YouTuberで女優のめがねに聞く、SNS時代の表現者として立ち続ける方法

芸能人やアスリート、さらに飲食店やアパレルブランドなど、新型コロナウイルスによる自粛要請に伴ってチャンネルの開設が相次いでいるYouTube。気になる点は、日本のHIKAKINはじめしゃちょーが台頭してきた「YouTuberの黄金時代」とは異なるニーズや活用法があること。その変わりゆくYouTubeの世界で、YouTuberの枠を超え女優として活躍する「みんなの心が丸見え! めがねです!」のキャッチフレーズで人気を集めるYouTubeチャンネル「めがねっとわーく。」のめがね。女子高生の頃に始めたYouTubeの配信では、チャレンジ動画からメイク動画、さらにコント動画まで、さまざまなことにトライしている。動画では、ユニークかつ個性全開のキャラクターで観る者をとりこにし、今では登録者約35万人。彼女はなぜ今、女優としての道を歩み始めたのか。YouTuberと女優の2つの顔で活動する彼女に聞いた、SNS時代の表現者であり続ける方法。

コロナ禍で感じたYouTubeでの人とのつながり

――まずYouTubeの配信を始めたきっかけを教えてください。

めがね:16歳の頃です。当時、古典芸能文化科という古典芸能を学ぶ高校に通っていました。そこで同級生の友人が「一緒にYouTubeをやろうよ。あなたとコンビだったら絶対におもしろい!」って誘ってくれたのがきっかけです。当時、HIKAKINさんやはじめしゃちょーさんが有名になり始めたばかりで、YouTubeがまだブルー・オーシャンの頃でした。当時は1人でやる方が多かったので、女子高生のコンビってだけでも珍しかったのに、コントをしたり、メイク動画を作ったりと、女子高生の放課後を切り取ったような動画を配信してました。

――当初はコンビだったんですね。

めがね:そうです! 私達がYouTubeを配信し始めた頃の夢は、私は舞台女優、相方はファッションデザイナーでした。その夢を叶えるために「私達のことをもっと知ってもらたい!」と考えて配信していました。そして高校を卒業するタイミングで、お互いにしっかり話した上で、それぞれの目標を実現させるために解散することになったんですよね。

――現在は約35万人の登録者数がいるめがねさんのYouTubeチャンネルですが、再生回数が一気に伸びたターニングポイントになった動画はありますか?

めがね:YouTubeを始めて3ヵ月くらいの時にコンビで撮ったコント動画だったと思います。すごくバズって一気に20万回再生ぐらいまでいったんですよね。そこから100万回、200万回って、どんどん再生回数が増えていって、登録者数も20万人ぐらい増えました。コンビを解散した後の例でいえば、脚やせ動画とダイエット動画。これもすごくバズって10万人ぐらい一気に増えて、今の登録者数に達しました。

――新型コロナウイルスによる自粛要請期間にYouTubeを始めた有名人や企業がたくさんいますが、めがねさんはYouTubeに対する考えに変化はありましたか?

めがね:意識はすごく変わりましたね。自粛期間中に女優業とYouTuberの両立に難しさを感じていたんです。YouTubeがちょっと疎ましくさえ思ってしまうというか。動画制作ってやっぱり編集に時間がかかるので、女優業の合間に編集作業するのは大変と思っていた時期ですね。でもこの期間で、自分を見直すことができたんです。きっかけは、今まで仕事があったから紛らわされていた孤独感や寂しいという感情が、自粛中にあふれてきたんですが、YouTubeの存在にすごく助けられたんですよね。例えば、ご飯を作っているだけの動画でもいいし、メイクをしているだけの動画でも、Instagramでのライヴ配信でもいい。誰かと通じ合うことができるSNSというツールが常にあることに感謝できました。今思い返せば、自粛期間がなければ、YouTubeに関しては「もうわからない!」って放置してたかもしれません。

女優は誰かになりきるもの。YouTuberは自分の素を出すもの

――女優を目指すようになったきっかけについても教えてください。

めがね:女優になりたいと思ったのは14歳の頃。わかぎゑふさんが座長を務める劇団「リリパットアーミーII」の舞台に、母親が連れていってくれたことがきっかけなんですよね。舞台では、はちゃめちゃな芝居をしていたり、公演後にはなぜかちくわを投げたりしていて(笑)。それを観ていたら鳥肌が立っちゃったんです。「私も鳥肌を立たせる側になりたい」「私もちくわを投げる側に立ちたい」って。それからです。舞台女優に憧れるようになったのは。

――これまでにどんな作品に出演されてるのですか?

めがね:今は映画やドラマにも出させていただいていますが、女優としては舞台が中心です。過去には劇団「悪い芝居」の『メロメロたち』という舞台で主演をさせていただいたり、自粛期間中は、フルリモート劇団、「劇団ノーミーツ」の舞台に“DJめがね”役をいただいたりしました。劇団ノーミーツの方も私を知ってくださっていたようで、ほぼいつものめがねのままやらせていただけて、あれほど自分の素に近い役は今までなかったです。

――YouTuberと女優という立場は、自分の中で違いはありますか?

めがね:女優というお仕事は、誰かが描いた役柄になりきるもの。YouTubeは、すべて自分で作っているもの。なので、まったく違いますね。YouTubeでは素の自分であり、めがねでありと、等身大の素の自分。変に嘘がないというか。責任も全部、自分にあります。

――そもそも、“めがね”の由来は?

