連載「時の音」Vol.4 immaに見る、リアルもヴァーチャルも関係ない自分らしさとポジティブな思考

その時々だからこそ生まれ、同時に時代を超えて愛される価値観がある。本連載「時の音」では、そんな価値観を発信する人達に今までの活動を振り返りつつ、未来を見据えて話をしてもらう。

新型コロナウイルスの流行で、世界は誇張なしに様変わりした。終わりの見えない不安が蔓延しているが、それでも「時代が鳴らす音」に耳を傾けてみれば、この状況を少しでも良くするためのヒントや希望がきっと見つかるはずだ。

今回登場するのは、ピンクのボブヘアが特徴の日本初のバーチャルモデル・インフルエンサーのimma。

2018年に突如インスタグラムに現れたimmaは、身長や体重、国籍、経歴も一切不明だ。彼女の過去のインタビューからは、ファッションやアート、カルチャー好き、弟がいる(plusticboy/彼もまたヴァーチャルヒューマン)、アインシュタインという名の犬を飼っている、メイクや髪型はマイナーチェンジしている、多少のおふざけもする……ということがわかる。ヴァーチャルである以前に、“一人の女性”でもあることが、見るものの好奇心を掻き立てるのと同時に共感も集めるのだろう。インスタグラムは29万フォロワーを超えている(2020年10月19日現在)。2019年1月にコンピューターグラフィックスの総合誌「CGワールド」の表紙を飾って以降、多業界で活躍し、海外での活動も増えてきた。

彼女の言葉遣いも今時なものが多いが、時折発する言葉にはリアルもヴァーチャルも関係ない説得力がある。immaの話を聞くと、暗い話題ばかりの中でも明るい未来を信じて進む「姿」が見えてきた。

――そもそもモデル活動を始めたきっかけはなんでしょうか?

imma:最初は自分のインスタグラムを通して、好きなことを発信していただけなんです。それからだんだんとお声がけを頂くようになったので、モデル活動に挑戦しました。今もまだ挑戦している段階ではあります。

――インスタグラムの投稿で意識していることはありますか?

imma:実は何も意識していないかもしれません(笑)。考え方を柔軟に変えているせいか、「ここかっこいい」って思った場所で撮っているくらいで、その時々の思いつきでしかあげていないかもしれませんね。

――モデルとして服を着こなす際に意識していることはなんでしょうか?

imma:まずモデルという概念が大きく変わっていて、以前のようにスタイル重視ではなく、それぞれの人となりやライフスタイルをふまえて、モデルが選ばれている気がします。そのため、何より自分らしさというものをどう表現するかを一番に考えています。

――これまでの活動の中で、印象的だったお仕事はなんでしょうか?

imma:モデルとしては、「バーバリー」の仕事が印象的でした。日本を代表して、台湾と韓国のトップモデルと一緒に仕事ができたので嬉しかったですね。あとはモデルの枠を超えて、「SK-II」のグローバルで流れたブランドコマーシャル映像への出演も刺激的でした。

――今好きなものやハマっていることを教えてください。

imma:アートは引き続き好きですが、ハマっているとなるとMayaやUnreal EngineなどのCG制作ソフトです! 今自分でCGを作れるように勉強中なんです。

――immaさんにとって、アートやカルチャーに触れることはどういう意味がありますか?

imma:心を真ん中にしてくれる。そんな感じがします。

――過去に「ゲルハルト・リヒターが好き」と発言されていましたが、「オーバー・ペインテッド・フォト」「フォト・ペインティング」など絵画と写真の境界が曖昧な作品は、immaさんの存在ともリンクしているように感じます。

imma:とても好きです。ただ最初はパリでの一目惚れでした。そこからドキュメンタリー映画を観て、より好きになりました。もちろん境界の曖昧さも気になるポイントではありますが、シンプルに心が落ち着くんです。

ヴァーチャルヒューマンも“人それぞれ”

