国境を越えたバンド活動を15年。コロナ禍でも歩みを止めないCrossfaithが貫くスタンス

世界を舞台に闘い続ける大阪発のメタルコアバンド、Crossfaith(クロスフェイス)。エレクトロやストリングスを導入し、ドラマチックなヘビーサウンドを武器に、海外の大型フェスやツアーで存在感をアピールし続けてきた。2021年はバンド結成15周年というアニバーサリーイヤーを迎え、己の道を切り開いてきたまれなバンドの道程をじっくりと振り返ってもらった。

世界各国を回り続け、さまざまなバンドやオーディエンス、カルチャーを目の当たりにしながら、吸収し続けるCrossfaithの音楽性は今なお進化し続けている。今回は、世界的なパンデミックを通して感じたこと、そしてその影響から生まれた今年9、10月に配信リリースされた新曲のこと、さらにはCrossfaithというバンドを形成する獰猛なロックスピリットの源泉について、KoieHirokiTeruのメンバー3人に聞く。

バンド結成から世界へ飛び出した15年の活動

——今年はCrossfaithは結成15周年を迎えるわけですが、結成当時と現在で大きく変わったところはありますか?

Teru:タトゥーが増えました(笑)。

Hiroki:俺は結成当時いなくて、2年後に加入したんですけど、その頃はメンバーで車を運転して、物販もやってましたからね。でもこの15年でCrossfaithという船に乗る人が増えて、任せるところは任せられるようになりました。

Koie:結成当時に思い描いた海外ツアーとか、そういう夢はかなえることができたと思うんです。ただ、15年目の今ならありえないくらいロックスターになれるやろうと思ったけど……、壁にぶつかる経験もしましたからね。バンドを続ける中で幸せなこともあれば、たまに逃げたくなることもあるし、そういうリアルも感じるようになりました。昔はほんまにガムシャラでしたからね。

——2014年にはイギリスで開催されている「ダウンロード・フェスティバル」のステージに立たれました。この出演は、バンドの夢をかなえた瞬間ではなかったんですか?

「ダウンロード・フェスティバル」でのライヴ模様(2014)

Koie:かなえたと言えば、そうなんですけど……。出演とはいえ、頂上(メインステージのヘッドライナー)には行けてないから。まあ、今も楽しみながら、同じメンバーとチームでやれているのは幸せなことですね。

——ではバンド結成時に描いていた夢を改めて教えてもらえますか?

Koie:「ダウンロード・フェスティバル」のヘッドライナーとか、人に話したら無謀と言われるような夢を追いかけてきて、海外にだって、ほぼ毎年ツアーに行くようになりましたからね。2012年に初めてイギリスに行ってライヴツアーをした時も夢の1つはかなっているんですよ。結構タフなスケジュールで、バンでイギリス中を回りました。

Teru:もちろん「ダウンロード・フェスティバル」のヘッドライナーをやりたいという野望はあるけど、俺達は結成した時にすでにバンドをやるという夢はかなっていて、今もその夢の中にいる気分なんですよね。ただ、コロナ禍でライヴが全然できなくなり、海外にも2年ぐらい行けてない。ここ最近は、海外ツアーをしている夢まで見ますからね。

——初の海外ライヴはいつになるんですか?

Hiroki:2010年の中国です。中国政府がやっている音楽フェスで、3万人ぐらい集まると言われて出てみたけど……。

Koie:500、600人しかおらんかったな(笑)。

Hiroki:そう、セキュリティも万全とは言いがたく、地元の警官が俺らのライヴをずっと観てました(笑)。

Koie:そういえばくるりも出てたもんな。

Teru:蒼井そらもいたもんな?

Hiroki:ああ、蒼井そらがトリでしたね。

——Crossfaith、くるりに蒼井そら……かなりカオスなラインナップですね。

Hiroki:蒼井そらは中国でも人気があるし、一番盛り上がってましたよ。

Teru:でも少なかったとはいえ、中国での俺らのライヴはすごくプリミティブな反応だったんですよ。だから、こっちもテンションは上がりましたね。俺達はプロディジーが主催している「ウォリアーズ・ダンス・フェスティバル」のライヴやメタリカがロシアでやったライヴだったりを観てきて憧れてきたので。

——崩壊寸前のソ連のモスクワで開催された「モンスターズ・オブ・ロック 1991」のメタリカですね。あの観客の大熱狂ぶりはすさまじいですよね!

