうって考えるのは、子どもの頃からなんだけど、その延長線上に今のこの状況というのがあるから。ただ、演劇が成立するための条件が少し難しいだけで、演劇という表現自体のせいではないよなあとか、落ち着いて考える時間にもなっているんですよね。こうやって楽屋にテント広げてみると、役者さんの表情が変化するとか、そういうのもおもしろくて。演出って、いろいろな状況下でそこに集う人たちの気分を観測して、それを環境も含めてひたすら地道に調整していく仕事だとも思うんですよね。その視点も、精度も、このコロナ禍で全然変わった気がする。目を向けていなかったことに、目を向けられるようになった。

同じ演目を持ってツアーを回っていても、足を運ぶその土地によって全然違う作品になるんです。どこも響きが違うから、台詞も照明も音も、その劇場の特性に合わせて全部調整し直すんですよね。そこが映画表現とはまた違う、演劇の贅沢なところで。演劇はすごく流動的で、生きている、変化する余地のあるものなんです。どうしたって現在という時間に影響を受けやすいから。そういう揺らぎが演劇の個性でもあるからこそ、今の状況を必ずしもネガティブだけだとは捉えられなくて、むしろチャンスなんじゃないかとも思えるんです。

藤田貴大
1985年4月生まれ、北海道伊達市出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻。2007年に「マームとジプシー」を旗揚げ、以降全作品の作・演出を担当する。作品を象徴するシーンを幾度も繰り返す“リフレイン”の手法で注目を集め、2011年6~8月にかけて発表した三連作「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。以降、さまざまな分野の作家との共作を積極的に行うと同時に、演劇経験を問わずさまざまな年代との創作にも意欲的に取り組む。2013年、2015年に太平洋戦争末期の沖縄戦に動員された少女達に着想を得て創作された今日マチ子の漫画『cocoon』を舞台化。同作で2016年第23回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞、今年は7月-9月にかけて、7年ぶりのツアーを実施した。演劇作品以外でもエッセイや小説、共作漫画の発表等活動は多岐に渡る。

Photography Takeshi Abe
Text Mayu Sakazaki
Edit Kei Kimura(Mo-Green)

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連載「クリエイターのマスターピース・コレクション」Vol.6 写真家・大森克己の“バックパック” https://tokion.jp/2022/07/22/creators-masterpiece-vol6-katsumi-omori/ Fri, 22 Jul 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=132996 さまざまなクリエイターの愛用するアイテムについてインタビューする連載コラム。第6回は写真家・大森克己が10年近く背負って歩いているという“バックパック”を紹介。

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ミュージシャンやロックバンド、俳優や落語家、そして町はずれを歩く市井の人々まで、さまざまな“生”の瞬間を写真に残してきた大森克己。近年ではスマートフォンで撮った日常の写真やエッセイの連載など、表現方法を軽やかに変化させながら目の前の風景を記録し続けている。今回はそんな日々を共にしてきたバックパックについて聞きながら、撮ること、書くこと、歩くことなどについて語ってもらった。

何かおもしろいものがあったらすぐ撮りたいから、手ぶらがいい

--大森さんの愛用品について教えてください。

大森克己(以下、大森):浦安・舞浜のセレクトショップで偶然見かけて買った、「マスターピース」というブランドのバックパック。これはもう10年近く使っていますね。特にブランドやアイテムにこだわりがあるわけじゃないけど、こういう背負える系のバッグじゃないと、両手があかないじゃないですか。歩いててパッとおもしろいものがあった時に、すぐに写真が撮れるほうがいい。肩からかけるカメラバッグだと動きづらい時もあるから、機能的にも使いやすいんです。

--いくつも使い分けるというより、同じものを使い続けることが多いですか?

大森:そうですね。真夏は背中に汗をかくからあまり使わないけど、それ以外はずっと同じものを使っています。バックパックによっては重心が下にいきすぎるものもあるけど、これは生地がしっかりしてて背負ってもそこまで落ちてこない。横のポケットも大きいし、中に仕切りがないから荷物を入れやすいし、三脚と一緒に出張にも持っていきますよ。基本的にはこれを背負って、車で行くような撮影の時はカメラバッグ、長めの出張のときはボストンバッグなどを足す感じですね。

--普段はどんなものを持ち歩いていますか?

大森:いつも入れてるのは「キヤノン」のカメラを1台と、プールと銭湯に行くための一式、あとは展覧会の招待状とか請求書とか(笑)。それから今読んでる本(フェルナンド・ペソアの『新編 不穏の書、断章』、カルロ・レーヴィの『キリストはエボリで止まった』、鈴木涼美の『娼婦の本棚』)も持ち歩いています。『キリストはエボリで止まった』は、第2次世界大戦の時に反ファシズムの政治犯として南イタリアの僻村に流刑になった医者であり、画家である作者の小説で、おもしろいですよ。コロナ禍になってからの状況とどこか共通するものがあるなと思って、こういう作品や収容所をテーマにした本とかを最近は読んでいますね。

--身に着けるものを選ぶ時に、大事にすることはありますか?

大森:基本的には機能性がいちばん。おしゃれとか見栄えとかもあるけど、こういうバッグはやっぱり道具だから、使いやすいかどうかですよね。洋服ってなると、仕事柄いろいろな人に会うから、例えばホテルのロビーとかに行ってもギリギリ大丈夫な感じっていうラインはあります。それも1つの機能性ですよね。

歩いているから見えてくるもの、歩きながら思い出すこと

--「バックパッカー」という言葉があるように、バックパックは旅の象徴でもありますよね。そして「歩く」「移動する」というイメージが同時に浮かんできます。大森さんは普段から歩くことが多いですか?

大森:歩くのが基本ですね。コロナで散歩することが増えたけど、その前からたくさん歩いていました。15年くらい前に一時期ずっと車で移動していた時があって、そうするとやっぱり写真を撮らなくなるんですね。密室だから好きな音楽を聴いたりして気持ちいいんだけど、目的地以外に行かなくなるし、人と世の中の感じが見えなくなってダメだなと思いました。もちろん車も電車も必要に応じて使うけど、歩いているほうが絶対にいろんなものがよく見えるから。

--歩くことや移動することが、作品につながることもありますか。

大森:まあ、大体がそうですね。何気なく歩いている時に何かを思い出したり、普段見えていなかったものが見えてきたりする。ずっと机に向かって座ってるとしんどいでしょ。スタジオにこもってもの作りをしたり写真を撮るっていうタイプじゃないから、何かしらいつも動いてるんじゃないかなと思います。

--2007年に発表された『Cherryblossoms』では、日本全国の桜を撮られていましたよね。

大森:あの時もたくさん歩いてましたね。当時はこれじゃなかったけど、やっぱりバックパックを背負っていました。

--コロナ禍で移動の意味も変化してきましたが、どんなことを感じていますか?

