奥原 麻衣, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/mai-okuhara/ Fri, 30 Jun 2023 12:35:43 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 奥原 麻衣, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/mai-okuhara/ 32 32 2022年の私的「ベストブックス」 「KOMIYAMA YUKA BOOKS」高橋優香が選ぶ年末年始に読みたい5冊 https://tokion.jp/2022/12/30/the-best-book-2022-yuka-takahashi/ Fri, 30 Dec 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=162571 TOKIONゆかりのあるクリエイター等がセレクトする2022年の私的「ベストブックス」。

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素晴らしい本と出会い、その世界に入り込む体験は、いつだって私達に豊かさをもたらしてくれる。どんなに社会や生活のありようが変わっていこうとも、そんなかけがえのない時間を大切にしたいもの。激動の2022年が終わろうとしている今、読んだ後にポジティヴなエネルギーや新しい気付きをもたらしてくれる本を「KOMIYAMA YUKA BOOKS」の髙橋優香が紹介する。

髙橋優香
1986年生まれ。東京メンズファッションブランド 「ベドウィン&ザ ハートブレイカーズ」 に5年勤務後、アメリカンカルチャーを体感すべく2年間ニューヨークに留学。アメリカでアートブックの世界に魅せられ現在神保町老舗古書店、小宮山書店に勤務。2021年7月には、自身がキュレーションするシークレットブックスペースをラフォーレ原宿「GR8」の店舗内にオープン。
Instagram:@komiyama_yuka_books

新しい1年をエネルギッシュに迎えるための5冊

今年は、すごくいい本と出会う機会が多かった印象があります。フィジカルで出すなら、こうしたい、こういう物を残したいとか、著者がじっくり深く考えて作るものが多いのかなと。あくまで主観ですが、いい本とは作家が見える本だと思っていて、作家のやりたいことや、伝えたいことが見えるとか、作り手の気持ちが見えるもの。それがきちんと届いているから、いい本が多かったと思えるのかもしれない。作りたいという意図が見えることも大事で、中にはこれをまとめられても……みたいなものもありますしね。

コロナ禍を経て、距離感だったり、コミュニケーションだったり、関わりにおけるセンサーみたいなものが、無意識に敏感になっているのかもしれない。コミュニケーションについて改めて考え直してみたり、新しい1年をエネルギッシュに迎える活力になるような、年末年始にぴったりの5冊を選びました。

『NEW YORK 1954.55』(Marval /1995)
WILLIAM KLEIN(ウィリアム・クライン)

新しい年に向けてたくましく生き抜くパワーをもらえる写真集

2022年、写真界で衝撃が走った一番のニュースといえば、写真家ウィリアム・クライン(William Klein)が逝去したことでしょう。『NEW YORK 1954.55』は、『NEW YORK』(Editions du seuil /1956)に刊行されたもののリパブリッシュ版。初版から約70年経った今でも影響を与え続けており、ストリートスナップの技法で、自分を色濃く表現したそのスタイルは当時の写真界に大きな衝撃を与えました。当時は、リチャード・アヴェドン(Richard Avedon)や、アーヴィング・ペン(Irving Penn)といった写真家が表現する絶対的な美やマンハッタンのフラッシーな世界観が良いとされていた時代。クラインが写したのは、現代では想像もつかない街のリアルでした。トランス状態でダンスする人々、拳銃を子どもの額につきつける大人、拳銃をおもちゃのように遊ぶ子ども達など、狂った世界をあたりまえのように生き抜く人々の姿に惹きつけられました。また、アレ・ブレ・ボケといったミステイクとされていたイメージカットをあえてテクニックとして採用。カットオフされたダイナミックなレイアウトなど、写真のルールにとらわれない表現で当時のニューヨークを切り取り、森山大道さんや多くの写真家に影響を与えました。ニューヨークに住んでいた時に購入し、何度も見返しては勇気をもらい、こんな怖い時代にいなくてよかったと思いつつ、街を生き抜く被写体を見ながら、私も街、そして時代をサヴァイブしていかないと、といつ見ても奮い立たされる1冊です。

『SELF AND OTHERS』牛腸茂雄(1994)
第一刷 未来社(復刻版)

巡り巡って今の自分にピタッとハマった写真的コミュニケーション

以前のものが急に新しく見えたり、ピタッと自分にハマる時がある。私にとってのそれが、今年は牛腸茂雄さんの写真集『SELF AND OTHERS』でした。直訳すると自己と他者。牛腸さんは、3歳で胸椎カリエスという病気を患い、身体にハンディキャップがありながら、写真というコミュニケーションツールで人と関わり、表現してきた写真家。余命20歳と宣告され、36歳の若さで亡くなりました。身長が子供の背丈(130cm)ほどだった牛腸さんのポートレート写真を見ていると、被写体と一定の距離を感じ、その距離感が気になったんです。子ども、家族、友人など何気ないポートレート集のようで、子ども達の表情は硬く、違和感を覚える。見ているとなぜか不安になったり、存在の不確かささえ感じる。中盤に出てくるぐっと寄ったポートレートはご両親。こういう部分にも写真と牛腸さんの距離感を感じて、病気のせいで思うように遊べなかった自分の幼少期と比べて、子供に対して強い嫉妬心が現れているのかとか、子ども達が牛腸さんのことを不思議に思って見ていたのかとか、あれこれ考察してしまいます。

私はこれまで、ポートレート写真は被写体と近い距離で、内面を映しだそうとするものがいい写真だと感じていたのですが、牛腸さんのポートレートは違いました。写真というコミュニケーションツールは、人との距離が明確に出るもので、その人にしか写せない写真があることを改めて実感させられた1冊。だんだんとコロナ禍も沈静してきて、コニュニケーションや人との距離感を、無意識に考えた1年だったと思います。この本は、自己と他者の距離感について改めて見つめ直すきっかけになればと思います。

『VIDEOS』(2022/.OWT.PUBLISHING)

カルチャーをシェアする大切さを教えてくれた蒐集家による1冊

おそらく世界一のスケートビデオコレクターである宇佐見浩介氏が、100%の自信を持って好きだと言える157本を紹介している1冊。大事なのは、この本は彼がコレクションしているビデオの図鑑ではなく、彼が好きなビデオを選んで紹介しているということ。スケート映像を収録してあるVHS、DVDとそれにまつわる音源やアイテム、彼の感じたことを書き綴ったテキストは、英訳されヴァイリンガル仕様になっているところに、スケートボートの世界との繋がり、宇佐見さんの意気込みを感じました。前職の先輩だった宇佐見さんは、カルチャーは人とシェアしていかないと繋がっていかないと言っていて、カルチャーを通じて人とコミュニケーションをする楽しさや大切さを教えてくれた人。オススメのDVDを貸してくれて、見ないで返したらめちゃくちゃ怒られたこともありました(笑)。フィジカルで本を作り、時代背景や、意見ではなくすべて彼の感想が書かれているところもいい。おそらく世界初のスケートビデオの書籍は、すべて手製本で製作された真心ある美しい1冊。尊敬する先輩が本を出して、たくさんの人のこれからのきっかけになるのは、とても嬉しいことですし、初版400部が即完売し、第2刷を発売するということもさすがだなと思いました。

『TREMILA』 (SELF PUBLISH /2022) 
Nick Atkins and Matthew Burgess

NYを拠点に活動しているアーティスト、ニック・アトキンス(Nick Atkins)とマシュー・バージェス(Matthew Burgess)がヴィンテージの「アイスバーグ(Iceberg)」のセーターに彼らのオリジナルアートワークをハンドエンブロインドしたセーターのヴィジュアルブック。ニックが絵画、フィルム、スカルプチャー等、表現方法はさまざまですが、一貫して表現しているものが、自身の縁あるハイチでの経験やトラウマ、薬物やアルコール依存との闘いなどの個人史をベースにした架空のSFファンタジー、「ハンジ・パーティ」の中で繰り広げられています。一見するとかわいい印象を受ける作品ですが、蝶々や虫などに、顔がついていたり、口が大きくデフォルメされていたりとかわいいだけとは言い切れない。既視感がなく、オリジナルの世界観で構築されていて、まるで子どもが描いたような独特の色使いもすごくいい。

2人はおもしろいからやろうよ、これやったらおもしろい! と、自分達が楽しむためにアートを制作していて、プロジェクトも、同じメンバーでやり続けるのではなく、良い意味で新しいメンバーと新しい取り組みをしているので、そこからコミュニティが作られ、新しいカルチャーが生まれる。そこにニューヨークのパワーを感じます。また、海外のアーティストは本好きが多く、本を開くとインスピレーションが沸いたり、何年先も“もの”として残っていくことで次世代に繋っていくということを知っています。フィジカルで残すことの大切さを改めて私達に気付かせてくれる気がします。

『Capsule』(KALEIDOSCOPE / 2022)

