動く Archives - TOKION https://tokion.jp/verb/move/ Fri, 07 May 2021 15:49:47 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 動く Archives - TOKION https://tokion.jp/verb/move/ 32 32 写真表現を拡張するアーティスト・小林健太 その創作への想い https://tokion.jp/2021/04/13/kenta-cobayashi-genre-defying-photography/ Tue, 13 Apr 2021 06:00:21 +0000 https://tokion.jp/?p=26750 世界から注目を集めるアーティスト・小林健太のルーツを解き明かしながら、その作風や創作への想いを聞く。

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「写真」という枠に収まらない、抽象画のような作品で、独自の創作活動を行うアーティストの小林健太。「ダンヒル」の2020年春夏コレクションでのコラボや、ヴァージル・アブロー率いる「ルイ・ヴィトン」の2019年秋冬メンズコレクションのキャンペーンイメージを手掛けるなど、世界からも注目を集めている。今回は、小林にこれまでの経歴を振り返りつつ、どのようにして今の作風になったのか。また、広告を通して、新たに気付いた「クリエイターとして大事なこと」など、ざっくばらんに語ってもらった。

現代アートから写真表現へ

——小林さんは「写真」という表現に収まらない作品を制作しています。自身の肩書きは何だと思いますか?

小林健太(以下、小林):写真家って名乗ることも、アーティストって名乗ることも、どちらもありますね。カメラは使っているんですが、自分のやっていることを説明する時に、「アーティスト」って言うほうが理解してもらいやすくて。あと、今後はカメラを使わない作品も作っていきたいとも考えているので。

——もともとは現代アートを志していたそうですね。

小林:大学は、東京造形大学だったんですけど、入った時は写真をやろうとは思っていなくて。そこの美術学科・絵画専攻領域で、広域表現を専門に学んでいました。要は現代アートを勉強する学科で、教授も現代アートをやっている人でした。

アートを志したのは、美術予備校で出会った友達が現代アート好きだったのと、高2の夏くらいに渋家(シブハウス)のパーティに行って、そこでアートっておもしろそうだなと思ったのがきっかけです。それで、現代アートを学ぶためにはまずは絵画を学ばないといけないだろうって感じで、予備校ではデッサンも油絵もかなりやりましたね。

——実際に写真を始めたのはいつからですか?

小林:大学に入ってからは、ブログで絵や写真などの自分の作品をアップしていたんですが、それは渋家で出会った石田祐規さんがブログで写真をアップしているのを見て、それに憧れてやっていました。当時は写真家になりたいというよりは、いろいろメディアがある中の1つとして写真をやっていました。

本格的に意識したのは、2012年に大学の授業で大山(光平)さんと横田(大輔)さんに出会ってからですかね。2人のZINEのワークショップがあったんですが、その時はフィルムカメラで撮影した写真でZINEを作りました。それで作ったZINEを大山さんに「おもしろい」って言ってもらえて。そこで自分のブログのURLを伝えたら、2014年にグループ展に誘っていただいたんです。それがきっかけですね。年齢で言うと20から21歳くらいです。その時はフィルムカメラで撮影していました。

——撮影機材は何を使っているんですか?

小林:大学の入学祝いで買ってもらった「Nikon D800」と、仕事でもらった「ソニーα7III」、あとは「iPhone11」です。昔は、Macの「フォトブース」で遊んだりもしていました。「iPhone」や「フォトブース」って質感が独特でおもしろいんですよね。

抽象絵画のブラシストロークをデジタルで表現

——写真表現を始めた当初から今のような作風だったんですか?

小林:最初はスナップでした。2015年くらいに高さ1.6m、幅2.3mの「メガジン」を作ったんです。トーマス・ルフのインタビューとか読んで、でかさって重要なんだなと思って。それはモノクロプリントのA3のコピーをつなぎ合わせてZINEにしたんですが、その時から写真をアートとして捉えるようになりました。

それで、その「メガジン」を作り始めた頃からフォトショップで加工をゴリゴリにやってみたら、それがおもしろくて。ちょうど(ゲルハルト・)リヒターの「OverPainted Photograph」シリーズを見たりもしていた時で、小さい写真に絵の具を塗っているのを、これを全部フォトショップの中で完結できたらおもしろいだろうなって考えていて。そういう実験をしているうちに現在の作風になりました。

——抽象的な作品ですが、最終的なイメージは決めているんですか?