大森:やっぱりずっと家にいるっていうのは嫌だよね。そもそも「家」とか「自分の部屋」とかにあまり執着がないんですよ。外観とか内装とかこんな場所に住みたいとかもなくて、友達んちとか、居候っぽい感じとか、そういうのがいい(笑)。だからこそコロナ禍になって、もう少し家について考えたほうがいいかなと思うようにもなりました。あとは、さっき言ったように散歩する時間が増えたとかね。

--歩く時は、音楽を聴いたりしますか?

大森:音楽自体はすごく好きなんですけど、イヤフォンを通して聴くのが好きじゃないんです。周りの音も聞こえなくなるし、たまに夜中に爆音で聴きたくなるとき以外は、歩く時に何か聴くっていうのはないですね。散歩しながら、気になったものはいろいろとiPhoneで撮ってますよ。初めて歩く道もドキドキするけれど、毎日歩いている道だと、小さな変化にも気がつく。そういうのが楽しいですね。

写真には写りにくいこと、写らないことを文章にしていく

--最近は、どんな作品を作っていますか?

大森:今は文章をまとめて単行本を作っているところです。2012年から『小説すばる』で月に1回、足かけ6年連載をしていて、テーマを決めずに短い文章を書いていたんですよ。それで書くことが習慣になってリズムができてきて、連載が終わったあとも『dancyuWEB』で1年くらい書かせてもらって。合計すると8年分くらいあるので、それともっと昔書いたものや別の媒体で書いたものなんかを合わせて、1冊の本にします。

写真を軸にした生活の中で紡いだ詩やエッセイ、日記が中心で、500ページくらいの分厚い本になる予定です。写真家の著作ですが一切写真は収録せず、文章だけの本。写真に写りにくいこと、写らないことを文章にしているんだと思います。

--昔から文章を書くのは好きでしたか?

大森:いや、子どもの頃は読書感想文とか作文とか、手紙も好きじゃなかったですね。今みたいにパソコンがなかったら書いていないんじゃないかな。昔と比べると、メールとかLINEとかTwitterが出てきて、文体にも影響を与えているだろうし、人とのやりとりがすごく早い時代ですよね。例えば映画の感想、戦争が起こった時に感じること、ニュースやネットや新聞への意見とかも、すぐに言葉にしなくていいじゃんって僕は思う。今は世界中で実況中継が乱立してるような状態だけど、何かを受け止めたり、言葉にすることの速さだけを競ってもしょうがないでしょう。

--写真を撮ることと、文章を書くことは影響しあいますか?

大森:写真があるから書かなくていいっていうこともあるけれど、写真には写らないから書く、っていうことなんじゃないかな。

大森克己
1963年生まれ、兵庫県神戸市出身の写真家。フランスのロックバンド「マノ・ネグラ(Mano Negra)」の中南米ツアーに同行した写真や旅先の風景などをまとめた作品『GOOD TRIPS, BAD TRIPS』が評価され、1994年に第9回写真新世紀優秀賞(ロバート・フランク、飯沢耕太郎選)受賞。その後、現在にいたるまで雑誌や広告、国内外のアーティストのポートレートやライブ写真など、さまざまな場で撮影を行う。2020年には写真集『心眼 柳家権太楼』を刊行。近年は写真作品と並行してエッセイも執筆、この夏に初のエッセイ集の発売を予定している。

Photography Shin Hamada
Text Mayu Sakazaki
Edit Kei Kimura(Mo-Green)

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連載「クリエイターのマスターピース・コレクション」Vol.5 音楽家・石橋英子の“音楽機材とぬいぐるみ” https://tokion.jp/2022/03/11/creators-masterpiece-vol5-eiko-ishibashi/ Fri, 11 Mar 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=99131 さまざまなクリエイターの愛用するアイテムについてインタビューする連載コラム。第5回は音楽家・石橋英子がいつも持ち歩いているという“音楽機材とぬいぐるみ”を紹介。

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音楽家、シンガー・ソングライターとして6枚のアルバムを発表する傍ら、映画や舞台の音楽制作を行い、演奏者としても多くの作品に参加してきた石橋英子。近年では、米・アカデミー賞にもノミネートされた映画『ドライブ・マイ・カー』の音楽を手掛けたことや、「星野源バンド」への参加でも知られる。“ミュージシャンズ・ミュージシャン”である彼女が愛用する機材のこと、そして幼少時代から肌身離さず持っているというぬいぐるみについて話を聞いた。

海外にも連れていくぬいぐるみ達は、お守りのような存在

--石橋さんの愛用品について教えてください。

石橋英子(以下、石橋):ぬいぐるみはいつも一緒にいて、海外に行く時も必ず持っていきます。左の子は、モシモシさんという京都の人形作家さんのもので、右の子はどうやって見つけたのか覚えていないくらい昔から持っているもの。お守りのような感覚があって、手元にあることで少しピリッとするというか、ちゃんとしなきゃという自制の気持ちが持てるんです。

--それは、昔から同じ感覚ですか?

石橋:子どもの頃はただ一緒に眠りたいとか、そういう感じだったと思うんですが、大人になってからはこの人達に守ってもらってるようなところもあって。以前、ポルトガルのリスボンにあるライヴハウスに忘れてきたことに気が付いて、相当動揺した時もありました。でも、そのライヴハウスの人がとても大事に扱ってくれて、移動先のベルリンまで送り届けてくれたんです。こういうものを大人になっても大切にするということを馬鹿にしない人で、本当によかったなと(笑)。

--そういうものって子どもの頃は誰しもあると思うんですが、いつの間にかなくなってしまったりするので、ちゃんと残っているというのが素敵です。

石橋:そうですね。ジム(・オルーク)さんもずっとぬいぐるみを持っている人なので、そういうところは共有できる部分です。家にはジムさんのぬいぐるみもあるし、私がどこかで拾ってきたぬいぐるみ達もいます。なぜか、歩いているとよく捨てられたぬいぐるみに遭遇するんですよ(笑)。去年も2人くらい拾ったので、お風呂に入れて、家に置いています。

--ぬいぐるみって生き物ではないけれど、ただの「物」でもない、不思議な存在ですね。

石橋:そうそう。だからといって魂が宿っているとか、そういう感じでもないんです。それは私達の心の中の、勝手なものだったりもするから。でも、私にとってはなくなると自分自身もちょっとぐらつくような感覚になる、そういう存在です。機材と一緒に荷物に入れて、いつも持ち歩いています。

シンプルでおもしろい音楽機材に出会うたびに、作品が生まれる

--愛用の音楽機材についても聞かせてください。

石橋:HOLOGRAMの「INFINITE JETS RESYNTHESIZER」は、最近の作品では必ず使っているエフェクターで、ほとんどシンセみたいなもの。ピアノやフルートの音などを機材を通すことで少し歪ませたり、変化をつけたりします。私は音楽をやっているくせに、音に驚いたり苦手に感じることも多いんですが、このエフェクターは自分の音嫌いを和らげてくれる大事なもの。なんだか蜃気楼のような、霧の向こうで鳴っているような音になってくれて、そこが好きなんです。

--いつ頃から使っているんですか?

