日本が世界に誇る“特撮”の歴史を振り返る 「特撮のDNA―ウルトラマン Genealogy」レポート

誕生から50年以上が経ち、今や昭和・平成・令和と世代を超えて愛されている国民的ヒーロー「ウルトラマン」。このウルトラシリーズは、海外で共同制作されるなど、日本を飛び越え世界でも知られる存在だ。
未だ進化と拡大を続けるヒーローの系譜をたどる展覧会「特撮のDNA―ウルトラマン Genealogy」が、東京ドームシティ ギャラリーアーモで10月18日まで開催されている。同展は、日本独自の“特撮文化”に着目し、その技術と継承者達にスポットを当てている「特撮のDNA」シリーズの最新展覧会で、今回はウルトラマンシリーズの主役であるヒーローサイドにフォーカス。会場には、歴代ウルトラマンのマスクをはじめ、撮影で実際に使われた小道具や衣装、メカ、さらにはデザイン原画などが展示されている。そしてウルトラマンの生みの親である円谷プロが制作を手掛けた別の特撮作品で、ウルトラマンに関わりのある作品の資料も置かれている。

初代ウルトラマンのDNAを受け継ぐ歴代ウルトラヒーロー

歴代ウルトラヒーローが誕生順に並べられたパネルで展覧会はスタートする。同展の開催を記念して来場したゲストのサインが入っているものもあり、思わず立ち止まってしまう。そしてパネルの先には、2021年に公開を控えている映画『シン・ウルトラマン』のCGのひな型が。デザインは、同映画の企画・脚本を手掛ける庵野秀明が、初代ウルトラマンをデザインした成田亨の作品を忠実に再現したいという思いからで、カラータイマーがないのが特徴だ。
パネルの先の会場中央には、昭和・平成・令和の3時代をまたぐ歴代ウルトラヒーロー達が立ち並び、さらに各作品ごとにショーケースで展示されていて、自由な順番で見ることができる。好きなように観覧できるようにしたのは、新型コロナウイルスの影響もあり、密となる混雑を避けるためとのことだ。

ここからは『TOKION』が注目した展示物を紹介していく。円谷プロの最初期作であり日本の特撮作品の幕開けを飾ったTV番組『ウルトラQ』からは、撮影時に使用されたミニチュアや小道具を展示。当時の撮影模様を感じることができる貴重な資料だ。

続いて元祖ウルトラヒーローが登場する『ウルトラマン』に、熱烈的なファンも多い『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』の昭和代表作。『ウルトラマン』の主人公である科学特捜隊員、ハヤタ隊員の撮影時の衣装や特捜隊員のヘルメット、さらには保存が難しく現存しているものが少ないウルトラマンの衣装ブーツなど、ファンにはたまらない資料に目を奪われる。そして、撮影が進むにつれて変化をしていったウルトラマンのマスクやカラータイマー(ウルトラヒーローは、地球上では3分間しか活動できない)の中身などが展示されているのもおもしろい。『ウルトラセブン』では、ウルトラ警備隊紅一点、アンヌ隊員の隊員服やウルトラガン、そしてカプセル怪獣、ウインダムの頭部などを展示。『帰ってきたウルトラマン』は、ウルトラブレスレットや飛行シーン撮影用のミニチュアなどの小道具が並んでいる。

ウルトラシリーズの人気を不動のものにした『ウルトラマンA(エース)』『ウルトラマンタロウ』『ウルトラマンレオ』も見てみよう。こちらもマスクや飛行シーン用の小道具などがショーケースで展示されているのだが、壁には井口昭彦によるデザイン原画も飾られている。原画を通してヒーローの誕生を知ることができるのはうれしい見どころではないだろうか。細かい点では、『ウルトラマンA』と『ウルトラマンタロウ』に登場するウルトラの父のマスク。実はそれぞれの作品でマスクのデザインが微妙に違うのだ。この違いを感じることができるのも価値がある。

放送から40周年を迎えた『ウルトラマン80(エイティ)』では、1話のために制作された操演用プロップが目を引く。これは、第47話「魔のグローブ 落し物にご用心!!」で怪獣グロブスクを倒すために披露された必殺技、ダイナマイトボールを撮影するために制作されたもので、全放送の中で一度しか使われていないというレアなプロップだ。

海外で共同制作された作品から平成ウルトラシリーズ

『ウルトラマンG(グレート)』はオーストラリア、『ウルトラマンパワード』はアメリカと、海外の制作会社と円谷プロがタッグを組んで制作したウルトラ作品の資料も本展では展示されている。この2作品の資料が公開されているのはなかなか目にできないので貴重なブースだろう。初期作とは隊員が着る衣装のデザインや素材に変化が出てきていてその違いが楽しめる。

現在の放送シリーズへと流れが続く平成ウルトラシリーズの展示。平成初期作『ウルトラマンティガ』から始まり、『ウルトラマンダイナ』『ウルトラマンガイア』『ウルトラマンマックス』、そしてTVではメインで放送されていないが人気を集めるウルトラヒーロー『ウルトラマンゼロ』の撮影で使われたメカやミニチュア、小道具などが展示され充実している。

ウルトラシリーズにゆかりのある円谷プロ作品も

会場には、『ウルトラマンゼロ』シリーズで共闘しているキャラクターのデザインベースとなった、円谷プロがかつて手掛けていたヒーローも展示されている。それが『ミラーマン』に『ジャンボーグA(エース)』『ファイヤーマン』だ。各ヒーローのマスクや小道具、メカが並べられており、当時を知る人はもちろん、『ウルトラマンゼロ』で知った子ども達も楽しめるのではないだろうか。

特撮から広がる世界を存分に楽しめる

他にも、画家の梶田達二が少年誌やレコードジャケットのために描いたウルトラシリーズ関連のイラスト作品や、円谷プロにまつわる映画やTVの宣伝ポスター、さらに本展では唯一の怪獣作『快獣ブースカ』の資料なども展示されており、あっという間に時間がすぎてしまうほどの膨大なアーカイヴ資料を味わえる。円谷プロの貢献により、独自の進化をたどった日本の特撮文化。その代表作とも呼べるウルトラシリーズの貴重な資料を通じて、その源流の魅力を感じてほしい。そして新型コロナウイルスによるステイホームが続く今こそ、ウルトラシリーズをはじめとする特撮作品を観て、未来を想像してみるのもおもしろいのでは。

©円谷プロ
©ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京
©特撮のDNA製作委員会

■「特撮のDNA―ウルトラマン Genealogy」
会期:~10月18日
会場: 東京ドームシティ ギャラリーアーモ
住所:東京都文京区後楽1-3-61
時間:12:00~20:00(平日)10:00~19:00(土曜・日曜・祝日)
入場料:一般 2000円、小人 1000円、一般ペア 3800円、グッズ付きチケット 3400円
https://www.tokusatsu-dna.com/

Photography Satoshi Ohmura

author:

相沢修一

宮城県生まれ。ストリートカルチャー誌をメインに書籍やカタログなどの編集を経て、2018年にINFAS パブリケーションズに入社。入社後は『STUDIO VOICE』編集部を経て『TOKION』編集部に所属。

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