Teru:そういった映像を観て、ロックが持つエナジーに刺激を受けましたからね。

Hiroki:ロックが根付いていない場所でやると、予想を超えるような反応が返ってくるから、それがおもしろいですよね。

Teru:例えば俺らが中国ツアーをやった時はプロモーターにやる曲のリストを送ったんですよ。で、「Jägerbomb」ってなんだ?と。

Koie:爆弾(bomb)は危ないと言われるという……(笑)。

Teru:しかもそれが理由で「Jägerbomb」をライヴでやることができなかったんですよね。

Hiroki:検閲的なものがあったんですよね。

Crossfaith 「Jägerbomb」

——曲名や歌詞をチェックされて、ライヴでプレイできる楽曲が制限される話は聞いたことがあります。

Koie:まさにそうでしたね。

Teru:中国以外での海外経験で言えば、イタリアのめちゃくちゃ田舎の街でもライヴをしたんですけど。ここに人が来るのかなという場所なんだけど、ライヴの時間になると、人が集まってきたんですよね。これも日本では体験できないことでした。

Hiroki:親子でロックを楽しみに来るといった場所もヨーロッパにはある。日本はふらっと今日、ライヴに行く? って感じではこないないと思うんですよね。そういった面でも日本のライヴシーンやロックフェスは特殊だなとも感じますね。

Crossfaithが海外でライヴを重ねる理由と魅力

——Crossfaith以前にこれほど海外ツアーにガンガン行く日本のバンドはいなかったと思います。継続して世界に出向くモチベーションの源とは?

Teru:俺は大阪の堺で育ったんですけど。最初に作ったアルバム(『The Artificial Theory For The Dramatic Beauty』)は、まずどうやってレコーディングすればいいかもわからない状況でした。それでも自分達でやったんですよね。それで、海外に行きたいという漠然とした夢があったんですけど、その時に現マネージャーに出会いました。彼に「アメリカに連れて行くから」と言われたんですよ。初対面だったから「誰やねんこいつ」と思ったけど、彼は単身でアメリカに行って、俺達の曲を海外のマネージメントに聴かせて、すごく行動力のある奴だなと。じゃあ、一緒に仕事をしようと。俺らは海外に行きたい、彼は日本のバンドを海外に連れて行きたい。その気持ちが合致して、海外での活動が現実化を帯びていくという。

——そういう流れだったんですね。

Koie:俺が海外に行き続けている理由は、楽しい! という部分が大きいですね。もうヤミツキになりました。たまに日本のバンドで海外に行った話で「めっちゃ疲れたわ」と聞くと「マジで!?」って気持ちになります。もちろん、しんどいことだってあるけど、イギリスで空を見上げた時の「ああ、俺は今イギリスにいるなぁ」と感じたことが忘れられないんですよね。ほんと海外にいると、360度から刺激を受けますね。いわば、俺らは海外でやることに自分たちのバンドの核みたいなものを見つけたというか。今は2年ぐらい海外に行けてないので、メンバーと集まっても「早く海外、行きたいなあ!」って、そんな会話ばかりですよ(笑)。

——海外が恋しくてたまらないなと。

Hiroki:抽象的な話になってしまうんだけど、海外でライヴをした時にハマる時とハマらない時があるんですけど、その時にバンドとしてゼロの地点に戻れるんですよね。ハマらないなら、次のセットリストはこれまでとは違ったものに変えてみようなど、そういった時に俺達はバンドしてるなぁと思いますね。個人単位のエピソードだと、ツアー先では街を歩くようにしています。今まで40ヵ国200都市ぐらい回っているんですけど、そこで聴く音楽や歩いて見える街並みも新鮮なんですよね。
日本でツアーを回り続けるだけでは、バンドとしてゼロになれる感覚はなかなか味わえないですよね。海外で新鮮なものをインプットして、受けた影響を日本でアウトプットする。その循環がCrossfaithというバンドを作っているのかなと。

——海外でライヴやツアーを重ねる中で何か発見したことは?

Koie:イギリスに行った時、バンでの移動中に聴いたイギリスのバンドの音源が日本で聴いている感覚とまったく違ったんですよね。それで気付いたのは、その土地で育った音は、その土地の音楽になるんだなということ。それまではアメリカ、カナダ、イギリスといった音楽はどれも同じように聴こえていたんですけど、今はこのバンドめっちゃイギリスやな! ってわかるようになってきたかというか。だから、Crossfaithの音楽も聴く人が聴けば日本の音って伝わるのかなと。

Hiroki:俺はフランスのライヴハウスに行った時なんですけど、ライヴハウスにはシェフの人がいて、お客さんにキャンドルやワイン、パンを準備するんですよ。これは日本のライヴハウスじゃ考えられないこと。フランスのライヴハウスではこれが日常なんやなって思いましたね。音楽の楽しみ方の幅広さというか。それも新鮮でしたね。

——Teruさんは?

