ソロ活 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/ソロ活/ Tue, 13 Dec 2022 08:19:59 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png ソロ活 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/ソロ活/ 32 32 “ソロ活”のススメ“ アメリカのセラピスト、ローラ・デサンティスが提唱する「コロナ禍、ソロ活は心を鍛えるプロセス」 https://tokion.jp/2021/02/23/seeking-therapy-during-pandemic-times/ Tue, 23 Feb 2021 06:00:06 +0000 https://tokion.jp/?p=20738 日本と世界を比較し、“独り”の概念を考察する連載。今回は、心理療法の観点からソロ活を探る。

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コロナ禍の中、女性と若者の自殺者が特に増加している。原因は雇用状況、生活様式の変化が悩みとなり、心の健康を保つことが困難になっている可能性が高いとされている。

在宅時間が増え、他者とコミュニケーションを取る時間が大幅に減少したために孤独やストレスを感じている人は多い。これはアメリカでも大きな問題となっており、従業員向けのメンタルヘルスケア事業を充実させる企業は増加しており、さらに個人のセラピー需要も増加しているという。しかし日本で、専門家に自分の心の健康を診てもらうのは多くの人にとってまだハードルが高いのではないか。そして、相手が誰かに関わらず、自分の不安や悩みを話すのははばかられることも少なくない。

アメリカの重要な行事の一つ、冬の休暇期間(11月下旬から年末年始まで)に、心のフィットネス・ワークアウトを提供するオンライン・プラットフォーム Coaが「休暇中の一人暮らし」をテーマにオンラインQ&Aを開催した。同社は、個人とグループのセラピーを設けており、無料体験のグループセラピーも定期的に開いている

同Q&Aを担当したのはサンフランシスコを拠点とするアメリカ人セラピスト、ローラ・デサンティス。トラウマ・ケアを専門とし、コロナ禍を一人でも快適に過ごすための実践的なアドバイスをしている。自己理解を深める方法でもあるソロ活を、心の専門家はどう考えているのか? ソロ活と心の関係に迫る。

自分の内面に直面し心を癒すための学習・実践・習得が必要

――ソロをテーマに、グループセラピーを開催されましたが、パンデミックでどのような変化がありましたか?

ローラ・デサンティス(以下、ローラ):今まで1人暮らしを楽しんでいた私のクライアント達が、孤独を感じました。在宅時間の増加で他者との交流が減ったことで人との繋がりを求めたり、不安や憂鬱になる人が多くなったことが、オンラインでセラピーを始めたきっかけです。

――冬の休暇中は楽しいという共通認識がありますが、「気が重いなら、周りに合わせて楽しまなくていい」という言葉は印象的でした。

ローラ:コロナ禍に限らず、毎冬の休暇期間を憂鬱に感じたり、家族と過ごすことにプレッシャーを感じている人はいます。テレビ番組や広告で家族だんらんの様子や、にぎやかなパーティの光景を繰り返し目にしても、それを身近なものに感じる人は多くはありません。1人で過ごすことを余儀なくされた昨年の休暇期間は、1人を楽しむ好機だったかもしれませんね。

これに限らず、何をどう楽しむかを決めるのは自分です。その日が自分にとって特別か、そうではないのかを見極めるにも良い機会かもしれませんね。

――落ち込んでしまうきっかけや、その時の対処方法を参加者全員で共有することで、皆一緒に前向きになっていくような相乗効果を感じました。終始和やかな雰囲気で、楽しんで取り組んでいる参加者の姿も多かったです。

ローラ:「セラピーを受ける」と聞くと、つらい思いをするのではないか、深刻そうで怖い、と感じている人もいましたが、多少気軽に考えましょう。ユーモアを持って自分と向き合い、弱点を受け入れて笑えるようにするのは心の治療です。それができれば、物事を常に明るく考えられるようになります。

グループセラピーの場合、同じ悩みを抱えていても考え方や対処法は違うため、他人の話を聞くとたくさんの発見があります。そのすべてが、自分を受け入れ、笑うきっかけとなりますし、悩みを抱えているのは自分だけじゃないと知るだけでも安心できます。

――運動をして体を鍛えるように、心を鍛えたい場合、自分と対峙して、深く反省したり、苦しみに直面する訓練が必要でしょうか?

ローラ:体と心の鍛え方には類似点があります。しかし、心を鍛えることで不安や悩みは解消されますが、その経験は記憶として残ります。例えば、特定のトラウマを持つ人がそれを乗り越えたら、もうその事で苦しまなくなったとしても、完全に忘れてなかったことにはなりません。

セラピーは、精神を鍛えるには最適なトレーニングです。自分の内面に潜む負の部分に直面し、対峙すると心は癒されますが、これを行うには学習・実践・習得が必要です。

感情にうまく名前をつけて生活を豊かにする

――セラピーが必要かどうかを、自分で見極める方法はありますか?

ローラ:セラピーを受ける動機は、人それぞれです。自分をより深めたい、自分らしく健康的に生きるためなど、どれもその人にとってはセラピーが必要な理由です。モヤモヤしたりするなら、セラピーを考え始める時です。

セラピーの素晴らしいところは、「自分を見失ってしまい、自分らしく生きられていない」と話せることです。また自分が悪い方向に向かっていることに気付けないことが多々あるため、危機に陥り、悩み、実際に助けが必要になる極限まで我慢してしまうものです。不安、うつ、依存、睡眠や食事の悩みがある、好きなことなのに意欲が湧かないなどは明らかに生活に支障をきたしていて、助けが必要な証です。また、これらの症状が出る前に対処すれば、悪化防止・改善も可能です。優れたセラピストは、その人の悩みや不安を掘り下げ、違和感を取り除く支援をします。

――日本は、他人との協調性に重きを置くため自己主張が少なく、我慢は美徳という価値観もあります。自分をさらけ出すのが怖い、恥ずかしい場合、克服方法はありますか?

ローラ:これは国、人種を問わず、誰にとっても大変な挑戦です。多くの人は、自分の感情を話すのが苦手で、感情が不安定なのは自分が精神的に弱いからだと考えたり、今はたまたま調子が悪いだけと判断したりする。しかし、思考を変え、自分と向き合い、悩みを克服して自分らしく生きられるようになった人がたくさんいますから、変わりたいと願うならできるはずです。どのような国、文化に属していても、自分を取り巻く環境や社会に対して私達は無力ではありません。物心ついてから教えられてきたことや概念に疑問を持ち、立ち向かう事で精神的に安定できるようになり成熟します。

羞恥心や困惑に対峙し、「今は精神的に不安定で助けが必要なんだ」と自分の状況を受け入れることもセラピーの一部です。悩みを診断し、訓練を重ねることで心は鍛えられます。感情は言葉の集まりですから、自分の感情に名前を付けるだけでも長時間の対話が必要です。言葉がわからないと、自分の感情を表現するのは難しいですよね? ある脳研究で、否定的な感情に名前をつけると、不快感が和らぐという結果があります。私は、感情の名前の付け方を教えるのが大好きなのですが、うまくいけばこれをきっかけに生活も豊かになっていきます。

一方で、民族、人種、宗教、文化、性的な側面に対処するには感情に名前を付けるだけでは不十分です。その場合は、自分の価値観を共有できるセラピスト、もしくは少なくともその課題に精通し、問題点を知っている方を見つけましょう。

幸せを感じるために、自己肯定感を向上させる

――コロナ禍を含め、日々を前向きに過ごす方法はありますか?

ローラ:嫌なことがあったら、無理に前向きな気持ちになろうと頑張る必要はありません。自分の感情を受け入れずにいると、もっと憂鬱になります。悪い状況に陥っていたり、大きなストレスを感じている時は、自分の感情を素直に受け入れることが重要です。そのまま無理を続けると、涙もろい、キレやすい、無駄使い、食べ過ぎなどの症状が出ます。ここでもまた先ほどお話しした感情に名前をつける方法が役立ちます。これは特別なことではなく、必要なことです。否定的な感情にとらわれたくはありませんが、現実の状況が良くないのに自分を無理に奮い立たせても何も良いことはありません。ふと湧き上がってくる負の感情は抑えつけず受け入れる方が楽で、よりバランスの取れた生き方です。

感謝を習慣にするのは非常に良いことです。大変な状況でも自分の生活を見渡して、パートナーや猫がいること、今日ベッドから起き上がれたことに感謝する。うつの人にとって、ベッドから起き上がれるのはとても幸せなことです。自分には当たり前のことでも誰かにとっては特別なこと、何かしら感謝できることがあるはずです。さらに感謝の気持ちは私たちを能動的にさせ、意欲を高めます。日々を前向きに過ごすには、絶妙なバランスが必要です。

――自分と向き合えた時、その感覚は確信できるものでしょうか?

