UKのソロ活メディア「ソロリビング」が提唱する「1人の暮らしと外食の喜びをシェアする」

「ソロ活、特に食事に関しては日本が最先端かもしれない」という話を日本好きな外国人達から言われたことが何度かあったが、ことUKにおいてはそれがあながち的外れではないことが今回のインタビューで少し確信に近づいた。ヨーロッパでは、おひとり様の食事は不思議がられ、”寂しく一人で食事をしている”というように思われてしまうこともあるようだ。当時UKで1人で暮らすことの素晴らしさ、1人で食事をすることの楽しさを伝えるべく立ち上がったオンラインメディア&コミュニティ『ソロリビング』の創業者、シュテッタ・ダットにインタビューをした。

――2017年に『ソロリビング』をスタートしていますが、当時からソロ活のムーブメントはあったのでしょうか?

ソロリビング:当時は1人暮らしについて話をする人はいなかった。長年、UKではソロ活は否定されてきたから「ソロ活メディアを始めよう」と決意するまでに長い時間が必要だった。でもその甲斐があって、今はソロ活が肯定され始めている。当時私は独身で30代になったばかり、周りはパートナーと充実した生活を送っていたり、結婚したりする時期だった。でも、私は相手を見つけて落ち着きたいという強い意欲はなく、恋愛や結婚は自然に訪れるものだと思っていたの。いろいろと経験して、自分の人生に十分満足しているし、1人暮らしが心地いいと気付いた。あの時はわからなかったけれど、生涯の伴侶を見つけることはドリームジョブを手に入れるくらい大変ね。

――読者の年齢層はどれくらいですか? 世代によってソロ活のスタイルに違いはありますか?

ソロリビング:読者の年齢層はとても幅広いけど、メインはアラフォー世代。1人暮らしをしているという点で1番はアラシックス世代だけど、ミレニアル世代はあえて1人暮らしをしている人が多いわ。18~24歳までは、実家かシェアハウスに住んでいる場合が多く、1人暮らしをすることが少ない年齢層。『ソロリビング』では、実際に1人暮らしをしているか、いないかでソロ活者かどうかを区別していない。だから、シェアハウスで暮らす人やシングルペアレントの読者も歓迎しているの。『ソロリビング』では、誰にも頼らずに人生の重要な決断をすることを「ソロで人生をナビゲートする」といっている。私達はソロナビゲーターのためのコミュニティーを運営しているのよ。

――読者はすぐに集まりましたか?

ソロリビング:読者が定着するには時間がかかった。それにオンラインのコミュニティーを立ち上げて定着させるのは簡単ではないわよね。まずは1人で暮らすことをどれだけポジティブに伝えられるかが重要だと思ったから、1人暮らしの初日から遭遇するであろう課題を取り上げたり、丁寧なコンテンツ作りをした。去年は読者が急激に増えた年だったけど、人気のトピックスは、「1人暮らし」「ウェルビーイング」「サステナブルな暮らし」の3つね。今やっと、私達がやってきたことは正しかったと実感できている。でも、まだまだやるべきことはたくさんあるし、やっと軌道に乗ったところ。

――この3年でUKの多くの人がソロ活をポジティブに感じるようになったと思いますか?

ソロリビング:1人暮らしが認知され、ソロ活者の声を社会が聞き入れるようになった。私達は、1人で暮らすことも普通の暮らし方の一つと捉えてあらゆるソロ活を話し合える場を提供している。私達の活動をきっかけに、多くのソロ活者がソーシャルメディアでソロ活について発信するようになったのはとても嬉しいことよ。読者が1人暮らしをより幸福に、満足して過ごせるように後押ししたい。1人暮らしで得られる自由や体験を最大限に引き出したい。たとえ短期間でも1人暮らしを経験することで、ソロ活はポジティブなライフスタイルの1つだと感じてもらいたい。ソロ活は人生の何かが欠けている人がするものではないと気付いてほしい。また自分自身と良い関係を持つことや、今まで気づかなかった自分を発見してそれを深めることもとても大切。そして、ソロ活者に豊かな1人暮らしをしてもらうためにも、私達はサステナブルな暮らしやセルフケアを推進している。

――日本ではソロ活向けのサービスが豊富ですが、UKではどうでしょうか?

ソロリビング:UKでは最近、ソロ活向けサービスの広告が増えているけど、市場に流通するにはまだ時間がかかるでしょうね。こちらでは社会的にソロ活が定着しているというには程遠いわね。でも1人暮らしの人口が増えているのは事実だし、数十年前と比べたら確実にソロ活を受け入れる雰囲気にはなっている。ヨーロッパ、スカンジナビアの国々では、今や全世帯の3分の1が1人暮らしよ。ということは自分の周りにも大抵は1人暮らしの人がいるという状況で、そうしたリアルな現状は社会が1人暮らしを認知する後押しになっていると思う。

日本ではソロ活向けのサービスが充実しているようだけど、UKでは1人での外食は未だにあたりまえではないの。ロンドンやグラスゴーの都会なら、1人でも食事がしやすいカフェやレストランが増えていて利用者も多くいるけど。あとは1人で行きやすい場所があっても、根本的に1人で外食をすること自体がまだ社会的に受け入れられていない。でもディナーとなると1人で楽しんでいる人はあまり見かけないし、ご褒美的なイベントとしての食事を1人で楽しむこともほとんどない。住んでいる場所によっても意識に差があるけど、都会のほうがおひとり様が多いのはUKも同じ。あとUKのホテルは部屋ごとに料金をチャージされるから、ソロ旅は割高よ。ソロ活向けのイベントや滞在パッケージも見かけるけど、日本のように充実したサービスはほとんどないわ。

――日本では1人旅のニーズが一定層あります。UKはどうですか?