石橋:これ自体は2年前くらいからですが、エフェクターを使うようになったのは15年くらい前かな。YouTubeとかでデモ演奏しているのをチェックして、自分のやりたい演奏や楽器に合いそうだなと感じたら買うようにしています。ただ、大体デモ演奏はギターを使っていて、フルートを使ったらどういう音になるかっていうのは未知数だったりするので、それがおもしろくて買っているところもあるかもしれないですね。

--もう1つは、レコーダーですね。

石橋:これは2017年にジョン・ダンカンというアーティストとツアーをしている時、ハードオフで買ったもの。「ソニー」の「PCM-M10」という古いモデルではあるんですが、未だに名機といわれているレコーダーです。一緒にツアーをまわっていたドラマーのジョー・タリアさんに、「これは安いから買ったほうがいいよ」と勧められて、確か¥10,000しなかったんじゃないかな。ツアーの目的の半分はハードオフかもしれないっていうくらい(笑)、地方に行ったら必ずチェックしています。

--これは、いつもどういう時に使うんですか?

石橋:例えばライヴハウスの換気扇が変な音を出していたり、街でおもしろい音が鳴っていたら、録音してデータをためておくんです。それをあとで作品の中で使ったり、その音でリズムを作ったりするので、すぐ録れるよう常に持ち歩いています。

--街のスナップみたいな感じでおもしろいですね。

石橋:そうですね、素材集めみたいな感じです。子どもの頃からラジオを録音するのが好きで、ラジカセを2つ並べて外の音を混ぜて録ったり、テープからテープに録音したりしていました。外にあるノイズと音楽を混ぜるっていうことが、自分の中で心地よいものとして定着していたというのはあるかもしれません。

--実際に、このレコーダーを使っている作品について教えてください。

石橋:Bandcampでリリースしているものに関しては、けっこう使っていますね。最近『For McCoy』というアルバムを出したのですが、それは熱海の商店街のスピーカーから流れていた音楽を録音して使いました。古いスピーカーから流れているちょっとこもって歪んだ音は、他にないものですよね。

そんなふうに思いつきで録音したものでも、たいていきれいに録れていますし、操作も簡単で使いやすいんです。私は複雑な機材よりも、シンプルでおもしろい音づくりができるものが好き。機材を1つ買ったら、いじったり遊んだりしているうちに形になってくるので、作品ができたらBandcampでリリースするという感じです。

映画を観る時間がなかったら、音楽をやめていたかもしれない

--外で聴こえてくる音と、音楽というのはすっと馴染むものですか?

石橋:もちろん音量やバランスなどもありますが、自分の中では、混ざらないものはそんなにないんじゃないかなと思います。最近、映画『ドライブ・マイ・カー』の音楽を担当したのですが、劇中では車や船などの外の音がすごくきれいに録音されていたので、それを中心に考えていったんです。映画の中で録れている音がメインで、音楽は添えるだけでいい、という感覚でできました。

私は出身が千葉県茂原市で、実家の近くに工場がたくさんあったりしたので、そこから聴こえてくる音が、自分の中では1つの音楽として存在していました。一定のリズムの機械音やノイズみたいなものを日常的に聴いていた経験が、音楽を作る時の基盤としてあるのかもしれないですね。

--『ドライブ・マイ・カー』の劇中では、“音楽を意識させられる瞬間”というのがなかったんです。でも確実に、石橋さんの音楽があるから映画が完成しているという感覚はあって、これが映画音楽なんだと感じました。

石橋:それはよかったです。濱口竜介監督からは特に具体的なリクエストはなかったのですが、「これは違う」という判断をはっきりしてくださる方でした。映画や舞台の音楽を作る時は、作品の核になるもの、軸になるものから外れたくないという気持ちが強く働くので、そういうクリアな判断にすごく助けられましたね。

--石橋さんは昔、映画館でアルバイトをしていた経験もあると聞きました。映画は、石橋さんの音楽づくりにとって欠かせないものですか。

石橋:そうそう、ずっと前に渋谷Bunkamuraのル・シネマで働いていたんです。当時は上映のたびに肉声でアナウンスをしなきゃいけなくて、滑舌が悪かったり言い間違えたりして、とても大変でした(笑)。私は音楽よりも映画の方が好きかもしれないっていうくらい、映画を観ている時間が長いんですよ。1日に少なくとも1本は観るので、日常生活の一部になっています。映画の時間があることでリフレッシュできて、気持ちを切り替えることができるので、それがなかったら音楽をやめていたかもしれません。1日かけてもいいものができなかった時などに、それを一旦忘れさせてくれるような存在でもあります。

--何かを作る人にとって、そういう存在は大きいですね。

石橋:仕事場にも大好きな『刑事コロンボ』のピーター・フォークのポスターを飾っているんですが、作業中にぱっと見上げると「まだダメでしょ」と叱咤激励されているような感覚になるんです。「もっとちゃんとやんなさいよ」っていつも鼓舞されている気がして、「はい、頑張ります」と(笑)。これからも自分の頭の中で描いているものを、いろいろな楽器で演奏して、形にしていけたらと思っています。

石橋英子
千葉県出身、日本を拠点に活動する音楽家。電子音楽の制作、舞台や映画や展覧会などの音楽制作、シンガー・ソングライターとしての活動、即興演奏、他のミュージシャンのプロデュースや演奏者として数多くの作品やライヴにも参加している。近年では劇団マームとジプシーの演劇作品や、アニメ『無限の住人-IMMORTAL -』、映画『ドライブ・マイ・カー』の音楽を担当。ピアノ、シンセ、フルート、マリンバ、ドラムなどの楽器を演奏する。2022年の最新作はBlack Truffleよりリリースされた『For McCoy』。

Photography Shin Hamada
Text Mayu Sakazaki
Edit Kei Kimura(Mo-Green)

