“ソロ活”のススメ“ アメリカのセラピスト、ローラ・デサンティスが提唱する「コロナ禍、ソロ活は心を鍛えるプロセス」

コロナ禍の中、女性と若者の自殺者が特に増加している。原因は雇用状況、生活様式の変化が悩みとなり、心の健康を保つことが困難になっている可能性が高いとされている。

在宅時間が増え、他者とコミュニケーションを取る時間が大幅に減少したために孤独やストレスを感じている人は多い。これはアメリカでも大きな問題となっており、従業員向けのメンタルヘルスケア事業を充実させる企業は増加しており、さらに個人のセラピー需要も増加しているという。しかし日本で、専門家に自分の心の健康を診てもらうのは多くの人にとってまだハードルが高いのではないか。そして、相手が誰かに関わらず、自分の不安や悩みを話すのははばかられることも少なくない。

アメリカの重要な行事の一つ、冬の休暇期間(11月下旬から年末年始まで)に、心のフィットネス・ワークアウトを提供するオンライン・プラットフォーム Coaが「休暇中の一人暮らし」をテーマにオンラインQ&Aを開催した。同社は、個人とグループのセラピーを設けており、無料体験のグループセラピーも定期的に開いている

同Q&Aを担当したのはサンフランシスコを拠点とするアメリカ人セラピスト、ローラ・デサンティス。トラウマ・ケアを専門とし、コロナ禍を一人でも快適に過ごすための実践的なアドバイスをしている。自己理解を深める方法でもあるソロ活を、心の専門家はどう考えているのか? ソロ活と心の関係に迫る。

自分の内面に直面し心を癒すための学習・実践・習得が必要

――ソロをテーマに、グループセラピーを開催されましたが、パンデミックでどのような変化がありましたか?

ローラ・デサンティス(以下、ローラ):今まで1人暮らしを楽しんでいた私のクライアント達が、孤独を感じました。在宅時間の増加で他者との交流が減ったことで人との繋がりを求めたり、不安や憂鬱になる人が多くなったことが、オンラインでセラピーを始めたきっかけです。

――冬の休暇中は楽しいという共通認識がありますが、「気が重いなら、周りに合わせて楽しまなくていい」という言葉は印象的でした。

ローラ:コロナ禍に限らず、毎冬の休暇期間を憂鬱に感じたり、家族と過ごすことにプレッシャーを感じている人はいます。テレビ番組や広告で家族だんらんの様子や、にぎやかなパーティの光景を繰り返し目にしても、それを身近なものに感じる人は多くはありません。1人で過ごすことを余儀なくされた昨年の休暇期間は、1人を楽しむ好機だったかもしれませんね。

これに限らず、何をどう楽しむかを決めるのは自分です。その日が自分にとって特別か、そうではないのかを見極めるにも良い機会かもしれませんね。

――落ち込んでしまうきっかけや、その時の対処方法を参加者全員で共有することで、皆一緒に前向きになっていくような相乗効果を感じました。終始和やかな雰囲気で、楽しんで取り組んでいる参加者の姿も多かったです。

ローラ:「セラピーを受ける」と聞くと、つらい思いをするのではないか、深刻そうで怖い、と感じている人もいましたが、多少気軽に考えましょう。ユーモアを持って自分と向き合い、弱点を受け入れて笑えるようにするのは心の治療です。それができれば、物事を常に明るく考えられるようになります。

グループセラピーの場合、同じ悩みを抱えていても考え方や対処法は違うため、他人の話を聞くとたくさんの発見があります。そのすべてが、自分を受け入れ、笑うきっかけとなりますし、悩みを抱えているのは自分だけじゃないと知るだけでも安心できます。

――運動をして体を鍛えるように、心を鍛えたい場合、自分と対峙して、深く反省したり、苦しみに直面する訓練が必要でしょうか?

ローラ:体と心の鍛え方には類似点があります。しかし、心を鍛えることで不安や悩みは解消されますが、その経験は記憶として残ります。例えば、特定のトラウマを持つ人がそれを乗り越えたら、もうその事で苦しまなくなったとしても、完全に忘れてなかったことにはなりません。

セラピーは、精神を鍛えるには最適なトレーニングです。自分の内面に潜む負の部分に直面し、対峙すると心は癒されますが、これを行うには学習・実践・習得が必要です。

感情にうまく名前をつけて生活を豊かにする

――セラピーが必要かどうかを、自分で見極める方法はありますか?