ローラ:それは特定の感覚ではなく、独自性があり、自分が人生に望むもの、理想の人格、どのような環境に身を置きたいかなどに大きく依存します。通常、自分と向き合えているかは自然と実感できます。

クライアントが「気分転換したい」と言った時、私はいつも「幸せを感じるのはどんな時? 毎朝ベッドから起き上がれること、それとも特定の職を得ること?」と尋ねます。その答えは通常、達成志向を満たすものではなく、自分を慈しみ、自己肯定感を向上させることです。自分を理解すると同時に自身をいたわるようにもなります。これらは測定できるとは言えませんが、自信が湧いてくる感覚を味わえると思います。何事も自分と向き合うことから始まり、終わります。

自分を見失わないために、自分と友達になり、どんな性格なのかを知るべき

――セラピストの観点から、望ましいソロ活方法はありますか?

ローラ:1人を体験し、孤独を楽しんでいる人たちを称賛します。ソロ活は自分を知り、向き合うための手段です。私達は自分を見失ってしまうこともありますが自分と友達になり、どんな性格なのか知るべきです。前からやってみたかったけれど、まだ挑戦していないことがあれば行動しましょう。心配事があると、ぼんやりしたり、気がかりなことが頭から離れなかったりして1人の時間を過ごすのが難しいかもしれません。しかし、そんな時でも自分に最適なソロ活を見つけて行動し、自分の価値観を知ることはとても大切です。

最近、ソーシャルメディアで“愛の言語”を見かけました。私達は言葉で愛を表現し、他人からの愛も言葉で実感できます。ある人は、誰かに親切にされたり、褒められた時に自分が本当に大切にされているとわかります。自分が人にされると嬉しいことが何か知っているなら、それを自分が自分にしてあげてください。そうすればソロ活をもっと楽しめるようになるかもしれません。

――ソーシャルメディアの利用頻度と心の健康は密接だという声があります。心のバランスを保ちながら使う方法はありますか?

ローラ:娯楽性が高いので中毒性があり、常用していると欠点も出てきます。「今日は最悪な日だった」、「今日のヘアスタイルは嫌」など自己否定的な投稿はおすすめしません。誰もが最高の自分を撮って投稿しているため、自分が見るのはすべて完璧な他人。そんな他人と、不完全な自分を比べて自尊心を大きく傷つけてしまう可能性があります。それを続けているとエコーチェンバー現象(自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくること)で自分のアカウントがどんどん悲観なもので埋め尽くされ、まるで世界中に絶望感が漂っているかのように感じてしまうと深刻です。

心も体も健康を保つには、何事もほどほどにするバランスが大切です。アプリに時間制限を設定し、夜はスマホを別の部屋に置いて寝ながら見られないようにする。ストレスを感じさせるアカウントのフォローはやめ、良い気分になれるものだけフォローするのも良い方法です。たまには、スマホを持たずに散歩に出かけて、新鮮な空気を吸い、1人の時間を楽しむのも良いでしょう。

ローラ・デサンティス
サンフランシスコ在住のライセンス・プロフェッショナル臨床カウンセラー(LPCC)、心理療法士。ペンシルバニア大学で、カウンセリング専門とカウンセリング&メンタルヘルスサービスの修士号を取得。ペンシルバニア州立大学で広報学と歴史学の学士号を取得。セラピストとしての目標は、内省、癒し、自己受容を通して、クライアントが自身と対峙し、人生を探求する場を提供すること。個人が持つ洞察力と自己への慈しみを重視した対話型のセラピーで、クライアントの否定的な思考パターンや行動を特定している。
https://lauradesantistherapy.com/

Picture Provided Laura DeSantis

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UKのソロ活メディア「ソロリビング」が提唱する「1人の暮らしと外食の喜びをシェアする」 https://tokion.jp/2020/12/04/doing-things-solo-vol5/ Fri, 04 Dec 2020 06:00:59 +0000 https://tokion.jp/?p=11957 当時UKで1人暮らしの素晴らしさ、楽しさを伝えるオンラインメディア&コミュニティ「ソロリビング」を立ち上げたシュテッタ・ダットに話を聞いた。

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「ソロ活、特に食事に関しては日本が最先端かもしれない」という話を日本好きな外国人達から言われたことが何度かあったが、ことUKにおいてはそれがあながち的外れではないことが今回のインタビューで少し確信に近づいた。ヨーロッパでは、おひとり様の食事は不思議がられ、”寂しく一人で食事をしている”というように思われてしまうこともあるようだ。当時UKで1人で暮らすことの素晴らしさ、1人で食事をすることの楽しさを伝えるべく立ち上がったオンラインメディア&コミュニティ『ソロリビング』の創業者、シュテッタ・ダットにインタビューをした。

――2017年に『ソロリビング』をスタートしていますが、当時からソロ活のムーブメントはあったのでしょうか?

ソロリビング:当時は1人暮らしについて話をする人はいなかった。長年、UKではソロ活は否定されてきたから「ソロ活メディアを始めよう」と決意するまでに長い時間が必要だった。でもその甲斐があって、今はソロ活が肯定され始めている。当時私は独身で30代になったばかり、周りはパートナーと充実した生活を送っていたり、結婚したりする時期だった。でも、私は相手を見つけて落ち着きたいという強い意欲はなく、恋愛や結婚は自然に訪れるものだと思っていたの。いろいろと経験して、自分の人生に十分満足しているし、1人暮らしが心地いいと気付いた。あの時はわからなかったけれど、生涯の伴侶を見つけることはドリームジョブを手に入れるくらい大変ね。

――読者の年齢層はどれくらいですか? 世代によってソロ活のスタイルに違いはありますか?

ソロリビング:読者の年齢層はとても幅広いけど、メインはアラフォー世代。1人暮らしをしているという点で1番はアラシックス世代だけど、ミレニアル世代はあえて1人暮らしをしている人が多いわ。18~24歳までは、実家かシェアハウスに住んでいる場合が多く、1人暮らしをすることが少ない年齢層。『ソロリビング』では、実際に1人暮らしをしているか、いないかでソロ活者かどうかを区別していない。だから、シェアハウスで暮らす人やシングルペアレントの読者も歓迎しているの。『ソロリビング』では、誰にも頼らずに人生の重要な決断をすることを「ソロで人生をナビゲートする」といっている。私達はソロナビゲーターのためのコミュニティーを運営しているのよ。

――読者はすぐに集まりましたか?

ソロリビング:読者が定着するには時間がかかった。それにオンラインのコミュニティーを立ち上げて定着させるのは簡単ではないわよね。まずは1人で暮らすことをどれだけポジティブに伝えられるかが重要だと思ったから、1人暮らしの初日から遭遇するであろう課題を取り上げたり、丁寧なコンテンツ作りをした。去年は読者が急激に増えた年だったけど、人気のトピックスは、「1人暮らし」「ウェルビーイング」「サステナブルな暮らし」の3つね。今やっと、私達がやってきたことは正しかったと実感できている。でも、まだまだやるべきことはたくさんあるし、やっと軌道に乗ったところ。

――この3年でUKの多くの人がソロ活をポジティブに感じるようになったと思いますか?

ソロリビング:1人暮らしが認知され、ソロ活者の声を社会が聞き入れるようになった。私達は、1人で暮らすことも普通の暮らし方の一つと捉えてあらゆるソロ活を話し合える場を提供している。私達の活動をきっかけに、多くのソロ活者がソーシャルメディアでソロ活について発信するようになったのはとても嬉しいことよ。読者が1人暮らしをより幸福に、満足して過ごせるように後押ししたい。1人暮らしで得られる自由や体験を最大限に引き出したい。たとえ短期間でも1人暮らしを経験することで、ソロ活はポジティブなライフスタイルの1つだと感じてもらいたい。ソロ活は人生の何かが欠けている人がするものではないと気付いてほしい。また自分自身と良い関係を持つことや、今まで気づかなかった自分を発見してそれを深めることもとても大切。そして、ソロ活者に豊かな1人暮らしをしてもらうためにも、私達はサステナブルな暮らしやセルフケアを推進している。

――日本ではソロ活向けのサービスが豊富ですが、UKではどうでしょうか?