広い意味でデザインの世界を掘り下げたハイブリッドマガジン

インテリアと建築、ファッションとテクノロジー、エコロジーとクラフトなど、より広い意味でのデザインの世界を掘り下げたイタリア発のマガジン。『KALEIDOSCOPE』の姉妹誌で今号は創刊号。今後毎年ミラノデザインウィークに合わせて発売予定の『Capsule』。タイトルは、1972年に黒川紀章が設計し銀座に建設された日本の建築運動メタボリズムのシンボル「中銀カプセルタワー」から名付けられたそうです。雑誌と書籍のハイブリッドとも言える『Capsule』は、イタリアの先鋭的なインテリアデザイン誌『domus』や『MODO』などの系譜を継ぎながら、全く古さを感じさせないデザイン。クリッピングされグラフィカルに配置された紙面はポップでありながらも、全体の構成はシンプルで見やすく、イタリアらしい無駄のないデザインに魅了されます。古書店で働いていると、年代だけではなく、国によって、デザインや構成が違うので、それを見比べたり、感じられるのもおもしろい。H.Rギーガーのチェアや空山基さんがデザインした「AIBO」なども掲載されているのですが、ここまで攻めていて、独特のおどろおどろしさもあるモード寄りのインテリアマガジンは見たことがなかった。インテリア雑誌にも見えないし、ファッション雑誌にも見えない。独自の編集力に圧倒されます。年末じっくり『Capsule』を見返しながら、家具の買い替えや部屋の模様替えの構想を練ってみるのはいかがでしょうか。

Photography Masashi Ura

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連載「Books that feel Japanese -日本らしさを感じる本」Vol.8 古書 往来座が選ぶ東京に深く根付く日本の文化を感じる2冊 https://tokion.jp/2022/11/14/books-that-feel-japanese-vol8/ Mon, 14 Nov 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=153413 「古書 往来座」の瀬戸雄史とのむみちが、1980年代の東京を捉えた写真と名画からディープな日本文化を語る。

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国内外さまざまあるジャンルの本から垣間見ることができる日本らしさとは何か? その“らしさ”を感じる1冊を、インディペンデント書店のディレクターに選んでもらい、あらゆる観点から紐解いていく本連載。今回は、文芸、映画、美術等、多くの本を扱う『古書往来座』の代表瀬戸雄史と店員のむみちにインタヴュー。東京を舞台に常に移り変わる現実と現象の中に生きる若者達を捉えた写真集と、根強いファンを持つ名画座という日本特有の文化をコンテンツにしたフリーペーパーと手帳。写真と映画、2つの軸からディープな日本文化を感じる本を紹介してもらった。

「名画座かんぺ」
「名画座手帳」

書店員・のむみちが形にする名画座の魅力

−−『名画座かんぺ』『名画座手帳』について教えてください。

のむみち(以下、のむ):2012年から「名画座かんぺ」を作り始め、その派生版が「名画座手帳」。「名画座かんぺ」は、主要名画座5館の1ヵ月の上映スケジュールがメインコンテンツ。裏面には、トークショーなどのイベント情報や新刊本、ソフト化を紹介する“推し”らせコーナー、CS衛星劇場の“幻の蔵出し映画館”で放送されるレア作をいち早くレビューするコーナーなど、旧作邦画にちなんだコンテンツを網羅しています。名画座ファンにとって、こういうのがあったら便利なんじゃないかということで「名画座かんぺ」が生まれたように、旧作邦画の情報が満載の名画座ファンのための手帳があったらおもしろいんじゃないかという発想で生まれたのが「名画座手帳」。ウィークリーの部分には、旧作邦画に関わる俳優、監督の誕生日や命日が記されているほか、その日公開された作品も掲載。巻末には歴代の監督がどの時代に活躍されていたかがわかるチャート、都内の名画座の座席表付きの劇場情報、「男はつらいよ」などシリーズもののチェックリスト、常連作家の映画化作品一覧などが載っています。今の時代にこれ? ってくらいアナログなツール。手帳としての機能はもちろん、本として楽しめるくらい資料も充実している1冊です。

−−名画座の魅力とは?

のむ:もともと名画座には全く興味がなかったのですが、古本好きと古い映画好きは重なる部分があって、古い映画好きのお客様が勧めてくれたのがきっかけでした。作品にハマるというよりは、それがきっかけで名画座に行ってみようと思って、お店からも程近い新文芸坐を訪れたことが始まりです。名画座というと、古くて暗いとか、年齢層が高いとか、そういうイメージがありましたが、新文芸坐は2000年にオープンしていて、すごくきれいで。スクリーンも大きいし、なんて素晴らしい空間なんだろうと惹かれて通い始めました。一時期は仕事のシフトに合わせて、遅番のときは映画館に行ってから出勤。早番の時は仕事が終わってから映画館に。休日は、都内の名画座をはしごしていました。各館とも特集ごとにチラシを作っているのですが、名画座ファンはそのチラシを集めて、今月はどの映画を見に行くかというスケジュールを立てるのが楽しいんです。

−−来年度版の『名画座手帳』はよりアップデートされるとか?

のむ:来年版は現在絶賛編集中なのですが、全国の映画館リストをさらに拡大させます。これまでは、名画座と二番館という縛りをしてきたので、取り上げられない映画館も多かったのですが、コロナ禍で映画館にも影響があり、クラウドファウンディングなどでミニシアターを救おうというムーブメントがありました。それもあって縛りを緩めて、地方でも大手シネコンじゃない、独立資本で頑張っている映画館も入れることに。かなり今年の版よりも充実した内容になる予定です。

100%旧作で特集が組まれ、毎回チラシまで作られ、さらにそれらの上映スケジュールで月刊のフリーペーパーが成り立ち、旧作邦画のコンテンツで手帳まで作ることができてしまう。それくらい名画座文化が充実しているのは日本だけなのでは。 折りたたみ式のフリーペーパーの表紙は、1号目から代表の瀬戸雄史さんが版画で仕上げています。

倉田精二
「FLASH UP」

ストリートとアウトロー達への愛を写した写真集

−−倉田精二『FLASH UP』との出会いについて教えてください。

瀬戸雄史(以下、瀬戸):1983年に放送された山田太一さん脚本の「早春スケッチブック」というドラマです。母と息子、父と娘、それぞれが血が繋がっている、連れ子がある者同士が結婚して築かれた家庭、そこに母の元恋人で、息子の実の父親が現れる。破天荒なその男の登場により平和な家庭に亀裂が入り始めるというストーリーです。「ありきたりなことを言うな! おまえら骨の髄までありきたりだ!」というセリフは名言として印象に残っています。山崎努さんが演じる、破天荒な実の父親は写真家という設定で、息子が隠し持ってこっそり眺めていた写真集がこの「FLASH UP」。劇中にこの写真集を登場させることで父親の人柄や作風を表しています。このドラマがきっかけで、倉田精二さんの「FLASH UP」という写真集を知りました。

−−この本のどんな部分に日本らしさを感じますか?

瀬戸:山田太一脚本の日本的なホームドラマの劇中で使われていたというバックストーリーはもちろんのこと、高度成長の裏に隠されていた若者達がリアルに写されているところに一番日本らしさを感じます。被写体となっている若者達の熱量とか気迫、暴走族、ヤクザ、夜の女達、喧嘩、バイク等、東京の暗部ともいえる裏社会のリアルを捉えた、劇的で暴力的でもある臨場感あふれる写真の数々。古い車、足立ナンバー、カメラ目線の人、視線を逸らす人、サンダルの人がいたり、ブーツの人がいたり、あれこれ想像しながら写真を1枚1枚じっくり細部まで読み込めば読み込むほどおもしろい。以前、倉田精二さんに会ったことがあるという写真家さんから聞いた話ですが、倉田さん自身はとても優しい人である一方で、被写体の彼等と同じように迫力があり怖さも感じる人だったそう。彼等の仲間に近い存在となって、常にストリートにいたそうです。だからこそこの距離で撮れた。この本に収められた190点の作品のうち約120点が池袋を舞台に撮影されたものというところもまた見ていておもしろい一面です。

大部分が池袋で撮られているので、駅近くにある通称びっくりガードと呼ばれている場所でのバイク事故の様子やサンシャインシティ等、馴染みのある景色も多い。雪の日のサンシャインシティの写真は同じ画角で撮影しに行きました。建て替わっているところがほとんどですが、未だに残っているビルもあり、見つけた時は嬉しかったです。

Photography Masashi Ura
Text Mai Okuhara
Edit Dai Watarai(Mo-Green)

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.8 「サイクル」を通して伝えたいサステナブルなメイド・イン・ジャパン https://tokion.jp/2022/07/21/japans-brand-trivia-vol-8/ Thu, 21 Jul 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=132051 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う企画。第8回は「サイクル」 を通してサステナブルなものづくりを考えるデザイナーのcomiが登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、もの選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った、“メイド・イン・ジャパン”のものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は、「サイクル(Cycle by myob)」のデザイナーcomiがセレクター。前身のブランドからの独立、出産をきっかけに環境のことに目が向くようになり、サステナブルな服作りをテーマに掲げる「サイクル」をスタート。昔から日本に根付いている習慣や職人の手によって生まれるもの、彼女はそれこそが本来のメイド・イン・ジャパン製品だと考えている。

−−環境問題にファッションでアプローチしている「サイクル」ですが、日本と海外のエコへの意識の違いはどのようなところに感じていますか?