小林:決めていないです。抽象絵画のブラシストロークみたいなものを、写真を使ってできたらおもしろいなと思っているので、加工してみて、そのブラシストロークの形がおもしろくなったら、そのまま進めて、いまいちだったら消してやり直します。元となる写真も事前に加工のことは考えずにとりあえず撮影して、後からどんな風に加工するかを決めています。

僕の場合は「遊び」という要素が大切で、あらかじめ計算してこういったものを作ろうというよりは、手元にある写真を使って、どう反応したらおもしろいかを考えています。

——実際の加工はどのように行っているんですか?

小林:フォトショップの指先ツールでやっています。もともとは境界線をぼかしたりするツールで、その設定を変えてやっています。やっていることは、自分が絵画を学んでいたことと似ていますね。

人の動きによる美しさを探究

——小林さんの作品はグラフィックと写真との境界がなくなってきている。写真表現とはなんだと思いますか?

小林:認知論みたいな話になるんですが、写真ってメディアが誕生したことで、自分が見ている光景と近いものが可視化できて、それが他人と共有可能になった。人間の認知を視覚という領域に絞った時に、それを外にアウトプットできるのが写真表現だと思います。だからフォトショップのようなソフトウェアの中に、ビットマップやレイヤーなど、人間の視覚的認知行動が反映されているのかなと。そこを探求するのが、写真を探求することにつながると思っています。

——ゆくゆくは写真を使わない表現方法も考えているんですか?

小林:それはあります。視覚的認知には限界があるなと感じていて。僕は、「写真」って言葉が好きで。真実を写すと書いて「写真」。じゃあ「真実って何か」っていうと、「生々しく生きているリアリティ」だと思うんです。写真は、「視覚」という一元的なものしか表現できない。だから今後はもっと五感で感じられる作品になっていくかもしれません。

また書道を見た時に、どこに美しさを感じるかというと、言葉の意味よりも、筆の動き(ブラシストローク)の方が重要になる。それは人の動きが持つ美しさなんです。自分の作品でも、デジタルではあるけど、そういった美しさを表現したかったんです。

デジタルの画像って拡大していくと、ビットマップ(グリッド)になりますよね。自分の操作がそのグリッドを横断して、変化を与えていくことにおもしろさを感じています。

——デジタルならではの考え方ですね。

小林:デジタル表現への追求に関しては、自分のバックボーンもあると思います。生まれた時から家にMacがあって、お絵かきツールとかで遊んでいて、その影響はあります。自分の成長とともに、技術も進化していった。だからデジタルにこだわったら新しくておもしろい作品ができるのかなと思っています。

——小林さんの作品は初期の頃は写真ってわかりましたが、最近は全面ブラシストロークだけの作品もありますね。

小林:もともと抽象絵画は好きなので、そういった作品はずっとやりたかったんです。でも、最初からそれでやってしまうと、元が写真だと認識してもらえないと思ったので、徐々に抽象度を高めていきました。その作風が認知されてきたので、最近はやってみたかった表現が出せるようになってきています。

——色彩も独特です。

小林:彩度とかホワイトバランスを変えると、人の目で認知していなかった色が出てくるんです。色調補正の段階で、見えなかった色が見えてくるのが好きで、その出てきた色をベースに編集はしています。絵画をやるとどの色を使うかが先にきますが、写真をもとに色を作っていくと、それが偶然決まってくるので、おもしろいなと思いますね。

——コロナ禍でやりにくくなりましたが、最近はiPhoneを使って、その場で画像を加工するというライブパフォーマンスもやられていますね。

小林:ライブパフォーマンスをやったのも身体性が自分の作品では重要なんだと認識してもらいたかったからなんです。

自分の作品の影響について自覚的であるべき

——「ダンヒル」や「ルイ・ヴィトン」など世界的な広告の仕事も増えてきています。コマーシャルと自身の作品では意識の違いはありますか?