ソロリビング:UKでは最近、ソロ活向けサービスの広告が増えているけど、市場に流通するにはまだ時間がかかるでしょうね。こちらでは社会的にソロ活が定着しているというには程遠いわね。でも1人暮らしの人口が増えているのは事実だし、数十年前と比べたら確実にソロ活を受け入れる雰囲気にはなっている。ヨーロッパ、スカンジナビアの国々では、今や全世帯の3分の1が1人暮らしよ。ということは自分の周りにも大抵は1人暮らしの人がいるという状況で、そうしたリアルな現状は社会が1人暮らしを認知する後押しになっていると思う。

日本ではソロ活向けのサービスが充実しているようだけど、UKでは1人での外食は未だにあたりまえではないの。ロンドンやグラスゴーの都会なら、1人でも食事がしやすいカフェやレストランが増えていて利用者も多くいるけど。あとは1人で行きやすい場所があっても、根本的に1人で外食をすること自体がまだ社会的に受け入れられていない。でもディナーとなると1人で楽しんでいる人はあまり見かけないし、ご褒美的なイベントとしての食事を1人で楽しむこともほとんどない。住んでいる場所によっても意識に差があるけど、都会のほうがおひとり様が多いのはUKも同じ。あとUKのホテルは部屋ごとに料金をチャージされるから、ソロ旅は割高よ。ソロ活向けのイベントや滞在パッケージも見かけるけど、日本のように充実したサービスはほとんどないわ。

――日本では1人旅のニーズが一定層あります。UKはどうですか?

ソロリビング:若者のソロ旅、特にバックパッカーは多くいて、行き先はアジアが1番ね。バックパッカーの醍醐味は自分で自由に計画を立てられることだけど、費用と時間は重要なポイントとなるからその点でもアジアを選ぶ若者は多いわね。UK女性のソロ旅の目的は、クオリティーの高い自分だけの時間を過ごすため、家族や友人のいない空間で日常から解放されるためなの。ソロ旅なら行動を制限されないし、自分の行きたい場所にいくらでも行ける。日本人はヨーロッパの人よりも、若い頃から自分に自信を持って楽しくソロ活をしているように見える。この違いは興味深いわね。

――UKのレストランでソロ活用のコミューナルテーブルや窓際の1人席を見かけるようになったのはいつ頃からですか?

ソロリビング:5年前かしら。理由は、社会的な流れとして食事が以前に比べて社交を目的にしたカジュアルなものへと変化してきたから。1人でも、誰かと一緒でもフラッとどこかに立ち寄り軽く食事をしたり、パブへお酒を飲みに行くよりもレストランで食事とお酒を一緒に楽しんだりする人達が増えてきた。でもその反面『ソロリビング』の読者達から、一人だからという理由でレストランで変な対応をされたり、嫌な気分にさせられたというコメントがある。高級で洗練された、もしくは家族向けのレストランが1人客でも気軽に利用できる雰囲気を作るようになるまでは1人では行かない方がいいと思う。人通りの多いエリアのカフェでランチをするなら一人でも気軽にできるけど、UKのレストランはソロ活向けのサービスはまだまだ未開発ね。

1人で楽しむ食事の良し悪しは、レストランでどんなサービスや接客を受けるかがすべて。良い店は、ソロ活者が居心地のいい席、外を眺めながら食事ができる窓際席に案内してくれる。もっと言うなら、自分の座りたい席を自由に選べたら最高ね。

――1人の食事が社会的に受け入れられるかは、性差も関係していますか?

ソロリビング:確かに夜1人でバーやレストランに行くのは男性の方が多いわ。女性も徐々に増えてきているけど。働いていたり、1人で休暇を楽しむ女性は、出張先や旅先で1人でバーやレストランへ行くわよね。これは1人の食事を自信を持ってできるかどうかの違いだと思うの。あと食に興味があるかも大切ね。男性も女性も1人で食事に行くなら、おいしい食事が楽しめて接客が良いところを選ぶべきよね。

――『ソロリビング』のインスタは料理の写真が多いですね。1人の料理にコツはありますか?

ソロリビング:外食やテイクアウトと書いてないものは、すべて私が作っているのよ! 1人分の料理のコツはたくさんあるから紹介しきれないけど、ひとつ挙げるなら1人分の料理で一番大切なことは健康的にしっかり食べて、家の食事を自分の楽しみにすること。料理は楽しいし、忙しい一日の後のリラックスタイムでもある。何かに没頭したり、物事をじっくり考える時間にもなる。それにキッチンで新しいことを学べるし、料理の腕も上がる。私はレストランで食べた味を再現したり、良い素材を使った料理を楽しんでる。自分のために時間をかけておいしい食事を用意すると、1人の暮らしがよりポジティブになる気がするの。『ソロリビング』には、Facebookに「ソロダイニング&テーブルフォーワン」という会員制グループがあって800人以上のメンバーが情報交換している。メンバーになって自分の食事やその日の出来事をシェアしていると、1人でご飯を食べているという気分にはならないわ。

――日本ではソロキャンプが人気ですが、UKのトレンドは何ですか?

ソロリビング:食事と旅行。コロナ禍ということもあって、最近はバイクパッキング(バックパッカーのバイクバージョン)が人気で今後はヨーロッパの他の国でも流行しそう。バイクパッキングは自分のペースで楽しめるからソロ活には最適ね。UKのソロ活者は、自分の好きなように長時間を過ごす家を何よりも大切なものと考えている。家はソロ活者の聖域、安らぎの場ね。そしてもう1つ、何よりも重要なトレンドは、多くのソロ活者が友人や家族と社会的なつながりを保つことの大切さに気付いたことね。

ソロリビング
シュテッタ・ダットが2017年にUK、グラスゴーで始めたソロ活オンラインマガジン&コミュニティ。シュテッタ自身も長年、独身生活をしている。一人暮らし、サステイナブルかつ自己成長のサポートを軸に、あらゆるジャンルの情報を発信。一人暮らしの喜びを伝えることで、一人暮らしの機会作り、一人暮らしで直面するであろう課題について話し合い、アドバイスをするなどソロ活コミュニティのハブ的存在となっている。Facebookの会員制グループ「Solo Dining and a Table For One」では800人以上のソロ活メンバーが自分の体験や情報のシェアをしている。

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サンフランシスコのブッククラブ設立者、ローラ・グルハニッチが提唱する「1人で読書をする時間は他者を尊重する心、共感力を養う」 https://tokion.jp/2020/10/24/time-spent-reading-alone/ Sat, 24 Oct 2020 06:00:11 +0000 https://tokion.jp/?p=8521 アメリカの伝統的なコミュニティーであるブッククラブに新しい兆しがある。ソロ活と読書を同時に楽しむサイレントブッククラブ。

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アメリカの伝統的な趣味の集まりの1つとしてあげられるブッククラブ。一般的なクラブでは1冊の課題本が出され、参加者はそれを読み、ミートアップで感想や考察などの意見交換をする。これを楽しむ人がいる一方で、「全然そそられない本を読むのは苦痛でページが進まない」「期限付きの読書は学生時代の課題のようでストレスを感じる」などの理由から、複数のクラブで入会と退会を繰り返し、挫折している人も少なくない。

しかし、従来のクラブでストレスを感じる要因を一切排除し、ソロ活と読書を同時に楽しんでいるクラブがある。それはアメリカ、サンフランシスコ発のサイレントブッククラブ(以下、SBC)だ。特徴は参加者自身が好きな本を持参して黙々と読書をする点。2012年に始まったSBC は現在、欧米、日本を含めたアジアなど世界中に240以上の支部をもつ。SBC設立者の1人、ローラ・グルハニッチが考える世界中をインフルエンスするクラブとソロ活の関係性とは。

−−世界中の読書家を魅了するSBCの活動は、どのように広まっていったのですか?

ローラ・グルハニッチ(以下、ローラ):2012年から2016年は、私ともう1人の設立者グィネヴィア(・デ・ラ・メア)の2人、そこに友達がたまに来るというものだった。その後サンフランシスコから他州へ移住した友達が、それぞれのエリアで支部を作り広がっていったの。それからは全く面識のない人達からも支部を作りたいと問い合わせがくるようになり、世界中に広がったのよ。過去4年間で、急速にクラブが大きくなっておもしろくなってきた感じ。どこかでSBCのことを聞いたり、インタビュー記事を見たりして、「自分の住んでいるエリアにも支部を作りたいけど、できるかしら?」と問い合わせのあった人達には、「もちろん! 場所と時間を決めて、友だちを誘うだけ。簡単でしょ」と答えている。手軽に始められるところがいいのだと思う。

人とつながる機会ではあるけど、読書という目的があり、まわりを見回すと他の参加者も1人で来ている。各々が自分の読みたい本を読んでいるけど、居心地がいい場所。1人で何かやりたいけど同時に皆がつながりやコミュニティを求めていて、SBCではその双方を提供しているの。世界中の人々が、静寂の中で読書をしながら心を通わせている。様々な国や地域で人々が出会い、つながる様子を実際のミートアップやSNSで見るのは驚きと同時にとても嬉しいこと。この活動を続けるのは楽しいわ。

−−SBCでの読書と完全に1人でする読書、この2つの決定的な違いは何でしょうか?