ローラ:セラピーを受ける動機は、人それぞれです。自分をより深めたい、自分らしく健康的に生きるためなど、どれもその人にとってはセラピーが必要な理由です。モヤモヤしたりするなら、セラピーを考え始める時です。

セラピーの素晴らしいところは、「自分を見失ってしまい、自分らしく生きられていない」と話せることです。また自分が悪い方向に向かっていることに気付けないことが多々あるため、危機に陥り、悩み、実際に助けが必要になる極限まで我慢してしまうものです。不安、うつ、依存、睡眠や食事の悩みがある、好きなことなのに意欲が湧かないなどは明らかに生活に支障をきたしていて、助けが必要な証です。また、これらの症状が出る前に対処すれば、悪化防止・改善も可能です。優れたセラピストは、その人の悩みや不安を掘り下げ、違和感を取り除く支援をします。

――日本は、他人との協調性に重きを置くため自己主張が少なく、我慢は美徳という価値観もあります。自分をさらけ出すのが怖い、恥ずかしい場合、克服方法はありますか?

ローラ:これは国、人種を問わず、誰にとっても大変な挑戦です。多くの人は、自分の感情を話すのが苦手で、感情が不安定なのは自分が精神的に弱いからだと考えたり、今はたまたま調子が悪いだけと判断したりする。しかし、思考を変え、自分と向き合い、悩みを克服して自分らしく生きられるようになった人がたくさんいますから、変わりたいと願うならできるはずです。どのような国、文化に属していても、自分を取り巻く環境や社会に対して私達は無力ではありません。物心ついてから教えられてきたことや概念に疑問を持ち、立ち向かう事で精神的に安定できるようになり成熟します。

羞恥心や困惑に対峙し、「今は精神的に不安定で助けが必要なんだ」と自分の状況を受け入れることもセラピーの一部です。悩みを診断し、訓練を重ねることで心は鍛えられます。感情は言葉の集まりですから、自分の感情に名前を付けるだけでも長時間の対話が必要です。言葉がわからないと、自分の感情を表現するのは難しいですよね? ある脳研究で、否定的な感情に名前をつけると、不快感が和らぐという結果があります。私は、感情の名前の付け方を教えるのが大好きなのですが、うまくいけばこれをきっかけに生活も豊かになっていきます。

一方で、民族、人種、宗教、文化、性的な側面に対処するには感情に名前を付けるだけでは不十分です。その場合は、自分の価値観を共有できるセラピスト、もしくは少なくともその課題に精通し、問題点を知っている方を見つけましょう。

幸せを感じるために、自己肯定感を向上させる

――コロナ禍を含め、日々を前向きに過ごす方法はありますか?

ローラ:嫌なことがあったら、無理に前向きな気持ちになろうと頑張る必要はありません。自分の感情を受け入れずにいると、もっと憂鬱になります。悪い状況に陥っていたり、大きなストレスを感じている時は、自分の感情を素直に受け入れることが重要です。そのまま無理を続けると、涙もろい、キレやすい、無駄使い、食べ過ぎなどの症状が出ます。ここでもまた先ほどお話しした感情に名前をつける方法が役立ちます。これは特別なことではなく、必要なことです。否定的な感情にとらわれたくはありませんが、現実の状況が良くないのに自分を無理に奮い立たせても何も良いことはありません。ふと湧き上がってくる負の感情は抑えつけず受け入れる方が楽で、よりバランスの取れた生き方です。

感謝を習慣にするのは非常に良いことです。大変な状況でも自分の生活を見渡して、パートナーや猫がいること、今日ベッドから起き上がれたことに感謝する。うつの人にとって、ベッドから起き上がれるのはとても幸せなことです。自分には当たり前のことでも誰かにとっては特別なこと、何かしら感謝できることがあるはずです。さらに感謝の気持ちは私たちを能動的にさせ、意欲を高めます。日々を前向きに過ごすには、絶妙なバランスが必要です。

――自分と向き合えた時、その感覚は確信できるものでしょうか?