小林:広告は細かい制約はあるものの、作ることへの意識の違いはないですね。「ダンヒル」では実際に服に自分の作品をプリントしてもらったり、「ルイ・ヴィトン」では立体表現に挑戦したり、新しいことができたので、自分の表現の幅を広げるきっかけになりました。

それとは少し話は逸れるんですが、ファッションの仕事をやってみて、改めて「カッコ良さ」が持つ意味、そしてカッコいいものを作れる人は、その力をどういう風に生かしていくべきなのか、を考えるようになりました。

作品(服なども含む)には、「どういう社会を作りたいか」というクリエイターの考えが、無意識にしろ、意識的にしろ、反映されていると思うんです。だから、その作品が他者にどう影響をおよぼすかは、自覚的であるべきだと思います。そこを無自覚でやっていると、自分が意図しないメッセージがたくさん入り込んできてしまうし、そうした無自覚の影響が必ずしも、良いものであるとは限らない。その危うさは理解しておくべきだし、自分が何を提示したいのかを、具体的に持って創作するべきだなと考えています。それはクリエイターの責任だと思います。

——確かにただカッコよければいいというわけではなく、そこにどんな想いを込められているのかは重要なことだと思います。最後にこれからやりたいことは?

小林:「ダンヒル」で西洋とのコラボをやったので、今度は着物や障子、ふすまなど、和文化とのコラボはやってみたいです。めっちゃカッコいい和服とかを作ってみたい。

もはや西洋的な考えだけでは頭打ちになってきていて、これからは自分達のもともと持っていた文化を見つめ直す時期だと思います。一般的に古いと思われていることも多い昔の日本の文化に、何かしらの形で携わって、和文化を再考するきっかけになるようなものを作っていきたいです。

小林健太
アーティスト。1992年神奈川県生まれ。東京と湘南を拠点に活動。2019年には、マーク・ウェストン率いる「ダンヒル」と2020年春夏コレクションでコラボ。またヴァージル・アブロー率いる「ルイ・ヴィトン」、メンズ秋冬コレクション2019のキャンペーンイメージを手がける。2016年に写真集『Everything_1』が、2020年に『Everything_2』がNewfaveより発行された。
https://kentacobayashi.com

Photography Ko-ta Shouji

TOKION ARTの最新記事

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「カラー」がポップアップツアー「kolor is everywhere vol.3」を福岡、名古屋、仙台、金沢の4都市で開催 https://tokion.jp/2021/03/09/kolor-is-everywhere-vol3/ Tue, 09 Mar 2021 01:00:02 +0000 https://tokion.jp/?p=22675 「カラー」の3度目となるポップアップツアーが3月10日から開催される。今年は福岡、名古屋、仙台、金沢の4都市を回る。2021年春夏コレクションから厳選したアイテムに加え、限定アイテムも用意する。

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「カラー」は、国内の複数都市を巡回するポップアップツアーの第3弾「kolor is everywhere vol.3」を3月10日から開催する。ポップアップツアーは、2019年から毎年開催していて、今年は福岡をはじめ、名古屋、仙台、金沢の4都市を回る。

今回のポップアップツアーでは2021年春夏コレクションから厳選したアイテムに加え、多数の限定アイテムを用意。「カラー」からは、毎回好評なロゴグラフィックTシャツがソックスとセットでPVCバッグに入ったセット。「カラー ビーコン」は裾のパイピングやコードなどのディテールが特徴的なシャツや人気のコインポケット付きパンツなどを展開する。価格は、「カラー」のグラフィックTとソックスのセットが19,000円。「カラー ビーコン」のパイピングシャツが32,000円、プルオーバーが26,000円、ワイド ベルテッド トラウザーズが37,000円、クロップド トラウザーズが36,000円。

ポップアップツアーに来たお客へは、ノベルティーとして「カラー」のオリジナルマスクを数量限定で配布予定だという。

■kolor is everywhere vol.3
<福岡>
会期:2021年3月10~16日 
会場:岩田屋本店 本館1階 KIRAMEKI BOARD
住所:福岡県福岡市中央区天神2-5-35

<名古屋>
会期:2021年3月18日~4月4日 
会場:ラシック 1F ラシックパサージュ
住所:愛知県名古屋市中区栄3-6-1

<仙台>
会期:2021年3月20日~4月4日 
会場:リヴォルーション 3F 
住所:宮城県仙台市⻘葉区2-10-10

<金沢>
会期:2021年4月10~25日 
会場:OVAL 2F
住所:石川県金沢市竪町86-1

TOKION FASHIONの最新記事

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写真家の塩田正幸が個展「Retinagazer」を開催 初期作品から最新作まで約110 点を展示 https://tokion.jp/2020/09/06/masayuki-shiota-retinagazer/ Sun, 06 Sep 2020 03:18:48 +0000 https://tokion.jp/?p=4520 タカ・イシイギャラリー フォトグラファー/フィルムでは初の個展で、24 年間にわたって制作した膨大な作品群から数々の実験的な作品を展示。