ローラ:それはおもしろい質問だわ。SBCでは各自が好きな本を読んでいるけど、自分と同じ読書好きの人達とつながることもできる。1人で読書しているだけだったら、読書好きとはつながれないわよね。SBCでは、読後に自分が読んだ本について他のメンバーに話す時間があるの。そこが他の人達とつながりを持てる場。歴史やグラフィックノベル、ファンタジー、サイファイ、ノンフィクションとありとあらゆるジャンルを読んでいる人が同じ場所に集まっているから、誰かが自分の知らない本について話すのを聞いて「その本、おもしろそう!」と知る機会にもなる。これが一般的なブッククラブとは違う点です。通常は指定された本を皆で読むから。私自身がそうなのだけれど、誰かにこれをやりなさいと言われるのは好きではないの。大勢が一緒に読書をしているけれど、SBCからのルールは一切なし。

−−バーチャルでも活動していますね。どのような経緯で始めたのですか?

ローラ:昨年メンバーの1人が「バーチャル限定の支部を作りたい」と言ってきたからよ。それからバーチャル支部のFacebookグループを作り、ミートアップを始めたの。この支部の利点は世界中どこに住んでいても参加できること。バーチャルでなければできない素晴らしいことだと思うわ。それからコロナ禍となり、デンバー、イタリア、日本などの支部もバーチャルのミートアップを始めたの。部屋に1人でいても、読書を通じて人とつながり、好きな本について会話ができる。どこにいても、コミュニティーの一員であると感じられるのは楽しいことよね。現在30くらいの支部がバーチャルでミートアップをしている。

−−同じ場所にはいるけれど会話が中心ではない。瞑想やヨガのクラスに似たような印象を受けました。

ローラ:ヨガや瞑想を通じて同じ空間や呼吸、エネルギーといったものを共有することと、SBCで他の人々と読書を通じて同じ空気や空間を共有することはどこか似ているかもしれないわね。それはバーチャルの集まりであっても同じことだと思う。同じ趣味を持った人達の集まりではあるけれど自分の選んだ本を自分のペースで読むという点で、これはソロ活といえるわ。規定がないから、コミュニティーに所属してはいるけど自分の意思で自由にできる。

世の中の多くの人は、内向的と外交的の完全にどちらかというよりは両方の性格を持っていて、SBCはその両方の性格に対応している数少ない場だとも思うの。ディスカッションの時間はあるけど気が向かないなら参加しなくていいし、静かに自分のペースで本を読めばいい。他のブッククラブにも入っていて、そこでの課題本をSBCで読んでいる人もいるのよ(笑)。

オンラインのコミュニティーでも同様。誰かがある特定のジャンルのおすすめを探していると書き込むと、誰かが「この本はいいよ」とポストする。さらにそのポストを見た他の人が「読んだことがないジャンルだったけど、とても良かった」とつながっていくの。強制はしないけど、いろんなジャンルを試して、冒険できる機会作りはしている。

−−作家を招いたクラブも開催していますね。

ローラ:出版社や作家自身が声をかけてきて興味が湧いたら、企画を進めているわ。でも「この本を読んで」という内容にはならないように、作家本人に注目するよりも、テーマの設定やアプローチ、書き方のスタイルなどにフォーカスしている。あとは、多様性を持ってさまざまな人種、文化を持つ人達の本を取り上げるように心掛けているわ。先日のゲストは、『Subductionサブダクション(沈み込み)』の著者、クリスティン・ミラレス。物語の主人公はアメリカ北西部の先住民の暮らす地域で仕事をしているラテン系の女性。物語の中でいくつものカルチャーが出会い1つになるという点で、現在の世界の状況や特にアメリカの現状を考えるきっかけとなるとても興味深い物語なの。今年はさらにジャンルを広げて伝記、フィクション、風刺・ユーモア、ヤングアダルトなども取り上げる予定。

−−新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウンによって1人で過ごさなくてはいけない状況を余儀なくされる人もいました。SBCの中で何か変化はありましたか?

ローラ:オンラインへの移行はとても大きな変化だった。ロックダウンになり、多くの人はコミュニティーを求めるようになったけど、自宅にいながら新しいものを見つけるのは限界もあるわよね。ジュネーブやオーストラリア、最近ではデンバーもそれぞれの地域規制に従って、屋外でソーシャルディスタンスを取り、安全な状況を確保してミートアップを再開している。リアルでもバーチャルでも、SBCを通して誰かと出会うのは、人間らしさを取り戻す機会でもあると考えている。これからも人々がつながる機会を提供していきたいわ。

−−読書をしている“Quiet time”(沈黙の時間)は心を鍛え、思慮深くさせると思いますか?

ローラ:そう思うわ、私自身もとても思慮深い人間だと思う(笑)。どれくらいの時間が必要かは個人差があると思うけど、“Quiet time”が必要だと感じたら、優先してその時間を作ることが重要ね。常套句ではあるけど、私達のまわりでは常に多くのことが起こっていて、PCやスマホの画面、お知らせ音など気が散る要素もたくさんある。でも私達の脳はそれらすべてに対応できるようにはなっていない。例えキンドルで読書をしていたとしても、それをいったん手放す。デジタル機器や日々の騒々しさから離れる時間は必要だと思うわ。

私にとって読書は知らなかった物語や人生と出会い、関わりを持つ機会。フィクションを読む人は、読まない人よりも共感力が高い傾向にあるという研究があって、読書をすると共感力が鍛えられるの。共感力があると自分とは違う感性の人達を理解したり心を通わせたり、何かを学んだりできるようになるでしょ。もちろん読書は娯楽でちょっとした現実逃避でもあるけど、得られるものはたくさんあるし、物語を追いながら空想を巡らすことはとてもぜいたくな時間だと思うわ。

私達のウェブサイトやブログで興味のあるイベントがあれば気軽に参加してほしい。知らない人と出会い、他の人がどんな本を読んでいるかを知るとてもいい機会よ。いつでも歓迎するわ。

サイレントブッククラブ
2012年、友人であり近所同士だったグィネヴィア・デ・ラ・メアとローラ・グルハニッチが、サンフランシスコの近所のバーで読書をしていたことをきっかけに始まったブッククラブ。友人との読書で生活が豊かになり、幸せになると感じて設立したクラブは現在、世界中に240以上の支部があり、それらの情報はボランティアにより毎週更新されている。SNS上の交流ではなく、現実に人が集まり読書をして、生きた空気を一緒に共有する場を提供している。
https://silentbook.club/

Picture Provided Silent Book Club

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“ソロ活”のススメ スペイン人作家、エクトル・ガルシアが提唱する「ソロ活で生きがいを見つける」 https://tokion.jp/2020/10/22/doing-things-solo-vol4/ Thu, 22 Oct 2020 06:00:35 +0000 https://tokion.jp/?p=8338 精神的な自立や他人への脱依存の考え方から、新しい自分が芽生えるきっかけとなる“ソロ活”。欧米でも広まる1人で幸せを見つけるルール。

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“Otaku”“Emoji”“Mottainai”など、翻訳されずに世界共通語になった日本語はたくさんある中で、“Ikigai”を世界に広めた人物としてスペイン人の作家エクトル・ガルシアがいる。日本語版は、『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』(エクスナレッジ、2017)。2016年に欧米で出版された同書は現在も注目を集めている。一節にある『Using flow to find your ikigai(フロー〈人がある行為に没入し、精力的に集中している感覚〉を使って、生きがいを見つける)』では、自分自身と向き合い、没頭できるもの、本当に好きなものを探ることで生きがいを見つけられるとしている。

ソロ活は、自分だけの時間を持ち、心ゆくまで何かに没頭して、新しい価値観を見出すこと。ソロ活と生きがいのつながり、そして著者自身の生きがいを聞いた。

——まず2004年に日本に移住したきっかけを教えてください。

エクトル・ガルシア(以下、エクトル):スペインで大学を卒業後、アメリカ、スイス、日本でのインターンシップに申し込み、スイスと日本は受かりました。それで運命が決まりましたね。初めにスイスに行って、次に日本へ。インターンシップを経て仕事を見つけ、現在に至ります。日本に住んで今年で16年目です。

——日本に初めて来た時の印象は?