Comi:「サイクル」では、ペットボトルを糸にして生まれるポリエステル生地や廃棄された服を粉々にし、糸にしてから紡ぎ直した生地、自然染色の生地などのエコ生地をメインに採用しています。そういったエコ生地の文化、研究開発が進んでいるのはダントツで日本の方だと思います。今まで中国や韓国でも生産はしてきましたが、まだ向こうにはエコ生地の文化が根付いていません。最新のコレクションで使用したリネンは、完全天日干しで作られたもの。乾燥機を使わず太陽の光だけで乾かし、職人さんが手で染めた生地を使っています。手仕事だから多少ムラも出るけれど、そこがまた良い。無駄な電力を使わず、昔ながらのやり方で生地を作っているというところがブランドの思想と合致して、価格は少し高くはなりましたが、採用することを決めました。「サイクル」というブランド名にはリサイクルなど環境のサイクルはもちろん、人との繋がり、縁の意味も込められています。「サイクル」を通して、環境問題をもっと知ったり、日本の職人達のことを広めたり、きっかけやいい連鎖をたくさん作っていくことがこのブランドのミッションかもしれません。

−−アトリエで縫製をしている商品もあるそうですね。実際日本の工場での生産は多くなってきていますか?

Comi:これまでは中国や韓国で量産してきました。やはりコスト面で安いイメージがあるけれど、最近はコロナの影響によって人員不足等で工場が減っているせいか高くなっている。それなら日本で作りたいという考えに自然と変わっていきました。一番良いのは何かあったら工場とすぐに連絡が取れて、すぐに会いに行けること。海外だと荷物が届くのに2週間くらいかかったりするけれど、日本だったら1〜2日程度で届くし追跡もできる。コミュニケーションがとれることはもちろんのこと、トラブルもなくなりました。今は生地を買って、プリントしてから、3分の1ほどを、アトリエで縫製しています。最近ポップアップで発売したリメイクデニムはアトリエですべて作り、お店に納品していました。徐々にですが、完全メイド・イン・ジャパンブランドに近づいてきている実感はありますし、目指したいところですね。

天然の素材で染めた「サイクル」

染めに興味を持ち始めたのは、子どもの着なくなった服をアボカドの種で染めている動画をSNSで見てから。まずは自分でやってみようと思って、アボカドの種や玉ねぎの皮、挽いた後のコーヒー豆のかすを使って、自宅のキッチンで染め始めました。アボカドの種は、なんとピンクに変わるんです。全部捨ててしまうものだけど、ためておけば染色に使えるという楽しい発見でしたね。それから藍染めもやってみようと藍を取り寄せたり、泥染めをしてみたり。自宅のキッチンからスタートした染めを、ブランドでも大きく展開するようになると、藍染のシルクスクリーンや泥のシルクスクリーンなどを独自に開発している方と出会い、新しいデザインが生まれました。藍は自宅のプランターで育てて、そのまま染めにも使える。全部家の中で完結しておしゃれも楽しめる、楽しいエコ活動です。

蚕が生み出すシルクのストール

自然染織家の伊豆蔵明彦さんのドキュメンタリー映画を観て、蚕産業を知り興味を持ちました。映画では伊豆蔵さんが1万匹の蚕と共に制作する巨大な糸の大球体、その制作過程が描かれています。本来シルクは人の手で織りますが、伊豆蔵さんは蚕の特性を生かして、吐き出した糸がそのまま布になるという技法を生み出した人。大きな球体に1万匹もの蚕を乗せると球体を守ろうとみんなで糸を吐きながら上に上がっていく。上にたまると重さで球が回り、下になった蚕はまた糸を吐きながら上に上がっていく。それは円運動と呼ばれていて、自然の摂理で蚕の生涯を全うさせるというのが伊豆蔵さんのプロジェクト。蚕によって出来上がった球体は、草木、雨水、太陽のみで染色されていて、すべて自然界にあるものだけで完結しています。その球体の中に入ると、命の紡ぎを感じて鳥肌が止まらなくなりました。バッグとストールを持っているんですが、ストールはお腹が冷えたときに巻いたりするとじんわり温まる。着るものも食べるものも生命に支えられて生きているんだと実感します。

自然あふれる街、生まれ育った滋賀

最近、実家の敷地内にある小屋をリノベーションして別荘にしたんです。だから実家に帰る機会は、今まで以上に増えました。滋賀は自然豊かで、人も温かくて、動物も多い癒される場所。東京にいると常に頭の中がフル回転。常にせかせかしているし、追われている。自分の感情を考えられないくらい忙しい。でも家族で滋賀に帰ると、まず子どもがいつもと全然違うんですよね。まさに魂の解放! 自然豊かな場所で遊ばせるとこんな顔して笑っているんだとか、こういうことが楽しいんだとか、本当に細かい表情の変化が見れる。私自身も同じで、今こう感じているとか、実はこれが好きなんだとか、今どんなこと考えているとか、頭の中がシンプルになる。きっと大人が解放できているから、子どももそれを感じ取って解放できているのかもしれません。滋賀で生まれ育って、ニューヨークでブランドをスタートして、今東京で暮しているけど、滋賀に帰ってくると一番心が落ち着く。やっぱりここが良いと思えるかけがえのない場所です。

Comi
2020年「M.Y.O.B NYC」から独立後、「サイクル(Cycle by myob)」をスタート。「サイクル」は再生生地、リサイクル、環境汚染、人との繋がりや縁と定義し、ファッションを通して環境問題をユニークに表現していくことで何かのきっかけを生み出したいと考え活動している。
Instagram:@comi_myob@cycle_by_myob

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.7 「イト スイム」が伝えたいメイド・イン・ジャパンの細やかさと私達の原点 https://tokion.jp/2022/05/23/japans-brand-trivia-vol-7/ Mon, 23 May 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=116416 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う企画。第7回は日本生まれのスイムウェア「イト スイム」のクリエイター、風間アリス、万歳まさよが登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、もの選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った、“メイド・イン・ジャパン”のものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は、マリンスポーツを快適に楽しめる機能性と、洋服のように着られるデザイン性が魅力のメイド・イン・ジャパンのスイムウェア「イト スイム」のクリエイター、風間アリスと万歳まさよがセレクター。水着というアイテムを通して彼女達が伝えたいこと。それはメイド・イン・ジャパンのものづくりの素晴らしさはもちろんのこと、私達が生きていくために守らなければならないことにも通じている。

−−オールメイド・イン・ジャパンでスイムウェアを作っている「イト スイム」ですが、ものづくりを通して改めてメイド・イン・ジャパンの価値や魅力をどのように感じていますか?

風間アリス(以下、風間):コロナ禍もあって自分の衣食住や日本のもの、場所に着目し、改めてその良さを再発見する機会が増えました。ものづくりにおいてはもちろんのこと、文化や風習においても伝統的に伝わってきたモノがいかに環境に優しいか。原点に立ち返るような感覚というか、シンプルさと美しさの共存、自然に寄り添う方法や素材が浮き彫りになり、それこそが日本の魅力だと気 付かされました。クラフトマンシップにおいても、実体験として工場とのやりとり1つに感じる細やかさに感動することもしばしば。そのおかげで繊細で妥協のないものづくりがかない、100%満足のいく製品が生み出せると思っています。

万歳まさよ(以下、万歳):日本の良いものを応援したい気持ちも、より強くなりました。小さなことかもしれませんが、選択肢がある場合は日本のモノを選ぶようにするとか。モノづくりでは、すごく繊細で丁寧なモノ作りを得意とする工場がたくさんあるけれど、さまざまな事情で継続できない現状もある。日本の良さを絶やさないようにするには、どうしたらいいかも今まで以上に考えるようになりました。

−−ものづくりにおいて海外と日本の違い、またそのおもしろさはどんなところにあると思いますか?

風間:日本のものづくりにおいては、そこまで計算して作っているんだとか、やはり緻密さや細やかさを感じます。世界各国その土地の素晴らしいクラフトはあり、比べてしまうと少しざっくりとした印象を受けます。一方でそれが良さでもあると思うんですけどね。

万歳:センスにおいても感じます。水着を作っているので、海外のブランドもたくさん見てきましたが、日本のブランドは、ちゃんとおしゃれで機能面でも作り手の気配りが感じられる。もちろん海外のブランドも高品質ですし、使い勝手をきちんと計算して作られているけど、どこか見た目を重要視している印象があります。見た目のおしゃれさと機能面。どちらも同じクオリティーを保っていて、イコールであるところに日本人の完璧さを感じます。

海と街をつなぐメイド・イン・ジャパンのスイムウェア

マリンスポーツといったアウトドアのシーンで思いっきりアクティブに動いてもずれなくて、おしゃれな水着が欲しいという思いから始まった「イト スイム」。ただ水着を作るというよりも水着という媒体を通して自然環境のことや、日本のものづくりの価値などを伝えることで、生活や思考の原点に立ち返ってみようという思いも込めています。今季から日本ならではの技術や伝統を取り入れたシリーズをスタートし、藍染めプリントのアイテムを作りました。藍染めは、日本最古と言われる染色法。国内有数の産地である徳島県の海陽町にあるin Between Bluesの永原レキさんを訪ね、自分達の手で染めて水着の柄を作りました。染色した後は、工房の目の前にある海で藍を洗い流します。化学染料だと汚染になってしまうのでできませんが、藍は天然染料だからこそできる。永原レキさんは藍師であるだけでなく、サーファー仲間でもあり、地域の自然や魅力を伝える活動にも取り組んでいます。藍のことだけでなく、土地の歴史や文化など知識豊富な彼の話を聞いているうちにすっかり暗くなってしまい、陽が沈んだ月明かりの下で海に入り洗い流しの作業をしました。それもまた幻想的でいい思い出です。

