「一度は諦めた夢が思いがけずかなった」 タカハシユキオが描くビックリマン風イラストとその“音楽愛”

YKOYKO(ヨコヨコ)名義で活動しているタカハシユキオ。趣味で始めたビックリマン風のイラストがSNSで話題となり、多くのミュージシャンとコラボレーションを行っている。かつてはCDジャケットなどを手掛けるデザイナーを目指したというタカハシ。一度はその道を諦めたが、趣味で始めたイラストをきっかけに多くのミュージシャンと関わることになる。そうした偶然的な出会いも音楽愛があったからこそ。今回、これまでの創作の経緯を語ってもらった。

——タカハシさんが描くミュージシャンのビックリマン風イラストはオフィシャルっぽい雰囲気がありますよね。まずはこのようなイラストを描き始めたきっかけから教えてください。

タカハシユキオ(以下、タカハシ):このビックリマン風のイラストを描き始めたのは2013年で、きっかけは、ももいろクローバーZ(以下、ももクロ)でした。ももクロのことは2011年頃に知って、当時の曲は今までのアイドルソングになかったような感じで、すごく圧倒されるパワーがあったんです。それでハマっていって、最初はももクロ楽曲でマッシュアップ※1を作っていたんです。

そんな感じでももクロを追っていたんですが、2013年の秋に「ももクロマンチョコ」っていうももクロと「ビックリマンチョコ」のコラボ商品が発売されて。それを見た時に、「もし、自分の好きなミュージシャンをビックリマン風に描いてみたら、どんな感じになるんだろう?」って思いついたんです。最初はヒャダインさんやももクロの高城れにさん、佐々木彩夏さんのイラストを描いてみたら、意外とうまく描けて。それで他の人が今まで描いてこなかったような、メルツバウや灰野敬二さんなどを描いたら、結構話題になったんです。そこから自分の好きなミュージシャンをいろいろと描くようになりました。

※1 2つ以上の曲から片方はボーカルトラック、もう片方は伴奏トラックを取り出して、それらをもともとあった曲のようにミックスし重ねて1つにした音楽の手法

——入り口がももクロだったのは意外ですね。やはり音楽は昔から好きだったんですか?

タカハシ:そうですね。音楽とデザインが趣味で、それがあるから今も生きてるってくらい。もともと中学の時にピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギターとか“渋谷系”を聴き始めて。CD全盛期でもあったので、ジャケットデザインもすごい好きで、中でもコンテンポラリー・プロダクションのアートディレクターだった信藤三雄さんのデザインには、当時めちゃくちゃ影響を受けました。それで僕も遊びでカセットとかCDのジャケットを妄想して描いたりしていましたね。そこからロックとかテクノとか実験音楽とかいろんな音楽を聴くようになって、「ディスクユニオン」とかに行って、CDやレコードを買いまくってましたね。それは今でも変わりませんが(笑)。

思いきって作品展をやったことが大きな転機になった

——イラストは手描きなんですか? 

タカハシ:最初は鉛筆とペンで下描きしたものをスキャンして、IllustratorでそれをなぞってPhotoshopで色付けするような感じでやっていたんですけど、最近iPadを購入してからは全ての工程をデジタルでやっています。

——イラスト集も発表されていますよね。

タカハシ:『ビックリブック』っていう名前で、第1弾を2015年に作りました。それが想像していた以上に好評で、今までに第3弾まで出しています。

第1弾を発表するタイミングで、2015年に初めて下北沢でイラスト展もやったんですが、それにも多くの人が来てくれて。今まで地味に1人でやっていたので、そこでいろんな人と出会えたのは良かったですね。そこで出会った人から「こういう絵を描いてほしい」って依頼があったり、他のグループ展に誘ってもらったりして。東京だと高円寺の「アムレテロン」さんで毎年展示をやらせてもらったり、大阪だと「森本書店」さんが主催する「音盤大學」というイベントに参加させてもらうようになりました。

展示をするまではすごく不安だったんですが、多くの人に見てもらえてすごく嬉しかったし、それが自信にもなりました。2015年に思いきって作品展をやったことは、すごく大きな転機だったし、それがあったからこそ今でもイラストを続けられているんだと思います。

——これまでにどれくらいイラストは描いたんですか?
タカハシ:最初は10枚描けたら十分かなって思ってたんですが、なんだかんだで今までに300枚くらい描いていますね。

——描いたイラストは全部シールにするんですか?

タカハシ:最初の頃は基本的には描いて、それをSNSで公開して終わってたんですが、20枚くらい作った段階でシールにしてみたら、すごくおもしろくて。それからはイベントがあるタイミングで配るように、いくつかシールにするようにしています。

——こういったイラストを描くようになって、反響は?

タカハシ:初期の頃にサカナクションの山口一郎さんやミュージシャンの方々が「おもしろい」って反応してくれたのは嬉しかったですね。描きはじめて2ヵ月後には、「オフィシャルで描いてほしい」とメールで依頼がくるようにもなったりして、自分でもびっくりするくらいの反響がありました。

——描く時に意識していることは?

タカハシ:愛情を込めて描くことです。いろんな写真を集めて、どうやって描けば似るかなと考えながら下絵は描いています。不思議なもので愛情を込めるとなんか上手に描けちゃうんですよね。このミュージシャンはこういうモチーフ、こういう音楽、こういう曲を題材にしてたなってものをイラスト内にちりばめたりして。あとは妄想で「オフィシャルから依頼がきた!」ってテンションで描くといい感じになりますね(笑)。

好きで聴いていたミュージシャンから依頼が

——最初にオフィシャルで描いたミュージシャンって覚えていますか?