エクトル:日本人がヨーロッパに初めて行く時と同じような感覚だと思います。アフリカやヨーロッパ、アメリカなどには行ったことがありましたがアジアは日本が初めて。今までに見たことがないものばかりで、宇宙に来たような不思議な感覚でした。

2004年当時は英語表記のものが少なかったですね、何もわからない世界だったので毎日が冒険でした。不思議に感じたこと、意味のわからない言葉や文化を日本人の知人に聞いて、それらをまとめたブログを始めました。当時スペインでは日本に関する記事は黒澤明の映画くらいしかなかったので、日本のリアルな文化が全く浸透していませんでした。日本で驚いた経験を人に紹介したくてブログと執筆を始めました。このブログは、スペインのブログ読者数ランキングで1位になったこともあるんですよ。

日本の食に関しては、旅先などで未だに初めて見る食べ物があります。日本食は日本語と同じように奥深い文化だと感じています。

——生活の中で生きがいという言葉を知ったのですね?

エクトル:“生きがい”という言葉を知った時におもしろい言葉だと思い、世界に広めたいと思いました。著書には日本の悪いところは書いていないので、「これは本当の日本ではないよ」と言われることもありますが、日本の良いところを広めることが私のスタイル。“生きがい”という言葉を「芸者」や「侍」、「寿司」と同じくらい海外に浸透させたかった。現在、「Ikigai」というタイトルの書籍は50冊くらい出版されていますが、生きがいを題材にした書籍を海外で出版したのは私が初めてでした。この言葉の魅力を実感しています。日本のテレビ番組でも『IKIGAI』は取り上げられていて、私も取材を何度も受けています。

——生きがいを深く考えたきっかけは?

2012年から2、3年間、潰瘍性大腸炎に似た病気を患い大変な経験をしました。このことは著書では一切公表していないのですが、ある意味で自分のために心身ともに苦しみながら『IKIGAI』を書いたのです。

2016年、出版当初はなぜこんなに売れるのか不思議でしたが、世界で200万部を突破して売れ続けています。これはコロナ渦も影響しています。ずっと家にいなければいけない状況は不自由です。旅行にも行けない、お金があっても使い道が無くなったり、そうすると仕事をしていても何のために働いているのか分からなくなる。そうすると生きがいについて考えたりするのでしょうね。

——同書は、沖縄の長寿の里でインタビューをした内容が軸となっていますね。なぜ沖縄だったのですか?

エクトル:哲学者サルトルの思想、実存主義と妻の出身地である沖縄の家族のつながりからインスピレーションしました。妻が那覇市出身なので、沖縄は数えきれないくらい訪れています。

執筆にあたりスペインでいう村上春樹さんのような作家、フランセスク・ミラージェスさんと沖縄の大宜味村へ行きました。彼は取材のエキスパートでもあり本書の編集も担当しました。大宜味村では100人以上に生きがいとは何かをインタビューしました。

昨年12月にナショナルジオグラフィックのドキュメンタリー制作で大宜味村に行きました。初めて訪れた2015年当時は、現地の人に変な外国人だと思われていたかもしれませんが、今回行ったら自分が人気者になっていて不思議でしたね。民泊に『IKIGAI』の書籍が置いてあったり、サインを求められたり。しかし同時に著者としての責任も感じるようになりました。例えば、日本の良いところを書き過ぎて、観光客が増えすぎると困りますよね。バランスは大事だと思いますが、日本の長所だけを書くという自分の信念は貫きたいですね。

あと驚いたのは、昨年10月にインドに行った時に『IKIGAI』が13ヵ月間売上1位の書籍になっていたこと。アメリカでも売れていますが、インドほどではありません。

——海外の多くの人が、YouTubeで『IKIGAI』を紹介していますね。

エクトル:特にアメリカの男性達から、生きがいを見つけるにはどうすれば良いのか聞かれます。『IKIGAI』では、15のチャプターで生き甲斐の見つけ方を紹介していて、日記を書く、運動をするなどのアイデアを出しています。人の性格はさまざまだし、答えは1つではないと思っています。

日本人の弱い部分は、周りの人達に合わせて他人に言われた通りになってしまうところ。そうすると、心を病んだり、鬱や自殺につながってしまうことがあります。そういった状況は本当の自分から遠ざかっている時に起こります。まずは自分自身を知るべきで、その先に生きがいがあります。生きがいは羅針盤でもあり、本物の自分から遠ざかっていると、羅針盤がどこに向かっているのか分からなくなる。自分の羅針盤がどこに向かっているかをまずは見つけるべきです。

仕事、家庭、毎日忙しい中で、自分を見失うことがあります。どのような状況でも自分の時間やスペースを見つけるべきです。それは、ヨガや瞑想、簡単な日記を書くことなどでも良いんです。今日の楽しかったこと、嫌だったことを3つずつ書くだけでも良い。2週間継続して書いていると、嫌なことは共通して繰り返されていることに気づきます。それによって嫌なことに対するアクションを考えられる。毎日のフローに入る活動を増やしたほうが良いですね。例えば趣味が3つあったとして、一番フローに入りやすいものを選ぶべきだと思います。スポーツをする人は、フローのコンセプトが理解しやすいと思います。最初はつらいけれど、感覚をつかめば幸せな気分になれます。

——フローに入る行動とソロ活につながりはあると思いますか?

エクトル:フローに入る時は、ソロ活になることが多いですね。場合によっては2人のほうが良い時もあるので悩むところですが、バランスを取ることが大事です。自分に夢中になりすぎると、周りの人を大事にできなくなってしまう。私のフローは朝10時頃からパソコンやスマホには触れないで執筆をして、あとは運動したり、音楽を聴いたりしています。パンデミック後も、このフローは変わりませんが、生活には変化がありました。私はリスクをとるのが好きではないので、あまり外出していないし、人にも会っていない。友達とは頻繁にZoomで話をしていますが、人と会えないのはさみしいですね。

あとは散歩をしないとストレスがたまるので、短い散歩を妻と、長い散歩をしたいときは1人で出掛けています。散歩は気分転換ができて好きです。地中海の文化には、「目的のない散歩」が日常に根付いています。人々は道に出て目的の無い散歩をして、疲れたらカフェに寄ったりもする。東京でも似たような感覚で散歩をしていて、代々木公園や新宿御苑で森林浴をすることもありますよ。

——生きがいは何ですか?

エクトル:執筆は生きがいの一つですが、いろんなことをやっているので一番重要なものではありません。朝1、2時間執筆すると飽きてしまうこともある。写真を撮る、散歩や旅行も好きですね。文章を書いて、世界中の人達とつながりたいですね。そうすれば世界中のさまざまな考えを聞けます。もうすぐ新書『Magic of Japan』が出版されます。最初はスペイン語版で、来年英語版を出版します。東京の魅力的な50ヵ所を写真と一緒に掲載しています。穴場のような場所も載せています。いつも1冊書き終えたら、次を書き始めるのですが次回は侘び寂びなど、日本の美意識に基づく言葉をテーマに執筆したい。日本庭園の考え方も奥深くて美しいと思います。

心から書きたいと思ったこと以外は書きません。また、本として出版するかはわからないですが、例えば日本はリスクをとらない社会ですよね。私も日本人のようにリスクをとらない考え方になってきています。人間は潜在意識の中に恐怖心を持っています。福島の原子力発電所事故の際にも日本にいたのですが、地震は怖いですよね。いつ何があってもリスクをとらずにいることは大事だと思います。日本の文化をもっと勉強していきたいですね。

あとスペイン人と少し似ていますが、日本人は自分の興味に一途に没頭する人が多い。これはオタク文化につながり、さらに生きがいにもつながっていると感じています。TwitterやInstagram上には、漫画家やアーティストなどの才能のある人がたくさんいますから、日本には生きがいを見つけている人も多いはずです。でも、生きがいがはっきりわからなくても良いのです。幼少期から90歳まで何かをやり続ける人は10%程度しかいませんから。