生活をより豊かにしてくれる器

現在、私達の生活の拠点が海に近い田舎町ということもあって、食事は基本的に家で作って食べています。自然豊かな恵まれた環境なので周りには農家さんも多く、購入する食材のほとんどが地元産のもの。地産のものであることや無農薬野菜など、食材選びにもこだわるようになりました。食にこだわり始めると、器にも自然と目が向くように。写真右の2つは、ちょうど1年前陶芸体験をしようと、長柄町の六地蔵という地域にある備前焼作家さんのところへ行った際に購入したもの。ここでは素材である土づくりから、薪集め、轆轤、窯焼きまでを一貫して行っていて、ここまで一貫している陶芸家は日本でも1%程度だとか。釉薬を使っていないからこそ出せる自然の土の色、登り窯の入れる場所によって変わる風合いや柄も気に入っています。左側は藍染めのために訪れた徳島で、ふらっと立ち寄った工房で購入したもの。意図せず好みの陶器と出会ってしまい、2人で大量に購入しました。拠点や、選ぶ食や暮らし方が変わりましたが、生活はどんどん豊かになっている実感があります。自分の生活の中に起きる小さな変化をこれからも楽しんでいきたいですね。

自然の循環を目の当たりにした滝

徳島で永原レキさんに連れて行ってもらった轟の滝。ここは轟神社の御神体として祭られている場所で、滝壺への立ち入りは禁止されています。八百万の神への信仰が昔から言い伝えられている通り、こういう場所にいくと自然と手を合わせ、祈りを捧げてしまう。そういう日本人ならではの不思議な感覚になったのを鮮明に覚えています。ここまでの道中、彼が話してくれたのは“海は山の恋人”の話。海の水が蒸発して水蒸気となり雲を作る。そしてその雲が雨を降らし、山に降り注ぎ滝となり、森を通って川になり、海に流れる。そうやって自然は循環しているから、山を守れないことには海も守れない。もちろんその逆も然り。1つが狂えば、全部がダメになる。だから人間は非循環なことをしてはいけない。自然界における話ですが、話を聞いていてすべてに通じる話だなと思いましたし、都会で生活しているとすっかり忘れてしまっている自然の循環や人と自然の暮らしのこと。あたりまえのことだけど、絶対忘れてはいけない。そして未来のために1人ひとりが考えていかなければいけないことを「イト スイム」を通して伝えていけたらと思っています。

「イト スイム」
“The City and The Sea”がコンセプトのメイド・イン・ジャパンのスイムウエアブランド。サーファーでもあるデザイナー達の理想を形にしたアイテムは、日本人の体型を考慮したラインの他に、マリンスポーツを快適に楽しめる機能性と街中でも違和感なく着られるデザインが特徴。

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連載「Books that feel Japanese -日本らしさを感じる本」Vol.6 片山淳之介が選ぶフランスを舞台に日本を感じる2冊 https://tokion.jp/2022/05/22/books-that-feel-japanese-vol6/ Sun, 22 May 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=115244 「BOOK SHOP無用之用」片山淳之介が、フランスが舞台となったエッセイと小説から日本を俯瞰する。

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国内外さまざまあるジャンルの本から垣間見ることができる日本らしさとは何か? その“らしさ”を感じる1冊を、インディペンデント書店のディレクターに選んでもらい、あらゆる観点から紐解いていく本連載。今回は、一見無用に思えるものにこそ、本質的な価値があることを表す老子の言葉「無用之用」から名付けられたユニークな書店の店主、片山淳之介にインタビュー。書店による選書だけでなく、繋がりや興味のある誰かによって選書された本が並ぶ。その中から選んでもらったのは、新しい着想のヒントになるようなエッセイ、人間くささをクールにエレガントに描く小説。片山が以前住んでいたフランスが舞台となっている2冊を紹介してもらった。

フランソワーズ・サガン 
『打ちのめされた心は』

−−フランソワーズ・サガン『打ちのめされた心は』について教えてください。

片山淳之介(以下、片山):処女作である『悲しみよこんにちは』で18歳の時、鮮烈なデビューを果たしたサガン。『悲しみよこんにちは』は、のちに22ヵ国で翻訳され、世界的なベストセラーとなった。そのサガンが亡くなった後、未完の遺稿を息子が編集し出版されたのがこの『打ちのめされた心は』です。華やかなフランス郊外の大富豪一家の人間関係を描いた作品。恵まれた環境、華やかな世界の中でのメランコリックさが叙情的に書かれています。もともと裕福な家庭に生まれたサガン自身が、実際に感じていたことや出会った人等を、登場人物の描写やウィットに富んだ文体から感じとることができる作品です。

−−その描写には、とある日本人女優との出会いが関係しているそうですね。

片山:当時、女優として大活躍していた加賀まりこさん。彼女との出会いがサガンに大きな影響を与えたという話を聞いたことがあります。小悪魔的なイメージが強かった加賀さんに対する、世間の誹謗中傷に嫌気がさし、稼いだお金をすべて持って単身パリへ。その時2人は出会ったそうです。日本人女性に、おしとやかな印象があったサガン。一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりしている時の、加賀さんの天真爛漫な無邪気な姿を見て、悲しいことをきれいに書くのではなくて、悲しいことは本当に悲しく書く。脚色しない。そういう影響を加賀さんから受けたのではないかと。

−−この本のどんな部分で加賀さんらしさや日本らしさを感じますか?

片山:加賀さんとのエピソードを聞いた上でこの本を読むと、登場人物のキャラクターにそれを感じます。日本人女性らしい聡明さと、美しさだけでなく少女のようにおてんばでもある。そこについ、加賀さんの姿を重ねてしまいます。フランスの本や映画って、どこか人間の俗な欲望や意図を感じる人間くささがあると感じています。そこが好きなポイントであり魅力。華やかな印象もありますけど、ちゃんとエレガント。フランス人には潜在的な美意識がある。作法とはまた違う、学のような。今は薄れてきているかもしれないけど、当時の日本にも、日本人にもそれはあった。そこに通じる部分を感じます。この本は、加賀さんが出演している映画を見てから読むと良いかもしれません。飲み屋でタバコを取り合っていたくらい親交が深かったと言われている2人の関係性を垣間見ることができるかもしれません。

カバーに描かれた車は、彼女が初めて買ったジャガー。物語に登場するクラシックカーはこのジャガーを想定していたのだろうか。この言葉は、退屈な社交の場に行かなければならない複雑な心情、何も期待しない無の感情を表した言葉。言い回しにエレガントさを感じるのはやはりサガンの育ちの良さからなのか、とあれこれ想像してしまいます。

伊丹十三
『ヨーロッパ退屈日記』

−−伊丹十三『ヨーロッパ退屈日記』について教えてください

片山:1960年代、当時俳優だった伊丹十三さんが仕事のために滞在していたフランスでの実体験が書かれているエッセイ集。俳優、映画監督、デザイナーというあらゆる顔を持っていた伊丹さんは、多才なだけでなく、とてもおしゃれな方だった。おしゃれというのは、見た目のことだけではなくダンディズムのこと。それは誰かの受け売りではなくて、自分のセンスで見つけた良いと思うものに自分を合わせていくこと。伊丹さんはそういう高い美意識を持った方だったのでしょう。この本を語ることは、イコール伊丹十三という人の魅力を語ること。彼の視点で書かれた、世界における日本の特異性。例えば隣の家の犬のエサまで気にするような性質=周りからどう見られているかをヨーロッパにいながらにしても感じている。そういう鋭い観察力が、伊丹さんらしい美学に満ちた言い回しで綴られていておもしろさもある。人間的なダサいことも無粋なところも嫌味なく、そして限りなく黒に近いグレーなユーモアを持って書かれていて、そういうところにも魅力を感じます。フランスにいても伊丹さんは、ちゃんと日本人だった。数年海外で生活して帰ってくると容姿が染まっている人もいますが、伊丹さんはフランスの香りだけまとって帰ってきた。この本を読んでそんな印象を受けました。

−−この本との出会いはいつ頃でしたか?

片山:初めて読んだのは、小学校6年生の頃でした。実家の近くに映画館があって、そこで上映されていた伊丹さんの映画の看板がすごく格好良くて観にいったんです。最初に見たのは『マルサの女』。子どもながらになんとなく感じていた大人の怖さとかズルさとか、静かな中の不安とかそういう醸し出される空気感がちゃんと描写されていた映像に衝撃を受けたのを覚えています。そこから伊丹さんを知って、この本を読みました。大人になった今でも月に1回くらい読み返します。それくらい思い入れの深い本。バイブルみたいな感覚に近いかもしれません。

−−鮮烈な印象を残したこの本から、どんな影響を受けましたか?

