「TOKION」でも連載でその動向を追っている音楽家・渋谷慶一郎が、今年で75周年を迎えたグッチのバンブーハンドル バッグを祝し本日8月10日に発表されたショートフィルム『Kaguya by Gucci』(監督:長久允、主演:満島ひかり、アオイヤマダ、永山瑛太)に音楽を書き下ろした。
そのヴォーカルを担当したのは、渋谷のオペラ作品でも重要な役割を担ってきたアンドロイド・オルタシリーズの最新型、オルタ4。オルタ4は、4月に大阪芸術大学のアンドロイドと音楽のラボラトリー「Android and Music Science Laboratory(AMSL)」 で誕生したばかりの新生アンドロイドで、ショートフィルムでは初めてメイクアップを施され、渋谷と共に出演を果たしている。
『Kaguya by Gucci』は、日本最古の物語といわれる「竹取物語」を東京を舞台に現代的に再構築した約6分のショートフィルム。全編に渡り渋谷の作曲による音楽が流れ、オルタ4は物語を伝える狂言回し的な役割も果たしている。
古典物語を現代的に再構築した『Kaguya by Gucci』のコンセプトに呼応するように、渋谷はアナログ/デジタルシンセサイザーからストリングス、AIまで駆使して作曲。渋谷は「明快なコンセプトと物語に対してアンドロイド・オルタ4のヴォーカルが能の狂言回しのように存在するというアイディアは最後まで強力に機能し続けたと思う」と語り、アンドロイド・オペラ®︎などの劇場作品とも異なる今回のコラボレーションについて、次のように今後の可能性を示した。「今までオーケストラやピアノといった人間によるアコースティック楽器と対置的に存在し歌うことが多かったアンドロイドがデジタルな電子音響の中で漂い、歌うことで新しい音楽のフォームを見つけそうな気もした」。
音楽の作曲からミックスダウンまでは渋谷本人が行い、マスタリングは4月に発売された渋谷のアルバム『ATAK025 xxxHOLiC』も担当したベルリン在住のEnyang Urbiksが担当。また、オルタ4が歌う歌詞の一部は、AI作詞家の「Cypher」によって作られている。
この日本で制作されたショートフィルムとヴィジュアルは本日8月10日より、全世界のGucci.comおよびグッチ公式YouTubeチャンネルと公式SNSアカウントなど幅広いメディアで公開される。
稀代の才能が集い紡がれた、現代版竹取物語。その艶やかな映像美とエモーショナルなストーリー、詩情と刺激に満ちた音楽を、心ゆくまで堪能したい。
YouTube URL: https://youtu.be/Kz7e-Q2Q9-4
Gucci特設ページ:https://www.gucci.com/jp/ja/st/stories/article/kaguya-by-gucci
企画:田辺俊彦
ディレクター:長久允
音楽:渋谷慶一郎
■オリジナル楽曲「I come from the Moon」
作曲:渋谷慶一郎
ヴォーカル:アンドロイド・オルタ4
作詞:長久允、Cypher (AI)
ミックス:渋谷慶一郎
マスタリング:Enyang Urbiks (Urbiks Studio)
音楽制作:ATAK
■渋谷慶一郎コメント全文
「映像に導かれるままに音をつけていって音楽は15分くらいで出来上がった。思い出すことが出来ないくらいスムーズに仕上がる曲というのはあって、今回はその典型だったと思う。
とはいえ、アナログ/デジタルが混在する音響設計やアレンジはかなり精密を極め、東京とベルリンを横断するミックス⇄マスタリングの修正は7回にも及んだ。ミックスも自分でやったので世界観を構成する微細な部分にも最後まで手を入れ続けて、発表の10日前に全ては完成した。
明快なコンセプトと物語に対してアンドロイド・オルタ4のヴォーカルが能の狂言回しのように存在するというアイディアは最後まで強力に機能し続けて、歌詞の言葉が足りない部分はAIの作詞家であるCypherに作ってもらったけど、あまりにもフィットしていて戦慄したりもした。月に向かう二人に音で影をつけたくてシーンを跨ぐ深くて長いディレイを2回つけたことで明快さと抽象性の新しいバランスを提示できたと思う。
今までオーケストラやピアノといった人間によるアコースティック楽器と対置的に存在し歌うことが多かったアンドロイドが電子音響の中で漂い歌うことで新しい音楽のフォームを見つけそうな気もした。
最後までチャレンジングだった全てのスタッフに感謝したい。」