エクトル・ガルシア
スペイン生まれ、2004年から日本在住。日本移住前は、エンジニアとして欧州原子核研究機構(CERN) に所属。現在は作家として活動。日本のポップ・カルチャーを発信するウェブサイト「kirainet.com」は、世界中から毎月100万を超えるアクセスがある。心理学およびスピリチュアルを専門とするジャーナリストのフランセスク・ミラージェスとの共著に、『IKIGAI: the Japanese Secret to a Long and Happy Life(Penguin Random House、2017)』『The Book of Ichigo Ichie(Penguin Random House、2019)』などがある。
Héctor García official website

Text Miho

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“ソロ活”のススメ オーストラリアの森林火災監視員、サラ・ドラモンドが提唱する「ルーティーンで1人の時間が心地よくなる」 https://tokion.jp/2020/09/25/doing-things-solo-vol3/ Fri, 25 Sep 2020 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=6210 精神的な自立や他人への脱依存の考え方から、新しい自分が芽生えるきっかけとなる“ソロ活”。大自然の中で1人豊かに過ごすルール。

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1人飲み、1人旅、1人飯。ここ数年で認知や理解が高まっている、自分のペースや考えを大切にする行動や体験を指す“ソロ活”。精神的な自立や他人への脱依存の考えからも“さみしい”“ぼっち”といったネガティブな感情ではなく、新しい自分が芽生えるきっかけとして市民権を得た。

デジタル時代に自分だけの時間を確保することは想像以上に難しい。言い換えれば、1人だからこそ心ゆくまで何かを楽しんだり、新しい価値観を見出す機会はそう簡単にやってこない。しかし、皮肉にも新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で図らずもその機会を得た人は多いはずだ。

オーストラリアやアメリカでは森林火災が多発するため、山頂の監視塔で火災予防をする森林火災監視員という仕事がある。監視員は1人で夏の数ヵ月間を大自然の中で過ごす。大学で教鞭を執り、作家としても活動するサラ・ドラモンド。彼女は数年前に森林火災監視員となり、夏の間はほとんど誰とも会わずに山頂で過ごしている。大自然の中で否が応でも孤独と向き合う日常とはどのような生活なのか?

——大学教授、作家、森林火災監視員などさまざまな肩書を持っていますが、今は何をしていますか?

サラ・ドラモンド(以下、サラ):今オーストラリアは冬だから、大学で講義をしています。気晴らしには1人で釣りに行きます。森林火災が発生する夏の時期は、フランクランド山頂にある小さな監視塔で、森林火災監視員をしていて、1日中ラジオで音楽を聴きながら、山の中で煙がたっていないかを監視します。勤務中は退屈な時もあるけれど、注意力が必要な仕事。監視員になって3年目だけど、「自然の中では、何が起きるかわからない」という不安を感じることがたくさんあります。

——森林火災監視員の日々の過ごし方は?

サラ:監視塔でラジオを聴きながら、1時間ごとに天気、気温、湿度、風向きなどの確認をするの。山の中で観光客に遭遇して会話をすることもあります。

——監視員になろうと思ったきっかけは?

サラ:監視員をしている友人から話を聞いて興味を持った。彼がこの仕事を辞める時、私を後任として推薦してくれました。自然豊かで美しい場所なのでこの仕事が大好き。環境保全に興味があって、森林火災の原因を知ると、森の性質に合わせて状況をコントロールすることが必要だと気付きました。オーストラリアは森林火災の歴史が長いけれど、火災後は森が再生して動物がまた住み着きます。

——1人の時間は何をしていますか?

サラ:読書と執筆です。最近インターネットをつないだから映画を観たりもする。5年間インターネットなしの生活だったから、生活しやすくなりました。あとは、愛犬と海辺を散歩したり、料理をしたり。週末の夜に1人で釣りに行くのも好き。この静かな環境で自然生態系を理解しながら楽しく生活しています。

——ソロ活が好きですか?

サラ:好きです。1人で過ごすのが心地いい。自分で解決できる力を持つことはとても大事。例えば自分の大切な人が亡くなったりするでしょう。1人で過ごすことに慣れていると、そういう時に悲しみを乗り越える力が強くなります。

昨日、家の雨漏り修理をしていました。「パートナーがいれば助けてくれるのに!」なんて思いますけど(笑)。でも男性と付き合っている時は、相手が私に何かしてくれて、私が相手に何かしてあげなければいけないことに疑問を感じていました。だって自分のことは自分でできますから。例えば釣りに行った時、他人と協力し合うこともあるけど、何か起きたら自力でなんとかしなければいけない。最終的には、どんなことも自力で解決する必要があると思います。

——自分自身と向き合う方法として、ソロ活に価値を見出す人が増えています。サラのライフスタイルは恵まれた環境に見えますが、今の暮らしを始めた時の周りの反応はどのようなものでしたか?

サラ:ここに住み始めた時は、電気もなくて「1人で大丈夫?」と心配されました。住み始めたばかりの頃、夜にライオンくらい大きな野犬が私の家の周りをぐるぐる回っていました。その日は怖くて眠れなかった。この地域にはハンターが狩猟に来るから、家の外に男性用のブーツを置いて護身していたのですが、今は周囲の人が敬意を持って接してくれるから、ちっとも怖くないです。私が監視塔で働いていることを古風だと感じる人もいるけど、素晴らしいと感じてくれる人もいる。森林火災監視員の仕事に就きたいと思っている人もたくさんいます。

——新型コロナウイルスによるパンデミックで生活に変化はありましたか?

サラ:あまり変わらないです。ここにはロックダウンもないし、ビーチにも行けるから街中に住む人と同じストレスは抱えていないですが、この状況が続くことは心配。この前、有毒のマッシュルームを食べてしまって具合がとても悪くなりました。でも、一番近所の家まで25kmも離れています。「何かあった時に誰が私を見つけてくれるのか」と不安に感じることがパンデミックになってからは増えました。自粛期間中は不安な気持ちを払拭するためにノンフィクションではなくて現実逃避ができるような作品を読んでいました。

執筆も思うように進まなかったです。今の状況でキスやセックスのことを書くのは難しいし、キスをする気分にもなれない(笑)。でも11月に新作の本が出版される予定です。これからもここに住み続けて、もっと心地よい空間を作りたいと思っています。あとは自分にも他人にも親切であり続けたいとは思います。パンデミックが起きてから親切な心を持つことは何よりも大事だと感じるようになりました。

——ソロ活を始めた人に何かアドバイスはありますか?

サラ:1人でいることに心地よさを感じられなければ、精神的に自立できないと思います。それと自分を高めるためにルーティーンを持つことも大事。あとは犬を飼うのも良い、犬は人を寂しくさせないから。

サラ・ドラモンド
オーストラリア生まれ。マードック大学で歴史学博士号を取得。作家として数多くの小説を発表、2010年にはザ・ベスト・オーストラリアン・エッセーズ(オーストリアのエッセー賞)を受賞。その他にバリスタ、造園家、大学教授、夏限定で森林火災監視員とラジオサポートとして活動。現在は、西オーストラリア州の南側の海岸沿いに在住。

Picture Provided Sarah Drummond
Text Miho

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“ソロ活”のススメ ニューヨークのセックス・エデュケーター、カーリー・Sが提唱する「ソロセックスで自分を愛せるようになる」こと https://tokion.jp/2020/09/17/doing-things-solo-vol2/ Thu, 17 Sep 2020 11:00:05 +0000 https://tokion.jp/?p=4792 精神的な自立や他人への脱依存の考え方から、新しい自分が芽生えるきっかけとなる“ソロ活”。ソロセックスでありのままの自分を受け入れ、他人にも寛容になれるルール。

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1人飲み、1人旅、1人飯。ここ数年で日本でも認知や理解が高まっている、自分のペースや考えを大切にする行動や体験を指す“ソロ活”。精神的な自立や他人への脱依存の考えからも“さみしい”“ぼっち”といったネガティブな感情ではなく、新しい自分が芽生えるきっかけとして市民権を得た。デジタル時代に自分だけの時間を確保することは想像以上に難しい。言い換えれば、1人だからこそ可能な心ゆくまで何かを楽しんだり、新しい価値観を見出す機会はそう簡単にやってこない。しかし、皮肉にも新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で、図らずもその機会を得た人は多いはずだ。

ソロセックス、いわゆるマスターベーションは性教育においても自分を愛せるようになり自己肯定感が高まると言われている。他人を受け入れるゆとりが生まれ、誰にでも自然と優しくなれるという考え方だ。孤独はその人が自分と向き合う大切な時間であり、自分の体に触り快感を得ることは自分を再確認することと同義ではないだろうか。セックス・エデュケーターで人気ブロガーのカーリー・Sがソロセックスについて語る言葉は慈愛に満ちている。

——セックス・エデュケーターになったきっかけは?