片山:自分の好みをはっきりと持つこと。日本人とは、人間とはこうあるべきだというのを、自分で考える力を身につけるための本だと思います。それだけでなく、幼い頃ここにあるものをこう置けばもっときれいなのに、ダメと言われる。なぜそれがダメなんだろうと思うことがありましたが、そうじゃなくても良い。きれいじゃなくても、整頓されていなくても良い。そうやって物事を俯瞰視できるように広い視点を持たせてくれたのも、この本かもしれません。海外の人が見た日本人の性質や勤勉さ、礼儀正しさ等ではなく、普段から身の回りにある日本らしさ、日本人すら気付かないようならしさが、伊丹さんを通して海外の視点で綴られている。ずいぶん昔の作品ですが、今の時代にも十分通じる内容ばかりなので、国語の教科書に入れてほしいくらいです。

カバーの装画、中面に登場するイラストも伊丹さん自身が描かれたもの。スパゲティの“粋な”食べ方を紹介しているベージは、この本の中で一番好きなページ。アルデンテという言葉を最初に紹介した本と言われているとか。

片山 淳之介
1980年徳島県生まれ。2010年よりフランスでプロダクトデザイン業務に携わる。2020年6月よりBOOK SHOP無用之用 共同店主に就任。「すぐには役に立たないが、もしかしたらいつか役に立つかもしれない」という本をそろえている。ジャンルレスでおもしろい知識が出会い、新しいことが生まれるきっかけになる場を目指し、店作りに日々取り組む。http://issueplusdesign.jp/muyonoyo/

Photography Masashi Ura
Text Mai Okuhara
Edit Risa Kosada(Mo-Green)

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連載「Books that feel Japanese -日本らしさを感じる本」Vol.5 「Flying Books」山路和広が選ぶ両極な日本の姿が見られる2冊 https://tokion.jp/2022/04/02/books-that-feel-japanese-vol5/ Sat, 02 Apr 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=101378 「Flying Books」山路和広が選ぶ、写真家のまなざしに見る東京の都市生活。そして古き良き日本の生活。過去と現在を写真集から読み解く。

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国内外さまざまあるジャンルの本から垣間見ることができる日本らしさとは何か? その“らしさ”を感じる1冊を、インディペンデント書店のディレクターに選んでもらい、あらゆる観点から紐解いていく本連載。今回は、渋谷駅から徒歩2分。国内外の個性的な古書を扱う「Flying Books」山路和広にインタビュー。世界的にも有名な「Flying Books」のコレクションには、雑誌から詩集まで、アートブックというより、もはやアートのような本が並ぶ。その中から写真家独自の目線で今の東京の街を切り取った写真集、そして「日本昔ばなし」の世界にタイムスリップするような写真集。現在と過去の日本が見られる2冊を紹介してもらった。

ジョン・ゴセージ
『THE CODE』

−−ジョン・ゴセージ『THE CODE』について教えてください。

山路和広(以下、山路):この本の版元で、長年の友人でもある「ハーパーズ ブックス」のハーパー・レヴィーンとジョン・ゴセージが写真集の撮影のために来日し、撮影の手伝いをすることになりました。撮影のテーマを尋ねると、1981年に500部だけ発売された牛腸重雄さんの『見慣れた街の中で』という写真集のオマージュのようなものを作りたいと。その写真集は、日本のカラー写真の歴史を変えた作品集。タイトルの通り、何気ない街の風景を撮っているのですが、この頃アートフォトは白黒があたりまえだった時代。カラーフォトは雑誌やグラビアではあるけれど、アートとしては認められてなく、これが初めてアートの域に達することができた作品集なんじゃないかと思います。ジョン・ゴセージは、何気なく街の人達を撮ったこの写真集が好きで、オマージュ的なものを作りたいと話してくれました。2週間ほどの東京滞在で、銀座、新宿、神保町、代々木公園など、さまざまな場所を一緒に回り、撮影をしました。

−−撮影時の印象的なエピソードはありますか?

山路:ジョン・ゴセージは、写真集のコレクターでもあり、特に日本の写真家の作品が好きでたくさん集めています。石内都さんの『絶唱、横須賀ストーリー』という写真集も好きな一冊で、舞台となった横須賀や横浜にも撮影に行きました。僕が運転をしていると、初めて訪れたはずなのに、急に「ここを曲がって!」と彼がナビをし始めたんです。するとドヤ街のようなところにたどり着いた。初めて通ったはずなのに、嗅覚というか感覚がすごいなと思いましたね。日雇い労働者が生活するドヤ街の切り取り方、目線も独特ですごくおもしろい。私達も日常的に見ている光景なのに、ジョン・ゴセージの目を通してみると、新しい景色に見えてくるところがこの写真集の見所だと思います。

−−ジョン・ゴセージのまなざしの先にある日本らしさ、日本人のわれわれが見てもそう感じる部分はどんなところだと思いますか?

山路:彼はいわゆる和な日本を狙っているのではなくて、東京を写している。東京の人々という感じです。何気ないサラリーマンだったり、スクランブル交差点を渡る女性だったり、子どもがいたり大人達がいたり。東京の都市生活みたいな光景をすごく感じられる写真集だなと思います。彼の作品集全般に言えることですが、何回見ても新しい魅力や発見があります。写真集によっては、すごく良いけれど一度見たら何年も開かないものもある。きれいなだけの写真集は案外そうで、初めて開いた瞬間「おーっ!」と感じても、何度も見返したりはしない。派手なアクション映画と似ているのかもしれません。この写真集のおもしろさは、すべてジョンのまなざしだということ。カメラを通しているけど、ジョンが見たもの記録するためにカメラを使っただけで、公園にいて空を見上げた時の何気ない雲や、ロッカーのサビを自分のまなざしで見ている。そのまなざしは、派手なアクション映画とは違い、心温まるヒューマンドラマのようなもの。だから、何度見てもおもしろく新しい発見ができるのだと思います。

写真もそうですけど、デザインに至るまで無駄が一切ない。JAPAN、ジョン・ゴセージの“J”と日の丸を示すような“赤丸”が一つというシンプルな表紙のデザインは、ジョン自身が考えたもの。印刷時は中国まで立ち合いに行っていました。それくらいこだわって一冊を作る人。写真集のコレクターでもあるので、何千冊と見て培われてきた彼のセンスと過去の作品へのリスペクトが込められた愛情ある1冊だなと思います。

橋本照嵩
『GOZE(瞽女)完全版』

――橋本照嵩『GOZE(瞽女)完全版』について教えてください。

山路:現在82歳の写真家・橋本照嵩さんが、1970年代初頭に盲目の女性達が村から村へ放浪しながら芸を披露する瞽女と呼ばれる人達に、2年間同行し撮影した写真集。当時の娯楽といえば、都会ではテレビがある家もあったかもしれませんが、地方はラジオが主流だったようです。彼女たちの芸は、東北地方の農家ではエンターテイメントとして定着していたそう。新潟県を中心に農家を訪ね、三味線を弾きながら唄い、弾き語りで物語を聞かせる。その対価として金銭や農作物をもらっていたそう。彼女達と自然豊かな土地の人々との関わり、そして暮らしがコントラストの強いモノクロ写真で描写され、写真1枚1枚のインパクトが力強い。同時に今は失われつつある情景や田舎の風景や昭和の生活様式、家族の結びつき――そういう風景の中の瞽女の姿が捉えられた写真集です。

−−この本のどんな部分を海外に紹介したいと思いますか?

山路:力強い橋本さんの写真の魅力はもちろん、今は見ることができない古き良き日本の風景と生活様式が見られるので、そういう部分を見てもらえたらと思います。今はポップカルチャー、アニメ、ゲーム、音楽みたいなところばかりが外から注目されがちですが、日本の民俗文化も見て知ってほしいですね。やっぱりインパクトが強いし、これは何?と聞いてくる外国のお客様も多く、瞽女を説明する時に、目の見えない日本の女性のジプシー、旅をしながら芸能を披露し、生活をしている人達と説明するんです。世界的にも盲目の、しかも女性だけで連れ立って、芸能を伝承していくって聞いたことがないので、そういった点でも日本独自の文化を記録した写真集だなと思います。

――橋本さんとのエピソードはありますか?

山路:橋本さんは新しいものへの追求、好奇心が82歳になった今でも旺盛。最近デジタルでも写真を撮っていて「50年写真を撮ってきてやっとデジタルにたどり着いたよ!」って話していました。Flying Booksの近くにある焼き鳥屋さんがお気に入りで、よく一緒に飲みながら写真の話をします。橋本さんは石巻出身で、地面と密接につながって育ってきたからと言って地面の模様をデジタルで撮影しています。その写真もどこかグラフィカルで、地面のようには見えない、不思議なコントラストとインパクトがあるもの。そのデジタルな一面と、瞽女の対極を見てほしいなと思い、お店で写真展も開催しました。

瞽女の3人が雪が降る村の森の中を歩いている写真が印象的。視力のある一人が先頭を歩き、前の人の肩に手を置いて連なって歩いている。彼女達の表情が見える写真は、その感情が鮮やかに見える。その写真は印象的で鮮烈に記憶に焼き付く光景。「日本昔ばなし」で見る世界で、どこか御伽話を聞いているような気分になる。この写真集はゆっくりとした静かな時間に、まるでタイムスリップするように情景に入り込みたい1冊です。

山路 和広
1975年東京都生まれ。古書サンエーの三代目。2003年に東京・渋谷にカフェやイベントスペースを兼ねた古書店「Flying Books」をオープン。古書のコーディネート、イベント制作を軸に新刊書店、レコード店、インテリア・ショップ、アパレル、出版社等と既存の枠に捉われないコラボレートを続けている。http://www.flying-books.com/
Instagram:@flyingbookstokyo

Photography Masashi Ura
Edit Risa Kosada(Mo-Green)

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.6 長尾悦美が見るメイド・イン・ジャパンの美しい佇まいと唯一無二の魅力 https://tokion.jp/2022/03/13/japans-brand-trivia-vol-6/ Sun, 13 Mar 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=100238 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う企画。第6回は確かな審美眼で作られる高感度なファッションスタイルにファンも多い長尾悦美が登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、もの選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った、“メイド・イン・ジャパン”のものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は髙島屋のウィメンズ・クリエイティヴ・ディレクターを務める長尾悦美。ファッションを通して長年培ってきた審美眼で選ぶ“メイド・イン・ジャパン”のものとは。独自のこだわりをもって選ぶ条件を伺うと、自分の好きなものと真摯に向き合う彼女のセンスの源を感じることができた。

−−ファッションや百貨店勤務という環境の中で、さまざまなものと触れ合っている長尾さんですが、改めてメイド・イン・ジャパンのものの価値や魅力をどのように感じていますか?