ソロリビング:若者のソロ旅、特にバックパッカーは多くいて、行き先はアジアが1番ね。バックパッカーの醍醐味は自分で自由に計画を立てられることだけど、費用と時間は重要なポイントとなるからその点でもアジアを選ぶ若者は多いわね。UK女性のソロ旅の目的は、クオリティーの高い自分だけの時間を過ごすため、家族や友人のいない空間で日常から解放されるためなの。ソロ旅なら行動を制限されないし、自分の行きたい場所にいくらでも行ける。日本人はヨーロッパの人よりも、若い頃から自分に自信を持って楽しくソロ活をしているように見える。この違いは興味深いわね。

――UKのレストランでソロ活用のコミューナルテーブルや窓際の1人席を見かけるようになったのはいつ頃からですか?

ソロリビング:5年前かしら。理由は、社会的な流れとして食事が以前に比べて社交を目的にしたカジュアルなものへと変化してきたから。1人でも、誰かと一緒でもフラッとどこかに立ち寄り軽く食事をしたり、パブへお酒を飲みに行くよりもレストランで食事とお酒を一緒に楽しんだりする人達が増えてきた。でもその反面『ソロリビング』の読者達から、一人だからという理由でレストランで変な対応をされたり、嫌な気分にさせられたというコメントがある。高級で洗練された、もしくは家族向けのレストランが1人客でも気軽に利用できる雰囲気を作るようになるまでは1人では行かない方がいいと思う。人通りの多いエリアのカフェでランチをするなら一人でも気軽にできるけど、UKのレストランはソロ活向けのサービスはまだまだ未開発ね。

1人で楽しむ食事の良し悪しは、レストランでどんなサービスや接客を受けるかがすべて。良い店は、ソロ活者が居心地のいい席、外を眺めながら食事ができる窓際席に案内してくれる。もっと言うなら、自分の座りたい席を自由に選べたら最高ね。

――1人の食事が社会的に受け入れられるかは、性差も関係していますか?

ソロリビング:確かに夜1人でバーやレストランに行くのは男性の方が多いわ。女性も徐々に増えてきているけど。働いていたり、1人で休暇を楽しむ女性は、出張先や旅先で1人でバーやレストランへ行くわよね。これは1人の食事を自信を持ってできるかどうかの違いだと思うの。あと食に興味があるかも大切ね。男性も女性も1人で食事に行くなら、おいしい食事が楽しめて接客が良いところを選ぶべきよね。

――『ソロリビング』のインスタは料理の写真が多いですね。1人の料理にコツはありますか?

ソロリビング:外食やテイクアウトと書いてないものは、すべて私が作っているのよ! 1人分の料理のコツはたくさんあるから紹介しきれないけど、ひとつ挙げるなら1人分の料理で一番大切なことは健康的にしっかり食べて、家の食事を自分の楽しみにすること。料理は楽しいし、忙しい一日の後のリラックスタイムでもある。何かに没頭したり、物事をじっくり考える時間にもなる。それにキッチンで新しいことを学べるし、料理の腕も上がる。私はレストランで食べた味を再現したり、良い素材を使った料理を楽しんでる。自分のために時間をかけておいしい食事を用意すると、1人の暮らしがよりポジティブになる気がするの。『ソロリビング』には、Facebookに「ソロダイニング&テーブルフォーワン」という会員制グループがあって800人以上のメンバーが情報交換している。メンバーになって自分の食事やその日の出来事をシェアしていると、1人でご飯を食べているという気分にはならないわ。

――日本ではソロキャンプが人気ですが、UKのトレンドは何ですか?

ソロリビング:食事と旅行。コロナ禍ということもあって、最近はバイクパッキング(バックパッカーのバイクバージョン)が人気で今後はヨーロッパの他の国でも流行しそう。バイクパッキングは自分のペースで楽しめるからソロ活には最適ね。UKのソロ活者は、自分の好きなように長時間を過ごす家を何よりも大切なものと考えている。家はソロ活者の聖域、安らぎの場ね。そしてもう1つ、何よりも重要なトレンドは、多くのソロ活者が友人や家族と社会的なつながりを保つことの大切さに気付いたことね。

ソロリビング
シュテッタ・ダットが2017年にUK、グラスゴーで始めたソロ活オンラインマガジン&コミュニティ。シュテッタ自身も長年、独身生活をしている。一人暮らし、サステイナブルかつ自己成長のサポートを軸に、あらゆるジャンルの情報を発信。一人暮らしの喜びを伝えることで、一人暮らしの機会作り、一人暮らしで直面するであろう課題について話し合い、アドバイスをするなどソロ活コミュニティのハブ的存在となっている。Facebookの会員制グループ「Solo Dining and a Table For One」では800人以上のソロ活メンバーが自分の体験や情報のシェアをしている。

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NAO

スタイリスト、ライター、コーディネーター。スタイリスト・アシスタントを経て、独立。雑誌、広告、ミュージックビデオなどのスタイリング、コスチュームデザインを手掛ける。2006年にニューヨークに拠点を移し、翌年より米カルチャー誌FutureClawのコントリビューティング・エディター。2015年より企業のコーディネーター、リサーチャーとして東京とニューヨークを行き来しながら活動中。東京のクリエイティブ・エージェンシーS14所属。ライフワークは、縄文、江戸時代の研究。

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