カーリー・S(以下、カーリー):以前ハーレーダビッドソンで働いていました。そこで、性や人種など、たくさんの差別があることを知りました。そんな日々の中で、セックストイショップがオープンすると知り、スーパーバイザーの仕事に応募したのがきっかけ。性教育のワークショップ開催のために素晴らしい人達から指導を受けました。ワークショップの参加者にはセックスを通して人生をさらに充実させ、悦びを得られる方法をアドバイスしていました。

——現在は、ボディポジティブなセックス・エデュケーターとして活動をしていますね?


カーリー:私のような外見のセックス・エデュケーターはほとんどいないから、最初は大変だったけど成功しました。主流は外見勝負だから「ヴィクトリアズ・シークレット」のモデルのように痩せていて、小麦色の肌の人達。私みたいに肌が白くて、たくさんタトゥーがあるような人ではないです。だから私を見て、なぜ自分に自信が持てるのかと不思議に感じる人もいるほど。

——どうやって自分に自信が持てるようになりましたか?


カーリー:私の母は長年、自分がどうであろうとも美しいって感じられるように育ててくれました。人は何かしら美しいものを持っていました。自分を信じて強くいられるように育ったのは本当に幸運だった。家族や親友、一緒に働いてきた人達にも恵まれました。同僚達はとても親切で、尊敬するメンターでもある。エデュケーターになる上でも良い影響を与えてくれました。

——カーリーのブログ『TAKE YOUR OWN ADVICE』 では、ソロセックスがボディポジティブになるために役立つと書かれています。そう考え始めたのはいつ頃ですか?

カーリー:大学時代でしょうか? ニューヨークの実家を出て、ペンシルバニアの競争が激しい大学に行ったのだけど、差別する人が多かったからばかにされたりもして、疑心暗鬼でした。音楽学校に通いながら学生課で働いて、ストリッパーもしていました。警察に連行されて殺人事件の証人として裁判に出廷したこともあります。勉強は大変だったし、後にニューヨークに戻って学位を取ったけど、他人に時間を使ってばっかりで自分の時間なんて全然なかったです。でもソロセックスで自分に悦びを与えることで自分を愛せるようになって、他人ともっと上手にコミュニケーションが取れるようになりました。どうやれば自分の体が快感を得られるのか探求して、その答えがわかると人にも悦びを与える方法がわかります。

すべての経験が私を強くしてくれました。自分を恥じて自信喪失したとしても、他人をインスパイアしたいと強く思っていたから、困難を乗り越えようとポジティブに行動してきたつもりです。

——ソロセックスのルールはありますか?

カーリー:人を傷つけたり、動物や子どもを利用して誤ったことをするのはいけないことだけど、間違ったやり方なんてない。自分の体に触れて感じるだけ。典型的な方法が自分の快感に当てはまるとは限らないから、いろいろなことを試して欲しいです。

セックストイショップで働いていた時、自分に当てはまることが他人に当てはまるわけではないのだとわかりました。自分自身で悦びを感じられることが大事だと思います。まずは自分の欲求を知り、何に興味があるのかを問うことが大切。どう触れると快感なのか、Gスポットの開発のためにバイブレーターなどのセックストイを使うことはノーマル。みんなにセックスを通じてハッピーになってほしい。

——フォロワーはソロセックスを楽しんでいますか?

カーリー:さまざまな体位、トイやアクセサリーを使ってソロセックスを楽しんでいます。トイに関する質問がたくさんあるけど、体のどの部分が刺激を求めているのか、どのくらいの刺激が欲しいのか、どんな感触が好きなのかなどの質問をして、その人のセンスを感じ取って個々に対応しています。

——パンデミック以降、思考の変化はありましたか?

カーリー:大きな変化はないけど、人とどのようにつながりを持ち続けるか、どのようにストレス解消をすれば良いかをよく考えてその手助けをしようと思いました。ストレスで性的な感情が湧かなくなってもしょうがないってアドバイスしたり、遠距離でパートナーに会えない人達をつなぐ役割もしています。

多くの人が心のバランスを保って生活できるように祈っています。悦びを感じてストレス解消してくれるように。特にニューヨーカーには伝えるけど、何が起こっても深呼吸して冷静になることが重要だと思っています。多くのニューヨーカーは、常にストレスを抱えているから、セミナーをする時はあえて大きく深呼吸させます。それで解放されることもある。

最近は、セックストイのオンラインショップ「スペクトラムブティック」で、記事を書いたり、ユーザーの質問に答えたり、ウェブサイトの運営にも携わっています。あとは、ポルノコンテンツの制作やウェビナーの開催も。過去に自由な性表現を訴えるサミットを開催したのだけど、近いうちにソロセックスのセミナーやデジタルカンファレンスもする予定です。

——カーリーのフォロワーに変化はありましたか?

カーリー:良い意味で変化があったと思います。トイにさらに興味を持ち、自分のために時間を使っています。トイの売り上げも伸びているから、ソロセックスを楽しむ人も増えています。私はSNSにかなり力を入れています。専門はトイだから、フォロワーやユーザーにトイを使用する上でのヒントを与え、アドバイスすることに力を入れています。ジェンダーによってアドバイスを変えることはほとんどない。身体の構造はほとんど同じだし、ビギナーだったら使いやすいトイを紹介します。求めている快感を最大限に引き出してもらいたいですね。

——セルフ・エスティームを高める最良の方法はありますか?

カーリー:私のウェブサイトでたくさんのヒントを紹介しているけど、一番は自分の体をいたわること。好きではない体の部位を、入浴中に大事にケアして愛情を注ぐ。例えば、私の足はすごく乾燥しているからお気に入りのローションを入念に塗ります。普段気にかけていないところを気にかけることから始めるのが良いですね。自分を毎日褒めてあげることや人が褒めてくれた時に否定しないで、素直に認めることも大切。誰が惨めな日々を過ごしているかわからないでしょう、だから笑顔や服装など、どんな些細なことでも良いから褒めること。そうすると、人を少しだけでもハッピーにしてあげられるし、良いエナジーを広げることで、誰かの一日が良いものになるかもしれない。

冴えない日が続いていても、起床して朝食を食べられることだけでも素晴らしいこと。何かをできることだけでも素晴らしいことです。「素敵なブラウン色の目だわ」なんて自分の外見を褒める。難しく考えないで、どんなことでも良い。

——常に思いやりを持って活動しているのですね。

カーリー:Mr. Rogers (Fred Rogers)を知っていますか? 1960年代から長年放送されていたアメリカの子ども向け人気番組「Mister Rogers’ Neighborhood 」の司会者だったんですが、私は彼が大好き。どんな子どもも受け入れて優しく接します。私は人が攻撃しあうのを見て、もっと共感して、理解しあえるようになれば良いのに、とずっと思っています。思春期は難しいですけど。私自身のいじめの経験を踏まえて、今いじめを受けている人へ「いつかは終わるから大丈夫よ」って伝えたいです。

落ち着いて、考え方をポジティブにするだけで世界は変わるので、私もポジティブになれるように思考を変えています。例えば地下鉄でパジャマを着ている人を見た時、馬鹿にする人がいるかもしれないけれど、私だったら「楽ちんで良さそう」って思います。他人が私の悪口を言ったとしても、全く気にしない。その人は私の趣向を理解できないだけ。みんなが同じ趣味を持つことはあり得ないと理解しています。

今後はポルノ制作会社を作る予定です。ボディポジティブ・ポルノで、視聴者が見ていて心地良くて、自信が持てて、セクシーになれる作品を作りたい。自分が満足できる手法で作りたいからそれがかなう場所を見つけたい。撮影はスタジオやバー、家でやると思うけど、ニューヨーク市は何もかも物価が高すぎます。いずれにせよニューヨーク市からは離れたいと思っているから、ニューヨーク市郊外で始めるかもしれません。

カーリー・S 
ニューヨーク生まれ、ブロンクス在住。バイブレーター、ワンドの女王。セックス・エデュケーター、ポルノスター、モデル、セックスブロガー。ニューヨークの老舗セックストイショップのプレジャーチェスト、アメリカ最大のアダルトイベントExxxotica、グローバルメディアのコスモポリタンなど数多くのメディア、イベントでセックス・エデュケーターとして紹介されている。現在は、ボディポジティブなセックス・エデュケーターとして記事寄稿、セミナーやイベント開催など活動の場を広げている。