長尾悦美(以下、長尾):百貨店で働いているからこそ、幅広い視野で見られるという意味では、ファッションに限らずメイド・イン・ジャパンの製品に触れる機会は多いです。もともと興味もあったので、潜在的な感覚にスイッチが入るような。今の仕事を通して、あらためて日本の四季の大切さや、豊かな色彩、文化をきちんと学べる機会も増えました。

メイド・イン・ジャパンの製品は、すべてにおいて職人気質。日本独自の美学の丁寧さや華美じゃない美しさ、佇まいやオーラまでも醸し出されているように感じます。それは建築しかり、器や骨董品、今の日本のものづくりの産業を見ても同じく。仕事で、ヨーロッパやアメリカに行く機会が多いので、街を見ていると長い歴史の中で大切に残されてきた装飾が多く見られますが、日本は奥ゆかしさや生活の中に溶け込んでも過剰ではない美しさを感じるものが多い気がします。

−−ものづくりにおいて海外と日本の違い、またそのおもしろさはどんなところにあると思いますか?

長尾:ヨーロッパは街全体が芸術作品のようで、まるで映画のセットの世界。見ていて楽しくて美しい。日本もまた違う意味で美しく芸術的な見方ができるけれど、ヨーロッパとは対極にある気がします。アメリカはもう少し雑多な印象。いろいろな文化が混ざっているのを感じますしね。北欧はミニマルな世界の中で、独特の色彩感覚と機能美をすごく感じる。それぞれの国の美に対する意識の違いをあらためて見るとおもしろいです。

−−ファッションにおいては、どのような目線で見つけていますか?

長尾:洋服を選ぶときにまず最初に見るのは、ファブリックのクオリティです。テキスタイルの佇まいや品質は一番重視するところ。ヴィンテージ・ショップでもファブリックから手にとって、その後にスタイルを考えるというのが私のファッションの組み立て方です。仕事としてバイイングする時は、売れる売れないの判断はあるものの、ハンギングされているときのファブリックの佇まいが安っぽくないかどうかも、ジャッジする時の重要なポイントの1つになっています。2つ目は、毎シーズンたくさんの展示会を周りますが、ファブリックとテキスタイルのバランスはもちろん、オリジナルのスタイルをちゃんと作っているか、流行ではなくデザイナー本人のルーツや好きなものでもって、自分のスタイルを築けているかどうか。この2つがポイントになっています。何かどこかで見たことあるなとか、どこかの何かっぽいみたいなことでは、私は心が動かなくて。もちろん売れると思うものもあるので、ビジネス目線では取り入れることもあるけれど、やっぱり唯一無二のスタイルを作っている人、デザイナーに惹かれますね。

唯一無二のスタイルを作る「FUMIKA_UCHIDA」

日本のヴィンテージカルチャーって、すごく独特。世界のどの国にも古着はあるものの、それをファッションとして確立させているのが東京。スタイルとして築き上げられていて、トレンドもあるというのは、東京ならでは。ミリタリーやデニムなど、ギアに偏っているのがメンズヴィンテージのイメージですが、レディースにおいて「FUMIKA_UCHIDA」はその先駆者だと思っています。すごく軽やかに、カッコよく、古着をスタイルとして確立させ、びっくりするようなスタイルやバランスを築き上げた。デザイナーの内田さんはレディースのヴィンテージカルチャーを作った人だと思っています。 彼女自身、ヴィンテージの背景をしっかり理解し生活に取り入れているからこそ、自分らしく編集しスタイルを作れる。その強みは唯一無二で、感度は素晴らしく高い。デビューコレクションから見ていますが、毎回違うアクションのスタイルを作ってくる。テキスタイルのこだわりも随所に感じられて完璧だなと。

このニットは、2014年のデビューコレクションで発表されたアイテムの1つ。当時これを着てニューヨーク・コレクションを訪れた時のこと。たくさんのセレブリティにカメラが向けられる中、フォトグラファーのビル・カニンガムが、このニットを着て、レザーパンツにコンバースでいた私にカメラを向けてくれたことがありました。その瞬間、他のカメラマン達も集まってきて……。帰り際、「Nice Sweater!」って言ってくれたのは、忘れられない思い出です。すごくクラシックなフィッシャーマンのニット、誰もが知っているテキスタイル。パッチワークされていて、肩が抜けたシルエット、そのバランスがとても新鮮だったんでしょうね。私にとっては伝説的なニットだと思っています。

トライバルな模様がモダンなアイヌのお盆

日本橋髙島屋で、日本民藝展が開催された際に購入したもの。アイヌ文化が注目される今、生活に取り入れてみるとトライバルなデザインのモダンさが際立って、特別なものに。私は北海道出身で、アイヌの家系ではないですが、アイヌをルーツに持つ同級生がクラスに1人はいましたし、アイヌの文化は当たり前に身近にあったもの。逆に東京に出て百貨店で働くようになってから、彼等のものづくりや歴史、ルーツをあらためて知る機会が増え、帰るたびにゆかりの場所を訪れるようになりました。

彼等の生活に基づいたものづくりは、美しいものを作ろうと商業的な考え方ではなく、生活と自然の中で生きていくために、木々や動物の革を使って作られたものばかり。その精神はネイティブ・アメリカンに精通するところがあると感じています。以前、阿寒湖の近くにあるアイヌ木彫りの第一人者だった藤戸竹喜さんのお店「熊の家」を訪れた際、私が身につけていたアクセサリーを見て、奥様が「ネイティブ・アメリカンのジュエリーが好きなの?」と声をかけてくれたことがあったんです。アイヌの民族衣装にも、ブルーターコイズを使ったアクセサリーがあるからだと思うのですが。その時に、作品の貯蔵庫になっているお店の地下を案内していただきました。藤戸さんのご両親はアイヌ民族でお父様に弟子入りし技術を継承した方。熊だけでなく狼や鹿、海洋生物等、まるで命を吹き込まれたように木から彫りだされるモチーフをみていると、貯蔵庫はまるで博物館のようでした。神居古潭(カムイコタン)には、実際にネイティブ・アメリカンの人が焚き上げにきたことがあるそうで、その際に置いていったのであろう、羽の飾りなどが祀られていたり。彼らもまた同じスピリットを感じていたということですよね。藤戸さんの作品もそうですが、アイヌの民芸品は、本当にかっこいい、心奪われる佇まいがあるものが多いなと感じます。

どの季節も自然の色彩が美しい故郷、十勝・帯広

アイヌ文化を始め、ニセコなど世界的にもフォーカスされている北海道。雪のシーズンだけでなく、夏生まれのせいか夏の北海道をおすすめしたいです。出身地である十勝・帯広は、実は暑さも寒さも全国1位になる地域。冬から春までが長く真冬はマイナス20度の白銀の世界。5月に雪が溶け出し、6月に急に暑くなって、夏は40度を超える日もある。そしてお盆明けには秋に。そんなふうに四季がはっきりしているというのが、自然の彩りを濃くさせているのだと思います。とかち帯広空港に降り立つ飛行機から見える景色は、イギリスの田園風景のように美しいと、イギリスに住んでいる人が言うほど。農業のイメージが強いエリアですが、実は美術館など文化的な施設も多いです。六花亭が運営する「六花の森」や「中札内美術村」は、広大な敷地の中にギャラリーが点在していて、大自然の中で帯広の綺麗な空気や景色と一緒にアートや観光を楽しめるところが魅力だと思います。都会にいると、ひっきりなしに入ってくる情報量に支配されてしまいがち。ここに帰ると、それが一旦遮断されるんです。広い空と大地、すぐそこに山が見えて、自然の色彩が美しい。そういう景色の中に身を置くだけで、人間本来の生命の指針みたいなものが正しい位置に戻るような感じがして。頭の中がクリアになって、またフレッシュな気持ちでいろいろなものが見えるようになる。ありきたりだけど、やっぱりリセットできる場所なんですよね。

長尾悦美
髙島屋」ウィメンズファッションクリエイティブディレクター。セレクトショップの販売員を経て上京。髙島屋STYLE&EDITのバイヤーを務めたのち、ウィメンズファッション部門のクリエイティブディレクターに就任。卓越したセンスで、自由にミックスするスタイルとおしゃれな自宅から垣間見えるライフスタイルにも注目を集めている。
Instagram:@yoshiminagao

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.5 街をアトリエに日常を描写する エイドリアン・ホーガンが思うメイド・イン・ジャパンの魅力 https://tokion.jp/2022/01/11/japans-brand-trivia-vol-5/ Tue, 11 Jan 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=84651 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う企画。第5回は東京を拠点に活躍するオーストラリア出身のイラストレーター、エイドリアン・ホーガンが登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、もの選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った、“メイド・イン・ジャパン”のものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は、出身地であるオーストラリアから東京を拠点に移し、イラストレーターとしてさまざまなメディアで活躍するエイドリアン・ホーガン。イラストレーションに対する考えや思い、そして彼にとって“メイド・イン・ジャパン”のものは、自身の創作にどんな影響を与え、インスピレーション源になっているのだろうか。

−−日本に活動の拠点を作って8年が経つそうですが、あらためてメイド・イン・ジャパンのモノの価値や魅力をどのように感じていますか?