Teru:リンプ・ビズキットのツアーに参加したり、海外のフェスでもかっこいいバンドを観てきて、俺らは負けず嫌いなので、そこで大きな刺激を受けてきたし、自分達も成長できましたね。どうすれば海外のバンドに負けないステージングができるかと。あとは、海外でロックだなと感じたものを日本に持って帰りたいというのもあります。そういったことを日本のライヴで「Crossfaithがいたら、いつもと違う風が吹いているぞ」と伝えたい。

Koie:うん。「Crossfaithを観て、海外に行きたいと思うようになりました」と聞いたりすると嬉しいですね。なので日本のバンドは、もうちょっと海外に行ってほしいなと思います。

——ちなみに海外で感じたロックな部分とは?

Hiroki:例えばですけど、フェスの会場にゴミが落ちたまんまでも、そのフェスに落ちているゴミよりももっと大事なものがあればよしというか。なぜならロックは合理的なものでは語れないし、荒削りな部分が魅力的だったりしますからね。

——確かに。海外のロックフェスだと、ゴミ箱がないフェスもあれば、係員みたいに監視するスタッフがいないフェスもありますよね。そんなフェスの会場は、純粋に音楽を楽しみに来ている人ばかりというか。あの開放感は海外ならではのフェスの風景かもしれないですね。

Teru:ロックに求める自由さは、海外のフェスのほうが強い気はしますね。

Koie:協調性を重んじる日本のような国もあれば、他人なんか関係ない、今日は祭りだから自由に楽しもうぜ! というノリの国もある。逆に「フジロックフェスティバル」に海外のアーティストが出演したり遊びに来たりした人は、すごくキレイで感動する人が多いです。でも俺達は海外のロックバンドに憧れてきたので、荒削りなものに引かれてしまうんです。

——そこに正解、不正解はなくて、自分はどっちが好きなのか、もはや好みの問題ですからね。

Koie:そうなんですよ。

15年の活動で築き上げたことと見据えるその先

——海外の話から、次は国内の話を聞かせてください。2019年にCrossfaithが主催の「ONE MAN TOUR 2019-EX_MACHINA CLIMAX」でのライヴで、Koieさんは「旅の途中で、コールドレインシムヘイ・スミスと出会い、彼らと出会ってなければ今ここに立っていない」とMCをされていました。Crossfaithとして海外と日本の音楽シーンを見てきて、あのタイミングで何か思うことがあったのでしょうか?

Koie:そうですね。俺らと近い価値観を持ったかっこいいバンドが日本にもいると気付けたし、そう思わせてくれたバンドと今も切磋琢磨できている状況に感謝というか。日本で活動し続けるのも1つのロックやと思うし、国内や国外といった色眼鏡はなくなったかもしれないです。その反面、許容しすぎてしまう自分も怖い。常にどこかで中指は立てておきたいし、その姿勢を自分は失いたくない。昔と比べていろんな音楽を聴けるようになったけど、それを成長と取るべきかどうか。

Teru:それはあるよな。自分で自分の核みたいなものは大切にしないといけないから。ダサイことをやっている奴にはダサイと中指立てる気持ちも大事やし、それで俺達は今まで活動できたと思うこともありますからね。

——では、この15年間の中でターニングポイントになったできごとはありますか?

Koie:初めてイギリスに行った時や「ダウンロード・フェスティバル」に出た時、そして『ZION EP』を2012年にリリースした時もそうやしって、数え切れないほどありますね。個人的には、最初にイギリスに行った時の刺激が今でもハイライトです。めっちゃ細かいことまで覚えていて、それだけ衝撃的やった。

Hiroki:俺は、2013年の夏に「ワープド・ツアー」でアメリカを60日間かけて40本ぐらいライヴしたことかな。1台のバスで毎日移動してってことを、2ヵ月まるまるアメリカでやりましたからね。それこそオフでもメンバーと一緒。しんどくてもライヴは毎日のようにあるし、パーティだってあった。ツアーってこういうもので、これがバンドなんだなと体験しました。でも今となってはツアーは楽しかったですよ。

Teru:一瞬一瞬だと思うんですよ。「ダウンロード・フェスティバル」に出た時に喜びはもちろんあったけど、ステージから降りると、「このままやったらヘッドライナーはまだ無理やな」って考える冷静な自分もいたんですよね。

Koie:お客さんはパンパンに埋まっているけど、今俺らはまだここまでしか盛り上げられてないんだなと感じました。俺らは海外のロックフェスをたくさん観てきたから、いつかは全員をロックさせたいんですよね。
俺は個人的にTeruがめっちゃ変わったなと感じたのは、1stアルバムの時かな。この頃は、セルフミックスでセルフプロデュースで、時にTeruはすごく追い込まれていたんですよ。