■石橋英子 BAND SET with ジム・オルーク、山本達久、マーティ・ホロベック、藤原大輔、松丸契
日時:4月13日、14日
会場:ブルーノート東京
住所:東京都港区南青山6-3-16
時間:1st/17:00(オープン)18:00(スタート)、2nd/19:45(オープン)20:30(スタート)
入場料:¥7,000
チケット: http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/eiko-ishibashi/

日時:4月22日
会場:ビルボードライブ大阪
住所:大阪府大阪市北区梅田2-2-22 ハービスPLAZA ENT B2
時間:1st/16:30(オープン)17:30(スタート)、2nd/19:30(オープン)20:30(スタート)
入場料:サービスエリア¥7,000、カジュアルエリア¥6,500(1ドリンク付き)
チケット: http://www.billboard-live.com/pg/shop/index.php?mode=top&shop=2

日時:4月23日
会場:radi cafe apartment
住所:三重県四日市市諏訪栄町1-6
時間:17:00(オープン)18:00(スタート)
入場料:¥4,000
チケット: http://radicafe.blogspot.com/2022/02/band-set-live.html

出演 :石橋英子(ピアノ、シンセ、フルート、ヴォーカル)、ジム・オルーク(ギター)、山本達久(ドラムス)、マーティ・ホロベック(ベース)、藤原大輔(テナーサックス、フルート)、松丸契(アルトサックス、フルート、クラリネット)

Drive My Car Original Soundtrack (with bonus tracks)

■Drive My Car Original Soundtrack (with bonus tracks)
https://ssm.lnk.to/DMCOSwbt

CD ¥2,750
LP(初回限定生産商品)¥3,850円

Official Audio
https://youtu.be/Sp3GQ_3eg10

Drive My Car (Kafuku) Official Music Video
Starring Toko Miura
Direction & Edit Ryusuke Hamaguchi
For McCoy

■For McCoy
LP Now on Sale

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連載「クリエイターのマスターピース・コレクション」Vol.4 ファッションデザイナー・山縣良和の“画材” https://tokion.jp/2021/12/14/creators-masterpiece-vol4-yoshikazu-yamagata/ Tue, 14 Dec 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=79221 さまざまなクリエイターの愛用するアイテムについてインタビューする連載コラム。第4回はファッションデザイナー・山縣良和が、ドローイングのためにそろえている“画材”を紹介。

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「リトゥンアフターワーズ」を手掛けるファッションデザイナー、そしてファッションスクール「ここのがっこう」を主宰する教育者としての顔も持つ山縣良和。歴史、文化、社会、教育、環境など、ファッション表現の中にある多様なテーマを探究し続けてきた彼が愛用するのは、制作のプロセスに欠かせない画材だ。描くこと、教えること、そしてファッションのこれからについて話を聞いた。

気分のままに手を動かす時間がイメージをつかむ“プロセス”になる

--山縣さんの愛用品について教えてください。

山縣良和(以下、山縣):絵を描く時に使っている画材です。僕が絵を描くのに一番良い状態っていうのが、いろいろな画材がこう机にたくさん並んでいる状態なんです。だから最初から「この画材を使おう」と決めることはせず、試しながら、混ぜながら、実験するような感覚でいつも描いています。

--この中で特によく使うもの、気に入っているものはありますか?

山縣:そうですね、油性ペンだとステッドラーのルモカラーペンが一番好きです。いろいろなものを使いましたが、細さに対しての滲み具合のバランスが良く、手にも馴染む。じゅわっと滲んでいく感じが気に入っていて、いつも買いますね。普段はS(0.4~0.45mm)かF(0.55~0.6mm)で、細めのものを選んでいます。あとは、ウィンザー&ニュートンのアーチスト・オイルバーという、スティック状の油絵の具もよく使っています。今は生産中止になって手に入りにくくなってしまったんですが、油絵の具の要素もあり、クレヨンの要素もある画材で。なかなか乾かないんですが、質感としてはすごく好きです。

--水彩なども使われますか。

山縣:使いますよ。水彩に関しても、滲んだり色が混ざったり、ちょっとコントロールが難しいような効果が出るのが好きですね。描いてから擦って広げたり、紙を先に湿らせておいてから水彩の色鉛筆を走らせたり。はっきりと描くというよりも、抽象的な感じにしていくことが多いです。普通はやらないようなやり方で画材を重ねるので、つぶれてインクが出なくなったり、ダメにすることもしょっちゅう。質感みたいなものが出てくるまで、気分次第で描いています。

--使っている画材は、昔から変わらないですか?

山縣:そうですね。でも、画材屋さんに行って、使ったことのないものを探して買ってみることもよくあります。普段行くのは世界堂、文房堂、レモン画翠とか。神保町の古本屋をまわって、そのまま文房堂に寄ったりするのも好きですね。

--こういった画材を使ってドローイングをしていくことは、作品やデザインにどんな影響を与えますか?

山縣:それは、何を作るかにもよりますね。例えば柄を作りたい時は絵でイメージをつかもうとすることもありますし、コレクション全体のルックをイメージするために描くこともあれば、アイデア出しのために何も考えずやってみることもある。偶然から良いものが出てくる時も、全く出ない時もあります。

かなり前になりますが、2012年の「七福神」のコレクションの際に、大きな絵を描いたことがあります。その時もいろいろな画材を使いましたし、折り紙でコラージュをしたりもしました。絵は制作の中の、1つのプロセスという感覚ですね。

ドローイングを学ぶことは、「物質性」に向き合うということ

--山縣さんはセントラル・セント・マーチンズ美術大学に留学されていましたが、過去のインタビューで「セント・マーチンズではまずドローイングが基盤だった」と話されていました。日本と海外の学校では、服飾教育においてドローイングの重要性はけっこう違いますか?

山縣:違うと思います。海外といってもいろいろですが、僕が行っていた学校は基本的に美大なので、美術の中のファッションという感覚でした。なので、まずベースとしてドローイングがあって、それからアートやグラフィックや空間などを学び、その後にファッションをやる。僕が向こうに行って感じたのは、ライフドローイング、つまりヌードデッサンがそのベースになっているということです。洋裁なのか、美術なのか、というのが大きな違いなんじゃないでしょうか。

--そうなんですね。私は日本の服飾大学を出ましたが、ドローイングは基盤というより専門的な扱いで、一部のコースにしかありませんでした。セント・マーチンズのドローイングの授業で、印象的だったものはありますか?

