連載「Z世代的価値観」とは何か? Vol.1 4つのトピックスから見る新たな事象

現在の米国では、Z世代が人口の約4分の1を占めている。そして生まれた時からデジタルの世界がリアルの世界と同じくらい当たり前のように存在していた彼らにとって、インターネット上で声を上げることはごく自然なことである。そのため、社会的に、そして経済的にも非常に大きな影響力を持つ新たな世代として、近年頻繁にメディアに取り上げられている。

「Z世代」とは、一般的には1990年代後半から2000年代にかけて生まれた世代のことを指す。日本でのZ世代の報じられ方としては、「Z世代のアイコン的存在、世界的アーティストのビリー・アイリッシュ」や「若者の環境保全アクティビズムを先導する活動家のグレタ・トゥーンベリ」など、「政治や社会問題に対して声を上げることを恐れない10代達」というイメージが強い。一方で、ポジティブな取り上げられかただけではなく、スマホ依存症によるメンタルヘルスの問題やTikTokでの破天荒な行動など、「大人達にはちょっと理解しがたい存在」という視点で取り上げられることも頻繁にある。

しかし実際には、Z世代というのは生まれた年月で区切られるものではなく、「価値観」で形成される「選択可能」なものであるという提案をしたい。今までは階級や年齢層、住んでいる地域によって得られる情報や経験できる世界が非常に限られていた。しかし進化し続けるテクノロジーによって、誰もが自由に情報にアクセスすることが可能になり、一部の人のみが社会を形成する議論に参加できていた構造が崩壊した。かつてはマスメディアや地域社会によって「分断」されていた「世代」は、スマホやインターネットといった技術によって「橋渡し」されるものへと変化し、もはや年齢による世代の区別を行うこと自体がナンセンスになってきている。では、「Z世代的価値観」とは一体何か?

ここでは、年齢や出身地、性別や文化圏の違いに関係なく、21世紀以降の変化に積極的に参加することを可能にする価値観を包括的に捉えて「Z世代的価値観」と呼ぶ。グローバル化が加速する中で、1つの国の社会問題はその国内に収まることなく世界中に波及し、逆もまた然りである。過去の世代が修復できなかった社会問題を克服し、今後発生し続ける問題と向き合い続けるにも、年齢にとらわれることなく共通した「価値観」を持つことで対応することが可能になるのだ。

この連載では、Z世代的価値観というものを中心軸に置きながら、主に米国のカルチャー、政治、ビジネス等を完全に切り離せる話題としてではなく、どのようにしてそれぞれの間で相互作用が起きているのか、そしてリアルタイムで起きている「Z世代という現象」の社会的背景にまで着目したい。

多様性とアイデンティティ

Z世代的価値観の代表的なものは、「多様性と変化を積極的に受け入れる」こと。ピュー・リサーチ・センターが国勢調査局のデータを分析したところ、ポストミレニアル世代の6歳から21歳までの人口のたった52%だけがヒスパニック系以外の白人であることから、すでに人種的に最も多様性のある世代であることがわかっている。

「最も文化的にも多様性に富んだ世代で、流動的なアイデンティティーを持ち、旧来のルールには従わないデジタルネイティブ」というのが最も典型的なZ世代のイメージだ。ミレニアル世代と比較して、Z世代はSNSの普及により常に社会やより広い世界とつながっており、社会問題についてもリアルタイムで情報を得ることが習慣となっていることは確かだ。個人が感じた違和感や孤独感は1人で抱え込まず、指で少しケータイの画面をスクロールすれば、同じ考えを持った人やもっと深く学びの機会を与えてくれるリソースが無限に存在する。Z世代的価値観にとって切っても切り離せないのが、まさにこの「情報のアクセスのしやすさによる視野の広さ」である。

例えば、Awesomenessの調査によると、Z世代の大多数は、Black Lives Matter(80%)、トランスジェンダーの人権(74%)、フェミニズム(63%)のような運動について、それぞれ社会で受け入れられるべきであると答えている。