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写真家の塩田正幸がタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで、9月26 日まで、個展「Retinagazer」を開催している。タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムでは初の個展となり、24 年にわたって制作した膨大な作品群の初期作品から最新作まで約110 点を展示している。

塩田は1990 年代後半から写真家として活動を開始し、坂本慎太郎やジム・オルークら、音楽の分野を中心に活躍してきた。作家活動と並行し、2009年4月から 2010 年 3 月まで東京・新井薬師で行われたマンスリーグループショー「35MINUTESMEN」 を主催した。また自主制作の出版レーべル「FLASH BOOKS」から作品集を発表し、2019 年に創刊した雑誌「Moder-n」では写真家のヨーガン・テラーに密着したドキュメンタリー作品「YAKITORI TELLER」を発表した。

同展では一冊のアルバムに 4 年間に撮影したスナップ写真を収め、イメージの関係性を考察した作品「DOGOOHAIR」(2004年)と同シリーズの代表的なイメージを大型のモノクロコピーに引き伸ばした作品などを中心に、2000 年「NPEAKER」で発表した友人や音楽、猫などのスナップ写真や、3部作で構成される「ケの日ヒョウハク」シリーズから、写真自体を音として捉えた抽象的な作品「NALI」など数々の実験的な作品を展示している。また、近年制作したポートレートなど、時系列に沿った多様な作品も展開する。

■塩田正幸 「Retinagazer」
会期:8月28日~9月26日
会場:タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
住所:東京都港区六本木 5-17-1 AXIS ビル 2F
時間:12:00~18:00 ※アポイントメント制
休日:日曜、月曜、祝日

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現代美術家の五木田智央がタカ・イシイギャラリーで3年ぶりの個展「MOO」を開催 国内初のカラーペインティング作品を展示  https://tokion.jp/2020/09/05/tomoo-gokita-moo/ Sat, 05 Sep 2020 09:00:43 +0000 https://tokion.jp/?p=4510 タカ・イシイギャラリーでは3年ぶり5度目の個展で、キャンバスにカラーのアクリル絵の具とパステルで制作した最新のペインティング作品を展示。

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五木田智央がタカ・イシイギャラリーで、3年ぶりとなる個展「MOO」を9月26日まで開催している。同ギャラリーでは3年ぶり5度目の個展で、国内では初めてカラーのペインティング作品を発表した。

五木田は2000年に『ランジェリー・レスリング』を発表して以降、木炭やインクで描いたドローイングや白黒のグワッシュで描いたペインティング作品などで多くの鑑賞者を魅了してきた。海外でも高い評価を獲得しながら、自らの技術やスタイルにとどまることなく、常に新たな領域へと挑戦し続けてきた。これまで、モノクロームの作品に加え、青色の単色で描いた作品やステンシルを用いた作品、コラージュや立体など、豊かな視覚言語によって多様な作品を生み出してきた。今年からはカラーの作品を本格的に制作し、3 月にイタリアで開催した個展は、カラー作品のみで構成された初の展覧会となった。

同展ではキャンバスにカラーのアクリル絵の具とパステルで制作した最新のペインティング作品を展示。これまで、海外の古い雑誌や印刷物、写真などからインスピレーションを得て作品を制作してきた五木田にとって、自らの記憶にあるイメージやこれまで描いてきた経験や偶発的に生まれた形などを着想源として、柔らかな色調と独自のカラーパレットを用いて多様な画題を描いた。自由かつ軽やかな表現と豊かなテクスチャーを備え、さらなる進化をうかがい知ることができる。

また、制作プロセスやマテリアルの変化が作品の根底に存在する揺るぎない五木田の絵画の本質を際立たせている。同展の開催に合わせ、展覧会カタログの刊行を予定している。

■五木田智央「MOO」
会期:8月28日~9月26日
会場:タカ・イシイギャラリー
住所:東京都港区六本木6-5-24
時間:12:00~18:00 ※アポイントメント制
休日:日曜、月曜、祝日
入場料:無料

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A24による最新作『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』監督が語る 激変する大都市に送るメッセージ https://tokion.jp/2020/09/03/a24-sends-a-message-to-big-cities/ Thu, 03 Sep 2020 05:00:31 +0000 https://tokion.jp/?p=3927 大都市が抱える都市計画の問題や深淵にくすぶる人々の感情。サンフランシスコの街や歴史を通じて変化と不変の間を考える。

