渋谷慶一郎+池上高志がGPTを駆使した2台のアンドロイドによる対話劇『IDEA(イデア)』 10月に金沢21世紀美術館で世界初演

6月にパリ・シャトレ座でのアンドロイド・オペラ『MIRROR』上演を成功させた音楽家・渋谷慶一郎と、人工生命の研究者・東京大学大学院教授であり渋谷の長年に渡るコラボレーターでもある池上高志の2人が、脚本にGPTを駆使した2台のアンドロイドによる新作の対話劇『IDEA(イデア)―2台のアンドロイドによる愛と死、存在をめぐる対話』を金沢21世紀美術館のシアター21にて10月13日・14日に世界初演を行う。

本公演は同美術館で開催が予定されている展覧会「D X P (デジタル・トランスフォーメーション・プラネット) ―次のインターフェースへ」(10月7日開幕)の特別企画として開催され、常設展にも参加しているアンドロイドのAlter3(オルタ3)と、昨年誕生したAlter4(オルタ4)が劇場のステージで初共演を果たす。

これまで「TOKION」の連載でも伝えてきた通り、渋谷のアンドロイド・オペラではお馴染みのアンドロイド “Alter”だが、2台が同時にステージに並ぶのは今回が初めて。音楽を担当する渋谷は全編に渡ってピアノとエレクトロニクスを演奏する。また、2台のアンドロイドの会話から成る脚本の全てはGPTにより生成され、同展にも展示参加しているAIを駆使する注目の若手アーティスト・岸裕真の協力により、プラトンの著作とカール・ポパーによるプラトン批判なども学習したGPTによる対話、議論が展開される予定だ。

本公演は、2台のアンドロイドによる極限まで人間の意図を排した劇場作品として構想され、そのリファレンスに古代ギリシアの哲学者・プラトンの対話形式の著作があることから『IDEA』と名付けられた。また、フランスの映画監督ストローブ=ユイレ(ジャン=マリー・ストローブとダニエル・ユイレ)のギリシア神話を下敷きにした映画『アンチゴネー』の激しく異化された残響も感じられるようになっているという。

Alter3とAlter4の2台のアンドロイドにおける差異も本公演で注目したいポイント。Alter3は、東京大学池上研究室によって開発された発話されたテクストをGPTで動きに翻訳するプログラムによって運動制御されており、Alter4は電子音楽家・今井慎太郎のプログラムにより音楽の音量、音程、音密度に対して全身をシンセサイザーのようにモジュレートさせて運動するなど、2台は全く異なる制御によって動作している。両者はそれぞれプラトンのイデア界、現象界を表象する存在として激しく議論を交わすこととなる。

公演終了後には、金沢21世紀美術館館長長谷川祐子、池上高志、渋谷によるポストトークも予定されている。

〈ATAK〉から発表された作品コンセプトは以下の通り。

IDEA(イデア)はギリシャ語で姿、形を意味する。
プラトンが定義したイデア界と現象界をそれぞれ表象するAlter3とAlter4はステージに向き合う形で設置され、語り合う姿と顔や表情がスクリーンに拡大して投影される。
自らが話す言葉全てがGPTによって運動に変換され動きまでもが制御されているAlter3と渋谷の演奏する音楽の音量や音程、音密度に対する反応と全身に装着したオシレーターをモジューレトさせて周期運動を生成し続けるAlter4。プラトンの著作、カール・ポパーによるプラトン批判なども学習したGPTが脚本の全てを生成し、AI、アンドロイドにとっての愛や死、存在と欲望、感情とは何か?それらはいかに可能かという議論が2台のアンドロイドによって展開される。そして彼らが到達した結論とは?

■『IDEA ― 2台のアンドロイドによる愛と死、存在をめぐる対話』
日時・時間:10月13日(18:30開場 19:00開演【70分】)、10月14日(15:30開場 16:00開演【70分】)
会場:金沢21世紀美術館 シアター21
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
料金:前売 4,400円 / 当日 5,500円 ※両日ともに100席限定 ※座席は先着順
公演情報詳細:https://kanazawa21-idea.peatix.com/
会場webサイト:https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=69&d=2050

〈作品クレジット〉
出演:Alter3、Alter4
脚本:GPT
音楽、コンセプト:渋谷慶一郎(ピアノ、エレクトロニクス)

Alter3 プログラミング:吉田崇英、johnsmith
Alter4 プログラミング:今井慎太郎
GPTテクニカルサポート:岸裕真

Alter3 所属先:東京大学池上高志研究室
Alter4 所属先:大阪芸術大学アートサイエンス学科 Android Music and Science Laboratory
Alter4 台座設計:妹島和世建築設計事務所

映像:小西小多郎
音響:鈴木勇気
舞台監督:串本和也
制作サポート:川越創太、田中健翔
制作マネジメント:松本七都美

協力:大阪芸術大学
制作:ATAK

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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