山縣:大学に入って一番最初のドローイングの授業だったと思うんですが、基本的にはみんな自由に描くんですよ。でも、いきなり先生が「ちょっとお前らまだ硬いから、デモンストレーションするわ」みたいな感じでガンガン描きだして、最後に「こういう感じでやるんだ」って言ってペッて唾まで吐いて。それぐらい自由に、好きなようにやれっていうメッセージだったのかなと思うんですけど。

--型にはまるな、ということですね。山縣さんが主宰されているファッションスクール「ここのがっこう」では、「ファッションドローイングコース」がありますが、どんな内容なのでしょうか。

山縣:先ほどお伝えしたライフドローイングを軸にしつつ、いろいろなドローイングの可能性を試していくような感じです。ドローイングだけじゃなく、紙や布を使ったコラージュやプリントもやります。以前、平面じゃなく立体物に描いていくということをやったんですが、それも良かったですね。パターンの話をしたり、柄を考えていったりしながら、最終的にみんなが描いたものがオブジェのようになっていって、おもしろかったです。画材も自由に、楽しんでいくような感じで。

--デジタルで描くこと、アナログで描くことの違いはどう感じていますか?

山縣:デジタルはデジタルで、アナログではできない可能性がたくさんあります。写真と同じで、どちらとも上手く付き合っていくというか、行ったり来たりしてヴィジュアルを作っていくのがいい気がしますね。上手くいいところを取り入れて、混ぜ合わせてやっていくというか。 ただ、ファッションっていうのはとんでもなく広いものですが、結局リアルな部分では、質感がすごく重要だと思うんです。やっぱり素材とか、ファブリックとかを考えていく上でも、その物質性に向き合わなければいけない。そういう意味で、ドローイングはすごく効果的ですよね。最終的なアウトプットが物質になる場合が多いので、画材を扱うってことは、時代に関係なく重要なことなんじゃないでしょうか。

ファッションのシステムそのものを考え直し、再構築していく

--今、どんな作品や仕事に取り組んでいますか?

山縣:今は、新作の制作をしている段階です。いわゆるシーズンにおける「コレクション発表」という形式じゃなく、今までとは全く別の作り方で、見せ方や売り方まで変えていくようなリニューアルを考えています。

--それはファッションがスピーディな大量生産・大量消費から、サスティナブルなものになっていくことと関係がありますか。

山縣:コロナ禍のこの時間が、良い意味で「自分達のペースってなんだろう」と考えるきっかけになったのがまず大きいです。もともと大量生産・大量消費っていうものに対して学生時代から疑問を持っていて、それは作品にも表れていたと思うんです。業界の慣習みたいなものに対して、自分はどこまでアジャストできるんだろう、という葛藤がずっとありました。

でも、ここ数年は誰がいつ何をやっているかっていうファッションのサイクルがいったんぐちゃぐちゃになって、なんでもOK、という空気があった。そういう時間を経験したことで、次にどういうことをやるべきか、少し見えてきた感じがします。

--システムから再構築していくということですね。

山縣:今、ちょうどドキュメンタリー映画『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』が上映されているじゃないですか。そのトークイベントでも話したことなんですが、映画の最後にマルジェラが、もうシーズンに追われることもない、ハッピーだ、みたいなことをぽろっと言うんですよね。その言葉の意味や、疑問っていうものに向き合うような業界にしていかなきゃいけないと、改めて思いました。

--今は、いろいろな場で「既存のやり方を見直そう」という流れがありますね。

山縣:ファッション産業を見ていると、1990年代にはメイド・イン・ジャパンの服を2人に1人は着ていたのに、今は2%以下まで減って、30年の間にどんどん衰退しています。その上、コロナ禍になって本当に存亡の危機のような状態になっている。

でも、人流も工場もいったんストップしたことで、一時的に地球環境自体はよくなったという話もあるじゃないですか。立ち止まるということを今、多くの人が体験したっていうのは、とても大事なことだと思います。今後もファッション産業は守られてほしいと思いますし、僕自身も、何が正しいのかをちゃんと考えていきたいですね。

山縣良和
1980年生まれ、鳥取県出身のファッションデザイナー。2005年、セントラル・セント・マーチンズ美術大学デザイン学科ウィメンズウェアコースを首席で卒業。2007年に自身のブランド「リトゥンアフターワーズ」を設立。2015年に日本人として初めて「LVMH Prize」にノミネートされる。デザイナーの傍ら、ファッション表現の実験と学びの場として「ここのがっこう」を主宰し、教育者としても活動。2021年には「第39回毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞」を受賞している。

Photography Shin Hamada
Text Mayu Sakazaki
Edit Kei Kimura(Mo-Green)

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連載「クリエイターのマスターピース・コレクション」Vol.3 アニメーション作家・山田遼志の“マウンテンバイク” https://tokion.jp/2021/10/26/creators-masterpiece-vol3-ryoji-yamada/ Tue, 26 Oct 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=65747 さまざまなクリエイターの愛用するアイテムについてインタビューする連載コラム。第3回はアニメーション作家・山田遼志が、先輩アニメーターから引き継いだという“マウンテンバイク”を紹介。

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社会的なテーマを手描きアニメーションで表現した作品が、国内外で注目されるアニメーション作家・山田遼志。KingGnuをはじめとするアーティストのMV、テレビアニメ『オッドタクシー』のオープニングなども彼の仕事だ。愛用品のマウンテンバイクは、先輩アニメーターから譲り受けたという特別な1台。自転車に乗る理由、作品作りへの影響、移動についてなど、さまざまな問いに答えてもらった。

乗るたびに気持ちが引き締まる大先輩の“マスターピース”

−−山田さんの愛用品について教えてください。

山田遼志(以下、山田):僕が会社員だった時代に、フリーランスのアニメーターとして一緒に仕事をしていた大先輩にもらったマウンテンバイクです。白梅進さんといって、『みつばちマーヤの冒険』や『トッポ・ジージョ』のキャラクターデザイン、『楽しいムーミン一家』のOP&EDのアニメーションなどを手掛けた方。70歳を過ぎても、まだ現役でいろいろな作品や広告に関わっているレジェンド的なアニメーターなんですが、その白梅さんが自転車が大好きなんですよ。

--どういった経緯で譲り受けたんですか?

山田:白梅さんはレースやツーリングもやっていて、オーダーメイド自転車をいっぱい持ってる“自転車狂”だと聞いていたので、「見せてくださいよ~」「僕にもくださいよ~」ってふざけてよく言ってたんですよ。僕が会社を辞めてからも飲み会で会うたびにお願いしていたら、自転車をかわいがってくれそうだからという理由で本当に譲っていただきました。

マウンテンバイクをロード用に改造した自転車なんですが、ボディはアメリカ、ホイールはドイツ、ギアは日本のシマノ、と細かくオーダーして組み立てたすごくいいもので、もう恐縮してしまって……。15年前くらいに購入されたものらしく、「全然使ってないから乗ってほしい」って言ってくれたんですけどね。

--やっぱり今まで乗ってきた自転車とは違いますか?

