「カジサック」チャンネルでおなじみ“トンりお夫妻”が築く、夫婦の対等な関係 「毎日が未来へのネタ作り」

YouTuberカジサックの右腕であり、放送作家としても活躍している山口トンボさん。その妻であり、映像ディレクターでもある理緒さん。2人は、YouTubeチャンネル「カジサック KAJISAC」で “トンりお夫妻”としても登場するおしどり夫婦だ。動画の中で繰り広げられるユーモアたっぷりな2人の掛け合いが視聴者の間で共感を集め、同チャンネルで配信された「晩酌トーク」のコメント欄には「理想の夫婦」などの声が寄せられるほどファンを増やしている。現在、44歳のトンボさんと32歳の理緒さん。1回り近く歳が離れている2人が夫婦として対等な関係を築くために意識していることとは? 取材を敢行すべく、愛犬のコロッケと一緒に住む2人の家に伺った。

結婚して3年目というトンボさんと理緒さんは、お互いを「親友」と呼ぶ。出会った当初から物事に対する価値観や、おもしろいと思うツボが似ているほど波長が合うという。

「しょうもないことでも笑い合える。夫婦という関係でも親友のような存在だからこそダメなところも受け入れられるし、リスペクトもできる。一緒に肩を組んで人生を歩んでいくなかで、いつまでも信頼し合えるパートナーでありたいです」(トンボ)。

対等な気持ちで向き合うようになったきっかけの1つは、コロナ禍のステイホーム生活。制限された環境下においても、何事にもイベント性を持たせるように工夫していた。

「日々のなんてことのないことにちょっとしたスパイスを加えると、生活に抑揚が生まれるんです。大掃除の時は2人して頭にタオルを巻いたり、焼きそばを作ったらお祭り気分を味わえるように透明な容器に入れたり、即興でドラマを撮ったり(笑)。私達の場合は自分のことを客観視して、くだらないなって思うことを全力で楽しむのが好きなのかもしれません」(理緒)。

毎日が未来へのネタ作り

取材中も笑顔が絶えない夫婦だが、良好な関係を保つうえで日々心掛けていることはなんだろうか。老後の夫婦像をいつもイメージしながら、毎日過ごしていると2人は語る。「おばあちゃんとおじいちゃんになった時、あの時こんなことしたよねって思い出を話し合いたい。だから、その瞬間瞬間の感情や出来事をいつでも振り返れるように、毎日必ず1回は2ショットを撮っています」(理緒)。

「僕達は思い出を残すことが好きなんです。それは未来の自分達に向けてネタを作っているのかもしれませんね」(トンボ)。

トンボさんと理緒さんが、「カジサック」チャンネルに夫婦として登場するようになったのは2021年。動画内では2人のほほ笑ましい関係が見られるだけでなく、理緒さんがトンボさんに痛快なツッコミをする姿も印象的だ。何気ないやりとりにも思えるが、「コミュニケーションの答えは相手にある」という彼女の言葉のように、お互いに尊重し合い、認め合っているのが随所から伝わってくる。

「コミュニケーションにおいて、これからも一緒に長く過ごしていくうえでリスペクトの心を持っていれば、意見や考え方も相手に響くはず。『自分はこういう意志を持って人生を過ごしてきた』『自分の人生はこうありたい』ということをちゃんと伝えて、お互いにその理想に向けて何ができるかを考えることが大切ですね。言葉選びにも気を遣います。年上だからこそプライドもあるだろうし、自分から弱音も吐きづらいんじゃないかって。『彼にはこの言葉を絶対に使わせない』という思いがあるので、先を見越して行動しています」(理緒)。

理緒さんの言葉には人を引きつける強いパワーがある。そんな彼女からのアドバイスを素直に受け止めるトンボさんの姿勢に共感するファンも多数。これまでに何度も心救われたことがあったとトンボさんは話す。

「僕が放送作家として携わっている番組に出演した時、大スベリしちゃって。帰宅後もずっと落ち込んでいたので、『演者ではないあなたに、みんなウケてほしいという期待は良い意味でしていなかったはず。放送作家として出演したんだから、スベったことに対して落ち込むのは逆に恥ずかしいし、傲慢だよ』と言葉をくれました。物事がうまくいかなった時、『自分は足りていない』と劣等感を持つことがあります。それって自分の勝手なイメージであり、ただの妄想なんですよね。彼女に気付かされたことで、スッと心が軽くなりました」(トンボ)。

1日の終わりに、必ず答え合わせ

「カジサック」チャンネルでおなじみ“トンりお夫妻”が築く、夫婦の対等な関係 「毎日が未来へのネタ作り」

2人は共働きで、クリエイティブな職種に就いていることから、常に意見交換をする。「自分達が正しいと思っていた企画の立て方や構成の作り方と、現代の若い子達がおもしろいと思う立て方や作り方が違っていることがあって。例えば一緒に見た番組のルール。僕達の間ではいまいちしっくりこなかったので、他の人の意見も気になってエゴサーチしてみると、同じ考えの人が全然いなかったんです(笑)。2人の感覚が世の中とズレているんじゃないかと話し合いながら、日々アップデートしています。違和感を持った時は、1日の終わりに必ず答え合わせをする。クリエイティブという職業は同じだけれど、立場と業種が違うから異なる視点を吸収し合えるのがいいですね」(トンボ)。

最後に2人に今後の展望について尋ねると、「今が1番楽しいから、こんなに気が合う人と暮らせるのが幸せ。このままでいられることが、自分達の豊かな人生だと思います」と笑顔で話してくれた。

author:

竹内菜奈

1993年、東京都生まれ。日本女子大学卒業。学生時代に出版社の編集部アルバイトを経験したことをきっかけに、本格的に編集者としての道に進む。2018年にハースト・デジタル・ジャパンに入社。「ハーパーズ バザー」でウェブエディターとして経験を積んだ後、2022年にINFASパブリケーションズに就職。「WWDJAPAN」では編集・記者を務め、主に一般消費者向けのウェブコンテンツを手掛けている。取材分野はファッションからアンダーグラウンドなカルチャーまでを担当。

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