Teru:俺はほんまに1200万枚くらい売るつもりやったんですよ。リンキン・パークの『HYBRID THEORY』と肩を並べてやるんだと。

Koie:そうそう。その最後のマスタリングの時に「まだミックスが終わってない。間に合わないかも……」って。でもそれを乗り越えて、Teruは責任感が強くなった。そう考えると、1stアルバムを出したのは、俺の中でもターニングポイントでしたね。

——そして新曲の話にも触れたいんですが、9月に「Slave of Chaos」、10月に「Feel Alive」と配信で2ヵ月連続リリースされました。両作ともいつ頃に作った楽曲なんですか?

Crossfaith 「Slave of Chaos」

Koie:最初に「Feel Alive」を書きました。昨年の3月末ぐらいですかね。

Teru:両方ともコロナ禍にできた曲で、対照的な2曲になりましたね。「Feel Alive」は、コロナ禍におけるガイドラインがあっても、お客さんの前でライヴをしたいし、お客さんも一緒に参加して完成できる曲を作りたかったんです。コロナ禍で大変な世の中になったけど、それでも人の持っている力を信じて、みんなで共鳴できる曲を作りたかった。「Slave of Chaos」に関しては、フラストレーションも溜まっていたので、その衝動を曲にしました。

——「Slave of Chaos」のイントロでKoieさんはラップにも挑戦していましたね。

Koie:Teruが作ったトラップに合わせた感じですね。いろんなフロウを吸収して生まれたものだし、静と動をヴォーカルでも意識しました。新しいアプローチという感じで捉えてもらえたら嬉しいです。

——新たな挑戦もありつつ、Crossfaithらしいヘビーな曲調でとてもかっこ良かったです。対して、「Feel Alive」はいろいろ経てきたからこその楽曲と感じました。こちらも新しい質感の曲調かなと思います。

Teru:ミックスは、イギリスのモードステップというアーティストのジュシュにお願いしました。俺達は結成当時からバンドとエレクトロの融合を掲げているので、イギリスのドラムンベースシーンの第一線でやっている彼にやってもらいたかった。俺達の可能性をまた広げることができましたね。Koieの歌の表情もより人間味が出たものに仕上がってるかなと。

——はい。歌詞を含めて、これほど優しい表情をたたえた歌声も初めてぐらいじゃないですか。

Koie:ヴォーカリストとして心で思っていることをどう伝えればいいのかをすごく考えました。自分にできることも増えてきたので、2021年のKoieとして表現できたんじゃないかと思います。

——歌詞は英語ですけど、内容は昔の日本語パンクバンドのようにド直球でした。

Koie:ははは。和訳したらそうですよね。Teruから、みんなでユナイトできる曲にしたいと言われたので、そこに思いを重ねて歌詞は書きました。

Teru:曲は自分達で演奏するので、それは自分達の体に作用しますからね。「Feel Alive」はお客さんにも響いてほしいし、俺達もライヴでプレイして意味のある曲になるんだろうなと。

Hiroki:俺達は攻撃的な曲が多いけど、歌詞も含めて自分達も癒されていますからね。バンドとしてライヴできない期間があったからこそ、できた曲だと思います。

——「Now we find can’t live alone」と温かみのある歌詞も印象に残りました。

Koie:マスクをして、ソーシャルディスタンスを取ってって、ある意味みんなが分断されたわけじゃないですか。ライヴには不特定多数の人が来るけど、そこに束ねる思いがあるから、みんなが集まると思うんですよ。それができなくなった時に虚無感を感じますからね。でも俺が感じているということは、みんなも感じている気持ちかなと。絶対に明日は来るし、雨はやむから、1人じゃないよって、それが伝われば嬉しいです。

Crossfaith(クロスフェイス)
2006年に大阪で結成されたメタルコアバンド。メンバーは、Koie(ヴォーカル)、Kazuki(ギター)、Hiroki(ベース)、Tatsuya(ドラムス)、Teru(ヴィジョンプログラム)の5人。国内はもとより、海外でも精力的にライヴ活動を展開し、2021年は結成15周年を迎えツアーを敢行中。
http://crossfaith.jp/
Instagram:@crossfaithjapan
YouTube:CrossfaithOfficial

Photography Takaki Iwata

author:

荒金良介

大分県出身の音楽ライター。1999年からフリーのライターとして執筆を始める。ハードロック、ヘヴィメタル、ラウド、パンク、ハードコア、ミクスチャーなど洋邦問わず激しい音楽が好み。

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