タカハシ:ジム・オルークさんです。それはオリジナルでの描き下ろしではなく、描いたイラストを「使わせてくれないか」っていう依頼をいただいて、2013年の年末にやったライブの来場記念のステッカーにイラストを使ってもらいました。個人的にもジム・オルークさんは昔から好きだったので、こんな夢のようなことがあるのか!ってすごく嬉しかったですね。

その次は2014年に新宿にある「ブックユニオン」さんという書店で、そこの特典の栞(しおり)のイラストを描いてほしいという依頼でした。それは「集めたくなる栞」がテーマで、毎月好きなミュージシャンを描いていいよってことで、主に洋楽のミュージシャンを描いたりしていました。毎月楽しかったですね。

——なるほど。CDジャケットのイラストも描いたりしていますよね?

タカハシ:最初はアメリカのディアフーフっていうロックバンドが、2015年10月に出したライブ盤『FEVER 121614』のジャケットに使ってもらいました。もともとは特典用シールのために描いていたんですが、それをメンバーがすごく気に入ってくれて、「今度ライブ盤CDを出すからそのジャケットに使わせてくれないか」って話になったんです。それが海外でもレコードでリリースされ、世界中の人がSNSに写真をアップしてくれたりして。子どもの頃から音楽が好きで、本当はCDとかレコードジャケットのデザイナーになりたいって夢はあったんですけど、結局なれなくて。でも、趣味で描いていたイラストのおかげで、思ってもいない形で夢がかなった瞬間でもありました。

——思いもよらない感じで夢がかなったのはすごくいい話ですね。それ以降も依頼はたくさんきたんですか?

タカハシ:ありがたいことに、途切れなく依頼はありました。前野健太さん、Awesome City Clubさん、マカロニえんぴつさんとか。CDの購入特典用シールとしては結構いろいろなミュージシャンを描かせてもらいましたね。思い出深いのは2018年にKIRINJIさんのメジャーデビュー20周年記念ライブがあって、そこでKIRINJIさんと堀込泰行さんのグッズ用にイラストを描かせていただいたんです。KIRINJIさんは学生時代から聴いていたので、依頼がきた時はめちゃくちゃびっくりしました。あと最近だとゲロゲリゲゲゲ※2のCDジャケットを描かせてもらったんですが、電気グルーヴの石野卓球さんがTiwtterでそのCDを紹介していて。間接的にとはいえ、好きだった石野さんに紹介してもらえて、本当に感動しました。

※2 1980年代から活動する、山之内純太郎による伝説のソロプロジェクト。ノイズミュージックを中心とした楽曲を制作している

——海外のミュージシャンにもタカハシさんのイラストはウケそうですね。

タカハシ:海外だとディアフーフ以外には、カマシ・ワシントンやサンダーキャットとかの日本盤CD購入特典シールは描かせてもらいました。本当に好きなミュージシャンだったので、こういった形で携われて光栄でした。

あと、リュック・フェラーリさん※3の生誕90周年イラストを公式で描かせていただく機会にも恵まれて。その繋がりで、ソニック・ユースのサーストン・ムーアが僕の作品を見てくれたみたいで。それもめちゃくちゃ嬉しかったですね。

※3 フランスの作曲家(1929〜2005)特に電子音楽の作品で知られる。世界中に熱狂的なファンが多い

——自分の中で一番「これがお気に入り」というのは?

タカハシ:一番気に入っているのは、この「今夜はブギー・バック」です。この曲ってオザケンバージョンとスチャダラバージョンがあって、リスペクトを込めてイラストも両方描きました。この曲がリリースされたのは僕の誕生日と同じ3月9日で、アニバーサリーみたいな感じでヤバいのを描いてやろうって思って。これは1週間くらいかかったんですが、描いている時はめっちゃ楽しかったですね。

——今後の活動については?

タカハシ:2020年の最初はいろいろと計画していたのですが、コロナ禍ですべてのイベントが中止になってしまいました。まだ公にはできないのですが、温めているアイデアはたくさんあるので、今の状況が落ち着いてきたらまた展示やイベントに参加したいです。そこで、お客さんと音楽の話をいっぱいしたいですね(笑)。

タカハシユキオ/YKOYKO (ヨコヨコ)
イラストレーター、デザイナー。静岡県在住。2013年からTwitterを中心にミュージシャンを愛らしくデフォルメしたイラストを投稿し注目を集め、KIRINJI、堀込泰行、カマシ・ワシントン、カーネーション、ジム・オルーク、Awesome City Club、ディアフーフ、SAKANAMON、MINMIといった、洋楽邦楽問わず数々のアーティストのグッズイラストやCDジャケットなどのイラストを手掛ける。
https://ykoyko.tumblr.com
Twitter:@YKOYKO
Instagram:@ykoyko
https://soundcloud.com/ykoyko

author:

高山敦

大阪府出身。同志社大学文学部社会学科卒業。映像制作会社を経て、編集者となる。2013年にINFASパブリケーションズに入社し、「WWDビューティ」編集部に所属。ヘアサロン関係を中心に、コレクションのバックステージ、メンズコスメ、ビューティ系スタートアップなどを担当。また、 “カテゴリーにとらわれず興味のある人を取材する”という考えで、ミュージシャンやクリエイター、俳優などの取材も積極的に行っている。

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