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アカデミー賞作品賞受賞作『ムーンライト』を筆頭に次々と話題作を発表している制作スタジオのA24と、ブラッド・ピットによる制作会社のプランBが『ムーンライト』以来となるタッグを組んだ最新作『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』が10月9日に公開される。

監督のジョー・タルボットは、幼なじみで同作の主人公を演じるジミー・フェイルズとともに体験してきた、サンフランシスコを舞台にした物語を初の長編作品として仕上げた。同作はサンダンス映画祭で監督賞と審査員特別賞をダブル受賞し、バラク・オバマ前アメリカ大統領のベスト・ムービーの1つにも選ばれている。

物語はサンフランシスコで生まれ育った2人の青年が、故郷に思いを馳せながら、激変していく街や人々、文化に対する葛藤を綴ったもので、予告編のラストには「多くの財産をもたなくとも、心の中に大切な居場所とかけがえのない友がいる。それだけで人生はそう悪くないはずだ」という監督のメッセージで締めくくられている。

生まれ育った場所が面影も残らないほど変化することで、大切な記憶が上書きされ、自分のアイデンティティーまで否定されてしまうような感覚は、一見パーソナルな問題と思われがちだが、今世界中の大都市が抱える問題でもある。東京も変化を続ける都市の代表。新型コロナウイルスによって都市計画は大きく狂い、不透明な未来への不安も未だに払拭できないでいる。同作に込めたメッセージはこのタイミングで未来の大都市のあり方や考え方にどう影響を与えるのか? ジョー・タルボット監督と原作・主演を務めたジミー・フェイルズの2人の言葉から考える。

——『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』は実際の2人の歴史をどのくらい反映しているのでしょうか?

ジミー・フェイルズ(以下、ジミー):それについてはあえて答えないようにしているんだ。観客の想像力や解釈に任せているよ。

——個人的な思いを込めるシーンと客観視する見方のバランスはどう考えましたか?

ジミー:バランスは特に意識しなかった。ジェントリフィケーションはどこでも起こっていることだから、多くの人が共感できるはず。同様に、昔暮らしていた家を失うという僕のストーリーも経験がある人には共感してもらえると思う。生まれ育った街にノスタルジーを感じることもね。

——そんな経験や街をどう見せたかったのでしょうか? 多様性を持たせる考えに至ったプロセスも教えてください。

ジミー:僕達が知っているサンフランシスコを、できる限りすべて見せたかったんだ。サンフランシスコが舞台の映画でも、サンフランシスコ出身者が手掛けていることは少なく、キャストもそうじゃない人々の場合が多い。だからもっとリアルなサンフランシスコを描写したかった。実際に暮らしていて、街を大きく感じることもあれば、すごく小さく感じることもある。すべてのニュアンスを映画に反映するように努めたんだ。

——詩的でシュールな映像のビジュアルやトーンはどう決めたのでしょうか? 最初からコンセプトにありましたか?

ジミー:夢の中にいるかのように見せたくて、あえて現実と夢の境界をあいまいにした。ノスタルジアは、ある意味、夢のようでもあるからね。みんな過去を夢見ているんだよ。ノスタルジアは、この物語を進める上で最も大切な要素。そういう背景もあって、シュールな映像になったんだと思う。

——バス停のベンチに座るジミーと裸の老人の対比やケーブルカーから酔っぱらいが「This guy fucks!」と叫ぶシーンはシュールかつコメディの要素もあって、印象的でした。

ジミー:あのシーンを入れた意図はいくつかある。裸の男が隣に座ってもジミーが全く驚かないのは、サンフランシスコには本当にいろんな人がいて、裸の人なんて慣れているからだ。だから全く気にする素ぶりを見せないのさ。

そして、ケーブルカーだけど、最近はIT企業のスタッフの間でケーブルカーを貸し切ってパーティーを開くのが流行っているんだ。あのシーンにはいろんな皮肉がこもっていて、ケーブルカーはサンフランシスコを象徴する乗り物だけど、線路ではなくタイヤで道路を走っている。さらにそれを利用して新しい住民であるIT企業のスタッフがパーティーを開いている。そういう現状を皮肉を込めて表現したかった。

——未来を見据えて、歴史を振り返ることは街にどのような役割を果たすと思いますか?