エイドリアン・ホーガン(以下、エイドリアン):日本に来る前、メイド・イン・ジャパンのものに対して、“ハイクオリティ”と“長く使えるもの”という2つのステレオタイプがありました。そのイメージは日本に来て合っていたと確信しましたが、思っていたよりもものづくりの幅の広さと芸の細かさに驚いたのを覚えています。例えば、レストランの各テーブルにおいてある爪楊枝。先端を折り箸置きのように爪楊枝を置くとテーブルに直接置くことなく使えるとか、温かいおしぼりを出してくれるとか。用途を考えて誰かがデザインしたものが、時代を越えて残っていて、日本のおもてなし精神につながっている。その考え方をもっと理解したいと思って、日本語の勉強をするようになりました。実際に東京で暮らし始めて8年になりますが、クオリティライフとしては東京に住んで本当によかったと思っています。大きく国際的なビジネス街の面もありますが、自分らしくも暮らせる街。ビル群の中にも、少し歩くと昔ながらの街並みや工場が残っていたり、そのミックス感もおもしろいですしね。

−−気になる“メイド・イン・ジャパン”のものやスポットはどこで見つけていますか?

エイドリアン:東京に引っ越してきたばかりの頃からいろんな街をたくさん歩いて散策しています。5分歩いただけで景色が変わり、その変化も見ていて楽しい。東京の都会の部分も好きですが、東村山のように都心から離れたカントリーな雰囲気の街も好き。街を見ていると長く使っているもの、そのエイジング感に魅力を感じるようになりました。ボロボロになってしまったら、捨てて新しく買えばいいと思っていたけど、古き良きを大事にする精神、直して長く使うという習慣をものだけでなく建物にも感じて、そういう風景の絵をよく描いています。東京はベーシックな色の建物が多いけれど、人がお洒落でたくさんの色をまとっている。その建物と人のコントラストも描いていておもしろいなと発見しますね。

日常的なスモールトレジャー「ポスタルコ」のペンケース

長く使っている「ポスタルコ」のペンケース。「ポスタルコ」というブランドは、アメリカ人と日本人の夫婦で、日常的に使うステーショナリーや革製品を使いやすくデザインし、販売しています。アメリカから拠点を東京に移し、日本人の職人さんに生産を依頼している彼らは、インターナショナル感もあるけれど、メイド・イン・ジャパンであるというおもしろさもある。僕はそのイラストヴァージョンを目指しています。例えば、一緒に暮らせる絵。長く愛してもらえるように、日差しで色が落ちて変わってしまっても、味があるみたいな絵を描いていきたい。そういう意味でも「ポスタルコ」のものづくりの考えやコンセプトは、お手本であり、先輩でもある。それに、海外から原画を買いたいという依頼が来ると、ある意味僕の作品もメイド・イン・ジャパンだと思っているので、梱包時に“MADE IN JAPAN”と書いているんです。外国人のイラストレーターなのに、メイド・イン・ジャパンというのは違和感があるけど、意味としては間違ってはいないんじゃないかなと思っているから。

筆のタッチと特有のワビサビに惹かれた「筆ペン」

日本に来た時、それぞれの色の意味もわからず使って絵を描いていた筆ペン。液がなくなってきた時の擦れ感とか、色の濃淡が調整できたり、力の入れ加減で繊細な線が描けたりする。何よりコンビニでも手に入り、そして安い。使っていてとても楽しい。日本に来てこの筆と出会わなかったら、描けなかった絵もたくさんあります。書道用の筆も、細いものから太いものまでいくつか持っていて、それで絵を描くことも。最近はデジタルで、こういうタッチの質感が出せるツールもありますが、僕はアナログなスタイルにこだわっているので、デジタルで描いたものに、筆ペンを使って描いた絵をスキャンして合わせたりすることもあります。手作りで完璧というメイド・イン・ジャパンのものづくりの精神に従って、そういう手法を取り入れています。それに似顔絵を描いていても似ているかどうかより、フィーリングで描く手描きの絵にはその人らしさや個性が表れます。それが僕の作品のオリジナリティーにも繋がっていると思います。

絵をきっかけに人とつながることができる「カフェ」

イラストレーターとして駆け出しの頃、人を描くのが好きなので、家で描いているよりも外で描いている方がいいと思って、電車の中や街を歩きながらスケッチしたり、いろんな街のカフェでも絵を描いていました。よく行くカフェの店の同じ場所で絵を描いていても、いつも違う発見がある。1枚として同じ絵はないんです。今いちばんのお気に入りはワーキングスペースの下にある「パーラーズ」。カフェは、偶然の出会いも多く、描いていたら「イラストレーターさんですか?」とスタッフの人が声をかけてくれて、同じ店内にいたアートディレクターの人を紹介してくれて、仕事につながったり。そういうきっかけにつながるコミュニケーションの場所でもあります。あと、最近はiPhoneでみんなすぐ写真を撮るけれど、僕はその瞬間をスケッチで残したい。そういう習慣の中で、幸せな瞬間や、たくさんの思い出をスケッチブックに残そうと思って、ポケットにコンパクトなスケッチブックをいつも入れています。見返すと、日常的な瞬間もアートになるんだなと感じることも多いですし、名刺の渡し方やお辞儀の角度といった日本らしい習慣やマナーを、自然と描いていたスケッチから知ることもありました。

エイドリアン・ホーガン
オーストラリア出身。2013年から東京に拠点を移し、フリーのイラストレータとして活躍。国内外問わず、雑誌をはじめ、広告、書籍、壁画など、幅広くイラストを手掛けている。日常の様子をスケッチし投稿しているSNS も人気。
Instagram:@adehogan
http://www.adrianhogan.com/

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.4 セラピストRYOKO HORIが長い海外生活で改めて感じる日本のモノや人の魅力 https://tokion.jp/2021/12/05/japans-brand-trivia-vol-4/ Sun, 05 Dec 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=79939 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う本企画。第4回は、ベルリンで RYOKO senses salon を営むセラピストの堀涼子が登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、“メイド・イン・ジャパンであること”も、モノ選びの基準の1つになっている。連載「ジャパンブランドのトリビア」では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿ったメイド・イン・ジャパンのものを、さまざまなクリエイターが紹介。今回は、ベルリンを拠点にセラピストとして活動する堀涼子。服飾専門学校卒業後、渡仏。その後帰国し3年ほど、ファッション業界で働いたのち、シドニーを経てベルリンへ移住。ベルリンでの生活は、もうすぐ10年になるという。海外生活が長いからこそ、改めて感じる彼女のメイド・イン・ジャパンの価値観とは。

−−パリ、シドニー、ベルリンと長年海外生活を送る中で、改めて感じるメイド・イン・ジャパンのモノの価値や魅力はどのようなところにあると思いますか?

堀涼子(以下、堀):メイドインジャパンのモノは、世界的に見ても“高いクオリティ”の代名詞だと思います。比べものにはならないクオリティがありますから。私が住んでいるベルリンでもコロナ禍の少し前くらいから日本ブーム。日本旅行を楽しむ友人も多く、私がなかなか帰れない分、彼らから日本各地のホットスポットの情報を聞いたりして。友人達も皆、そのクオリティの良さに信頼を置いています。だからこそ、日本のものを選びたいという思考の人も増えている。また、海外で生活をしていると改めて、日本人は人としてもすべてにおいて完璧だなと感じます。作っているものの完璧さはもちろんのこと、人としても、仕事も、時間もきちんと守りますし、とにかく“きちんとしている”のが日本人らしいなと思います。

−−モノづくりにおいて海外と日本の違い、またそのおもしろさはどんなところにあると思いますか?