めがね:元相方の名前が3文字だったんです。だから私も3文字にそろえたんですよね(笑)。由来は、伊達メガネをかけていたので、“めがね”。実は私、目が良くて。でもメガネをかけることで、YouTuberとしての“めがね”が完成するというか。メガネでスイッチを入れているような感じです。

好きなことを表現するなら自分で自分を評価することが大切

――YouTube以外にもSNSを活用されていますよね。どのように使い分けていますか?

めがね:Instagram(@iam.megane)とTwitter(@MEGANE_WM)を使っているんですけど、メインは、YouTube。「もっと私を知りたい人は、他のSNSをチェックしてね!」といった感覚で、InstagramとTwitterを使っています。例えば、YouTubeの服装をInstagramでタグを付けて投稿したり、もっとパーソナルな部分にフォーカスしたりしています。ただ今の時代は、すべてのSNSに力を入れないといけないと思います。なのでツイートやリポストしなきゃとか、フィード投稿もしておかないととか、SNSの投稿はすごく意識してます。高校時代はそこまで意識してなかったんですけどね。

――先ほどYouTubeの配信は、すべて自分で作っていると話していましたが、自己表現で大切にしていることはありますか?

めがね:正直、わからなくなっているところもあります。以前は、すごく明確だったんですけど。“めがね”はティーンエジャーの憧れ的存在なんです。なので動画では、そのイメージに合わせて作ってきたので、メイクやダイエットといった投稿もあれば、放課後や学校の教室を使った撮影もよくしていました。正直、10代の勢いで作っていたので、動画が作りやすかったんですよね。でも今は、本当にわからなくなってきちゃって。自分で何がしたいかとか、どういう風になりたいかっていうのは見えているんです。例えばもっとお芝居がしたいし、あんな女優になりたいとか、こんなYouTuberになれたらカッコいいなって。でも、その理想の姿に向かってどうやったらなれるのか、わからなくなってしまうんですよね。スランプなのかな……。まぁこれは成長の痛みとして、ポジティブに考えています。

――では、YouTubeの制作で気を付けていることはありますか?

めがね:SNS全般の難しいところって、結局何も真実が伝わらないってことなんですよね。私がいくら嘘がないように、相手に伝わるように作っていても、まったく違う角度からコメントがあったりする。「どうして伝わらないんだろう」ってジレンマを感じることがあります。

――そうですよね。SNSを発端に事件が起きたりもしていますよね。

めがね:だからこそ、私は他人のSNSの評価をせずに、そして真に受けないようにしています。自分自身で評価することが重要だと思うんです。いいねの数やコメントの数だったり、心ない人の言葉だったりで絶対に傷ついてはいけない。他人の評価を基準にしてしまうと、つらくてつらくてたまらなくなってしまいます。目の前で言えないこともSNSでは簡単に言えてしまう。そんな無責任な誹謗中傷に対して向き合うよりも、「私はこう思って表現している」っていうのをしっかり持つべき。ようやく最近、気が付きました。

――落ち込んだこともありますか?

めがね:すごくありますよ。今も偉そうに言ってますが、自分自身に言い聞かせているだけなんです。何を言われても「間違ってないよ!」って。

――これからYouTubeを始めたい人には、どんなアドバイスをしますか?

めがね:最近は、YouTubeを活用してブランドや商品をPRするチャンネルが増えていますよね。私が始めた頃と比べてみると、当時のYouTubeは自分がおもしろいと思うことややってみたいことを表現する人が多かったんですけど、今はマーケティングの意味も含まれている。知ってもらう1つのきっかけのツールになっているんだと思います。あえてYouTuberを目指す人にアドバイスするのであれば、「嘘をつかない!」ということですかね。YouTuberに限らず、好きなことを表現する時に嘘をつくと、どんどんしんどくなっていきますから。

――最後に女優として、そしてYouTuberとしての今後の目標を教えてください。

めがね:女優としては、名指しで役をもらえるようになりたいです。それが自信につながると思うんです。YouTuberとしては、先ほど話したスランプを脱出して、登録者数100万人を目指して頑張ります!

めがね
1999年生まれ、大阪府出身。YouTuber/女優/タレント。2015年より、“めがね”名義でYouTuberとして活動をスタート。女子高生だった当時の環境を活かしたコント動画やメイク動画をはじめとした個性全開の動画とオシャレなファッションセンスで話題を集め、同世代のアイコン的存在に。現在は、女優/タレント/モデルとしても映画やドラマ、舞台に出演するなど、活動の幅を広げている。近況は、11月13日から劇場公開される「小説を音楽にする」ユニット、YOASOBI原作小説の初の映像化映画『たぶん』に出演。
YouTube:めがねっとわーく。

Photography Takaki Iwata

author:

大久保貴央

1987年生まれ、北海道知床出身。フリーランスの雑誌編集者、クリエイティブディレクター、プランナー。ストリートファッション誌の編集者として勤務後フリーランスに。現在は、ファッション、アート、カルチャー、スポーツの領域を中心にフリーの編集者として活動しながら、5G時代におけるスマホ向けコンテンツのクリエイティブディレクター兼プランナーとしても活動する。 2020年は、360°カメラを駆使したオリジナルコンテンツのプロデュース兼ディレクションをスタート。 Instagram:@takao_okb

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