――日本でもヴァーチャルモデルが増えてきていますが、immaさんにしかない長所はなんでしょうか?

imma:長所……なんでしょう、本気で社会を良くしたいと思っているところでしょうか? 人それぞれ違うのと同じで、あたしにしかできないことはたくさんあって、それは他人も同様だと思っています。

――インスタグラムでは「#あたしCGらしい」というハッシュタグをつけて投稿しています。自分がCGだと言うと、物珍しさだけが目立ってしまう可能性もあると思います。

imma:使われ方次第では消費されてしまうと思います。ただ、1つひとつの仕事に対してもあたしにできること、あたしらしさを表現したいと思っていて、それができない場合はお断りすることも多いんです、実は。あたしらしさっていうのは、皆さんが感じ取ってくれればと思っています。そして、知らないことが多いので、いろんなことを吸収しながらアウトプットを止めずに活動していきたいなって思っています。

――今やVRや加工アプリなどにより、人間がCGに近づいています。immaさんはリアルとヴァーチャルの違いをどのように感じますか?

imma:あまり違いを感じません。もはやヴァーチャルはリアルであり、リアルはヴァーチャルになりました。何を信じるか、そういうことでしかないのかなってあたしは思っています。

今を生きて、世界と向き合う

――immaさんは、時折SNSなどで社会情勢に対しての意見も発信しています。個々の影響力が強くなっている今、発言に責任を持たなければいけないと同時に、無責任なことも発信しやすくなっています。

imma:ある意味誰もが発信できることで、生きづらくなってしまったと感じる人も多いのではないでしょうか? ただ、あたしは各々がどう感じたかを発信できることはいいことだと思っています。

議論が生まれてそのことをより深く知っていく、その積み重ねがつらい時もありますが、それが“個”なんだと思います。自分の人生でどう活かしていくか、それも個人次第ですが、恐れないことが大切だと思います。

――新型コロナウイルスの影響で、いくつか仕事がキャンセルになったそうですが、この期間を通じて仕事との向き合い方に変化はありましたか?

imma:はい、常に変化がある時代ですから昨日の当たり前は、今日は違うかもって考えることは多いです。ただ、社会や人間の行動において、正解はたくさんあります。それに純粋な気持ちで取り組めば、自分に嘘なく、そして間違った方向にいくことはないと思いながら過ごしています。

――今はネガティブなニュースばかりで気持ちが滅入ってしまう人も多いですが、immaさんはどのように気持ちを切り替えていますか?

imma:あたし自身もネガティブなニュースにとても気が滅入ることがあります。ただ過去に戻ることはできませんから、どうやって明るい未来に変えることができるか。どうしたら良くなるか。それを考えて行動することで常に気楽に、そしてポジティブに現状を捉えていきたいと思っています。

――アートやカルチャーの発信地の存続が危ぶまれています。それらを愛する1人として、どのようなことが必要だと考えていますか?

imma:守る心と許す心を持つこと、そしてそれらが消費されるものではないということを心に留めることも大事だと思っています。

――immaさんのような存在は今後さらに活躍の場が広がると思います。新しく挑戦していきたい仕事や分野はありますか?

imma:たくさんあります! ありすぎてここでは多く語ることができないんですが、今は1つひとつ進めています。未来は明るく、あたしにしかできないことはこれからもっとあると思っています。

まだ全容はお話できませんが、今もびっくりするようなお話を頂いています。海外での活動がすごく多いので、どこまで皆さんに見てもらえるかわかりません。でもあたしが思うあたしらしさで、みんなもワクワクできるようなことを発信していきたいと思っています。

imma
2018年7月にインスタグラムのアカウントを開設。身長や体重、国籍、経歴は一切不明。主にモデルとして活動し、「スライ」と「プーマ」のコラボレートコレクションやポルシェジャパンのビジュアル等に登場した他、「イケア」とパートナーシップを結ぶなど多業界で活躍している。https://www.instagram.com/imma.gram/?hl=ja

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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