一方で、最も多様性に富んでいる世代であるにもかかわらず、大学や高校中退率、そして教育の質などの点で、人種間の格差は依然として激しい。あまりにも長い間続いたその格差や差別の現実と向き合い、直ちに改善していくためのアクションを起こす必要があるという声が近年上がり続けているのは、Black Lives Matterを主導する若者達を見れば一目瞭然である。

アクティビズム

Z世代的価値観の持ち主は、変化をもたらすことを大切にする。そして、多方面でZ世代のアクティビストが活躍し、デモや社会活動を先導し、TikTokを使ってトランプ大統領の集会をガラ空きにするなどの政治的アクションを起こしたり、高い社会的な関心と正義への熱意を持つ。Z世代的価値観がブーマーやX世代の価値観と大きく異なる点は、収入格差、人種差別、男尊女卑やLGBTQ差別などの不平等を許容せず、完全な平等を非常に重視することだ。

また、地球全体の環境を大切にすることもZ世代的価値観である。年々酷さを増す気候変動や迫り来る資源の枯渇は、Z世代にとっては生まれた時から常にそばにある、切実極まりない問題だ。毎日のニュースやドキュメンタリー映像を見ていると、まるで明日にでも地球が滅びるのではないかといった緊張感と圧迫感をZ世代は常に感じており、これがメンタルヘルスの悪化の原因でもあるとされている。さらに、ヴィンテージファッションのリバイバルやオンラインで古着の売買が簡単になった影響もあり、エシカルな買い物をするよう心がけたり、中古のアパレルを多く取り入れたりするため、彼らの消費行動はファストファッション企業や旧来的な小売業者にとっては大きな打撃となっている。

Z世代は決してグローバル規模の壮大な目標ばかりを抱いているわけでは決してなく、持続可能な社会を作るためにはローカルコミュニティのために積極的に行動する必要があることも強く認識している。さまざまなデモに参加したり、地域の社会問題を解消するためのアプリを開発したり、SNS上で政治や選挙の情報をシェアしたり、リアルな友達や家族の範囲に留まらず、ネット上での広いつながりを活用する。

「SNSに没頭している第一世代が、コミュニティを重視しないわけがありません。Z世代の最も優れた価値観の1つは、自分が所属する以外の社会グループや、ボランティア活動を大切にしていることです。彼らは言葉よりも行動を重視しており、”常に行動を続ける”ことに加え、継続的に経験を共有しているのです。」

https://www.nonprofitpro.com/post/gen-z-core-values-what-you-need-to-know/#:~:text=One%20of%20the%20best%20Gen,planet%2C%20but%20also%20its%20people.

反資本主義的な政治観

“Eat the rich(金持ち達を食せ)” “Fuck capitalism(資本主義はクソ喰らえ)” “OK boomer(ブーマー、わかったから)”。これらはSNSやTikTok上でZ世代が日常的に使うフレーズとして、この1年以内で頻繁に見かけるようになった。

「”Ok boomer”は、若者達の文化を理解できない年配者に対してZ世代が突き返す反論であり、何百万人ものうんざりした若者たちの叫び声を象徴している。ティーン達はこの文言を使用して、ダサいYouTube動画、ドナルド・トランプのツイート、そして若者たちと彼らが大切にしている価値観を見下すような30歳以上の人達への返答として使われる」。

https://www.nytimes.com/2019/10/29/style/ok-boomer.html?auth=linked-google1tap

これらに共通しているのは、絶望的な経済状況を作り出した先代達への皮肉のこもった怒りと、アメリカの代表的な価値観でもある資本主義自体への反発である。
経済的に豊かだったブーマー世代の尻拭いをせざるを得なかったミレニアル世代を見て育ったZ世代達は、「一体なぜ自分達が不当な労働条件や理不尽な学生ローンを背負わされなければいけないのだろう」などといった疑問を常に抱きながら生活している。しかしその疑問から生まれるエネルギーをミレニアル世代の象徴とも言える「諦め」に落とし込むのではなく、民主社会主義派のバーニー・サンダース氏や史上最年少の女性下院議員であり、環境問題については強硬論者であるアレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏を応援したり、「自分のための時間を削ってでも給料のためにあくせく働く」という「伝統的にノーマルとされていたライフスタイル」を受け入れないZ世代も増えているのだ。

