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ファッションデザイナー・サカイカナコが語る、「YAU」という新しいクリエイションの場

有楽町という東京の中心部、さらにビルの10階で「アーティストと街の交流からイノベーションを起こす」ことを掲げ、その取り組みに熱い視線が集まる「有楽町アートアーバニズム(YAU)」。アーティストインレジデンスとして開かれた創作の場や、パフォーマンスアートのスタジオ、さまざまな分野の人が集うコワーキングスペースなどからなり、イベントや展示の会場ともなる「YAU」には、さまざまなクリエイターが交錯する。

今回は「YAU」の一角にアトリエを構える「カナコ サカイ」のデザイナーであるサカイカナコに、「YAU」における創作活動について聞いた。

さまざまな刺激を受けられる、オープンなアトリエ

――どうして「YAU」で活動するようになったのでしょうか?

サカイカナコ(以下、サカイ):昨年12月から今年3月まで新丸ビルのウィンドウで実施された「トウキョウ ファッション ストライド」というファッションを基軸としたコラボレーションプロジェクトに参加しました。Vol.1では、「カナコ サカイ」のコレクションを写真家の細倉真弓さんが再構築してヴィジュアル作品にし、ウィンドウディスプレイに展示したのですが、最初のミーティングのために「YAU」のオープンスペースに来たんです。そのときに「何このスペース、めちゃいい!」と思いました。

それまでは自宅兼アトリエで、寝て起きてまた作業という、狭いスペースで暮らしと創作の区別がつかないような生活をしていました。これは若いブランドはみんな直面することだと思うのですが、場所の問題はけっこう深刻。そんなときに、「YAU」にはファッションのクリエイターがいなかったこともあり、声をかけていただいて、飛びつきました。

――実際に「YAU」をアトリエとして使ってみて、いかがですか?

サカイ:想像以上に満足しています。今年の1月中旬から入ったんですが、コレクションの前だったので、ずっとここにいましたね。最初は自宅と半々くらいかなとイメージしていたのですが、この場所がよすぎて、毎日ここに来て仕事していました。

自宅にいると、目の前のことだけに没入してしまい、コロナということもあって新しい出会いもあまりなかった。でもここでは人と軽く話ができたり、トークイベントをふらっと聞きに行ったり、毎日さまざまなことが起きているので刺激になります。ジャンルが異なる人がいろいろなことを考えてものをつくり、仕事をしているんだというのがダイレクトに伝わってくる。それがファッションではないというのも私にとっては新鮮です。

ファッションのことをやっていると視野がファッションだけになりがち。いろいろなことを見たり聞いたり、話したりできるのはとても大事だと思いました。それが自然にできるのがとてもありがたいです。

――このアトリエのスペースは壁で区切られているわけでもなく、横を通れば作業している姿も見えますし、自然に人との交流も生まれそうですね。

サカイ:けっこう話しかけられますよ。ふらっと来た方に「これいいね」と声をかけてもらえることもあるし、反応がダイレクトにわかるのがおもしろい。例えば、今は日本のマーケットしかないので、展示会では黄色とか派手なものはあまり動かないんですが、海外の方がここに来られると、よく派手なものをいいねと言ってくれることも。その人が着たいと思うものを手に取って着てもらえたりするので、モチベーションにもなります。

――この場所で創作することで、新しい発見などはありましたか?

サカイ:サンプルができてきたときに、オフィス街のこの場所で見るのってとてもリアルなんです。展示会ってきれいな場所ですてきに服を並べてもらうけれど、実際に買ってもらった服は、こういう街で着られてこういう場所にかかっているわけですよね。それがリアルに感じらます。

展示会の直前にここをオープンスタジオとして開放したのですが、ここでいいと言ってもらえたら、その服が実際にお店を経て人に届いたときに、きっといいと思ってもらえるんじゃないかという新しい視線が自分のなかで生まれました。

多様な人が交錯する街でクリエイションする

――ここでの出会いが何か新しいことにつながったり、ほかのクリエイターとの交流もあったりしますか?

サカイ:男性の方も、これいいねとか、いろいろ見て声をかけてくれたりするんですが、「YAU」のプロジェクトチームの方に突然「着物をもらってもらえませんか?」と言われたことも。お祖母様の着物をお母様が受け継いだけれど、そんなに着られないし、捨てるのもしのびないのでもらってくれないかと。私のブランドでもアップサイクルをやりたいと思っているので、譲ってもらいました。そんなことがあるのもありがたいです。

あとはオープンスタジオのポスターをつくってくれたグラフィックデザイナーの有本怜生さんと仲良くなりました。よくここにふらっと来ておしゃべりしたりしていて、彼は写真も撮れるし多彩なので、今度ヴィジュアルをつくってもらおうと相談しています。そんなつながりが生まれるのもおもしろいですね。

――「YAU」はアートという側面だけでなくまちづくりの文脈のなかで取り組んでいるプロジェクトですが、有楽町という街についてはどう捉えていますか?

サカイ:有楽町に通うのがとても楽しいんです。有楽町はビジネス街というイメージが強いですが、それだけじゃなくていろんな顔があることがわかりました。夜はお酒を飲みに来る人も多いし、冬のイルミネーションがある時期はそれを目的に来る人もいるし、観光客も多い。ビルとビルの隙間にちょっとおしゃれなビールバーがあり、いいお店もたくさんあります。このビルは地下に飲食店街があって、みんな17時とか18時とか早い時間から飲みに来るんです。終電間際のサラリーマンの会話が耳に入ってくるのもおもしろいですよ(笑)。

たとえば南青山や表参道はファッションの街で、同じようなスタイルの人が多いけれど、ここはいろいろな層の人が集まってきて、その差がおもしろいなと思っています。リサーチしたいときも、ちょっと歩けば銀座だし、こういう場所でクリエイションできるのはとてもいいです。

――「YAU」はサカイさんにとって、どんな場所ですか?

サカイ:ここにいると、私がニューヨークで通っていたパーソンズ美術大学を思い出すんです。私はファッションデザイン学科でしたが、ファインアート科もあるし音楽科もあるし建築学科もグラフィックデザイン科もある。いろいろな人が混ざり合っていて、オープンスペースではさまざまなクリエイションが生まれていて、イベントもたくさん行われていました。私にとっては青春を過ごした場所。ここもそれに近くて、ちょっと青春を思い出します。

本当はここにずっといたいけれど、アーティストインレジデンスは、入っている人が循環していくのがいいんだと思う。また新しい人が入ったら新しいことが生まれるのではないでしょうか。私がここにいられる間は精一杯やって、それまでもう少し深くいろいろな人と交流できたらいいですね。

Text & Interview Ichico Enomoto
Photos Miyu Terasawa

■YAUアーティスト招聘プログラム
チーム・チープロ 〈ブギウギ・S〉のための9日間
菅野歩美 中空のページェント 
潘逸舟 マイ・アンダーグラウンド
会期:2023年5月26(金)〜6月4日(日)
開館時間:12:00〜18:00
会場:YAU STUDIO(東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル10F)
詳細:https://note.com/arturbanism

問い合わせ先
YAU
arturbanism2021@gmail.com

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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