Picture Provided Carly・S
Text Miho

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“ソロ活”のススメ NYのトップシェフ、アニータ・ロウが提唱する「孤独な時間は生きていることを実感する瞬間」 https://tokion.jp/2020/07/28/doing-things-solo-vol1/ Mon, 27 Jul 2020 17:50:38 +0000 https://tokion.jp/?p=896 精神的な自立や他人への脱依存の考え方から、新しい自分が芽生えるきっかけとなる“ソロ活”。NYでも広まる1人の食事を幸せにするルール。

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1人飲み、1人旅、1人飯。ここ数年で認知や理解が高まっている、自分のペースや考えを大切にする行動や体験を指す“ソロ活”。精神的な自立や他人への脱依存の考えからも“さみしい”“ぼっち”といったネガティブな感情ではなく、新しい自分が芽生えるきっかけとして市民権を得た。

デジタル時代に自分だけの時間を確保することは想像以上に難しい。言い換えれば、1人だからこそ心ゆくまで何かを楽しんだり、新しい価値観を見出す機会はそう簡単にやってこない。しかし、皮肉にも新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で自宅に籠もる生活を送る中、図らずもその機会を得た人は多いはずだ。

そもそも“ソロ活”は新型コロナショック以前のニューヨークで静かに動き出していた。海外において、家族や大勢の友人と食事を楽しむ姿は幸せの象徴とも言える風景。一見、想像し難い海外の“ソロ活”事情とは何か? 

2000年、ニューアメリカン料理店「アニサ」をオープンし、ニューヨークのビジネス誌「クレインズ」で「モースト・インフルエンシャル・ウーマン(最も影響力のある女性)」に選ばれた、トップシェフの1人であるアニータ・ロウ。彼女の著書で、1人で料理を楽しむためのレシピ本「Solo: A Modern Cookbook for a Party of One」は、アメリカでの食における“ソロ活”の可能性を推し広げた。インタビューを通じて紡がれるアニータの言葉は、強く“ソロ活”を推し進めるものではなく、個人の自由を最優先の価値とする温かいものだった。

——家族で食卓を囲む光景はアメリカにおいて幸せの象徴に感じます。2018年に1人の食事を有意義にするレシピ本「Solo」を出版した理由は何ですか? 

アニータ・ロウ(以下、アニータ):“ソロ活”を広く人々に提唱したかったわけではなくて、バランスが大事だと思っている。当たり前だけど、全ての人が自分の時間を持つことは必要。大家族でも、たくさん友人がいたとしても、1人になる時間は必ず存在するのだから。

——ニューヨークでも1人でレストランやバーで食事をすることは珍しいことではなくなりました。“ソロ活“が定着し始めたきっかけは何だと思いますか?

アニータ:アメリカ全体で考えると異なるけれど、ニューヨークのような大都市では、1人の活動が生活基準になっている場合が多い。「アニッサ」の常連で必ずバーカウンターに座って1人で食事をする顧客がいたけど、理由は自宅の冷蔵庫が壊れて以来、修理せずに生活スタイルを外食にシフトしたから。

彼のように、最近のニューヨークでは些細なきっかけで“ソロ活“を始めるケースは珍しくないの。ダイニングを囲むとできないけれど、バーカウンターではできる会話もあるでしょう。1人の時間を楽しむことは、新しい人とのつながりが持てるきっかけだと思う。1人で食事をすることに後ろめたさなんて感じないわ。

1人の食事(=孤独を意識的に作る)は生きていることを実感する瞬間

——著書の「Solo」では「家族みんなが同じものを食べる必要はない。各々が食べたいものを食べればいい」という言葉が印象的でした。この考えに至るまでの経緯は?

アニータ: できることなら家族で同じものを食べた方が良いとは思う。でも、アレルギーや、1つのメニューが全ての人にとって幸せとは限らない。「アニッサ」では、スタッフ全員が一緒に賄いを食べていたけれど、宗教上の理由で豚肉が食べられなかったり、ベジタリアンなど、多様な信仰や嗜好の人がいたので、それぞれが異なるメニューだった。誰かのための料理とは、食べる人のことを考えること。その一人ひとりに向けた思いこそがハッピーなんじゃないかしら。

——現実的に家族で別々の料理を作るのは難しいですよね?

アニータ:そうね。でも簡単でシンプルなメニューで良いの。例えば、子供にバラエティに富んだメニューを作ることは、様々な食文化に触れることにつながり、食育にとっても大事なこと。

——「1人で料理と食事をすることは最も幸せで力強い経験の1つになる」とも述べていますが、カップルだけでなく、子供を持つ家庭に対しても同様の事が言えますか?

アニータ:もちろん。でも、無理しない程度にね。現代の生活で1人になる時間を作るのは良いアイデアだと思う。ディナーに限らず誰かと一緒に過ごすことも楽しいけれど、誰ともシェアしない時間も至福の瞬間。誰かのために料理をして、一緒に食事を摂ることを否定しないけれどね。

——“ソロ活”は精神衛生にどんな影響を及ぼすと思いますか?

アニータ:孤独な時間を作るのと、孤独を感じるのは全く違うこと。孤独を感じる時は常に誰かと一緒にいたいという“寂しさ”が生まれるけど、孤独な時間を作る行為は生きていることを実感する瞬間でもあるし、自分を見つめ直すきっかけにもなる。

——レシピの紹介文には「1人でディナーをする時に最適なメニュー」(例:Smoky Eggplant and Scallion Frittata)とありますが、どんな点で「1人」に最適だと思いますか?

アニータ:掲載しているレシピは、簡単な材料で30分以内に作れるものばかりだし、後片付けも簡単だからストレスもない。誰かに合わせるのではなく、自分の体調や気分でメニューを決められるので、体と心にとって最善のメニューといえるわ。

——自分のために特別なメニューを作ることはありますか?

アニータ:私が作るメニューは全てがスペシャル(笑)。でも、時間や手間のかかる豪華な食事はほとんど作らないし、その必要も無い。何がスペシャルかは、その時の自分が決めていいはず。

ポストコロナの“ソロ食”は最小限の資源で作る“フルーガルクッキング”

——ミシュランの星を獲得した「アニッサ」を閉店し、“ソロ活”のためのレシピ本を出版したこれまでを振り返って、今、何を考えますか?

アニータ:圧倒的にストレスが減った。新型コロナショック以前は世界を旅行していた。友人との共同所有の旅行会社「Tour de forks」では、世界中のフードツアーを企画して、料理のレッスンやチャリティーにも取り組んだの。とても楽しかった。

——新型コロナショックによる外出禁止令後、自身のライフスタイルに変化はありましたか? 

アニータ:これまで自宅中心の生活にある程度シフトしていたけれど、こんな経験はない。今、アメリカでは少しでも家で快適に時間を過ごすため、料理で新しいことに挑戦している人が増えている。お菓子作りをしている人は多いみたいで、みんなが小麦粉を買うから、手に入り難くなってしまった(笑)。自分のための料理で新しい挑戦をするのは素晴らしいこと。

——新型コロナウイルスと共存していくために、食における“ソロ活”はどのように変化していくと思いますか?

アニータ:これまでのビジネスモデルをどう最適化するか。復活できると信じているけれど、軌道に乗るまでは長い時間がかかるでしょう。集客率が50%の状況でどう売り上げを確保するか……私は最小限の資源とコストで作る“フルーガルクッキング”のアイデアを考えている。

——アニータの料理には日本の影響があるように思います。和食や日本文化からはどんな影響を受けましたか?

アニータ:和食はお気に入り。旬の食材を使い、素材を生かす考え方が素晴らしいし惹かれる。味付けも好き。もし、食べ歩きがメインの旅行をするなら間違いなく日本を選ぶ。昨年、冬の北海道に行ったの。特にシーフードは最高! 日本の物価は高いと思っていたけれど、ニューヨークと比べるとはるかに安いことに驚いた。この状況が落ち着いたら、すぐにでも行きたい。今は日本の寿司が一番恋しいわね。

アニータ・ロウ
アメリカ・ミシガン州生まれ。コロンビア大学卒業後にパリの料理学校「エコール・リッツ・エスコフィエ」に入学。同校卒業後にニューヨークに戻り、「Mirezi」などのレストランでシェフとして活躍。2000年、ビジネスパートナーのジェニファー・サイズムと「Annisa」をオープン。2006年にはニューヨーク初のミシュランガイドで星を獲得。2015年に「Annisa」を閉店、現在は旅行会社を運営している。著書には『Solo:A Party of One for a Party of One』(Knopf、2018)などがある。

Picture Provided Anita Lo
Text Miho

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