山田:とにかく軽いんですよね。車体がクロモリなのもありますし、1グラムでも軽くしたいってカーボンホイールを何ヵ月もかけて買い付けたりされていて。白梅さんは「道楽だ」と言っていたんですが、そういう話を聞いていると「自分も頑張らないとな」と思います。本当にすごい人なので、アイデアに詰まった時にこの自転車に乗って外に出ると、気持ちが引き締まるというか。

--アニメーターは、70代で現役って普通なんですか?

山田:いや、もちろんいらっしゃるとは思いますが、多くはないと思います。白梅さんは知る人ぞ知るアニメーターで、映像監督の辻川幸一郎さんの指名で仕事をしていたり、広告でも活躍している方。温かくて、深みがあって、若くて、僕にとってすごく偉大な人です。いつも目がキラキラしてるんですよ。

自転車は「考える」ことから自分を解放してくれる存在

--自転車の魅力ってどういうところですか。

山田:もともと身体を動かすのが好きなので、電動とかよりも、やっぱり自分で漕ぎたいんですよね。自分の足で漕いだ分だけ前に進むというのは、アニメーションの作画でも同じだなと感じます。普段から机にかじりついてますし、考えすぎることが多いので、自転車に乗って風を受けているとそれが全部吹っ切れる感じがする。運転すること、漕ぐことだけに頭が集中できるのもいいですね。

--ランナーみたいな感じですね。

山田:そうですね。おもしろい車や人、鳥とか、そういうものを見て自分の気を散らしていくような感じです。サッカーをやってたので走るのも好きだったんですが、走ると呼吸もゼーゼーするし、足もプルプルになって本当に何もできなくなっちゃうので(笑)。自転車はギリギリそこまでいかず、ちょうどいいんですよね。

--そういう時間が、何かを作る時に影響することもありますか。

山田:やっぱり難しく考えすぎてしまうことが僕の悪い癖で、気付いたらもう誰もわからないところにいたりする。そういう自分から解放してくれる存在ではありますね。ただ、そうは言っても無意識に考えてしまったり、何かしら見出そうとしている自分もいるので、乗りながらアイデアを思いつくこともあります。

--コロナ禍で「移動」の意味も変わってきたような気がします。電車に乗ることが減って、自転車や徒歩移動の人も増えましたよね。

山田:僕、もともと電車が嫌いで、基本的には自転車しか乗らないんですよ。フリーになってからはずっとリモートなので、コロナ禍になっても生活は変わらなかったですね。やっぱり身体を動かすのはポジティブな感覚があって楽しいです。別に閉所恐怖症ってわけでもなかったんですけど、電車に乗るのが本当に嫌で……。

--わかります。電車って、自由度が低いですよね。

山田:ああ、そうですよね。自転車だと、自由に道が選べる。日によって、いつもとルートを変えたり、違う脳みそを使えるのが好きなのかもしれないです。「決められている」っていう状態が本当に嫌いなんですよ。

--そう思うと、その人の生き方と移動方法ってどこかリンクしてるのかもしれないですね。アニメーションの中でも「移動する」シーンを描くことってありますか?

山田:あります、あります。僕は車を描くことが多いですが、「移動」って、例えばA地点からB地点まで動くことによって物語が展開していくわけで、次の場面に向かうためのものなんですよね。思考の展開や転換があって、メタモルフォーゼが起こる。移動はそのための手段、という感覚があるのかもしれません。

「商品」として消費されない「作品」を作ること

--今、どんな作品や仕事に取り組んでいますか?

山田:最近はとても忙しくさせてもらっています。クライアントワークが多いですが、11月6日まで「アキバタマビ21」で「The Edge of Animation」というグループ展をやるので、そこで発表するオリジナル作品のことも考えていますね。考える時間が長すぎて、まだ全然できてませんが(笑)。

--どんなことを考えていますか?

山田:自分の根っこの部分をもう1回ほじくり返すっていう作業を今やっていて、よく使うキャラクターを立体にしてみたりもしています。最近考えているのは、「作品が作品になるにはどうしたらいいのか」ということ。「消費」に耐えられない「商品」や「作品」は「作品」と呼べるのか。消費されない「作品」は「作品」としてどのような強度を持つべきか。最近はそういうことばかり考えています。

--作品か商品か、作り手がコントロールするのは難しいことですよね。

山田:そうですね。でも、単純に媚びなければいいってだけだとは思うんです。とはいえ、どんなスタンスでいても間違って伝わることはありますよね。幸か不幸か、今はもうフォーマットがたくさんあっていくらでも簡単に作れてしまう。だから、全部またアナログからやり始めようかなとか、そういうことも考えます。

立体のキャラクターに関しては今、彫刻家の方にお願いして作ってもらってて。最近、会社の人との会話の中で草間彌生さんの「南瓜」が飛ばされた話を聞いたのも考えるきっかけになりました。裏が空洞だったり、破損したりっていうのがメディアやネットでも話題になって。でも、僕らからしたら「そりゃ繊維強化プラスチック(FRP)だもん」って思うんですよ。現代アートの脆さみたいな部分もひっくるめて作品なんだから、と。そういうアートのリアリティみたいな部分をうまく表現できるような立体作品を今、構想しています。

--山田さんはクライアントワークだと、ミュージックビデオが多いですよね。それって理由があるんでしょうか?

山田:そうですね、やっぱりもともと音楽が好きで、MVを作りたいなという気持ちはありました。ただ正直、アニメーション作品を作るときに音楽の指示をすべて出さなきゃいけないっていうのが面倒なのも大きかったですね(笑)。だからフリーになってすぐは、とにかくたくさん作品を作りたい、作りたくてしょうがないっていう時期があって、「何か音楽ちょうだい」って周りに声を掛けていました。最近はちょっとやり過ぎているので、セーブしつつもあるんですけど。

--やっぱりクライアントワークだと、制約も多いですか。

山田:MVに関してはほとんどないですね。逆に「もっとやってくれ」みたいな感じになることも多いです。ただ、やっぱり広告になるとバランスが難しくなってきます。八方塞がりになって疲れた時は自転車に乗って外へ出て、1人で愚痴ったりああだこうだとイメージし直したりして(笑)。ヘトヘトになるまで走って、帰ってきて、また作業する。そのくり返しですね。

山田遼志
1987年生まれ、東京都在住のアニメーション作家。多摩美術大学大学院グラフィックデザイン専攻修了、株式会社ガレージフィルムでアニメーターとして勤務後、2017年よりフリー。クリエイティブハウスmimoid立ち上げに参加。文化庁芸術家海外研修員としてドイツに留学。現在は手描きアニメーションを中心にコマーシャルやミュージックビデオ、イラストレーションなどを手掛けている。代表作にKingGnu『PrayerX』、Millenium Parade『Philip』、『Hunter』など。
ryojiyamada.com