ジェンダー・セクシャリティについて

「Z世代のアイコン的存在」と呼ばれるアーティスト(クライロ、トロイ・シヴァン)、「Z世代的な要素を含む」と形容される映画(『ブックスマート』)、「Z世代に人気のファッション」と評される服装(古着ファッション)、それぞれに共通しているのはジェンダーやセクシャリティの流動性を受け入れ、クィア性を作品に落とし込んだり、ジェンダーニュートラルな感覚を取り入れたものが非常に多い。

上の世代の人からしたら、一体なぜ若者達が「クィア化」しているのか、不思議に思うかもしれない。しかし、今やメインストリームの中でもふんだんにクィアカルチャーが存在し、SNSなどで自分のジェンダーやセクシャリティについてオープンに語るセレブやインフルエンサーがごく普通に存在している時代だ。Z世代当事者からしたら、むしろ「シス・ヘテロが前提の社会のほうがおかしい」と思ってしまうのだ。”Gender is a social construct”(ジェンダーという概念は社会的な構築物である)というフレーズがZ世代のアンセムであるように、自分をどのように表現するか、自分のジェンダー・セクシャリティをどのように認識するかは「自由」であり、常に変化する流動性を持ち合わせているのだという概念が広く共有されるようになってきている。

トレンド予測機関であるJ.Walter Thompson Innovation Groupのレポートによると、21歳から34歳のミレニアル世代の65%に対し、Z世代の48%しか異性愛者ではないということが報じられている。

「Z世代に属する人達はショッピングの際にも性別の二項対立を拒否し、ミレニアル世代の54%に対して、”常に自分の性別に合わせてデザインされた服を買う”と答えたのは44%だけでした。同時に、公共の場では誰もがジェンダーニュートラルなトイレが利用できるようにすべきだと強く感じており、Z世代の70%がこの動きを支持している」

https://www.vice.com/en/article/kb4dvz/teens-these-days-are-queer-af-new-study-says

最後に

世界中の若者達が自ら声を上げ、行動するのは、自分達が持つ権利と影響力を明確に自覚し、決して自ら侮ることをしないからだ。

明確なのは、私達Z世代が声を上げるのは、大人たちの代弁者になるためでも、救世主になるためでも、尻拭いをするためでもないことだ。私達が声を上げるのは、喉が枯れるまで叫び続けなければこの切実な叫びを、権力を持った大人達が聞き入れてくれないからだ。

そして私達が声を上げるのは、自分達と同じように苦しんでいる人、そして次の世代に生まれてくる人たちに同じような思いを決してして欲しくないという最低限の思いやりを持ち合わせているから。

私達が声を上げるのは、大人達が私達のために声を上げてくれなかったから。Z世代は、Z世代のために声を上げ続けている。それこそが、Z世代的な価値観だ。

Photography Kyotaro Nakayama

author:

竹田ダニエル

カリフォルニア出身、現在米国在住のZ世代。大手レーベルのビジネスコンサルタントやテック系スタートアップを経てフリーランス音楽エージェントとして活動し、アーティストのPRやマネジメントを行い、ライターとしては「カルチャー x アイデンティティ x 社会」をテーマに執筆。インディペンデント音楽シーンで活躍する数多くのアーティストと携わり、「good music from Japanを世界に、世界のgood musicをJapanに」をスローガンに、国際的なバックグラウンドを活かしながら新時代における音楽活動のあり方を先導している。2020年からはプロデューサー/DJのstarRoらとともにインディペンデント音楽コミュニティー「SustAim」を立ち上げ、「音楽と社会」を結びつける社会活動も積極的に行っている。 Twitter:@danielle_takeda https://note.com/daniel_takeda

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