堀:海外の人はトライが早いと思います。興味を持ったらやってみる人が多い。だから実験的に作ってみたら、おもしろいものや新しいアイディアが生まれたり、そういうおもしろさがありますよね。日本の器やクラフトが好きで、いろいろ集めているのですが、ものを見ていると、長年受け継がれてきた技術力が本当に素晴らしいと感じます。伝統的であるだけでなく、モダンさもある。しっかりとしたベースがあるからアレンジができる。いろんな作家さんとお仕事をするので、日本人が作ったか、外国の作家さんが作ったか、器などをみているとすぐにわかります。ベルリンは移住者が多く、いろんな国の人がクリエイティブな仕事をしていておもしろい。だからこそ、違いもわかりやすいんです。

日本のクオリティをベルリンで具現化する陶芸家による「Studio Cuze」

陶芸家久世さんの作品です。彼もベルリン在住で、スタジオを持って活動をしています。ちょうど私がベルリンに移り住んだのと同じ頃、彼も引っ越してきていて、友人を介して知り合いました。私はアルコールベースの香水を調香しているだけでなく、樹脂や香木などを焚くお香も取り扱っていて、香水のボトルやスマッジホルダー、香炉(香木や樹脂などの香を焚く器)をメイドインジャパンのクオリティで、作ってもらっています。日本にも、もちろん好きな作家さんや一緒にお仕事してみたい方はたくさんいるんですが、やはり距離があるので気軽には難しく。近くにいて、クオリティも素晴らしい。私の考えを具体的に形にしてくれる久世さんの存在はありがたいですね。

時代を超えて受け継がれる日本の古道具

日本に帰ると必ず骨董市を訪れて、昔からある街の古道具屋を巡ります。そこで江戸時代のものなんかを見つけるとお宝を見つけたような気分になります。古道具や骨董品を見て作り方や当時の用途をあれこれ想像しては、もちろんその時代のものはすべて手作りのはずですから、その技術力に圧倒されてしまいます。大切にしているモノの中でも、100年以上前の櫛は、細く均等に作られていて、その繊細さに惚れ惚れしますし、キャンドル立ては、今でいう懐中電灯のようなものだったのでしょう、常に蝋燭がまっすぐ上に立つような仕組みになっていて、きちんと考えられた機能性が素晴らしい。ヨーロッパのアンティークももちろん好きなのですが、ヨーロッパのものは、機能というよりも視覚的に楽しめるようなデザインが印象的。日本のものは機能を重視していて、デザインは削ぎ落とされている。そのシンプルさは古臭さが全くなくモダン。時代を超えて受け継がれる日本独特の機能性と技術力は本当に素晴らしいですよね。

ベルリンで一番おいしいお寿司が食べられる「Sasaya」

前回帰国したのは3、4年前。日本食が恋しくなる日々の中で、ベルリンできちんとおいしい日本食がいただけるお店があります。それが『Sasaya』。東京は、おいしいお店もたくさんあって、値段が高ければもちろんですが、安くてもハズレってめったにないですよね。ほとんど魚が食べられないベルリンで、生魚が食べられて、しかもおいしいお店は貴重。なので、頻繁に食べに行っています。「Sasaya」は、ベルリンの日本料理屋さんの中でも一番おいしいと言われているほどの人気店。日本人の大将が握ってくれるサーモンのあぶり寿司の、あのとろける感じは、食べるといつも日本を思い出します。大将は寡黙だけど、お店の中の様子は、すべて見えている。その感じも日本料理屋さんならではという感じがして、行くとほっとできる場所です。

堀涼子
1980年生まれ、大阪府出身。パリ、ロンドン、東京、シドニーを経て、現在ベルリン在住。「RYOKO senses salon」を主宰し、リメディアルマッサージ&ビューティーセラピスト、調香師、ショップオーナーとして活動している。

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連載「ジャパンブランドのトリビア」Vol.3 日本の魅力を生かしたスキンケアブランド「ダムダム」創設者ジゼル・ゴーとフィリップ・テリアンのセンスに迫る https://tokion.jp/2021/10/24/japans-brand-trivia-vol3/ Sun, 24 Oct 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=65777 メイド・イン・ジャパンのブランドやアイテムの魅力をクリエイターに問う本企画。第3回は、話題のスキンケアブランド「ダムダム」の創設者ジゼル・ゴーが登場。

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デザインや機能性、トレンドやスタンダードという軸があるように、メイド・イン・ジャパンであることも、モノ選びの基準の1つになっている。本連載では、最先端であり、ソーシャルフルネスというステートメントに沿った“メイド・イン・ジャパン”のクリエイションにフォーカスする。今回は、原料から生産まで日本製にこだわって作られているスキンケアブランド「ダムダム」の創設者、ジゼル・ゴーとパートナーのフィリップ・テリアンに、自身のライフスタイルに紐づいているだけでなく、ファッション業界の第一線で活躍してきた2人ならではのセンスが光る、スペシャルなメイド・イン・ジャパンのモノを紹介してもらった。

−−メイド・イン・ジャパンのモノの価値や魅力はどのようなところにあると思いますか?

ジゼル・ゴー(以下、ジゼル):クラフトマンシップのレベルが非常に高いということです。プライベートでも仕事でも、モノづくりをしている職人やアーティストと関わる時、いつもコミットメント力が素晴らしいと感じます。だからメイド・イン・ジャパンの商品は、優れているのでしょう。もう1つは、古くからあるものが評価されているということ。例えば、金継ぎのような発想は、日本独特ですごくおもしろい。日本は先進国です。いろいろな企業や機器が、私達の日常生活のすぐそばに、当たり前のようにあって、その技術力を身近に感じることができる。その一方で、ハンドメイドの商品も評価されていてセレクトショップやギャラリーなど、いろいろな場所で楽しむことができるというのもすごく魅力だと思います。

−−モノづくりにおける海外と日本の違い、またそのメリットはどんなところにあると思いますか?

ジゼル:違いを感じるのは、スピードです。日本は少しゆっくり。ですがコミットメント力が素晴らしいので、ゆっくりであることが、デメリットというわけではありません。ディテールにこだわってモノづくりをし、完璧な商品を作りあげる。それがメイド・イン・ジャパンの素晴らしさですから。そこに他国と違いを感じます。時間はかかったとしても、出来上がった商品は完璧。それは、依頼する側にとって安心感と信頼に繋がります。メイド・イン・ジャパンの商品=安心という解釈は、そういったところから来ていると思います。

−−「ダムダム」を始めるきっかけや、スキンケアに限らず日本のクラフトも紹介しています。その活動について教えてください。

ジゼル:長い間、華やかなファッションの世界で仕事をしてきたので、別の分野でクリエイティブしたいという思いと、もともと興味があったスキンケア、そして日本の伝統的なクラフトマンシップをもう一度見直しておもしろい商品を作りたい、その思いを「ダムダム」という形にしました。それから、私達は旅が好きで、海外はもちろん日本各地を旅して集めた陶器がたくさんあります。昨年は車で、山梨、長野、滋賀、京都、奈良、四国と日本を回り、すてきな出会いがたくさんありました。そこで出会った職人やアーティストを紹介したいという思いから「ダムダム アトリエ」をスタート。「ダムダム アトリエ」rでは、「ダムダム」の商品だけでなく、アーティストや作家とコラボレーションして商品を作り、ポップアップという形で皆さんに紹介しています。将来的には、常に触れ合うことができ、手にした時の感覚を共有できる場所を作れたらいいですね。

長年受け継がれてきた日本由来の成分を活かした「ダムダム」

初めてイマジネーションしたことを実際に形にした「ダムダム」は、私にとってスペシャルな存在。「ダムダム」の製品は私達が日常で手にしている日本のものを原料にしています。例えば、お米からできる米麹や陶器で使われるカオリンクレイ、紫蘇やこんにゃくなど。お米は毎日食べていますし、紫蘇はお茶にして年中飲んでいるくらい、私達にとってとても身近なもの。そういった日本に昔からあり、長年使用され受け継がれてきた成分を厳選して原料として取り入れて、スキンケアに活かしたいという思いから立ち上げました。信頼のおける日本のラボで開発、パッケージに至るまですべて日本製にこだわっています。9月に発売したばかりの紫蘇を配合したシャンプーとコンディショナー、ボディウォッシュは香りも使い心地もとても気に入っています。

縄文土器から着想を得た「ノグチ カンサイ」のインセンスホルダー

野口寛斎さんに作っていただいたインセンスホルダー。「ダムダム アトリエ」rVol.3でも販売をしました。浄化やリラックス効果もあるお香は、自宅でいつも好きな香りのものを焚いています。野口寛斎さんはもともとファンだった陶芸家。縄文土器にインスパイアされたという形や、ユニークなテクニックで作られた作品は、どれも好みのものばかり。以前、彼の個展を訪れた際に知り合い、フィリップの誕生日プレゼントに花瓶を購入したことから、交流が始まりました。このインセンスホルダーは、白と黒の配色のモダンなデザインで、オブジェとしての佇まいもすてきです。

三浦半島の別荘は海の眺望に優れた自分達だけの場所

週末だけでもリチャージできる場所が欲しいと思って、数年かけて探して見つけたのが、三崎にある別荘。もともとあった古民家を購入しリノベーションしました。庭はまだ未完成ですが、ここで過ごしながらガーデニングをしたり、ペンキを塗ったり、ゆっくりと自分達の手で空間を完成させていこうと思っています。天気がいい日は富士山を望むことができ、目の前には海が広がり、素晴らしいサンセットが見られて、自然の音や匂いを直で感じられる場所。私たちは旅をしたり、いろいろな場所に行くことが好きですが、ここで過ごすだけで十分に満たされますし、スイッチを完全にオフにしてリラックスすることができます。もちろん新たな1週間のためのリチャージも! 新しい商品開発や創造をしていくために必要な空間と時間がここにはあります。

ジゼル・ゴー
シンガポール版『ハーパーズ バザー』元編集長。2017年に、日本でPRやコンサルティングを行うフィリップ・テリアンとともに、スキンケアブランド「ダムダム」を立ち上げた。「ダムダム」は生産からパッケージに至るまで、すべて日本製にこだわって製造されており、6月にはパリ発祥の大手コスメセレクトショップ「セフォラ」に出店した。

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