Photography Shin Hamada
Text Mayu Sakazaki
Edit Kei Kimura(Mo-Green)

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連載「クリエイターのマスターピース・コレクション」Vol.2 映像ディレクター・小松真弓の“ツナギ” https://tokion.jp/2021/09/02/creators-masterpiece-vol2-mayumi-komatsu/ Thu, 02 Sep 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=52875 さまざまなクリエイターの愛用するアイテムについてインタビューする連載コラム。第2回は映画監督・小松真弓の仕事着“ツナギ”を紹介。

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テレビCM、MV、映画など、さまざまなジャンルで活躍する映像ディレクター・小松真弓。仕事におけるマスターピースは「ツナギ」だという。常に20着ほどを所有し、現場には必ずツナギで向かうという彼女が、その装いに込める思いとは? 仕事に対する哲学も併せて聞いた。

空気をつくることが私の仕事
自分のことは考えたくない

−−仕事の愛用品がツナギというのはちょっと意外でした。

小松真弓(以下、小松):撮影現場に行く時は、いつもツナギです。美大生時代に絵を描いていた時もツナギを着ていたので、「作業といえばつなぎ」というイメージはありました。それと、子どもの頃、父の仕事現場に連れて行ってもらった時に、大型船に大きなクレーンがぼこぼこ立っているダイナミックな空間の中で、たくさんの人にツナギ姿で指揮しているのをみて格好よく働くならツナギという刷り込みもあったのかもしれません。

−−いつ頃から現場にツナギを着ていくように?

小松:映像の演出に携わるようになって以来ずっとだから、もう20数年になるかな。常に20着以上は持っていて、これまでのものをすべて合わせると、延べ60着とか、それくらいの数になると思います。

−−それだけ長い間、ずっとツナギを愛用している理由はなんですか?

小松:現場以外ではほとんどツナギは着ません。私、そもそも服が大好きで、上下の組み合わせを失敗したりすると気になって、1日中ヘンな感じにということもあります。

私の仕事は、この絵が撮りたいというのを伝えるだけじゃなく、いかに現場の隅々に気を配り、演者とスタッフを一丸にしてより高みの世界にいくためのグルーヴを作ることだと思っています。自分1人だけではつくれない景色を見たいんです。だから、作品以外の余計なことに気を取られたくないし、作品だけに集中したい。ツナギなら上下つながっているので「これさえ着てればとりあえず安心」というのが重要です。ただ、ツナギであれば何でもいいということではないです。そこにはもちろんこだわりがあります。

破れた箇所は、感謝の意味も込めてちゃんと自分で直しますし、バックが寂しかったのでシロクマを描いて勇気をもらおうとしたツナギもあります。

−−ツナギを着ると、仕事のスイッチが入りますか?

小松:いや、入らない。逆に自分が無になるというか。スイッチをオフにして、自分自身への意識をゼロにする。そんな感じですね。洗濯したらクローゼットの左側にかけていって、着る時はただ順番に右側からとるようにしています。朝一番絵コンテと頭の中のアイデア以外ほかのことはなるべく考えないようにするためです。

気に入ったら即決で購入
旅先での出会いも楽しい

−−買う時は、どんなふうに?

小松:以前は年の3分の1は海外ロケに行っている時もあって、海外で買うことが多いかったです。今日着ているこれは、サンフランシスコで買いました。たまたま見かけて気に入ったら、サイズだけ確認してすぐ決めちゃうことが多いです。旅の思い出にもなるし、楽しいですよ。

いままでたくさん着てきたから、これだ!ってツナギはすぐわかる。何を見て判断してるか聞かれると難しいけど……。強いて言えば、「この人、わかってんな~!」っていう感じ。ちゃんとデザインされていたり、生地にもこだわりがあって、丁寧に縫製されていたり。細かいところまで使い手への工夫があるものを見つけると震えます。逆に、ムダにわざとらしいデザインはちょっと苦手です。

−−目立つ色やデザインは、あまり選ばない?

小松:今はモニターで映像を確認することがほとんどだけど、昔はカメラの横に立つことが多かった。だから、黒以外を着ていると、撮影部にめちゃくちゃ怒られました。現場のことは全てスタッフに教えてもらって成長してきました。まさに叩き上げですね。だから、ツナギは汗や涙を共に経験してきた相棒です。

アングル探して、転がる、登る
撮影現場は予測不能

−−映像ディレクターの仕事とは、実際どんな作業なんですか?

小松:CMやMVの場合はまず、絵コンテの時点でストーリーにあった、人物・場所などを想像して描くことから始まります。それが雪原だったり海だったり、団子屋の二階に住む人、見たこともない大きなドレッサーの上にいる夢のような設定など様々です。それをロケ地で探したり、アングルでそう見せたり、セットを組んだりしていきます。木に登る時もあるし地面を掘ることだってあります。

たった数秒のカットであっても物語の世界を現実の世界に近づけるために何日もあらゆる方法で探します。

−−その現場で最適なのがツナギだと?

小松:汚れたって、全然OKなのもツナギのいいところです。現場は、どこに何がついているかわからない。そこで、こっちのアングルのほうがいいかも、いやこっちかもって寝っ転がったり、ひっくり返ったり、高いところに上ったり。もう、はちゃめちゃなわけですよ。スイッチが入っちゃうと、自分で自分がどうなってるのかすらわからない。だからやっぱり、現場ではつなぎじゃないとだめなんです。

−−特に気に入っている1着を挙げるとすると?

小松:ないですね。自分の存在を消すための「透明マント」のようなもので、どのツナギも大切な相棒です。

小松真弓
神奈川県茅ヶ崎育ち。武蔵野美術大学卒業。東北新社企画演出部卒業。2011年よりフリーランスの映像ディレクター。テレビCM、MV、ショートムービー、映画など、これまで500本以上の映像作品を手がける。映画作品に『たまたま』(2011)、『もち』(2020)がある。『もち』Blu-ray、DVDが8/11発売。Amazon Prime Videoなどで動画配信も開始。
オフィシャルサイト:MAYUMI KOMATSU

Photography Shin Hamada
Text Maki Nakamura
Edit Kei Kimura(Mo-Green)

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連載「クリエイターのマスターピース・コレクション」Vol.1 アートディレクター・服部一成の“アナログカメラ” https://tokion.jp/2021/07/14/creators-masterpiece-vol1-kazunari-hattori/ Wed, 14 Jul 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=43387 さまざまなクリエイターの愛用するアイテムについてインタビューする連載コラム。第1回はアートディレクター・服部一成のデザインソースにもなったという“アナログカメラ”を紹介。

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「キユーピーハーフ」の広告などで知られる、アートディレクター・服部一成。彼が愛用する“アナログカメラ”はデザイン作業において大きな役割を果たしているという。アナログカメラを手に入れた理由は何なのか? インスタントから始まった愛機の変遷やアナログこその魅力を聞いた。

デザインにつながる写真の世界 
新入社員時代、写真部の先輩から

−−服部さんの愛用品のご紹介をお願いします。

服部一成(以下、服部):アナログカメラですね。何か1つの機種、っていうことではなく、“アナログカメラいろいろ”という感じ。インスタントカメラと、フィルムカメラです。

−−写真はもともとお好きなんですか?