ジミー:過去に感謝して、思い出を守るためにも、歴史を振り返ることは大切。過去に浸りすぎるのはいけないけどね。でも、同時に未来に希望を抱いて、街のために闘うべきだ。信じていることや愛することのために闘うことは大きな意義を持つ。

ジョー・タルボット(以下、ジョー):ジミーの言う通りだよ。昔を懐かしむことは、夢を見ている感覚に似ている。当時を振り返っているけど、実際は作り話も混ざっているから、“昔はこうだったであろう”と妄想しているのさ。思い出に浸るのは美しいことだけど、それを事実と思い込んでしまうのは危険でもある。

今、僕たちが暮らしている街では、虚言ばかりの未来が語られている。IT業界が語る未来もウソばかり。平等で愛や活気にあふれた素晴らしい世界になるというウソを売っているんだ。もちろんその一部は本当だろうけど、ITによって恐ろしい世界に導かれつつあるのも事実。サンフランシスコはアメリカのIT産業の震源地で、猛スピードで未来に突進しつつも、過去にしがみついている。それを肌で感じながら生活しているのは、すごく変な感じがするよ。

——監督にとって、人生で本当に必要なものとは?

ジョー:むずかしい質問だね。高校を中退しているし、哲学者でもないから答えられるかわからないけど……恋をすることかな。人に恋をすること、パートナーに恋をすること、芸術に恋をすること。どれだけ落ち込んでいた時も、ひねくれていた時も、僕は恋があったから乗り越えられてきた。人生に悩んで凹んでいる時、力を振り絞って恋をするのはなかなかむずかしいけど、ロマンチックな恋でも、プラトニックな恋でも、クリエイティブな恋でも、運よくその感情を抱くことができれば、それ以上の喜びはない。恐ろしくも美しくも、とても価値のあるものを得られるはずだよ。

——2人は東京に来たことがありますか?

ジミー:行ったことはないけど、ものすごく興味があるよ。最高にクールな場所という印象だ。アートやカルチャー、ライフスタイルなどのすべてに憧れている。活気にあふれていて、豊かな文化を持っているイメージだね。

ジョー:東京からは黒澤明監督や小津安二郎監督が思い浮かぶ。でも、まだ知らないことが多すぎるね。最近、『Gate of Flesh(肉体の門)』という映画を観たんだ。1960年代の映画で、娼婦たちがギャングと組んで男たちを襲うんだ。おもしろかったよ(笑)。映画の中の日本しかまだ知らないから、いつか実際に行って自分で体験したいね。

——今後の大都市に求められるものは何だと思いますか?

ジョー:BLM運動で最も感銘を受けたのは、若者たちがストリートに出て行っているということだ。上の世代は、「若者は携帯ばかり見ていて、コミュニケーションを取らないし、行動に移していない」とよく言うが、今回の運動を通して、それは違うということが証明できた。運動を主導し、知らないことを学び、知識が間違っている場合は改め、若者たちがどんどん積極的に動いている。

大都市はそういう動きを直に感じられる場所だと思っている。サンフランシスコの歴史を振り返ってみてもそうだが、反戦運動やゲイ解放運動、移民の権利擁護運動などが活発に行われてきた。文化や政治や立ち上がることへの関心の高さを表しているんだ。大都市に必要なのはそういうことじゃないかな。

——次回作の構想はありますか?  2人のタッグをまた見られるのでしょうか?

ジョー:常に2人で話し合っているから、アイデアは山ほどある。

ジミー:1本に絞るのが難しいほどだよ。ジョーからは次々とアイデアが生まれてくるんだ。

ジョー:ロックダウン中も2人で長編の構想を練っていた。サンフランシスコが舞台のサマームービーになる予定だ。

ジョー・タルボット
映画撮影のために高校を退学し、幼なじみであるジミー・フェイルズと映画製作の準備を始める。サンダンス・インスティテュートの研修生として撮った短編『American Paradise』では監督・脚本を担当し、サンダンス映画祭とサウス・バイ・サウスウエスト映画祭で高い評価を受けた。ジミーを主役にした本作が長編デビュー作となる。

ジミー・フェイルズ
サンフランシスコで生まれ。監督のジョー・タルボットと幼なじみ。2人で初めて作った短編映画『American Paradise』が、2017年サンダンス映画祭でプレミア上映されたことが本作の製作に繋がった。本作はジミーの実体験をもとに製作した。

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