ローラ:それは特定の感覚ではなく、独自性があり、自分が人生に望むもの、理想の人格、どのような環境に身を置きたいかなどに大きく依存します。通常、自分と向き合えているかは自然と実感できます。

クライアントが「気分転換したい」と言った時、私はいつも「幸せを感じるのはどんな時? 毎朝ベッドから起き上がれること、それとも特定の職を得ること?」と尋ねます。その答えは通常、達成志向を満たすものではなく、自分を慈しみ、自己肯定感を向上させることです。自分を理解すると同時に自身をいたわるようにもなります。これらは測定できるとは言えませんが、自信が湧いてくる感覚を味わえると思います。何事も自分と向き合うことから始まり、終わります。

自分を見失わないために、自分と友達になり、どんな性格なのかを知るべき

――セラピストの観点から、望ましいソロ活方法はありますか?

ローラ:1人を体験し、孤独を楽しんでいる人たちを称賛します。ソロ活は自分を知り、向き合うための手段です。私達は自分を見失ってしまうこともありますが自分と友達になり、どんな性格なのか知るべきです。前からやってみたかったけれど、まだ挑戦していないことがあれば行動しましょう。心配事があると、ぼんやりしたり、気がかりなことが頭から離れなかったりして1人の時間を過ごすのが難しいかもしれません。しかし、そんな時でも自分に最適なソロ活を見つけて行動し、自分の価値観を知ることはとても大切です。

最近、ソーシャルメディアで“愛の言語”を見かけました。私達は言葉で愛を表現し、他人からの愛も言葉で実感できます。ある人は、誰かに親切にされたり、褒められた時に自分が本当に大切にされているとわかります。自分が人にされると嬉しいことが何か知っているなら、それを自分が自分にしてあげてください。そうすればソロ活をもっと楽しめるようになるかもしれません。

――ソーシャルメディアの利用頻度と心の健康は密接だという声があります。心のバランスを保ちながら使う方法はありますか?

ローラ:娯楽性が高いので中毒性があり、常用していると欠点も出てきます。「今日は最悪な日だった」、「今日のヘアスタイルは嫌」など自己否定的な投稿はおすすめしません。誰もが最高の自分を撮って投稿しているため、自分が見るのはすべて完璧な他人。そんな他人と、不完全な自分を比べて自尊心を大きく傷つけてしまう可能性があります。それを続けているとエコーチェンバー現象(自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくること)で自分のアカウントがどんどん悲観なもので埋め尽くされ、まるで世界中に絶望感が漂っているかのように感じてしまうと深刻です。

心も体も健康を保つには、何事もほどほどにするバランスが大切です。アプリに時間制限を設定し、夜はスマホを別の部屋に置いて寝ながら見られないようにする。ストレスを感じさせるアカウントのフォローはやめ、良い気分になれるものだけフォローするのも良い方法です。たまには、スマホを持たずに散歩に出かけて、新鮮な空気を吸い、1人の時間を楽しむのも良いでしょう。

ローラ・デサンティス
サンフランシスコ在住のライセンス・プロフェッショナル臨床カウンセラー(LPCC)、心理療法士。ペンシルバニア大学で、カウンセリング専門とカウンセリング&メンタルヘルスサービスの修士号を取得。ペンシルバニア州立大学で広報学と歴史学の学士号を取得。セラピストとしての目標は、内省、癒し、自己受容を通して、クライアントが自身と対峙し、人生を探求する場を提供すること。個人が持つ洞察力と自己への慈しみを重視した対話型のセラピーで、クライアントの否定的な思考パターンや行動を特定している。
https://lauradesantistherapy.com/

Picture Provided Laura DeSantis

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NAO

スタイリスト、ライター、コーディネーター。スタイリスト・アシスタントを経て、独立。雑誌、広告、ミュージックビデオなどのスタイリング、コスチュームデザインを手掛ける。2006年にニューヨークに拠点を移し、翌年より米カルチャー誌FutureClawのコントリビューティング・エディター。2015年より企業のコーディネーター、リサーチャーとして東京とニューヨークを行き来しながら活動中。東京のクリエイティブ・エージェンシーS14所属。ライフワークは、縄文、江戸時代の研究。

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