服部:写真撮影というのはデザインに近い作業でもあるので、撮るのは好きですね。大学時代は写真部に所属していました。そこまで本格的な感じではなかったですけど。

卒業後にライトパブリシティという広告会社に入社しましたが、そこは社内の写真部が有名でした。デザイナーとカメラマンが、密にやりとりをしながら仕事を進めていくスタイルだったんです。それで仕事をしながらカメラマンと仲良くなって、中古カメラ屋に連れていってもらったり。当時、銀座にはたくさんカメラ屋があったんですよね。松屋銀座のカメラ市なんかにも行って。一緒に回って、あれこれと教えてもらいました。

その頃に買ったのが、「POLAROID LAND CAMERA MODEL 180」です。

−−インスタントカメラですね。

服部:そう。僕が買った当時すでにかなりの年季が入っていた古いカメラなんですが、ダイヤルを回して露出を合わせて、ピントの深さの調節をしたりもできるんです。撮影したらフィルムを引っ張り出して、現像を待って表面の紙をはがすタイプ。

フィルムカメラでいえば、この「Canon A-1」も入社直後に入手したものです。写真部の人から譲ってもらって。というか、「貸してあげる。返さなくていいよ」と言われて(笑)。付いているのは50mmの接写ができるマクロレンズ。花なんかをすごく近くで撮れるんですよね。

自ら撮影した写真を作品にした「キユーピーハーフ」の広告

−−これらのカメラは、仕事で使ってきたものですか?

服部:デザインを考える時に、試し撮りみたいな感じで撮ってはいたけれど、本番の撮影はもちろんプロのカメラマンに依頼していました。でも、1998年の「キユーピーハーフ」の広告の仕事で初めて、自分で撮った写真をそのまま使ってみたんです。インスタント写真を複写して。

広告の仕事って、1つの案件に関わるスタッフも多いし、予算もそれなりにある。もちろんそういう大きな規模でつくる良さもあるんだけど、もうちょっと、「ひとりで勝手につくっちゃう」みたいな仕事をやってみたいと思ったんですよね(笑)。その時に使ったのが、「FUJIFILM INSTANT CAMERA FOTORAMA MX900 ACE」です。

−−ご自身で撮影した写真、しかもインスタント写真を広告に?

服部:そうなんです。画質も良くないけれど、それが逆におもしろいかな、と。インスタントカメラって、一般的にはファインダーと実際のフレームがずれるんだけど、このフジのフォトラマは一眼レフなんです。見た目はちょっとダサいんですけど(笑)、当時は医療現場なんかでも使われていたという、優秀な機種らしいです。

この「キユーピーハーフ」の広告、最初は小さめの扱いだった写真のサイズも、次の年には青空にケーキが浮いた写真を大きく引き伸ばして使いました。画質はぼろぼろなんだけど、それが逆に「いいんじゃない?」って。なんか、空飛ぶ円盤みたいな写真だし、かえってリアリティーがあるというか。

そのあと同じ広告シリーズで海外ロケにも行ったのですが、そのロケ用に購入したのが、「PLAUBEL MAKINA 670」。アイスランドに持っていきました。

−−これもフィルムカメラですよね?

服部:はい。ロクナナ(6×7)、という中判フィルムカメラです。

それまではインスタント写真を使っていたんですが、この時は風景写真をコラージュしたいと思っていて。粗い画像をコラージュすると、全体の印象がラフになり過ぎるので、少し画質のいいものが欲しいと思っていた。それで購入したんです。

アイスランドでは動物園に行ったんですが、寒過ぎてキリンとかはいないんです。そこで撮影したのが、この豚の写真。ロケはアシスタントと現地コーディネーターの3人だけで回りました。関係者が大勢いるような現場だったら、「ちょっと、豚撮ります」とか、言い出しづらかったかもしれません(笑)。

偶然からのインスピレーション
カメラはデザインの道具の1つ

−−アナログカメラで撮る写真の良さはなんですか?

服部:デジタルと違って、すぐに確認できないし、思った通りにはいかないのがアナログ。逆に、自分の意図していなかったものが、うまく取り入れられたりもする。そういう偶然から何かを感じ取ってデザインをするというか。自分が想像している範囲からちょっとだけはみ出る、それをコントロールしながらやっていくというおもしろさがあると思うんですよね。

2004年に、ハローキティ誕生30周年記念展「Kitty Ex.」っていうイベントがあったんですけど、その時の作品も、インスタントで撮影した写真をスキャンして使いました。

−−「キユーピーハーフ」といい、2000年前後がアナログカメラを一番活用していた時期だった?

服部:そうですね。当時って、デザインの現場もどんどんデジタル化してきた時代。一筋縄ではいかないアナログカメラの写真とか、あえて手で描いた線とか、そういうものを取り入れたいっていう気持ちが強かったんだと思います。

最近は少し離れていたけれど、やっぱりアナログはおもしろいって思い直しています。デジタルでも、自分が望んだ質感で撮れるようなカメラがあれば試してみたい。あとはやっぱりインスタントも欲しいのですが、「チェキ」だと少し仕上がりサイズが小さいんですよね。

デザインって、取り組み方は人それぞれ。僕の場合、最終形がばしっと見えていて、そこに向かって一直線に進む、ということはまずない。もやーっとアイデアがあって、とりあえず何かしら手を動かして、そこから試行錯誤を重ねていく。そういう手探りの作業の中で、アナログカメラはすごく有効なツールだなって、改めて思いますね。

服部一成
アートディレクター。1964年東京都生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業後、ライトパブリシティ入社。2001年よりフリーランス。代表作に「キユーピーハーフ」の広告や「弘前れんが倉庫美術館」のVIなど。作品集に『服部一成グラフィックス』(誠文堂新光社)がある。

Photography Shin Hamada
Text Maki Nakamura
Edit Kei Kimura(Mo-Green)

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